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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1392673
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-04 
確定日 2022-11-17 
事件の表示 特願2020−521616「撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月14日国際公開、WO2020/095623〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)10月11日(優先権主張 2018年11月7日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 3年 2月 2日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 7月 1日付け:拒絶査定
令和 3年10月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年10月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年10月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「【請求項1】
交換レンズとカメラ本体を備えた撮像装置であって、
前記交換レンズは、
像ぶれを補正するための補正レンズと、
前記補正レンズを光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行うレンズ駆動部と、
前記レンズ駆動部による像ぶれ補正を制御する第1制御部と、
前記カメラ本体と通信する第1通信部とを備え、
前記カメラ本体は、
前記交換レンズを介して形成された被写体像を撮像して画像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子を光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行う素子駆動部と、
前記素子駆動部による像ぶれ補正を制御する第2制御部と、
前記交換レンズと通信する第2通信部とを備え、
前記第1又は第2制御部は、像ぶれ補正を行う補正能力の高さに応じて、前記交換レンズと前記カメラ本体とのうちの前記補正能力が高い一方を選択し、
前記レンズ駆動部及び前記素子駆動部において、前記選択された一方の駆動部は、所定範囲内の像ぶれに対して像ぶれ補正を行い、
前記選択された一方ではない他方の駆動部は、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対して像ぶれ補正を行い、
前記第1及び第2制御部において前記選択された一方の制御部は、前記選択された一方の補正能力に基づいて、像ぶれに対するぶれ補正量を演算し、
前記像ぶれが前記所定範囲を超える場合、当該一方の制御部は、当該一方に設けられたジャイロセンサによる検出結果に応じて、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対するぶれ補正量を算出して、前記第1及び第2通信部を介して他方の制御部に、前記算出したぶれ補正量を送信し、
前記他方の制御部は、前記一方の制御部から受信されるぶれ補正量に基づいて、前記像ぶれの残り分に対する像ぶれ補正を前記他方の駆動部に行わせる撮像装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和3年4月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
交換レンズとカメラ本体を備えた撮像装置であって、
前記交換レンズは、
像ぶれを補正するための補正レンズと、
前記補正レンズを光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行うレンズ駆動部と、
前記レンズ駆動部による像ぶれ補正を制御する第1制御部と、
前記カメラ本体と通信する第1通信部とを備え、
前記カメラ本体は、
前記交換レンズを介して形成された被写体像を撮像して画像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子を光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行う素子駆動部と、
前記素子駆動部による像ぶれ補正を制御する第2制御部と、
前記交換レンズと通信する第2通信部とを備え、
前記第1又は第2制御部は、像ぶれ補正を行う補正能力の高さに応じて、前記交換レンズと前記カメラ本体とのうちの前記補正能力が高い一方を選択し、
前記レンズ駆動部及び前記素子駆動部において、前記選択された一方の駆動部は、所定範囲内の像ぶれに対して像ぶれ補正を行い、
前記選択された一方ではない他方の駆動部は、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対して像ぶれ補正を行い、
前記第1及び第2制御部において前記選択された一方の制御部は、前記選択された一方の補正能力に基づいて、像ぶれに対するぶれ補正量を演算し、
前記像ぶれが前記所定範囲を超える場合、当該一方の制御部は、前記第1及び第2通信部を介して他方の制御部に、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対するぶれ補正量を送信し、
前記他方の制御部は、前記一方の制御部から受信されるぶれ補正量に基づいて、前記像ぶれの残り分に対する像ぶれ補正を前記他方の駆動部に行わせる
撮像装置。」

