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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01G 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H01G |
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管理番号 | 1392687 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-10-15 |
確定日 | 2022-12-14 |
事件の表示 | 特願2018−553067「ハイブリッドコンデンサ及びコンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日国際公開、WO2017/180278、令和 1年 6月13日国内公表、特表2019−516241〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年3月14日(パリ条約による優先権主張2016年4月11日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概略は以下のとおりである。 令和2年11月 9日付け:拒絶理由通知 令和3年 1月 6日 :意見書、手続補正書の提出 令和3年 6月11日付け:拒絶査定 令和3年10月15日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和4年 2月 2日 :上申書の提出 第2 令和3年10月15日にされた手続補正について補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年10月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正による特許請求の範囲の記載 本件補正による特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明」という。)の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。 「加工要素を含み、 前記加工要素は: 表面に誘電体及び該誘電体の表面にアノード導電性ポリマ層を含むアノードと; カソード導電性ポリマ層を含むカソードと; 前記アノード導電性ポリマ層と前記カソード導電性ポリマ層との間の導電性セパレータであって、前記アノード導電性ポリマ層および前記カソード導電性ポリマ層に物理的に接触するが、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される、導電性セパレータと; 前記アノードと電気的に接触するアノードリードと; 前記カソードと電気的に接触するカソードリードと; 前記アノードと前記カソードとの間の電解液と; を含むコンデンサ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和3年1月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおである。 「加工要素を含み、 前記加工要素は: 表面に誘電体及び該誘電体の表面にアノード導電性ポリマ層を含むアノードと; カソード導電性ポリマ層を含むカソードと; 前記アノード導電性ポリマ層と前記カソード導電性ポリマ層との間の導電性セパレータであって、前記アノード導電性ポリマ層および前記カソード導電性ポリマ層に物理的に接触する導電性セパレータと; 前記アノードと電気的に接触するアノードリードと; 前記カソードと電気的に接触するカソードリードと; 前記アノードと前記カソードとの間の電解液と; を含むコンデンサ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「導電性セパレータ」について、「相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される」の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献及びその記載事項 ア 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平07−283086号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様)。 「【0036】 (実施例1) 以下、本発明の第1の実施例について図面を用いながら詳細に説明する。 【0037】 図1は、本実施例における電解コンデンサの部分断面図を示す。 図1において、1は陽極箔、2は陰極箔、3は誘電体酸化皮膜、4は導電体層、5は電解質、6は導電性セパレータである。 【0038】 つまり、本実施例においては、表面に誘電体酸化皮膜3が形成された陽極箔1と、表面に誘電体酸化皮膜3がない陰極箔2の間に導電性セパレータ6がはさまれ、これを介して電解質5として電解液が誘電体酸化皮膜3と導電性高分子層4の間に含浸されている構成である。 【0039】 以下、本実施例の電解コンデンサの作製方法について詳細に説明する。 具体的には、マニラ麻製コンデンサ用低密度セパレータ紙(0.03g/cm2)を、過マンガン酸カリウム(0.30M)水溶液に浸漬後すぐにピロールモノマー(5M)硫酸(0.2M)を含むエタノール溶液に浸漬し、過マンガン酸カリウムとピロールモノマーの化学的反応により表面(浸漬された面)に導電性高分子とマンガン酸化物からなる複合導電層を有する導電性複合物である導電性セパレータ6を得た。 