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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1392844
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-19 
確定日 2023-01-17 
事件の表示 特願2017−121118「インターホンシステム、インターホン親機、インターホンシステムの制御方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019− 9518、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月21日の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和2年12月 2日付け:拒絶理由通知書
令和3年 2月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 3月 3日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和3年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年10月12日付け:令和3年5月10日の手続補正についての
補正の却下の決定、拒絶査定
令和4年 1月19日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
令和3年10月12日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。

1.令和3年2月8日付け手続補正書でした補正は、その補正後の請求項12、13に係る発明が、その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではないから、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

2.令和3年2月8日付け手続補正書でした補正は、その補正後の請求項4〜9、11に係る発明が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3.本願の請求項1〜3、6、9〜11に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.本願の請求項1〜3、6、9〜11に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2002−125059号公報

第3 本願発明
本願請求項1〜10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明10」という。)は、令和4年1月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
建築物の所定スペースに設置されたインターホン親機と、
前記所定スペースに対する来訪者と配達物との少なくとも一方の情報を出力するように構成された子機と、
前記子機が出力した前記情報を記録する記録装置とを備え、
前記インターホン親機は、
無線通信路を含み、かつ構内通信網を介さない伝送路を介して端末装置と通信する通信インターフェイスと、
前記記録装置に記録されている前記情報を前記通信インターフェイスを通して前記端末装置に出力する処理部とを備え、
前記子機は、ドアホン子機と、前記インターホン親機と前記構内通信網を介して接続されるロビーインターホンとを含む
ことを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記インターホン親機は、前記記録装置を備えている
請求項1記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記子機は、前記来訪者の画像を撮影するカメラを備え、
前記来訪者の情報は、前記カメラが撮影した前記来訪者の画像の情報を含む
請求項1又は2記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記建築物は集合住宅であり、前記所定スペースは住戸であって、
前記インターホン親機は、前記集合住宅における複数の住戸それぞれに設置され、
前記ロビーインターホンは、前記集合住宅の共用部分に設置され、
前記ロビーインターホンが出力した前記情報を前記複数の住戸それぞれに対応付ける制御装置を更に備える
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインターホンシステム。
【請求項5】
前記処理部は、
前記記録装置に記録されている前記情報のうち、前記インターホン親機で未対応の情報を前記端末装置に出力する
請求項1〜4のいずれか1項に記載のインターホンシステム。
【請求項6】
前記インターホン親機は、
前記情報を出力する出力装置を備え、
前記処理部は、
前記記録装置に記録されている前記情報を前記出力装置に出力する際に、前記記録装置に記録されている前記情報のうち、前記端末装置に出力した情報を前記出力装置に出力するか否かの指示を受け取るように構成されている
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインターホンシステム。
【請求項7】
前記伝送路は無線通信路であり、
前記処理部は、
前記端末装置が前記通信インターフェイスとの間で前記伝送路を通した通信が不能である領域から通信が可能である領域に入ると、前記記録装置に記録されている前記情報を前記端末装置に出力するように構成されている
請求項1〜6のいずれか1項に記載のインターホンシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインターホンシステムに備えられているインターホン親機。
【請求項9】
子機が出力した建築物の所定スペースに対する来訪者と配達物との少なくとも一方の情報を記録装置に記録するステップと、
前記所定スペースに設置されたインターホン親機が、前記記録装置に記録されている前記情報を
無線通信路を含み、かつ構内通信網を介さない伝送路を介して端末装置に出力するステップとを備え、
前記子機は、ドアホン子機と、前記インターホン親機と前記構内通信網を介して接続されるロビーインターホンとを含む
インターホンシステムの制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインターホンシステムにおける前記インターホン親機の前記処理部として機能させるためのプログラム。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下、同様。)。

