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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01H
管理番号 1393133
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-09-21 
確定日 2022-12-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第7040886号発明「保護素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7040886号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第7040886号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成28年7月26日に出願され、令和4年3月14日にその特許権の設定登録がされ、令和4年3月23日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1に係る特許に対し、令和4年9月21日に特許異議申立人赤松智信(以下「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第7040886号の請求項1の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板に設けた複数の主電極と、この主電極同士の間隔部で前記絶縁基板に設けた絶縁被覆層と、前記主電極および前記絶縁被覆層の所定部分を膜状に覆った低抵抗材からなる複数の補助電極と、この補助電極の間を橋設しかつ所定の前記主電極の間を導通するヒューズエレメントと、前記絶縁基板の上面または下面の何れか片面にさらに抵抗発熱素子とを備え、前記補助電極は、前記ヒューズエレメントよりも溶融温度が高く、溶融した前記ヒューズエレメントに溶解性の金属材から構成され、かつ前記主電極および前記絶縁被覆層の所定表面に複数設けられており、なおかつ、それぞれの補助電極が前記絶縁被覆層上の空溝を挟んで設けられたことを特徴とする補助電極付き保護素子。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証を提出し、請求項1に係る特許は、甲第1号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

甲第1号証:特許5656466号公報

4 甲第1号証の記載された事項及び発明
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を過電流状態及び過電圧状態から保護する保護素子と、この保護素子の製造方法に関する。」
「【0007】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、低融点金属体からなる半田を、過電圧などの異常に応じて通電することで抵抗体が発する熱や過電流による自己発熱のみによって溶融させ、溶融させた半田の浸食現象を利用して、電流経路を素早く且つ確実に遮断することが可能な保護素子、及び、保護素子の製造方法を提供することを目的とする。」
「【0023】
すなわち、保護素子100は、図2に示すように、加熱により溶断される低融点金属体からなるヒューズ101、102と、通電するとヒューズ101、102を溶融する熱を発する抵抗体103とを備える。」
「【0029】
保護素子100は、図3(A)に示すような、セラミック基板111a上にガラス層111bを介して抵抗体103が形成され、更にその上にガラス層111cを介して第1の導電層112が積層されたものである。なお、本発明が適用された保護素子では、上述した積層構造に限定されず、ガラス以外の絶縁部材による積層構造を用いたり、また、セラミック基板111aの表面に抵抗体103を直接積層して、ガラス層111bを形成しない構造を用いるようにしてもよい。セラミック基板11aとしては、たとえば、アルミナ基板、ガラスセラミックス基板等が用いられる。
【0030】
まず、第1の積層工程において、基板111には、Ag又はPtなどの良導体が、印刷処理などにより膜厚d1の第1の導電層112が積層される。
【0031】
次に、第2の積層工程において、第1の導電層112が形成された基板111上には、この基板111上の面方向に互いに離間した複数の位置に、Ag又はPtなどの良導体が印刷処理などにより膜厚d2の第2の導電層113がそれぞれ積層されることで、複数の電極114a、114b、114cが形成される。ここで、電極114aは、上述した図2に示す回路構成中の接続点A1に相当する部位であり、電極114bは、上述した図2に示す回路構成中の接続点P1に相当する部位であり、電極114cは、上述した図2に示す回路構成中の接続点A2に相当する部位である。便宜上、以下では電極114a、114b、114cを総称した場合、電極114と呼ぶものとする。
【0032】
なお、第1の導電層112及び第2の導電層113は、ともにAg又はPtなどの良導体が用いられるが、後述するように半田による第1の導電層112の浸食作用を相対的に高めるため、第2の導電層113に対して第1の導電層112の材料を半田による浸食作用を起こしやすい物性に調整することが好ましい。
【0033】
次に、第3の積層工程において、電極114が形成された基板111上には、低融点金属体として、例えばSnAg系などの非鉛系の半田ペースト116を印刷処理することによって、図3(B)に示すように、第1の導電層112と第2の導電層113と接するようにして積層する。この工程により、電極114a、114b間を橋渡しするように積層された半田ペースト116はヒューズ101として機能し、電極114b、114c間を橋渡しするように積層された半田ペースト116はヒューズ102として機能する。」
「【0043】
また、本発明が適用された保護素子では、特に非鉛系のペースト状の半田を用いることで、半田素材の選択肢を広げつつ、印刷処理によって容易に上述した第3の積層処理を行うことができる点で好ましい。なお、本発明が適用された保護素子では、上記のような非鉛系のペースト状に限定されず、半田の材料として、Pbを含んだものや、ペースト状でなく例えば半田箔などを用いてよい。
【0044】
本発明が適用された保護素子の変形例として、保護素子100は、図8及び図9に示すように、基板111上における電極114間に位置し、半田ペースト116が溶融することで浸食される第1の導電層112に、この第1の導電層112を互いに離間するスリット112aが1以上形成されていることが、電流経路を素早く且つ確実に遮断する観点から好ましい。
【0045】
すなわち、変形例に係る保護素子100は、図8に示すように、基板111上における電極114間の第1の導電層112を互いに離間するスリット112aを形成し、さらに、図9に示すように、第1の導電層112と第2の導電層113との両方に接するようにして、半田ペースト116を積層したものである。」

