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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C09J
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 取り消して特許、登録 C09J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C09J
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 取り消して特許、登録 C09J
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 C09J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C09J
管理番号 1392651
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-14 
確定日 2023-01-17 
事件の表示 特願2017−103018「粘着剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年12月13日出願公開、特開2018−197317、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月24日の出願であって、令和3年3月23日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年5月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月3日付けで拒絶査定され(謄本の発送は同月15日)、これに対し、同年9月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和4年2月24日に上申書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
令和3年9月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
特許法第17条の2第1項第4号に該当する手続補正である令和3年9月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、そのうち請求項1についての補正は以下のとおりである。

ア 本件補正前の請求項1(すなわち、令和3年5月27付け手続補正書の請求項1)
「【請求項1】
シロキサン化合物(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む粘着剤組成物であって、
シロキサン化合物(A)は、下記式(a1)
【化1】

(式中、Bは、炭素数1〜20のアルカンジイル基又は炭素数3〜20の二価の脂環式炭化水素基を示し、前記アルカンジイル基及び前記脂環式炭化水素基を構成する−CH2−は、−O−又は−CO−に置換されてもよく、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す)
で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)であり、
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、粘着剤組成物。」

イ 本件補正後の請求項1(すなわち、令和3年9月14日付け手続補正書の請求項1)
「【請求項1】
シロキサン化合物(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む粘着剤組成物であって、
シロキサン化合物(A)は、下記式(a1)
【化1】

(式中、Bは、炭素数1〜20のアルカンジイル基又は炭素数3〜20の二価の脂環式炭化水素基を示し、前記アルカンジイル基及び前記脂環式炭化水素基を構成する−CH2−は、−O−又は−CO−に置換されてもよく、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す)
で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)であり、
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、異なる炭素鎖長のヒドロキシアルキル基を側鎖に有するヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、粘着剤組成物。」

(2)本件補正の適否の判断
本件補正の前後の請求項1を対比すると、本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「(メタ)アクリル系樹脂(B)」の「ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位」なる事項について、「異なる炭素鎖長のヒドロキシアルキル基を側鎖に有するヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位」とするものである。
ここで、本件補正は、「ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位」なる事項を「異なる炭素鎖長のヒドロキシアルキル基を側鎖に有する」ものに限定するものであるようにみえる。
しかし、「異なる炭素鎖長のヒドロキシアルキル基を側鎖に有する」なる記載から、炭素鎖長が異なることは理解できるが、何に対して異なるのかは不明である。
そうすると、本件補正は、「ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位」なる事項を「異なる炭素鎖長のヒドロキシアルキル基を側鎖に有する」ものとすることにより、
「ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位」を限定しているのか否か不明であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また、本件補正が、同法第17条の2第5項第1、3及び4号にそれぞれ掲げる請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 原査定の概要
原査定(令和3年6月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項1〜14の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1〜14に係る発明は、令和3年5月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(請求項1〜14に係る発明を、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明14」、まとめて「本願発明」ともいう。)。

「 【請求項1】
シロキサン化合物(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む粘着
剤組成物であって、
シロキサン化合物(A)は、下記式(a1)
【化1】

(式中、Bは、炭素数1〜20のアルカンジイル基又は炭素数3〜20の二価の脂環式炭化水素基を示し、前記アルカンジイル基及び前記脂環式炭化水素基を構成する−CH2−は、−O−又は−CO−に置換されてもよく、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す)
で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)であり、
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む、粘着剤組成物。
【請求項2】
シロキサン化合物(A)に含まれるアルコキシ基の含有量は、加水分解縮合性シラン化合物(a1)に含まれるアルコキシ基の総量100モル%に対して、60〜95モル%である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
シロキサン化合物(A)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、600〜4000である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
シロキサン化合物(A)の割合は、(メタ)アクリル系樹脂(B)100質量部に対して、0.01〜10質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
(メタ)アクリル系樹脂(B)は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満のアルキルアクリレート(b1)由来の構成単位と、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上のアルキルアクリレート(b2)由来の構成単位とを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
(メタ)アクリル系樹脂(B)に含まれるカルボキシル基含有(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合は、(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する全構成単位100質量部に対して1.0質量部以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、100〜250万である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
架橋剤(C)はイソシアネート系化合物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
架橋剤(C)の割合は、(メタ)アクリル系樹脂(B)100質量部に対して、0.01〜10質量部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層。
【請求項11】
請求項10に記載の粘着剤層を、光学フィルムの少なくとも一方の面に積層させた粘着剤層付光学フィルム。
【請求項12】
前記粘着剤層付光学フィルムの、光学フィルムと貼合されていない面の粘着剤層をガラス基板に貼合し、温度23℃、相対湿度50%の条件下、24時間保管した後の粘着力は、剥離速度300mm/分において、0.5〜10N/25mmである、請求項11に記載の粘着剤層付光学フィルム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の粘着剤層付光学フィルムを含む、光学積層体。
【請求項14】
下記式(a1)
【化2】

