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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない B66B
管理番号 1393031
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2022-04-15 
確定日 2022-11-28 
事件の表示 特許第6866961号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第6866961号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2020年(令和2年)1月31日を国際出願日とする特願2020−566860号であって、令和3年4月12日にその特許権の設定登録がなされ、令和4年4月15日に特許権者である三菱電機ビルソリューションズ株式会社より、本件訂正審判の請求がなされ、令和4年7月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、指定期間内に特許権者から応答が無かったものである。

第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2〜8について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のものである(下線部は訂正箇所を示す。)。

本件特許の特許請求の範囲の請求項2に
「情報を送信する送信部と、
情報を受信する受信部と、
エレベーターの管理者の端末に向けて、複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、前記エレベーターに対して前記訓練開始指示情報に対応した訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を前記送信部に送信させる制御部と、
を備えた請求項1に記載のエレベーターの災害訓練装置。」と記載されているのを、
「情報を送信する送信部と、
情報を受信する受信部と、
エレベーターの管理者の端末に向けて、複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、前記エレベーターに対して前記訓練開始指示情報に対応した訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を前記送信部に送信させる制御部と、
を備えたエレベーターの災害訓練装置。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3〜8も同様に訂正する。)。

第4 当審の判断
(1)訂正の目的について
本件特許の明細書の段落【0006】には「本開示に係るエレベーターの災害訓練装置は、情報を送信する送信部と、情報を受信する受信部と、エレベーターの管理者の端末に向けて、災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、前記エレベーターに対して災害発生時の訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を前記送信部に送信させる制御部と、を備えた。本開示に係るエレベーターの災害訓練装置は、情報を送信する送信部と、情報を受信する受信部と、エレベーターの管理者の端末に向けて、複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、前記エレベーターに対して前記訓練開始指示情報に対応した訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を前記送信部に送信させる制御部と、を備えた。」と記載されており、本件特許の請求項1及び請求項2の記載に対応するものがそれぞれ独立して記載されていると認められる。
また、本件特許の明細書の段落【0033】には「以上で説明した実施の形態1によれば、監視装置9は、管理者の端末Aに向けて、災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を送信する。監視装置9は、訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、制御装置8に対して災害発生時の訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を送信する。」と記載されており、本件特許の明細書の段落【0034】には「なお、監視装置9の制御部9cにおいて、管理者の端末Aに向けて、複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を送信してもよい。この場合、受信部9bが複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、制御部9cにおいて、制御装置8に対して訓練開始指示情報に対応した訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を送信部9aに送信させてよい。」と記載されており、本件特許の請求項1及び請求項2の記載に対応するものがそれぞれ独立して記載されていると認められる(下線は、当審で付した。以下同様。)。
そうすると、本件訂正前の請求項2には請求項1を引用する記載があるところ、本件特許の明細書の段落【0006】、【0033】及び【0034】の記載に照らせば、本件訂正前の請求項2における請求項1を引用する記載は誤りであり、正しくは請求項2が請求項1を引用しない独立したものであると認められるため、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の追加の有無について
本件特許の明細書の段落【0006】には「本開示に係るエレベーターの災害訓練装置は、情報を送信する送信部と、情報を受信する受信部と、エレベーターの管理者の端末に向けて、複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信した際に、前記エレベーターに対して前記訓練開始指示情報に対応した訓練用の運転を開始させる訓練運転開始情報を前記送信部に送信させる制御部と、を備えた。」と記載されており、本件訂正後の請求項2に係る発明の発明特定事項に対応する記載がある。
よって、本件訂正は、本件特許の明細書より導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更について
上記(1)のとおり、本件訂正前の請求項2には誤記が存在するために、同項で特定される「訓練開始指示情報」の内容が実質的に限定されており、かかる内容が誤記の訂正により実質的に拡張されることについて、以下で検討する。
まず、本件訂正前の請求項1には「災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報を受信した際に」と記載されており、「前記訓練開始促進情報」と記載されているため、本件訂正前の請求項1において、受信部が受信する「前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報」に係る「訓練開始促進情報」は、送信部が送信する「訓練開始促進情報」に相当する。
そして、本件訂正前の請求項2は請求項1を引用しているため、本件訂正前の請求項2においても、受信部が受信する「前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報」に係る「訓練開始促進情報」は、送信部が送信する「訓練開始促進情報」に相当する。そうすると、本件訂正前の請求項2の「少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」は、実質的に、「前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報」に限定されている。この場合においては、受信部が受信する「複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」に係る「複数種の災害発生時の訓練」は、送信部が送信する「複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報」に係る「複数種の災害発生時の訓練」と同じものであると解される。具体的には、例えば、地震発生時と火災発生時との訓練の開始を促す訓練開始促進情報を送信部に送信させ、その後、地震発生時と火災発生時との訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信部が受信した際に、訓練運転開始情報を送信部に送信させるものが特定されている。
他方、本件訂正により、本件訂正後の請求項2は請求項1を引用しないものとなり、且つ、本件訂正後の請求項2には「複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報を前記送信部に送信させ、その後、前記管理者の端末から前記受信部が複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報を受信した際に」と記載されているのみであり、当該「少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」について、「前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報」であることの特定がなされていない。したがって、本件訂正によって、本件訂正後の請求項2の「訓練開始指示情報」の内容は、実質的に拡張されている。
具体例で説示すれば、次のとおりである。すなわち、本件訂正後の請求項2においては、受信部が受信する「複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」に係る「複数種の災害発生時の訓練」と、送信部が送信する「複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報」に係る「複数種の災害発生時の訓練」とが必ずしも
同じものであるとは解されない。
そのため、本件訂正後の請求項2では、例えば、地震発生時と火災発生時との訓練の開始を促す訓練開始促進情報を送信部に送信させ、その後、停電発生時の訓練に対応した訓練開始指示情報を受信部が受信した際に、訓練運転開始情報を送信部に送信させるものを含みうることとなり、本件訂正により、受信部が受信する「複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」に係る「複数種の災害発生時の訓練」が、送信部が送信する「複数種の災害発生時の訓練の開始を促す訓練開始促進情報」に係る「複数種の災害発生時の訓練」と同じでないものを含みうることとなった点において、受信部が受信する「複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」を拡張するものとなった。
以上のとおり、本件訂正後の請求項2には、「前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報」との記載はなく、本件訂正前の「前記訓練開始促進情報に対応した訓練開始指示情報」であることの実質的な限定が、本件訂正によって削除されている。そして、かかる判断は、上記(1)の検討には左右されない。
したがって、本件訂正後の請求項2における「複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」は、本件訂正前の請求項2における「複数種の災害発生時の訓練のうちの少なくとも1つの訓練に対応した訓練開始指示情報」を拡張するものとなっているから、本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものである。
したがって、本件訂正は、特許法第126条第6項の規定に適合しない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とし、同法同条第5項の規定に適合するものであるものの、同法同条第6項の規定に適合しない。
したがって、本件訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-09-21 
結審通知日 2022-09-27 
審決日 2022-10-19 
出願番号 P2020-566860
審決分類 P 1 41・ 854- Z (B66B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 平瀬 知明
特許庁審判官 平田 信勝
内田 博之
登録日 2021-04-12 
登録番号 6866961
発明の名称 災害発生時の訓練を実施するエレベーターの災害訓練装置およびエレベーターシステム  
代理人 弁理士法人高田・高橋国際特許事務所  

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