2 補正の適否
本件補正のうち請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「一方の制御部」について、「当該一方に設けられたジャイロセンサによる検出結果に応じて、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対するぶれ補正量を算出して、」と限定し、「第1及び第2通信部を介して他方の制御部に」「送信」する「ぶれ補正量」について、「算出した」と限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平11−101998号公報(以下「引用文献1」という)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【0022】(カメラボディ)CCD13は、撮影光学系を透過した被写体像を画像情報に変換する光電変換素子である。CCD13は、蓄積した画像データを、ボディ側CPU4に出力する。
【0023】振動検出器7は、カメラボディ1の振動状態を検知するセンサなどである。振動検出器7は、例えば、カメラボディ1に生じるブレを検出し、このブレに応じた角速度信号、角加速度信号又は加速度信号(以下、ブレ検出信号という)を出力する角速度センサ、角加速度センサ又は加速度センサなどである。振動検出器7は、図1に示すように、ピッチング方向のブレを検出するセンサ7xと、ヨーイング方向のブレを検出するセンサ7yとからなり、それぞれセンサ周りの信号を処理する処理回路を備えている。
【0024】ボディ側CPU4は、カメラボディ1内に設けられた中央処理部である。ボディ側CPU4は、例えば、CCD13が蓄積した画像データをデータ圧縮処理したり、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量をブレデータとして演算したりする。また、ボディ側CPU4は、画像データとこの画像データを出力したときのブレデータとに基づいて、画像処理によって像面をシフトするように補正し、被写体像をブレのない元の画像に修復する。さらに、ボディ側CPU4は、ボディ側切替スイッチ5の切替動作によって使用者が選択した補正モードを検出したり、ROM20に記憶したカメラボディ1に関する固有データを読み出したりする。ボディ側CPU4は、演算したブレ補正量をブレデータとして記憶したり、圧縮した画像データを書き込んだりするメモリ部を備えている。ボディ側CPU4には、ボディ側切替スイッチ5と、振動検出器7と、メインCPU12と、CCD13と、ROM20とが接続されている。また、ボディ側CPU14は、電気接点群6を介してシリアル通信によって、レンズ側CPU3と通信の授受を行う。」

「【0028】(交換レンズ)図1及び図2に示すブレ補正光学系14は、撮影光学系の少なくとも一部を構成し、撮影光学系の光路を変更する光学系である。ブレ補正光学系14は、例えば、光軸に対して直交又は略直交する方向に駆動することによって、光学的に像シフトしブレを補正するブレ補正レンズである。
【0029】レンズ側駆動部9は、ブレ補正光学系14を駆動するためのものである。レンズ側駆動部9は、例えば、光軸に対して直交又は略直交する方向にブレ補正光学系14を電磁駆動方式により駆動するボイスコイルモータ(以下、VCMという)である。レンズ側駆動部9は、図1に示すように、ブレ補正光学系14に対してピッチ方向(y軸方向)の駆動力を発生するVCM9xと、ヨー方向(x軸方向)の駆動力を発生するVCM9yとからなる。VCM9x,9yは、例えば、第1のヨークと、この第1のヨークとの間に磁界を形成するマグネットと、第1のヨークとマグネットとの間に配置されたコイルと、マグネットを固定する第2のヨークとを備えている。
【0030】振動検出器11は、交換レンズ2の振動状態を検知するセンサなどである。振動検出器11は、交換レンズ2に生じるブレを検出し、このブレに応じたブレ検出信号を出力する角速度センサ、角加速度センサ又は加速度センサなどである。振動検出器11は、ピッチング方向のブレを検出するセンサ11xと、ヨーイング方向のブレを検出するセンサ11yとからなり、それぞれセンサ周りの信号を処理する処理回路を備えている。」

「【0032】レンズ側CPU3は、交換レンズ3内に設けられた中央処理部である。レンズ側CPU3は、例えば、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量を演算したり、このブレ補正量に基づいて、レンズ側駆動部9の駆動又は駆動停止を制御したりする。また、レンズ側CPU3は、レンズ側切替スイッチ10が選択した補正モードを検出したり、ROM20に記憶したカメラボディ1に関する固有データを読み出したりする。レンズ側CPU3には、レンズ側駆動部9と、レンズ側切替スイッチ10と、振動検出器11と、レンズ側補正レンズ位置検出部17と、測距エンコーダ18と、ROM19、メインCPU21とが接続されている。」

