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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B
管理番号 1393522
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-18 
確定日 2023-01-19 
事件の表示 特願2015−56584「製袋包装機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月6日出願公開、特開2016−175672〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月19日に出願された特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年2月15日付け 拒絶理由通知書
平成31年4月19日 意見書、手続補正書の提出
令和元年9月30日付け 拒絶理由(最後)通知書
令和元年12月4日 意見書、手続補正書の提出
令和2年6月30日付け 拒絶理由(最後)通知書
令和2年8月19日 意見書、手続補正書の提出
令和3年2月18日付け 拒絶査定
令和3年5月18日 審判請求書、手続補正書の提出
令和4年6月15日付け 拒絶理由通知書
令和4年8月19日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年8月19日に提出された手続補正書により補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。
「【請求項1】
フィルムロールを回動させてフィルムを繰り出すフィルムロール駆動部と、
前記フィルムを搬送するフィルム搬送機構と、
前記フィルム搬送機構により搬送されるシート状の前記フィルムを、筒状に成形するフォーマと、
前記フィルムの搬送方向において前記フィルムロールと前記フォーマとの間に配置され、搬送される前記フィルムに接触し、前記フィルムをガイドしながら変位する可動ローラと、
前記可動ローラを介して前記フィルムに力を作用させるアクチュエータと、
前記アクチュエータの前記フィルムに作用させる力を制御する第1制御部と、
前記可動ローラを軸支するアームの回転角度を検知する検知部と、
前記フィルムロール駆動部及び前記フィルム搬送機構を、タイミングを合わせて制御するコントローラと、
を備え、
前記フィルム搬送機構は、前記フィルムの搬送方向において前記可動ローラより下流側に配置され、
前記コントローラは、前記検知部の検知結果に基づいて、前記フィルムロール駆動部による前記フィルムロールの回転速度を制御して、前記可動ローラの位置を制御し、
前記アクチュエータは、流体圧シリンダであり、
前記第1制御部は、前記フィルム搬送機構が前記フィルムの搬送速度を加速する時、又は、減速する時に、前記流体圧シリンダを制御し、上昇した前記流体圧シリンダの内圧を低下させ、又は、低下した前記流体圧シリンダの内圧を上昇させる、
製袋包装機。」

第3 令和4年6月15日付け拒絶理由通知書に記載した進歩性に係る拒絶理由について
本件補正前の請求項1〜4に係る発明に対し、当審が令和4年6月15日付けで通知した拒絶理由のうち、進歩性に係る拒絶理由は、次のとおりである。

【理由2】(進歩性)この出願の請求項1〜4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



請求項1〜4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項により当業者が容易に発明をすることができたものである。

