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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1392909
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-28 
確定日 2023-01-10 
事件の表示 特願2019−222684「媒体および情報入力システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日出願公開、特開2020− 53085、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯等

出願分割の経緯の概略

本願は,令和元年12月10日にされた特許法44条1項の規定による特許出願であって,2011年(平成23年)11月22日(優先権主張 平成22年11月22日)を国際出願日とする特願2012−545774号を最先の出願とする,いわゆる第5世代の分割出願であるところ,出願の分割の経緯は,次のとおりである。なお,括弧内は当該出願の提出日を示す。

最先の出願:特願2012−545774号(平成23年11月22日)
第1世代 :特願2013−117228号(平成25年 6月 3日)
第2世代 :特願2016−116533号(平成28年 6月10日)
第3世代 :特願2018− 48287号(平成30年 3月15日)
第4世代 :特願2018−199701号(平成30年10月24日)
本願 :特願2019−222684号(令和 元年12月10日)

2 手続の経緯の概略

本願の手続の経緯は,概略,以下のとおりである。

令和2年 3月18日 :手続補正書の提出
令和3年 3月29日付け:拒絶理由通知
令和3年 6月 3日 :意見書,手続補正書の提出
令和3年11月26日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年 2月28日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
令和4年 8月 9日付け:拒絶理由(最後)(当審拒絶理由)通知
令和4年10月 6日 :意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定の概要は,次のとおりである。

1.(新規事項)令和2年3月18日提出の手続補正書でした請求項20ないし22に係る補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.(進歩性)この出願の請求項2,24に係る発明は,以下の引用文献1,および2に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,
この出願の請求項1,3−6,8−10,13−15,23,25,26に係る発明は,以下の引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,
この出願の請求項7,11,12に係る発明は,以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,
この出願の請求項16−19に係る発明は,以下の引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1: 特開2007−144145号公報
引用文献2: 特開2008−110206号公報
引用文献3: 特表2009−542259号公報
引用文献4: 特開2007−021034号公報
引用文献5: 特開2010−176710号公報

第3 本願発明

本願請求項1〜23に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」〜「本願発明23」という。)は,令和4年10月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜23に記載された事項により特定される,次のとおりの発明である。

「【請求項1】
タッチパネルと,
前記タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と,
前記タッチパネルに載置される薄板状の媒体と,を備える情報入力システムであって,
前記情報処理手段は,
指またはスタイラスペンによる前記媒体の所定の位置へのタッチ位置から形成されるタッチパターンまたは,該タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターンから定義されるコード情報を含む媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得する,情報入力システム。
【請求項2】
タッチパネルと,
前記タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と,
前記タッチパネルに載置される薄板状の媒体と,を備える情報入力システムであって,
前記情報処理手段は,
前記媒体面にテキストおよび/またはイメージが指またはスタイラスペンで描画されることにより,前記テキストおよび/または前記イメージから定義されるコード情報を含む媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得する,情報入力システム。
【請求項3】
前記情報処理手段は,さらに,指またはスタイラスペンが前記媒体面を,タッチおよび/または滑動するタッチ操作によりタッチした位置を特定するための,当該タッチパネルの座標系における座標値を認識する,請求項1または2記載の情報入力システム。
【請求項4】
前記情報処理手段は,前記タッチパネルの座標系における座標値を,前記媒体情報に基づき前記媒体面におけるタッチ位置を特定するための,該媒体面の座標系における座標値に変換する,請求項3記載の情報入力システム。
【請求項5】
前記情報処理手段は,
さらに,前記媒体の座標系における座標値と対応付けられた操作指示に基づく処理を,当該対応付けを記憶した記憶手段を参照して実行する,請求項4記載の情報入力システム。
【請求項6】
前記操作指示は,前記媒体面を滑動した文字や図形で認識される,請求項5記載の情報入力システム。
【請求項7】
前記媒体は,該媒体面へのタッチまたは描画を誘導するテキストおよび/またはイメージ,もしくは手書き入力領域が印刷されている,請求項1または2記載の情報入力システム。
【請求項8】
前記情報処理手段は,記憶手段を参照することにより,前記コード情報と関連付けられた前記媒体の形状および大きさを復号する,請求項1または2記載の情報入力システム。
【請求項9】
前記タッチパターンは,少なくとも2つの前記所定の位置または該所定の位置を示す少なくとも2つのマークが所定の順番でタッチされることにより形成される,請求項1記載の情報入力システム。
【請求項10】
前記タッチパターンは,少なくとも3つの前記所定の位置または該所定の位置を示す少なくとも3つのマークがタッチされることにより形成される,請求項1記載の情報入力システム。
【請求項11】
前記情報処理手段は,
前記所定の位置または前記マークが最初にタッチされた時間を基準とし,次に前記所定の位置または前記マークをタッチするまでの経過時間を計測し,該経過時間,または該経過時間と前記タッチパターンとの組み合わせにより,前記媒体のコード情報を認識する,請求項9または10に記載の情報入力システム。
【請求項12】
前記媒体情報の認識は前記媒体のユーザー認証を兼ねる,請求項1〜11のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項13】
前記マークは,媒体面に印刷された数字,文字,記号,アイコン等のテキストおよび/またはイメージである,請求項9または10に記載の情報入力システム。
【請求項14】
前記所定の位置は,前記媒体の角部近傍の位置または前記媒体の外縁部近傍の位置である,請求項1,9または10のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項15】
前記所定の位置は,媒体面に設けられた孔部および/または切り欠き部により示される位置である,請求項1,9または10のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項16】
前記媒体の載置面には,滑り止めまたは粘着剤が設けられている,請求項1〜15のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項17】
前記媒体の形状はカード状またはコイン状である,請求項1〜16のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項18】
前記情報処理手段は,
さらに,前記媒体情報と対応付けられたアプリケーションおよび/またはコンテンツを起動させ,前記媒体面をタッチおよび/または滑動するタッチ操作で該アプリケーションおよび/またはコンテンツの実行を制御する,請求項1〜17のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項19】
前記情報入力システムは,
さらに,情報処理装置を備え,
前記媒体情報と対応付けられたアプリケーションおよび/またはコンテンツを該情報処理装置において起動させ,前記媒体面をタッチおよび/または滑動するタッチ操作で該アプリケーションおよび/またはコンテンツの実行を制御する請求項1〜18のいずれかに記載の情報入力システム。
【請求項20】
タッチパネルを備える情報処理手段に実行させるプログラムであって,
前記タッチパネルには薄板状の媒体が載置されるものとし,
指またはスタイラスペンによる前記媒体の所定の位置へのタッチ位置から形成されるタ
ッチパターンまたは,該タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパター
ンから定義されるコード情報を含む媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向
の少なくともいずれか,を取得することを情報処理手段に実行させるプログラム。
【請求項21】
タッチパネルを備える情報処理手段に実行させるプログラムであって,
前記タッチパネルには薄板状の媒体が載置されるものとし,
前記媒体面にテキストおよび/またはイメージが描画されることにより,前記テキストおよび/または前記イメージから定義されるコード情報を含む媒体情報と共に,前記媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得することを情報処理手段に実行させるプログラム。
【請求項22】
タッチパネルに載置される媒体であって,
前記タッチパネルにおける,指またはスタイラスペンによる該媒体の所定の位置へのタッチ位置から形成されるタッチパターンまたは,該タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターンから定義されるコード情報を含む媒体情報と共に,前記媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を情報処理手段が取得するための操作を指示するイメージおよび/またはテキストが印刷されている,媒体。
【請求項23】
タッチパネルに載置される媒体であって,
前記タッチパネルにおける,ユーザーがテキストおよび/またはイメージを描画することにより,前記テキストおよび/または前記イメージから定義されるコード情報を含む媒体情報と共に,前記媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を情報処理手段が取得するための操作を指示するイメージおよび/またはテキストが印刷されている,媒体。」

第4 引用文献の記載,引用発明等

1 引用文献1

(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には,図面とともに,次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,タッチパネルを用いた携帯型ゲーム機器に関する。
【背景技術】
【0002】
キャラクタが印刷されたカードを収集し,当該カードに印刷されたパラメータによって,カードの所持者同士でデッキ上でカードを配置して対戦を行うカードゲームが知られている(特許文献1:特開2005−46649号公報)。
【0003】
一方,ビデオゲーム装置のシミュレーションゲームやロールプレイングゲームでは,キャラクタ毎に生命力,体力,攻撃力,守備力,魔法,武器,道具等のパラメータ属性を付与して,キャラクタ毎またはキャラクタの集合体であるパーティ毎に対戦を行うゲームが知られている。
【0004】
前記カードゲームをビデオゲームと融合させることができれば,実際に売買されるカード市場が活況を呈することが予想されるため,カードに設定された前記パラメータ属性をゲーム機器側に入力する技術がいくつか考えられている。
【0005】
第1は,カードに設定された前記属性パラメータを,ゲーム機器のコントローラの押釦やキーを用いてゲーム機器に入力し直すことが考えられるが,入力作業が繁雑でありかえってゲーム意欲を削いでしまい現実的でない。
【0006】
第2は,カード自体をICカードやRFIDカードのようなメモリを備えたカード構成とし,ゲーム装置に設けられたカードリーダを介してカードに設定されたパラメータ属性をゲーム装置側に入力させることが考えられる。しかし,この技術は1枚あたりのカードコストが嵩んでしまい,かつゲーム装置にカードリーダのような別機器を接続しなければならないため,現実的な普及が困難と考えられる。
【0007】
第3は,カードの一面にバーコードや光学読取装置で認識可能な特殊な形状のコードを印刷しておき,ゲーム装置に光学読取装置(スキャナ)等を接続して,カードに設定されたパラメータをゲーム装置側に読み取るシステムも考えられる。
【特許文献1】 特開2005−46649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,上記のような第3の技術に示された技術においても,カードに印刷されたコードを読み取るためには,特殊な読取装置が必要であるため,ゲームセンターに設置されるような大型のゲーム機器にしか対応することができなかった。
【0009】
小型で汎用の携帯型ゲーム機器にケーブルやアタッチメントで光学読取装置を接続することも考えられるが,光学読取装置が別機器となるため,子供や青少年を対象にした低コスト性が要求される携帯型ゲーム機器では,普及が難しかった。
【0010】
本発明は,このような点に鑑みてなされたものであり,既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる技術を実現することを技術的課題とする。」

イ 図1


ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に,本発明の実施形態を図を用いて説明する。
図1は,小型情報機器としての携帯ゲーム機1にテンプレートカード2を載置してタッチパネル(タッチパネル式液晶表示画面)14への入力を行っている状態を示す説明図である。
【0031】
本実施形態において,携帯ゲーム機1は,たとえばゲーム機本体11の上面と,開閉自在な蓋体12の内側面にそれぞれ液晶表示画面13,14を有しており,ゲーム機本体11の上面側の液晶表示画面14にはタッチパネル(タッチパネル式液晶表示画面)が形成されており,タッチペン3のペン先で入力された軌跡が連続した座標情報として認識可能となっている。」

エ 図4


オ 「【0033】
携帯ゲーム機1の内部構成は,図4に示すように,中央処理装置CPUを中心に,バスBUSで接続されたメインメモリMM,初期プログラムが登録されたROMを有している。
【0034】
また,前記バスBUSにはコネクタ端子が接続されており,該コネクタ端子には,ゲームカートリッジが装着されるようになっている。
【0035】
ゲームカートリッジは,ゲームプログラムとタッチペン3の軌跡の認識アルゴリズムが登録されたROMと,ユーザデータが記録されるフラッシュメモリを有している。
【0036】
またバスBUSには,前記液晶表示画面13とタッチパネル式液晶表示画面14が接続され,画像・動画の表示およびタッチペン3での軌跡入力が可能となっている。」

カ 図2


キ 「【0039】
前記タッチパネル式液晶表示画面14に載置されるテンプレートカード2は,図2に示すように,薄板状の紙または合成樹脂からなるクレジットカードサイズのカードであり,当該テンプレートカード2の表面には,モンスター等のキャラクタが印刷されている。
【0040】
このように,テンプレートカード2はそれぞれにキャラクタが印刷された交換価値のあるトレーディングカード,ゲームカードとして機能する。
【0041】
当該テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタには,当該キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21が形成されている。本実施形態のテンプレートカード2は,図8(a)に示すように,キャラクタ等の印刷が施されたカード本体2bと,このカード本体2bをラミネートする表面シート2a及び裏面シート2cとからなるラミネートカードである。そしてスリット21は,所定幅(たとえば0.5mm〜2mm)程度でテンプレートカード2の表裏面を貫通する溝で構成されており,キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成したものであることが好ましい。
【0042】
当該スリット21には,タッチペン3の先端部分が入り込んだ状態でスライドさせることができるようになっており,当該テンプレートカード2の下に位置するタッチパネル式液晶表示画面上に,前記キャラクタの特徴的な形状を筆跡として入力できるようになっている。
【0043】
前記テンプレートカード表面のキャラクタの側部には,コマンド入力のためのスリット(コマンド入力用スリット)22a,22b,22cが3個縦方向に形成されている。これらのコマンド入力用スリット22a,22b,22cも,所定幅(たとえば0.5mm〜2mm)程度でテンプレートカード2の表裏面を貫通する溝で構成されており,一筆書き状の形状としてそれぞれ形成されている。なお,例えば,コマンド入力用スリット22aは,コマンド「ジーマジーマ」に対応したスリットであり,コマンド入力用スリット22bは,コマンド「ミヤゥ」に対応したスリットであり,コマンド入力用スリット22cは,コマンド「キイタチ」に対応したスリットである。
【0044】
携帯ゲーム機1のゲームカートリッジ内のROMには,タッチパネル式液晶表示画面上でタッチペン3によって前記スリットに対応した筆跡入力がなされた場合の認識アルゴリズムがプログラムとして登録されており,認識毎にIDが付与され,認識IDとキャラクタとの対応テーブル(図6参照)に基づいて,キャラクタの割り込み信号が発生し,バスBUSを介して中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている。
【0045】
したがって,図2に示したキャラクタの形状が認識された場合,このキャラクタ(ここでは「ゼファー・D」)がユーザによって選択されたことになる。
【0046】
このような形状認識において,本実施形態ではテンプレートカード2を用いてタッチペン3によってスリット形状通りの筆跡入力がなされるため,テンプレートカード2を用いない自由状態での入力に較べて筆跡の再現性が極めて高いため,より確実な形状認識を行うことができる。
【0047】
また,ユーザが,タッチペン3によってコマンド入力用スリット22a,22b,22cに沿って入力を行った場合には,認識IDとコマンドとの対応テーブル(図7参照)に基づいて,コマンドの割り込み信号が発生し,バスBUSを介して中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている。したがって,これらのコマンド(たとえば,ジーマジーマ,ミヤゥ,キイタチ)に対応したコマンドが実行されることになる。
【0048】
このように,本実施形態では,テンプレートカード自体にゲームの媒体として交換価値を持たせるとともに,入力補助道具としてテンプレートカード毎に設定されたキャラクタ属性やコマンド等の入力を容易化する機能を持たせることができる。」

(2)上記(1)より,特に,下線部に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「タッチパネルを用いた携帯型ゲーム機器に関し,
交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる小型情報機器としての携帯ゲーム機1であって,テンプレートカード2を載置してタッチパネル(タッチパネル式液晶表示画面)14への入力を行うものであり,
携帯ゲーム機1は,たとえばゲーム機本体11の上面と,開閉自在な蓋体12の内側面にそれぞれ液晶表示画面13,14を有しており,ゲーム機本体11の上面側の液晶表示画面14にはタッチパネル(タッチパネル式液晶表示画面)が形成されており,タッチペン3のペン先で入力された軌跡が連続した座標情報として認識可能となっており,
携帯ゲーム機1の内部構成は,中央処理装置CPUを中心に,バスBUSで接続されたメインメモリMM,初期プログラムが登録されたROMを有しており,
前記バスBUSにはコネクタ端子が接続されており,該コネクタ端子には,ゲームカートリッジが装着されるようになっており,ゲームカートリッジは,ゲームプログラムとタッチペン3の軌跡の認識アルゴリズムが登録されたROMと,ユーザデータが記録されるフラッシュメモリを有しており,
またバスBUSには,前記液晶表示画面13とタッチパネル式液晶表示画面14が接続され,画像・動画の表示およびタッチペン3での軌跡入力が可能となっており,
前記タッチパネル式液晶表示画面14に載置されるテンプレートカード2は,薄板状の紙または合成樹脂からなるクレジットカードサイズのカードであり,当該テンプレートカード2の表面には,モンスター等のキャラクタが印刷されており,テンプレートカード2はそれぞれにキャラクタが印刷された交換価値のあるトレーディングカード,ゲームカードとして機能しており,
当該テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタには,当該キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21が形成されており,スリット21は,所定幅(たとえば0.5mm〜2mm)程度でテンプレートカード2の表裏面を貫通する溝で構成されており,キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成したものであることが好ましく,
前記テンプレートカード表面のキャラクタの側部には,コマンド入力のためのスリット(コマンド入力用スリット)22a,22b,22cが3個縦方向に形成されており,これらのコマンド入力用スリット22a,22b,22cも,所定幅(たとえば0.5mm〜2mm)程度でテンプレートカード2の表裏面を貫通する溝で構成されており,一筆書き状の形状としてそれぞれ形成されており,例えば,コマンド入力用スリット22aは,コマンド「ジーマジーマ」に対応したスリットであり,コマンド入力用スリット22bは,コマンド「ミヤゥ」に対応したスリットであり,コマンド入力用スリット22cは,コマンド「キイタチ」に対応したスリットであり,
携帯ゲーム機1のゲームカートリッジ内のROMには,タッチパネル式液晶表示画面上でタッチペン3によって前記スリットに対応した筆跡入力がなされた場合の認識アルゴリズムがプログラムとして登録されており,認識毎にIDが付与され,認識IDとキャラクタとの対応テーブルに基づいて,キャラクタの割り込み信号が発生し,バスBUSを介して中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている
小型情報機器としての携帯ゲーム機1。」

2 引用文献2

原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献2には,図面とともに,次の記載がある。

ア 図53


イ 「【0190】
図53は,本発明の他の実施形態を示したものである。すなわち,この実施形態ではドットパターンを用いることなく,カードのID認識(媒体IDの認識)が可能となっている。
【0191】
同図に示すように,パネル筐体であるタッチパネル筐体はカードの形状に対応した側壁部を有しており,この側壁内面にカードの周縁を嵌め込むことによって,タッチパネル筐体面上にカードが固定されるようになっている。
【0192】
また,カードには半円状の切欠部を有しており,この切欠部に指先を挿入することでタッチパネル表面からカードを離脱させることができるようになっている。
【0193】
なお,切欠部は,図53(a)に示したようにカード側に設けた場合の他,図53(b)に示すように側壁部側に設けてもよい。
前記側壁部には図12等で説明した発光素子・受光素子が配列されており,発光素子の照射光を指先等が遮ることによりその座標位置を認識可能なタッチパネルを構成している。
【0194】
本実施形態では,カードが常にタッチパネル面上の所定位置に固定されるため,タッチパネルで認識される座標系と,カード表面の座標系とが一致するため,タッチパネル筐体側にタッチパネル以外のカードの位置認識を行う必要がない。
【0195】
カード内には,RF−ID素子が内蔵されており,このRF−ID素子内のメモリにはカードIDが登録されている。
【0196】
タッチパネル筐体にはRF−ID素子と通信可能な送受信素子が設けられており,タッチパネル筐体に固定されたカードのカードIDが認識可能となっている。
【0197】
なお,中央処理装置(CPU)等の制御手段(図示せず)は,タッチパネル筐体内に設けられていてもよいし,このタッチパネル筐体に接続されたパーソナルコンピュータ側の中央処理装置(CPU)等の制御手段を用いてもよい。
【0198】
本実施形態では,タッチパネル筐体の送受信素子がカードIDを認識すると,制御手段は,このカードIDに対応してあらかじめ登録されたアプリケーションを起動する。
そして,次に制御手段は,タッチパネルからの信号によってカード表面のどの部分(位置)が指先等でタッチされたかを認識して,その位置に対応したオペレーション(たとえば動画の再生,停止等)を行う。
【0199】
なお,タッチパネルは図12に示した光学的に座標を認識するものであってもよいし,感圧式のものであってもよい。また,指先以外のタッチペン等でカード表面の所定位置をタッチするものであってもよい。
【0200】
なお,図53(a)では,カードIDはRF−ID素子に格納した場合で説明したが,カードIDが登録できる手段であればいかなるものであってもよく,図53(b)に示すようなQRコード,バーコード,ドットパターン,その他の印刷コードをカード裏面に印刷しておいてもよい。また,その他の認識手段によるものであってもよい。」

ウ 図55


エ 「【0217】
図55は,タッチパネル筐体の上面がステージ面として構成されており,このステージ面の任意の位置にカードを載置することができるようになっている。
【0218】
カードの内部にはカードIDを登録したRF−IDが内蔵されており,タッチパネル筐体内の送受信素子と通信することによって,タッチパネル筐体内またはパーソナルコンピュータ側の制御手段がカードIDを認識することが可能となっている。
【0219】
また,タッチパネル筐体側の送受信素子は,その電波の強弱によって,タッチパネル上に載置されたカードの中心位置と向きとが検出可能となっており,タッチパネル座標でのカード中心位置とカードの向き(角度)とを検出する。
【0220】
これはたとえば,カードに周波数またはIDの異なるRF−IDを2個内蔵させることによって,位置(カード中心位置)および向きの認識が可能となる。
【0221】
もちろん,1個のRF−IDであってもよい。
【0222】
一方,タッチパネルからは指先等のタッチ位置が座標情報として入力されるようになっており,これらの情報を演算処理することによって,任意に配置されたカード上のどの部分がタッチされたかを認識することができ,そのタッチされたカード表面の図形(写真),記号または文字に的確に対応したオペレーションが可能となる。」

3 引用文献3

原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本開示は電子ゲームに関する。特に,本開示は有形オーバーレイカードを有する電子ゲームに関する。」

イ 図1


ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は,本発明による使用に適したゲーム装置又はコンソール10の一実施形態を示す。コンソール10には,主本体12及びカバー本体14が含まれ,これらは,主本体12の上縁部及びカバー本体14の下縁部に沿って互いに接続される。図1に示す実施態様では,主本体12のヒンジ部がカバー本体14のヒンジ部と噛み合い,ヒンジピン(図示せず)が位置合わせされたヒンジ部を通って延びる。
【0013】
図1の例では,第1の表示画面32が,主本体12の上面26に埋め込まれる。表示画面32は,例えば,バックライト式カラー液晶ディスプレイ(LCD)が含まれる。表示画面32はタッチセンサー付きで,スタイラス71によってアクティブにすることができる。スタイラス71は,タッチスクリーン32をアクティブにするために使用される,先端部が丸められたプラスチックの鉛筆形の器具である。表示画面32の縁部30の移行部は,テーパが付いていてもよく,湾曲してもよく,又は切り立っていてもよい。縁部30は,オーバーレイカード31の縁部33を表示画面32のエッジ30に揃えることにより,本発明によるオーバーレイカード31を位置合わせするのに都合のよい機構を提供する。」

エ 図2A


オ 図2B


カ 図2C


キ 「【0015】
図2A−図2Dは,本発明によるオーバーレイカードのいくつかの例示的な実施態様を示す。図2Aは,オーバーレイカード31がパターン201を含む図1に示すものと同様の一実施形態を示す。オーバーレイカード31は,紙,板紙,ボール紙,プラスチック,金属等の材料から作られる。特定の実施態様では,オーバーレイカード31はおよそトランプくらいの厚さであるが,特定の用途ではかなり厚くても薄くてもよい。
【0016】
一実施形態では,オーバーレイカード31は,特定のゲームコンソールの縁部30によって定められる溝部内にぴったりと合うようなサイズである。このようにして,カード31の一面がタッチスクリーン32に接し,カード31は,タッチスクリーン32と比較的高精度に位置合わせされる。他の実施形態では,オーバーレイカード31は,タッチスクリーン32よりも小さなサイズであってもよく,カード31をスクリーン32と位置合わせする他の何らかの手段が用いられる。例えば,タッチスクリーン32は,可視の位置合わせマークを使用してカード31をタッチスクリーン32に位置合わせできるようにする1つ又は複数の位置合わせマーク又はイメージを表示することができる。カード31は,紙,フォイル,プラスチックフィルム等の十分に柔軟性を有する材料でカード31を形成するようにすれば,タッチスクリーン32よりも大きくてもよい。
【0017】
パターン201は,図2Aの実施態様では,開けられた穴201によって定められる。穴201は,図3Aに示すようにカード31を貫通してもよく,又は図3Bに示すようにカード31に貫通しないように開けられていてもよい。あるいは,カード31に選択される材料が,印刷されたパターン上のスタイラスの動きがタッチスクリーン32で読み取れるくらい十分な順応性を有する場合,パターン201は,パンチされず又は穴もなく印刷されるだけであってもよい。
【0018】
このようにして,タッチスクリーン32へのユーザ入力ひいてはコンソール10上で実行されているゲーム又は他のプロセスが,パターン201によってガイドされる。図2Aにおいて,ユーザはカーソルをパターン201の各要素の内側又は各要素の上に置いて,それにより,その特定のパターン201によって指定される一連の入力の順番を特定する。特定の用途の必要性に合うように,多数の無制限のパターンを定めることができる。パターン201は,カード201内又はカード201上に物理的にコード化されるため,複雑な順番のボタン又はコントロールを覚える必要がなく,情報の入力が容易である。オーバーレイカード31は,効率的且つ安価に製造して流通させることができ,オーバーレイカード31に利用可能な多くの材料により,さらに顧客の関心を引くように広範囲に製品の差別化を行うことが可能である。
【0019】
図2Bは,カード31の表面上に印刷された印によって示される特定の順序で,ユーザがアクセスしなければならないパターン201の一実施形態を示す。単純な一連の番号が図2Bに示されるが,ユーザが所望の順番で選択するようにガイドしたり又は促したりするように,印に印刷した他の記号又はイメージを含めることができる。
【0020】
図2A及び図2Bの例では,パターンは点又はドットの集まりによって定められる。図2Cは,パターン201は線,弧,及び/又は二次元形を含む一実施形態を示す。一次元パターン又は二次元パターンは,カード31が画面32に接するように配置されたときに,ユーザがスタイラスでパターンに従うようにガイドする線又はエリアであってよい。図2Cの星形等のエリアの場合,カードを使用するには,形状の周縁をトレースするか,又はユーザが,スタイラスでエリアを擦ることによって形状を「塗りつぶす」必要があるかもしれない。さらに,特定のゲームでは,ユーザがカードパターン201を特定の方向にトレースする必要があるか,又は前後のようにパターンを複数回トレースする必要があるかもしれない。任意の実施形態において,ゲームによっては,特定のパターンを指定された時間制約内で辿ることが必要とされるかもしれない。」

4 引用文献4

原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献4には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明はゲームシステムに関し,特に,タッチパネルを有するゲーム機と当該タッチパネル上に着脱自在に載置されるカードとを備えたゲームシステムに関する。」

イ 図3


ウ 図4


エ 「【0035】
図3に,本実施形態に係るカードの一例を示す。
【0036】
カード40には,所定形状の孔41または切り込み42から成る孔部が形成されている。なお,図3の例では1枚のカードに孔部が2つ設けられている例を説明するが,本発明はこれに限らず,1枚のカードにたった一つまたは3つ以上の孔部が設けられていてもよい。また,孔41や切り込み42の形状は任意である。
【0037】
孔部41,42の近傍には,入力操作を開始すべき位置を示す「S」の文字と,入力操作を終了すべき位置を示す「G」の文字が記載されており,さらに孔41の近傍には入力操作を行うべき方向(すなわちタッチパネル15上でスティック16をスライドさせる方向)を示す矢印が記載されている。もちろん,入力操作を行うべき方向さえ分かれば,カード40に表示される印は任意である。なお,入力操作を行うべき方向を特に限定しない場合には,これらの印はカード40に記載する必要がないことは言うまでもない。
【0038】
プレイヤは,このカード40をゲーム機10のタッチパネル15の上に設置して,孔41または切り込み42に沿った入力操作を行う。カード40には切り欠き43が設けられており,この切り欠き43を図4のようにゲーム機10のヒンジ部と勘合させてカード40をタッチパネル15上に載置することで,プレイヤはカード40を所定位置に正しく配置することができる。
【0039】
カード40をタッチパネル15上の適切な位置に載置した状態でプレイヤが孔41の輪郭に沿ってスティック16をスライドさせると,この孔41に関連付けられた,ゲーム進行に影響を与えるイベントが発生する。このようなイベントの例としては,特定のアイテムを獲得したり,特定のキャラクタをゲーム世界に登場させたり,プレイヤキャラクタを次のステージに移動させたり,などが挙げられる。同様に,カード40をタッチパネル15上の適切な位置に載置した状態でプレイヤが切り込み42に沿ってスティック16をスライドさせると,この切り込み42に関連付けられたイベントが発生する。」

オ 図24


オ 「【0109】
(第3の変形例)
次に,第3の変形例として,プレイヤが孔部に沿ったスライド操作を行ったときに,そのスライド操作の速度をも考慮して,所定の入力操作が行われたかどうかを判別可能とした例を説明する。この変形例によれば,例えば図11のカード40の切り込み45をなぞるときに,停滞指示マーク47が付された区間についてはゆっくりとなぞり,その他の区間については通常の速度でなぞった場合にだけ,所定のイベントを発生させるといったことが可能となる。
【0110】
以下,この第3の変形例の処理について説明する。なお,軌跡データ変換値dの演算処理(図21に示したステップS44)以外の処理については第2の変形例と共通であるので,ここでは説明を省略する。
【0111】
図24は,第3の変形例における軌跡データ変換値dの演算処理の流れを示すフローチャートである。なお図24において,図22と同一の手順については同一の参照符号を付し,説明を省略する。
【0112】
ステップS70では,入力座標が通った認識領域の順番と,認識領域を通過する時間間隔(すなわち入力座標がある認識領域に入ってから次の認識領域に入るまでの時間間隔)を記録するための配列変数A[0,1,2,・・・,最大要素数−1]の全ての要素を0に初期化し,要素番号を示す変数mを0に初期化し,返り値である軌跡データ変換値dを0に初期化し,直前の認識領域に入ってからの経過時間を示す変数tを0に初期化する。配列変数Aの各要素には,入力座標が通った認識領域の認識番号pと,入力座標が直前に通った認識領域からその認識領域まで移動するのにかかった経過時間tが含まれている。
【0113】
ステップS71では,ステップS52で検出された識別番号pが,直前に記憶されたA[m−1].pの値(すなわち配列変数Aの第m番目の要素に格納されているpの値)と異なるかどうかを判断し,異なる場合にはステップS55に進み,異ならない場合にはステップS51に戻る。
【0114】
ステップS72では,ステップS52で検出された識別番号pと,その時点における経過時間tをA[m]に保存する。
【0115】
ステップS73では,経過時間tを0にリセットする。
【0116】
ステップS74では,配列変数Aと変数mに基づいて軌跡データ変換値dを計算する。以下,このステップS74の演算処理の詳細を図25のフローチャートを参照して説明する。なお,なお図25において,図23と同一の手順については同一の参照符号を付し,説明を省略する。
【0117】
ステップS64の後,ステップS75で変数jに0を代入する。
【0118】
また,ステップS67において変数iが変数mよりも小さいと判断された場合には,ステップS76に進む。そして,このステップS76で,A[i].tの値(すなわち配列変数Aの第i+1番目の要素に格納されているtの値)が予め定められた指定時間よりも小さいかどうかを判断し,小さい場合にはステップS75に戻り,小さくない場合にはステップS77に進む。
【0119】
ステップS77では,変数jに1を代入する。
【0120】
ステップS78では,軌跡データ変換値dを更新する。軌跡データ変換値dは,A[i]と変数iと変数jに基づいて更新される。ここでは一例として,その時点で保持されているdの値に対して(A[i].p+j)・(i+1)を加算することによって軌跡データ変換値dを更新している。これにより,入力座標がある認識領域に入ってから次の認識領域に入るまでの時間間隔が所定の指定時間よりも小さいか否かによってdの値が異なる値となるため,例えば図11のカード40の切り込み45をなぞるときに,停滞指示マーク47が付された区間についてはゆっくりとなぞり,その他の区間については通常の速度でなぞったかどうかをdの値によって判別可能となる。なお,ここではその時点で保持されているdの値に対して(A[i].p+j)・(i+1)を加算することによって軌跡データ変換値dを更新するとしたが,これは単なる一例に過ぎず,他の演算方法によって軌跡データ変換値dを更新してもよい。
【0121】
以上の処理の結果,プレイヤの入力操作に対応する軌跡データ変換値vが計算される。こうして計算された軌跡データ変換値vは,プレイヤが複数の孔部に沿った入力操作を行ったときに,その方向および順序および移動速さによって異なる値となる。したがって,プレイヤが複数の孔部をどういう順序でなぞったか,また各孔部をどの方向になぞったか,また孔部の各部分をどのような速さでなぞったかを判別し,この判別結果に応じてイベントを発生させることができる。」

5 引用文献5

原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献5には,図面とともに,次の記載がある。

ア 図1


イ 「【0049】
ところで,図1を参照すると,図1には本発明による情報入出力システムの典型的な利用形態が示されている。この例では,タッチパネル61を備えた表示装置60は,水平に近い状態で使用している。これは物理タグ20,21,22,28を載置した状態を保つためであるが,もし,摩擦力,粘着力,磁力などにより表示装置60が水平から傾いていても,物理タグ20,21,22,28が重力により移動することがなければその限りではない。その表示装置60による入出力インタフェースとして,従来型のGUIを利用してその表示を行っても良いし,アプリケーションごとに設計し直したGUIを利用してそのような表示を行っても良い。」

第5 対比・判断

1 本願発明1

(1)対比

本願発明1と,引用発明とを対比する。

ア 引用発明において,「タッチパネルを用いた携帯型ゲーム機器に関し,
交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる小型情報機器としての携帯ゲーム機1であって,テンプレートカード2を載置してタッチパネル(タッチパネル式液晶表示画面)14への入力を行うものであり,携帯ゲーム機1は,たとえばゲーム機本体11の上面と,開閉自在な蓋体12の内側面にそれぞれ液晶表示画面13,14を有しており,ゲーム機本体11の上面側の液晶表示画面14にはタッチパネル(タッチパネル式液晶表示画面)が形成されており,タッチペン3のペン先で入力された軌跡が連続した座標情報として認識可能となっており,携帯ゲーム機1の内部構成は,中央処理装置CPUを中心に,バスBUSで接続されたメインメモリMM,初期プログラムが登録されたROMを有しており,」「前記タッチパネル式液晶表示画面14に載置されるテンプレートカード2は,薄板状の紙または合成樹脂からなるクレジットカードサイズのカードであり,当該テンプレートカード2の表面には,モンスター等のキャラクタが印刷されており,テンプレートカード2はそれぞれにキャラクタが印刷された交換価値のあるトレーディングカード,ゲームカードとして機能しており,」「当該テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタには,当該キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21が形成されており,」「携帯ゲーム機1のゲームカートリッジ内のROMには,タッチパネル式液晶表示画面上でタッチペン3によって前記スリットに対応した筆跡入力がなされた場合の認識アルゴリズムがプログラムとして登録されており,認識毎にIDが付与され,認識IDとキャラクタとの対応テーブルに基づいて,キャラクタの割り込み信号が発生し,バスBUSを介して中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている」とされている。

ここで,引用発明の「タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる小型情報機器としての携帯ゲーム機1」は,本願発明1の「タッチパネルを入力手段とする情報処理手段」に相当するといえる。

また,引用発明の「タッチパネル式液晶表示画面14に載置されるテンプレートカード2は,薄板状の紙または合成樹脂からなるクレジットカードサイズのカード」は,本願発明1の「タッチパネルに載置される薄板状の媒体」に相当するといえる。

そして,引用発明において,「テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタには,当該キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21が形成されており,」「タッチパネル式液晶表示画面上でタッチペン3によって前記スリットに対応した筆跡入力がなされた場合」に,「認識IDとキャラクタとの対応テーブルに基づいて,」「中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている」から,
引用発明の「タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる小型情報機器としての携帯ゲーム機1」と「タッチパネル式液晶表示画面14に載置されるテンプレートカード2」とは,本願発明1と同様に,「情報入力システム」を構成しているといえる。

したがって,本願発明1と,引用発明とは,「タッチパネルと,
前記タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と,
前記タッチパネルに載置される薄板状の媒体と,を備える情報入力システムであ」る点で共通しているといえる。

イ 引用発明は,「テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタには,当該キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21が形成されており,」「タッチパネル式液晶表示画面上でタッチペン3によって前記スリットに対応した筆跡入力がなされた場合」に,「認識IDとキャラクタとの対応テーブルに基づいて,キャラクタの割り込み信号が発生し,バスBUSを介して中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている」とされている。

ここで,引用発明の「テンプレートカード2」,「キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21」,「タッチペン3」,「スリットに対応した筆跡入力」は,それぞれ,本願発明1の「媒体」,「媒体の所定の位置」,「スタイラスペン」,「所定の位置へのタッチ位置から形成されるタッチパターン」に相当する。

また,引用発明において,「筆跡入力がなされた場合の認識アルゴリズムがプログラムとして登録されており,認識毎にIDが付与され」(定義され)ていることから,引用発明の「スリットに対応した筆跡入力」から「認識」される「認識ID」は,本願発明1の「タッチパターン」「から定義されるコード情報」に相当するといえる。

さらに,引用発明の「テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタ」に対応する「キャラクタの割り込み信号」は,本願発明1の「媒体」に対応する「媒体情報」に相当するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記情報処理手段は,」「スタイラスペンによる前記媒体の所定の位置へのタッチ位置から形成されるタッチパターン」「から定義されるコード情報を含む媒体情報」「を取得する,情報入力システム」である点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,「タッチパターン」を「指またはスタイラスペンによ」って入力しているのに対し,引用発明では,指ではなくスタイラスペンによって入力している点で一応相違している。

また,本願発明1では,「タッチパターン」の選択的構成として,「タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターン」を含んでいるのに対して,引用発明では,このような「タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターン」を含んでいるか否か明らかでない点で一応相違している。

さらに,本願発明1では,「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」しているのに対し,引用発明では,媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得していない点で相違している。


(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「タッチパネルと,
前記タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と,
前記タッチパネルに載置される薄板状の媒体と,を備える情報入力システムであって,
前記情報処理手段は,
スタイラスペンによる前記媒体の所定の位置へのタッチ位置から形成されるタッチパターンから定義されるコード情報を含む媒体情報を取得する,情報入力システム。」

イ 相違点

(ア) 相違点1−1

本願発明1では,「タッチパターン」を「指またはスタイラスペンによ」って入力しているのに対し,引用発明では,指ではなくスタイラスペンによって入力している点。

(イ) 相違点1−2

本願発明1では,「タッチパターン」の選択的構成として,「タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターン」を含んでいるのに対して,引用発明では,このような「タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターン」を含んでいるか否か明らかでない点。

(ウ) 相違点1−3

本願発明1では,「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」しているのに対し,引用発明では,媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得していない点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,相違点1−3について検討する。

ア 本願発明1の相違点1−3に係る構成の「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」しているという構成について,上記第4の2で述べたように,引用文献2には,以下のような技術事項が記載されているといえる。

「タッチパネル筐体の上面がステージ面として構成されており,このステージ面の任意の位置にカードを載置することができるようになっており,
カードの内部にはカードIDを登録したRF−IDが内蔵されており,タッチパネル筐体内の送受信素子と通信することによって,タッチパネル筐体内またはパーソナルコンピュータ側の制御手段がカードIDを認識することが可能となっており,
タッチパネル筐体側の送受信素子は,その電波の強弱によって,タッチパネル上に載置されたカードの中心位置と向きとが検出可能となっており,タッチパネル座標でのカード中心位置とカードの向き(角度)とを検出しており,
カードに周波数またはIDの異なるRF−IDを2個内蔵させることによって,位置(カード中心位置)および向きの認識が可能となり,
タッチパネルからは指先等のタッチ位置が座標情報として入力されるようになっており,これらの情報を演算処理することによって,任意に配置されたカード上のどの部分がタッチされたかを認識することができ,そのタッチされたカード表面の図形(写真),記号または文字に的確に対応したオペレーションが可能となること。」

イ 一方,引用発明は,上記第4の1アで述べたように,「第2は,カード自体をICカードやRFIDカードのようなメモリを備えたカード構成とし,ゲーム装置に設けられたカードリーダを介してカードに設定されたパラメータ属性をゲーム装置側に入力させることが考えられる。しかし,この技術は1枚あたりのカードコストが嵩んでしまい,かつゲーム装置にカードリーダのような別機器を接続しなければならないため,現実的な普及が困難と考えられ」(【0006】),「カードの一面にバーコードや光学読取装置で認識可能な特殊な形状のコードを印刷しておき,ゲーム装置に光学読取装置(スキャナ)等を接続して,カードに設定されたパラメータをゲーム装置側に読み取るシステムも考えられる」(【0007】),「小型で汎用の携帯型ゲーム機器にケーブルやアタッチメントで光学読取装置を接続することも考えられるが,光学読取装置が別機器となるため,子供や青少年を対象にした低コスト性が要求される携帯型ゲーム機器では,普及が難しかった。」(【0009】)ところ,「本発明は,このような点に鑑みてなされたものであり,既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる技術を実現することを技術的課題と」(【0010】)しているとされる。

ウ 上記アで述べたように,引用文献2に記載された技術事項では,カード(媒体)に「RF−IDが内蔵されており,タッチパネル筐体内の送受信素子と通信することによって,タッチパネル筐体内またはパーソナルコンピュータ側の制御手段がカードIDを認識すること」を前提とする一方,上記イで述べたように,引用発明は,「カード自体をICカードやRFIDカードのようなメモリを備えたカード構成とし,ゲーム装置に設けられたカードリーダを介してカードに設定されたパラメータ属性をゲーム装置側に入力させ」たりすることなく,既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる技術を実現することを技術的課題と」しているから,引用発明に,引用文献2に記載された技術事項を適用するにあたって,阻害事由があるといえる。

エ また,引用文献3ないし5には,上記相違点1−3に係る構成について記載も示唆も無く,また,引用発明が前提とする「既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,」「カードリーダ」や「光学読取装置(スキャナ)等」「のような別機器を接続」することなく,「媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」することが周知であったとも認められない。

したがって,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者は本願発明1の相違点1−3に係る構成を容易に想到することができない。

オ 以上から,上記相違点1−1および1−2について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2

(1)対比

本願発明2と,引用発明とを対比する。

ア 上記1(1)アで述べたのと同様に,本願発明2と,引用発明とは,「タッチパネルと,
前記タッチパネルを入力手段とする情報処理手段と,
前記タッチパネルに載置される薄板状の媒体と,を備える情報入力システムであ」る点で共通しているといえる。

イ 引用発明は,「テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタには,当該キャラクタの特徴的な形状に沿ってスリット(キャラクタ入力用スリット)21が形成されており,スリット21は,所定幅(たとえば0.5mm〜2mm)程度でテンプレートカード2の表裏面を貫通する溝で構成されており,キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成したものであることが好ましく,」「タッチパネル式液晶表示画面上でタッチペン3によって前記スリットに対応した筆跡入力がなされた場合」に,「認識IDとキャラクタとの対応テーブルに基づいて,キャラクタの割り込み信号が発生し,バスBUSを介して中央処理装置CPUがこれを認識するようになっている」とされている。

ここで,引用発明の「テンプレートカード2」,「キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成した」「スリットに対応した筆跡入力」,「タッチペン3」は,それぞれ,本願発明2の「媒体」,「イメージが」「スタイラスペンで描画され」たもの,「スタイラスペン」に相当する。

また,引用発明において,「キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成した」「スリットに対応した筆跡入力」「がなされた場合の認識アルゴリズムがプログラムとして登録されており,認識毎にIDが付与され」(定義され)ていることから,引用発明の「キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成した」「スリットに対応した筆跡入力」から「認識」される「認識ID」は,本願発明2の「イメージから定義されるコード情報」に相当するといえる。

さらに,引用発明の「テンプレートカード2表面に印刷されたモンスター等のキャラクタ」に対応する「キャラクタの割り込み信号」は,本願発明2の「媒体」に対応する「媒体情報」に相当するといえる。

したがって,本願発明2と引用発明とは,「前記情報処理手段は,前記媒体面に」「イメージが」「スタイラスペンで描画されることにより,」「前記イメージから定義されるコード情報を含む媒体情報」「を取得する,情報入力システム」である点で共通しているといえる。

しかし,本願発明2では,「媒体面に」「描画される」ものが,「テキストおよび/またはイメージ」であるのに対し,引用発明では,「媒体面に」「描画される」ものが,イメージ(キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成したもの)である点で相違している。

また,本願発明2では,「媒体面に」「描画される」際に,選択的構成として,「指またはスタイラスペンで描画される」のに対して,引用発明では,「媒体面に」「描画される」際に,スタイラスペンで描画される点で一応相違している。

さらに,本願発明2では,「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」しているのに対し,引用発明では,媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得していない点で相違している。

イ 相違点

(ア) 相違点2−1

本願発明2では,「媒体面に」「描画される」ものが,「テキストおよび/またはイメージ」であるのに対し,引用発明では,「媒体面に」「描画される」ものが,イメージ(キャラクタの特徴的な形状を一筆書き状に形成したもの)である点。

(イ) 相違点2−2

本願発明2では,「媒体面に」「描画される」際に,選択的構成として,「指またはスタイラスペンで描画される」のに対して,引用発明では,「媒体面に」「描画される」際に,スタイラスペンで描画される点。

(ウ) 相違点2−3

本願発明2では,「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」しているのに対し,引用発明では,媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得していない点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,相違点2−3について検討する。

ア 本願発明2の相違点2−3に係る構成の「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」しているという構成について,上記第4の2で述べたように,引用文献2には,以下のような技術事項が記載されているといえる。

「タッチパネル筐体の上面がステージ面として構成されており,このステージ面の任意の位置にカードを載置することができるようになっており,
カードの内部にはカードIDを登録したRF−IDが内蔵されており,タッチパネル筐体内の送受信素子と通信することによって,タッチパネル筐体内またはパーソナルコンピュータ側の制御手段がカードIDを認識することが可能となっており,
タッチパネル筐体側の送受信素子は,その電波の強弱によって,タッチパネル上に載置されたカードの中心位置と向きとが検出可能となっており,タッチパネル座標でのカード中心位置とカードの向き(角度)とを検出しており,
カードに周波数またはIDの異なるRF−IDを2個内蔵させることによって,位置(カード中心位置)および向きの認識が可能となり,
タッチパネルからは指先等のタッチ位置が座標情報として入力されるようになっており,これらの情報を演算処理することによって,任意に配置されたカード上のどの部分がタッチされたかを認識することができ,そのタッチされたカード表面の図形(写真),記号または文字に的確に対応したオペレーションが可能となること。」

イ 一方,引用発明は,上記第4の1(1)アで述べたように,「第2は,カード自体をICカードやRFIDカードのようなメモリを備えたカード構成とし,ゲーム装置に設けられたカードリーダを介してカードに設定されたパラメータ属性をゲーム装置側に入力させることが考えられる。しかし,この技術は1枚あたりのカードコストが嵩んでしまい,かつゲーム装置にカードリーダのような別機器を接続しなければならないため,現実的な普及が困難と考えられ」(【0006】),「カードの一面にバーコードや光学読取装置で認識可能な特殊な形状のコードを印刷しておき,ゲーム装置に光学読取装置(スキャナ)等を接続して,カードに設定されたパラメータをゲーム装置側に読み取るシステムも考えられる」(【0007】),「小型で汎用の携帯型ゲーム機器にケーブルやアタッチメントで光学読取装置を接続することも考えられるが,光学読取装置が別機器となるため,子供や青少年を対象にした低コスト性が要求される携帯型ゲーム機器では,普及が難しかった。」(【0009】)ところ,「本発明は,このような点に鑑みてなされたものであり,既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる技術を実現することを技術的課題と」(【0010】)しているとされる。

ウ 上記アで述べたように,引用文献2に記載された技術事項では,カード(媒体)に「RF−IDが内蔵されており,タッチパネル筐体内の送受信素子と通信することによって,タッチパネル筐体内またはパーソナルコンピュータ側の制御手段がカードIDを認識すること」を前提とする一方,上記イで述べたように,引用発明は,「カード自体をICカードやRFIDカードのようなメモリを備えたカード構成とし,ゲーム装置に設けられたカードリーダを介してカードに設定されたパラメータ属性をゲーム装置側に入力させ」たりすることなく,既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,交換価値のあるカードに設定されたパラメータ属性やコマンドを,タッチパネルを介して小型情報機器側に簡単に入力することができる技術を実現することを技術的課題と」しているから,引用発明に,引用文献2に記載された技術事項を適用するにあたって,阻害事由があるといえる。

エ また,引用文献3ないし5には,上記相違点2−3に係る構成について記載も示唆も無く,また,引用発明が前提とする「既に普及しているタッチパネルを備えた小型情報機器において,」「カードリーダ」や「光学読取装置(スキャナ)等」「のような別機器を接続」することなく,「媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得」することが周知であったとも認められない。

したがって,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者は本願発明2の相違点2−3に係る構成を容易に想到することができない。

オ 以上から,上記相違点2−1および2−2について判断するまでもなく,本願発明2は,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明3−19

本願発明3ないし19は,いずれも,本願発明1あるいは2を引用したものであって,本願発明1あるいは2と同一の構成を備えるものであるから,上記1あるいは2の本願発明1あるいは2と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明20−23について

本願発明20および21は,本願発明1および2の発明のカテゴリを,単に,システムの発明から,プログラムの発明へと変更したものであり,本願発明22および23は,本願発明1および2の発明のカテゴリを,単に,システムの発明から,媒体の発明へと変更したものであるから,上記1あるいは2で述べた本願発明1あるいは2と同様の理由により,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断

1 理由1.(新規事項)について

原査定において新規事項を追加するものとされた令和3年6月3日提出の手続補正書における請求項20ないし23は,令和4年2月28日提出の手続補正書により削除されたため,令和4年10月6日提出の手続補正書により補正後の特許請求の範囲には,該当する請求項は存在しない。

よって,原査定の拒絶の理由1.(新規事項)は解消した。

2 理由2.(進歩性)について

上記第5のとおり,本願発明1〜23は,それぞれ,相違点1−3あるいは相違点2−3に係る発明特定事項,ないしは,それと類似する発明特定事項を有しているから,いずれも,引用発明および引用文献2ないし引用文献5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

よって,原査定の拒絶の理由2.(進歩性)は理由がない。

3 小括

以上から,原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について

1 当審拒絶理由

当審が令和4年8月9日付けで通知した当審拒絶理由(最後)は次のとおりである。

この出願は,特許請求の範囲の請求項1−23の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項1には,「指またはスタイラスペンによる前記媒体の所定の位置へのタッチ位置から形成されるタッチパターンまたは,該タッチ位置およびタッチした順番を含み形成されるタッチパターンから定義されるコード情報を含む媒体情報と,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれかと,を取得する」と記載されているが,取得する対象が不明確であり,「媒体情報」,「媒体の載置位置」,「載置方向」のいずれかを取得するのか,「媒体情報」に加えて,「媒体の載置位置」及び「載置方向」のいずれかを取得するのかが明確でない。換言すると,前者であれば,拒絶査定時の引用文献2(特開2008−110206号広報)のように,載置された媒体の位置や方向のみを取得するようなものを含む記載となっているため,発明の範囲が不明確である。
請求項2,20,21,22,23にも同様の記載があり,同じことが指摘される。
さらに,請求項1あるいは2を引用する請求項3−19についても同じことが指摘される。
よって,請求項1−23に係る発明は明確でない。

2 検討

これに対し,令和4年10月6日に提出された手続補正書による補正により,請求項1,2,20,21,22,23の「媒体情報と,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれかと,を取得する」を「媒体情報と共に,該媒体の載置位置,および載置方向の少なくともいずれか,を取得する」と補正した。
これにより,当該記載では,「媒体情報」に加えて,「媒体の載置位置」及び「載置方向」のいずれかを取得することが明確になり,請求項1,2,20,21,22,23に係る発明は,明りょうとなった。

また,請求項1あるいは2を引用する請求項3−19についても,同様に,明りょうとなった。

したがって,当審拒絶理由の上記1の理由は解消した。

第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-12-20 
出願番号 P2019-222684
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 石井 則之
野崎 大進
発明の名称 媒体および情報入力システム  

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