「【0039】S140において、補正モード1処理が実行される。図7は、本発明の第1実施形態に係るカメラシステムにおける補正モード1の処理を説明するフローチャートである。
【0040】S141において、交換レンズ2側のブレ補正機能がOFF動作し、カメラボディ1側のブレ補正機能がON動作する。ボディ側CPU4は、レンズ側CPU3にブレ補正機能を無効にするために、ブレ補正停止のコマンドを出力する。レンズ側CPU3は、このコマンドを処理し、レンズ側駆動部9の状態を電気接点群6を介して、ボディ側CPU4に出力する。一方、ボディ側CPU4は、画像データとこの画像データを出力したときのブレデータとに基づいて、被写体像をブレのない画像に修復する。ボディ側CPU4は、カメラボディ1側のブレ補正装置の作動状態を、電気接点群6を介してレンズ側CPU3に出力する。
【0041】S142において、カメラボディ1側のブレ補正装置が補正量の限界に達したか否かを判断する。ボディ側CPU4は、ブレ振幅が大きいために、カメラボディ1側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断する。カメラボディ1側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、ボディ側CPU4は、ブレ補正開始のコマンドをレンズ側CPU3に出力し、S143に進む。カメラボディ1側のブレ補正装置が補正量の限界に達していないときには、リターンする。
【0042】S143において、交換レンズ2側のブレ補正機能が動作を開始する。レンズ側CPU3は、ボディ側CPU4が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、レンズ側駆動部9を駆動開始する。その結果、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、交換レンズ2側のブレ補正光学系14が補正する。なお、レンズ側CPU3は、レンズ側駆動部9の制御状態をボディ側CPU4に伝達する。
【0043】S150において、補正モード1処理が実行される。図8は、本発明の第1実施形態に係るカメラシステムにおける補正モード2の処理を説明するフローチャートである。
【0044】S151において、交換レンズ2側のブレ補正装置がON動作し、カメラボディ1側のブレ補正装置がOFF動作する。ボディ側CPU4は、カメラボディ1側のブレ補正動作を行わず(停止し)、ブレ補正開始のコマンドをレンズ側CPU3に出力する。レンズ側CPU3は、このコマンドを処理し、レンズ側切替スイッチ10が選択した補正モードにかかわらず、ボディ側切替スイッチ5が選択した補正モードに基づいて、ブレ補正量を演算してレンズ側駆動部9を駆動制御する。その結果、カメラボディ1側のブレ補正装置と交換レンズ2側のブレ補正装置とが独立して動作するのを防止することができる。なお、レンズ側CPU3は、レンズ側駆動部9の制御状態をボディ側CPU4に伝達する。
【0045】S152において、交換レンズ2側のブレ補正装置が補正量の限界に達したか否かを判断する。レンズ側CPU3は、ブレの振幅が大きいために、交換レンズ2側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断する。交換レンズ2側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、レンズ側CPU3は、ブレ補正開始のコマンドをボディ側CPU4に出力し、S153に進む。交換レンズ2のブレ補正装置が補正量の限界に達していないときには、リターンする。
【0046】S153において、カメラボディ1側のブレ補正機能が動作を開始する。ボディ側CPU4は、レンズ側CPU3が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、画像データとこの画像データを出力したときのブレデータとから、被写体像をブレのない画像に修復する。その結果、交換レンズ2側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正する。なお、ボディ側CPU4は、レンズ側駆動部9の制御状態をボディ側CPU4に伝達する。」

「【0048】S161において、カメラボディ1側及び交換レンズ2側の補正能力及び分解能に関する情報が通信される。ボディ側CPU4は、カメラボディ1側のブレ補正装置の補正能力に関する情報(判定項目)をROM20から読み出して、メインCPU12に送信する。一方、レンズ側CPU3は、交換レンズ2側のブレ補正装置の補正能力に関する情報(判定項目)をROM19から読み出して、電気接点群6を介してメインCPU12に送信する。ブレ補正装置の補正能力に関する情報は、例えば、補正可能な最大及び最小範囲(補正ストローク)、補正分解能(精度)、ブレ補正の応答速度(ブレ補正装置の周波数特性)などの少なくとも一つである。また、ボディ側CPU4及びレンズ側CPU3は、ブレ補正を有効にする際の消費電力に関する情報を、ROM20及びROM19からをそれぞれ読み出して、メインCPU12に送信する。」

