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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L |
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管理番号 | 1393140 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-09-30 |
確定日 | 2022-12-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第7045514号発明「胡椒加工物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7045514号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第70455114号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、令和3年7月15日の出願であって、令和4年3月23日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年3月31日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月30日に特許異議申立人 志方 志乃(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 水分含量が61質量%以上である胡椒加工物の製造方法であって、 胡椒の実を、50〜95℃以下の温水により処理する温水処理工程と、 前記温水処理工程の後に、前記胡椒の実を放冷する放冷工程と、 前記放冷工程の後に、前記胡椒の実を、食塩濃度が26〜41質量%である食塩水により処理する食塩水処理工程と、 を備える、胡椒加工物の製造方法。 【請求項2】 前記放冷工程は、60分以上実施される、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 更に、前記食塩水処理工程を経た胡椒の実を、容器に充填する充填工程と、 前記充填工程を経た胡椒の実を、冷蔵する冷蔵工程とを含む、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 前記充填工程の後に、前記胡椒の実を70℃以上に加熱する工程を含まない、請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記胡椒の実を冷凍する工程を含まない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】 生の胡椒の実を50〜95℃以下の温水により処理する工程と、その後に、前記胡椒の実を放冷する放冷工程と、前記放冷工程の後に、前記胡椒の実を、食塩濃度が26〜41質量%である食塩水により処理する食塩水処理工程とを含む方法により得られた胡椒加工物であって、 食塩を含み、圧縮率が35%未満であり、水分含量が61質量%以上であり、冷蔵食品であり、 前記圧縮率が、以下の方法により求められる数値である、 胡椒加工物。 (圧縮率の測定方法) 胡椒加工物における胡椒の実の当初の厚さを求めておき、テクスチャーアナライザーを使用して、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式により圧縮率(%)を求める。 圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100 【請求項7】 1粒あたりの質量が、0.060(g/粒)以上である、請求項6に記載の胡椒加工物。 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年9月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 証拠方法 甲第1号証:特開2018−201488号公報 甲第2号証:特開2018−201498号公報 甲第3号証:元祖粒生こしょう,楽天市場[online], 2020年11月,[検索日:2022年9月27日],インターネット 甲第4号証:特願2018−66425号の包袋閲覧書類中の実験報告書 甲第5号証:フリー百科事典 ウィキペディアの「ブランチング」の掲載ページ、最終更新2021年3月18日(木)19:23版、[検索日:2022年9月25日]、インターネット 甲第6号証:「食品加工の知識」、太田 静行著、株式会社幸書房、2008年3月20日2版第5刷発行、22〜25、38〜47、306〜309頁 甲第7号証:古民家アーユルヴェーダFuwari平賀麻美のアメーバブログ、生胡椒の塩漬け〜魅惑のスパイス〜、2016-04-28 09:03:23掲載、[検索日:2022年9月29日]、インターネット 甲第8号証:特開2006−223133号公報 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 以下に記載するように、特許異議申立人の申立理由はいずれにも理由がないと判断する。 