(式中、Bは、炭素数1〜20のアルカンジイル基又は炭素数3〜20の二価の脂環式炭化水素基を示し、前記アルカンジイル基及び前記脂環式炭化水素基を構成する−CH2−は、−O−又は−CO−に置換されてもよく、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を示し、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す)
で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)であって、シロキサン化合物(A)に含まれるアルコキシ基の含有量は、加水分解縮合性シラン化合物(a1)に含まれるアルコキシ基の総量100モル%に対して、60〜95モル%である、粘着剤用シロキサン化合物(A)。」

第5 原査定の理由についての判断
(1)本願発明14
本願発明14の課題は、本願明細書の【0006】の記載からみて、ITO等の透明電極層に適用した場合においても、苛酷な耐久条件下で、良好な耐久性を示す粘着剤層を形成可能な粘着剤用シロキサン化合物を提供することにあると認める。
ここで、本願明細書【0017】〜【0020】の記載によれば、本願発明の粘着剤組成物は、特定のシロキサン化合物(A)、すなわち、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)を含むため、本願発明の課題である良好な耐久性及び良好なリワーク性を示すことが記載されている。そして、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)は本願発明14において特定される粘着剤用シロキサン化合物(A)であるから、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)は前記課題を解決できることが、記載され、実際、本願明細書の発明の実施例1〜12には、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)に含まれるシロキサン化合物(A−1)又は(A−2)を用いて粘着剤層を形成し、該粘着剤層が、本願発明の課題である良好な耐久性(ITO等の透明電極層に適用した場合においても、苛酷な耐久条件下での良好な耐久性)及び良好なリワーク性を示すことが、記載され、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)は前記課題を解決できることが、裏付けられているといえる。
ここで、原審の拒絶査定の指摘のように、前記実施例では、アクリル系樹脂として、ノルマルブチルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレートをコモノマーとする(メタ)アクリル系樹脂を含むもののみであるが、モノマー組成が異なる2種のものが記載されており、前記モノマー組成は、ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含み、粘着剤層を形成するものとして一般的なものといえるから、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)は、ヒドロキシ含有(メタ)アクリレート由来の構成単位を含み、粘着剤層を形成する他のアクリル系樹脂との組み合わせにおいても、前記課題を解決できるといえる。
そうすると、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の部分加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)は前記課題を解決できることが理解できるといえるから、本願発明14は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲にあると認められる。
したがって、本願発明14は、特許法第36条第6項第1号で規定する要件を満たすものである。

(2)本願発明1〜13
本願発明1〜13は、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)に加えて、(メタ)アクリル系樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、該粘着剤層を含む粘着剤層付光学フィルム、該粘着剤層付光学フィルムを含む光学積層体である。
ここで、本願発明1〜13の課題は、本願明細書の【0006】の記載からみて、ITO等の透明電極層に適用した場合においても、苛酷な耐久条件下で、良好な耐久性を示す粘着剤層を形成可能な粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、該粘着剤層を含む粘着剤層付光学フィルム、該粘着剤層付光学フィルムを含む光学積層体を提供することにあると認める。
そして、前記(1)で検討したとおり、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)は、苛酷な耐久条件下で、良好な耐久性を示す粘着剤層を形成可能な粘着剤用シロキサン化合物を提供するという課題を解決できるから、本願発明14において特定される、式(a1)で表される加水分解縮合性シラン化合物の加水分解縮合物(a)である粘着剤用シロキサン化合物(A)、(メタ)アクリル系樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、該粘着剤層を含む粘着剤層付光学フィルム、該粘着剤層付光学フィルムを含む光学積層体が、ITO等の透明電極層に適用した場合においても、苛酷な耐久条件下で、良好な耐久性を示す粘着剤層を形成可能な粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、該粘着剤層を含む粘着剤層付光学フィルム、該粘着剤層付光学フィルムを含む光学積層体を提供することができるといえる。
そうすると、本願発明1〜13は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できる範囲にあると認められる。
したがって、本願発明1〜13は、特許法第36条第6項第1号で規定する要件を満たすものである。

第6 むすび
以上のとおり、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-01-05 
出願番号 P2017-103018
審決分類 P 1 8・ 537- WY (C09J)
P 1 8・ 57- WY (C09J)
P 1 8・ 571- WY (C09J)
P 1 8・ 574- WY (C09J)
P 1 8・ 572- WY (C09J)
P 1 8・ 572- WY (C09J)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 関根 裕
瀬下 浩一
発明の名称 粘着剤組成物  
代理人 森住 憲一  
代理人 松谷 道子  
代理人 松谷 道子  
代理人 森住 憲一  

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