「【0052】例えば、メインCPU12は、センサから出力されたブレの振幅が大きいときには、補正範囲がより広いブレ補正装置を優先し、ブレ振幅が小さいときには、分解能がより高いブレ補正装置を優先する。また、メインCPU12は、レンズの焦点距離も参照し、焦点距離が所定値よりも大きいか否かを判断する。その結果、所定値以上に焦点距離が長いときには、角度ブレの要因が大きいために、メインCPU12は、結像面距離をおいたところにセンサを有する交換レンズ2側のブレ補正装置を優先する。一方、所定値よりも被写体距離が短い(至近距離)ときには、カメラ本体がカメラを中心に角速度を生じない方向に移動して生じる累進ブレ(平行ブレ)の影響が大きくなる。このために、メインCPU12は、結像面距離に近いところにセンサを有するカメラボディ1側のブレ補正装置を優先する。このように、メインCPU12は、判定項目を総括して、より優先度の高い適切なカメラボディ1側又は交換レンズ2側のブレ補正装置を選択し、撮影状況に応じていずれか一方に動作を指示する。
【0053】S170において、メインCPU12は、補正モード1又は補正モード2のいずれか一方を選択する。メインCPU12が補正モード1を選択したときには、S140に進み、メインCPU12が補正モード2を選択したときには、S150に進む。」

「【0065】〔第3実施形態〕図11は、本発明の第3実施形態に係るカメラシステムにおけるブロック図である。
(カメラシステム)本発明の第3実施形態に係るカメラシステムは、図11に示すように、ボディ側CPU4、ボディ側切替スイッチ5、振動検出器7、ボディ側駆動部8、メインCPU12、CCD13、CCD位置検出部16及びROM20などを備えるカメラボディ1と、このカメラボディ1に着脱自在に装着され、レンズ側CPU3、レンズ側駆動部9、レンズ側切替スイッチ10、振動検出器11、ブレ補正光学系14、レンズ側補正レンズ位置検出部17、ROM19及びメインCPU21などを備える交換レンズ2とから構成されている。ボディ側ブレ補正装置は、振動検出器7、ボディ側駆動部8、メインCPU12、CCD13及びCCD位置検出部16などにより構成されている。
【0066】(カメラボディ)ボディ側駆動部8は、CCD13を駆動するためのものである。ボディ側駆動部8は、例えば、光軸に対して直交又は略直交する方向にCCD13を電磁駆動方式によって駆動するVCMである。
【0067】ボディ側CPU4は、カメラボディ1内に設けられた中央処理部である。ボディ側CPU4は、例えば、CCD13が蓄積した画像データをデータ圧縮処理したり、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量を演算したり、このブレ補正量及びCCD13の画像データに基づいて、被写体像をブレのない画像に修復したり、ボディ側切替スイッチ5の切替動作によって使用者が選択した補正モードを検出したりする。ボディ側CPU4は、演算したブレ補正量をブレデータとして記憶したり、圧縮した画像データを書き込んだりするメモリ部を備えている。ボディ側CPU4には、ボディ側切替スイッチ5と、振動検出器7と、ボディ側駆動部8と、メインCPU12と、CCD位置検出部16と、ROM20とが接続されている。」

【0024】を参照しつつ、図11をみると、交換レンズ2はボディ側CPU4との通信を可能とする交換レンズ2側の電気接点群6を備え、及びカメラボディ1はレンズ側CPU3との通信が可能とするカメラボディ1側の電気接点群6を備えていることが、把握できる。