1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)及び申立理由2(甲2に基づく進歩性)について (1)甲1、甲2に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には「胡椒の実の加工物の製造方法」及び「胡椒の実の加工物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 「【請求項1】 果皮を破砕されていない状態で含有し、水分含量が50〜80質量%であり、下記圧縮率測定方法で測定される圧縮率が35〜85%であることを特徴とする胡椒の実の加工物。 圧縮率測定方法:胡椒の実の加工物の当初の厚さを求めておき、テクスチャーアナライザーを使用して、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式により圧縮率(%)を求める。 圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100」 「【請求項8】 1個当たり平均質量が0.06〜0.09gである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の胡椒の実の加工物。 【請求項9】 胡椒の実を高浸透圧の材料と接触させて、浸透圧の差によって脱水して水分含量が50〜80質量%の胡椒の実を得る脱水工程と、 前記脱水した胡椒の実を容器に充填し密封する密封工程と、 前記密封した胡椒の実を加熱する加熱殺菌工程と、を含むことを特徴とする胡椒の実の加工物の製造方法。 【請求項10】 前記脱水工程を、胡椒の実に塩を混合して漬け込む塩蔵により行う、請求項9に記載の胡椒の実の加工物の製造方法。 【請求項11】 前記塩蔵において、胡椒100質量部に対し塩を5〜30質量部を混合する、請求項10に記載の胡椒の実の加工物の製造方法。 【請求項12】 前記脱水工程において、脱水された水分の除去を遠心により行う、請求項9〜11のいずれか1項に記載の胡椒の実の加工物の製造方法。 【請求項13】 前記加熱殺菌工程において、密封した状態で50〜95℃、5〜60分の条件下で加熱を行う、請求項9〜12のいずれか1項に記載の胡椒の実の加工物の製造方法。」 「【0029】 また、本発明の原料となる胡椒の実は、収穫された胡椒の実をそのまま用いてもよいが、ブランチング、水分の除去、凍結保存、及び/又は解凍などの処理をしたものを用いてもよい。ここで、凍結保存処理した胡椒の実を原料とした場合、収穫された後の胡椒の実をそのまま原料とした場合に比べて、果皮と種皮の間に空間ができやすく食感に優れる傾向にある。」 「【0031】 ブランチングは、公知の方法で行えばよく、例えば、60〜100℃の熱水に浸漬して1〜180秒間処理すればよい。ブランチングすることにより、胡椒の実の食感等の安定や、微生物の増殖が抑制された胡椒の実を得ることができる。特に60℃以上であれば、胡椒の実の収穫時に付着する胡椒の樹脂を取り除くことができ食感が安定し、70℃以上であれば、大腸菌などの微生物の殺菌効果を得ることができるので、より好ましい。また、100℃以下であれば、胡椒の実の内部の物性に影響が少なく大腸菌などの微生物の殺菌効果を得られ、90℃以下であれば、胡椒の実の表皮の状態が安定する効果が得られるので、好ましい。そして、浸漬しての処理時間は、処理時間を長くすることでブランチングする胡椒の実への効果の均一性を得やすくなる反面、長すぎるとブランチングする胡椒の実の物性が食感や風味に変化が生じやすくなることから、1〜180秒が好ましく、5〜150秒がより好ましく、10〜120秒がさらに好ましく、20〜100秒が最も好ましい。 【0032】 ブランチングした後の水分の除去は、公知の方法で行えばよいが、胡椒の実に傷が付くことをなるべく避けることができる方法が好ましく、例えばざるに入れて水切りしたり、遠心脱水機にかける方法が好ましく採用される。凍結保存は、−20℃以下の条件で凍結保存するなど、公知の方法で行えばよい。解凍は、自然解凍、流水解凍、温水解凍など、公知の方法で行えばよい。 【0033】 脱水工程は、胡椒の実を高浸透圧の材料と接触させて、浸透圧の差によって脱水して水分含量が50〜80質量%の胡椒の実を得る工程である。ここで、高浸透圧の材料と接触させる方法としては、例えば、塩蔵、砂糖漬け、ぬか漬けなどの公知の方法を採用することができる。特に、胡椒の実の水分含量を少なくすることができること、胡椒の実に風味を付与できることから、塩蔵による方法が好ましい。 【0034】 塩蔵は、胡椒の実に塩を混合して漬け込む。胡椒の実100質量部に対して塩を5〜30質量部混合することが好ましく、7〜25質量部混合することがより好ましい。塩が5質量部未満であると、微生物が繁殖しやすくなるので保存性が悪くなり、また塩の味わいが弱いものとなり、30質量部を超えると、塩の味わいが強すぎてしまう傾向にある。上記範囲で塩を混合することによって、そのまま食べてもおいしく感じられ、また、保存性に優れた胡椒の実の加工物を得ることができる。 