請求項1〜4に係る発明は、引用文献3に記載された発明により当業者が容易に発明をすることができたものである。

<引用文献等一覧>
引用文献1:国際公開第2012/152529号
引用文献2:特開平10−329803号公報
引用文献3:特開平8−58706号公報

第4 当審の判断
進歩性に係る拒絶理由2のうち、引用文献3を主引用例とする理由について、以下、判断する。
1.引用文献
(1) 引用文献3
引用文献3には、以下の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロールに巻き回された帯状の包装材料ウエブを引き出して複数個のローラに案内させ、各種処理を施した後に筒状に成形してその中に液体を充填し、さらに所定間隔毎に密封し切断する液体包装装置の中に取り付けられ、
前記帯状の包装材料ウエブをその進行方向とは異なる方向に引っ張り出すように巻き掛けられる揺動ローラと、
該揺動ローラを回転自在であって且つ所定の揺動軸を中心にして揺動自在に軸支する軸支手段と、
前記揺動ローラによって前記包装材料ウエブに所定の張力を付与するように前記軸支手段を所定の力で付勢する付勢手段と、
前記軸支手段の揺動角度を検出する検出手段と、
前記検出手段の出力信号に応じて前記包装材料ウエブを駆動する駆動ローラの駆動速度を調整する制御手段とを具備することを特徴とする包装材料ウエブの張力維持装置。」
イ 「【産業上の利用分野】本発明は、包装材料ウエブに加わる張力を一定に維持するために取り付けられる包装材料ウエブの張力維持装置に関するものである。」
「【0006】図4はジョーユニットの動作を簡単に説明するための動作概略図である。同図に示すようにジョーユニットは一対の密封用ジョー201,201を具備し(実際はこれを2組具備して交互に動作させる)、管状に成形されてその内部に液体が充填された包装材料ウエブ60を挟持する(矢印a)。
【0007】次に密封用ジョー201,201はこの状態で液体収納容器205一個分の長さに相当する距離だけ矢印b方向に下降する。この間に包装材料ウエブ60は密封用ジョー201,201によって押圧加熱されて密封され、図示しないカッターによって切断される。
【0008】次に密封用ジョー201,201は矢印c方向に移動して包装材料ウエブ60の挟持を解除し、元の位置に戻る(矢印d方向)。
【0009】つまり管状に成形された包装材料ウエブ60は、ジョーユニットによって挟持されて引っ張られることによって移送されて行くので、その移送速度を一定にできないのである。
【0010】ところで実際には密封用ジョー201,201の上部に図示しない成形用フラップが取れ付けられており、該成形用フラップによって上記密封・切断の際に同時に包装材料ウエブ60の外周側面形状が円形から矩形状に成形される。そしてこの成形用フラップによって包装材料ウエブ60を矩形状に成形させるためには、該包装材料ウエブ60に一定の強い張力が加わっていることが必要である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前述のように、駆動ローラによる包装材料ウエブ60の移送速度と、ジョーユニットによる包装材料ウエブ60の移送速度が同一でないため、包装材料ウエブ60に加わる張力が一定とならず、このため前記成形用フラップによる包装材料ウエブ60の矩形状への成形がうまく行われず、このため製造される液体収納容器205の形状が変形してしまう恐れがあった。
【0012】本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、包装材料ウエブに加わる張力を一定の高い値に維持することができる包装材料ウエブの張力維持装置を提供することにある。」
ウ 「【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。ここで図3は、液体包装装置内における包装材料ウエブの処理工程を示す概略斜視図である。同図に示すように、帯状の紙の両面にポリエチレン層を形成した包装材料ウエブ60(場合によっては紙とポリエチレン層の間にアルミニウム層を設ける)は、ロール65に巻き回されている。
【0016】そして該ロール65から繰り出された包装材料ウエブ60は、幾つかのローラ70を通って各種処理が行われた後に、殺菌処理部80において過酸化水素水による殺菌処理が行われる。
【0017】その後、駆動ローラ61(この駆動ローラ61は包装材料ウエブ60を移送させる作用の他に、殺菌処理部80で包装材料ウエブ60に付着した過酸化水素水を絞り取る作用も行う)と、本発明にかかる張力維持装置10の揺動ローラ11と、2つのローラ70を通った包装材料ウエブ60は、ほぼ垂直下方へ導かれる。
【0018】そして垂直下方に導かれる包装材料ウエブ60の移動進路に沿って配列された上部成形用ローラ90,93によって板状の包装材料ウエブ60は徐々に管状に成形され、下部成形用ローラ97の部分において図示しない溶着装置によって前記包装材料ウエブ60の両長手方向縁部が相互に接着され、完全な管に成形される。
【0019】完全な管に成形された包装材料ウエブ60の中には、その上方から挿入された充填管105によって所望の液体が充填され、サポート用ローラ100を通過した後、図4において説明した密封用ジョー201,201によって均等な間隔で密封・切断されると同時に矩形状に成形され、ベルトコンベア110によって図示しない最終折り曲げ装置に運ばれ、略平行6面体状のブリック状容器とされる。
【0020】ここで図1は本発明の1実施例にかかる包装材料ウエブの張力維持装置10を示す斜視図である。この張力維持装置10は、前記図3に示すように、殺菌処理部80の後であって、包装材料ウエブ60を管状に成形する前の位置に取り付けられる。
【0021】そしてこの張力維持装置10は、帯状の包装材料ウエブ60を巻き掛ける揺動ローラ11と、該揺動ローラ11の回転軸13を回転自在であって且つ揺動軸25を中心にして揺動自在に軸支する軸支手段21と、軸支手段21を付勢する付勢手段31と、軸支手段21の揺動角度を検出する検出手段41と、検出手段41の出力信号を入力する制御手段51とを具備して構成されている。以下各構成部品について説明する。
【0022】揺動ローラ11は、図3に示すように、包装材料ウエブ60をその進行方向とは異なる方向(この実施例の場合は略垂直下方向)に引っ張り出す位置に配設されている。
【0023】軸支手段21は、前記揺動ローラ11の回転軸13の両端を回転自在に軸支する2本のアーム23,23と、該両アーム23,23の他端に固定される揺動軸25と、該揺動軸25の一端に固定されるL字状アーム27によって構成されている。揺動軸25は図示しない軸支手段によって回動自在に軸支されている。
【0024】付勢手段31はエアシリンダによって構成されており、そのロッド35の先端は前記L字状アーム27の一端に接続されている。そして該付勢手段31にエアを供給すればロッド35は上方向(矢印C方向)に付勢され、揺動軸25は矢印A方向に回動され、揺動ローラ11は矢印D方向に揺動する。
【0025】検出手段41は直線型可変抵抗器によって構成されており、そのロッド45の先端は前記L字状アーム27の他端に接続されている。従って検出手段41の出力信号は、揺動軸25が回転することによって変化する。
【0026】制御手段51は検出手段41の出力を入力して所定の演算処理を行い、その出力信号を駆動ローラ61の駆動手段63に出力してその駆動を制御する。
【0027】次にこの張力維持装置10の動作を図1,図2を用いて説明する。ここで図2は張力維持装置10の動作を説明するための概略側面図である。
【0028】ここで前述のように、付勢手段31にはエアが供給されてそのロッド35は常に矢印C方向に一定の力で付勢されており、これによって軸支手段21の揺動軸25には矢印A方向の力が常に加わり、揺動ローラ11には常に下方向(矢印D方向)へ向けて一定の付勢力が加わっている。
【0029】そして図2に示すように、駆動ローラ61を一定の速度で回転すると、帯状の包装材料ウエブ60は一定の速度で、殺菌処理部80→駆動ローラ61→揺動ローラ11→ローラ70,70→上部成形用ローラ90へと移送されていく。
【0030】一方管状に成形されて液体が充填された包装材料ウエブ60は、前述のようにジョーユニットによって成形・密封・切断されるが、そのとき包装材料ウエブ60を引っ張る力は一定ではない。
【0031】しかしながら本発明においては、包装材料ウエブ60に加わる張力が増減しようとしても、揺動ローラ11は包装材料ウエブ60に対して常に所定の張力を付与するように弾発した状態で揺動する。従って、包装材料ウエブ60に加わる張力は常に一定の高い値を保持できる。従って製造される液体収納容器の形状が変形することはない。
【0032】包装材料ウエブ60に加わる張力の調整は、付勢手段31の付勢力を調整することによって行う。
【0033】一方軸支手段21が矢印A又はB方向に揺動した際、それに応じて検出手段41の出力信号が変化する。そしてこの出力信号を入力した制御手段51は、軸支手段21の揺動方向及び揺動量に応じて、包装材料ウエブ60の移送速度が適当か否かを判断し、適当でないと判断した場合は、揺動ローラ11の駆動手段63にその回転速度の変更を指示する。これによって駆動ローラ61は最適な回転速度に制御され、包装材料ウエブ60の移送はスムーズに行え、包装材料ウエブ60に加わる張力を一定にすることにも寄与する。」
エ 「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】



段落【0033】には「そしてこの出力信号を入力した制御手段51は、軸支手段21の揺動方向及び揺動量に応じて、包装材料ウエブ60の移送速度が適当か否かを判断し、適当でないと判断した場合は、揺動ローラ11の駆動手段63にその回転速度の変更を指示する。これによって駆動ローラ61は最適な回転速度に制御され、包装材料ウエブ60の移送はスムーズに行え、包装材料ウエブ60に加わる張力を一定にすることにも寄与する。」と記載されているが、ここに記載された「揺動ローラ11の駆動手段63」との記載は、段落【0026】、図2に駆動手段63は「駆動ローラ61の駆動手段63」であることが示されていること、また、段落【0033】にも「これによって駆動ローラ61は最適な回転速度に制御され」ることが記載されていることを鑑みれば、「駆動ローラ61の駆動手段63」の誤記といえる。
したがって、引用文献3には、以下の引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
包装材料ウエブがロールに巻き回されていて、
ロールから繰り出された包装材料ウエブは各種処理が行われた後に殺菌処理部において殺菌処理が行われ、
駆動ローラは包装材料ウエブを移送させ、
駆動ローラと、張力維持装置の揺動ローラと2つのローラを通った包装材料ウエブはほぼ垂直下方へ導かれ、
垂直下方に導かれる包装材料ウエブの移動進路に沿って配列された上部成形用ローラによって板状の包装材料ウエブは徐々に管状に成形され、下部成形用ローラの部分において溶着装置によって包装材料ウエブの両長手方向縁部が相互に接着され、完全な管に成形され、管状に成形された包装材料ウエブは、ジョーユニットによって挟持されて引っ張られることによって移送され、
完全な管に成形された包装材料ウエブの中には、その上方から挿入された充填管によって液体が充填され、サポート用ローラを通過した後、ジョーユニットが有する密封用ジョーによって均等な間隔で密封・切断されると同時に矩形状に成形され、ベルトコンベアによって最終折り曲げ装置に運ばれ、略平行6面体状のブリック状容器とされ、
張力維持装置は、帯状の包装材料ウエブを巻き掛ける揺動ローラと、該揺動ローラの回転軸を回転自在であって且つ揺動軸を中心にして揺動自在に軸支する軸支手段と、軸支手段を付勢する付勢手段と、軸支手段の揺動角度を検出する検出手段と、検出手段の出力信号を入力する制御手段とを具備して構成され、
軸支手段は揺動ローラの回転軸の両端を回転自在に軸支する2本のアームと、この2本のアームの他端に固定される揺動軸と、該揺動軸の一端に固定されるL字状アームによって構成され、
付勢手段はエアシリンダによって構成され、そのロッドの先端は前記L字状アームの一端に接続されており、エアを供給すればロッドは上方向に付勢され、揺動軸が回動して揺動ローラは揺動し、
検出手段は直線型可変抵抗器によって構成されており、そのロッドの先端は前記L字状アームの他端に接続されていて、検出手段の出力信号は揺動軸が回転することによって変化し、
制御手段は検出手段の出力を入力して所定の演算処理を行い、その出力信号を駆動ローラの駆動手段に出力してその駆動を制御し、
付勢手段にはエアが供給されてそのロッドは常に一定の力で付勢され、これによって軸支手段の揺動軸には力が常に加わり、揺動ローラには常に一定の付勢力が加わり、
駆動ローラを一定の速度で回転すると、帯状の包装材料ウエブは一定の速度で、殺菌処理部、駆動ローラ、揺動ローラ、ローラ、上部成形用ローラへと移送されていき、
管状に成形されて液体が充填された包装材料ウエブはジョーユニットによって成形、密封、切断され、そのとき管状に成形された包装材料ウエブは、ジョーユニットによって挟持されて引っ張られることによって移送され、そのとき包装材料ウエブを引っ張る力は一定ではなく、
包装材料ウエブに加わる張力が増減しようとしても、揺動ローラは包装材料ウエブに対して常に所定の張力を付与するように弾発した状態で揺動し、包装材料ウエブに加わる張力は常に一定の値を保持でき、
包装材料ウエブに加わる張力の調整は、付勢手段の付勢力を調整することによって行い、軸支手段が揺動した際、それに応じて検出手段の出力信号が変化し、出力信号を入力した制御手段は軸支手段の揺動方向及び揺動量に応じて、包装材料ウエブの移送速度が適当か否かを判断し、適当でないと判断した場合は、駆動ローラの駆動手段にその回転速度の変更を指示することにより、駆動ローラは最適な回転速度に制御され、包装材料ウエブに加わる張力を一定にすることに寄与する、
液体包装装置。

2.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「液体包装装置」は、本願発明の「製袋包装機」と、「包装機」である点において一致する。
引用発明の「ロール」は、本願発明の「フィルムロール」に相当し、引用発明の「包装材料ウエブ」は、「板状」から「管状に成形」されるものであり、本願発明の「シート状」から「管状」に成形される「フィルム」に相当する。
引用発明の「ロールに巻き回され」た「包装材料ウエブ」を繰り出す「駆動ローラ」は、本願発明の「フィルムロールを回動させてフィルムを繰り出す」「フィルムロール駆動部」に相当する。
引用発明の「ジョーユニット」は、包材としての「包装材料ウエブ」を挟持して引っ張ることによって移送するものであり、本願発明の「フィルムを搬送する」「フィルム搬送機構」に相当する。
引用発明の「上部成形用ローラ」、「下部成形用ローラ」は、本願発明の「フォーマ」に相当する。
引用発明の「揺動ローラ」は、揺動軸の回動により揺動軸を支点として「揺動」することは、本願発明の「可動ローラ」が「変位」することに相当する。
引用発明の「軸支手段の揺動角度を検出する」「検出手段」は、本願発明の「前記可動ローラを軸支するアームの回転角度を検知する」「検知部」に相当する。
引用発明の「ジョーユニット」により「包装材料ウエブ」は「均等な間隔で密封・切断される」から、その位置は「包装材料ウエブ」が密封・切断される前のウエブの状態である「揺動ローラ」の位置に対して、ウエブの搬送方向において下流側であり、この位置関係は、本願発明の「フィルム搬送機構」がフィルムの搬送方向において「可動ローラより下流側に配置」されることに相当する。
引用発明の「付勢手段」、「エアシリンダ」は、本願発明の「アクチュエータ」、「流体圧シリンダ」にそれぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1〜3で相違する。

<一致点>
フィルムロールを回動させてフィルムを繰り出すフィルムロール駆動部と、
前記フィルムを搬送するフィルム搬送機構と、
前記フィルム搬送機構により搬送されるシート状の前記フィルムを、筒状に成形するフォーマと、
前記フィルムの搬送方向において前記フィルムロールと前記フォーマとの間に配置され、搬送される前記フィルムに接触し、前記フィルムをガイドしながら変位する可動ローラと、
前記可動ローラを介して前記フィルムに力を作用させるアクチュエータと、
前記可動ローラを軸支するアームの回転角度を検知する検知部と、
を備え、
前記フィルム搬送機構は、前記フィルムの搬送方向において前記可動ローラより下流側に配置され、
前記アクチュエータは、流体圧シリンダである、
包装機。

<相違点1>
「包装機」に関して、本願発明は「製袋包装機」であるのに対し、
引用発明は「液体包装装置」である点。

<相違点2>
本願発明は、可動ローラを軸支するアームの回転角度を検知する検知部と、「前記フィルムロール駆動部及び前記フィルム搬送機構を、タイミングを合わせて制御するコントローラ」を備え、「前記コントローラは、前記検知部の検知結果に基づいて、前記フィルムロール駆動部による前記フィルムロールの回転速度を制御して、前記可動ローラの位置を制御」するのに対し、
引用発明は、「軸支手段の揺動角度を検出する検出手段と、検出手段の出力信号を入力する制御手段」を具備し、「制御手段は検出手段の出力を入力して所定の演算処理を行い、その出力信号を駆動ローラの駆動手段に出力してその駆動を制御」し、「軸支手段が揺動した際、それに応じて検出手段の出力信号が変化し、制御手段は軸支手段の揺動方向及び揺動量に応じて、包装材料ウエブの移送速度が適当か否かを判断し、適当でないと判断した場合は、駆動ローラの駆動手段にその回転速度の変更を指示する」点。