イ したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
「ボディ側CPU4、ボディ側切替スイッチ5、振動検出器7、ボディ側駆動部8、メインCPU12、CCD13、CCD位置検出部16及びROM20などを備えるカメラボディ1と、このカメラボディ1に着脱自在に装着され、レンズ側CPU3、レンズ側駆動部9、レンズ側切替スイッチ10、振動検出器11、ブレ補正光学系14、レンズ側補正レンズ位置検出部17、ROM19及びメインCPU21などを備える交換レンズ2とから構成され、ボディ側ブレ補正装置は、振動検出器7、ボディ側駆動部8、メインCPU12、CCD13及びCCD位置検出部16などにより構成され、(【0065】)
振動検出器7は、カメラボディ1に生じるブレを検出し、このブレに応じた角速度信号を出力する角速度センサであり、(【0023】)
振動検出器11は、交換レンズ2に生じるブレを検出し、このブレに応じたブレ検出信号を出力する角速度センサであり、(【0030】)
レンズ側駆動部9は、光軸に対して直交又は略直交する方向にブレ補正光学系14を駆動し、(【0029】)
ボディ側駆動部8は、CCD13を駆動するためのものであり、光軸に対して直交又は略直交する方向にCCD13を駆動し、(【0066】)
レンズ側CPU3は、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量を演算し、このブレ補正量に基づいて、レンズ側駆動部9の駆動又は駆動停止を制御し、(【0032】)
ボディ側CPU4は、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量を演算し、このブレ補正量及びCCD13の画像データに基づいて、被写体像をブレのない画像に修復し、(【0067】)
CCD13は、少なくとも一部をブレ補正光学系14で構成する撮影光学系を透過した被写体像を画像情報に変換する光電変換素子であり、(【0022】、【0028】)
交換レンズ2はボディ側CPU4との通信を可能とする交換レンズ2側の電気接点群6を備え、及びカメラボディ1はレンズ側CPU3との通信が可能とするカメラボディ1側の電気接点群6を備え、(図11)
ボディ側CPU4は、カメラボディ1側のブレ補正装置の補正能力に関する情報(判定項目)をメインCPU12に送信し、一方、レンズ側CPU3は、交換レンズ2側のブレ補正装置の補正能力に関する情報(判定項目)をメインCPU12に送信し、(【0048】)
メインCPU12は、判定項目を総括して、より優先度の高い適切なカメラボディ1側又は交換レンズ2側のブレ補正装置を選択し、撮影状況に応じていずれか一方に動作を指示し、(【0052】)
メインCPU12は、補正モード1又は補正モード2のいずれか一方を選択し、(【0053】)
補正モード1では、(【0039】)
交換レンズ2側のブレ補正機能がOFF動作し、カメラボディ1側のブレ補正機能がON動作し、(【0040】)
カメラボディ1側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、カメラボディ1側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、ボディ側CPU4は、ブレ補正開始のコマンドをレンズ側CPU3に出力し、(【0041】)
交換レンズ2側のブレ補正機能が動作を開始し、レンズ側CPU3は、ボディ側CPU4が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、レンズ側駆動部9を駆動開始し、その結果、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、交換レンズ2側のブレ補正光学系14が補正し、(【0042】)
補正モード2では、(【0043】)
交換レンズ2側のブレ補正装置がON動作し、カメラボディ1側のブレ補正装置がOFF動作し、(【0044】)
交換レンズ2側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、交換レンズ2側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、レンズ側CPU3は、ブレ補正開始のコマンドをボディ側CPU4に出力し、(【0045】)
カメラボディ1側のブレ補正機能が動作を開始し、ボディ側CPU4は、レンズ側CPU3が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、交換レンズ2側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正する(【0046】)
カメラシステム。(【0065】)」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「交換レンズ2」は、本件補正発明の「交換レンズ」に、
引用発明の「カメラボディ1」は、本件補正発明の「カメラ本体」に、
引用発明の「カメラシステム」は、本件補正発明の「撮像装置」に、
引用発明の「ブレ補正光学系14」は、本件補正発明の「像ぶれを補正するための補正レンズ」に、
引用発明の「『光軸に対して直交又は略直交する方向にブレ補正光学系14を駆動』する『レンズ側駆動部9』」は、本件補正発明の「前記補正レンズを光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行うレンズ駆動部」に、
引用発明の「『ブレ補正量に基づいて、レンズ側駆動部9の駆動又は駆動停止を制御』する『レンズ側CPU3』」は、本件補正発明の「前記レンズ駆動部による像ぶれ補正を制御する第1制御部」に、
引用発明の「ボディ側CPU4との通信を可能とする交換レンズ2側の電気接点群6」は、本件補正発明の「前記カメラ本体と通信する第1通信部」に、
引用発明の「『少なくとも一部をブレ補正光学系14で構成する撮影光学系を透過した被写体像を画像情報に変換する光電変換素子であ』る『CCD13』」は、本件補正発明の「前記交換レンズを介して形成された被写体像を撮像して画像データを生成する撮像素子」に、
引用発明の「レンズ側CPU3との通信が可能とするカメラボディ1側の電気接点群6」は、本件補正発明の「前記交換レンズと通信する第2通信部」に、
引用発明の「角速度センサ」は、本件補正発明の「ジャイロセンサ」に、
それぞれ相当する。

イ 本件補正発明の「前記撮像素子を光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行う素子駆動部と、前記素子駆動部による像ぶれ補正を制御する第2制御部」の構成について