(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)の摘記事項から、次の事項が認められる。
ア 段落【0029】の特に「保護素子100は、図3(A)に示すような、セラミック基板111a上にガラス層111bを介して抵抗体103が形成され、更にその上にガラス層111cを介して第1の導電層112が積層されたものである。」という記載と、
図3(A)から看取される、「ガラス層111b上に抵抗体103が形成され、この抵抗体103上と、ガラス層111b上であって抵抗体103が存在しない部分についてはガラス層111b上とに、ガラス層111cが設けられている。」という事項とから、
「セラミック基板111a及びガラス層111bからなる部材に少なくともガラス層111c及び第1の導電層112が積層されている。」と認められる。

イ 上記ア及び段落【0031】の特に「次に、第2の積層工程において、第1の導電層112が形成された基板111上には、この基板111上の面方向に互いに離間した複数の位置に、Ag又はPtなどの良導体が印刷処理などにより膜厚d2の第2の導電層113がそれぞれ積層されることで、複数の電極114a、114b、114cが形成される。」という記載と、
図3(A)から看取される、「ガラス層111cは、ガラス層111bと第1導電層112との間に介在し、ガラス層111cの上面に垂直な方向からみて、互いに離間した位置に積層される複数の第2の導電層113同士の間にも第2の導電層113と重なる部分にも存在する。」という事項とから、
「保護素子100は、複数の第2の導電層113同士の間隔部を含んでガラス層111bに設けたガラス層111cを備える。」と認められる。

ウ 段落【0032】の特に「第1の導電層112及び第2の導電層113は、ともにAg又はPtなどの良導体が用いられる」という記載及び段落【0044】の特に「本発明が適用された保護素子の変形例として、保護素子100は、図8及び図9に示すように、基板111上における電極114間に位置し、半田ペースト116が溶融することで浸食される第1の導電層112に、この第1の導電層112を互いに離間するスリット112aが1以上形成されている」という記載並びに図8及び9から、
「スリット112aによって互いに離間された良導体からなる第1の導電層112は、第2の導電層113の下面及びガラス層111cの上面を膜状に覆い、ガラス層111c上のスリット112aを挟んで複数設けられる。」と認められる。

エ 段落【0031】、【0033】及び【0043】ないし【0045】の記載並びに図3(B)、8及び9から、「第1の導電層112及び第2の導電層113からなる電極114間を橋渡しするように積層された半田ペースト116」が開示されており、特に図9からは「スリット112aにも半田ペースト116が存在し、第1の導電層112の間も橋渡しする。」ことが看取できるから、「半田ペースト116は、第1の導電層112の間を橋設しかつ所定の第2の導電層113の間を導通する。」と認められる。

オ 段落【0032】の特に「第1の導電層112及び第2の導電層113は、ともにAg又はPtなどの良導体が用いられるが、後述するように半田による第1の導電層112の浸食作用を相対的に高めるため、第2の導電層113に対して第1の導電層112の材料を半田による浸食作用を起こしやすい物性に調整することが好ましい。」という記載及び段落【0033】の特に「第3の積層工程において、電極114が形成された基板111上には、低融点金属体として、例えばSnAg系などの非鉛系の半田ペースト116を印刷処理する」という記載から、「第1の導電層112は、半田ペースト116よりも溶融温度が高く、溶融した前記半田ペースト116の浸食作用が高い金属材から構成される。」と認められる。