【0035】 また、塩蔵における温度は適宜選択することができるが、15〜30℃下であることが好ましく、20〜25℃下であれば漬け込んだ後すなわち浸漬後の胡椒の色がより安定しやすいので、より好ましい。 【0036】 さらに、塩蔵における時間は適宜選択することができるが、8時間以上漬け込むことが好ましく、10〜72時間漬け込むことがより好ましく、12〜48時間漬け込むことがさらに好ましい。 【0037】 脱水工程は、塩蔵した胡椒の実を脱水して所定の水分含量の胡椒の実を得る工程である。ここでの脱水された水分の除去においても、胡椒の実に傷が付くことをなるべく避けることができる方法であることが好ましく、例えばざるに入れて水切りしたり、遠心脱水機にかける方法が好ましく採用される。脱水工程後の水分含量は50〜80質量%であることが好ましく、60〜70質量%であることがより好ましい。水分含量50質量%未満であると、食感が悪くなり、80質量%を超えると、微生物が繁殖しやすくなるので保存性が悪くなる傾向にある。 【0038】 密封工程は、脱水した胡椒の実を容器に充填し密封する工程である。容器は、特に限定されず、後の加熱殺菌工程に耐えることができ、また密封することができる容器であればさらによく、例えば、瓶、缶、プラスチック容器、パウチ状容器、トレー容器、カップ容器、ポリチャック容器、キャップ付き袋容器、アセプティック容器、オレフィン積層ボトルなどを用いることができる。 【0039】 加熱殺菌工程は、密封した胡椒の実を加熱する工程である。加熱は、例えば蒸気、熱水等を用いた公知の方法により行うことができ、密封した状態で50〜95℃、5〜60分の条件下で加熱を行うことが好ましく、60〜90℃、10〜50分の条件下で加熱を行うことがより好ましい。加熱温度が50℃未満であったり、5分未満であると、殺菌が不十分となる可能性があり、95℃を超えたり、60分を超えると、胡椒の実の生の香りとさわやかな味が減少する傾向がある。上記範囲で加熱殺菌することによって、胡椒独特のうま味と辛味とを保たせつつ、胡椒の実を充分に殺菌することができる。」 「【0042】 本発明の胡椒の実の加工物の水分含量は、好ましくは50〜80質量%であり、より好ましくは60〜70質量%である。これによって、胡椒の実の生の香りとさわやかな味を味わうことができる。なお、水分含量は、塩蔵工程における塩分濃度、温度、時間などを変えることによって調整できる。また、別途乾燥工程を設け、乾燥の度合いによっても調整することができる。 本発明において、胡椒の実の加工物の圧縮率は、前述したように、テクスチャーアナライザー(物性試験機)、例えば「テクスチャー・アナライザー」(製品名、Stable Micro Systems社製)を用いて測定できる。すなわち、胡椒の実の加工物の当初の厚さを求めておき、次いでテクスチャーアナライザーを用いて、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、前述した計算式1により圧縮率(%)を求める。」 「【0054】 以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。 <1.胡椒の実の加工物の製造> 1.胡椒の実の加工物の製造 (実施例1) 収穫された胡椒の実を洗浄し、80℃の湯に浸漬して50秒間ブランチングを行い、次いで、胡椒をざるに入れて水切りしたのち、−20℃で冷凍保管した。30日間冷凍保管された胡椒を流水で自然解凍し、ざるに入れて水切りした。水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように撹拌し、23℃で24時間浸漬した(塩蔵)。塩蔵後、脱水された胡椒の実の水分を除去するために、再度ざるに入れて水切りした。その後、ガラス瓶に充填、密封し、80℃で20分間の加熱を行い、25℃で2日間保管した胡椒の実の加工物を得た。」 「【0062】 (比較例2) 実施例1における塩蔵を、水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて行い、塩蔵後水切りし、ガラス瓶に充填、密封した後の加熱殺菌をしない他は、実施例1と同様にして胡椒の実の加工物を得た。」 「【0076】 【表1】 【0077】 【表2】 」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、上記アから、実施例1を中心に「胡椒の実の加工物の製造方法」として次の発明が記載されているといえる。 <甲1発明A> 「水分含量が66.6質量%である胡椒の実の加工物の製造方法であって、収穫された胡椒の実を洗浄し、80℃の湯に浸漬して50秒間ブランチングを行い、次いで、胡椒をざるに入れて水切りしたのち、−20℃で冷凍保管し、30日間冷凍保管された胡椒を流水で自然解凍し、ざるに入れて水切りし、水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し(塩蔵)、塩蔵後、脱水された胡椒の実の水分を除去するために、再度ざるに入れて水切りし、その後、ガラス瓶に充填、密封し、80℃で20分間の加熱を行い、25℃で2日間保管して、胡椒の実の加工物を得る製造方法。」 