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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F16T
審判 全部申し立て 2項進歩性  F16T
管理番号 1393111
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-06-13 
確定日 2023-01-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第7016066号発明「ドレントラップ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7016066号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7016066号の請求項1〜7に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年2月5日に特許出願され、令和4年1月27日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月4日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和4年6月13日に特許異議申立人石黒衆亮(以下「申立人A」という。)が特許異議の申立て(以下、「特許異議の申立てA」という。)を行い、令和4年8月2日に特許異議申立人▲梅▼圭(以下「申立人B」という。)が特許異議の申立て(以下、「特許異議の申立てB」という。)を行った。

第2 本件発明
本件特許の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」といい、総称して「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
圧縮空気・ドレンの流路が形成された金属または樹脂のブロックにより構成される流路ハウジングと、
前記流路ハウジングの第1の位置に前記流路ハウジングと一体に設けられ、前記流路を流れる圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる電磁弁と、
前記流路ハウジングの流路に設けられたストレーナと、
前記流路ハウジングの第2の位置に設けられ、圧縮空気・ドレンを取り入れるための取入口と、
前記流路ハウジングの第3の位置に設けられ、圧縮空気・ドレンを排出するための排出口と、
を具備し、
前記流路は、前記流路ハウジングであるブロック内において前記取入口と前記排出口との間を繋ぐように形成されており、
前記排出口の面と同一面に開口を有し前記流路の一部を構成する筒状穴が、前記流路ハウジング内に形成され、この筒状穴には前記ストレーナが収納され、前記開口が塞がれていることを特徴とするドレントラップ。
【請求項2】
前記流路ハウジングの前記第1の位置に設けられ、前記電磁弁の弁室に繋がる弁室入口及び弁室出口と、
前記取入口から前記弁室入口へ通じる流入流路と、
前記弁室出口から前記排出口へ通じる流出流路と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載のドレントラップ。
【請求項3】
前記取入口と前記排出口は、一直線上に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のドレントラップ。
【請求項4】
前記取入口から前記流路ハウジングの内部へ進んだ前記流路には、流路遮断バルブが設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のドレントラップ。
【請求項5】
前記流路に前記ストレーナを着脱可能に設けるストレーナ着脱機構を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のドレントラップ。
【請求項6】
前記ストレーナは筒状の筒体であり、流路を進む圧縮空気・ドレンが前記筒体の内部に入り異物を残し、この筒体の内部から筒体の壁部を通り外部へ抜けるように流路に設けられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のドレントラップ。
【請求項7】
前記電磁弁の開閉制御を行う制御部と、
前記電磁弁の開放時間設定と開放時間間隔設定を行うための操作部と、
前記電磁弁の開放時間設定と開放時間間隔設定に関する表示手段と、
を具備し、
前記制御部は、前記電磁弁の開放時間設定の変更と開放時間間隔設定の変更が行われた場合に、設定変更を示すように前記表示手段を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載ドレントラップ。」

第3 特許異議の申立ての理由の概要
1 特許異議の申立てAについて
申立人Aによる特許異議の申立てAの理由の概要は次のとおりである。
(1)進歩性
本件発明1〜7は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証〜甲第5号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜7の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証 特開昭60−88296号公報(以下、「引用文献1」という。)
甲第2号証 特開2001−141184号公報(以下、「引用文献2」という。)
甲第3号証 特開平1−216087号公報(以下、「引用文献3」という。)
甲第4号証 特開2010−71460号公報(以下、「引用文献4」という。)
甲第5号証 特開平7−167387号公報(以下、「引用文献5」という。)

(2)明確性
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 特許異議の申立てBについて
申立人Bによる特許異議の申立てBの理由の概要は次のとおりである。
(1)進歩性
本件発明1〜7は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証〜甲第5号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜7の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証 実公昭50−31962号公報(以下、「引用文献6」という。)
甲第2号証 実願昭63−75000号(実開平1−178289号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献7」という。)
甲第3号証 特開昭48−58417号公報(以下、「引用文献8」という。)
甲第4号証 実願昭57−157621号(実開昭59−63296号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献9」という。)
甲第5号証 特開2007−50667号公報(以下、「引用文献10」という。)

(2)明確性
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

第4 文献の記載
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
申立人Aが提出した引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下、同様である。)
ア 「 本発明は蒸気配管などのドレン抜きとして用いられるスチームトラツプ、詳しくは本体に内蔵した下向きバケツトまたはフロートによつて弁体を動作させる形式のスチームトラツプに関するものである。」(第1ページ右下欄第2行ないし第6行)

イ 「 第2図において、入口11および出口12を有する本体13の上部開放面を覆つてふた14が固着され、このふた14に前記出口12へ至る出口通路15および下向の弁座16が設けられているとともにハンガ17が取付けられている。本体13は前記入口11から底の中央部に突設したノズル18へ至る入口通路19を有し、この入口通路19にストレーナ20が挿入されている。また下端縁に環状の重錘21を有する下向バケツト22が本体13に内蔵され、この下向バケツト22の頂部中央にバケツトハンガ23が取付けられている。
前記ハンガ17に二つのレバー24,25がピン26によつてそれぞれ回動自由且つ上下に配置されて支承され、第一のレバー24にはピン26を挟んで上向きの弁体27と重錘28とが取付けられているとともに、第二のレバー25にバケツトハンガ23がピン29によつて吊下げ状態で取付けられている。」(第2ページ左下欄第8行ないし右下欄第10行)

ウ 「 このような構成の本具体例において、ドレーンが入口11から入口通路19、ノズル18を通つて本体13に流入すると、下向バケツト22はドレーンに深く浸漬するに従つて浮力を失い下降するようになる。このとき第二のレバー25は第2,3図時計方向へ回動し係止孔25aの縁25bが下方の第一のレバー24と接触して第一のレバー24を同じく時計方向へ押圧回動させるもので、弁体27は弁座16から離間してドレーンを出口通路15から出口12へ流出させるものである。
入口11から蒸気が流入すると、この蒸気は下向バケツト22の内部に溜つて浮力を与え、第二のレバー25は反時計方向へ回動してバケツトハンガ23がふた14に衝つたとき停止する。このとき第一のレバー24は第二のレバー25に押圧されることがなくなり第二のレバー25と関係なく重錘28の作用で反時計方向へ回動して弁体27を弁座16に着座させるのである。」(第3ページ左上欄第1行ないし右上欄第3行)

エ 第2図には、以下のとおり図示されている。




オ 前記イに「入口11および出口12を有する本体13」と記載され、前記エの図示内容から、入口11は本体13の一方の側面に設けられ、出口12は本体13の他方の側面に設けられていることが看取できる。

カ 前記イに「本体13の上部開放面を覆つてふた14が固着され」、「ふた14に前記出口12へ至る出口通路15・・・が設けられている」、及び「本体13は前記入口11から・・・へ至る入口通路19を有し」と記載されているから、ふた14は固着により本体13と一体化されるものであり、本体13が有する入口通路19とふた14に設けられる出口通路15は、本体13及びふた14内において、入口11と出口12との間を繋ぐように形成されているといえる。

キ 前記エの図示内容から、弁座16が本体13の上側の位置においてふた14の下面に設けられていることが看取できるから、弁座16は、本体13の上側の位置においてふた14と一体に設けられることが理解でき、また、前記イの「このふた14に・・・ハンガ17が取り付けられている」との記載、及び、「前記ハンガ17に二つのレバー24,25が・・・上向きの弁体27・・・が取り付けられている」との記載から、ふた14にはハンガ17を介して弁体27が取り付けられていることが理解できる。さらに、前記ウの「ドレーンが入口11から入口通路19、ノズル18を通つて本体13に流入すると、・・・弁体27は弁座16から離間してドレーンを出口通路15から出口12へ流出させるものである」との記載から、下向バケツト22の浮力が失われることにより弁座16は弁体27と協働して入口通路19から出口通路15へ流れるドレーンを流出させる弁装置を構成していることが明らかであり、また、「入口11から蒸気が流入すると、・・・弁体27を弁座16に着座させるのである」との記載から、前記弁装置は、蒸気による下向バケツト22の浮力と重錘28の作用により弁座16は弁体27と協働して入口通路19から出口通路15へ流れるドレーンを停止させるものであることが明らかである。そうすると、引用文献1には、本体13の上側の位置においてふた14に設けられた弁座16と当該弁座16と協働する弁体27によって構成され、蒸気による下向バケツト22の浮力や重錘28の作用により入口通路19から出口通路15へ流れるドレーンを停止または流出させる弁装置が記載されているといえる。

ク 前記イに「本体13は前記入口11から底の中央部に突設したノズル18へ至る入口通路19を有し、この入口通路19にストレーナ20が挿入されている」と記載されていることを踏まえると、前記エの図示内容から、出口12と同じ側に開口を有し、入口流路19の一部を構成する筒状穴が、本体13内に形成され、この筒状穴にはストレーナ20が収納され、前記開口が塞がれていることが看取できる。

(2)引用文献1に記載された発明
前記ア〜クの事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
(引用発明1)
「蒸気及びドレーンが流れる入口通路19を有する本体13と、
ドレーンが流れる出口通路15が設けられ、固着により前記本体13と一体化されるふた14と、
前記本体13の上側の位置において前記ふた14に設けられた弁座16と当該弁座16と協働する弁体27によって構成され、蒸気による下向バケツト22の浮力や重錘28の作用により前記入口通路19から前記出口通路15へ流れるドレーンを停止または流出させる弁装置と、
前記本体13の入口通路19に挿入されたストレーナ20と、
前記本体13の一方の側面に設けられ、蒸気及びドレーンが流入する入口11と、
前記本体13の他方の側面に設けられ、ドレーンを流出させる出口12と、
を具備し、
前記出口12と同じ側に開口を有し前記入口通路19の一部を構成する筒状穴が、前記本体13内に形成され、この筒状穴には前記ストレーナ20が収納され、前記開口が塞がれているスチームトラツプ。」

2 引用文献2
申立人Aが提出した引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、圧縮空気から発生したドレンの排出をタイマーで制御するタイマー付きドレントラップに関する技術であり、更に詳しくは、タイマーと電磁弁を一体にすることで使いやすいという利便性を配慮した、タイマー付きドレントラップの技術に関するものである。」
(2)「【0007】(第一実施形態)図1で、10は電磁弁であり、ドレンが通過する弁本体12と、弁本体12に形成されている弁を開閉するブランジャー13と、ブランジャー13を内部に摺動可能に納め弁本体12と螺合によって固定されているシリンダー15と、弁本体12とシリンダー15の間からドレンが洩れない様に配設されているOリング17と、シリンダー15とブランジャー13の間に在って通常はブランジャー13を押すことによって弁を閉じの状態にしているスプリング14と、通電によって磁力が発生するとその磁力がスプリング14の力に打ち勝ってブランジャー13を持ち上げることで弁を開放の状態にさせるコイル11と、コイル11を覆っているコイルケース16と、コイル11とコイルケース16をシリンダー15の外側に一体に固定しているナット19から構成されている。
【0008】一方、電磁弁10の上部には、カバー23に覆われたタイマー21が固定されている。この場合、タイマー21は、接続手段22でもあるベース22に固定されている。」
(3)「【0016】一方、シリンダー15の外側に囲むようにして配設されたコイル11が通電すると、発生した磁力の働きがスプリング14の力に打ち勝ってプランジャー13を摺動させ、弁本体12の弁を開放する。この場合、弁を開放している時間は、コイル11に通電している時間の間であり、この時間はタイマー21の設定時間によって決まる。 即ち、タイマー21に、通電していない時間と通電している時間を設定することによって、開放するサイクルと開放時間が決まるようになっている。」

3 引用文献3
申立人Aが提出した引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(1)「 本発明は、医療用に供する、コンプレツサー内のドレンの排出方法と、その装置に関するものである。」(第1ページ右下欄第13行ないし第15行)
(2)「 以下本発明の1実施例に基づき、使用方法や、装置の構成について説明する。
(1) タイマーボツクス(3)に時間差タイマー(2)を設ける。」(第2ページ左下欄第12行ないし第15行)
(3)「(6) 電磁弁用固定板(8)に、ドレン管(19)を導入し、該ドレン管の中間にドレン排出孔(13)を開閉せしめる電磁弁(9)を装着する。
(7) 該電磁弁(9)は、排出タイマー(2)の指令によってのみ作動開閉し、清浄な空気を排出しない。
(8) タイマーボツクス(3)に電磁弁(9)の作動状態を示す運転ランプ(5)を設け、更にその通電を用いて、警音ブザー等を装着する。」(第2ページ右下欄第9行ないし第19行)

4 引用文献4
申立人Aが提出した引用文献4には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、ドレン水の排出方法およびドレントラップに関する技術であって、更に詳細に述べるならば、コンプレッサによって作り出された圧縮空気を貯留しているエアータンクの下部・・・等、比較的狭い場所に設置しているドレン水の排出方法およびドレントラップに関して、どの様な構造にしたら作動不良に際して容易に内部の洗浄や金網の交換が出来るか、またどの様にしたら排出するドレン水が周囲の機器を汚さないように出来るか、加えて電磁弁を通電することで流体の流れを止め、電磁弁を非通電とすることで流体を流すのに際して早い時点に磨耗等の不具合が発生しないような、これらの具体的な方策について述べたものである。」
(2)「【0019】
先ず、図1と図2に見られる様に、10はドレントラップであり、エアーコンプレッサによって作り出された圧縮空気より発生したドレン水に含まれている異物を分離するストレーナ200と電磁石の働きによってドレン水を通過させ遮断し開閉弁の役目をする電磁弁100を構成している。」
(3)「【0034】
また、図4に見られる様に、ストレーナ200は、ストレーナ本体201とストレーナキャップ202と金網203とOリング204とガスケット205より構成されていて、円筒状の金網203はストレーナ本体201の内部に収納され、またストレーナキャップ202によって固定され、更にOリング204とガスケット205によって密閉された状態になっている。 即ち、Oリング204は、ストレーナキャップ202に装着することでストレーナ本体201との間を密閉し、ガスケット205は、金網203とストレーナ本体201との間に位置させることでその間の漏れを防止しているのである。」

5 引用文献5
申立人Aが提出した引用文献5には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、圧縮空気系のレシーバタンク、除湿機器等で発生するドレン水がドレン排出管の流入口に流れ込み、該ドレン排出管に接続された制御バルブを開き状態にしてドレン水を排出するようにしたドレン排出装置に関する。」
(2)「【0023】図1は、本発明のドレン排出装置の構成を示すブロック図である。
【0024】圧縮空気系10は、レシーバタンク、除湿機器等20でドレン水30を発生させる。制御バルブ50は、ドレン管40を介してレシーバタンク、除湿機器等20に連設される。制御バルブ50は、作動部80の発生するトルクによって開閉動作させられる。ドレン水30は、制御バルブ50の開閉時に外部に放出される。カム部100は、作動部80の開閉動力70の一部が、制御バルブ50の開放および閉塞のための同期信号110であるトリガ信号90を生成する目的で、作動部に対して追動するように配設される。」
(3)「【0077】[1] 直動式電磁弁と比べ、オリフィス径が大きいので、目詰まりが生じにくく、ストレーナが不要である。」

6 引用文献6
(1)引用文献6の記載
申立人Bが提出した引用文献6には、以下の事項が記載されている。
ア 「 本考案はバルブ付スチームトラツプに関するもので、内装のストレーナ及びトラツプ部分の清掃や修理のための流路切換操作を容易ならしめると共に、コンパクトに構成して据付け易くしたものである。」(第1欄第26行ないし第30行)

イ 「 以下、本考案の一実施例を図面にもとづいて説明する。1はスチームトラツプ本体で、流入口2流出口3を備えている。4は前記本体1内に回転自在に設けた切換弁体で、その直径方向に貫通する3本の貫通孔5a,5b,5cと弁体内をL字状に貫通する連通孔5dとを備えている。連通孔5aに対してはこれを介して流入口2からストレーナ6に通ずる流路7aを、連通孔5bに対してはこれを介してストレーナ6からトラツプバルブ8に通ずる流路7bを、又連通孔5cに対してはトラツプバルブ8から流出口3に通ずる流路7cをそれぞれ設け、更に連通孔5dに対してはこれを介して流入口2と流出口3とを連通するバイパス流路7dを設ける。しかして、連通孔5a,5b,5cは切換弁体4の第1、第2位置への回転によつてそれぞれ対応する流路7a,7b,7cを同時に開閉できるものとし、又連通孔5dは前記3つの流路を閉じた状態において前記切換弁体4の第3位置への回転によつてバイパス流路7dと連通するごとく構成する。9は切換弁体4を各位置に回転させるハンドル、10は開度指示器、11はパツキン、12はパツキン押え、13はストレーナ用の蓋、14はドレン抜きである。なおトラツプバルブ8はボンネツト15、バルブデイスク16、シート17などで構成されている。又前記バイパス流路7dの、連通孔5dと流出口3との間に部分は、第3図に示すように本体1と切換本体4との間に設けた。」(第2欄第13行ないし第3欄第2行)

ウ 第2図には、以下のとおり図示されている。




エ 前記イに「1はスチームトラツプ本体で、流入口2流出口3を備えている」、及び、「流入口2からストレーナ6に通ずる流路7aを、・・・ストレーナ6からトラツプバルブ8に通ずる流路7bを、・・・トラツプバルブ8から流出口3に通ずる流路7cをそれぞれ設け」と記載され、また、前記ウの図示内容から、流入口2はスチームトラツプ本体1の一方の側面に設けられ、流出口3はスチームトラツプ本体1の他方の側面に設けられ、トラツプバルブ8がスチームトラツプ本体1の内部に取り付けられていることが看取できる。そうすると、スチームトラツプ本体1には、スチーム及びドレンの流路7a,7b,7cが形成され、トラツプバルブ8は、スチームトラツプ本体1の上側の位置にスチームトラツプ本体1と一体に設けられるものと理解できる。

オ 前記ウに図示されたトラツプバルブ8の構造、及びそのトラツプバルブとしての機能からみて、トラツプバルブ8のバルブデイスク16は、スチーム及びドレンが流れていない場合はシート17に着座し、スチーム及びドレンが流れている場合はシート17から離間することが理解できる。そうすると、トラップバルブ8は、流路7b、7cを流れるスチーム及びドレンの流れを停止または開始継続させるものと理解できる。

カ 前記ウの図示内容から、外部に臨む開口を有し前記流路7a,7bに連通した筒状穴がスチームトラツプ本体1内に形成され、この筒状穴にストレーナ6が収納され、筒状穴の開口がストレーナ用の蓋13及びドレン抜き14によって塞がれていることが看取できる。

(2)引用文献6に記載された発明
前記ア〜カの事項から、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されているといえる。
(引用発明6)
「スチーム及びドレンの流路7a,7b,7cが形成されたスチームトラツプ本体1と、
前記スチームトラツプ本体1の上側の位置に前記スチームトラツプ本体1と一体に設けられ、前記流路7b,7cを流れるスチーム及びドレンの流れを停止または開始継続させるトラツプバルブ8と、
前記スチームトラツプ本体1の流路7aと流路7bとの間に設けられたストレーナ6と、
前記スチームトラツプ本体1の一方の側面に設けられ、スチーム及びドレンが流入する流入口2と、
前記スチームトラツプ本体1の他方の側面に設けられ、スチーム及びドレンが流出する流出口3と、
を具備し、
外部に臨む開口を有し前記流路7a,7bに連通した筒状穴が、前記スチームトラツプ本体1内に形成され、この筒状穴には前記ストレーナ6が収納され、前記開口がストレーナ用の蓋13及びドレン抜き14によって塞がれているスチームトラツプ。」

7 引用文献7
申立人Bが提出した引用文献7には、以下の事項が記載されている。
(1)「(イ)産業上の利用分野
本考案は電磁石によって直接主弁を作動させ、流体の切換制御を行う直動型電磁弁に関する。」(明細書第1ページ第11行ないし第13行)
(2)「 次に本考案による直動型電磁弁の実施例を図面によって具体的に説明する。
第1図において、1はコイル4と固定鉄心5よりなる電磁石部分を内側に収納する磁性体のカバーであり、2はコイル4と弁筺14を隔て本体3にねじ結合されている磁性体の底蓋、3は流体を流通させる流路が内部に穿設された本体、15は底蓋2と本体3の接合部をシールするシール部材である。7はコイル4の内側に嵌着され、溶接によって固定鉄心5と底蓋2に固着されたプランジャーガイドである。プランジャーガイド7の内側に摺動自在に嵌装されたプランジャー6は、固定鉄心5の吸引力とはね8の反力によって往復運動し、弁体9と弁座10よりなる主弁を開閉させて流体の切換制御を行う。」(明細書第3ページ第1行ないし第15行)

8 引用文献8
申立人Bが提出した引用文献8には、以下の事項が記載されている。
(1)「 本発明はスチームトラツプ又は特にエヤートラツプとして利用する場合に特別に優れた機能を発揮することの出来るスライド弁機構を備えたドレントラツプの改良に関するものである。」(第1ページ左下欄第16行ないし第19行)
(2)「 上記の様な凸球面弁座2と開口円周縁4にて線接触するカツプ状弁体1とを備えたドレントラツプの構造の実例を示す図面に就いて、その開閉弁作動機構を詳細に説明する。凸球面弁座2を下向けに設けた場合の一実施例の中央縦断側面図を示す第7図とその弁体1の摺動機構を示す第7図のイ−イ線横断平面図を示す第8図に於て、7はボディー、9はその入口、10は出口、11は内装ストレーナー、30はフロート室、28は案内パイプ、25はパツキング、8はカバー、29はエアバルブでこれらはすべて公知のものに属する。」(第3ページ右上欄第16行ないし左下欄第6行)

9 引用文献9
申立人Bが提出した引用文献9には、以下の事項が記載されている。
(1)「 この実用新案は、主として医療用に供する空気圧縮機のドレン抜き機器に関するもので昭和57年3月21日提出に係る実用新案登録願第39676号の改良に関するものである。」(明細書第2ページ第11行ないし第15行)
(2)「 以下これを図面について説明すれば、
(1)タイマーボツクス(3)にドレン排出タイマー(2)を内蔵する。
(2)タイマーボツクス(3)に排出タイマー(2)を作動させるため一定時間を置く、時間差タイマー(1)を内蔵する。」(明細書第3ページ第10行ないし第16行)
(3)「(6)第2図の電磁弁(9)の先端に装着したドレン排出孔(13)に通水用間隙(17)を設けて排出休止用配線(10)を設ける。」(明細書第4ページ第5行ないし第8行)
(4)「(ト)遠隔操作機として空気圧縮機の作動状態の管理面においての二次効果がある。」(明細書第5ページ第8行ないし第9行)

10 引用文献10
申立人Bが提出した引用文献10には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、印刷装置及びその制御方法に係り、ホストコンピュータやディップスイッチ無しで設定値を容易に変更することが可能な印刷装置及びその制御方法に関する。」
(2)「【0045】
以上、説明したように本実施形態におけるプリンタ1によれば、ロール紙カバー3を開いた状態で紙送りボタン6を押しながら電源スイッチ8を投入することによって、CPU11が設定値を新たな設定値に変更し、さらに紙送りボタン6を入力することによってCPU11がLEDを設定値に応じて点灯させるように設定されている。従って、ホストコンピュータ20からコマンドを送信せずともプリンタ1単体で設定値を書き換えることが可能である。さらに設定変更内容を用紙に印字する必要がなく、ユーザはLEDの点灯パターンを観察することで設定内容を確認することができるので印刷用紙を節約することが可能である。
【0046】
また、本実施形態におけるプリンタ1によれば、LEDは、紙送りボタン6の入力回数あるいは入力時間に応じて、点灯回数が変化するように設定されている。このように、従来から備えていた紙送りボタン6の入力パターンを変えるだけで設定値を変更することができ、特別なスイッチ等を新たに設ける必要がないのでコストを下げることが可能である。また、従来ディップスイッチにより行われていた各種設定変更を、紙送りボタン6を使用することによってプリンタ1単体でもソフト的に行うことができ、ユーザが変更内容をLEDの点灯回数によって確認することができるので、ディップスイッチを設ける必要がなくなりコストを削減することが可能である。」

第5 当審の判断
1 特許異議の申立てAについて
(1)進歩性について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明1の対比
引用発明1における「蒸気及びドレーン」と本件発明1における「圧縮空気・ドレン」とは「流体」という限りにおいて一致し、引用発明1における「蒸気及びドレーンが流れる入口通路19」と「ドレーンが流れる出口通路15」とを合わせたものと本件発明1における「圧縮空気・ドレンの流路」とは「流体の流路」という限りにおいて一致する。
引用発明1における「入口通路19を有する」こと、あるいは「出口通路15が設けられ」ることは、本件発明1における「流路が形成された」ことに相当する。また、引用発明1における「ふた14」は「固着により前記本体13と一体化される」ことから、引用発明1における「本体13」と「ふた14」を合わせたものと、本件発明1における「金属または樹脂のブロックにより構成される流路ハウジング」とは、「流路ハウジング」という限りにおいて一致する。
引用発明1における「ドレーンを停止または流出させる」ことと本件発明1における「圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる」こととは「流体を停止または開始継続させる」ことである限りにおいて一致する。また、引用発明1における「前記本体13の上側の位置に前記ふた14に設けられた」ことは本件発明1における「前記流路ハウジングの第1の位置に前記流路ハウジングと一体に設けられ」ることに相当し、引用発明1における「前記ふた14に設けられた弁座16と当該弁座16と協働する弁体27によって構成され、蒸気による下向きバケツト22の浮力や重錘28の作用により前記入口通路19から前記出口通路15へ流れるドレーンを停止または流出させる弁装置」と本件発明1における「前記流路を流れる圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる電磁弁」とは「前記流路を流れる流体を停止または開始継続させる弁」という限りにおいて一致する。
引用発明1における「前記本体13の入口通路19に挿入された」ことは本件発明1の「前記流路ハウジングの流路に設けられた」ことに相当し、引用発明1における「ストレーナ20」は本件発明1における「ストレーナ」に相当する。
引用発明1における「前記本体13の一方の側面」及び「入口11」はそれぞれ、本件発明1における「前記流路ハウジングの第2の位置」及び「取入口」に相当する。また、引用発明1における「蒸気及びドレーンが流入する入口11」と本件発明1における「圧縮空気・ドレンを取り入れるための取入口」とは「流体を取り入れるための取入口」という限りにおいて一致する。
引用発明1における「前記本体13の他方の側面」及び「出口12」はそれぞれ、本件発明1における「前記流路ハウジングの第3の位置」及び「排出口」に相当する。また、引用発明1における「蒸気及びドレーンを流出する出口12」と本件発明1における「圧縮空気・ドレンを排出するための排出口」とは「流体を排出するための排出口」という限りにおいて一致する。
引用発明1における「筒状穴」は本件発明1における「筒状穴」に相当する。また、引用発明1における「前記出口12と同じ側に開口を有」することと本件発明1における「前記排出口の面と同一面に開口を有」することは「前記排出口と同じ側に開口を有する」ことという限りにおいて一致する。
引用発明1の「スチームトラツプ」と、本件発明1の「ドレントラップ」とは、「流体トラップ」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、
[一致点1]
流体の流路が形成された流路ハウジングと、
前記流路ハウジングの第1の位置に前記流路ハウジングと一体に設けられ、前記流路を流れる流体の流れを停止または開始継続させる弁と、
前記流路ハウジングの流路に設けられたストレーナと、
前記流路ハウジングの第2の位置に設けられ、流体を取り入れるための取入口と、
前記流路ハウジングの第3の位置に設けられ、流体を排出するための排出口と、
を具備し、
前記排出口の面と同じ側に開口を有し前記流路の一部を構成する筒状穴が、前記流路ハウジング内に形成され、この筒状穴には前記ストレーナが収納され、前記開口が塞がれている流体トラップ。

以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1においては「流体」及び「流体トラップ」に関して「圧縮空気・ドレン」を対象とする「ドレントラップ」であり、また、「弁」に関して「前記流路を流れる圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる電磁弁」を備えるのに対し、引用発明1においては「流体」及び「流体トラップ」に関して「蒸気及びドレーン」を対象とする「スチームトラツプ」であり、また、「弁」に関して「弁座16と当該弁座16と協働する弁体27によって構成され、蒸気による下向バケツト22の浮力や重錘28の作用により前記入口通路19から前記出口通路15へ流れるドレーンを停止または流出させる弁装置」を備える点。

[相違点2]
本件発明1においては「流路ハウジング」は「金属または樹脂のブロックにより構成される」ものであって、「前記流路は、前記流路ハウジングであるブロック内において前記取入口と前記排出口との間を繋ぐように形成されて」いるのに対し、引用発明1においては本体13及びふた14の材質が不明であり、また、入口流路19は本体13、出口流路15はふた14にそれぞれ設けられるものであって、ブロック内において入口11と出口12との間をつなぐように構成されるとはいえない点。

[相違点3]
「前記排出口と同じ側に」開口を有することに関して、本件発明1においては「前記排出口の面と同一面に」開口を有するのに対し、引用発明1においては前記出口12の面と同一面に開口を有するものではない点。

(イ)判断
a 上記相違点1について検討する。
引用発明1は、前記第4 1(1)アに「蒸気配管などのドレン抜きとして用いられるスチームトラツプ、詳しくは本体に内蔵した下向きバケツトまたはフロートによつて弁体を動作させる形式のスチームトラツプに関するものである」と記載されるとおり、対象とする流体は蒸気及びドレーンであって、弁装置は本体に内蔵した下向バケツトによって弁体を動作させるものが前提となっている。
一方、引用文献2ないし引用文献5には、ドレントラップにおいて圧縮空気系からのドレンを電磁弁を用いて排出することが記載されている。しかしながら、上記したとおり、引用発明1は、対象とする流体は蒸気及びドレーンであって、弁装置は本体に内蔵した下向バケツトによって弁体を動作させることを前提としたものであり、蒸気を圧縮空気に変更することや、弁装置を電磁弁に変更することは全く想定されておらず、引用発明1と引用文献2ないし引用文献5に記載された技術に接した当業者であっても、引用発明1において、蒸気を圧縮空気に変更し、弁装置を電磁弁に変更することは到底想起し得ない事項である。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び引用文献2ないし引用文献5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 申立人Aの主張について
申立人Aは、その特許異議申立書の第23ページ下から8行〜第26ページ第14行において、引用発明1に一致をみない「電磁弁」は、引用文献2ないし引用文献5に記載されており、引用文献2ないし引用文献5に記載された事項を適宜組み合わせることにより、「下降バスケット(22)などを廃し、ノズル(18)をふた(14)の弁座(16)まで延長するように「繋」ぐと共に、弁座(16)において、電磁的力作用によって開閉弁させるための弁に適宜置き換えればよ」い旨、主張している。
しかしながら、上記aのとおり、引用発明1は、対象とする流体は蒸気及びドレーンであって、弁装置は本体に内蔵した下向バケツトによって弁体を動作させることを前提としたものであり、蒸気を圧縮空気に変更することや、弁装置を電磁弁に変更することは全く想定されておらず、引用発明1と引用文献2ないし引用文献5に記載された技術に接した当業者であっても、引用発明1において、蒸気を圧縮空気に変更し、弁装置を電磁弁に変更することは到底想起し得ない事項である。

したがって、申立人Aの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件発明1の相違点1ないし3に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明1、引用文献2ないし引用文献5に記載された事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件発明1は、当業者が、引用発明1、引用文献2ないし引用文献5に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜7について
請求項2〜7は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件発明2〜7も、前記相違点1〜3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本件発明2〜7は、前記アで検討した本件発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明1、引用文献2ないし引用文献5に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)明確性について
ア 申立人Aは、その特許異議申立書の第29ページ第12行〜第30ページ第14行において、本件特許の請求項1における、「流路ハウジングと一体に設けられ…る電磁弁」における「一体」との記載に関して、本件明細書の段落【0018】の「「ネジ止め」により流路ハウジング(100)と「一体」に設けられる」がその記載根拠であると思料されるところ、本件明細書の段落【0015】には「流路ハウジング100「と」電磁弁200「と」に「存在」する構成」とも記載されていて、両記載が矛盾しており、本件特許の請求項1〜7は、明確性要件を満たしていない旨を主張する。
まず、本件特許の請求項1における「流路ハウジングと一体に設けられ…る電磁弁」との記載自体に、あいまいな点は見あたらず、本件発明1を不明確にするものではない。
また、申立人Aは、本件発明1の「一体」の記載に関して、段落【0018】の「「ネジ止め」により流路ハウジング(100)と「一体」に設けられる」が記載根拠であることを前提として、段落【0015】の「流路ハウジング100「と」電磁弁200「と」に「存在」する構成」との記載と矛盾する旨主張している。そこで、段落【0015】をみると、流路ハウジング100と電磁弁200とに存在する何らかの構成により、「装置の小型化を可能とし、また、圧縮空気・ドレンの漏れ箇所の低減を図ることができることが期待できる」ことを意味していることは十分に読み取れる。そして、流路ハウジング100と電磁弁200のそれぞれに存在する何らかの構成についても、請求項1の記載や明細書全体の記載からみて、「ストレーナが設けられた流路ハウジング100」の構成や「前記流路ハウジングの第1の位置に前記流路ハウジングと一体に設けられ、前記流路を流れる圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる電磁弁」との構成であることが理解でき、「一体」の具体的な構成として「ネジ止め」を考えた場合に不具合が生じるような根拠もないことから、段落【0018】の「「ネジ止め」により流路ハウジング(100)と「一体」に設けられる」の記載と矛盾するものではない。
したがって、申立人Aの前記の主張は採用できない。

イ まとめ
前記アで検討したように、本件発明1は、明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。
また、本件発明2〜7についても、本件発明1と同様の理由により、明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。

2 特許異議の申立てBについて
(1)進歩性について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と引用発明6との対比
引用発明6における「スチーム及びドレン」と本件発明1における「圧縮空気・ドレン」とは、「流体」という限りにおいて一致する。
引用発明6における「流路7a,7b,7c」は、本件発明1における「流路」に相当する。また、引用発明6における「スチームトラツプ本体1」と本件発明1における「金属または樹脂のブロックにより構成される流路ハウジング」あるいは「流路ハウジング」とは「流路ハウジング」という限りにおいて一致する。
引用発明6における「上側の位置」は、本件発明1における「第1の位置」に相当する。引用発明6における「前記流路7b,7cを流れるスチーム及びドレンの流れを停止または開始継続させるトラツプバルブ8」と、本件発明1における「前記流路を流れる圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる電磁弁」とは、「前記流路を流れる流体の流れを停止または開始継続させる弁」という限りにおいて一致する。
引用発明6における「流路7aと流路7bとの間に設けられた」という事項は本件発明1における「流路に設けられた」という事項に相当し、引用発明6における「ストレーナ6」は本件発明1における「ストレーナ」に相当する。
引用発明6における「一方の側面」及び「流入口2」はそれぞれ、本件発明1における「第2の位置」及び「取入口」に相当する。また、引用発明6における「スチーム及びドレンが流入する」という事項と本件発明1における「圧縮空気・ドレンを取り入れるための」という事項とは「流体を取り入れるための」という事項である限りにおいて一致する。
引用発明6における「他方の側面」及び「流出口3」はそれぞれ、本件発明1における「第3の位置」及び「排出口」に相当する。また、引用発明6における「スチーム及びドレンが流出する」という事項と本件発明1における「圧縮空気・ドレンを排出するための」という事項とは「流体を排出するための」という事項である限りにおいて一致する。
引用発明6における「前記スチームトラツプ本体1」は本件発明1における「前記流路ハウジングであるブロック」に相当する。
引用発明6における「筒状穴」は本件発明1における「筒状穴」に相当し、以下同様に、「前記流路7a,7bに連通した」という事項は「前記流路の一部を構成する」という事項に、「前記開口がストレーナ用の蓋13及びドレン抜き14によって塞がれている」という事項は「前記開口が塞がれている」という事項に、それぞれ相当する。また、引用発明6における「外部に臨む開口を有」することと本件発明1における「前記排出口の面と同一面に開口を有」することとは「外部に臨む開口を有」することという限りにおいて一致する。
引用発明6の「スチームトラツプ」と、本件発明1の「ドレントラップ」とは、「流体トラップ」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明1と引用発明6とは、以下の点で一致し、

[一致点2]
流体の流路が形成された流路ハウジングと、
前記流路ハウジングの第1の位置に前記流路ハウジングと一体に設けられ、前記流路を流れる流体の流れを停止または開始継続させる弁と、
前記流路ハウジングの流路に設けられたストレーナと、
前記流路ハウジングの第2の位置に設けられ、流体を取り入れるための取入口と、
前記流路ハウジングの第3の位置に設けられ、流体を排出するための排出口と、
を具備し、
外部に臨む開口を有し前記流路の一部を構成する筒状穴が、前記流路ハウジング内に形成され、この筒状穴には前記ストレーナが収納され、前記開口が塞がれている流体トラップ。

以下の点で相違する。
[相違点4]
本件発明1においては「流体」及び「流体トラップ」に関して「圧縮空気・ドレン」を対象とする「ドレントラップ」であり、また、「弁」に関して「前記流路を流れる圧縮空気・ドレンの流れを停止または開始継続させる電磁弁」を備えるのに対し、引用発明6においては「流体」及び「流体トラップ」に関して「スチーム及びドレン」を対象とする「スチームトラツプ」であり、また、「弁」に関して「前記流路7b,7cを流れるスチームの流れを停止または開始継続させるトラツプバルブ8」を備える点。

[相違点5]
本件発明1においては「流路ハウジング」は「金属又は樹脂のブロックにより構成される」ものであって、前記流路は、「前記流路ハウジングであるブロック内において」前記取入口と前記排出口との間を繋ぐように形成されているのに対し、引用発明6においてはスチームトラツプ本体1の材質が不明であり、また、スチームトラツプ本体1がブロックとはいえず、流路7a,7b,7cは、ブロック内において流入口2と流出口3との間を繋ぐように形成されているとはいえない点。

[相違点6]
「外部に臨む」開口を有することに関して、本件発明1においては「前記排出口の面と同一面に」開口を有するのに対し、引用発明6においては前記流出口3の面と同一面に開口を有するものではない点。

(イ)判断
a 上記相違点4について検討する。
引用発明6は、対象とする流体はスチーム及びドレンであって、前記第4 6(1)イに「トラツプバルブ8はボンネツト15、バルブデイスク16、シート17などで構成されている」と記載され、前記第4 6(1)ウにその構造が図示されるとおり、トラツプバルブ8はスチーム及びドレンの流れによりバルブデイスク16がシート17から離間する構造のものが前提となっている。
一方、引用文献7ないし引用文献10には、ドレントラップにおいて圧縮空気系からのドレンを電磁弁を用いて排出することが記載されている。しかしながら、上記したとおり、引用発明6は、対象とする流体はスチーム及びドレンであって、トラツプバルブ8はスチーム及びドレンの流れによりバルブデイスク16がシート17から離間する構造のものを前提としており、蒸気を圧縮空気に変更することや、トラツプバルブ8を電磁弁に変更することは全く想定されておらず、引用発明6と引用文献7ないし引用文献10に記載された技術に接した当業者であっても、引用発明6において、スチームを圧縮空気に変更し、トラツプバルブ8を電磁弁に変更することは到底想起し得ない事項である。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明6及び引用文献7ないし引用文献10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

b 申立人Bの主張について
申立人Bは、その特許異議申立書の第17ページ下から4行〜第19ページ第12行において、引用発明6のトラツプバルブ8に代えて引用文献7に記載の電磁弁を適用することは容易である旨、また、引用発明6のストレーナ6の取付角が略45度であるところ、これに代えて引用文献8記載の水平に取り付けられている内装ストレーナー11のように、前記ストレーナ6を水平に取り付けることは当業者にとって容易である旨、主張している。
しかしながら、上記aのとおり、引用発明6は、対象とする流体はスチーム及びドレンであって、トラツプバルブ8はスチーム及びドレンの流れによりバルブデイスク16がシート17から離間する構造のものを前提としており、蒸気を圧縮空気に変更することや、トラツプバルブ8を電磁弁に変更することは全く想定されておらず、引用発明6と引用文献7ないし引用文献10に記載された技術に接した当業者であっても、引用発明6において、スチームを圧縮空気に変更し、トラツプバルブ8を電磁弁に変更することは到底想起し得ない事項である。
また、引用発明6では、一つの切換弁体4で3つの流路7a,7b,7cの遮断/連通の切換と、連通孔5dとバイパス流路7dとの連通/遮断を行う機能を実現するために、流路や切換弁体4の配置や形状等をそれに適した構造としている。このため、引用発明6において、上記の機能を損なうことなく、ストレーナ6を水平に配置するためには、大幅な設計変更が必要となるものであり、そのような設計変更をあえて行うための理由も見いだせない。

したがって、申立人Bの前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
前記(イ)に示したように、本件発明1の相違点4ないし6に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明6、引用文献7ないし引用文献10に記載された事項に基いて、容易に想到できるものではないから、本件発明1は、当業者が、引用発明6、引用文献7ないし引用文献10に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2〜7について
請求項2〜7は、直接的に又は間接的に請求項1を引用するものであり、本件発明2〜7も、前記相違点4〜6に係る発明特定事項を備えるものであるから、本件発明2〜7は、前記アで検討した本件発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明6、引用文献7ないし引用文献10に記載された事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。

(2)明確性について
ア 申立人Bは、その特許異議申立書の第20ページ下から4行〜第21ページ第7行において、本件特許の請求項1における「前記排出口の面と同一面に開口を有し前記流路の一部を構成する筒状穴が、」という記載の「同一面」が、排出口102の面からみた場合の「同一視面」であるのか、「物理的な面」であるのか判然としないため、発明が明確でない旨主張する。
「面」とは、一般に「物の向かっている方。むき。」(岩波書店 広辞苑)を意味するが、本件特許の請求項1には、「ブロックにより構成される流路ハウジング」と特定されていることから、この「ブロックにより構成される流路ハウジング」における「面」とは、ブロックの一つの側面を表していることは明らかであり、本件特許の請求項1における「前記排出口の面と同一面に開口を有し」との記載は、排出口と開口とが同じ側面に配置されていることを意味すると理解できるから、本件特許の請求項1の記載にあいまいな点はなく、本件発明は明確である。
したがって、申立人Bの前記の主張は採用できない。

イ 申立人Bは、その特許異議申立書の第21ページ第8行〜第15行において、本件特許の請求項7における「表示手段を制御」とは、本特許発明【0021】の記載によれば、LED431又はLED432における所定時間所定の周期で点滅制御することと考えられるが、それが判然としないため、発明が明確でない旨、主張する。
しかしながら、本件特許の請求項7における「前記制御部は、前記電磁弁の開放時間設定の変更と開放時間間隔設定の変更が行われた場合に、設定変更を示すように前記表示手段を制御する」との記載における「設定変更を示す表示手段を制御する」とは、電磁弁の開放時間設定の変更と開放時間間隔設定の変更を示すように表示手段による表示を制御することを意味すると理解できるから、本件特許の請求項7の記載は明確である。
したがって、申立人Bの前記の主張は採用できない。

ウ まとめ
前記ア、イで検討したように、本件発明1,7は、明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。
また、本件発明2〜6についても、本件発明1と同様の理由により、明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立てAの理由及び証拠、並びに特許異議の申立てBの理由及び証拠によっては、請求項1〜7に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項1〜7に係る特許を取り消す理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-12-28 
出願番号 P2021-017725
審決分類 P 1 651・ 537- Y (F16T)
P 1 651・ 121- Y (F16T)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 田合 弘幸
冨永 達朗
登録日 2022-01-27 
登録番号 7016066
権利者 江南精機株式会社 荒瀬バルブ工業株式会社
発明の名称 ドレントラップ  
代理人 本田 崇  
代理人 本田 崇  
代理人 松浦 孝  
代理人 神崎 真  
代理人 松浦 孝  
代理人 神崎 真  

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