【0040】 次に、エッチドアルミニウム箔からなる陰極箔2をピロールモノマー(0.25M)、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム(0.10M)、水からなる重合用液中に配置し、定電圧5Vを印加して電解重合反応を行い、洗浄乾燥後、導電体層4として導電性高分子層を形成した。 【0041】 一方で、約70℃のアジピン酸アンモニウム(3重量部)水溶液中で定電圧を印加し、陽極酸化により、エッチドアルミニウム箔からなる陽極箔1の表面に誘電体酸化皮膜3を形成した。 【0042】 次に、表面に導電性高分子層を形成した陰極箔2と表面に誘電体酸化皮膜3を備えた陽極箔1とを、導電性複合物からなる導電性セパレータ6を介して捲回した後、再化成を行って陽極箔1の表面に形成された誘電体酸化皮膜3の修復を行った。」 「【0044】 この後、洗浄乾燥を行い、γ−ブチロラクトンを溶媒としてフタル酸モノメチルトリエチルアンモニウム(20重量部)を含有する電解液を電解質5として減圧含浸させ、外装を施して定格16V、10μFの電解コンデンサを完成させた。」 「【0053】 又、本実施例では、陰極箔2の表面に導電性高分子層が形成されているが、陰極箔2の代わりに陽極箔1の表面に形成された誘電体酸化皮膜3の表面、あるいは陽極箔1の表面に形成された誘電体酸化皮膜3の表面と陰極箔2の表面との両方に導電性高分子層が形成されていても、導電性高分子層によって電解コンデンサが有する等価直列抵抗が低減され、それによってインピーダンスの低減化が可能となる。」 「【0085】 (実施例5) 以下、本発明の第5の実施例について詳細に説明する。 【0086】 本実施例においては、エッチドアルミニウム箔からなる陰極箔2は何も処理をせず、表面に誘電体酸化皮膜3を形成したエッチドアルミニウム箔からなる陽極箔1を過マンガン酸カリウム(0.30M)水溶液に浸漬後、ピロールモノマー(5M)硫酸(0.2M)を含むエタノール溶液に浸漬し、過マンガン酸カリウムとピロールモノマーの化学的反応により、陽極箔1の表面に形成された誘電体酸化皮膜3の表面に導電体層4として導電性高分子とマンガン酸化物からなる複合導電層を形成した以外、実施例3と同様に電解コンデンサを5個完成させ、測定を行った。」 図1 イ 上記記載より、実施例1に着目すると、引用文献1には電解コンデンサに関して次の事項が記載されている。 (ア)【0037】、【0038】及び図1によれば、実施例1の電解コンデンサは、表面に誘電体酸化皮膜3が形成された陽極箔1と、表面に導電性高分子層4が形成された陰極箔2の間に導電性セパレータ6がはさまれ、これを介して電解質5として電解液が誘電体酸化皮膜3と導電性高分子層4の間に含浸されている。 (イ)【0039】ないし【0044】によれば、電解コンデンサは次のように作製したものである。 過マンガン酸カリウムとピロールモノマーの化学的反応により表面に導電性高分子とマンガン酸化物からなる複合導電層を有する導電性複合物である導電性セパレータ6を得て(【0039】)、 陰極箔2をピロールモノマー、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、水からなる重合用液中に配置して電解重合反応を行い導電性高分子層4を形成し(【0040】)、 陽極箔1の表面に誘電体酸化皮膜3を形成し(【0041】)、 表面に導電性高分子層4を形成した陰極箔2と表面に誘電体酸化皮膜3を備えた陽極箔1とを、導電性複合物からなる導電性セパレータ6を介して捲回した後(【0042】)、 電解液を電解質5として減圧含浸させ、外装を施して作製した(【0044】)。 ウ 以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「表面に誘電体酸化皮膜3が形成された陽極箔1と、表面に導電性高分子層4が形成された陰極箔2の間に導電性セパレータ6がはさまれ、これを介して電解質5として電解液が誘電体酸化皮膜3と導電性高分子層4の間に含浸されている電解コンデンサであって、 過マンガン酸カリウムとピロールモノマーの化学的反応により表面に導電性高分子とマンガン酸化物からなる複合導電層を有する導電性複合物である導電性セパレータ6を得て、 陰極箔2をピロールモノマー、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、水からなる重合用液中に配置して電解重合反応を行い導電性高分子層4を形成し、 陽極箔1の表面に誘電体酸化皮膜3を形成し、 表面に導電性高分子層4を形成した陰極箔2と表面に誘電体酸化皮膜3を備えた陽極箔1とを、導電性複合物からなる導電性セパレータ6を介して捲回した後、 電解液を電解質5として減圧含浸させ、外装を施して作製した電解コンデンサ。」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「表面に誘電体酸化皮膜3を備えた陽極箔1」と本件補正発明とは、「表面に誘電体を含むアノード」である点で共通する。 但し、アノードが、本件補正発明は「誘電体の表面にアノード導電性ポリマ層を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。 イ 引用発明の「表面に導電性高分子層4が形成された陰極箔2」は、本件補正発明の「カソード導電性ポリマ層を含むカソード」に相当する。 