上記(1)の摘記事項及び(2)の認定事項から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲1発明]
「セラミック基板111a及びガラス層111bからなる部材(以下「絶縁板」という。)と、この絶縁板に少なくともガラス層111c及び第1の導電層112を介して設けた複数の第2の導電層113と、この第2の導電層113同士の間隔部を含んで前記絶縁板に設けたガラス層111cと、前記第2の導電層113の下面および前記ガラス層111cの上面を膜状に覆った良導体からなる複数の第1の導電層112と、この第1の導電層112の間を橋設しかつ所定の前記第2の導電層113の間を導通する半田ペースト116と、前記絶縁板の上面にさらに抵抗体103とを備え、前記第1の導電層112は、前記半田ペースト116よりも溶融温度が高く、溶融した前記半田ペースト116の浸食作用が高い金属材から構成され、かつ前記第2の導電層113の下面および前記ガラス層111cの上面に複数設けられており、なおかつ、それぞれの第1の導電層112が前記ガラス層111c上のスリット112aを挟んで設けられた保護素子。」

5 当審の判断
(1)対比
本件発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「絶縁板」は、本件発明の「絶縁基板」に相当し、以下同様に、「第2の導電層113」は「主電極」に、「ガラス層111c」は「絶縁被覆層」に、「良導体からなる複数の第1の導電層112」は「低抵抗材からなる複数の補助電極」に、「半田ペースト116」は「ヒューズエレメント」に、「抵抗体103」は「抵抗発熱素子」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「第1の導電層112」ないし本件発明の「補助電極」に関し、「溶融した前記半田ペースト116の浸食作用が高い金属材から構成され」は、金属材の性質からみて、「溶融した前記ヒューズエレメントに溶解性の金属材から構成され」に相当する。
さらに、甲1発明の「スリット112a」は本件発明の「空溝」に、「保護素子」は「補助電極付き保護素子」に、それぞれ相当する。

そうすると、本件発明と甲1発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。
<一致点>
「絶縁基板と、複数の主電極と、前記絶縁基板に設けた絶縁被覆層と、低抵抗材からなる複数の補助電極と、この補助電極の間を橋設しかつ所定の前記主電極の間を導通するヒューズエレメントと、前記絶縁基板の上面にさらに抵抗発熱素子とを備え、前記補助電極は、前記ヒューズエレメントよりも溶融温度が高く、溶融した前記ヒューズエレメントに溶解性の金属材から構成され、かつ、それぞれの補助電極が前記絶縁被覆層上の空溝を挟んで設けられた補助電極付き保護素子。」

<相違点1>
「主電極」が、本件発明では、「絶縁基板に設け」られているのに対し、甲1発明では、「少なくともガラス層111c及び第1の導電層112を介して設け」られている点。
<相違点2>
「絶縁被覆層」に関し、本件発明では、「この主電極同士の間隔部で前記絶縁基板に設け」られているのに対し、甲1発明では、ガラス層111cが第2の導電層113同士の間隔部を含んで絶縁板に設けられている点。
<相違点3>
「補助電極」が、本件発明では、「前記主電極および前記絶縁被覆層の所定部分を膜状に覆」っており、「前記主電極および前記絶縁被覆層の所定表面に複数設け」られているのに対し、甲1発明では、第2の導電層113の下面およびガラス層111cの上面を膜状に覆っており、第2の導電層113の下面およびガラス層111cの上面に複数設けられている点。
<相違点4>
「抵抗発熱素子」が、本件発明では、「前記絶縁基板の上面または下面の何れか片面にさらに」備えられているのに対し、甲1発明では、前記絶縁基板の上面にさらに備えられている点。

(2)判断
相違点1ないし3は、主電極、絶縁被覆層及び補助電極の配置の点で相互に関連する相違点なので、あわせて検討する。

特許異議申立人は、「補助電極としての第1の導電層112が、絶縁被覆層111cの上面(所定部分)を膜状に覆いつつ、主電極としての第2の導電層113の下面(所定部分)を膜状に覆っていることが記載されている。」(特許異議申立書第10ページ第33行〜第36行)と主張する。
通常、「覆う」とは「下の物が隠れるように上からかぶせる」(「広辞苑」参照。)という意味であるから、甲1発明におけるガラス層111c、第1の導電層112及び第2の導電層113はこの順で積層されているのであって、第1の導電層112が第2の導電層113及びガラス層111cの所定部分を覆っているとはいえない。