引用発明の「ボディ側ブレ補正装置は、振動検出器7、ボディ側駆動部8、メインCPU12、CCD13及びCCD位置検出部16などにより構成され、」「ボディ側駆動部8は、CCD13を駆動するためのものであり、光軸に対して直交又は略直交する方向にCCD13を駆動」するものである。
そうすると、光軸に対して直交又は略直交する方向にCCD13を駆動するボディ側駆動部8は、ボディ側ブレ補正装置の構成の1つといえ、メインCPU12とともにボディ側ブレ補正を行うものといえる。
したがって、引用発明は上記構成を備えている。

ウ 本件補正発明の「前記第1又は第2制御部は、像ぶれ補正を行う補正能力の高さに応じて、前記交換レンズと前記カメラ本体とのうちの前記補正能力が高い一方を選択し」の構成について

引用発明の「メインCPU12は、」「ブレ補正装置の補正能力に関する情報」である「判定項目を総括して、より優先度の高い適切なカメラボディ1側又は交換レンズ2側のブレ補正装置を選択し、撮影状況に応じていずれか一方に動作を指示し」ている。
したがって、引用発明は上記構成を備えている。

エ 本件補正発明の「前記レンズ駆動部及び前記素子駆動部において、前記選択された一方の駆動部は、所定範囲内の像ぶれに対して像ぶれ補正を行い、前記選択された一方ではない他方の駆動部は、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対して像ぶれ補正を行い」の構成について

引用発明の「メインCPU12は、判定項目を総括して、より優先度の高い適切なカメラボディ1側又は交換レンズ2側のブレ補正装置を選択し、撮影状況に応じていずれか一方に動作を指示し、メインCPU12は、補正モード1又は補正モード2のいずれか一方を選択し」ている。
そして、引用発明の「補正モード1」は、「カメラボディ1側のブレ補正機能がON動作し、」「カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、交換レンズ2側のブレ補正光学系14が補正し」、「補正モード2」は、「交換レンズ2側のブレ補正装置がON動作し、」「レンズ2側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正する」ものである。
したがって、引用発明は上記構成を備えている。

オ 本件補正発明の「前記第1及び第2制御部において前記選択された一方の制御部は、前記選択された一方の補正能力に基づいて、像ぶれに対するぶれ補正量を演算し」の構成について

引用発明の「カメラボディ1」の「振動検出器7は、カメラボディ1に生じるブレを検出し、このブレに応じた角速度信号を出力する角速度センサであり、」「ボディ側CPU4は、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量を演算し、」「交換レンズ2」の「振動検出器11は、交換レンズ2に生じるブレを検出し、このブレに応じたブレ検出信号を出力する角速度センサであり、」「レンズ側CPU3は、ブレ検出信号に基づいてブレ補正量を演算し」ている。
したがって、引用発明は上記構成を備えている。

カ 引用発明の「カメラボディ1」の「振動検出器7は、カメラボディ1に生じるブレを検出し、このブレに応じた角速度信号を出力する角速度センサであり、」「カメラボディ1側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、カメラボディ1側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、ボディ側CPU4は、ブレ補正開始のコマンドをレンズ側CPU3に出力し、交換レンズ2側のブレ補正機能が動作を開始し、レンズ側CPU3は、ボディ側CPU4が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、レンズ側駆動部9を駆動開始し、その結果、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、交換レンズ2側のブレ補正光学系14が補正し」、「交換レンズ2」の「振動検出器11は、交換レンズ2に生じるブレを検出し、このブレに応じたブレ検出信号を出力する角速度センサであり、」「交換レンズ2側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、交換レンズ2側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、レンズ側CPU3は、ブレ補正開始のコマンドをボディ側CPU4に出力し、カメラボディ1側のブレ補正機能が動作を開始し、ボディ側CPU4は、レンズ側CPU3が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、交換レンズ2側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正する」と、本件補正発明の「前記像ぶれが前記所定範囲を超える場合、当該一方の制御部は、当該一方に設けられたジャイロセンサによる検出結果に応じて、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対するぶれ補正量を算出して、前記第1及び第2通信部を介して他方の制御部に、前記算出したぶれ補正量を送信し、前記他方の制御部は、前記一方の制御部から受信されるぶれ補正量に基づいて、前記像ぶれの残り分に対する像ぶれ補正を前記他方の駆動部に行わせる」とは、「前記像ぶれが前記所定範囲を超える場合、当該一方の制御部は、当該一方に設けられたジャイロセンサによる検出結果に応じて、前記所定範囲を超える像ぶれを判断して、前記第1及び第2通信部を介して他方の制御部に、コマンドを送信し、前記他方の制御部は、前記一方の制御部から受信されるコマンドに基づいて、前記像ぶれの残り分に対する像ぶれ補正を前記他方の駆動部に行わせる」の点で一致する。