「【0002】
【従来の技術】インターホンシステムには、大別して、一戸建の住宅向けの一戸建用インターホンシステムと、マンションなどの集合住宅向けの集合住宅用インターホンシステムがある。
【0003】通常、一戸建用インターホンシステムは、玄関に配設された玄関子機と、住宅の室内に配設された住戸親機とから構成されるようになっており、来訪者が玄関子機から住戸親機を呼び出し、一戸建の居住者が住戸親機によって応答することによって回線が確立され、通話などを行えるようになっている。
【0004】一方、集合住宅用インターホンシステムは、一戸建用インターホンシステムとは異なり、マンションの入口、すなわち、共同玄関に共同玄関子機が配設されるとともに、各住戸毎の玄関に配設された玄関子機と、各住戸内に配設された住戸親機とを備え、共同玄関子機と住戸親機との通話および玄関子機と住戸親機との通話の他に、共同玄関の解錠および他の住戸親機との通話および管理事務室に配設された管理事務室親機からの共有情報の配信など、一戸建用インターホンシステムとは異なる動作を行えるようになっている。
【0005】最近では、インターネットなどのネットワークの発達および携帯電話機、パーソナルコンピュータなどの通信携帯端末装置の普及により、外出によって住戸の居住者が、来訪者の呼び出しに応じられないときでも、来訪者とコミュニケーションを取ることが望まれてきており、この代表的なものに、特開平6−164746号公報に記載されているインターホンシステムが知られている。
【0006】このインターホンシステムは、住戸端末装置に電話回線と接続する転送部を設け、所定の設定を行うことにより、来訪者によって呼び出された住戸端末装置において、居住者が留守などにより応答できないとき、転送部によって携帯電話および外出先の電話などを呼び出し、来訪者の音声および映像を転送するようになっており、居住者が住戸親機において応答しなくても、来訪者とリアルタイムでコミュニケーションが取れるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のようなインターホンシステムは、一戸建て用に開発されたものである。このようなインターホンシステムを集合住宅用のインターホンシステムに組み込むことも可能であるが、基本構成は、集合住宅用インターホンに対応するものではないため、各集合住宅住戸毎に上記システムを構築しなければならず、非効率的であり、機能的ではなかった
【0008】本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたものであり、効率的で、個人に係る設備負担を軽減するとともに、機能的に来訪者と外出先の集合住宅の居住者とがリアルタイムでコミュニケーションが取ることができ、また、集合住宅の居住者が外出先より、インターホンシステムの各設定を行うことができる集合住宅用インターホンシステムを提供するものである。」

「【0041】
【発明の実施の形態】図1〜図24は、本発明に係る集合住宅用インターホンシステムおよびその転送方法の実施形態を示す図である。
【0042】一般的に、マンションなどの集合住宅は、複数の集合住宅住戸と、1部屋以上の管理事務室と、1カ所以上の共同玄関とから構成されているので、集合住宅用インターホンシステム(以下、単にインターホンシステムという)は、通常、図1に示すような構成を有する。
【0043】図1に示すインターホンシステム20は、共同玄関に設けられた共同玄関子機21と、各々の集合住宅住戸毎に設けられた住戸親機22および玄関子機23と、各管理事務室に設けられた管理事務室親機24および玄関子機25と、公衆電話網回線に接続され、電話器、携帯電話器、またはパーソナルコンピュータなど任意の外部通信端末装置に音声および映像を転送する外線アダプタ26とを備えており、これら共同玄関子機21、各住戸親機22、各管理事務室親機24、外線アダプタ26を制御する中央制御装置27を有しており、各機器および装置間における通信は、後述するアナログ通信またはデジタル通信によって行われるようになっている。
【0044】以下、共同玄関子機21、住戸親機22、玄関子機23、管理事務室親機24、管理事務室子機25、外線アダプタ26および中央制御装置27の構成に基づいてシステム動作を説明する。
【0045】まず、図2、図3を用いて共同玄関子機21、各住戸親機22、各管理事務室親機24、外線アダプタ26および中央制御装置27の基本的な構成を有するインターホンシステム30(第1実施形態)について説明する。」

「【0141】次に、図11、12を用いて来訪者映像の映像通信を行うインターホンシステム50(第3実施形態)について説明する。
【0142】図11に示すインターホンシステム50は、各住戸親機22に来訪者映像をモニタするモニタを備え、各住戸親機22および外線アダプタ26に映像通信インターフェースを設けるとともに公衆電話網に出力するときに音声信号および映像信号を所定のフォーマットに変換して出力する点に特徴があり、その他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一部材には同一番号を付して説明を省略する。」

