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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C23C
管理番号 1393074
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-12 
確定日 2022-11-01 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6870795号発明「蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6870795号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕、〔6−8〕について訂正することを認める。 特許第6870795号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6870795号の請求項1〜8に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)9月30日(優先権主張 令和1年10月4日 日本国)を国際出願日とする国際出願であり、令和3年4月19日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月12日に、その請求項1〜8(全請求項)に係る特許を対象として特許異議申立人佐藤徹(以下、「異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされ、令和4年3月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月17日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年7月26日に異議申立人より、意見書の提出があったものである。

第2 訂正の適否

1 訂正事項
上記令和4年5月17日にされた訂正の請求(以下、その訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜8について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口と、を備え、」とあるのを、「前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、」に訂正する。
(請求項1を直接または間接的に引用する請求項2〜5についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、」とあるのを、「前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、」に訂正する。
(請求項2を直接または間接的に引用する請求項3〜5についても同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口とを備え、」とあるのを、「前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、」に訂正する。
(請求項6を直接または間接的に引用する請求項7〜8についても同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、」とあるのを、「前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、」に訂正する。
(請求項7を直接的に引用する請求項8についても同様に訂正する。)

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び3について
ア 訂正前の請求項1の「前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口と、を備え、」との記載では、この記載が、「大開口」の形状を特定しようとするものであることは理解できるが、この記載の中の「前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している」とは小開口の形状の記載であり、結局のところ大開口の形状の特定が明確でなかった。これに対し、本件訂正により、「前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、」とすることにより、小開口に相似の形状において、その角部のみが、その相似の形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する縁を大開口が有していることを明確することで、大開口の形状を明確にしているから、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3も、同様の訂正の内容であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 本件明細書の【0029】には、「蒸着マスク10の表面10Fと対向する視点から見て、4つの線状部11LLは、小開口11Sと略相似な形状を有した仮想縁VEに含まれる。」との記載があり、同【図2】にも、大開口の角部に小開口11Sと略相似な形状を有した仮想縁VEが記載されている。さらに、同【0030】には、「大開口11Lの縁11LEはさらに、仮想縁VEから、小開口11Sから離れる方向に向けて張り出した張出部11LPを4つ備えている。」との記載があり、同【図2】にも、大開口11Lの縁11LEは、仮想縁VEから、仮想線VEの外側に向けて張り出した張出部11LPを角部のみに備えていることが記載されている。
そして、上記「仮想縁VE」は、訂正事項1及び3の「前記小開口の前記縁と相似な形状」に対応し、上記「仮想縁VEから、仮想線VEの外側に向けて張り出した張出部11LPを角部のみに備えている」は、訂正事項1及び3の「角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している」に対応するから、訂正事項1及び3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項1及び3は、上記アで述べたとおり、明瞭でない記載を釈明するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2及び4について
ア 訂正前の請求項2の「前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、」との記載では、「前記大開口の対応する前記角部」について、引用する訂正前の請求項1の記載を含め、この記載よりも前に大開口の対応する角部が記載されておらず、また、角部の特定としては、「前記大開口の対応する」で十分で、「前記」の記載が不要であったところ、訂正事項2及び4は、この「前記」を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 訂正事項2及び4は、不要であった「前記」との記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)令和4年7月26日提出の意見書における異議申立人の主張について
ア 異議申立人の主張の概要
異議申立人は、上記意見書で、本件訂正が、訂正要件に違反していること、具体的には、新規事項の追加に該当することについて、概略、以下の主張をしている。
訂正事項1及び3における、「角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する」は、複数の角部の全てに適用される場合だけでなく、複数の角部の一部のみに適用される態様も含み得ると解されるものの、複数の角部の一部のみに適用する態様について本件明細書には何ら記載されていない。
また、上記の記載は、角部以外が外側に向けて張り出している形状の縁を有する態様を排除しているものの、そのような態様を排除することについて本件明細書には特段記載されていない。
よって、訂正事項1及び3は、本件明細書に記載した事項の範囲内のものではない。

イ 検討
本件訂正が、訂正要件に違反するものでないことは、上記(1)及び(2)で述べたとおりであるが、念のため異議申立人の主張について検討する。
まず、上記アの前段の主張についてみると、訂正事項1及び3における、「角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する」は、訂正前の請求項1及び6の「前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口」という記載に基づくものであるが、この記載の中の「前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している」は、張り出している角部について、複数の角部の全てとは特定していない。さらに、本件明細書の記載をみても、訂正後の「角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する」について、この角部の形状が、複数の角部の全てに適用される場合に限定されることをうかがわせる記載はない。したがって、上記アの前段の主張によって、訂正事項1及び3が、本件明細書に記載した事項の範囲内のものではないということはできない。
次に、上記アの後段の主張についてみると、例えば、本件明細書の【図2】等には、大開口が、角部のみ外側に向けて張り出している形状の縁を有する態様が記載されているのだから、「角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する」との訂正が、本件明細書に記載した事項の範囲内のものではないということもできない。
そうすると、異議申立人の上記アの主張は、採用できない。

3 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし5〕、〔6ないし8〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1ないし5〕、〔6ないし8〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
金属製の蒸着マスクであって、
蒸着源に対向するように構成された表面と、
逆錘台状を有した孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備え、
各マスク孔の前記孔部は、
前記蒸着マスクの前記表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、
前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口と、を備え、
前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲む
蒸着マスク。
【請求項2】
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、
前記第2角度は、前記第1角度よりも大きく、
前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部との間の距離は、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、
前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下である
請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記蒸着マスクは、前記表面とは反対側の面である裏面をさらに備え、
前記複数の小開口は、前記裏面に位置する
請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記蒸着マスクは、1μm以上20μm以下の厚さを有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記蒸着マスクを形成する材料は、鉄ニッケル系合金、または、鉄ニッケルコバルト系合金である
請求項1から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
金属シートの表面および裏面の少なくとも一方にレジストマスクを形成することと、
前記レジストマスクを用いて、前記金属シートに複数のマスク孔を形成することと、を含み、
前記複数のマスク孔を形成することは、
逆錘台状を有した孔部を各々含む前記複数のマスク孔を、
各マスク孔の前記孔部が、
前記金属シートが広がる平面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、
前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲むように、前記金属シートに形成する
蒸着マスクの製造方法。
【請求項7】
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、
前記複数のマスク孔を形成することは、
前記第2角度が、前記第1角度よりも大きく、
前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部との間の距離が、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、
前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下であるように、前記金属シートに前記複数のマスク孔を形成する
請求項6に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の蒸着マスクの製造方法による蒸着マスクを準備することと、
前記蒸着マスクを用いた蒸着によってパターンを形成することと、を含む
表示装置の製造方法。」

第4 令和4年3月15日付けで通知した取消理由、及びこの取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要

1 令和4年3月15日付けで通知した取消理由の概要

(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
ア 訂正前の請求項1〜8に係る発明は、下記2(1)に記載の甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜5号証に記載される周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(取消理由1)。

イ 訂正前の請求項1〜8に係る発明は、下記2(1)に記載の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、訂正前の請求項1〜8に係る発明は、同甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(取消理由2)。

(2)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)
本件特許は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜8の記載が後記第5の2(1)アの点で不備のため、特許法第36条6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(取消理由3)。

2 取消理由において採用しなかった異議申立人による特許異議の申立理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)
訂正前の請求項1、3、8に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである(申立理由1)。

甲第1号証:中国特許出願公開第103668055号明細書
甲第2号証:国際公開第2019/098168号
甲第3号証:特開2015−55007号公報
甲第4号証:国際公開第2017/057621号
甲第5号証:国際公開第2019/074104号
(以下、甲第1号証を略して、「甲1」などという。)

(2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)
本件特許は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜8の記載が後記第5の2(2)アの点で不備のため、特許法第36条6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(申立理由2)。

第5 当審の判断

当審は、上記取消理由1〜3及び申立理由1、2のいずれにも理由がないと判断する。
以下、その理由について詳述する。

1 取消理由1、2及び申立理由1(新規性欠如及び進歩性欠如)について
(1)甲1〜甲5に記載の事項
ア 甲1に記載の事項(訳文は、異議申立人提出のものを参考にした。)
(ア)「

・・・

・・・


(【請求項1】
マスクフレームと、前記マスクフレームに固定され、蒸着孔の配列によって形成されたマスクパターン領域が設けられたマスクプレートと、を含むマスクアセンブリであって、 前記蒸着孔は、多辺形開口と、前記多辺形開口の角部に設けられた補償開口とから構成され、前記補償開口は、前記多辺形開口外延構造を構成し、前記マスクプレートは、一体成型構造であるか、または別個のマスクユニットから構成される、ことを特徴とするマスクアセンブリ。
・・・
【請求項8】
前記マスクプレートは、電鋳プロセスまたはエッチングプロセスによって製造される、ことを特徴とする請求項1に記載のマスクアセンブリ。
・・・
【請求項10】
前記マスクプレートはニッケル基合金を材質とする、ことを特徴とする請求項1に記載のマスクアセンブリ。)

(イ)「

・・・

・・・


(技術分野
[0001] 本発明は、OLED製造分野に関し、特に蒸着用のマスクアセンブリに関する。
背景技術
・・・.
[0003] OLEDディスプレイの製造における重要なプロセスは、ITO半導体ガラスの表面に有機発光材料を蒸着することである。蒸着工程では、蒸着源から有機材料を蒸発させ、マスクプレートの蒸着孔を通過させてITO半導体ガラス面に付着させるが、マスクプレートの蒸着孔の精度が蒸着品質を左右し、また蒸着品質がOLEDディスプレイの品質に直接左右するため、マスクプレートの蒸着孔の精度を高めることが極めて重要である。マスクプレートの蒸着孔の幅寸法は20〜100μmであり、蒸着孔の寸法がとても小さいため、蒸着孔の精度に対する要求は非常に高いものとなっている。
[0004] OLEDディスプレイの有機層を製造する際に使用される蒸着用マスクアセンブリは、マスクアセンブリの全体的な平面構造の模式図である図1に示されている。マスクアセンブリは、マスクフレーム14と、マスクプレート10とを含み、マスクプレート10には、蒸着孔の配列によって形成されたマスクパターン領域11が設けられ、12はレーザー溶接によりマスクプレートをマスクフレーム14に固定することによって形成されたはんだ接合部である。図2は、図1における13部分の拡大模式図であり、20は蒸着孔である。図3は、図2における21部分の拡大模式図であり、図3に予め設定された蒸着孔は長方形の構造であるが、製造過程における偏差により、直角の長方形の蒸着孔は丸みを帯びた長方形の蒸着孔20になっており、図3における4つの直角箇所において点線で表された長方形は予め設定された直角の長方形であるが、実際に製造された丸みを帯びた長方形は、予め設定された直角の長方形よりも蒸着孔の開口が小さく、開口率が高くないため、マスクパターン領域の蒸着孔の品質に影響し、OLEDディスプレイの品質低下を直接的に引き起こしている。このため、業界はこの問題を解決できるソリューションを早急に必要としている。
・・・
[0006] 上記に鑑み、本発明は、マスクアセンブリにおける蒸着孔の開口率を向上させ、これにより、OLEDディスプレイの品質を向上させることを目的としたマスクアセンブリを提供する。)

(ウ)「


([0041] 本発明の有益な効果は下記の通りである:マスクプレート10上の蒸着孔50は、多辺形開口61と、多辺形開口の角部に設けられた補償開口60とから構成され、補償開口60は多辺形開口61の外延構造を構成し、蒸着孔50に補償開口60を設けたことによってマスクアセンブリにおける蒸着孔50の開口率を向上させ、これにより、OLEDディスプレイの品質を効果的に向上させた。)

(エ)「

」(図9)

イ 甲2に記載の事項
(ア)「請求の範囲
[請求項1] 蒸着マスクを製造するために用いられる金属板であって、
前記金属板の長手方向及び前記長手方向に直交する幅方向を有する表面を備え、
前記表面に直交する少なくとも1つの平面内において45°±0.2°の入射角度で前記表面に光を入射させた場合に測定される、前記光の正反射による表面反射率が、8%以上且つ25%以下である、金属板。
・・・
[請求項8] 前記金属板が、ニッケルを含む鉄合金からなる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の金属板。
・・・
[請求項10] 前記金属板は、前記金属板の前記表面に貼り付けられたレジスト膜を露光および現像して第1レジストパターンを形成し、前記金属板の前記表面のうち前記第1レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、前記蒸着マスクを製造するためのものである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の金属板。
[請求項11] 前記金属板は、1000Pa以下の環境下で前記金属板の前記表面に貼り付けられたレジスト膜を露光および現像して第1レジストパターンを形成し、前記金属板の前記表面のうち前記第1レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、前記蒸着マスクを製造するためのものである、請求項10に記載の金属板。」

(イ)「[0056] 蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、蒸着マスク20の厚みtは、5μm以上100μm以下であってもよく、8μm以上50μm以下であってもよく、10μm以上40μm以下であってもよく、12μm以上35μm以下であってもよく、13μm以上30μm以下であってもよく、15μm以上25μm以下であってもよく、15μm以上20μm以下であってもよい。また、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、蒸着マスク20の厚みtは、50μm以上100μm以下であってもよい。また、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、蒸着マスク20の厚みtは、5μm以上8μm以下であってもよい。」

(ウ)「





ウ 甲3に記載の事項
(ア)「【請求項1】
複数の貫通孔を形成してマスクを製造するために用いられる金属板の製造方法であって、
前記マスクの前記貫通孔は、搬送されている長尺状の前記金属板をエッチングすることによって形成されるものであり、
前記金属板の製造方法は、
母材を圧延して前記金属板を得る圧延工程と、
前記金属板の幅方向における一端および他端を所定範囲にわたって切り落とす切断工程と、を備え、
前記切断工程後の前記金属板は、その長手方向における長さがその幅方向の位置に応じて異なることに起因する波打ち形状を少なくとも部分的に有しており、
前記切断工程後の前記金属板の前記波打ち形状の前記長手方向における周期に対する、前記波打ち形状の高さの百分率を急峻度と称する場合、以下の条件(1)〜(3)が満たされており、
(1)前記切断工程後の前記金属板の幅方向の中央部分における急峻度の最大値が、0.4%以下であること;
(2)前記中央部分における急峻度の最大値が、前記切断工程後の前記金属板の幅方向の一端側部分における急峻度の最大値以下であり、かつ、前記切断工程後の前記金属板の幅方向の他端側部分における急峻度の最大値以下であること;および、
(3)前記一端側部分における急峻度の最大値と、前記他端側部分における急峻度の最大値と、の差が0.4%以下であること;
前記一端側部分、前記中央部分および前記他端側部分はそれぞれ、前記切断工程後の前記金属板の幅の30%、40%および30%を占める部分である、金属板の製造方法。」

(イ)「【0003】
応答性の良さや消費電力の低さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔を含む蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板に対して蒸着マスクを密着させ、次に、密着させた蒸着マスクおよび基板を共に蒸着装置に投入し、有機材料などの蒸着を行う。蒸着マスクは一般に、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に貫通孔を形成することにより、製造され得る(例えば、特許文献1)。例えば、はじめに、金属板上にレジスト膜を形成し、次に、レジスト膜に露光マスクを密着させた状態でレジスト膜を露光してレジストパターンを形成し、その後、金属板のうちレジストパターンによって覆われていない領域をエッチングすることにより、貫通孔が形成される。」

(ウ)「【図3】

【図4】



エ 甲4に記載の事項
(ア)「請求の範囲
[請求項1] 被蒸着基板に蒸着材料を蒸着させる蒸着マスクであって、
マスク本体と、
前記マスク本体に設けられ、前記蒸着材料を前記被蒸着基板に蒸着させる際に前記蒸着材料が通過過する貫通孔と、を備え、
前記マスク本体は、インデンテーション弾性率をx(GPa)、0.2%耐力をy(MPa)としたときに、
y≧950、かつ、y≧23x−1280
を満たしていることを特徴とする蒸着マスク。
・・・
[請求項3] 前記マスク本体の厚みは、15μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着マスク。」

(イ)「[0004] 蒸着マスクの製造方法としては、例えば特許文献1に開示されているように、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチングによって金属板に貫通孔を形成する方法が知られている。例えば、はじめに、金属板の第1面上に第1レジストパターンを形成し、また金属板の第2面上に第2レジストパターンを形成する。次に、金属板の第1面のうち第1レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、金属板の第1面に第1開口部を形成する。その後、金属板の第2面のうち第2レジストパターンによって覆われていない領域をエッチングして、金属板の第2面に第2開口部を形成する。この際、第1開口部と第2開口部とが通じ合うようにエッチングを行うことにより、金属板を貫通する貫通孔を形成することができる。」

(ウ)「[0149] 図29は、エッチングを利用することによって作製された蒸着マスク20を、図3のA−A線に沿って切断した場合を示す断面図である。図29に示す例では、後に詳述するように、蒸着マスクの法線方向における一方の側となる金属板21の第1面21aに第1開口部30がエッチングによって形成され、金属板21の法線方向における他方の側となる第2面21bに第2開口部35がエッチングによって形成される。第1開口部30は、第2開口部35に接続され、これによって第2開口部35と第1開口部30とが互いに連通するように形成される。貫通孔25は、第2開口部35と、第2開口部35に接続された第1開口部30とによって構成されている。」

(エ)「



オ 甲5に記載の事項
(ア)「特許請求の範囲
[請求項1] 金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクであって、
表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
各マスク孔を区画する内面と、を備え、
各マスク孔は、前記表面と前記裏面との間を貫通しており、
各マスク孔は、前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側に位置する小開口と、を備え、各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し、
各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える
蒸着マスク。
・・・
[請求項5] 前記小開口は、前記裏面に位置する
請求項1から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。」

(イ)「発明が解決しようとする課題
[0005] ところで、蒸着源から蒸着マスクに向けて飛行する蒸着粒子の軌跡と、蒸着マスクの裏面とが形成する角度が、蒸着粒子の入射角度である。昇華された蒸着粒子が大孔を通過することが可能な入射角度の範囲、ひいては蒸着粒子がマスク孔を通過することが可能な入射角度の範囲は、上述したテーパー角度によって制約される。そこで、蒸着マスクには、蒸着粒子が大孔を通過することが可能な入射角度における制約を小さくすることが求められている。
[0006] 本発明は、蒸着粒子がマスク孔を通過することが可能な蒸着粒子の入射角度における制約を小さくすることを可能とした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。」

(ウ)「[0025] 蒸着マスク30は、マスクシート30Sから構成されている。マスクシート30Sは、単一の金属シートから構成されてもよいし、多層の金属シートから構成されてもよい。マスクシート30Sを構成する金属シートの形成材料は、鉄‐ニッケル系合金である。金属シートの形成材料は、例えば、30質量%以上のニッケルを含む鉄‐ニッケル系合金であることが好ましい。なかでも、36質量%のニッケルと64質量%の鉄との合金を主成分とする合金、すなわちインバーが、金属シートの形成材料であることがより好ましい。金属シートが36質量%のニッケルと64質量%の鉄との合金を主成分とするとき、金属シートの残余分として、例えば、クロム、マンガン、炭素、および、コバルトなどの添加物を含んでもよい。
[0026] マスクシート30Sがインバーシートであるとき、マスクシート30Sの熱膨張係数は、例えば1.2×10−6/℃程度である。こうした熱膨張係数を有するマスクシート30Sによれば、マスク部31における熱膨張の度合いと、ガラス基板における熱膨張の度合いとが整合する。そのため、マスク装置10を用いた蒸着において、蒸着対象の一例としてガラス基板を用いることが好ましい。マスクシート30Sの厚さは、例えば、10μm以上50μm以下である。」

(エ)「[0029] [第1例]
図2から図6を参照して、蒸着マスク30の第1例を説明する。図2は、マスク表面と対向する平面視におけるマスク部31の平面構造を示している。これに対して、図3は、マスク裏面と対向する平面視におけるマスク部31の平面構造を示している。図2および図3では、マスク表面またはマスク裏面のなかで、マスク孔31Hが位置する部分と、マスク孔31Hが位置しない部分とを区別しやすくする目的で、マスク孔31Hが位置しない部分にドットが付されている。
[0030] 図2が示すように、蒸着マスク30は、マスク表面30Fと、マスク表面30Fとは反対側の面であるマスク裏面とを備えている。マスク部31は、マスク表面30Fとマスク裏面30Rとの間を貫通する複数のマスク孔31Hを備えている。各マスク孔31Hは、マスク表面30Fと対向する平面視において、マスク表面30Fに位置する表面開口HFと、表面開口HFの内側に位置する中央開口HCと、を備えている。表面開口HFは大開口の一例であり、中央開口HCは小開口の一例である。マスク孔31Hを区画する内面は、表面開口HFと中央開口HCとを繋ぐ段差面を備えている。表面開口HFの縁Eは、段差面の縁である第1部E1と、第1部E1以外の第2部E2とを備えている。
[0031] 本実施形態において、複数のマスク孔31Hは、第1方向DR1と、第1方向DR1と直交する第2方向DR2とに沿って並んでいる。各マスク孔31Hは、第1方向DR1において互いに隣り合うマスク孔31H、および、第2方向DR2において互いに隣り合うマスク孔31Hの双方から離れている。各マスク孔31Hは1つの主孔31H1と、2つの補助窪み31H2とを備えている。各主孔31H1は、第1方向DR1において、2つの補助窪み31H2に挟まれている。言い換えれば、第1方向DR1において互いに隣り合う主孔31H1間には、2つの補助窪み31H2が位置している。
[0032] 各マスク孔31Hにおいて、主孔31H1と補助窪み31H2とが繋がる部分は、マスク表面30Fに対して窪んだ部分であり、かつ、主孔31H1を区画する面と、補助窪み31H2を区画する面とによって、表面開口HFの縁を拡大させる方向に、段差が形成されている。そのため、上述した表面開口HFの縁Eは、第2部E2の一例である主孔31H1の縁と、第1部E1の一例である補助窪み31H2の縁とから構成されている。
・・・
[0034] マスク表面30Fと対向する平面視において、表面開口HFはほぼ正八角形状を有している。表面開口HFにおいて、第1方向DR1に沿う長さの最大値と、第2方向DR2に沿う長さの最大値とはほぼ等しい。なお、マスク表面30Fと対向する平面視において、表面開口HFは、正八角形状以外の多角形状を有することができる。表面開口HFは、多角形状のなかでも2n(nは2以上の整数)角形状を有することが好ましい。なお、マスク表面30Fと対向する平面視において、表面開口HFにおける各角部や各辺は曲率を有してもよい。
[0035] マスク表面30Fと対向する平面視において、2つの補助窪み31H2は、互いにほぼ同じ形状を有し、かつ、ほぼ同じ大きさを有している。各補助窪み31H2は、第2方向DR2に沿って延びる矩形状を有している。なお、マスク表面30Fと対向する平面視において、2つの補助窪み31H2は、互いに異なる形状を有してもよいし、互いに異なる大きさを有してもよい。また、各補助窪み31H2の形状は、矩形状以外の形状でもよく、例えば、楕円状などでもよい。なお、マスク表面30Fと対向する平面視において、補助窪み31H2における各角部や各辺は曲率を有してもよい。
[0036] 図3が示すように、マスク裏面30Rと対向する平面視において、複数の裏面開口HRは、第1方向DR1と第2方向DR2とに沿って並んでいる。マスク裏面30Rと対向する平面視において、裏面開口HRは表面開口HFよりも小さく、また、各裏面開口HRの中心の位置は、その裏面開口HRが属するマスク孔31Hが含む主孔31H1の中心の位置とほぼ重なっている。各裏面開口HRはほぼ正八角形状を有し、各裏面開口HRの形状は、その裏面開口HRが属するマスク孔31Hにおける主孔31H1の縁の形状とほぼ相似である。
[0037] 図4は、図2におけるI−I線に沿う端面、すなわち、マスク表面30Fに直交し、かつ、第1方向DR1に沿って延びる平面に沿う端面における構造を示している。I−I線は、マスク表面30Fと対向する平面視において、第1方向DR1に沿って延び、かつ、第2方向DR2における表面開口HFの中央を通る直線である。
[0038] 図4が示すように、各マスク孔31Hは、マスク表面30Fに開口する表面開口HFと、表面開口HFよりも内側に位置する中央開口HCとを備えている。マスク孔31Hの一部は、表面開口HFと中央開口HCとを繋ぐ逆錘台筒状を有している。マスク孔31Hを区画する内面は、中央開口HCから表面開口HFに向けて拡開した段差面を備えている。中央開口HCから表面開口HFまでの間において、補助窪み31H2を区画する内面と、主孔31H1を区画する内面とが接続する部分が、接続部HCOである。
[0039] 各マスク孔31Hは、大孔HLと小孔HSとから構成されている。大孔HLは、表面開口HFを含む逆錘台筒状を有している。小孔HSは、裏面開口HRを含む錘台筒状を有している。小孔HSは大孔HLに繋がり、小孔HSと大孔HLとが接続する部分が中央開口HCである。大孔HLは、上述した主孔31H1と2つの補助窪み31H2とから構成されている。主孔31H1は、マスク表面30Fと中央開口HCとを繋ぐ孔である。大孔HLの内面は、マスク孔31Hの周方向における一部に、2段の段差面を備えている。2段の段差面は、上述したように、主孔31H1の内面の一部と、補助窪み31H2の内面とから構成される。中央開口HCと裏面開口HRとの間の距離が、ステップハイSHである。ステップハイは3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
・・・
[0041] 蒸着マスク30が備えるマスク孔31Hの加工には、通常ではウェットエッチングが用いられる。このウェットエッチングは、金属製のシートの表面から等方的に進むエッチングである。ウェットエッチングによって形成されるマスク孔31Hは、マスク表面30Fを底部とした例えば半円球面の一部であり、マスク孔31Hにおけるマスク表面30Fと平行な面に沿う断面積は、表面開口HFから遠ざかるほど急激に縮小する。こうしたマスク孔31Hが有するテーパー角度θは、シートの厚さが薄いほど小さく、シートの厚さによって概ね定められる。また、テーパー角度θを小さくするためにシートの厚さを薄くすることにも限りがある。この点で、上述した構成であれば、拡開した段差面が表面開口HFの縁Eを拡大するため、段差面を有しないマスク孔31Hと比べて、テーパー角度θを小さくすることが可能である。これにより、蒸着粒子がマスク孔31Hを通過することが可能な蒸着粒子の入射角度の大きさや、小さい入射角度を得たい位置など、これら入射角度における制約を小さくすることができる。」

(オ)「[0060] [蒸着マスクの製造方法]
図11を参照して、蒸着マスク30の製造方法を説明する。
図11(a)から図11(f)が示すように、蒸着マスク30の製造方法では、まず、金属板の一例であるシート30S1が準備される(図11(a)参照)。次いで、シート30S1のマスク表面30Fに第1レジスト層PR1が形成され、かつ、シート30S1のマスク裏面30Rに第2レジスト層PR2が形成される(図11(b)参照)。そして、第1レジスト層PR1および第2レジスト層PR2に対する露光、および、現像が行われることによって、マスク表面30Fに第1レジストマスクRM1が形成され、かつ、マスク裏面30Rに第2レジストマスクRM2が形成される(図11(c)参照)。
[0061] 次に、第1レジストマスクRM1を覆う第1保護層PL1が形成された後に、シート30S1が第2レジストマスクRM2を用いてマスク裏面30Rからウェットエッチングされることによって、シート30S1に複数の小孔HSが形成される(図11(d)参照)。次いで、第1保護層PL1の除去と、第2レジストマスクRM2を覆う第2保護層PL2の形成とが行われた後に、シート30S1が第1レジストマスクRM1を用いてマスク表面30Fからウェットエッチングされることによって、シート30S1に複数の大孔HLが形成される(図11(e)参照)。シート30S1に対して複数の小孔HSを形成する工程と、複数の大孔HLを形成する工程とが、板形成工程およびマスク形成工程に含まれる。そして、第1レジストマスクRM1、第2レジストマスクRM2、および、第2保護層PL2がシート30S1から除去されることによって、蒸着マスク30が製造される(図11(f)参照)。なお、図11(d)では、第1レジストマスクRM1を剥離した後に、第2保護層PL2を形成してもよい。」

(カ)「[0076] 上述した蒸着マスク30を用いて表示装置を製造する方法では、まず、蒸着マスク30を搭載したマスク装置10を蒸着装置の真空槽内に取り付ける。このとき、ガラス基板などの蒸着対象とマスク裏面30Rとが対向するように、かつ、蒸着源とマスク表面30Fとが対向するように、マスク装置10を真空槽内に取り付ける。そして、蒸着装置の真空槽に蒸着対象を搬入し、蒸着源で蒸着物質を昇華させる。これによって、裏面開口HRに追従した形状を有するパターンが、裏面開口HRと対向する蒸着対象に形成される。蒸着物質は、例えば、表示装置の画素を構成する有機発光材料や、表示装置の画素回路を構成する画素電極材料などである。なお、マスク装置10が含む蒸着マスク30を用いた蒸着によって表示装置が有するパターンを形成する工程が、パターン形成工程である。」

(キ)「





(2)甲1及び甲5に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1の上記(1)ア(ア)の【請求項1】、【請求項8】及び【請求項10】の記載によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「マスクフレームと、前記マスクフレームに固定され、蒸着孔の配列によって形成されたマスクパターン領域が設けられたマスクプレートと、を含むマスクアセンブリであって、 前記蒸着孔は、多辺形開口と、前記多辺形開口の角部に設けられた補償開口とから構成され、前記補償開口は、前記多辺形開口外延構造を構成し、前記マスクプレートは、一体成型構造であるか、または別個のマスクユニットから構成され、電鋳プロセスまたはエッチングプロセスによって製造され、ニッケル基合金を材質とする、マスクアセンブリ。」

イ 甲5に記載された発明
甲5の上記(1)オ(ア)には、[請求項1]を引用する[請求項5]として、「金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクであって、
表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
各マスク孔を区画する内面と、を備え、
各マスク孔は、前記表面と前記裏面との間を貫通しており、
各マスク孔は、前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側であって、裏面に位置する小開口と、を備え、各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し、
各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える
蒸着マスク。」が記載されているといえる。
ここで、上記蒸着マスクは、上記甲5の同(キ)の、マスク表面の対向する平面視である[図2]、マスク裏面と対向する平面視である[図3]、[図2]のI−I断面図である[図3]等で表される構造を有するものであるが、[図3]の記載によれば、小開口(HC)は、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有するものであるといえる。
以上を踏まえると、甲5には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
「金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクであって、
表面と、
前記表面とは反対側の面である裏面と、
各マスク孔を区画する内面と、を備え、
各マスク孔は、前記表面と前記裏面との間を貫通しており、
各マスク孔は、前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口と、前記大開口の内側であって、裏面に位置し、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有する小開口と、を備え、各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有し、
各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える
蒸着マスク。」

(3)取消理由1及び申立理由1について
取消理由1及び申立理由1は、共に甲1を主引用例とするものであるから、まとめて判断する。
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「マスクアセンブリ」は、甲1の上記(1)ア(イ)の[0003]の記載によれば、蒸着の際のマスクになるものであり、「ニッケルを含む鉄合金からなる」ものであるから、本件発明1の「金属製の蒸着マスク」に相当すると共に、「蒸着源に対向するように構成された表面」を持つものであることは明らかである。
また、甲1発明の「マスクアセンブリ」は、「蒸着孔の配列」を有するものであり、各蒸着孔は孔部を含むことは明らかであるから、「孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備え」るものである。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、「金属製の蒸着マスクであって、蒸着源に対向するように構成された表面と、孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備える蒸着マスク。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点1>
本件発明1では、各マスク孔の孔部が逆錘台状を有していると共に、蒸着マスクの表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口と、を備え、前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲んでいるのに対し、甲1発明では、蒸着孔(マスク孔)は、多辺形開口と、前記多辺形開口の角部に設けられた補償開口とから構成され、前記補償開口は、前記多辺形開口外延構造を構成しているものの、本件発明1の上記の構造を有するものであるのかは明らかでない点。

(イ)判断
a まず、甲1には、本件発明1の前提となる蒸着マスクの孔部の構造である、各マスク孔の孔部が逆錘台状を有し、蒸着マスクの表面と対向する視点から見て、大開口が小開口を取り囲んでいる形状を有していることについて、何らの記載もないから、上記相違点1は、実質的な相違点である。
b 次に、上記相違点1に係る本件発明1の構成が、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて、検討する。
まず、甲1を子細にみると、上記(1)ア(イ)の[0004]の「図3は、図2における21部分の拡大模式図であり、図3に予め設定された蒸着孔は長方形の構造であるが、製造過程における偏差により、直角の長方形の蒸着孔は丸みを帯びた長方形の蒸着孔20になっており、図3における4つの直角箇所において点線で表された長方形は予め設定された直角の長方形であるが、実際に製造された丸みを帯びた長方形は、予め設定された直角の長方形よりも蒸着孔の開口が小さく、開口率が高くないため、マスクパターン領域の蒸着孔の品質に影響し、OLEDディスプレイの品質低下を直接的に引き起こしている。」との記載、及び[0006]の「上記に鑑み、本発明は、マスクアセンブリにおける蒸着孔の開口率を向上させ、これにより、OLEDディスプレイの品質を向上させることを目的としたマスクアセンブリを提供する。」との記載によれば、一般に、蒸着孔は、本来長方形の構造であるところ、製造過程における偏差により、直角の長方形の蒸着孔は丸みを帯びた長方形の蒸着孔となり、予め設定された直角の長方形よりも蒸着孔の開口が小さく、開口率が低いため、OLEDディスプレイの品質低下が引き起こされていたという問題があったことが分かる。
そして、このような問題に対処するために、甲1発明は、マスクアセンブリにおける蒸着孔の開口率を向上させ、OLEDディスプレイの品質を向上させることを目的として、多辺形開口の角部に外延構造を構成する補償開口を設けたものと解される。
そうすると、甲1発明は、マスクアセンブリにおける、ITO半導体ガラス面に対する、蒸着孔の開口率自体を向上させるものであるから、マスクアセンブリの両表面の開口の縁は共に、同形状の補償開口に対応する縁を有していると考えるのが合理的であって、本件発明1のように、一方の開口(大開口)の角部のみが外側に向けて張り出している形状であるとは考えにくい。また、甲1発明の蒸着孔の形状を本件発明1のようなものとすると、ITO半導体ガラス面に対する、蒸着孔の開口率を向上させることにはならず、甲1発明の目的を達成できないから、甲1発明におけるマスクフレームにおける蒸着孔の構造を上記相違点1に係る本件発明1のようなマスク孔の形状にすることには阻害要因があるというべきである。
c 加えて、甲1発明に係るマスクアセンブリは、エッチングプロセスによって製造されることが選択肢とされているところ(上記(1)ア(ア)の【請求項8】)、甲2の上記(1)イ(ア)及び(ウ)、甲3の上記(1)ウ(ア)〜(ウ)、甲4の上記(1)エ(イ)〜(エ)及び甲5の上記(1)オ(エ)の[0041]、(オ)、(キ)等に記載されるように、マスクプレートの蒸着孔をエッチングプロセスによって形成する場合、表面側からのエッチングによって、表面側から裏面側に開口が縮小した形状の孔部、すなわち、蒸着孔において、裏面側に、表面側の開口の縁よりも縮小した形状の縁を有する開口が形成されることは、周知の技術的事項である。
そして、この周知の技術的事項に照らすと、仮に、甲1発明において、蒸着源側(表面と対向する視点)から見て、蒸着孔の開口の縁が角部において外側に張り出している蒸着孔をエッチングにより形成した場合、マスクプレートの裏面に形成される開口の縁は、表面側の開口の縁に比べて縮小した形状の縁を有したものになると推認される。しかしながら、上記bで述べたように、甲1発明は、マスクアセンブリにおける、ITO半導体ガラス面に対する、蒸着孔の開口率自体を向上させるものであることを考慮すると、マスクプレートの裏面に形成される角部にも、表面側の開口の角部と同様の張り出し部が形成されると解するが自然であるから、結果として、上記相違点1に係る本件発明1の構成である「前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口」として特定される構造は形成されない。
d 上記b及びcによれば、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものではない。

(ウ)小括
本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2〜甲5に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。

イ 本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明3は、甲1発明ではないし、本件発明2〜5は、甲1発明及び甲2〜甲5に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。

ウ 本件発明6〜8について
本件発明6及び本件発明6を直接又間接的に引用する本件発明7、8は、蒸着マスクの製造方法の発明であるが、それぞれ発明の特定事項に、上記ア(イ)に記載の相違点1に係る本件発明1の構成と実質的に同じである「前記複数のマスク孔を形成することは、逆錘台状を有した孔部を各々含む前記複数のマスク孔を、各マスク孔の前記孔部が、前記金属シートが広がる平面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲むように、前記金属シートに形成する」との構成を含むものであるから、上記ア(イ)で述べたのと同様に、この構成は、甲1発明との間で、実質的な相違点となるものであるし、また、当業者が容易に想到し得るものではない。
そうすると、本件発明1と同様に、本件発明8は、甲1発明ではないし、本件発明6〜8は、甲1発明及び甲2〜甲5に記載される周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

エ 取消理由1及び申立理由1に関するまとめ
以上のとおり、本件特許1〜8は、特許法第29条第1項及び同条第2項の規定に違反してされたものではないから、取消理由1及び申立理由1には、理由がない。

(4)取消理由2について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明の「金属板と、前記金属板に形成された複数のマスク孔とを含む蒸着マスクであって」、「各マスク孔の少なくとも一部は、前記大開口と前記小開口とを繋ぐ逆錘台筒状を有」する「蒸着マスク」は、本件発明1の「金属製の蒸着マスクであって」、「逆錘台状を有した孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備え」る「蒸着マスク」に相当する。
また、甲5発明の蒸着マスクの(大開口が形成される)「表面」は、甲5の上記(1)オ(エ)の[0041]の「上述した構成であれば、拡開した段差面が表面開口HFの縁Eを拡大するため、段差面を有しないマスク孔31Hと比べて、テーパー角度θを小さくすることが可能である。これにより、蒸着粒子がマスク孔31Hを通過することが可能な蒸着粒子の入射角度の大きさや、小さい入射角度を得たい位置など、これら入射角度における制約を小さくすることができる。」との記載によれば、本件発明1の「蒸着源に対向するように構成された表面」に相当する。
さらに、甲5発明の「各マスク孔」が有する「前記大開口の内側であって、裏面に位置し、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有する小開口」は、本件発明1の「各マスク孔の孔部」が備える「前記蒸着マスクの前記表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口」に相当すると共に、本件発明1と同様に、「前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲む」ものである。
また、甲5発明の「各マスク孔」が有する「前記表面と対向する平面視において、前記表面に位置する大開口」は、本件発明1の「各マスク孔の孔部」が備える「前記表面に位置」する「大開口」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲5発明は、「金属製の蒸着マスクであって、蒸着源に対向するように構成された表面と、逆錘台状を有した孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備え、各マスク孔の前記孔部は、前記蒸着マスクの前記表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、前記表面に位置する大開口と、を備え、前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲む蒸着マスク。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。

<相違点2>
表面に位置する大開口について、本件発明1では、「前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する」のに対し、甲5発明では、「各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える」とされるものの、大開口の縁に関する特定はなされていない点。

(イ)判断
上記相違点2について、以下検討する。
a 上記相違点2に係る、甲5発明の各マスク孔の各内面に備えられた、「小開口から大開口に向けて拡開した段差面」とは、甲5の上記(1)オ(エ)の[0032]の「各マスク孔31Hにおいて、主孔31H1と補助窪み31H2とが繋がる部分は、マスク表面30Fに対して窪んだ部分であり、かつ、主孔31H1を区画する面と、補助窪み31H2を区画する面とによって、表面開口HFの縁を拡大させる方向に、段差が形成されている。そのため、上述した表面開口HFの縁Eは、第2部E2の一例である主孔31H1の縁と、第1部E1の一例である補助窪み31H2の縁とから構成されている。」との記載によれば、同(キ)の[図2]及び[図4]で「補助窪み31H2」とされるものである。そして、この「補助窪み31H2」は、同[0032]で「表面開口HFの縁を拡大させる」と記載されると共に、同[図2]より、「補助窪み31H2」を含む表面開口HF(大開口)の縁が、大開口の角部を含め外側に向けて張り出している形状となっているといえる。しかしながら、この表面開口HF(大開口)の縁は、大開口の角部のみならず辺部においても外側に向けて張り出している形状となっているから、上記相違点2に係る本件発明1の「角部のみが・・・外側に向けて張り出している」との特定に合致していないから、上記相違点2は、実質的な相違点である。
b 次に、上記相違点2に係る本件発明1の構成が、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて、検討する。
ここで、甲5の上記(1)オ(イ)の[0005]の「昇華された蒸着粒子が大孔を通過することが可能な入射角度の範囲、ひいては蒸着粒子がマスク孔を通過することが可能な入射角度の範囲は、上述したテーパー角度によって制約される。そこで、蒸着マスクには、蒸着粒子が大孔を通過することが可能な入射角度における制約を小さくすることが求められている。」との記載、及び同[0006]の「本発明は、蒸着粒子がマスク孔を通過することが可能な蒸着粒子の入射角度における制約を小さくすることを可能とした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供することを目的とする。」との記載によれば、甲5発明は、蒸着粒子がマスク孔を通過することが可能な蒸着粒子の入射角度における制約を小さくするために、「各内面は、前記小開口から前記大開口に向けて拡開した段差面を備える」のであるから、この段差面、すなわち、この段差面が形成されることになる上記[図2]及び[図4]での「補助窪み31H2」は、大開口の縁に沿ってできるだけ多くの箇所に設けることが好ましいことは明らかである。
そうすると、甲5発明において、大開口の縁に沿う段差面の箇所を減少させ、この段差部を角部のみに設けることを動機付けるような事実は認められないから、甲5発明の構成に代えて、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

(ウ)小括
本件発明1は、甲5発明ではないし、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。

イ 本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、いずれも直接又は間接的に本件発明1を引用し、本件発明1の構成をすべて具備するものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2〜5は、甲5発明ではないし、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。

ウ 本件発明6〜8について
本件発明6及び本件発明6を直接又間接的に引用する本件発明7、8は、蒸着マスクの製造方法の発明であるが、それぞれ発明の特定事項に、上記ア(ア)における相違点2に係る本件発明1の構成と同じである「前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する」との構成を含むものであるから、上記ア(イ)で述べたように、この構成は、甲5発明との間で、実質的な相違点となり、また、当業者が容易に想到し得るものではない。
そうすると、本件発明6〜8は、本件発明1と同様に、甲5発明ではないし、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

エ 取消理由2に関するまとめ
以上のとおり、本件特許1〜8は、特許法第29条第1項及び同条第2項の規定に違反してされたものではないから、取消理由2には、理由がない。

2 取消理由3及び申立理由2(明確性要件違反及びサポート要件違反)について
(1)取消理由3について
ア 取消理由3の概要
取消理由3の概要は、以下のとおりである。
訂正前の請求項1には、「前記表面に位置し、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している形状の縁を有する大開口」と記載されている。
この記載は、「大開口」の形状を特定しようとするものであることは理解できるが、この記載の中の「前記小開口の前記縁における前記角部が前記小開口の前記縁に対して外側に向けて張り出している」とは小開口の形状の記載であり、結局のところ大開口の形状の特定が明確でない。
そうすると、訂正前の請求項1に係る発明は、明確でないため、同請求項1の記載は特許法第36条第6項第2号の規定(明確性要件)に適合しない。
訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2〜5、同様の記載がある訂正前の請求項6、訂正前の請求項6を引用する訂正前の請求項7、8の記載についても同様である。

イ 取消理由3についての検討
本件訂正により、上記アの記載を、「前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、」とし、小開口に相似の形状において、その角部のみが、その相似の形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する縁を大開口が有していることが明らかにされたことで、大開口の形状が明確になった。
そうすると、訂正後の請求項1、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2〜5、同様の記載がある訂正後の請求項6、訂正後の請求項6を引用する訂正後の請求項7、8の記載は、明確性要件に適合するものである。
なお、異議申立人は、令和4年7月26日提出の意見書において、本件訂正後の請求項における大開口に関する記載は、依然として、
「(ア)「角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状」が、複数の角部の全てに適用されるのか、複数の角部の一部のみに適用される場合も含むのか不明確である。(イ)二つの「相似な形状」が同じものを指すのか不明確である。」と主張している。
しかしながら、本件発明1、6における角部の特定は、「角部の全て」であるとも、「複数の角部の一部のみ」とも特定されていないのであるから、角部の全てであっても、一部であっても良いことは明らかである。また、上記の大開口に関する特定の中の二カ所の「相似な形状」は、共に、例えば、本件図面の図2における仮想縁VE、図8における仮想縁RMhVを指していることは明らかであるから、同じものを指していることが明らかである。
そうすると、異議申立人の上記の主張は、採用することができない。
以上のとおり、本件特許は、特許請求の範囲の請求項1〜8の記載が不備のため、特許法第36条6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記取消理由3には、理由がない。

(2)申立理由2について
ア 申立理由2の概要
申立理由2の概要は、以下のとおりである。
(ア)実施例の条件が限定的なものであること
本件発明2、7の構成要件は、本件明細書の【0053】〜【0080】に記載された実施例の結果に基づくものである。
しかしながら、実施例では、マスク孔幅WRMhが約18μmのレジストマスクを用いて3.5μmの金属シートをウェットエッチングして、約20μmの幅を有する正方形の小開口の作製をしたものしか開示されておらず、本件発明2、7のように、厚さの限定がなく、大開口及び小開口の多角形状及び大きさの限定がない蒸着マスクにまで、一般化・拡張できるものと当業者は認識できない。
例えば、本件発明2、7に規定された曲率半径は、約20μmの幅の正方形の小開口の場合に有効なものであり、例えば、10μm幅の小さな正方形の小開口の場合には小開口の寸法に比べて曲率半径が大きすぎて到底有効なものとはいえず、また、100μm幅の大きな小開口の場合には4.5μmよりも大きな曲率半径であっても十分に作用効果を奏するものと予想される。また、例えば、四角形よりも角数が多い多角形であれば曲率半径が大きくなっても(角部が丸みを帯びても)開口率に与える影響が小さくなるものと考えられることから、小開口の角部の曲率半径が4.5μm以下であることによる作用効果が小さいものと予想される。このように小開口の角部の曲率半径の最適値は大開口及び小開口の多角形状及び大きさに依存するものであり、大開口及び小開口の多角形状及び大きさの限定がない蒸着マスクについて4.5μm以下とする技術的意義は見出せない。

(イ)実施例の第1角度の記載に誤りがあること
本件発明2、7の第1角度及び第2角度に関する条件は、本件明細書の表2に記載された第1角度θ1、第2角度θ2の数値及び実施例の結果に依拠しているが、明細書の表2に記載された第1角度θ1の数値に誤りがある。
本件明細書の図3によれば、tanθ1=T/DCと表されることから、マスクの厚さT及び角部間距離DCが決まれば、一義的にθ1が算出される。ここで、本件明細書の表2に記載されたDC/Tに基づいてθ1を計算したところ、異議申立人が算出したθ1は、以下の表に示すものとなり、本件明細書に記載されたものと相違する。

上記表によれば、例えば、実施例4において、第1角度と第2角度の有意な差はなくなり、第1角度と第2角度が同じ程度でも膜厚ばらつきを抑制することができることとなることから(本件明細書の表3)、本件発明2、7の第1角度及び第2角度に関する条件が作用効果との関連において意義を有するものか当業者は認識できず、まして、本件発明2、7の第1角度及び第2角度に関する条件に関する作用効果が、厚さの限定がなく、大開口、小開口の多角形状及び大きさの限定がない蒸着マスクにまで、一般化・拡張できるものと当業者は認識できない。

イ 申立理由2についての検討
(ア)請求項1〜8の記載が本件明細書のサポート要件に適合するか否かについて
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるところ、本件発明の課題は、本件明細書の【0006】に記載される「大開口の縁近傍からマスク孔に進入する蒸着材料の一部は、小開口まで到達することなく、マスク孔を区画する側面に堆積する。特に、大開口の縁のなかでも角部近傍からマスク孔に進入する蒸着材料の多くは、マスク孔を区画する側面によって小開口に到達することが妨げられる。そのため、蒸着材料が小開口を通過することを通じて形成された蒸着パターンでは、蒸着パターンの膜厚にばらつきが生じ、結果として、蒸着パターンを備える表示素子内において輝度のむらが生じる。」との問題を受けた、同【0008】に記載される「蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑制可能にした蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法を提供すること」にあるといえる。
そして、同【0028】に「大開口11Lは、小開口11Sの縁11SEが有する多角形状における角部が多角形状の外側に向けて張り出した形状の縁11LEを有している。すなわち、大開口11Lは、小開口11Sの縁11SEにおける角部11SCが小開口11Sの縁11SEに対して外側に向けて張り出している形状の縁11LEを有する。」と、同【0030】に「大開口11Lの縁11LEはさらに、仮想縁VEから、小開口11Sから離れる方向に向けて張り出した張出部11LPを4つ備えている。」と、また図2に記載されるような、大開口が、大開口の縁がさらに、仮想縁(同【0029】の記載によれば、小開口と相似な形状)から、この仮想線の外側に張り出した張出部を有する構造を有していれば、同【0015】に「小開口の縁における角部と大開口の縁における角部との間の距離を拡張し、かつ、マスク孔を区画する側面において、小開口の縁における角部と大開口の縁における角部とを繋ぐ部分における傾斜角を縮小することが可能であるため、蒸着材料が、小開口の縁における角部を通過しやすくなる。」と記載されるように、蒸着材料が、小開口の縁における角部を通過しやすくなり、蒸着パターンの膜厚におけるばらつきを抑制可能にし、上記の本件発明の課題の課題を解決できることが理解できる。
ここで、蒸着マスクの厚さの程度や、大開口及び小開口の多角形状及び大きさによって、蒸着材料が、小開口に到達することが妨げられる程度や、上述の、大開口が、大開口の縁がさらに、仮想縁から、この仮想線の外側に張り出した張出部を有する構造を有することによる蒸着材料の小開口の縁における角部の通過し易さの程度が変わることも予想される。しかしながら、蒸着マスクの厚さの程度や、大開口及び小開口の多角形状及び大きさが同じ条件で、上述の大開口が仮想線の外側に張り出した張出部を有するものと、該張出部がないものを比較すれば、前者の方が、小開口の縁の角部における蒸着材料の通過がより容易になることは明らかであるから、蒸着マスクの厚さの程度や、大開口及び小開口の多角形状及び大きさにかかわらず、大開口が上述の構造を有していれば、上記の本件発明の課題を解決することができることが理解できる。
そして、本件明細書における大開口の上述の構造は、本件発明において、特に大開口の構造として、「前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口」と特定され、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は、本件明細書のサポート要件に適合するということができる。
本件発明において、最も技術範囲の広い請求項1、6の記載が、サポート要件に適合するのであれば、請求項1、6をそれぞれさらに限定した請求項2〜5及び7、8の記載も、同じく本件明細書のサポート要件に適合するといえ、これを妨げる事由も見当たらない。

(イ)異議申立人の主張するサポート要件違反に関する上記ア(ア)の根拠事実について
上記(ア)で述べたように、請求項2、7の記載を含め請求項1〜8の記載がサポート要件に適合しないということはないが、念のため上記ア(ア)の根拠事実について検討する。
まず、本件発明2、7で、厚さの限定、大開口及び小開口の多角形状及び大きさの限定までをする必要がないことは、上記(ア)で述べたとおりである。
本件発明2、7の曲率半径の特定について、本件発明2、7では、「前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下である」と特定されているところ、小開口の幅が小さいのであれば、4.5μm「以下」の範囲で曲率半径を適宜調節できるのであるから、上記ア(ア)のように、「例えば、10μm幅の小さな正方形の小開口の場合には小開口の寸法に比べて曲率半径が大きすぎて到底有効なものとはいえず」ということにはならない。また、小開口の幅が大きくなった場合、曲率半径が、4.5μm超の範囲でも、蒸着材料が小開口の縁における角部を通過しやすくなるとしても、「4.5μm以下」の範囲でもこの効果を奏するのであるから、このことは、特段サポート要件の判断に影響するものではない。
また、四角形よりも角数が多い多角形において、角部に曲率を設けることの影響が四角形の場合と変わるとしても、同じ角数の多角形の角部に曲率を設けない場合に比べれば、蒸着材料が小開口の縁における角部を通過しやすくなることは、当業者であれば十分理解できるのであるから、小開口の多角形状を限定しなければ、「前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下である」との特定の技術的な意義がない、ということはできない。

(ウ)異議申立人の主張するサポート要件違反に関する上記ア(イ)の根拠事実について
上述のように、請求項2、7の記載がサポート要件に適合しないということはないが、念のため上記ア(イ)の根拠事実について検討する。
まず、本件明細書の【0053】〜【0061】に記載される実施例1〜7には、それぞれ、小開口の縁に相似な形状(図8での仮想線RMhV)から張り出している長さである角部補正値RMhDCが明示されている。この長さ分、角部補正値RMhDCがない場合(略θ1とθ2が同程度)に比べて、大開口の縁の角部が外側に位置することになるが、この長さは、角実施例において金属シートの厚みに比しても相当程度のものであるから、実施例1〜7において、角部補正値RMhDCの大きさに応じてθ1が減少し、θ2に比べてθ1が小さくなっていることは明らかである。
そして、実施例1〜7に対して、同【0077】の表3には、蒸着パターンの膜厚のばらつきが、少なくとも10%以下である結果が示されている。
そうすると、本件明細書に記載される実施例の記載によって、本件発明2、7で特定される「前記第2角度は、前記第1角度よりも大きく」との、第1角度及び第2角度に関する条件が作用効果との関連において意義を有するものと当業者は認識できる。
なお、同【0065】の表2については、例えば、実施例4で、厚さTが4.0μmであるのに対し、各部間距離DCが4.0μmとされ、これでは、第1角度θ1が90°になってしまうなど、明らかに不正確な点があるが、上述のように、同【0053】〜【0061】に記載される実施例1〜7の記載等を加味すれば、第1角度及び第2角度に関する条件が作用効果との関連において意義を有するものであることを認識できるといえ、上記表2の記載の不正確さが、請求項2、7の記載がサポート要件に適合しないとの判断につながるものではない。また、本件発明2、7を含め本件発明1〜8において、厚さの限定、大開口及び小開口の多角形状及び大きさの限定がなければ、本件発明1〜8がサポート要件を満たさないということにならないことは、上記(イ)で述べたとおりである。

(エ)小括
以上のとおり、本件特許は、特許請求の範囲の請求項1〜8の記載が不備のため、特許法第36条6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由2には、理由がない。

第6 むすび

上記第5で検討したとおり、本件特許1〜8は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由1〜3及び上記申立理由1、2では、本件特許1〜8を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1〜8を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の蒸着マスクであって、
蒸着源に対向するように構成された表面と、
逆錘台状を有した孔部を各々含む複数のマスク孔と、を備え、
各マスク孔の前記孔部は、
前記蒸着マスクの前記表面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、
前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口と、を備え、
前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲む
蒸着マスク。
【請求項2】
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、
前記第2角度は、前記第1角度よりも大きく、
前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部との間の距離は、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、
前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下である
請求項1に記載の蒸着マスク。
【請求項3】
前記蒸着マスクは、前記表面とは反対側の面である裏面をさらに備え、
前記複数の小開口は、前記裏面に位置する
請求項1または2に記載の蒸着マスク。
【請求項4】
前記蒸着マスクは、1μm以上20μm以下の厚さを有する
請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項5】
前記蒸着マスクを形成する材料は、鉄ニッケル系合金、または、鉄ニッケルコバルト系合金である
請求項1から4のいずれか一項に記載の蒸着マスク。
【請求項6】
金属シートの表面および裏面の少なくとも一方にレジストマスクを形成することと、
前記レジストマスクを用いて、前記金属シートに複数のマスク孔を形成することと、を含み、
前記複数のマスク孔を形成することは、
逆錘台状を有した孔部を各々含む前記複数のマスク孔を、
各マスク孔の前記孔部が、
前記金属シートが広がる平面と対向する視点から見て、複数の角部と、隣接する前記角部間に各々位置する複数の線状部とを含む多角形状の縁を有した小開口と、
前記表面に位置する大開口であって、前記大開口の縁が、前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記縁と相似な形状における角部のみが前記小開口の前記縁と相似な形状に対して外側に向けて張り出している形状を有する、前記大開口とを備え、前記表面と対向する視点から見て、前記大開口が前記小開口を取り囲むように、前記金属シートに形成する
蒸着マスクの製造方法。
【請求項7】
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の対角方向に沿う断面において、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する角部とを結ぶ仮想直線が第1仮想直線であり、前記表面と前記第1仮想直線とが形成する角度が第1角度であり、
前記表面と直交し、かつ、前記小開口の1つの前記線状部に直交する方向に沿う断面において、前記小開口の前記縁と前記大開口の前記縁とを結ぶ仮想直線が第2仮想直線であり、前記表面と前記第2仮想直線とが形成する角度が第2角度であり、
前記複数のマスク孔を形成することは、
前記第2角度が、前記第1角度よりも大きく、
前記表面と対向する視点から見て、前記小開口の前記角部と前記大開口の対応する前記角部との間の距離が、前記表面と前記小開口の前記縁を含む平面との間の距離の1倍以上1.5倍以下であり、
前記小開口の前記角部の曲率半径が、4.5μm以下であるように、前記金属シートに前記複数のマスク孔を形成する
請求項6に記載の蒸着マスクの製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の蒸着マスクの製造方法による蒸着マスクを準備することと、
前記蒸着マスクを用いた蒸着によってパターンを形成することと、を含む
表示装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-10-18 
出願番号 P2021-504547
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C23C)
P 1 651・ 121- YAA (C23C)
P 1 651・ 113- YAA (C23C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 後藤 政博
原 賢一
登録日 2021-04-19 
登録番号 6870795
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 蒸着マスク、蒸着マスクの製造方法、および、表示装置の製造方法  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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