キ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「交換レンズとカメラ本体を備えた撮像装置であって、
前記交換レンズは、
像ぶれを補正するための補正レンズと、
前記補正レンズを光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行うレンズ駆動部と、
前記レンズ駆動部による像ぶれ補正を制御する第1制御部と、
前記カメラ本体と通信する第1通信部とを備え、
前記カメラ本体は、
前記交換レンズを介して形成された被写体像を撮像して画像データを生成する撮像素子と、
前記撮像素子を光軸と垂直な面内で移動させることにより像ぶれ補正を行う素子駆動部と、
前記素子駆動部による像ぶれ補正を制御する第2制御部と、
前記交換レンズと通信する第2通信部とを備え、
前記第1又は第2制御部は、像ぶれ補正を行う補正能力の高さに応じて、前記交換レンズと前記カメラ本体とのうちの前記補正能力が高い一方を選択し、
前記レンズ駆動部及び前記素子駆動部において、前記選択された一方の駆動部は、所定範囲内の像ぶれに対して像ぶれ補正を行い、
前記選択された一方ではない他方の駆動部は、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対して像ぶれ補正を行い、
前記第1及び第2制御部において前記選択された一方の制御部は、前記選択された一方の補正能力に基づいて、像ぶれに対するぶれ補正量を演算し、
前記像ぶれが前記所定範囲を超える場合、当該一方の制御部は、当該一方に設けられたジャイロセンサによる検出結果に応じて、前記所定範囲を超える像ぶれを判断して、前記第1及び第2通信部を介して他方の制御部に、コマンドを送信し、
前記他方の制御部は、前記一方の制御部から受信されるコマンドに基づいて、前記像ぶれの残り分に対する像ぶれ補正を前記他方の駆動部に行わせる
撮像装置。」

【相違点】
第1及び第2制御部において、本件補正発明では、所定範囲を超える像ぶれ「の残り分に対するぶれ補正量を算出」して、他方の制御部に、「前記算出したぶれ補正量」を送信し、他方の制御部は、一方の制御部から「ぶれ補正量」を受信しているのに対し、引用発明では、一方のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、一方のブレ補正装置が補正量の限界に達したとき、一方のCPUから他方のCPUに「コマンド」を出力するものであるものの、そのようなものでない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア 相違点について
(ア)引用文献1の【0048】には「カメラボディ1側及び交換レンズ2側の補正能力及び分解能に関する情報が通信される」、「ブレ補正装置の補正能力に関する情報は、例えば、補正可能な最大及び最小範囲(補正ストローク)、補正分解能(精度)、ブレ補正の応答速度(ブレ補正装置の周波数特性)などの少なくとも一つである。」と記載されている。
そうすると、交換レンズとカメラ本体とは、補正可能な最大及び最小範囲に関する情報が通信されているといえる。

(イ)ここで、引用発明は、「カメラボディ1側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、カメラボディ1側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、ボディ側CPU4は、ブレ補正開始のコマンドをレンズ側CPU3に出力し、交換レンズ2側のブレ補正機能が動作を開始し、レンズ側CPU3は、ボディ側CPU4が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、レンズ側駆動部9を駆動開始し、その結果、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、交換レンズ2側のブレ補正光学系14が補正し、」「交換レンズ2側のブレ補正可能範囲をブレ補正量が越えたか否かを判断し、交換レンズ2側のブレ補正装置が補正量の限界に達したときには、レンズ側CPU3は、ブレ補正開始のコマンドをボディ側CPU4に出力し、カメラボディ1側のブレ補正機能が動作を開始し、ボディ側CPU4は、レンズ側CPU3が出力したブレ補正開始のコマンドに基づいて、交換レンズ2側のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを、カメラボディ1側のブレ補正装置によって補正する」ものである。
そして、上記(ア)を考慮すると、ブレ補正開始のコマンドを受け取った側は、すでに相手側の「補正可能な最大範囲に関する情報」を受け取っていると考えるのが自然で、そうすると、自身の側にある「振動検出器」の出力から、相手側の「補正可能な最大範囲」を差し引いた量のブレを補正すると考えるのが自然である。