「【0144】共同玄関子機21は、来訪者など操作者が呼び出し操作を行うマンマシンインターフェース101と、操作者の音声を入力するマイク102と、呼び出された居住者などの応答音声を出力するスピーカ103と、マイク102およびスピーカ103を制御するとともに各端末装置と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース104と、操作者の映像を撮像するカメラ141と、制御部を構成するCPU105およびメモリ106と、中央制御装置27とCPU間通信を行うCPU間通信インターフェース107とを備えている。」

「【0148】住戸親機22は、居住者または管理人など操作者が呼び出し操作を行うマンマシンインターフェース101と、操作者の音声を入力するマイク102と、呼び出された居住者などの応答音声を出力するスピーカ103と、マイク102およびスピーカ103を制御するとともに各端末装置と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース104と、操作者の映像をモニタするモニタ143と、映像通信行う映像通信インターフェース144と、制御部を構成するCPU105およびメモリ106と、中央制御装置27とCPU間通信を行うCPU間通信インターフェース107とを備えている。」

「【0151】外線アダプタ26は、各住戸親機22および管理事務室親機24と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース108と、公衆電話網回線に接続された電話インターフェース112と、映像信号の通信を行う映像通信インターフェース145と、音声信号および映像信号を所定のフォーマットに変換するとともに所定のフォーマットから音声信号および映像信号をに変換するエンコードデコード部146と、制御部を構成するCPU109およびメモリ110と、中央制御装置27とCPU間通信を行うCPU間通信インターフェース111とを備えている。」

「【0185】ここで、上述した各インターホンシステム30、40、50、60における留守録機能を有する住戸親機22について説明する。図15〜図18は、各住戸親機22に音声ガイダンス発生部と記憶部を設けた構成図であり、その他の構成は上述した住戸親機22と同様な構成を有し、同一部材には同一番号を付して説明を省略する。」
(※当審注:引用文献1の段落【0185】の「記憶部」は「記録部」の誤記と認める。)

「【0190】CPU105は、上述したように中央制御装置27の状態管理テーブルに格納されている通常、転送および留守のモード設定に基づいて音声ガイド発生部161および記録部162を制御するようになっており、このモード設定は、マンマシンインターフェース101および外部通信端末装置によって設定されるようになっている。
【0191】次に、図19を用いて応答記録動作(応答記録ステップ)を説明する。ただし、本動作は、第3実施形態のインターホンシステム50に適用し、共同玄関子機21から呼び出されているものとする。
【0192】まず、住戸親機22が所定の時間鳴動したとき、または、状態管理テーブルに基づいて中央制御装置27が応答記録動作を指示したとき、共同玄関子機21と呼び出されている住戸親機22のインターホン回線を接続する(ステップS101)。
【0193】次いで、音声ガイダンス発生部161によって予め設定されている留守である旨、または、応答できない旨のメッセージを音声通信インターフェース104を介して共同玄関子機21に送信する(ステップS102)。
【0194】次いで、記録部162は、録音動作を開始して共同玄関子機21から送信された来訪者のメッセージを録音するとともに、共同玄関子機21のカメラ141によって撮像された来訪者映像を録画する(ステップS103)。
【0195】次いで、所定の時間経過後、または、来訪者のマンマシンインターフェース101の操作により録音、録画の動作を停止し、インターホン回線を解放して(ステップS104)、応答記録動作を終了する。
【0196】なお、玄関子機23において応答記録動作を行うようにしてもよい。また、第1および第2実施形態のように来訪者を撮像するカメラ141がシステム上構成されていないときは、来訪者のメッセージデータのみ記録されるようにする。」

