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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1393015
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-15 
確定日 2022-12-19 
事件の表示 特願2020−109934「インテリジェント自動アシスタント」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年10月22日出願公開、特開2020−173835、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)1月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年1月10日、米国、2010年1月18日、米国)を国際出願日とする特願2012−549003号の一部を平成26年6月20日に新たな特許出願とした特願2014−127585号の一部を平成29年6月15日に新たな特許出願とした特願2017−117880号の一部を平成30年3月19日に新たな特許出願とした特願2018−50944号の一部を令和2年6月25日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 7月 3日 :手続補正書の提出
令和3年 5月26日付け:拒絶理由通知書
令和3年10月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月11日付け:拒絶査定
令和4年 7月15日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年3月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1−9に係る発明は、以下の引用文献1−4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2002−287793号公報
2.特開2001−075775号公報(周知技術を示す文献)
3.瀬戸遥,VBAによるアプリケーション連携プログラミング 次世代Office開発テクニック,Visual Basic magazine,株式会社翔泳社,2000年10月01日,第6巻,第12号 ,p.128−138(周知技術を示す文献)
4.株式会社C&R研究所,Windows実践技&ウラ技大全,第1版,株式会社ナツメ社,2007年04月10日,p.20−21(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1−9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明9」という。)は、令和3年10月13日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
デジタルアシスタントを用いてユーザデバイスでアプリケーションを起動するための方法であって、
プロセッサと、該プロセッサにより実行される命令を格納するメモリとを備える電子デバイスにおいて、
前記ユーザデバイスにおいて、前記ユーザとやりとりするための少なくとも部分的に音声ベースの会話インタフェースを含むグラフィカルユーザインタフェースを提供することであって、前記グラフィカルユーザインタフェースが前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間の会話的やりとりの少なくとも一部を表示する、提供することと、
前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間のやりとりに関連付けられたコンテキスト情報を取得することと、
前記会話インタフェースを通じて前記ユーザから音声入力を受信することと、
前記音声入力を処理することによって、前記音声入力に関連付けられたユーザ意図を決定することであって、前記ユーザ意図はタスクパラメータに関連付けられる、ことと、
前記音声入力に関連付けられた前記ユーザ意図が、前記ユーザデバイスにインストールされているソフトウェアアプリケーションを呼び出すためのものであると決定されると、
前記ソフトウェアアプリケーションに基づいて、前記タスクパラメータを修正し、
前記ユーザデバイス上で、前記会話インタフェースを含む前記グラフィカルユーザインタフェースの外部に、前記ソフトウェアアプリケーションを呼び出すことであって、前記ソフトウェアアプリケーションは前記修正されたタスクパラメータを用いて呼び出される、ことを行い、
前記ユーザ意図および前記コンテキスト情報に基づいて応答を提供することと、を含む方法。」

なお、本願発明2−9の概要は以下のとおりである。
本願発明2−6は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1−6の「方法」を引用する「コンピュータプログラム」の発明である。
本願発明8は、本願発明7の「コンピュータプログラム」を引用する「電子デバイス」の発明である。
本願発明9は、本願発明1−6の「方法」を引用する「電子デバイス」の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【0011】そこで、本発明の目的は、ユーザの要求を的確に把握してユーザの入力負担を小さくし、ユーザが装置に対して抱いている心理的距離を考慮した対話が可能なコマンド処理装置、コマンド処理方法、及びコマンド処理プログラムを提供することである。」

「【0014】図1は、本実施の形態におけるコマンド処理装置1(エージェントと呼ばれることがある)の構成の一例を示した図である。マイク9は、例えば、「テレビを消して」とか、「この段落に波線を付けて」などと、ユーザが発声した自然言語を取得する部分である。その他入力機器10は、例えば、キーボードなどであり、ワープロ操作を行う場合やパーソナルコンピュータでヘルプを検索する際などにユーザがキーボードから自然言語を入力することもできる。なお、コマンド処理装置1では、マイク9とその他入力機器10を両方具備しているが、これは、何れか一方のみ具備しても良い。入力部8は、バスライン3とマイク9、その他入力機器10とのインターフェースを提供する部分である。」

「【0016】記憶装置7は、ハードディスクやその他の不揮発性メモリなどによって構成されており、各種プログラムが格納されたプログラム部15とデータベース部16を備えている。プログラム部15には、コマンド処理装置1に所定のアルゴリズムに従ってコマンド処理を行わせるためのコマンド処理プログラムやその他のプログラムが格納されている。データベース16には、ユーザから入力された文を解析するのに使用する事例辞書や、後に説明する確信度を計算するのに使用する状態情報データベースやコマンドの実行履歴などが記録されている。
【0017】出力部11は、コマンド処理装置1が外部とやり取りする際のインターフェースを提供する部分であり、機器制御部12、ディスプレイ13、スピーカ14などと接続している。機器制御部12は、中央処理装置2から送られてきたコマンドを受信し、当該電子装置がテレビの場合はテレビを消したり、ワープロの場合は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブを制御したりなど、コマンドを実行する部分である。ディスプレイ13は、当該装置がワープロの場合に、例えば「背景を赤にします。」といった、メッセージを表示し、ユーザと対話する際のヒューマンンターフェースを提供する。スピーカ14も、例えば、「下線を引きます。」などと音声でメッセージを出し、ユーザとのヒューマンンターフェースを提供する。
【0018】中央処理装置2は、例えばCPU(Central ProcessingUnit)などによって構成されており、ROM4、又はプログラム部15に格納されたプログラムにしたがって、各種の演算やコマンド処理装置1の各部を制御する部分である。
【0019】以上説明したように、コマンド処理装置1は、ユーザからの入力文を入力部8から入力し、中央処理装置2がプログラム部15のコマンド処理プログラムに従って入力文を解析してコマンド情報を取得し、出力部11からコマンド情報が出力される。以上、コマンド処理装置1は、一例として、テレビとワープロに対応するように構成したが、これに限定するものではなく、例えば、テレビの場合、キーボードなどは必要ない。また、コマンド処理プログラムは、ROM4に記録しておいても良い。」

「【0021】言語解析処理コンポーネント22は、ユーザから取得した自然言語(コマンド要求発話)を解析して文構造情報を出力するコンポーネントであって、ユーザから取得した入力文21が、どのような単語が、どのように文節を形成し、それらの文節がどのように関係付けられているかといったようなことを解析する。確信度コンポーネント23は、言語解析処理コンポーネント22から文構造情報を受け取り、確信度情報と実行コマンド情報を応答文作成コンポーネント25に対して出力する。」

「【0032】以下に、確信度コンポーネント23の詳細について説明する。図2の言語解析処理コンポーネント22から送出された文構造情報31は、事例照合処理部32に入力される。事例照合処理部32は、事例辞書33に登録されている事例文とユーザのコマンド要求発話を照合し、一番類似していると思われる事例文に対応付けられている実行コマンド情報を取得する。
【0033】また、本実施の形態では、一例として以下の式(1)により第1の確信度を定義した。
(確信度)=(事例文に一致した文節の数)/(事例文の文節の数)・・(1)
事例照合処理部32は、第1の確信度を確信度情報決定部39に送出すると共に、実行コマンド情報を欠落情報推論部34に出力する。この実行コマンド情報は、情報の一部が欠落している可能性がある。事例照合処理部32が行う処理の具体例は後ほど示す。
【0034】欠落情報推論部34は、状態情報推論部37と実行履歴推論部38から構成されている。状態情報推論部37は、被操作装置の状態情報(詳細は後に述べるが例えば、テレビの場合、受信できるチャンネルが1、3、12であるといった情報)を取得し、この情報を元に事例照合部32から送られてきた実行コマンド情報で欠落している部分を推測し、この推測により第2の確信度を計算する。欠落情報推論部34は、欠落した情報を補完して実行コマンド情報を作成する。状態情報推論部37は、第2の確信度を確信度情報決定部39に送出する。」

「【0036】実行履歴推論部38は、過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴を実行履歴データベース36から受け取り(双方の履歴を合わせて実行履歴と呼ぶことにする)、これらの履歴を元にして事例照合処理部32から送られてきた実行コマンド情報に欠落している情報を推論する。そして、推論された欠落情報を元に当該実行コマンド補完して(当審注:「当該実行コマンド補完して」は「当該実行コマンドを補完して」の誤記と認められる。)出力する。また、推論する際に第3の確信度を算出し、確信度情報決定部39に送出する。」

「【0038】確信度決定部39は、第1の確信度、第2の確信度、第3の確信度を受け取り、これらの大きさを比較する。そして確信度が最も大きいものを確信度情報として図2の応答文作成コンポーネント25に送出する。また、欠落情報推論部34は、確信度決定部39での比較の結果、第2の確信度が第3の確信度より大きい場合は、状態情報推論部37が補完した実行コマンド情報を応答文作成コンポーネント25に送出し、第3の確信度が第2の確信度より大きい場合は、実行履歴推論部38が補完した実行コマンド情報を応答文作成コンポーネント25に送出する。」

【0065】なお、応答文26は、ユーザに対しするコマンド実行前確認発話、又はコマンド実行後の事後報告発話として使用される。確信度が「低」、「中」、「高」である応答文26は、コマンド実行前確認発話として使用され、確信度が「最高」である応答文26は事後報告発話として使用される。

「【0074】確信度コンポーネント23では、文構造情報から実行コマンド情報を取得すると共に(ステップ230)、確信度情報を取得する(ステップ240)。一方、心理的距離感コンポーネント24は、文構造情報から心理的距離感情報を取得する(ステップ250)。次に、応答文作成コンポーネント25は、確信度コンポーネント23から確信度情報と実行コマンド情報を取得し、心理的距離感コンポーネント24からは心理的距離感情報を取得して、これらの情報に基づいた応答分26(当審注:「応答分26」は「応答文26」の誤記と認められる。)を作成する(260)。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



「【図9】



ここで、上記【0014】の「図1は、本実施の形態におけるコマンド処理装置1(エージェントと呼ばれることがある)の構成の一例を示した図である。マイク9は、例えば、「テレビを消して」とか、「この段落に波線を付けて」などと、ユーザが発声した自然言語を取得する部分である。」との記載、上記【0016】の「記憶装置7は、ハードディスクやその他の不揮発性メモリなどによって構成されており、各種プログラムが格納されたプログラム部15とデータベース部16を備えている。プログラム部15には、コマンド処理装置1に所定のアルゴリズムに従ってコマンド処理を行わせるためのコマンド処理プログラムやその他のプログラムが格納されている。」との記載、上記【0017】の「ディスプレイ13は、当該装置がワープロの場合に、例えば「背景を赤にします。」といった、メッセージを表示し、ユーザと対話する際のヒューマンンターフェースを提供する。」との記載、上記【0018】の「中央処理装置2は、例えばCPU(Central ProcessingUnit)などによって構成されており、ROM4、又はプログラム部15に格納されたプログラムにしたがって、各種の演算やコマンド処理装置1の各部を制御する部分である。」との記載、上記【0019】の「コマンド処理装置1は、一例として、テレビとワープロに対応するように構成した」との記載及び【図1】の記載から、引用文献1には、「プログラム部15に格納されたプログラムにしたがって、各種の演算やコマンド処理装置1の各部を制御する中央処理装置2と、各種プログラムが格納されたプログラム部15と、ユーザが発声した自然言語を取得するマイク9と、メッセージを表示し、ユーザと対話する際のヒューマンインターフェースを提供するディスプレイ13を備え、ワープロに対応するように構成されたコマンド処理装置1(エージェントと呼ばれることがある)」が記載されていると認められる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「コマンド処理方法であって、
プログラム部15に格納されたプログラムにしたがって、各種の演算やコマンド処理装置1の各部を制御する中央処理装置2と、各種プログラムが格納されたプログラム部15と、ユーザが発声した自然言語を取得するマイク9と、メッセージを表示し、ユーザと対話する際のヒューマンインターフェースを提供するディスプレイ13を備え、ワープロに対応するように構成されたコマンド処理装置1(エージェントと呼ばれることがある)において、
言語解析処理コンポーネント22は、ユーザから取得した自然言語(コマンド要求発話)を解析して文構造情報を出力するコンポーネントであって、ユーザから取得した入力文21が、どのような単語が、どのように文節を形成し、それらの文節がどのように関係付けられているかといったようなことを解析することと、
言語解析処理コンポーネント22から送出された文構造情報31は、事例照合処理部32に入力されることと、
事例照合処理部32は、実行コマンド情報を欠落情報推論部34に出力することと、
欠落情報推論部34は、実行履歴推論部38から構成されていることと、
実行履歴推論部38は、過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴を実行履歴データベース36から受け取り、これらの履歴を元にして事例照合処理部32から送られてきた実行コマンド情報に欠落している情報を推論し、推論された欠落情報を元に当該実行コマンドを補完することと、
欠落情報推論部34は、実行履歴推論部38が補完した実行コマンド情報を応答文作成コンポーネント25に送出することと、
応答文26は、ユーザに対しするコマンド実行前確認発話、又はコマンド実行後の事後報告発話として使用されることと、
応答文作成コンポーネント25は、確信度コンポーネント23から実行コマンド情報を取得し、これらの情報に基づいた応答文26を作成することと、を含む方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0174】次に、音声コマンダ102が電子メールプログラム54Aを起動させて、電子メールプログラム54Aに所定のメールアドレスが設定されたメールを生成させる処理について説明する。音声コマンダ102が起動している状態で、認識キーを押圧したまま、マイクロフォン24に、例えば、”姉さんにメール”と音声を入力すると、音声認識エンジン101は、”姉さんにメール”に対応する所定のデータを音声コマンダ102に供給する。
【0175】図23に示すように、UI処理部123は、音声コマンダウィンドウ151から画面全体に向かって広がるように(図中の点線の矢印(点線の矢印は、説明のための矢印で、実際には表示されない)で示す方向に向かって)、LCD21に波紋状の画像を表示させる。
【0176】次に、図24に示すように、UI処理部123は、画面全体から電子メールプログラム54Aに対応するアイコン191に向かって収束するように(図中の点線の矢印(点線の矢印は、説明のための矢印で、実際には表示されない)で示す方向に向かって)、LCD21に波紋状の画像を表示させる。
【0177】そして、図25に示すように、UI処理部123は、電子メールプログラム54Aに対応するアイコン191を強調表示させる。電子メールプログラム54Aが起動していないとき、音声コマンダ102のアプリケーション通信部12は、静止画像閲覧プログラム104に、電子メールプログラム54Aを起動させる。
【0178】その後、図26に示すように、音声ランチャ制御部124は、電子メールプログラム54Aに、新規のメッセージを生成させ、電子メールプログラム54Aは、新規のメッセージをメッセージウィンドウ301に表示させる。音声ランチャ制御部124は、電子メールプログラム54Aに、新規のメッセージのメールアドレスとして、エンジン通信部122を介して、音声認識エンジンから供給された、”姉さんにメール”の”姉さん”に対応するメールアドレスを設定させる。」

「【図26】



したがって、引用文献2には、「音声コマンダは、電子メールプログラムを起動させ、新規のメッセージをメッセージウィンドウに表示させ、新規のメッセージのメールアドレスとして、音声認識エンジンから供給された、”姉さんにメール”の”姉さん”に対応するメールアドレスを設定させる」という技術的事項が記載されていると認められる。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「Underlineプロパティを使うと、文字列に下線を引くことができます。値は線種を定数で指定します。」(133ページ中欄下から7−5行)

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「そこで、メールアドレスを登録したショートカットを作成して、ワンタッチで送信先のアドレスが記述されたメールの作成画面を開けるようにしてみましょう。」(20ページ2−3行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 本願発明1の「デジタルアシスタントを用いてユーザデバイスでアプリケーションを起動するための方法」と引用発明の「コマンド処理方法」は、「方法」である点で共通する。

イ 引用発明の「コマンド処理装置1」は、ワープロに対応するように構成されているから、本願発明1の「電子デバイス」及び「ユーザデバイス」に相当する。また、引用発明の「被操作装置」は、「コマンド処理装置1」を意味しているから、本願発明1の「電子デバイス」及び「ユーザデバイス」に相当する。

ウ 引用発明の「中央処理装置2」は、本願発明1の「プロセッサ」に相当する。また、引用発明の「プログラム部15」は、メモリであることは明らかであるから、本願発明1の「メモリ」に相当する。さらに、引用発明において、「プログラム部15に格納されたプログラムにしたがって、各種の演算やコマンド処理装置1の各部を制御する中央処理装置2と、各種プログラムが格納されたプログラム部15」であること、及び、計算機技術分野の技術常識に照らすと、プログラムは中央処理装置2により実行される命令で構成されていることは明らかであることから、引用発明の「プログラム部15」は、本願発明1の「該プロセッサにより実行される命令を格納するメモリ」に相当する。そうすると、引用発明の「コマンド処理装置1」は、「中央処理装置2と」、「プログラム部15」を備えるから、上記イも踏まえると、本願発明1の「プロセッサと、該プロセッサにより実行される命令を格納するメモリとを備える」「電子デバイス」に相当する。

エ 引用発明において、「コマンド処理装置1」は「メッセージを表示し、ユーザと対話する際のヒューマンインターフェースを提供するディスプレイ13を備え」ているが、計算機技術分野の技術常識に照らすと、ディスプレイ13が提供するユーザと対話する際のヒューマンインターフェースはグラフィカルユーザインタフェースであることが明らかである。そうすると、上記イも踏まえると、本願発明1と引用発明は、「前記ユーザデバイスにおいて、前記ユーザとやりとりするための少なくとも部分的に」「会話インタフェースを含むグラフィカルユーザインタフェースを提供することであって、前記グラフィカルユーザインタフェースが前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間の会話的やりとりの少なくとも一部を表示する、提供すること」で一致していることは明らかである。また、引用発明において、「コマンド処理装置1」は「ユーザが発声した自然言語を取得するマイク9」を備え、「言語解析処理コンポーネント22は、ユーザから取得した自然言語(コマンド要求発話)を解析して文構造情報を出力するコンポーネントであって、ユーザから取得した入力文21が、どのような単語が、どのように文節を形成し、それらの文節がどのように関係付けられているかといったようなことを解析すること」から、音声ベースの会話を行っていることも明らかである。そうすると、本願発明1と引用発明は、「前記ユーザデバイスにおいて、前記ユーザとやりとりするための少なくとも部分的に音声ベースの会話インタフェースを含むグラフィカルユーザインタフェースを提供することであって、前記グラフィカルユーザインタフェースが前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間の会話的やりとりの少なくとも一部を表示する、提供すること」を含む点で一致する。

オ 引用発明の「過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴」は、本願発明1の「コンテキスト情報」に相当する。また、引用発明の「過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴」は、ユーザと被操作装置との間のやりとりに関連付けられたものといえるから、上記イを踏まえると、本願発明1の「前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間のやりとりに関連付けられた」「コンテキスト情報」に相当する。さらに、引用発明の「受け取」るは、本願発明1の「取得する」に相当する。そうすると、引用発明の「実行履歴推論部38は、過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴を実行履歴データベース36から受け取」ることは、本願発明1の「前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間のやりとりに関連付けられたコンテキスト情報を取得すること」に相当する。

カ 引用発明の「ユーザが発声した自然言語」は、マイク9が取得する音声の入力であるといえるから、本願発明1の「音声入力」に相当する。また、引用発明において、「ユーザが発声した自然言語を取得するマイク9」を備えるが、計算機技術分野の技術常識に照らすと、「マイク9」が会話インタフェースを通じてユーザが発声した自然言語を受信するものであることは明らかである。そうすると、本願発明1と引用発明は、「前記会話インタフェースを通じて前記ユーザから音声入力を受信する」点で一致する。

キ 引用発明の「実行コマンド情報」は、ユーザが実行しようする意図であるといえるから、本願発明1の「ユーザ意図」に相当する。また、引用発明において、「ユーザが発声した自然言語を取得」し、「言語解析処理コンポーネント22は、ユーザから取得した自然言語(コマンド要求発話)を解析して文構造情報を出力するコンポーネントであって、ユーザから取得した入力文21が、どのような単語が、どのように文節を形成し、それらの文節がどのように関係付けられているかといったようなことを解析」し、「言語解析処理コンポーネント22から送出された文構造情報31は、事例照合処理部32に入力され」、「事例照合処理部32は、実行コマンド情報を欠落情報推論部34に出力」することから、ユーザが発声した自然言語を処理することによって、ユーザが発声した自然言語に関連付けられた実行コマンド情報を決定しているといえる。そうすると、上記カを踏まえると、本願発明1と引用発明は、「前記音声入力を処理することによって、前記音声入力に関連付けられたユーザ意図を決定する」点で一致する。

ク 引用発明の「応答文26」は、本願発明1の「応答」に相当する。また、引用発明において、「実行履歴推論部38は、過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴を実行履歴データベース36から受け取り、これらの履歴を元にして事例照合処理部32から送られてきた実行コマンド情報に欠落している情報を推論し、推論された欠落情報を元に当該実行コマンドを補完」し、「欠落情報推論部34は、実行履歴推論部38が補完した実行コマンド情報を応答文作成コンポーネント25に送出」し、「応答文作成コンポーネント25は、確信度コンポーネント23から実行コマンド情報を取得し、これらの情報に基づいた応答文26を作成」し、「応答文26は、ユーザに対しするコマンド実行前確認発話、又はコマンド実行後の事後報告発話として使用されること」から、補完前の「実行コマンド情報」及び「過去にユーザが被操作装置に与えてきた入力に関する履歴と、また、被操作装置が実行したコマンドに関する履歴」に基づいて「応答文26」を提供しているといえる。そうすると、上記オ、キを踏まえると、本願発明1と引用発明は、「前記ユーザ意図および前記コンテキスト情報に基づいて応答を提供する」点で一致する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「方法であって、
プロセッサと、該プロセッサにより実行される命令を格納するメモリとを備える電子デバイスにおいて、
前記ユーザデバイスにおいて、前記ユーザとやりとりするための少なくとも部分的に音声ベースの会話インタフェースを含むグラフィカルユーザインタフェースを提供することであって、前記グラフィカルユーザインタフェースが前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間の会話的やりとりの少なくとも一部を表示する、提供することと、
前記ユーザと前記ユーザデバイスとの間のやりとりに関連付けられたコンテキスト情報を取得することと、
前記会話インタフェースを通じて前記ユーザから音声入力を受信することと、
前記音声入力を処理することによって、前記音声入力に関連付けられたユーザ意図を決定することと、
前記ユーザ意図および前記コンテキスト情報に基づいて応答を提供することと、を含む方法。」

(相違点1)
本願発明1では「デジタルアシスタントを用いてユーザデバイスでアプリケーションを起動するための方法」であるのに対し、引用発明では、「コマンド処理装置1(エージェントと呼ばれることがある)」を用いる「コマンド処理方法」である点。

(相違点2)
本願発明1では「前記ユーザ意図はタスクパラメータに関連付けられる」のに対し、引用発明では、タスクパラメータについて特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1では「前記音声入力に関連付けられた前記ユーザ意図が、前記ユーザデバイスにインストールされているソフトウェアアプリケーションを呼び出すためのものであると決定される」のに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

(相違点4)
本願発明1では「前記ソフトウェアアプリケーションに基づいて、前記タスクパラメータを修正」するのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

(相違点5)
本願発明1では「前記ユーザデバイス上で、前記会話インタフェースを含む前記グラフィカルユーザインタフェースの外部に、前記ソフトウェアアプリケーションを呼び出すことであって、前記ソフトウェアアプリケーションは前記修正されたタスクパラメータを用いて呼び出される」のに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2、4、5について先に検討する。
また、相違点2、4、5は、「タスクパラメータ」に関するものである点で互いに関連しているので、まとめて検討する。
上記第4の2に記載のとおり、引用文献2には、「音声コマンダは、電子メールプログラムを起動させ、新規のメッセージをメッセージウィンドウに表示させ、新規のメッセージのメールアドレスとして、音声認識エンジンから供給された、”姉さんにメール”の”姉さん”に対応するメールアドレスを設定させる」という技術的事項が記載されている。しかしながら、引用文献2には、上記相違点2、4、5に係る本願発明1の「前記ユーザ意図はタスクパラメータに関連付けられ」、「前記ソフトウェアアプリケーションに基づいて、前記タスクパラメータを修正し」、「前記ユーザデバイス上で、前記会話インタフェースを含む前記グラフィカルユーザインタフェースの外部に、前記ソフトウェアアプリケーションを呼び出すことであって、前記ソフトウェアアプリケーションは前記修正されたタスクパラメータを用いて呼び出される」という構成が記載されているとはいえず、このような構成を示唆する記載もない。
また、引用文献3−4には、上記第4の3、4に記載のとおり、処理の実行の際に下線の線種や送信先のアドレスなどのパラメータを指示する周知技術は記載されているが、このような構成について記載も示唆もない。
さらに、上記相違点2、4、5に係る本願発明1の構成が、本願の優先日前に周知技術であったとはいえない。
したがって、相違点2、4、5に係る本願発明1の構成は、引用文献2−4に記載されたものではなく、周知技術であるともいえないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2−4に記載された
技術的事項から、相違点2、4、5に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
したがって、上記相違点1、3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2−9について
本願発明2−9も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−9は、当業者が引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2022-12-06 
出願番号 P2020-109934
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 石井 則之
中野 裕二
発明の名称 インテリジェント自動アシスタント  
代理人 弁理士法人大塚国際特許事務所  

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