ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B65G |
---|---|
管理番号 | 1393120 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-08-10 |
確定日 | 2023-01-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7020426号発明「電子部品の振込方法および装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7020426号の請求項1〜13に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7020426号の請求項1〜13に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)12月5日(優先権主張 平成28年12月7日(以下、「優先日」という。))を国際出願日とする出願であって、令和4年2月7日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年8月10日に特許異議申立人川西眞弓(以下、「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第7020426号の請求項1〜13の特許に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明13」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 複数個の格納穴を有し、前記格納穴の各々の開口が主面に沿って分布している、格納プレートを用意する工程と、 前記格納プレートの前記主面上に、複数個の電子部品を投入する工程と、 X軸方向およびY軸方向を水平面上で互いに直交する方向とし、前記X軸方向および前記Y軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向としたとき、前記主面を水平姿勢に維持しながら、前記格納プレートに対して、前記X軸方向および前記Y軸方向の少なくとも一方の水平方向振動と、前記Z軸方向の鉛直方向振動と、を加える工程と、 を備え、 前記格納プレートに振動を加える工程は、前記複数個の電子部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させる工程と、前記複数個の電子部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させながら、各前記格納穴内に振り込む工程と、を含み、 前記水平方向振動と前記鉛直方向振動とは、互いに同じ振動数であり、かつ互いの間に所定の位相差を有しており、 前記複数個の電子部品を各前記格納穴内に振り込む工程において、1個の前記電子部品が1個の前記格納穴に振り込まれることが予定されているが、1個の前記格納穴に複数個の前記電子部品が振り込まれたり、前記格納穴に正規の姿勢以外の姿勢で前記電子部品が振り込まれたりする不正規状態となることがあり、前記格納プレートに振動を加える工程は、前記不正規状態を解消するため、少なくとも前記鉛直方向振動の振幅をより大きくする工程を含む、 電子部品の振込方法。 【請求項2】 前記水平方向振動および前記鉛直方向振動の前記振動数は50Hz以上である、請求項1に記載の電子部品の振込方法。 【請求項3】 前記格納プレートに振動を加える工程は、前記水平方向振動と前記鉛直方向振動との間の前記位相差を調整する工程を含む、請求項1または2に記載の電子部品の振込方法。 【請求項4】 前記位相差を調整する工程は、前記位相差を正負逆にする工程を含む、請求項3に記載の電子部品の振込方法。 【請求項5】 前記格納プレートに振動を加える工程は、前記水平方向振動および前記鉛直方向振動の少なくとも一方の振幅を調整する工程を含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の電子部品の振込方法。 【請求項6】 前記格納穴の深さ寸法は、前記電子部品の外形寸法におけるいずれかの辺の長さ寸法とほぼ同じである、請求項1ないし5のいずれかに記載の電子部品の振込方法。 【請求項7】 前記電子部品は、互いに直交する長さ方向、幅方向および厚さ方向にそれぞれ測定した長さ方向寸法、幅方向寸法および厚さ方向寸法によって規定される直方体形状であり、前記長さ方向寸法、幅方向寸法および厚さ方向寸法のうち、前記長さ方向寸法が最も大きい、請求項6に記載の電子部品の振込方法。 【請求項8】 前記格納穴の深さ寸法は、前記長さ方向寸法とほぼ同じであり、前記格納穴の開口は、前記長さ方向寸法を受け入れないが、前記幅方向寸法および厚さ方向寸法を受け入れる寸法に選ばれる、請求項7に記載の電子部品の振込方法。 【請求項9】 前記格納プレートに振動を加える工程は、前記複数個の電子部品を各前記格納穴内に振り込む工程の後、前記電子部品が振り込まれていない未振込の前記格納穴を見出す工程と、前記格納穴に振り込まれず、前記格納プレートの前記主面上に残存した前記電子部品を、前記未振込の格納穴に向かって移動させる工程とをさらに備える、請求項1ないし8のいずれかに記載の電子部品の振込方法。 