続いて、甲1発明において、「第1の導電層112」が上から「第2の導電層113及びガラス層111cの所定部分を覆」う構成とすることについて、検討する。
甲第1号証には、上記4(1)に摘記したとおり、「セラミック基板111a上にガラス層111bを介して抵抗体103が形成され、更にその上にガラス層111cを介して第1の導電層112が積層されたものである。・・・(中略)・・・まず、第1の積層工程において、基板111には、Ag又はPtなどの良導体が、印刷処理などにより膜厚d1の第1の導電層112が積層される。・・・(中略)・・・次に、第2の積層工程において、第1の導電層112が形成された基板111上には、この基板111上の面方向に互いに離間した複数の位置に、Ag又はPtなどの良導体が印刷処理などにより膜厚d2の第2の導電層113がそれぞれ積層されることで、複数の電極114a、114b、114cが形成される。」(段落【0029】ないし【0031】)と記載されており、絶縁板の上に抵抗体103を形成し、その上に絶縁被覆層としてのガラス層111cを積層し、次いで印刷処理等によって第1の導電層112を、さらに印刷処理等によって基板111の面方向に互いに離間した複数の位置に第2の導電層113を積層している。
そうすると、甲1発明において相違点1及び2に係る本件発明の構成とするためには、少なくとも絶縁板上面であって抵抗体103が存在しない面について、まず、絶縁板をなすガラス層111bに基板111の面方向に互いに離間した複数の位置に第2の導電層113を印刷処理等によって積層し、絶縁板をなすガラス層111b上における第2の導電層113同士の間隔部にのみガラス層111cを設けることとし、次いで第1の導電層112を印刷処理等によって積層することになる。しかし、このような積層方法とすることについては、甲第1号証には記載も示唆もなく、ガラス層111b上への第2の導電層113とガラス層111cの適切な配置や、ガラス層111bと第2の導電層113という異なる材質や構造を対象とした第1の導電層112の適切な積層といった新たな課題の発生が想定されるため、積極的な動機も存在しないというべきである。

そして、本件発明は、相違点1ないし3に係る本件発明の構成によって、「補助電極は、・・・(中略)・・・さらには絶縁被覆層の膜厚を変えることで補助電極の幅や厚みを変更でき、これにより保護素子の電気抵抗値、耐リフロー性も調整できる。」(本件特許明細書の段落【0010】)という格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び甲第1号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、相違点1ないし3に関し、本件発明の絶縁被覆層は主電極の表面に補助電極を膜状に薄く形成するためだけに絶縁基板上に嵩上げして平坦化する目的で設けたものであるところ、甲1発明では基板111の表面、すなわち、ガラス層111cの表面はそもそも平坦であるから、絶縁被覆層は不要である旨を主張する(特許異議申立書第11ページ第10ないし16行)。しかし、当該主張は、甲1発明に基づいて本件発明を想到することが容易であることを主張するものではなく、むしろ本件発明の絶縁被覆層を備える動機がないことを示すものといえる。
また、特許異議申立人は、補助電極としての第1の導電層112を主電極としての第2の導電層113の下部に形成する構成の場合は、絶縁基板の表面はそもそも平坦であるから、補助電極の幅や厚みは絶縁被覆層を設けることなく変更し得る旨を主張する(特許異議申立書第11ページ第17ないし22行)。しかし、当該主張も、甲1発明に基づいて本件発明を想到することが容易であることを主張するものではなく、むしろ本件発明の絶縁被覆層を備える動機がないことを示すものといえる。
また、特許異議申立人は、絶縁基板の上面に抵抗発熱素子を備える場合であっても、甲1発明のガラス層111cの表面は平坦であるから、絶縁被覆層は不要である旨を主張する(特許異議申立書第11ページ第23ないし30行)。しかし、当該主張も、甲1発明に基づいて本件発明を想到することが容易であることを主張するものではなく、むしろ本件発明の絶縁被覆層を備える動機がないことを示すものといえる。
さらに、特許異議申立人は、基板上で補助電極が主電極の上面を覆うか下面を覆うかは、仕様等に合わせて単に補助電極と主電極の形成順を入れ替えることによって適宜容易に変更し得ると主張する(特許異議申立書第12ページ第1ないし3行)。しかし、甲1発明において、第1の導電層112と第2の導電層113の形成順を入れ替えるためには、ガラス層111cに第2の導電層113を積層した結果、第1の導電層112を積層する表面は平坦ではなくなり、平坦なガラス層111cに第1の導電層112を積層する場合とは違った技術的課題が生じることになる。したがって、第1の導電層112と第2の導電層113の形成順を入れ替えることは、単なる積層順の入れ替え以上の工夫を要することであり、入れ替える動機は存在しないというべきである。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の上記主張には理由がない。

6 むすび
上記4及び5のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-12-07 
出願番号 P2016-146283
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H01H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 久島 弘太郎
岡本 健太郎
登録日 2022-03-14 
登録番号 7040886
権利者 ショット日本株式会社
発明の名称 保護素子  

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