「【0198】まず、中央制御装置27が操作指示待機中に、外部通信端末装置から外線アダプタ26を介して中央制御装置27に来訪者メッセージデータおよび来訪者映像データ(以下、来訪者データという)転送の指示が入力される(ステップS111)。
【0199】次いで、中央制御装置27が、指定された住戸親機22の記録部162に来訪者データが記録されているか否かを判断する(ステップS112)。住戸親機22に来訪者データが格納されていないと判断されたときは、中央制御装置27は、住戸親機22からその旨の指示を受信するとともに、外線アダプタ26の音声ガイダンス発生部131を制御し、外部通信端末装置に来訪者データが格納されていない旨のメッセージを出力する(ステップS113)。来訪者データが記録されていると判断されたときは、指定されて住戸親機22と外線アダプタ26とのとインターホン回線を確立し(ステップS114)、記録部162に記録されている来訪者データを外部通信端末装置に送信する(ステップS115)。
【0200】次いで、来訪者データの転送が終了すると、中央制御装置27は、公衆電話網回線を切断するとともに、インターホン回線を解放して、(ステップS116)動作を終了させる。」
(※当審注:引用文献1の段落【0199】の「指定されて住戸親機22」は「指定された住戸親機22」の誤記と認める。)

「【0216】したがって、既存の集合住宅用インターホンシステムのインフラを使用し、外部通信端末装置に、来訪者の情報を転送することができるので、個人に係る設備負担を軽減させることができる。」

上記記載から、特に「インターホンシステム50における留守録機能を有する住戸親機22」に注目すると、「各住戸親機22に音声ガイダンス発生部と記録部を設けた構成図であり、その他の構成は上述した住戸親機22と同様な構成を有し、同一部材には同一番号を付して説明を省略する」(【0185】参照)とあり、第3実施形態の「インターホンシステム50」について、「インターホンシステム50は、各住戸親機22に来訪者映像をモニタするモニタを備え、各住戸親機22および外線アダプタ26に映像通信インターフェースを設けるとともに公衆電話網に出力するときに音声信号および映像信号を所定のフォーマットに変換して出力する点に特徴があり、その他の構成は第1実施形態と同様であるため、同一部材には同一番号を付して説明を省略する」(【0142】参照)とあることから、第1実施形態の構成を踏まえた第3実施形態(【0041】〜【0080】、【0141】〜【0167】)に注目すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「インターホンシステム50において(【0142】)、
共同玄関に設けられた共同玄関子機21と、各々の集合住宅住戸毎に設けられた住戸親機22および玄関子機23と、各管理事務室に設けられた管理事務室親機24および玄関子機25と、公衆電話網回線に接続され、電話器、携帯電話器、またはパーソナルコンピュータなど任意の外部通信端末装置に音声および映像を転送する外線アダプタ26とを備えており、これら共同玄関子機21、各住戸親機22、各管理事務室親機24、外線アダプタ26を制御する中央制御装置27を有しており、各機器および装置間における通信は、アナログ通信またはデジタル通信によって行われるようになっており(【0043】)、
共同玄関子機21は、来訪者など操作者が呼び出し操作を行うマンマシンインターフェース101と、操作者の音声を入力するマイク102と、呼び出された居住者などの応答音声を出力するスピーカ103と、マイク102およびスピーカ103を制御するとともに各端末装置と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース104と、操作者の映像を撮像するカメラ141と、制御部を構成するCPU105およびメモリ106と、中央制御装置27とCPU間通信を行うCPU間通信インターフェース107とを備えており(【0144】)、
住戸親機22は、居住者または管理人など操作者が呼び出し操作を行うマンマシンインターフェース101と、操作者の音声を入力するマイク102と、呼び出された居住者などの応答音声を出力するスピーカ103と、マイク102およびスピーカ103を制御するとともに各端末装置と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース104と、操作者の映像をモニタするモニタ143と、映像通信行う映像通信インターフェース144と、制御部を構成するCPU105およびメモリ106と、中央制御装置27とCPU間通信を行うCPU間通信インターフェース107とを備えており(【0148】)、
外線アダプタ26は、各住戸親機22および管理事務室親機24と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース108と、公衆電話網回線に接続された電話インターフェース112と、映像信号の通信を行う映像通信インターフェース145と、音声信号および映像信号を所定のフォーマットに変換するとともに所定のフォーマットから音声信号および映像信号をに変換するエンコードデコード部146と、制御部を構成するCPU109およびメモリ110と、中央制御装置27とCPU間通信を行うCPU間通信インターフェース111とを備えており(【0151】)、
各住戸親機22に音声ガイダンス発生部と記録部を設け(【0185】)、
CPU105は、転送および留守のモード設定に基づいて音声ガイド発生部161および記録部162を制御するようになっており(【0190】)、
共同玄関子機21から呼び出され(【0191】)、
住戸親機22が所定の時間鳴動したとき、または、状態管理テーブルに基づいて中央制御装置27が応答記録動作を指示したとき、共同玄関子機21と呼び出されている住戸親機22のインターホン回線を接続し(【0192】)、
音声ガイダンス発生部161によって予め設定されている留守である旨、または、応答できない旨のメッセージを音声通信インターフェース104を介して共同玄関子機21に送信し(【0193】)、
記録部162は、録音動作を開始して共同玄関子機21から送信された来訪者のメッセージを録音するとともに、共同玄関子機21のカメラ141によって撮像された来訪者映像を録画し(【0194】)、
所定の時間経過後、または、来訪者のマンマシンインターフェース101の操作により録音、録画の動作を停止し、インターホン回線を解放して、応答記録動作を終了し(【0195】)、
玄関子機23において応答記録動作を行うようにしてもよく(【0196】)、
中央制御装置27が操作指示待機中に、外部通信端末装置から外線アダプタ26を介して中央制御装置27に来訪者メッセージデータおよび来訪者映像データ(以下、来訪者データという)転送の指示が入力され(【0198】)、
中央制御装置27が、指定された住戸親機22の記録部162に来訪者データが記録されているか否かを判断し、
住戸親機22に来訪者データが格納されていないと判断されたときは、中央制御装置27は、住戸親機22からその旨の指示を受信するとともに、外線アダプタ26の音声ガイダンス発生部131を制御し、外部通信端末装置に来訪者データが格納されていない旨のメッセージを出力し、
来訪者データが記録されていると判断されたときは、指定された住戸親機22と外線アダプタ26とのとインターホン回線を確立し、記録部162に記録されている来訪者データを外部通信端末装置に送信し(【0199】)、
来訪者データの転送が終了すると、中央制御装置27は、公衆電話網回線を切断するとともに、インターホン回線を解放して、動作を終了させ(【0200】)、
既存の集合住宅用インターホンシステムのインフラを使用し、外部通信端末装置に、来訪者の情報を転送することができるので、個人に係る設備負担を軽減させることができる(【0216】)
インターホンシステム50。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 「建築物の所定スペースに設置されたインターホン親機と、」について

引用発明の「集合住宅」は本願発明1の「建築物」に相当する。
また、引用発明の「集合住宅住戸」は、「居住者」が居住する場所であるから、本願発明1の「所定スペース」に相当する。
そして、引用発明の「住戸親機22」は、「インターホンシステム」の親機であり、「各々の集合住宅住戸毎に設けられ」ていることから、本願発明1の「建築物の所定スペースに設置されたインターホン親機」に相当する。

イ 「前記所定スペースに対する来訪者と配達物との少なくとも一方の情報を出力するように構成された子機と、」について

引用発明の「来訪者」は、本願発明1の「来訪者」に相当する。そして、引用発明においては、「共同玄関子機21は、来訪者など操作者が呼び出し操作を行うマンマシンインターフェース101と」「を備えており、」「共同玄関子機21から呼び出され、住戸親機22が所定の時間鳴動したとき、」「共同玄関子機21と呼び出されている住戸親機22のインターホン回線を接続し、」住戸親機22に設けられた「記録部162は、録音動作を開始して共同玄関子機21から送信された来訪者のメッセージを録音するとともに、共同玄関子機21のカメラ141によって撮像された来訪者映像を録画」することから、引用発明の「来訪者のメッセージ」及び「来訪者映像」は、前記アを踏まえると、本願発明1の「前記所定スペースに対する来訪者と配達物との少なくとも一方の情報」に含まれる。
よって、引用発明の「共同玄関子機21」は、本願発明1の「前記所定スペースに対する来訪者と配達物との少なくとも一方の情報を出力するように構成された子機」に含まれるといえる。

ウ 「前記子機が出力した前記情報を記録する記録装置とを備え、」について

引用発明の「住戸親機22」の「記録部162」は、「録音動作を開始して共同玄関子機21から送信された来訪者のメッセージを録音するとともに、共同玄関子機21のカメラ141によって撮像された来訪者映像を録画」することから、前記イを踏まえると、本願発明1の「前記子機が出力した前記情報を記録する記録装置」に相当する。

エ 「前記インターホン親機は、無線通信路を含み、かつ構内通信網を介さない伝送路を介して端末装置と通信する通信インターフェイスと、」について

引用発明の「外部通信端末装置」は、「記録部162に記録されている来訪者データを」「送信」されるものであるから、本願発明1の「端末装置」に相当する。
引用発明においては、「共同玄関子機21と呼び出されている住戸親機22のインターホン回線を」「接続し」、「解放」し、また、「指定された住戸親機22と外線アダプタ26のインターホン回線を」「確立」し、また「解放」するものであるから、引用発明の、当該共同玄関子機21と呼び出されている住戸親機22及び指定された住戸親機22と外線アダプタ26間の「インターホン回線」を「接続」や「解放」するための伝送路は、3つ以上の装置間を物理的につないでいるネットワークの構成を有しているといえ、本願発明1の「構内通信網」に相当するといえる。
また、引用発明においては、「住戸親機22と外線アダプタ26とのとインターホン回線を確立し、記録部162に記録されている来訪者データを外部通信端末装置に送信し、」「外線アダプタ26」は、「公衆電話網回線に接続され、電話器、携帯電話器、またはパーソナルコンピュータなど任意の外部通信端末装置に音声および映像を転送する」ことから、引用発明の「住戸親機22」と「外部通信端末装置」である「携帯電話器」とが通信する伝送路は、本願発明1の「無線通信路を含み、かつ構内通信網を介さない伝送路」と「無線通信を含む伝送路」である点で共通する。
そして、引用発明の「住戸親機22は、」「各端末装置と音声信号の通信を行う音声通信インターフェース104と、」「映像通信行う映像通信インターフェース144と、」を備えていることから、引用発明の「音声通信インターフェース104」及び「映像通信インターフェース144」は、本願発明1の「無線通信路を含み、かつ構内通信網を介さない伝送路を介して端末装置と通信する通信インターフェイス」と、「無線通信路を含む伝送路を介して端末装置と通信する通信インターフェイス」である点で共通する。

オ 「前記記録装置に記録されている前記情報を前記通信インターフェイスを通して前記端末装置に出力する処理部とを備え、」について

引用発明の「来訪者データ」は、「来訪者メッセージデータおよび来訪者映像データ」であるから、前記イを踏まえると、本願発明1の「前記情報」に相当する。
そして、引用発明の「住戸親機22は、」「制御部を構成するCPU105」を備えており、「CPU105は、転送および留守のモード設定に基づいて音声ガイド発生部161および記録部162を制御するようになっており、」「来訪者データが記録されていると判断されたときは、指定されて住戸親機22と外線アダプタ26とのとインターホン回線を確立し、記録部162に記録されている来訪者データを外部通信端末装置に送信」することから、引用発明の「CPU105」は、前記イ〜エを踏まえると、「前記記録装置に記録されている前記情報を前記通信インターフェイスを通して前記端末装置に出力する処理部」に相当する。