(ウ)そうすると、結局、相違点とは、一方の制御部側(以下「メイン側」という。)のブレ補正装置によって補正できなかった補正可能範囲を越えるブレを補正する他方の制御部側(以下「サブ側」という。)のブレ補正量の算出を、メイン側の「振動検出器」の出力に基づいて行うか、サブ側の「振動検出器」の出力に基づいて行うかの差に過ぎず、メイン側の「振動検出器」の出力に基づいて算出することは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。

イ そして、相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
ア 本件審判請求人は、令和3年10月4日付けで提出された審判請求書において、
(ア)「引用文献1には、(例えばカメラボディ1側のブレ補正装置が交換レンズ2側よりも優れている場合に)カメラボディ1側のブレ補正装置のブレ検出及び補正演算の機能を、交換レンズ2側のブレ補正装置に応用するような技術的思想は、開示、示唆されておりません。」、
(イ)「また、引用文献1には、「レンズ側CPU3がボディ側CPU4から(装置の作動状態ではなく)ブレ補正量を受信する」ような開示、示唆もありません。」、
(ウ)「本願発明の特徴(F),(G)によると、上述したように、例えばカメラ本体がジャイロセンサの性能の観点から選択された際にカメラ本体で補正しきれる所定範囲を超えるぶれ量にわたって、引用文献1の手法で想定されるような事態よりも補正効果を高く得られ(本願の図16等ご参照)、交換レンズ及びカメラ本体の手ぶれ補正機能がより有効に活用できる撮像装置を提供することができ(段落0101−0102,0004)、この点において、本願発明は引用文献1に対して有利な効果を有します。すなわち、本願発明は、カメラ本体と交換レンズから選択された補正能力が高い一方の制御部によって当該一方におけるジャイロセンサの検出結果に応じてぶれ補正量を演算するため(特徴(E),(F))、所定範囲を超えないぶれ量に対するぶれ補正量と所定範囲を超えるぶれ量の残り分に対するぶれ補正量とを各々高精度に、且つ互いに正確に算出することが可能となります。」
旨主張している。

イ 上記主張について、以下検討する。
(ア)上記(ア)及び(イ)の主張については、前記(4)で説示したとおりである。
(イ)本件補正発明は、(第1又は第2制御部が、)ジャイロセンサの性能の観点から一方を選択することについて特定されてないことから、上記(ウ)における、本件補正発明の作用効果に関する主張は、本件補正発明の構成に基づかないものである。すなわち、本件補正発明は「第1又は第2制御部は、像ぶれ補正を行う補正能力の高さに応じて、交換レンズとカメラ本体とのうちの補正能力が高い一方を選択」するものであり、本願の発明の詳細な説明の【0042】には「手ぶれ補正能力が高いことは、手ぶれ補正信号に対して、追従誤差が少ないこと、例えば、高周波成分への追従性、応答性がよいことを基準に、或いは、ジャイロセンサ184、224から取得される手ぶれ検出角度情報の精度を基準に、判断される。」と記載されているのであって、「像ぶれ補正を行う補正能力が高いこと」と、「ジャイロセンサから取得される手ぶれ検出角度情報の精度が高いこと」とは同義であるとまではいえない。

以上から、審判請求人の上記主張は、採用することができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年10月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年4月8日の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由の概略は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。



引用文献1.特開平11−101998号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)で記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明から、「一方の制御部」について、「当該一方に設けられたジャイロセンサによる検出結果に応じて、前記所定範囲を超える像ぶれの残り分に対するぶれ補正量を算出して、」に係る限定事項、及び「第1及び第2通信部を介して他方の制御部に」「送信」する「ぶれ補正量」について、「算出した」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-12 
結審通知日 2022-09-13 
審決日 2022-09-30 
出願番号 P2020-521616
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 吉野 三寛
野村 伸雄
発明の名称 撮像装置  
代理人 松谷 道子  
代理人 竹内 寛  
代理人 岡部 博史  
代理人 岡部 英隆  

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