ウ 引用発明は「表面に誘電体酸化皮膜3が形成された陽極箔1と、表面に導電性高分子層4が形成された陰極箔2の間に導電性セパレータ6がはさまれ」ているので、「導電性セパレータ6」は、「陽極箔1」と陰極箔2の「導電性高分子層4」との間である。 そして、本件補正発明の「前記アノード導電性ポリマ層」は「アノード」に含まれるものであるから、引用発明の「導電性セパレータ6」と本件補正発明とは、「前記アノードと前記カソード導電性ポリマ層との間の導電性セパレータ」である点で共通する。 但し、アノードが、本件補正発明は「アノード導電性ポリマ層を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。 エ 引用発明は「表面に誘電体酸化皮膜3が形成された陽極箔1と、表面に導電性高分子層4が形成された陰極箔2の間に導電性セパレータ6がはさまれ、これを介して電解質5として電解液が誘電体酸化皮膜3と導電性高分子層4の間に含浸されている電解コンデンサ」であるから、「誘電体酸化皮膜3」と「導電性高分子層4」の間に「導電性セパレータ6」がある。そして、「表面に導電性高分子層4を形成した陰極箔2と表面に誘電体酸化皮膜3を備えた陽極箔1とを、」「導電性セパレータ6を介して捲回し」ているので、「導電性高分子層4」と「導電性セパレータ6」は物理的に接触していることは明らかである。 また、引用発明は「過マンガン酸カリウムとピロールモノマーの化学的反応により表面に導電性高分子とマンガン酸化物からなる複合導電層を有する導電性複合物である導電性セパレータ6を得て、陰極箔2をピロールモノマー、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、水からなる重合用液中に配置して電解重合反応を行い導電性高分子層4を形成し」てから、「陰極箔2と」「陽極箔1とを、」「導電性セパレータ6を介して捲回し」ているので、捲回時に既に、陰極箔2の「導電性高分子層4」及び導電性セパレータ6の「複合導電層」は反応を終えて形成されており、「導電性高分子層4」と「導電性セパレータ6」は、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層が分離されるものである。 そうすると、本件補正発明と引用発明は、「前記カソード導電性ポリマ層に物理的に接触するが、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される、導電性セパレータ」である点で一致する。 但し、導電性セパレータが、本件補正発明は「前記アノード導電性ポリマ層」「に物理的に接触するが、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される」のに対して、引用発明はアノード導電性ポリマ層が特定されていない点で相違する。 オ 引用発明の「誘電体酸化皮膜3と導電性高分子層4の間に含浸されている」「電解液」は、本件補正発明の「前記アノードと前記カソードとの間の電解液」に相当する。 カ 引用発明の「電解コンデンサ」は、本件補正発明の「コンデンサ」に相当する。 そして、引用発明の「陽極箔1」、「陰極箔2」、「導電性セパレータ6」及び「電解液」は、「電解コンデンサ」の加工要素である。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、「加工要素を含み、前記加工要素は」、「アノードと」、「カソードと」、「導電性セパレータと」、「電解液と」、「を含むコンデンサ」である点で一致する。 但し、本件補正発明が「前記アノードと電気的に接触するアノードリードと;前記カソードと電気的に接触するカソードリードと;」を含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。 上記アないしカによれば、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。 (一致点) 「加工要素を含み、 前記加工要素は: 表面に誘電体を含むアノードと; カソード導電性ポリマ層を含むカソードと; 前記アノードと前記カソード導電性ポリマ層との間の導電性セパレータであって、前記カソード導電性ポリマ層に物理的に接触するが、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される、導電性セパレータと; 前記アノードと前記カソードとの間の電解液と; を含むコンデンサ。」 (相違点1) アノードが、本件補正発明は「誘電体の表面にアノード導電性ポリマ層を含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。 (相違点2) 導電性セパレータが、本件補正発明は「前記アノード導電性ポリマ層」「に物理的に接触するが、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される」のに対して、引用発明はアノード導電性ポリマ層が特定されていない点。 (相違点3) 本件補正発明が「前記アノードと電気的に接触するアノードリードと;前記カソードと電気的に接触するカソードリードと;」を含むのに対して、引用発明はそのような特定がない点。 (4)相違点についての判断 ア 上記相違点1について 引用文献1には、実施例1の記載として「あるいは陽極箔1の表面に形成された誘電体酸化皮膜3の表面と陰極箔2の表面との両方に導電性高分子層が形成されていても、導電性高分子層によって電解コンデンサが有する等価直列抵抗が低減され、それによってインピーダンスの低減化が可能となる。」(【0053】)と記載されている。 そうすると、引用発明においても、「陽極箔1」の「誘電体酸化皮膜3」の表面に導電性高分子層を形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 この点について、請求人は、アノード上での導電性ポリマの形成について、引用文献1では、次のステップが誘電体の再化成であるため、明らかに、アノード上の誘電体がコーティングされないままであることを意図している旨を主張している。(審判請求書第5頁第17〜22行) 上記主張につて検討する。 引用文献1には、実施例5として、陽極箔1の表面に形成された誘電体酸化皮膜3の表面に導電性高分子とマンガン酸化物からなる複合導電層を形成することが記載されている(【0085】、【0086】)。そして、実施例5は、陽極箔1の誘電体酸化皮膜3の表面に複合導電層を形成すること以外は、実施例3と同様に電解コンデンサを完成させたものであるから、陰極箔2と陽極箔1とを導電性セパレータ6を介して捲回するまえに、陽極箔1の誘電体酸化皮膜3の表面に複合導電層を形成し終えている。そうすると、引用発明において、捲回前に、「陽極箔1」の「誘電体酸化皮膜3」の表面に、導電性高分子層を形成することを妨げる理由はない。 よって、上記主張を採用することができない。 したがって、引用発明に基づいて上記相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 上記相違点2について 上記相違点1で検討したように、引用発明においても、「陽極箔1」の「誘電体酸化皮膜3」の表面に導電性高分子層を形成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 その際に、「陰極箔2」の「導電性高分子層4」と同様に、捲回前に「陽極箔1」の「誘電体酸化皮膜3」の表面に導電性高分子層を形成することにして、当該導電性高分子層と「導電性セパレータ6」は、物理的に接触するが、相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層が分離されるものとすることも、当業者が容易になし得たことである。 したがって、引用発明に基づいて上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 上記相違点3について 電解コンデンサにおいて、アノードと電気的に接触するアノードリードと、カソードと電気的に接触するカソードリードとを設けることは、慣用技術である。 したがって、引用発明に基づいて上記相違点3に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和3年1月6日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし110に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由] 1(2)」に記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由、概略は次のとおりである。 1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 1,7−9,12−14,18−20,23,28,31, 33−35,39−41,44−48,50,52,59, 61,64−66,69−73,80,82,83,90, 97,99,104−106,109,110 ・引用文献等 1 ●理由2(特許法第29条第2項)について ・請求項 2,3,11,38,54,55,63,101−103 ・引用文献等 1 ・請求項 4,32,49,100 ・引用文献等 1 ・請求項 5,6,15,21,22,25−27,30,37, 56−58,60,77−79,87−89,96 ・引用文献等 1 ・請求項 10,24,29,36,62,81,91,98 ・引用文献等 1 ・請求項 16,17,42,43,67,68,107,108 ・引用文献等 1 ・請求項 50,51,53,74−76,84−86,93−95, ・引用文献等 1 ・請求項 92 ・引用文献等 1 <引用文献等一覧> 1.特開平07−283086号公報 3 対比・判断 本願発明は、前記「第2の[理由]2」で検討した本件補正発明から、「相互に溶融、架橋または積層されておらず、分解により導電性ポリマの隣接層がきれいに分離される」に係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2(3)、(4)」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 清水 稔 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-07-08 |
結審通知日 | 2022-07-12 |
審決日 | 2022-07-29 |
出願番号 | P2018-553067 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01G)
P 1 8・ 56- Z (H01G) P 1 8・ 121- Z (H01G) P 1 8・ 572- Z (H01G) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
畑中 博幸 須原 宏光 |
発明の名称 | ハイブリッドコンデンサ及びコンデンサの製造方法 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |