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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1393013
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-14 
確定日 2022-09-27 
事件の表示 特願2021−129800「空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和3年8月6日の出願であって、令和3年12月13日に手続補正がされ、令和3年12月17日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年2月21日に手続補正がされ、令和4年4月7日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に同日に上申書の提出がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和4年4月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に基いて、また、請求項2〜7に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004−85137号公報
2.特開2018−109468号公報

第3 本願発明
本願請求項1−7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明7」という。)は、令和4年2月21日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−7に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1の空気から水分を集め、前記水分によって加湿を行う空気調和装置(100)であって、
前記第1の空気に含まれる前記水分を吸着する第1領域(A1)と、吸着した前記水分を脱着する第2領域(A2)とを含む環状領域(A0)において回転するロータ(41)と、
前記第1領域において前記第1の空気を前記ロータに流す、吸着用ファン(44)と、
前記吸着用ファンを回転させる、回転数可変の第1モータ(44a)と、
前記第2領域において第2の空気を前記ロータに流し、前記ロータから放出された前記水分によって前記第2の空気を加湿する、加湿用ファン(43)と、
前記加湿用ファンを回転させる、回転数可変の第2モータ(43a)と、
前記第1モータの回転数を変更する制御部(9)と、
を備え、
前記制御部は、前記第2モータの回転数を、前記第1モータの回転数の変更と連動させて変更する、
空気調和装置。
【請求項2】
前記第1の空気の湿度を計測する第1湿度センサ(92)、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1湿度センサの計測結果に基づいて、前記第1モータの回転数を変更する、
請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記水分による加湿の対象空間の湿度を計測する第2湿度センサ(94)、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第2湿度センサの計測結果に基づいて、前記第1モータの回転数を変更する、
請求項1又は2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記対象空間における目標湿度と前記第2湿度センサの計測結果との差に基づいて、前記第1モータの回転数を変更する、
請求項3に記載の空気調和装置。
【請求項5】
前記ロータに向かって流れる前記第2の空気を加熱する、出力可変のヒータ(42)、をさらに備え、
前記制御部は、前記ヒータの出力を、前記第1モータの回転数の変更と連動させて変更する、
請求項1から4のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項6】
前記ロータを回転させる、回転数可変の第3モータ(41a)、
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1モータの回転数を変更するときに、さらに、前記第3モータの回転数を変更する、
請求項1から5のいずれかに記載の空気調和装置。
【請求項7】
前記環状領域は、内径(D1)が30mm以上90mm以下、外径(D2)が220mm以上320mm以下であり、
回転軸方向の前記ロータの寸法であるロータ厚みは、10mm以上50mm以下であり、
前記吸着用ファンの風量の下限値が、0m3/分よりも大きく3m3/分よりも小さい範囲にあり、前記吸着用ファンの風量の上限値が、3m3/分以上5m3/分以下の範囲にあるように、前記第1モータは回転数可変である、
請求項1から6のいずれかに記載の空気調和装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】
従来、加湿装置としては、加湿ロータと、上記加湿ロータを経由する吸着通路に設けられた吸着ファンと、上記加湿ロータを経由する加湿通路に設けられた加湿ファンと、上記加湿通路の加湿ロータよりも上流側に設けられたヒータとを備えものがある(特開2002−22246号公報参照)。この加湿装置は、室外において外気から加湿ロータに水分を吸着させた後、その加湿ロータから水分を脱着させて加湿した加湿空気を加湿ホースを通じて室内に供給する。そうすることにより、冬季の乾燥しやすい室内の湿度を調整して快適性を向上できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記加湿装置では、加湿ロータを一定回転数とし、吸着ファンの回転数制御によって加湿量の制御を行っている。この場合、加湿運転開始時に加湿ロータが急に一定回転数で回転を開始するため、加湿ロータに保水されていた水分が過剰に供給され、図5の上側に示すグラフの点線で囲まれた領域のように、加湿量のオーバーシュートが発生する。このような過剰な加湿により加湿ホース内に結露が発生し、その結露水により異音が発生して、ユーザーに不快感を与えるという問題がある。このとき、吸着ファンの回転数制御は、加湿ロータへの吸着通路の通風量を制御するようにしているため、既に加湿ロータに保水されている状態からの加湿運転開始時には、上記加湿量のオーバーシュートに対してはあまり有効でない。
【0004】
そこで、この発明の目的は、加湿運転開始時の加湿量のオーバーシュートを抑えて加湿ホース等の通路内の結露を防ぎ、通路内の結露水に起因する騒音の発生を防止することにより室内の快適性を向上できる加湿装置およびそれを用いた空気調和機を提供することにある。」

「【0013】
(第1実施形態)
図1はこの発明の第1実施形態の加湿装置を用いた空気調和機の概略ブロック図であり、1は室内ユニット、2は室外ユニット、3は上記室外ユニット2の上部に配置された加湿装置、4は上記室内ユニット1と加湿装置3とを接続する加湿ホースである。上記加湿装置3は、加湿運転を制御する制御部3aを有している。この空気調和機は、加湿装置3から加湿ホース4を介して室外ユニット1に加湿空気を供給して、室内を加湿する。
【0014】
また、図2は上記加湿装置3の要部のブロック図を示しており、この加湿装置3は、ケーシング10内に円板状の加湿ロータ11を配置している。上記加湿ロータ11は、吸着材を用いて例えばハニカム状または多孔多粒状に成形されており、加湿ロータ用モータ16によって軸11aを中心に回転する。また、上記ケーシング10内を仕切板15で仕切ることによって、加湿ロータ11をそれぞれ経由する吸着通路Aと加湿通路Bとを形成している。そして、上記加湿通路Bの加湿ロータ11の下流側に加湿ファン12を配置し、その加湿ファン12の下流側近傍に吹出温度センサ20を配置している。さらに、上記加湿通路Bの加湿ロータ11よりも上側の部分にヒータ14を設けている。また、上記吸着通路Aの加湿ロータ11よりも下流側に吸着ファン13を設けている。
【0015】
上記加湿ロータ用モータ16により回転する加湿ロータ11は、吸着ファン13により吸着通路Aの矢印方向に流れる空気から水分を吸着する一方、加湿通路Bの加湿ロータ11よりも下流側の加湿ファン12により、空気を矢印(加湿通路B)に示すように吸引して流すようにしている。このとき、ヒータ14で加熱された空気が加湿ロータ11を通り、加湿ロータ11によって加湿される(加湿ロータ11から水分を脱着する)。すなわち、上記加湿ロータ11が吸着した水分は、ヒータ14によって加熱された空気によって脱着されて、通過する空気を加湿する。そうして加湿された空気は、加湿ファン12によって図1に示す加湿ホース4を介して室内ユニット1に送られる。
【0016】
この加湿装置を用いた空気調和機は、加湿運転時、吸着ファン13,加湿ファン11の回転数を夫々一定にすると共に、ヒータ14の出力も一定にして、吹出温度と目標吹出温度との温度差を求めて、その温度差が小さくなるように、加湿ロータ11の回転数をフィードバック制御することによって、加湿量を制御する。
【0017】
図3は上記加湿運転開始時の初期保水量低減運転における加湿ロータの回転数と加湿量の時間変化を示している。図3に示すように、加湿運転開始時に加湿ロータ11の回転数を初期回転数に設定した後、上記フィードバック制御により、加湿ロータ11の回転数を初期回転数から徐々に上げて、加湿量を目標加湿量になるようにしている。図3では、加湿量と目標加湿量との差△H(目標加湿量−加湿量)>0であれば、加湿ロータ11の回転数を所定回転数上げる一方、加湿量と目標加湿量との差△Hが小さくなり、差△H<0となった場合は、加湿ロータ11の回転数を所定回転数下げている。
【0018】
上記加湿ファン11により吹き出す加湿空気の加湿量は、加湿空気の絶対湿度に比例し、その絶対湿度は、加湿空気の吹出温度に比例している。これは、ヒータ14による加熱量が加湿ロータ11からの水分脱着に使用される熱量に比例しており、脱着に使われなかった熱量が空気の温度上昇に寄与するためである。つまり、加湿ロータ11の初期回転数を通常加湿運転時よりも低く設定して低速回転とすることにより、加湿量が少ない状態から徐々に加湿量を上げていくことができるので、加湿運転開始時の加湿量のオーバーシュートを回避することができる。
・・・
【0025】
また、上記実施の形態では、加湿運転において、吸着ファン13,加湿ファン11の回転数を夫々一定にすると共に、ヒータ14の出力も一定にして、加湿ロータ11の回転数によって加湿量を制御したが、加湿ロータの回転数を制御するとき、吸着ファン,加湿ファンの回転数およびヒータの出力のうちの少なくとも1つを変化させる制御を行う加湿装置にこの発明を適用してもよい。」

【図1】


【図2】


【図3】


上記【0002】に記載の従来の技術の課題を踏まえて本願の発明がなされていると理解できるので、【0013】〜【0015】、【図2】に記載及び図示された実施形態の空気調和機は、【0002】の「室外において外気から加湿ロータに水分を吸着させた」との記載から【0014】及び【0015】の「吸着ファン13」が配置された「吸着通路A」は、外気を加湿ロータに導き、水分を吸着させる通路と理解される。
また、【0013】の「この空気調和装置は、加湿装置3から加湿ホース4を介して室外ユニット1に加湿空気を供給して、室内を加湿する。」との記載は、【図1】及び【図2】の図示、並びに、【0002】の「この加湿装置は、室外において外気から加湿ロータに水分を吸着させた後、その加湿ロータから水分を脱着させて加湿した加湿空気を加湿ホースを通じて室内に供給する。そうすることにより、冬季の乾燥しやすい室内の湿度を調整して快適性を向上できる。」の記載及び【0015】の「加湿通路Bの加湿ロータ11よりも下流側の加湿ファン12により、空気を矢印(加湿通路B)に示すように吸引して流すようにしている。このとき、ヒータ14で加熱された空気が加湿ロータ11を通り、加湿ロータ11によって加湿される(加湿ロータ11から水分を脱着する)。すなわち、上記加湿ロータ11が吸着した水分は、ヒータ14によって加熱された空気によって脱着されて、通過する空気を加湿する。そうして加湿された空気は、加湿ファン12によって図1に示す加湿ホース4を介して室内ユニット1に送られる。」との記載に照らせば、加湿された空気の供給先は、室内側であることが明らかであるので、【0013】の「・・・加湿ホース4を介して室外ユニット1に加湿空気を供給して、室内を加湿する。」中の「室外ユニット1」は、「室内ユニット1」の誤記と認められる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「吸着ファン13により吸着通路Aに流れる外気から水分を吸着する、ケーシング10内を仕切板15で仕切った前記吸着通路Aが経由する加湿ロータ11の領域と、加湿ファン12が吸引する空気がヒータ14で加熱され、該加熱空気を通すことで加湿ロータ11から水分を脱着する流路である加湿通路Bを経由する前記加湿ロータ11の領域とを含んだ、円盤状を呈し、軸11aを中心に回転する加湿ロータ11と、
前記吸着ファン13と、
前記加湿ファン12と、
加湿運転を制御する制御部3aであって、前記吸着ファン13の回転数及び前記加湿ファン12の回転数並びに前記ヒータ14の出力を夫々一定とし、前記加湿ロータ11の回転数を初期回転数から徐々に上げ、目標加湿量と加湿量との差ΔHにより加湿ロータ11の回転数をフィードバック制御し、加湿運転開始時の加湿量のオーバーシュートを抑えるように制御する制御部3aと、
を備え、
吸着ファン13により吸着通路Aに流れる外気から水分を吸着し、当該水分を加湿ファン12に吸引された加湿通路Bを通過する空気を加湿し、該加湿された空気を室内ユニット1に送る空気調和機。」

また、引用文献1の【0025】の記載から、引用文献1には以下の技術的事項の示唆があると認められる。
<示唆>
「実施形態で加湿運転中一定とされた、吸着ファン13の回転数、加湿ファン11の回転数、ヒータ14の出力のうち、少なくとも1つを変化させる制御を行う加湿装置に対して、加湿ロータの回転数を制御するようにすること。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は空気調和システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空調システムの空調機では外気と還気を混合した後、熱交換器で冷却や除湿、加熱などを行っている。
【0003】
【特許文献1】特開2013−100992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような方式の空調機では、例えば夏期の冷房運転の場合、冷却減湿後に再熱しなければ給気の湿度制御ができない。そのため、還気風量分の空気を余分に冷却、再熱するエネルギーが必要で、設備コストと運転コストが高くなる。また、空調機が、外気を熱源とし熱交換用冷媒にて空調用空気の外気を冷却又は加熱する空冷ヒートポンプ式のとき、最低外気温度の制限があるため寒冷地での暖房利用に向かないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、空調用空気を被空調空間へ供給する空調機と、前記空調機の給気温度及び給気湿度を調整することで被空調空間を予め設定した温度及び湿度になるように制御する空調制御装置と、を備え、前記空調機が、熱交換用冷媒にて前記空調用空気の外気を冷却又は加熱する第1ヒートポンプと、前記熱交換用冷媒にて前記空調用空気の還気を冷却又は加熱する第2ヒートポンプと、前記空調用空気を加湿する加湿装置と、を備え、前記第1ヒートポンプで冷却又は加熱される前の前記外気を予冷又は予熱する予備処理装置を、備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、外気負荷(潜熱)と室内負荷(顕熱)を個別に処理するので、還気を余分に冷却、再熱するエネルギーが不要で省エネとなり、設備コストと運転コストを削減できる。空調機に供給される外気を予冷又は予熱するので、空調機で処理する外気負荷が減って省エネとなり、寒冷地での暖房ニーズに対応できる。」

「【0012】
図1〜図3は本発明の空気調和システムを示し、この空気調和システムは、空調機1と、予備処理装置2と、空調制御装置3と、を備えている。予備処理装置2は、第1混合ダンパ4と、外調機5と、を備えている。室内やホールなどの被空調空間Sと、屋外と、空調機1と、外調機5と、は図示省略のダクトにて連結され、空調用空気が相互に送風される。空調機1は、空調用空気の給気(SA)の温度及び湿度を調整して、空調用空気を被空調空間Sへ供給するように設ける。外調機5は、外気を予冷又は予熱して空調機1へ供給し、被空調空間Sの空気を屋外に排気(EA)するように設ける。
【0013】
空調機1は、第1ヒートポンプ6と、第2ヒートポンプ7と、加湿装置8と、風量調整機器9と、を備えている。第1ヒートポンプ6は、熱交換用冷媒にて空調用空気の外気(OA)を冷却又は加熱する能力を有し、冷却と加熱の切換を行うように設ける。第2ヒートポンプ7は、熱交換用冷媒にて空調用空気の還気(RA)を冷却又は加熱する能力を有し、冷却と加熱の切換を行うように設ける。加湿装置8は、空調用空気を加湿する能力を有している。風量調整機器9は、被空調空間Sに供給される空調用空気の風量を調整する能力を有している。
・・・
【0021】
加湿装置8は、空調用空気の外気を加湿する第1加湿器33と、空調用空気の還気を加湿する第2加湿器34と、を備えている。図例では、第1加湿器33と第2加湿器34の両方を、気化式加湿器にて構成している。図示省略するが、第1加湿器33と第2加湿器34の一方又は両方を、蒸気式加湿器にて構成してもよい。さらに、第1加湿器33と第2加湿器34の一方又は両方を、蒸気式加湿器及び気化式加湿器を一対としたもので構成してもよい。
【0022】
風量調整機器9は、空調用空気の給気風量を調整する送風機35と、空調用空気の外気風量を調整する第1ダンパ36と、空調用空気の還気風量を調整する第2ダンパ37と、を備えている。
【0023】
空調制御装置3は、被空調空間Sの空調負荷の変動に応じて空調機1の給気温度及び給気湿度と外調機5の給気温度及び給気湿度を調整することで被空調空間Sを予め設定した温度及び湿度に制御するように設ける。空調制御装置3は、外気の温湿度を検出する外気温湿度検出器38と、還気の温湿度を検出する還気温湿度検出器39と、空調機1の給気温湿度を検出する給気温湿度検出器40と、風量制御部41と、加湿制御部42と、圧縮機制御部43と、を備えている。
【0024】
風量制御部41は、空調機1の送風機35の回転数と、外調機5の送風機12の回転数と、第1ダンパ36のダンパ開度と、第2ダンパ37のダンパ開度と、第1混合ダンパ4のダンパ開度と、第2混合ダンパ32のダンパ開度と、を制御して外気、還気、排気及び給気の各風量を調整するように設ける。加湿制御部42は、第1加湿器33と第2加湿器34と第3加湿器11の加湿水量を制御して外気及び還気への各加湿量を調整するように設ける。圧縮機制御部43は、各圧縮機15、20、25の回転数を制御して冷却能力及び加熱能力を調整するように設ける。空調制御装置3はマイクロプロセッサや各種センサー等にて構成する。」

したがって、上記引用文献2には、加湿装置8を被空調空間Sとは別に設置した空調機1に配置し、被空調空間Sの加湿量調整を行う加湿制御部42は、第1加湿器33と第2加湿器34と第3加湿器11の加湿水量を制御して外気及び還気への各加湿量を調整する空気調和システムであって、該システムは空調制御装置3は、被空調空間Sの空調負荷の変動に応じて空調機1の給気温度及び給気湿度と外調機5の給気温度及び給気湿度を調整することで被空調空間Sを予め設定した温度及び湿度に制御し、外気の温湿度を検出する外気温湿度検出器38と、還気の温湿度を検出する還気温湿度検出器39と、空調機1の給気温湿度を検出する給気温湿度検出器40と、風量制御部41と、加湿制御部42と、圧縮機制御部43と、を備える、という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「加湿ロータ11」における「吸着ファン13により吸着通路Aに流れる外気から水分を吸着する、ケーシング10内を仕切板15で仕切った前記吸着通路Aが経由する加湿ロータ11の領域」、「加湿ファン12が吸引する空気がヒータ14で加熱され、該加熱空気を通すことで加湿ロータ11から水分を脱着する流路である加湿通路Bを経由する前記加湿ロータ11の領域」、「円盤状を呈し、軸11aを中心に回転する」は、各々、本願発明1の「ロータ(41)」における「前記第1の空気に含まれる前記水分を吸着する第1領域(A1)」、「吸着した前記水分を脱着する第2領域(A2)」、「環状領域(A0)において回転する」に相当するから、引用発明の「加湿ロータ11」は、本願発明1の「ロータ(41)」に相当する。

イ 引用発明における「吸着ファン13」は、上記アで相当するとした、本願発明1における「第1の領域」における「第1の空気」となる「外気」を「吸着通路Aに流す」ための手段として働くことから、本願発明1における「前記第1領域において前記第1の空気を前記ロータに流す、吸着用ファン(44)」に相当する。

ウ 引用発明における「加湿ファン12」は、上記アで相当するとした、本願発明1における「第2の領域」における「第2の空気」となる「吸引する空気」を「加湿通路B」を「経由」させるための手段として働くことから、本願発明1における「前記第2領域において第2の空気を前記ロータに流し、前記ロータから放出された前記水分によって前記第2の空気を加湿する、加湿用ファン(43)」に相当する。

エ 引用発明の「前記吸着ファン13の回転数及び前記加湿ファン12の回転数並びに前記ヒータ14の出力を夫々一定とし、前記加湿ロータ11の回転数を初期回転数から徐々に上げ、目標加湿量と加湿量との差ΔHにより加湿ロータ11の回転数をフィードバック制御し、加湿運転開始時の加湿量のオーバーシュートを抑えるように制御する」とされた「加湿運転を制御する制御部3a」と、本願発明1の「前記第1モータの回転数を変更する」とともに「前記第2モータの回転数を、前記第1モータの回転数の変更と連動させて変更する」「制御部(9)」とは、「何らかの制御可能な回転手段によって回転させられる吸着用ファンを制御する」限りにおいて一致する。

オ 引用発明の「吸着ファン13により吸着通路Aに流れる外気から水分を吸着し、当該水分を加湿ファン12に吸引された加湿通路Bを通過する空気を加湿し、該加湿された空気を室内ユニット1に送る空気調和機」は、本願発明1の「第1の空気から水分を集め、前記水分によって加湿を行う空気調和装置(100)」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「第1の空気から水分を集め、前記水分によって加湿を行う空気調和装置(100)であって、
前記第1の空気に含まれる前記水分を吸着する第1領域(A1)と、吸着した前記水分を脱着する第2領域(A2)とを含む環状領域(A0)において回転するロータ(41)と、
前記第1領域において前記第1の空気を前記ロータに流す、吸着用ファン(44)と、
前記第2領域において第2の空気を前記ロータに流し、前記ロータから放出された前記水分によって前記第2の空気を加湿する、加湿用ファン(43)と、
制御部(9)と、
を備え、
前記制御部は、何らかの制御可能な回転手段によって回転させられる吸着用ファンを制御する、
空気調和装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「吸着用ファン(44)」と「加湿用ファン(43)」とを各々「回転させる」とした「回転数可変の第1モータ(44a)」、「回転数可変の第2モータ(43a)」とを「備え」る構成であるのに対し、引用発明は、対応する「吸着ファン13」、「加湿ファン12」を回転させる手段が明示されていない点。
(相違点2)制御部(9)について、本願発明1は、「前記第1モータの回転数を変更する」とともに「前記第2モータの回転数を、前記第1モータの回転数の変更と連動させて変更する」のに対し、引用発明は、「加湿運転を制御する」とされ、「前記吸着ファン13の回転数及び前記加湿ファン12の回転数並びに前記ヒータ14の出力を夫々一定とし、前記加湿ロータ11の回転数を初期回転数から徐々に上げ、目標加湿量と加湿量との差ΔHにより加湿ロータ11の回転数をフィードバック制御し、加湿運転開始時の加湿量のオーバーシュートを抑えるように制御する」である点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。

相違点2に係る本願発明1の「前記第1モータの回転数を変更する」とともに「前記第2モータの回転数を、前記第1モータの回転数の変更と連動させて変更する」とした「制御部(9)」を「空気調和装置」が「備え」るという構成は、本件明細書の発明の詳細な説明の【0003】−【0004】に記載された、発明が解決しようとする課題、目的から見て、「加湿の程度の調整幅を大きくしたり、調整量をきめ細かくしたりする」機能・作用を呈し得るものであって、さらに、【0086】に記載の「ここでは、第1モータ44aの回転数を変更することによって加湿ロータ41の水分吸着量を調整することに連動させて、第2モータ43aの回転数およびヒータ42の出力を変更し、加湿ロータ41から放出される水分による加湿量を調整している。
このため、例えば、第1モータ44aの回転数を上げて加湿ロータ41の水分吸着量を増やしたときに、それに合わせ、第2モータ43aの回転数およびヒータ42の出力を上げて、加湿ロータ41から放出される水分量を増やし、加湿量を増やすことができている。
具体的には、上記のステップS15およびS17の処理を制御部9が行っている。」の記載を参酌すると、当該相違点2に係る本願発明1の「前記第2モータの回転数を、前記第1モータの回転数の変更と連動させて変更する」ことは、一般的な「連動」が意味する『機械などで、一部分を動かすことによって他の部分も統一的に動くこと。 [広辞苑第六版]』が意味する、ある動きと他の動きが共に生じるだけではなく、本件に即すると、第1モータの回転と第2モータの回転が共に生じるのみならず、その結果、「加湿の程度の調整幅を大きくしたり、調整量をきめ細かくしたりする」機能・作用を呈し得る形態を意味すると解される。
そうすると、引用発明の「前記吸着ファン13の回転数及び前記加湿ファン12の回転数並びに前記ヒータ14の出力を夫々一定とし、前記加湿ロータ11の回転数を初期回転数から徐々に上げ、目標加湿量と加湿量との差ΔHにより加湿ロータ11の回転数をフィードバック制御し、加湿運転開始時の加湿量のオーバーシュートを抑えるように制御する」とされた制御部3aの制御と本願発明1の制御部(9)が行う制御とは異なることが明らかである。
また、引用文献1には、上記「1.引用文献1について」の<示唆>が記載されているが、当該示唆に従う態様を考えてみても、直ちに「吸着ファン13」、「加湿ファン12」の回転を互いに本願発明1で狙う機能・作用を奏するように、制御する態様とならない。
加えて、本願発明1のような「ロータ」、「吸着ファン」、「加湿用ファン」を備える加湿運転可能な空気調和装置の分野で、当該相違点2に係る構成にて2つのファンの回転数を連動させることは、引用文献2にも記載がなく、周知慣用技術でもない。
してみれば、当業者といえども、引用発明から、相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。

したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された示唆に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2−7について
本願発明2−7も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された示唆並びに引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−7は、当業者が引用発明及び引用文献1に記載された示唆並びに引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-08 
出願番号 P2021-129800
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 マキロイ 寛済
西村 泰英
発明の名称 空気調和装置  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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