また、甲1には、上記アから、比較例2を中心に「胡椒の実の加工物」として次の発明が記載されているといえる。 <甲1発明B> 「水分含量が83質量%、下記圧縮率測定方法で測定される圧縮率が32%である胡椒の実の加工物であって、収穫された胡椒の実を洗浄し、80℃の湯に浸漬して50秒間ブランチングを行い、次いで、胡椒をざるに入れて水切りしたのち、−20℃で冷凍保管し、30日間冷凍保管された胡椒を流水で自然解凍し、ざるに入れて水切りし、水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し(塩蔵)、塩蔵後、脱水された胡椒の実の水分を除去するために、再度ざるに入れて水切りし、その後、ガラス瓶に充填、密封し、25℃で2日間保管して得た胡椒の実の加工物。 圧縮率測定方法:胡椒の実の加工物の当初の厚さを求めておき、テクスチャーアナライザーを使用して、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式により圧縮率(%)を求める。 圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100」 ウ 甲2に記載された事項 甲2には「胡椒の実の加工物の製造方法」及び「胡椒の実の加工物」に関して、おおね次の事項が記載されている。 「【請求項1】 複数の胡椒の実を有する胡椒の実の加工物であって、果皮と種皮との間に液相を有し、果皮が千切れることなく、連続した状態で種子からはがれることができ、はがれた果皮が球形をなす胡椒の実が30%以上あることを特徴とする胡椒の実の加工物。」 「【請求項3】 水分含量が50〜80質量%であり、下記圧縮率測定方法で測定される圧縮率が35〜85%である、請求項1又は2に記載の胡椒の実の加工物。 圧縮率測定方法:胡椒の実の加工物の当初の厚さを求めておき、テクスチャーアナライザーを使用して、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式により圧縮率(%)を求める。 圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100」 「【0029】 また、本発明の原料となる胡椒の実は、収穫された胡椒の実をそのまま用いてもよいが、ブランチング、水分の除去、凍結保存、及び/又は解凍等の処理をしたものを用いてもよい。ここで、凍結保存処理した胡椒の実を原料とした場合、収穫された後の胡椒の実をそのまま原料とした場合に比べて、果皮と種皮の間に空間ができやすく食感に優れる傾向にある。 【0030】 ブランチングは、公知の方法で行えばよく、例えば、60〜100℃の熱水に浸漬して1〜180秒間処理すればよい。ブランチングすることにより、胡椒の実の食感等の安定や、微生物の増殖が抑制された胡椒の実を得ることができる。特に60℃以上であれば、胡椒の実の収穫時に付着する胡椒の樹脂を取り除くことができ食感が安定し、70℃以上であれば、大腸菌等の微生物の殺菌効果を得ることができるので、より好ましい。また、100℃以下であれば、胡椒の実の内部の物性に影響が少なく大腸菌等の微生物の殺菌効果を得られ、90℃以下であれば、胡椒の実の表皮の状態が安定する効果が得られるので、好ましい。そして、浸漬しての処理時間は、処理時間を長くすることでブランチングする胡椒の実への効果の均一性を得やすくなる反面、長すぎるとブランチングする胡椒の実の物性が食感や風味に変化が生じやすくなることから、1〜180秒が好ましく、5〜150秒がより好ましく、10〜120秒がさらに好ましく、20〜100秒が最も好ましい。 【0031】 ブランチングした後の水分の除去は、公知の方法で行えばよいが、胡椒の実に傷が付くことをなるべく避けることができる方法が好ましく、例えばざるに入れて水切りしたり、遠心脱水機にかける方法が好ましく採用される。凍結保存は、−20℃以下の条件で凍結保存する等、公知の方法で行えばよい。解凍は、自然解凍、流水解凍、温水解凍等、公知の方法で行えばよい。 【0032】 脱水工程は、胡椒の実を高浸透圧の材料と接触させて、浸透圧の差によって脱水して水分含量が50〜80質量%の胡椒の実を得る工程である。ここで、高浸透圧の材料と接触させる方法としては、例えば、塩蔵、砂糖漬け、ぬか漬け等の公知の方法を採用することができる。特に、胡椒の実の水分含量を少なくすることができること、胡椒の実に風味を付与できることから、塩蔵による方法が好ましい。 【0033】 塩蔵は、胡椒の実に塩を混合して漬け込む。胡椒の実100質量部に対して塩を5〜30質量部混合することが好ましく、7〜25質量部混合することがより好ましい。塩が5質量部未満であると、微生物が繁殖しやすくなるので保存性が悪くなり、また塩の味わいが弱いものとなり、30質量部を超えると、塩の味わいが強すぎてしまう傾向にある。上記範囲で塩を混合することによって、そのまま食べてもおいしく感じられ、また、保存性に優れた胡椒の実の加工物を得ることができる。 【0034】 また、塩蔵における温度は適宜選択することができるが、15〜30℃下であることが好ましく、20〜25℃下であれば漬け込んだ後すなわち浸漬後の胡椒の色がより安定しやすいので、より好ましい。 