【請求項10】 前記格納プレートの前記主面上に、複数個の電子部品を投入する工程において、前記格納穴の数より多い数の前記電子部品が投入される、請求項1ないし9のいずれかに記載の電子部品の振込方法。 【請求項11】 複数個の前記格納穴が前記電子部品で満たされた前記格納プレートを取り出す工程をさらに備える、請求項1ないし10のいずれかに記載の電子部品の振込方法。 【請求項12】 前記格納プレートを用意する工程は、複数個の前記格納プレートを用意する工程を備え、前記複数個の電子部品を各前記格納穴内に振り込む工程は、複数個の前記格納プレートを、各々の前記主面が面一となるように並べた状態で実施され、前記格納プレートを取り出す工程は、複数個の前記格納プレートを互いに異なる時点で取り出す工程を備える、請求項11に記載の電子部品の振込方法。 【請求項13】 請求項1ないし12のいずれかに記載の電子部品の振込方法を実施する、電子部品の振込装置。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として次の甲第1号証〜甲第7号証を提出し、請求項1〜13に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1〜13に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 甲第1号証:Asyril・SA社のYouTube動画(タイトル:Asycube 50 / Structured Plate、公開日:2016年5月30日、 URL:https://www.youtube.com/watch?v=_I5WG-3tqt0) 甲第2号証:特許第5746637号公報 甲第3号証:特開平11−165846号公報 甲第4号証:特開平1−145921号公報 甲第5号証:特開平5−105224号公報 甲第6号証:特開2008−275597号公報 甲第7号証:特開2007−326667号公報 第4 引用文献の記載 1 甲第1号証・引用発明 本件特許の優先日前に公開された甲第1号証には、次の事項が開示されていると認められる。なお、括弧内は動画の開始からの経過時間を示す。 (1)縁のある容器が中央に用意されており、当該容器内に左側から複数の小さな物体が投入されている。(0:00〜0:06) (2)左側から容器内に投入される複数の小さな物体は、何らかの部品であると認められる。(0:00〜0:06) (3)容器内で複数の部品を載置する部分は、左右方向に長く、上下方向及び幅方向に短い板状であると認められる。(0:00〜0:06) (4)容器内の板状部の上面には、複数の小さな穴が設けられていると認められる。(0:00〜0:06) (5)複数の部品は、容器内の板状部の上面上を左側から右側に移動し、その後、上面上を右側から左側に移動していると認められる。(0:06〜0:18) (6)上記(5)における移動の過程で、各部品の位置がいずれかの穴の開口上に到達した際に、当該部品が当該穴内に落下して収容されていると認められる。(0:06〜0:18) (7)上記(4)で認定した各穴の容積は、各部品の体積よりも僅かに大きい程度であり、1つの穴に1つの部品が収容された場合には、他の部品は当該穴内に落下しないようになっていると認められる。(0:06〜0:18) (8)容器内の複数の穴に収容された複数の部品のほとんどが、飛び出るように穴の外に排出されるようになっていると認められる。(0:18〜0:28) 上記認定事項からみて、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 <引用発明> 「複数の穴を板状部の上面に複数設けた容器に、複数の部品を投入し、前記上面上に複数の前記部品を配置させ、 前記上面上において、左から右方向、あるいは右から左方向に複数の前記部品を移動させ、 当該移動の過程で、複数の前記部品を複数の前記穴内に落下させて収容させ、 1つの前記穴内に1つの前記部品が収容されるという状態が複数の前記穴において確立された後、飛び出るように各々の前記穴から部品を外に排出させる、 方法。」 2 甲第2号証 本件特許の優先日前に公開された甲第2号証の【0030】〜【0031】、【0036】、【図2】によれば、次の事項が記載されていると認められる。 「3つの振動手段が、周波数、振幅、及び位相において独立して制御され、当該周波数は、5Hzと500Hzの間、好ましくは50Hzと300Hzの間の周波数であり、3つの振動手段が、互いに垂直な3つの方向x、y、zの各々に対応するように、互いの方向に対して配置及び配向され、3つの方向x、y、zの任意の組み合わせに対応する方向でプレートを振動させる。」 3 甲第3号証 本件特許の優先日前に公開された甲第3号証の【0010】〜【0013】、【0024】〜【0026】、【0032】、【0041】、【図1】〜【図3】によれば、次の事項が記載されていると認められる。 