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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G08G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08G
管理番号 1392858
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-25 
確定日 2022-12-20 
事件の表示 特願2018−6626「エージェント連携方法」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月25日出願公開、特開2019−125256、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年1月18日の出願であって、令和3年6月18日付け(発送日:同年6月22日)で拒絶理由が通知され、令和3年8月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年10月25日付け(発送日:同年11月2日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和4年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともにその審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和4年2月21日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.(新規性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)について
・請求項1及び3ないし5:引用文献1

●理由2(進歩性)について
・請求項2:引用文献1及び2

<引用文献等一覧>
1.特開2016−1432号公報
2.特開2007−316772号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、令和4年1月25日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
第1車両に搭載された第1エージェントと第2車両に搭載された第2エージェントとが連携するエージェント連携方法であって、
前記第1エージェントが第1車両に乗車する第1運転者の今後の運転に関する情報を特定する第1特定ステップと、
前記第2エージェントが前記第1エージェントにより特定された情報を取得して、第2車両に乗車する第2運転者に、取得した情報にもとづいて導出した運転支援情報を通知する第1通知ステップと、を含み、
前記第1特定ステップにおいて、前記第1エージェントは、第1運転者の今後の運転に関する情報を、第1運転者の運転傾向を示すパラメータを含む第1運転者の運転属性に関する情報にもとづいて推定することを特徴とするエージェント連携方法。
【請求項2】
前記第1特定ステップにおいて、前記第1エージェントが第1運転者の発話から第1車両の走行予定を推定し、
前記第1通知ステップにおいて、前記第1エージェントにより推定された第1車両の走行予定に関する情報を今後の運転に関する情報として取得して、第1車両の走行予定に関する情報にもとづいて導出した運転支援情報を第2運転者に通知することを特徴とする請求項1に記載のエージェント連携方法。
【請求項3】
前記第2エージェントが第2運転者の今後の運転に関する情報を特定する第2特定ステップと、
前記第1エージェントが、前記第2エージェントにより特定された情報を取得し、取得した情報にもとづいて導出した運転支援情報を第1運転者に通知する第2通知ステップと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のエージェント連携方法。
【請求項4】
前記第2特定ステップにおいて、第1車両の走行予定に関する情報にもとづいて導出した運転支援情報に対して第2運転者が応答した応答情報を第2運転者の今後の運転に関する情報として特定し、
前記第2通知ステップにおいて、応答情報にもとづいて導出した運転支援情報を第1運転者に通知することを特徴とする請求項3に記載のエージェント連携方法。
【請求項5】
第1車両に搭載された第1エージェントと第2車両に搭載された第2エージェントとが連携するエージェント連携方法であって、
前記第1エージェントにより第1車両に乗車する第1運転者の今後の運転に関する情報を特定する特定ステップと、
前記第1エージェントにより特定された情報を前記第2エージェントで取得可能に送信する送信ステップと、を含み、
前記特定ステップにおいて、前記第1エージェントは、第1運転者の今後の運転に関する情報を、第1運転者の運転傾向を示すパラメータを含む第1運転者の運転属性に関する情報にもとづいて推定することを特徴とするエージェント連携方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2016−1432号公報(以下「引用文献1」という。)には、「運転支援装置、及び運転支援システム」に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。

(1)「【0017】
(実施形態1)
<運転支援システム100の概略構成>
図1は、実施形態1における運転支援システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す運転支援システム100は、複数の車両(車両A1〜A3)の各々に1つずつ搭載された3つの運転支援ユニット1a、1b、1cを含んでいる。各車両に搭載されている運転支援ユニット1a、1b、1cはいずれも同様の機能を備えており、以降においてこれらを区別しない場合には運転支援ユニット1と記載する。図1のBは運転支援ユニット1を搭載していない車両を示している。」

(2)「【0019】
<運転支援ユニット1の概略構成>
図2に示すように、運転支援ユニット1は、運転支援ECU2、車車間通信部3、障害物センサ群4、位置検出器5、地図データベース(DB)6、車両状態センサ群7、ウインカスイッチ8、ライトスイッチ9、操作スイッチ群10、表示装置11、及び音声出力装置12を備えている。」

(3)「【0030】
一例として、運転支援ECU2は、車両間で譲り合いが必要な状況において、相手車両に自車両の行動予定内容を送信し、その行動予定内容に対する相手車両のドライバの諾否を受信する処理に関連する譲歩諾否確認関連処理を実行する。また、運転支援ECU2は、車両間で譲り合いが必要な状況において、相手車両から相手車両の行動予定内容が送信されてきた場合に、その行動予定内容に対する自車両のドライバの諾否を送信する処理に関連する譲歩諾否送信関連処理を実行する。」

(4)「【0043】
以降では、前述した譲歩諾否確認関連処理及び譲歩諾否送信関連処理について説明を行うが、一例として、行動予定内容を送信する側の車両が図1の車両A1、その行動予定内容の諾否を送信する側の車両が図1の車両A2として説明を行う。この車両A1が請求項の第1の車両に相当し、車両A2が請求項の第2の車両に相当する。
【0044】
なお、車両A1に搭載された運転支援ユニット1aに含まれる部材については部材番号に「a」を付し、車両A2に搭載された運転支援ユニット1bに含まれる部材については部材番号に「b」を付して説明を行う。例えば、車両A1の運転支援ECU2は運転支援ECU2aとし、車両A1の送信処理部23は送信処理部23aとする。よって、運転支援ECU2aが請求項の第1運転支援装置に相当し、運転支援ECU2bが請求項の第2運転支援装置に相当する。
【0045】
<譲歩諾否確認関連処理>
ここで、運転支援ECU2aでの前述した譲歩諾否確認関連処理の流れについて図4のフローチャートを用いて説明を行う。図4のフローチャートは、一例として、自車両である車両A1のイグニッション電源がオンになったときに開始される構成とすればよい。
【0046】
まず、ステップS1では、障害物検出部21aで検出した結果、自車両情報取得部22aで取得した車両情報、ウインカスイッチ8aの信号、ライトスイッチ9aの信号、地図DB6aに格納されている地図データ等をもとに、自車両と周辺車両との間で譲り合いが必要な状況か否かを状況判定部25aが判定する。
【0047】
譲り合いが必要な状況とは、車両A1と周辺車両との動線が交わる可能性のある状況である。例えば、図5のCASE1〜CASE5の状況がある。CASE1としては、車線変更時における割り込みのように、車線変更先の車線に車両A1よりも後方に位置する周辺車両が存在する場合が該当する。また、CASE2のように、片側1車線の道路において、自車両が前方車両を追い越そうとする場合も該当する。さらに、CASE3のように、施設等の駐車領域やランプ形状の道路や脇道からの本線への合流時に、合流先に周辺車両が接近してきている場合も該当する。他にも、CASE4のように、対向車線を横切って施設等の駐車領域に進入する場合に、対向車線の前方から対向車両が接近してきている場合も該当する。また、CASE5のように、センターラインが存在しない狭隘道路で対向車両と鉢合わせした場合や、CASE6のように交差点で右折待ちの場合に対向車両と鉢合わせした場合も該当する。
【0048】
一例として、車線変更時における割り込みの状況は、ウインカランプの点灯操作が行われたことを示すウインカスイッチ8aの信号が入力されているとともに、点灯操作が行われた側に車両A1の位置する車線と進行方向の同じ車線が存在しており、且つ、点灯操作が行われた側の後方に障害物検出部21aで車両を検出していることから判定できる。点灯操作が行われた側に車両A1の位置する車線と進行方向の同じ車線が存在していることは、車両情報のうちの車両A1の位置と、地図データとから特定できる。
【0049】
片側1車線の道路において車両A1が前方車両を追い越そうとする状況は、障害物検出部21aで車両A1の前方に車両を検出しているとともに、車両A1が片側1車線の道路に位置しており、且つ、パッシングが行われたことを示すライトスイッチ9aの信号が入力されていることから判定できる。車両A1が片側1車線の道路に位置していることは、車両情報のうちの車両A1の位置と、地図データとから特定できる。
【0050】
合流先に周辺車両が接近してきていることは、車両情報のうちの車両A1の位置及び車両A1の進行方向、地図データ、及び障害物検出部21aで検出した車両の車両A1に対する相対位置をもとに判定できる。
【0051】
センターラインが存在しない狭隘道路で対向車両と鉢合わせした状況は、車両情報のうちの車両A1の位置、地図データ、及び障害物検出部21aで検出した前方の車両が対向車両か否かをもとに判定できる。また、交差点で右折待ちの場合に対向車両と鉢合わせした状況は、車両A1が交差点付近に位置しているとともに、右側のウインカランプの点灯操作が行われたことを示すウインカスイッチ8aの信号が入力されており、且つ、障害物検出部21aで車両A1の前方に対向車両を検出していることから判定できる。なお、障害物検出部21aで対向車両か否かを検出する構成とする場合には、障害物センサ群4aとしてカメラを用い、パターンマッチングによって対向車両か否かまで検出する構成とすればよい。
【0052】
図4に戻って、ステップS2では、対象車両特定部26aが、車両A1との間で譲り合いが必要な対象車両を特定する。具体的には、車両A1と動線が交わる可能性のある周辺車両のうち直近の車両を対象車両と特定する。本実施形態の例では、車両A1が車線変更する先の車線上の車両A1よりも後方における直近の車両を対象車両と特定する。
【0053】
ステップS3では、対象車両特定部26aが、受信処理部24aで車両情報を受信している周辺車両のうちから、S2で特定した対象車両を特定する。一例として、障害物検出部21aで検出した対象車両の車両A1に対する相対位置から求まる位置と、略同一時刻において略一致する位置を含む車両情報を送信した周辺車両を、対象車両として特定する。同時刻における車両A1と周辺車両との位置の対応付けは、位置を検出した時点のタイムスタンプを用いて行うものとする。なお、S2で特定した対象車両が車車間通信を行う装置を搭載していない車両であった場合には、対象車両は特定されない。
【0054】
そして、S3で対象車両を特定できた場合、つまり、対象車両が車車間通信機能を持つ場合(S3でYES)には、ステップS5に移る。一方、S3で対象車両を特定できなかった場合、つまり、対象車両が車車間通信機能を持たない場合(S3でNO)には、ステップS4に移る。」

(5)「【0058】
対象車両が車車間通信機能を持つ場合のステップS5では、車両A1が予定している行動内容(以下、行動予定内容)を行動予定特定部27aが特定する。行動予定内容は、状況判定部25aで判定される状況別に予めテーブル等で対応付けられており、状況判定部25aで判定される状況に応じて特定される構成とすればよい。
【0059】
例えば、前述のCASE1、CASE3の場合の行動予定内容は「対象車両の前方への割り込み」とすればよく、CASE2の場合は「対象車両の追い越し」とすればよい。また、CASE4の場合は「対象車両の前方を横断」とすればよく、CASE5、CASE6は「対象車両よりも先に通行」とすればよい。
【0060】
ステップS6では、送信処理部23aが、自車両情報取得部22aで取得した車両情報を車車間通信部3aから所定の周期で送信させる際に、S5で特定した行動予定内容とS3で特定した対象車両の識別情報とを車両情報に付加して送信させる。対象車両の識別情報については、S3で特定した対象車両から既に受信していた車両情報に含まれていた識別情報を用いる構成とすればよい。この送信処理部23aが請求項の第1送信処理部に相当する。」

(6)「【0071】
<譲歩諾否送信関連処理>
続いて、車両A1から行動予定内容の送信を受ける車両A2の運転支援ECU2bでの前述した譲歩諾否送信関連処理の流れについて図6のフローチャートを用いて説明を行う。図6のフローチャートは、一例として、自車両である車両A2のイグニッション電源がオンになったときに開始される構成とすればよい。
【0072】
まず、ステップS21では、車両A1の行動予定内容及び車両A2の識別情報が付加された車両A1からの車両情報を受信処理部24bで受信した場合(S21でYES)には、ステップS22に移る。一方、受信処理部24bで受信しなかった場合(S21でNO)には、ステップS31に移る。この受信処理部24bが請求項の第2受信処理部に相当する。
【0073】
ステップS22では、諾否判定部31bが、S21で受信した車両情報に含まれる車両A1の位置と、自車両情報取得部22bで取得した車両情報のうちの車両A2の位置及び進行方向とから、車両A2に対する車両A1の相対位置を特定する。
【0074】
ステップS23では、諾否判定部31bが、S21で受信した車両情報に付加された車両A1の行動予定内容をもとに、対応関係格納部30bに格納されている行動予定内容とその行動予定内容を許諾する諾否判定用挙動との対応関係を参照して、車両A1の行動予定内容を許諾する諾否判定用挙動を特定する。
【0075】
対応関係格納部30bに格納されている対応関係の一例として、行動予定内容「対象車両の前方への割り込み」や行動予定内容「対象車両の前方を横断」には、諾否判定用挙動「自車両の減速」が対応付けられている構成とすればよい。また、行動予定内容「対象車両の追い越し」には、諾否判定用挙動「自車両の左方向への幅寄せ」が対応付けられている構成とすればよく、行動予定内容「対象車両よりも先に通行」には、諾否判定用挙動「パッシング」が対応付けられている構成とすればよい。諾否判定用挙動「パッシング」は、パッシングを行う際のライトスイッチ9bの操作方法を具体的に示したものであってもよい。
【0076】
行動予定内容に対応付けられる諾否判定用挙動は、何ら特別な挙動ではなく、上級ドライバが相手車両に意図を伝えるために行っていた従前からの車両操作による挙動であるものとする。また、行動予定内容と諾否判定用挙動との対応関係は、予めデータベース化したものを対応関係格納部30bに格納しておく構成としてもよいし、図示しないセンタ等と通信を行って取得したものを対応関係格納部30bに格納する構成としてもよい。
【0077】
ステップS24では、報知処理部32bが、表示装置11bや音声出力装置12bから、S21で受信した車両情報に含まれる車両A1の行動予定内容と、S22で特定した車両A1の相対位置、S23で特定した諾否判定用挙動とを示す報知を車両A2のドライバに向けて行わせる。一例として、「自車両の左斜め前方の車両が自車両の前方への割り込みを要求しています。許諾される場合は減速を行って下さい」といった音声出力を行わせる構成などとすればよい。諾否判定用挙動については、「ウインカレバーを手前に引いて下さい」といった、諾否判定用挙動を実現するための操作方法を示す報知を行う構成としてもよい。」

(7)

(8)

上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明A」及び「引用発明B」という。)が記載されている。

〔引用発明A〕
「車両A1に搭載された運転支援ユニット1aと車両A2に搭載された運転支援ユニット1bとが通信する方法であって、
車両A1に搭載された運転支援ユニット1aが、車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5と、
車両A2に搭載された運転支援ユニット1bが、ステップS5で特定された行動予定内容を受信して、その行動予定内容に対応付けられる諾否判定用挙動として、例えば、「自車両の左斜め前方の車両が自車両の前方への割り込みを要求しています。許諾される場合は減速を行って下さい」といった音声出力を車両A2のドライバに向けて行うステップS24と、を含み、
前記車両A1に搭載された運転支援ユニット1aが、車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5において、行動予定内容は、状況判定部25aで判定される状況別に予めテーブル等で対応付けられており、状況判定部25aで判定される状況に応じて特定される方法。」

〔引用発明B〕
「車両A1に搭載された運転支援ユニット1aと車両A2に搭載された運転支援ユニット1bとが通信する方法であって、
車両A1に搭載された運転支援ユニット1aが、車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5と、
車両A1に搭載された運転支援ユニット1aが、前記ステップS5で特定された行動予定内容を、車両A2に搭載された運転支援ユニット1bに送信するステップS6と、を含み、
前記運転支援ユニット1aが、車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5において、行動予定内容は、状況判定部25aで判定される状況別に予めテーブル等で対応付けられており、状況判定部25aで判定される状況に応じて特定される方法。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2007−316772号公報(以下「引用文献2」という。)には、「車載用割込み情報交換装置、プログラム及び方法」に関して、次の事項が記載されている。

(1)「【0028】
図1は本発明の一実施形態に係るエージェント装置を示すブロック図である。なお本実施形態においては、エージェントとは、ユーザの行動に基づいてユーザの意思を推測し、ユーザによる機器の操作を補助する機能であって、そのキャラクタを具現化した画像及び音声データを有するものを意味する。また、エージェント装置は、そのような機能を有する専用の装置である必要はなく、ナビゲーション装置等において、同様の機能を有するものとして組み込まれたものであってもよい。」

(2)「【0034】
図2は割込みが必要な状況を例示する。図中の26は脇道、27は脇道26が合流している幹線道路、Aは脇道26から幹線道路27上の車列に対して割込みを行おうとしている車両、Bは脇道26から幹線道路27への合流地点へ近づきつつある車両である。車両B及びその後続車両は車両Aの割込みを許可し得る状況にある。車両A及びBは本実施形態にかかるエージェント装置を搭載している。
【0035】
図3及び図4はエージェント装置のエージェント処理部11における処理の一部を示すフローチャートである。図3では、車両が脇道から幹線道路へ合流したり、駐車場から道路へ出たりするために、割込みを行うことが必要な状況となり得る場合の処理を示している。図4では、このような割込みを許可し得る状況となるような場合の処理を示している。今、図2のような状況において、車両Aにおいて図3の処理が行われ、車両Bにおいて図4の処理が行われるものとする。これらの処理は、所定のプログラムに従って行うことができる。
【0036】
車両Aにおいては図3に示すように、エージェント処理部11は、ステップ31において、車両Aが割込みが必要な状態となるのを待機している。たとえば図2に示すように、脇道26から幹線道路27へ出ようとするとき、車両Aのドライバは、ウィンカを点滅させ、車両Aを停止させる。したがって、エージェント処理部11は、位置情報検出部17からの情報に基づき、車両が停止し、ウィンカの点滅の開始を検出したとき、割込みが必要な状況に至ったと判定することができる。なお、ドライバによる「入れて」等の音声コマンドの発話を言語解析部21を経て認識し、この音声コマンドの入力に基づいて、割込みが必要な状況になったことを判定するようにしてもよい。
【0037】
割込みが必要な状況に至ったことを検出すると、車両Aのエージェント処理部11はステップ32へ進み、周囲の車両に対し、割込みを希望する旨を示す割込み要求の送信を行う。このとき、割込み要求に対し、他車がその割込み要求を許可するか否かの判断材料となるような種々の情報を付加し、これらの情報を同時に送信する。この付加情報としてはたとえば、大型、小型等の車両の種類、車両の色、位置、ウィンカの指示方向、進行方向等の車両に関する情報や、車両Aのドライバに関する情報や、車両Aのナビゲーション装置において設定されているルートに関する情報が該当する。ドライバに関する情報してはたとえば、割込み待ちをどの程度の時間継続して行っているか(以下、「割込み待時間」という。)、初心者であるか、高齢者であるかといった情報が該当する。割込み待時間はたとえば、割込み要求の送信を開始してからの経過時間として取得することができる。
【0038】
そして、エージェント処理部11は、ステップ33において割込みの終了を検出し、又はステップ34において他車たとえば車両Bから割込みを許可する旨を示す割込み許可を受信したことを検出するまで、ステップ35において割込み待時間をカウントしながら、ステップ32における割込み要求の発信を継続する。割込みが終了したことの検出は、たとえば、ウィンカの点滅が停止したことや、車両の位置、ドライバが発する「ありがとう」等の音声コマンドに基づいて行うことができる。」

(3)「【0042】
一方、車両Bのエージェント装置におけるエージェント処理部11は、図4に示すように、ステップ41において、割込み要求の受信を待機している。車両Aからの割込み要求を受信すると、ステップ42へ進み、その割込み要求が車両Bに関係があり、割込みを許可し得る状況にあるか否かを判定する。この判定は、受信した割込み要求に付随する車両Aの位置及び進行方向に関する情報、車両Bの位置及び進行方向に関する情報、並びに地図データベース18の地図情報等に基づいて行うことができる。
【0043】
ステップ42において割込みを許可し得る状況にあると判定した場合には、ステップ43において、車両Aに関する情報を表示し、割込みを希望する車両Aがある旨の音声案内を行うとともに、車両Bのドライバに対し、割込みを許可するか否かの判断を求める。車両Aに関する情報の表示には、受信した割込み要求に付随する情報に基づき、車両Aの車種やその色を模倣した車両Aのアイコン、及び割込み待時間等の車両Aのドライバに関する情報の表示を含めることができる。」

(4)


上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献2記載事項〕
「車両Aのエージェント処理部11と車両Bのエージェント処理部11とが割込み情報を交換する方法であって、
前記車両Aのエージェント処理部11が、割込みが必要な状況になったことを判定すると割込み要求を送信するステップ32と、
前記車両Bのエージェント処理部11が前記割込み要求を受信すると、車両Bのドライバに対し、前記割込みを許可するか否かの判断を求めるステップ43と、を含み、
前記割込みが必要な状況になったことを判定すると割込み要求を送信するステップ32において、割込みが必要な状況になったことを、ドライバによる音声コマンドの発話により判定する割込情報交換方法。」

3 引用文献3
前置報告において引用された特開2017−21506号公報(以下「引用文献3」という。)には、「走行制御装置」に関して、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記車両が前記スペースを検出した状態で走行するための前記車両の車速を算出し、前記車速で前記車両を走行させる車線変更準備制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする走行制御装置。」

(2)「【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ドライバーが車線変更を希望する場合に、車線変更が適切に行われるように、車両の走行を制御する走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の走行シーンに基づいて、ドライバーが車線変更を選択するか否かを予測し、ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合には、ドライバーが車線変更を選択する前に、車両が車線変更可能なスペースが検出された状態で走行するための車両の車速を算出し、当該車速で車両の走行を制御することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバーが車線変更を選択すると予測された走行シーンである場合に、ドライバーが車線変更を希望する前に、車両が車線変更可能なスペースが検出された状態で車両を走行させることができるため、ドライバーが車線変更を実際に選択した場合に、直ぐに車線変更を行うことができ、車線変更を行えないことによる、ドライバーの不安感を低減することができる。」

(3)「【0025】
制御装置190の車線変更予測機能は、走行シーン判定機能により判定された走行シーンに基づいて、ドライバーが近い将来、車線変更を選択するか否かを予測する。具体的には、車線変更予測機能は、走行シーン判定機能により、自車両の走行シーンが、図2に示すいずれかの走行シーン(すなわち、車線変更の可能性が高い走行シーン)であると判定された場合には、ドライバーが近い将来、車線変更を選択するものと予測する。
【0026】
ただし、車線変更予測機能は、自車両が車線変更を行えない車線変更禁止条件を満たす場合には、走行シーンに関係なく、ドライバーは車線変更を選択しないと予測する。車線変更禁止条件としては、たとえば、「車線変更禁止区域を走行している」、「車線変更方向に障害物が存在する」、「センターライン(道路中央線)を跨ぐごととなる」、および「路肩や道路端を跨ぐこととなる」などが挙げられる。なお、車線変更予測機能は、「緊急退避シーン」においては、「路肩や道路端を跨ぐこととなる」との条件を許容する構成とすることができる。
【0027】
また、車線変更予測機能は、自車両の走行シーンが、「合流地点に近づくシーン」、「SA/PAに向かうシーン」などの所定の走行シーンである場合には、場所ごとに、ドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する構成とすることもできる。たとえば、同じ「SA/PAに向かうシーン」であっても、ドライバーの走行履歴に基づいて、SA/PAの利用頻度を判断し、ドライバーが利用する頻度が所定値以上のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択すると予測し、ドライバーが利用する頻度が所定値未満のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択しないと予測することができる。」

上記記載事項から、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

〔引用文献3記載事項〕
「車両の走行シーンに基づいて、ドライバーが車線変更を選択するか否かを予測し、ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合には、ドライバーが車線変更を選択する前に、車両が車線変更可能なスペースが検出された状態で走行するための車両の車速を算出し、当該車速で車両の走行を制御するものにおいて、車線変更の予測は、ドライバーの走行履歴に基づいて、SA/PAの利用頻度を判断し、ドライバーが利用する頻度が所定値以上のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択すると予測し、ドライバーが利用する頻度が所定値未満のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択しないと予測すること。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明Aとを対比すると、引用発明Aの「車両A1」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本願発明1の「第1車両」に相当し、以下同様に、「車両A2」は「第2車両」に、「車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5」は「第1車両に乗車する第1運転者の今後の運転に関する情報を特定する第1特定ステップ」に、「その行動予定内容に対応付けられる諾否判定用挙動として、例えば、「自車両の左斜め前方の車両が自車両の前方への割り込みを要求しています。許諾される場合は減速を行って下さい」といった音声出力を車両A2のドライバに向けて行うステップS24」は「第2車両に乗車する第2運転者に、取得した情報にもとづいて導出した運転支援情報を通知する第1通知ステップ」に、それぞれ相当する。
引用発明Aの「運転支援ユニット1a」と本願発明1の「第1エージェント」とは、「第1の装置」という限りにおいて一致し、以下同様に、「運転支援ユニット1b」と「第2エージェント」とは、「第2の装置」という限りにおいて一致し、「車両A1に搭載された運転支援ユニット1aと車両A2に搭載された運転支援ユニット1bとが通信する方法」と「第1車両に搭載された第1エージェントと第2車両に搭載された第2エージェントとが連携するエージェント連携方法」とは、「第1車両に搭載された第1の装置と第2車両に搭載された第2の装置とが通信する方法」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「第1車両に搭載された第1の装置と第2車両に搭載された第2の装置とが通信する方法であって、
前記第1の装置が第1車両に乗車する第1運転者の今後の運転に関する情報を特定する第1特定ステップと、
前記第2の装置が前記第1の装置により特定された情報を取得して、第2車両に乗車する第2運転者に、取得した情報にもとづいて導出した運転支援情報を通知する第1通知ステップと、を含む、方法。」

〔相違点1〕
「第1車両に搭載された第1の装置と第2車両に搭載された第2の装置とが通信する方法」に関して、本願発明1においては、第1車両に搭載された第1「エージェント」と第2車両に搭載された第2「エージェント」とが「連携するエージェント連携」方法であるのに対して、引用発明Aにおいては、車両A1に搭載された運転支援ユニット1aと車両A2に搭載された運転支援ユニット1bとが通信する方法である点。

〔相違点2〕
本願発明1においては、第1特定ステップにおいて、前記第1エージェントは、第1運転者の今後の運転に関する情報を、第1運転者の「運転傾向を示すパラメータを含む第1運転者の運転属性に関する情報にもとづいて推定する」のに対して、引用発明Aにおいては、運転支援ユニット1aが、車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5において、行動予定内容は、状況判定部25aで判定される状況別に予めテーブル等で対応付けられており、状況判定部25aで判定される状況に応じて特定される点。

事案に鑑み、上記相違点2について検討する。

(1)理由1(新規性)について
上記相違点2は、実質的な相違点である。
したがって、本願発明1は引用発明Aではない。

(2)理由2(進歩性)について
引用文献2記載事項は、割込みが必要な状況になったことを、ドライバによる音声コマンドの発話により判定することを開示するが、ドライバーの運転傾向に基いて、割込みが必要な状況になったことを判定することを開示ないし示唆するものでない。
引用文献3記載事項は、ドライバーの走行履歴に基づいて、SA/PAの利用頻度を判断し、利用頻度が所定値以上のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択すると予測し、ドライバーが利用する頻度が所定値未満のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択しないと予測することを開示するが、あくまでも、「SA/PAの利用頻度」に基づいて車線変更を選択するか否かを予測するものに過ぎず、「ドライバーの運転傾向」に基いて、車線変更を選択するか否かを予測することを開示ないし示唆するものでない。
よって、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
また、他に、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、周知の技術又は設計的事項であることを示す証拠や根拠はない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明A、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明1の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本願発明1に対して述べたのと同様の理由により、本願発明2ないし4は、引用発明Aではなく、また、引用発明A、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明5について
本願発明5と引用発明Bとを対比すると、引用発明Bの「車両A1」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本願発明1の「第1車両」に相当し、以下同様に、「車両A2」は「第2車両」に、「車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5」は「第1車両に乗車する第1運転者の今後の運転に関する情報を特定する第1特定ステップ」に、それぞれ相当する。
引用発明Bの「運転支援ユニット1a」と本願発明1の「第1エージェント」とは、「第1の装置」という限りにおいて一致し、以下同様に、「運転支援ユニット1b」と「第2エージェント」とは、「第2の装置」という限りにおいて一致し、「車両A1に搭載された運転支援ユニット1aと車両A2に搭載された運転支援ユニット1bとが通信する方法」と「第1車両に搭載された第1エージェントと第2車両に搭載された第2エージェントとが連携するエージェント連携方法」とは、「第1車両に搭載された第1の装置と第2車両に搭載された第2の装置とが通信する方法」という限りにおいて一致し、「車両A1に搭載された運転支援ユニット1aが、ステップS5で特定された行動予定内容を車両A2に搭載された運転支援ユニット1bに送信するステップS6」と「前記第1エージェントにより特定された情報を前記第2エージェントで取得可能に送信する送信ステップ」とは、「前記第1の装置により特定された情報を前記第2の装置で取得可能に送信する送信ステップ」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「第1車両に搭載された第1の装置と第2車両に搭載された第2の装置とが通信する方法であって、
前記第1の装置が第1車両に乗車する第1運転者の今後の運転に関する情報を特定する第1特定ステップと、
前記第1の装置により特定された情報を前記第2の装置で取得可能に送信する送信ステップと、を含む、方法。」

〔相違点3〕
「第1車両に搭載された第1の装置と第2車両に搭載された第2の装置とが通信する方法」に関して、本願発明5においては、第1車両に搭載された第1「エージェント」と第2車両に搭載された第2「エージェント」とが「連携するエージェント連携」方法であるのに対して、引用発明Bにおいては、車両A1に搭載された運転支援ユニット1aと車両A2に搭載された運転支援ユニット1bとが通信する方法である点。

〔相違点4〕
本願発明5においては、第1特定ステップにおいて、前記第1エージェントは、第1運転者の今後の運転に関する情報を、第1運転者の「運転傾向を示すパラメータを含む第1運転者の運転属性に関する情報にもとづいて推定する」のに対して、引用発明Bにおいては、運転支援ユニット1aが、車両A1が予定している行動予定内容を特定するステップS5において、行動予定内容は、状況判定部25aで判定される状況別に予めテーブル等で対応付けられており、状況判定部25aで判定される状況に応じて特定される点。

事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
上記相違点4は、本願発明1と引用発明Aとの対比における相違点2と実質的に同じであって、実質的な相違点である。
そして、上記相違点2についての検討において述べたのと同様の理由により、上記相違点4に係る本願発明5の発明特定事項は、引用発明B、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものではない。
したがって、上記相違点3について検討するまでもなく、本願発明5は、引用発明Bではなく、また、引用発明B、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-12-06 
出願番号 P2018-006626
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G08G)
P 1 8・ 121- WY (G08G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 河端 賢
特許庁審判官 木村 麻乃
鈴木 充
発明の名称 エージェント連携方法  
代理人 村田 雄祐  
代理人 森下 賢樹  
代理人 三木 友由  

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