【0035】 さらに、塩蔵における時間は適宜選択することができるが、8時間以上漬け込むことが好ましく、10〜72時間漬け込むことがより好ましく、12〜48時間漬け込むことがさらに好ましい。 【0036】 脱水工程は、塩蔵した胡椒の実を脱水して所定の水分含量の胡椒の実を得る工程である。ここでの脱水された水分の除去においても、胡椒の実に傷が付くことをなるべく避けることができる方法であることが好ましく、例えばざるに入れて水切りしたり、遠心脱水機にかける方法が好ましく採用される。脱水工程後の水分含量は50〜80質量%であることが好ましく、60〜70質量%であることがより好ましい。水分含量50質量%未満であると、食感が悪くなり、80質量%を超えると、微生物が繁殖しやすくなるので保存性が悪くなる傾向にある。 【0037】 密封工程は、脱水した胡椒の実を容器に充填し密封する工程である。容器は、特に限定されないが、後の加熱殺菌工程に耐えることができ、また密封することができる容器であることが好ましい。さらには、瓶、缶、プラスチック容器、トレー容器、カップ容器、ポリオレフィン積層ボトル等の、外部からの蒸気の流れによる押圧や水圧等によっても容器形状が維持できる容器であれば、容器内の胡椒の実に容器の外からの圧力がかかることなく、容器内の胡椒の実が加熱されることで胡椒の実の中から圧を加えることができるので、均一に球状に膨らませることができ、より好ましい。」 「【0040】 本発明の胡椒の実の加工物の水分含量は、好ましくは50〜80質量%であり、より好ましくは60〜70質量%である。これによって、胡椒の実の生の香りとさわやかな味を味わうことができる。なお、水分含量は、塩蔵工程における塩分濃度、温度、時間等を変えることによって調整できる。また、別途乾燥工程を設け、乾燥の度合いによっても調整することができる。 【0041】 本発明において、胡椒の実の加工物の圧縮率は、テクスチャーアナライザー(物性試験機)、例えば「テクスチャーアナライザー」(製品名、Stable Micro Systems社製)を用いて測定できる。すなわち、胡椒の実の加工物の当初の厚さを求めておき、次いでテクスチャーアナライザーを用いて、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式1により圧縮率(%)を求める。 計算式1:圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100 ここで実が破裂する直前の実の厚さとは、図6に示すように、上記の測定条件でプランジャによって胡椒の実を押圧した場合に負荷が最大となった時の実の厚さである。」 「【0053】 <1.市販の胡椒の実の加工物との比較(1)> 1.胡椒の実の加工物(実施例1)の製造 収穫された胡椒の実を洗浄し、80℃の湯に浸漬して50秒間ブランチングを行い、次いで、胡椒をざるに入れて水切りしたのち、−20℃で冷凍保管した。30日間冷凍保管された胡椒を流水で自然解凍し、ざるに入れて水切りした。水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように撹拌し、23℃で24時間浸漬した(塩蔵)。塩蔵後、脱水された胡椒の実の水分を除去するために、再度ざるに入れて水切りした。その後、ガラス瓶に充填、密封し、80℃で20分間の加熱を行い、25℃で2日間保管した胡椒の実の加工物を得た。」 「【0068】 (比較例2) 実施例1における塩蔵を、水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて行い、塩蔵後水切りし、ガラス瓶に充填、密封した後の加熱殺菌をしない他は、実施例1と同様にして胡椒の実の加工物を得た。」 「【0083】 【表2】 」 「【0084】 【表3】 」 エ 甲2に記載された発明 甲2には、上記ウから、実施例1を中心に「胡椒の実の加工物の製造方法」として次の発明が記載されているといえる。 <甲2発明A> 「水分含量が66.6質量%である胡椒の実の加工物の製造方法であって、収穫された胡椒の実を洗浄し、80℃の湯に浸漬して50秒間ブランチングを行い、次いで、胡椒をざるに入れて水切りしたのち、−20℃で冷凍保管し、30日間冷凍保管された胡椒を流水で自然解凍し、ざるに入れて水切りし、水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し(塩蔵)、塩蔵後、脱水された胡椒の実の水分を除去するために、再度ざるに入れて水切りし、その後、ガラス瓶に充填、密封し、80℃で20分間の加熱を行い、25℃で2日間保管して、胡椒の実の加工物を得る製造方法。」 また、甲2には、上記ウから、比較例2を中心に「胡椒の実の加工物」として次の発明が記載されているといえる。 <甲2発明B> 「水分含量が83質量%、下記圧縮率測定方法で測定される圧縮率が32%である胡椒の実の加工物であって、収穫された胡椒の実を洗浄し、80℃の湯に浸漬して50秒間ブランチングを行い、次いで、胡椒をざるに入れて水切りしたのち、−20℃で冷凍保管し、30日間冷凍保管された胡椒を流水で自然解凍し、ざるに入れて水切りし、水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し(塩蔵)、塩蔵後、脱水された胡椒の実の水分を除去するために、再度ざるに入れて水切りし、その後、ガラス瓶に充填、密封し、25℃で2日間保管して得た胡椒の実の加工物。 