カ 「前記子機は、ドアホン子機と、前記インターホン親機と前記構内通信網を介して接続されるロビーインターホンとを含む」について

引用発明の「玄関子機23」は、本願発明1の「ドアホン子機」に相当する。
また、前記イに示したように、引用発明の「共同玄関子機21」は、本願発明1の「子機」に含まれるといえるところ、前記エに示したように、引用発明の「共同玄関子機21」は、「住戸親機22」と物理的な伝送路を介してつながってることから、本願発明の「前記インターホン親機と構内通信網を介して接続されるロビーインターホン」に相当する。
そうすると、引用発明の「玄関子機23」と「共同玄関子機21」は、本願発明の「ドアホン子機と、前記インターホン親機と構内通信網を介して接続されるロビーインターホンとを含む」「前記子機」に相当するといえる。

キ 「インターホンシステム。」について

引用発明の「インターホンシステム50」は、後述する相違点を除き、本願発明1の「インターホンシステム」に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは、
「建築物の所定スペースに設置されたインターホン親機と、
前記所定スペースに対する来訪者と配達物との少なくとも一方の情報を出力するように構成された子機と、
前記子機が出力した前記情報を記録する記録装置とを備え、
前記インターホン親機は、
無線通信路を含む伝送路を介して端末装置と通信する通信インターフェイスと、
前記記録装置に記録されている前記情報を前記通信インターフェイスを通して前記端末装置に出力する処理部とを備え、
前記子機は、ドアホン子機と、前記インターホン親機と構内通信網を介して接続されるロビーインターホンとを含む
ことを特徴とするインターホンシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
通信インターフェイスが端末装置と通信するのに介する、無線通信路を含む伝送路について、本願発明1では、「構内通信網を介さない」のに対し、引用発明においては、「住戸親機22と外線アダプタ26とのとインターホン回線を確立し、記録部162に記録されている来訪者データを外部通信端末装置に送信し」ており、「住戸親機22」の「音声通信インターフェース104」及び「映像通信インターフェース144」は、「外部通信端末装置」と通信するのに「インターホン回線」を介している点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明は、「既存の集合住宅用インターホンシステムのインフラを使用し、外部通信端末装置に、来訪者の情報を転送することができるので、個人に係る設備負担を軽減させることができる」ものであり、住戸端末装置に電話回線と接続する転送部を設ける構成を有するシステムを各集合住宅住戸毎に構築する必要をなくすことを課題としている(引用文献1の【0007】〜【0008】参照)ものであるから、引用発明に「構内通信網を介さない伝送路」という技術的事項を適用して、引用発明の「住戸親機22」の各々について、「構内通信網を介さない伝送路を介して端末装置と通信する通信インターフェース」を設けることには阻害要因があるといえる。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2〜7について
本願発明2〜7も、上記相違点に係る本願発明1の「構内通信網を介さない伝送路」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8ついて
本願発明8は、本願発明1を引用するインターホン親機の発明であり、上記相違点に係る本願発明1の「構内通信網を介さない伝送路」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明9〜10について
本願発明9〜10は、本願発明1に対応するインターホンシステムの制御方法及びブログラムの発明であり、上記相違点に係る本願発明1の「構内通信網を介さない伝送路」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第17条の2第4項)について
審判請求時の補正により、原査定時の請求項12、13は削除されており、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第17条の2第3項)について
審判請求時の補正により、原査定時の請求項4は削除され、原査定時の請求項5の「子機」という記載は「ロビーインターホン」に補正されており、それにより、審判請求時の補正後の請求項4に係る発明は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとなったことから、原査定の理由2を維持することはできない。

3.理由3(特許法第29条第1項第3号)について
審判請求時の補正により、本願発明1〜10は、「前記第5」の「1.」で検討したとおり、上記相違点に係る事項を含むものとなっており、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明と同一のものとはいえない。したがって、原査定の理由3を維持することはできない。

4.理由4(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1〜10は、「前記第5」の「1.」で検討したとおり、上記相違点に係る事項を含むものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由4を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-01-05 
出願番号 P2017-121118
審決分類 P 1 8・ 55- WY (H04M)
P 1 8・ 113- WY (H04M)
P 1 8・ 57- WY (H04M)
P 1 8・ 121- WY (H04M)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 赤穂 美香
土居 仁士
発明の名称 インターホンシステム、インターホン親機、インターホンシステムの制御方法、プログラム  
代理人 弁理士法人北斗特許事務所  

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