「振込装置10が、パレット12の配置されるほぼ水平の振動テーブル14を備え、電子部品等の部品15が当該振動テーブル14に供給されると、当該振動テーブル14の振動等に起因する移送、拡散によって、パレット12に形成された多数の収納孔に収納されるものであり、 前記パレット12に部品15が収納、整列されて部品の振り込みの一工程が終了すると、パレット12を取り除いた後、新しいパレットを配置して前記振動テーブル14を繰り返し振動させることによって、振動テーブル14上の部品を順次パレットに収納、整列させるものであり、 前記振込装置10は、垂直振動と水平振動とを、前記振動テーブル14に同時に伝達、付与するように構成されており、前記垂直振動の振幅と前記水平振動の振幅とに差をつけたり、両振動の位相差を変えたりする。」 4 甲第4号証 本件特許の優先日前に公開された甲第4号証の第1ページ右下欄第18行〜第2ページ左上欄第20行、第2ページ右下欄第6〜19行、第4ページ左下欄第14行〜右下欄第20行、第5ページ右上欄第20行〜左下欄第7行、第2図〜第3図、第5図、第8図〜第10図によれば、次の事項が記載されていると認められる。 「直方体状の複数の電子部品チップ1を、互いに同じ姿勢で複数の配向通路5及び収納部7に落とし込んで整列させる部品配向装置4及び保持治具6において、前記配向通路5及び収納部7は、前記電子部品チップ1の長手方向の受入れを拒絶するが、幅方向および厚さ方向をそれぞれ一定の方向に向けるように形成されている。」 5 甲第5号証 本件特許の優先日前に公開された甲第5号証の【0003】、【0007】〜【0009】、【図7】によれば、次の事項が記載されていると認められる。 「ワークWをパレット301及び治具303上に載せて水平方向及び上下方向の振動を与えることによって、当該ワークWをワーク投入孔304及びワーク保持穴302に入れる方法において、ワークWに大きな上下振動を与えると、ワーク保持穴302に入っているワークWが再び飛び出すことがあり、ワーク投入孔304の開口面積を大きくすると、ワーク投入孔304に2個以上のワークが入ることがある。」 6 甲第6号証 本件特許の優先日前に公開された甲第6号証の【請求項1】、【0032】〜【0033】、【0035】〜【0043】、【0053】〜【0054】、【図2】〜【図5】、【図7】によれば、次の事項が記載されていると認められる。 「パレット17に配置された複数のレンズ16の外観検査を行い、個々のレンズ16の欠陥の種類等を表示する。」 7 甲第7号証 本件特許の優先日前に公開された甲第7号証の【0001】、【0034】〜【0040】、【図1】〜【図4】によれば、次の事項が記載されていると認められる。 「ワークを整列させて収容する多数の穴を有する着脱可能なパレット2を複数個設ける。」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)引用発明との対比・判断 本件発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明の「複数の穴」は、本件発明1の「複数個の格納穴」に相当する。 引用発明の「上面」は、本件発明1の「主面」に相当する。 引用発明の「複数の穴を板状部の上面上に複数設け」ていることは、「穴」が「開口」を有していることは当然であり、「穴」が同一面上に「複数設け」られていれば、「開口」が当該同一の「面に沿って分布」していることも当然であるから、本件発明1の「前記格納穴の各々の開口が主面に沿って分布している」ことに相当する。 引用発明の「板状部」は、本件発明1の「格納プレート」に相当し、引用発明において「板状部」を有するようにしていることは、本件発明1の「格納プレートを用意する工程」に相当する。 引用発明の「容器に、複数の部品を投入し、前記上面上に複数の前記部品を配置させ」ていることは、「前記格納プレートの前記主面上に、複数個の部品を投入する工程」である限りにおいて、本件発明1の「前記格納プレートの前記主面上に、複数個の電子部品を投入する工程」と一致する。 あらゆる空間や物体は、水平方向でのX軸方向成分とY軸方向成分、及びそれらに垂直なZ軸方向成分を有するものであるから、引用発明の「容器」や、それが配置された空間が有する方向成分は、本件発明1の「X軸方向およびY軸方向を水平面上で互いに直交する方向とし、前記X軸方向および前記Y軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向としたとき」に相当する。 引用発明の「前記上面上において、左から右方向、あるいは右から左方向に複数の前記部品を移動させ」ることは、「前記複数個の部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させる工程」である限りにおいて、本件発明1の「前記複数個の電子部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させる工程」と一致する。 引用発明の「当該移動の過程で、複数の前記部品を複数の前記穴内に落下させて収容させ」ることは、「前記複数個の部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させながら、各前記格納穴内に振り込む工程」である限りにおいて、本件発明1の「前記複数個の電子部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させながら、各前記格納穴内に振り込む工程」と一致する。 引用発明の「前記上面上において、左から右方向、あるいは右から左方向に複数の前記部品を移動させ、当該移動の過程で、複数の前記部品を複数の前記穴内に落下させて収容させ」ることは、「前記複数個の部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させる工程と、前記複数個の部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させながら、各前記格納穴内に振り込む工程と、を含」む限りにおいて、本件発明1の「前記格納プレートに振動を加える工程は、前記複数個の電子部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させる工程と、前記複数個の電子部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させながら、各前記格納穴内に振り込む工程と、を含」むことと一致する。 引用発明の「方法」は、部品を穴内に落下させて収容させる方法であり、部品を穴に振り込む方法であるといえるので、「部品の振込方法」である限りにおいて、本件発明1の「電子部品の振込方法」と一致する。 してみれば、本件発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 「複数個の格納穴を有し、前記格納穴の各々の開口が主面に沿って分布している、格納プレートを用意する工程と、 前記格納プレートの前記主面上に、複数個の部品を投入する工程と、 X軸方向およびY軸方向を水平面上で互いに直交する方向とし、前記X軸方向および前記Y軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向としたとき、 前記複数個の部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させる工程と、前記複数個の部品を、前記格納プレートの前記主面に沿って移動させながら、各前記格納穴内に振り込む工程と、 を含む、 部品の振込方法。」 【相違点1】 格納穴に振り込む対象である「部品」について、本件発明1は、「電子」部品であるのに対し、引用発明では、「電子」部品であることの特定がなされていない点。 【相違点2】 本件発明1は、「前記主面を水平姿勢に維持しながら、前記格納プレートに対して、前記X軸方向および前記Y軸方向の少なくとも一方の水平方向振動と、前記Z軸方向の鉛直方向振動と、を加える工程」を備え、「格納プレートに振動を加える工程」が電子部品を格納プレートの主面に沿って移動させる工程と、電子部品を格納穴内に振り込む工程とを含むのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 【相違点3】 本件発明1は、「前記水平方向振動と前記鉛直方向振動とは、互いに同じ振動数であり、かつ互いの間に所定の位相差を有して」いるのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。 【相違点4】 本件発明1は、「前記複数個の電子部品を各前記格納穴内に振り込む工程において、1個の前記電子部品が1個の前記格納穴に振り込まれることが予定されているが、1個の前記格納穴に複数個の前記電子部品が振り込まれたり、前記格納穴に正規の姿勢以外の姿勢で前記電子部品が振り込まれたりする不正規状態となることがあり、前記格納プレートに振動を加える工程は、前記不正規状態を解消するため、少なくとも前記鉛直方向振動の振幅をより大きくする工程を含む」のに対し、引用発明は、「1つの前記穴内に1つの前記部品が収容されるという状態が複数の前記穴において確立された後、飛び出るように各々の前記穴から部品を外に排出させ」てはいるが、「不正規状態を解消するため、少なくとも前記鉛直方向振動の振幅をより大きくする」ことの特定がなされていない点。 事案に鑑みて、相違点4について検討する。 甲第4号証には、直方体状の複数の電子部品チップ1を、互いに同じ姿勢で複数の配向通路5及び収納部7に落とし込んで整列させる部品配向装置4及び保持治具6において、前記配向通路5及び収納部7は、前記電子部品チップ1の長手方向の受入れを拒絶するが、幅方向および厚さ方向をそれぞれ一定の方向に向けるように形成されていることが記載されている。 また、甲第5号証には、ワークWをパレット301及び治具303上に載せて水平方向及び上下方向の振動を与えることによって、当該ワークWをワーク投入孔304及びワーク保持穴302に入れる方法において、ワークWに大きな上下振動を与えると、ワーク保持穴302に入っているワークWが再び飛び出すことがあり、ワーク投入孔304の開口面積を大きくすると、ワーク投入孔304に2個以上のワークが入ることがあることが記載されている。 しかし、いずれにも、「前記複数個の電子部品を各前記格納穴内に振り込む工程において、1個の前記電子部品が1個の前記格納穴に振り込まれることが予定されているが、1個の前記格納穴に複数個の前記電子部品が振り込まれたり、前記格納穴に正規の姿勢以外の姿勢で前記電子部品が振り込まれたりする不正規状態となることがあり、前記格納プレートに振動を加える工程は、前記不正規状態を解消するため、少なくとも前記鉛直方向振動の振幅をより大きくする工程を含む」事項について記載されておらず、また、当該事項は当業者にとって自明なものでもない。 また、甲第2号証には、3つの振動手段が、周波数、振幅、及び位相において独立して制御され、当該周波数は、5Hzと500Hzの間、好ましくは50Hzと300Hzの間の周波数であり、3つの振動手段が、互いに垂直な3つの方向x、y、zの各々に対応するように、互いの方向に対して配置及び配向され、3つの方向x、y、zの任意の組み合わせに対応する方向でプレートを振動させることが記載されており、振動に関する事項が記載されている。 そして、甲第3号証には、振込装置10が、パレット12の配置されるほぼ水平の振動テーブル14を備え、電子部品等の部品15が当該振動テーブル14に供給されると、当該振動テーブル14の振動等に起因する移送、拡散によって、パレット12に形成された多数の収納孔に収納されるものであり、前記パレット12に部品15が収納、整列されて部品の振り込みの一工程が終了すると、パレット12を取り除いた後、新しいパレットを配置して前記振動テーブル14を繰り返し振動させることによって、振動テーブル14上の部品を順次パレットに収納、整列させるものであり、前記振込装置10は、垂直振動と水平振動とを、前記振動テーブル14に同時に伝達、付与するように構成されており、前記垂直振動の振幅と前記水平振動の振幅とに差をつけたり、両振動の位相差を変えたりすることが記載されており、振動に関する事項が記載されている。 しかし、これらの振動に関する事項を参照しても、上記相違点4のように、「不正規状態を解消するため、少なくとも前記鉛直方向振動の振幅をより大きくする」ような点までは至らない。 さらに、甲第6号証は、パレット17に配置された複数のレンズ16の外観検査を行い、個々のレンズ16の欠陥の種類等を表示するものであり、甲第7号証は、ワークを整列させて収容する多数の穴を有する着脱可能なパレット2を複数個設けるものであって、いずれも相違点4に係る本件発明1の構成を示唆するものではない。 なお、異議申立人は、特許異議申立書の3(2)ウ(a)(iii)(第22ページ末行〜第23ページ第5行)において、「1個の格納穴に複数個の部品が振り込まれたり、格納穴に正規の姿勢以外の姿勢で電子部品が振り込まれたりする不正規状態となることがあることは、この種の振込装置を稼働させた際に、投入される部品と穴のサイズや形との関係で当然に起こり得ることであり、当該技術分野でよく起こる現象に過ぎず、周知の課題に過ぎない(甲第4号証参照)。」と主張している。 しかし、甲第4号証には、上記第4の4で述べたとおり、複数の電子部品を、互いに同じ姿勢で複数の収納部に落とし込んで整列させることが記載されているが、「1個の格納穴に複数個の部品が振り込まれたり、格納穴に正規の姿勢以外の姿勢で電子部品が振り込まれたりする不正規状態」となっていることの明記はない。 また、甲第5号証には、ワーク投入孔304に2個以上のワークが入ることがあることが記載されており、格納穴に正規の姿勢以外の姿勢で電子部品が振り込まれたりする不正規状態となることに対する課題を示唆するものであるが、「不正規状態」を解消する目的で、鉛直方向振動の振動を大きくする技術は開示されていない。 したがって、上記相違点1〜3について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明及び甲第2〜7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2〜13について 本件発明2〜13は、本件発明1の構成を全て含む発明であるから、上記1と同様の理由により、引用発明及び甲第2〜7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 小括 上記1及び2のとおりであるから、本件発明1〜13は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-12-21 |
出願番号 | P2018-555004 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B65G)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
平田 信勝 |
特許庁審判官 |
保田 亨介 尾崎 和寛 |
登録日 | 2022-02-07 |
登録番号 | 7020426 |
権利者 | 株式会社村田製作所 |
発明の名称 | 電子部品の振込方法および装置 |
代理人 | 弁理士法人深見特許事務所 |