圧縮率測定方法:胡椒の実の加工物の当初の厚さを求めておき、テクスチャーアナライザーを使用して、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式により圧縮率(%)を求める。 圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100」 (2)甲6に記載された事項 甲6の24頁、8〜21行には、次の事項が記載されている。 「3.1.2 塩蔵の方法 塩蔵の方法には三つの方法がある. (1)ふり塩漬け・・・食品に直接食塩を散布する. (2)たて塩漬け・・・食品を食塩水中に浸漬する. (3)改良たて塩漬け・・・両者の併用的な方法. ふり塩漬け(散塩法)は食塩の量が少なくてすみ,脱水が早く,設備を要しないが,食塩の浸透が不均一で,油の多いものでは油焼けを起こしやすい. たて塩法は食塩溶液が一様な濃度を保つので食塩が均一に食品中へしみこみ,風味外観がよい.また食塩の濃度を自由に調節でき,製造中原料は外気に触れることがないので,油を多く含むようなものの場合にも油焼けを起こしにくい.しかし,散塩法に比べ使用する食塩の量が多く,しかも仕込みに大きな容器がいるのが欠点である.」 (3)甲7に記載された事項 甲7には「生胡椒の塩浸け」に関し、次の事項が記載されている。 「(1)房のまま生胡椒をよく水洗いして、沸騰した湯で3分程度茹でます。 (2)ザルにあげて軽く水気をきったら、クッキングペーパーの上でひろげて軽く乾かします。 (3)一粒ずつ房からはずして煮沸消毒した瓶に入れ、海水と同じかそれより少し濃い塩水に注ぎます。今回私は5%の塩水にしました。 (4)冷蔵庫で1日寝かせたら出来上がり! 1〜2ヶ月は保存OK! わが家では、すぐ食べてしまうので保存しないのですけどね ※今回私は胡椒を塩水に漬けましたが、胡椒の30%程度の塩だけで塩漬けにする方法もあります。 その場合は(3)で胡椒と塩を瓶に入れ冷蔵庫で保存→水分があがってきたら水を捨てて出来上がり。 こちらも2ヶ月程保存OK」 (4)本件発明1についての対比・判断 ア 甲1発明A、甲2発明Aとの対比・判断 甲1発明Aと甲2発明Aとは同じであるので、甲1発明A、甲2発明Aを、甲1甲2発明Aと記載する。本件発明1と甲1甲2発明Aとを対比する。 甲1甲2発明Aの「水分含量が66.6質量%」の「胡椒の実の加工物」は、本件発明1の「水分含量61質量%以上」の「胡椒加工物」に相当する。 甲1甲2発明Aの「収穫された胡椒の実を」「80℃の湯に浸漬してブランチングを行」う工程は、本件発明1の「胡椒の実を、50〜95℃以下の温水により処理する温水処理工程」に相当する。 甲1甲2発明Aの「水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し(塩蔵)」する処理工程は、食塩による処理であり、本件発明1の「食塩」「により処理する」「食塩」「処理工程」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1甲2発明Aとは、 「水分含量が61質量%以上である胡椒加工物の製造方法であって、胡椒の実を50〜95℃以下の温水により処理する温水処理工程と、胡椒の実を食塩により処理する食塩処理工程とを備える、胡椒加工物の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1A> 本件発明1においては、温水処理工程の後に、前記胡椒の実を放冷する放冷工程を有しているのに対して、甲1甲2発明Aにおいては当該工程を有するとの特定はない点。 <相違点2A> 本件発明1においては、食塩による処理工程は、「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水により処理」する工程であるのに対して、甲1甲2発明Aにおいては、「水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬」する「(塩蔵)」処理である点。 事案に鑑み、相違点2Aから検討する。 甲1甲2発明Aの食塩による処理工程に関して、甲1及び甲2には、共に同一の記述があり、「胡椒の実を高浸透圧の材料と接触させて、浸透圧の差によって脱水して水分含量が50〜80質量%の胡椒の実を得る」「ここで、高浸透圧の材料と接触させる方法としては、例えば、塩蔵、砂糖漬け、ぬか漬けなどの公知の方法を採用することができる。特に、胡椒の実の水分含量を少なくすることができること、胡椒の実に風味を付与できることから、塩蔵による方法が好ましい。」(甲1【0033】、甲2【0032】)と記載されている。 甲6には塩蔵の方法として、「ふり塩漬け・・・食品に直接食塩を散布する.」「たて塩漬け・・・食品を食塩水中に浸漬する.」、「改良たて塩漬け・・・両者の併用的な方法.」の3種類が知られていることが記載されているが、甲6の「たて塩漬け」は、「食品を食塩水中に浸漬する」処理であって、「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水によ」る処理ではない。 同様に、甲7には、生胡椒の塩浸けの作り方として、「(3)一粒ずつ房からはずして煮沸消毒した瓶に入れ、海水と同じかそれより少し濃い塩水を注」ぐ処理において「5%の塩水」を使用することが記載されているが、甲7における食塩による処理も、「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水によ」る処理ではない。 さらに、特許異議申立人が提出した他の証拠を加味しても、食塩による処理の際に「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水」を使用する構成は示されていない。 また、甲1甲2発明Aにおいて、「水切りした胡椒の実820gと塩180gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬」する「(塩蔵)」処理を、「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水によ」る処理とするきっかけないし契機もない。 そうすると、甲1甲2発明Aにおいて、相違点2Aに係る発明特定事項とすることは容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、相違点1Aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、特許異議申立人は甲1ないし甲2に記載された発明として、特に比較例2に基づく主張をしているが、仮に、比較例2に基づいて引用発明を認定したとしても、本件発明1とは相違点2Aにおいて少なくとも相違するものであり、容易に想到し得たものであるとはいえない点に変わりはない。 (5)本件発明2についての対比・判断 本件発明2は、請求項1を直接引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明3についての対比・判断 本件発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明4についての対比・判断 本件発明4は、請求項1を直接引用する請求項3を引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)本件発明5についての対比・判断 本件発明5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1甲2発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (9)本件発明6についての対比・判断 ア 甲1発明B、甲2発明Bとの対比・判断 甲1発明Bと甲2発明Bとは同じであるので、甲1発明B、甲2発明Bを甲1甲2発明Bと記載する。本件発明6と甲1甲2発明Bとを対比する。 甲1甲2発明Bにおける「圧縮率測定方法」で測定された「圧縮率(%)」は、本件発明6の「(圧縮率の測定方法)」で測定された「圧縮率(%)」に相当する。 甲1甲2発明Bにおける「水分含量が83質量%、圧縮率が32%」の「胡椒の実加工物」は、本件発明6の「水分含量が61質量%以上であり」「圧縮率が35%未満」の「胡椒加工物」に相当する。 甲1甲2発明Bの「収穫された胡椒の実」は、本件発明6の「生の胡椒の実」に相当する。 甲1甲2発明Bの「80℃の湯に浸漬してブランチングを行」う工程は、本件発明6の「50〜95℃以下の温水により処理する温水処理工程」に相当する。 甲1甲2発明Bの「水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し(塩蔵)」する処理工程は、食塩による処理であり、本件発明6の「食塩」「により処理する」「食塩」「処理工程」に相当する。 また、甲1甲2発明Bの胡椒加工物においても食塩による処理が施されているから、本件発明6の「胡椒加工物」が「食塩を含」む構成を有している。 そうすると、本件発明6と甲1甲2発明Bとは、 「生の胡椒の実を50〜95℃以下の温水により処理する工程と、胡椒の実を食塩により処理する食塩処理工程とを含む方法により得られた胡椒加工物であって、食塩を含み、圧縮率が35%未満であり、水分含量が61質量%以上であり、前記圧縮率が、以下の方法により求められる数値である、胡椒加工物。 (圧縮率の測定方法)胡椒加工物における胡椒の実の当初の厚さを求めておき、テクスチャーアナライザーを使用して、直径25mmの円形板からなるプランジャにより、速度1mm/秒で押圧していき、実が破裂する直前の実の厚さを求め、下記計算式により圧縮率(%)を求める。 圧縮率(%)={(実の厚さ−破裂直前の実の厚さ)/実の厚さ}×100」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1B> 本件発明6においては、温水処理工程の後に、前記胡椒の実を放冷する放冷工程を有しているのに対して、甲1甲2発明Bにおいては当該工程を有するとの特定はない点。 <相違点2B> 本件発明6においては、食塩による処理工程は「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水により処理」する工程であるのに対して、甲1甲2発明Bにおいては、「水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬し」「(塩蔵)」する処理工程である点。 <相違点3B> 本件発明6においては、冷蔵食品であるのに対して、甲1甲2発明Bにおいては25℃で2日間保存したものであり、冷蔵品ではない点。 事案に鑑み、相違点2Bについて検討する。 甲1甲2発明Bの食塩による処理工程に関して、甲1及び甲2には、共に同一の記述があり、「胡椒の実を高浸透圧の材料と接触させて、浸透圧の差によって脱水して水分含量が50〜80質量%の胡椒の実を得る」(甲1【0033】、甲2【0032】)、「ここで、高浸透圧の材料と接触させる方法としては、例えば、塩蔵、砂糖漬け、ぬか漬けなどの公知の方法を採用することができる。特に、胡椒の実の水分含量を少なくすることができること、胡椒の実に風味を付与できることから、塩蔵による方法が好ましい。」(甲1【0032】、甲2【0032】)と記載されている。 甲6には塩蔵の方法として、「ふり塩漬け・・・食品に直接食塩を散布する.」「たて塩漬け・・・食品を食塩水中に浸漬する.」、「改良たて塩漬け・・・両者の併用的な方法.」の3種類が知られていることが記載されているが、甲6の「たて塩漬け」は、「食品を食塩水中に浸漬する」処理であって、「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水によ」る処理ではない。 同様に、甲7には、生胡椒の塩浸けの作り方として、「(3)一粒ずつ房からはずして煮沸消毒した瓶に入れ、海水と同じかそれより少し濃い塩水を注」ぐ処理において「5%の塩水」を使用することが記載されているが、甲7における食塩による処理は「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水によ」る処理ではない。 さらに、特許異議申立人が提出した他の証拠を加味しても、食塩による処理の際に「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水」を使用する構成は示されていない。 また、甲1甲2発明Bにおいて、「水切りした胡椒の実900gと塩100gの合計1kgをポリ袋に入れて、塩が均一に分散するように攪拌し、23℃で24時間浸漬」し「(塩蔵)」する処理を、「食塩濃度が26〜41質量%である食塩水によ」る処理とするきっかけないし契機もない。 そうすると、甲1甲2発明Bにおいて、相違点2Bに係る発明特定事項とすることは容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、相違点1B、相違点3Bについて検討するまでもなく、本件発明6は、甲1甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (10)本件発明7についての対比・判断 本件発明7は、請求項6を直接引用して特定するものであって、請求項6に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明6と同様に、甲1甲2発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (11)まとめ 申立理由1(甲1に基づく進歩性)、申立理由2(甲2に基づく進歩性)には理由がない。 第5 むすび 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によって、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-12-09 |
出願番号 | P2021-117226 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A23L)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
平塚 政宏 磯貝 香苗 |
登録日 | 2022-03-23 |
登録番号 | 7045514 |
権利者 | 株式会社ギャバン ハウス食品株式会社 |
発明の名称 | 胡椒加工物の製造方法 |
代理人 | 服部 博信 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 山崎 一夫 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 松田 七重 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 市川 さつき |
代理人 | 山崎 一夫 |
代理人 | 市川 さつき |
代理人 | 服部 博信 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 松田 七重 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |