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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1393016 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-07-21 |
確定日 | 2023-01-10 |
事件の表示 | 特願2018− 39943「検出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月12日出願公開、特開2019−153231、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年3月6日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年11月22日付け:拒絶理由通知書 令和3年12月22日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 4月15日付け:拒絶査定 令和4年 7月21日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和4年4月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1−4、9−13、18−20に係る発明は、以下の引用文献1−2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本願請求項5に係る発明は、以下の引用文献1−3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。さらに、本願請求項6−8、14−17に係る発明は、以下の引用文献1−2、4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2006−178031号公報 2.特開2017−027394号公報 3.米国特許出願公開第2017/0271378号明細書 4.特開2016−212871号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1−20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明20」という。)は、令和3年12月22日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−20に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 基板と、 前記基板の上に設けられた駆動電極と、 前記基板の上に設けられ、前記駆動電極と容量結合された検出電極と、 前記駆動電極と電気的に接続された第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタと、 を備え、 前記基板上にはセンサ領域が設けられ、前記駆動電極は当該センサ領域の一側から他側に亘って第1方向に延在して設けられると共に前記検出電極は当該センサ領域を前記第1方向に交差する第2方向に延在して設けられており、 前記第1薄膜トランジスタは、前記駆動電極に供給される駆動信号の供給回路に含まれ、当該センサ領域外で前記駆動電極の端部に接続されており、 前記第2薄膜トランジスタは、前記駆動電極を選択するための選択回路に含まれ、前記センサ領域外で前記第1薄膜トランジスタを介して前記駆動電極の端部に接続されており、 前記第1薄膜トランジスタの耐圧は、前記第2薄膜トランジスタの耐圧より大きい、検出装置。」 また、本願発明2−20は、本願発明1を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。 「【0013】 図示を省略したが、TFTアレイ基板10には、データ線駆動回路201や走査線駆動回路204,204以外にも種々の回路が形成されている。例えば、走査線駆動回路204と表示領域11との間にはトランスファーゲートが形成されている。また、TFTアレイ基板10の角部には、レベルシフタやDC/DCコンバータ等の回路が形成されている。このように、本実施形態の液晶装置100は、TFTアレイ基板10上に、走査線駆動回路204やデータ線駆動回路201等の表示領域11を駆動するための周辺駆動回路を内蔵した駆動回路内蔵型の液晶装置となっている。これら周辺駆動回路は、多結晶半導体であるポリシリコン(p−Si)によって、画素回路(すなわち、画素スイッチング用のトランジスタ)と同時に形成される。」 「【0020】 次に、図5はTFTアレイ基板の部分断面構成図であって、図5(a)は図4のA−A’線に対応する図、図5(b)は周辺駆動回路の一部を図5(a)に対応させて示す断面図である。なお、本実施形態では、図5(b)をデータ線駆動回路201の構成を示す図とするが、走査線駆動回路204等の他の周辺駆動回路においても同様の構成とすることができる。 【0021】 図5に示す断面構造をみると、ガラスや石英、プラスチック等の透光性を有する基板10Aの内面側(液晶層50側)に、酸化シリコン等からなる下地絶縁膜21が形成され、下地絶縁膜21上に電極32g(ゲート電極),73,80が形成されている。電極73は保持容量の容量電極(第3の電極)を構成するものであり、電極80はTFT30の遮光膜を構成するものである。電極31g,73,80を覆って酸化シリコン等からなる第1の絶縁膜26が形成されている。第1の絶縁膜26上には、所定平面形状にパターニングされたp−Si薄膜からなる半導体層30s,32s,71が形成されている。半導体層30s,32s,70は、a−Si薄膜をレーザ結晶化法により結晶化した低温p−Si薄膜である。半導体層32sは周辺駆動回路のTFT32を構成するものであり、半導体層30sは画素駆動用のTFT30を構成するものであり、半導体層71は保持容量70の容量電極(第1の電極)を構成するものである。 【0022】 半導体層32sは第1の絶縁膜26を介してゲート電極32gと対向する位置に形成されている。第1の絶縁膜26においてゲート電極32gと対向する部分はTFT32のゲート絶縁膜26aを構成する。半導体層32sにおいてゲート電極25と対向する領域にチャネル領域32aが形成されており、チャネル領域32aを挟んで両側にそれぞれ低濃度ソース領域32d、低濃度ドレイン領域32eが形成されている。低濃度ソース領域32dの外側に高濃度ソース領域32bが形成され、低濃度ドレイン領域32eの外側に高濃度ドレイン領域32cが形成されている。 【0023】 半導体層30は、遮光膜80と対向する位置に形成されている。半導体層30s,31s,32sを覆って酸化シリコン等からなる第2の絶縁膜22が形成されている。第2の絶縁膜22を介して前記半導体層30s,71とそれぞれ対向する電極30g(ゲート電極),72が形成されている。 【0024】 第2の絶縁膜22において半導体層30sと対向する部分はTFT30のゲート絶縁膜22aを構成する。ゲート絶縁膜22aはゲート絶縁膜26aよりも厚く形成されている。半導体層30sの表面(基板10Aとは反対側の面)はレーザ結晶化によって凸凹した面となっているため、ゲート絶縁膜22を薄く形成するとTFT30の電気的特性が安定しなくなるからである。また、画素回路は周辺駆動回路に比べて高い電圧が印加されるため、ゲート絶縁膜22aを厚くして耐圧を稼ぐ意味もある。一方、半導体層30s,32sの裏面は、一般的に表面に比べて平坦性の良い面となる。このため、ゲート絶縁膜26aを薄くしてもTFT32の安定性には影響しない、また、周辺駆動回路は画素回路に比べて高速動作が要求されるため、ゲート絶縁膜26aをなるべく薄くすることによってTFT32の駆動能力を高めることが望ましい。」 「【図5】(a) ![]() 」 「【図5】(b) ![]() 」 ここで、上記【0013】の「このように、本実施形態の液晶装置100は、TFTアレイ基板10上に、走査線駆動回路204やデータ線駆動回路201等の表示領域11を駆動するための周辺駆動回路を内蔵した駆動回路内蔵型の液晶装置となっている。これら周辺駆動回路は、多結晶半導体であるポリシリコン(p−Si)によって、画素回路(すなわち、画素スイッチング用のトランジスタ)と同時に形成される。」との記載、上記【0020】の「図5はTFTアレイ基板の部分断面構成図であって、図5(a)は図4のA−A’線に対応する図、図5(b)は周辺駆動回路の一部を図5(a)に対応させて示す断面図である。」との記載、上記【0021】の「図5に示す断面構造をみると、ガラスや石英、プラスチック等の透光性を有する基板10Aの内面側(液晶層50側)に、酸化シリコン等からなる下地絶縁膜21が形成され、下地絶縁膜21上に電極32g(ゲート電極),73,80が形成されている。」、「半導体層32sは周辺駆動回路のTFT32を構成するものであり、半導体層30sは画素駆動用のTFT30を構成するものであり」との記載、上記【図5】(a)及び上記【図5】(b)の記載から、「基板10Aと、画素駆動用のTFT30及び周辺駆動回路のTFT32とを備える液晶装置100」が記載されていると認められる。 したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「基板10Aと、画素駆動用のTFT30及び周辺駆動回路のTFT32とを備え、 第1の絶縁膜26においてゲート電極32gと対向する部分は周辺駆動回路のTFT32のゲート絶縁膜26aを構成し、 第2の絶縁膜22において半導体層30sと対向する部分は画素駆動用のTFT30のゲート絶縁膜22aを構成し、ゲート絶縁膜22aはゲート絶縁膜26aよりも厚く形成され、 画素回路は周辺駆動回路に比べて高い電圧が印加されるため、ゲート絶縁膜22aを厚くして耐圧を稼ぐ意味もある、液晶装置100。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0042】 図5に示すように、本実施の形態1におけるタッチ検出機能付き表示デバイス10は、基板21と、基板31と、複数の駆動電極DRVと、複数の検出電極TDLと、を有する。基板21は、主面としての上面21aを有し、基板31は、一方の主面としての下面31a(後述する図6参照)と、下面と反対側の他方の主面としての上面31bと、を有する。ここで、基板31の上面31b内で、互いに交差、好適には直交する2つの方向を、X軸方向およびY軸方向とする。このとき、複数の駆動電極DRVは、平面視において、X軸方向にそれぞれ延在し、かつ、Y軸方向に配列されている。また、複数の検出電極TDLは、平面視において、Y軸方向にそれぞれ延在し、かつ、X軸方向に配列されている。」 「【図5】 ![]() 」 したがって、「基板上にはタッチ検出領域が設けられ、駆動電極は当該タッチ検出領域のX方向に延在して設けられると共に検出電極は当該タッチ検出領域をX方向に交差するY方向に延在して設けられること」は、本願の出願前に周知技術であったと認められる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「基板10A」は、本願発明1の「基板」に相当する。 イ 引用発明の「画素駆動用のTFT30」及び「周辺駆動回路のTFT32」は、「TFT」が「薄膜トランジスタ」を意味するから、本願発明1の「第1薄膜トランジスタ」及び「第2薄膜トランジスタ」に相当する。 ウ 引用発明の「液晶装置100」は、本願発明1の「検出装置」と、「装置」である点で共通する。また、引用発明において、「液晶装置100」は、「基板10Aと、画素駆動用のTFT30及び周辺駆動回路のTFT32とを備え」るから、上記ア、イを踏まえると、本願発明1と引用発明は、「基板と」、「第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタと、を備え」る「装置」である点で共通する。 エ 引用発明において、「第1の絶縁膜26においてゲート電極32gと対向する部分は周辺駆動回路のTFT32のゲート絶縁膜26aを構成し」、「第2の絶縁膜22において半導体層30sと対向する部分は画素駆動用のTFT30のゲート絶縁膜22aを構成し、ゲート絶縁膜22aはゲート絶縁膜26aよりも厚く形成され」、「画素回路は周辺駆動回路に比べて高い電圧が印加されるため、ゲート絶縁膜22aを厚くして耐圧を稼ぐ意味もある」ことから、画素駆動用のTFT30の耐圧が周辺駆動回路のTFT32の耐圧より大きいことは明らかである。そうすると、上記イを踏まえると、本願発明1と引用発明は、「前記第1薄膜トランジスタの耐圧は、前記第2薄膜トランジスタの耐圧より大きい」点で一致する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「基板と、 第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタと、 を備え、 前記第1薄膜トランジスタの耐圧は、前記第2薄膜トランジスタの耐圧より大きい、装置。」 (相違点1) 本願発明1では、「前記基板の上に設けられた駆動電極と」、「前記基板の上に設けられ、前記駆動電極と容量結合された検出電極」を備えるのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。 (相違点2) 第1薄膜トランジスタ及び第2薄膜トランジスタにおいて、本願発明1では、「前記駆動電極と電気的に接続され」ているのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。。 (相違点3) 本願発明1では、「前記基板上にはセンサ領域が設けられ、前記駆動電極は当該センサ領域の一側から他側に亘って第1方向に延在して設けられると共に前記検出電極は当該センサ領域を前記第1方向に交差する第2方向に延在して設けられて」いるのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。 (相違点4) 本願発明1では、「前記第1薄膜トランジスタは、前記駆動電極に供給される駆動信号の供給回路に含まれ、当該センサ領域外で前記駆動電極の端部に接続されて」いるのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。 (相違点5) 本願発明1では、「前記第2薄膜トランジスタは、前記駆動電極を選択するための選択回路に含まれ、前記センサ領域外で前記第1薄膜トランジスタを介して前記駆動電極の端部に接続されて」いるのに対し、引用発明では、このような構成について特定されていない点。 (相違点6) 本願発明1では、「検出装置」であるのに対し、引用発明では、「液晶装置100」である点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、相違点4、5について先に検討する。また、相違点4、5は、「駆動電極の端部」に関するものである点で互いに関連しているので、まとめて検討する。 上記第4の2に記載のとおり、「基板上にはタッチ検出領域が設けられ、駆動電極は当該タッチ検出領域のX方向に延在して設けられると共に検出電極は当該タッチ検出領域をX方向に交差するY方向に延在して設けられること」は、本願の出願前に周知技術であったと認められる。また、タッチ検出回路分野の技術常識に照らすと、駆動電極の端部に接続される、「駆動電極に供給される駆動信号の供給回路」及び「駆動電極を選択するための選択回路」を備えることも、本願の出願前に周知技術であったと認められる。 しかしながら、引用文献2には、上記相違点4、5に係る本願発明1の構成について記載も示唆もなく、このような構成が本願の出願前に周知技術であったともいえない。そして、本願発明1は、相違点4、5に係る構成により、「薄膜トランジスタの耐圧性を確保し、且つ、狭額縁化が可能な検出装置を提供する」という格別の効果を奏するものであるから、このような構成とすることが単なる設計的事項であるともいえない。 また、引用文献3−4には、上記相違点4、5に係る本願発明1の構成について記載も示唆もない。 したがって、相違点4、5に係る本願発明1の構成は、引用文献2−4に記載されたものではなく、周知技術であったともいえないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項から、相違点4、5に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。 したがって、上記相違点1−3、6について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2−20について 本願発明2−20は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1−20は、当業者が引用発明及び引用文献2−4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-12-13 |
出願番号 | P2018-039943 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
野崎 大進 中野 裕二 |
発明の名称 | 検出装置 |
代理人 | 弁理士法人スズエ国際特許事務所 |