<相違点3>
本願発明は、「前記アクチュエータの前記フィルムに作用させる力を制御する第1制御部」を備え、「前記第1制御部は、前記フィルム搬送機構が前記フィルムの搬送速度を加速する時、又は、減速する時に、前記流体圧シリンダを制御し、上昇した前記流体圧シリンダの内圧を低下させ、又は、低下した前記流体圧シリンダの内圧を上昇させる」のに対し、
引用発明は、「付勢手段はエアシリンダによって構成され」ており、
「付勢手段にはエアが供給されてそのロッドは常に一定の力で付勢され、これによって軸支手段の揺動軸には力が常に加わり、揺動ローラには常に包装材料ウエブをその進行方向とは異なる方向に引っ張り出す方向へ向けて一定の付勢力が加わり、」
「管状に成形されて液体が充填された包装材料ウエブはジョーユニットによって成形、密封、切断され、そのとき管状に成形された包装材料ウエブは、ジョーユニットによって挟持されて引っ張られることによって移送され、そのとき包装材料ウエブを引っ張る力は一定ではなく、
包装材料ウエブに加わる張力が増減しようとしても、揺動ローラは包装材料ウエブに対して常に所定の張力を付与するように弾発した状態で揺動し、包装材料ウエブに加わる張力は常に一定の値を保持でき、
包装材料ウエブに加わる張力の調整は、付勢手段の付勢力を調整することによって行」う点。

(3) 相違点について検討及び判断
ア 相違点1について検討する。
本願発明の「製袋包装機」が製作する「袋」は、「中に物を入れて、口をとじるようにした入れ物」(広辞苑第6版)を意味するところ、引用発明の「液体包装装置」も、包装材料ウエブを成形して管状とし、中に物(液体)を入れて閉じる(シールする)ものであるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について検討する。
(ア)引用発明は、「軸支手段の揺動角度を検出する検出手段と、検出手段の出力信号を入力する制御手段」を具備し、「軸支手段が揺動した際、それに応じて検出手段の出力信号が変化し、制御手段は軸支手段の揺動方向及び揺動量に応じて、包装材料ウエブの移送速度が適当か否かを判断し、適当でないと判断した場合は、駆動ローラの駆動手段にその回転速度の変更を指示する」との制御を行い、制御手段は検出手段による軸支手段の揺動角度の検知結果を用いて駆動ローラの回転速度を制御する。包装材料ウエブは一枚の連続するものであるから、駆動ローラが下流側で包装材料ウエブを搬送するのに連動して、上流側に位置する包装材料ウエブが巻き回されたロールは回転し、駆動ローラの回転速度を制御すると、ロールの回転速度も連動して制御される。
また、引用発明において、駆動ローラの回転速度が増加するように制御され、揺動ローラを含む張力維持装置に移送される包装材料ウエブの量が増えると、張力維持装置の構造上、揺動ローラの位置は下(引用文献3の図1の矢印D方向)に揺動することとなり、逆に駆動ローラの回転速度が減少するように制御されて張力維持装置に移送される包装材料ウエブの量が減ると、揺動ローラの位置は上(引用文献3の図1の矢印D方向の逆方向)に揺動することになることは明らかである。これは、駆動ローラの回転速度を制御すると、結果として揺動ローラの位置を制御することを意味するから、引用発明における「軸支手段の揺動角度を検出する検出手段と、検出手段の出力信号を入力する制御手段」を具備し、「軸支手段が揺動した際、それに応じて検出手段の出力信号が変化し、制御手段は軸支手段の揺動方向及び揺動量に応じて、包装材料ウエブの移送速度が適当か否かを判断し、適当でないと判断した場合は、駆動ローラの駆動手段にその回転速度の変更を指示する」との制御は、本願発明の可動ローラを軸支するアームの回転角度を検知する「前記検知部の検知結果に基づいて、前記フィルムロール駆動部による前記フィルムロールの回転速度を制御して、前記可動ローラの位置を制御」することと実質的に同じである。

(イ)さらに、引用発明の液体包装装置において、駆動ローラは包装材料ウエブをロールから繰り出して移送して、ジョーユニットは包装材料ウエブを引っ張り搬送して、共に一枚の連続する包装材料ウエブを取り扱うものである。すると、駆動ローラとジョーユニットとは、駆動ローラが繰り出した包装材料ウエブをその後ジョーユニットが受け取り搬送するのだから、一枚の連続したウエブが滞りなく搬送され、液体包装装置が運転を継続する上で「タイミングを合わせ」た関係で動作する必要性があるものである。すると、引用発明において、ジョーユニットを制御するものとし、包装材料ウエブを搬送するジョーユニットと包装材料ウエブをロールから繰り出す駆動ローラとをタイミングを合わせて制御することは、当業者が適宜なし得た事項である。

(ウ)したがって、上記相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 相違点3について検討する。
(ア) 本願発明の「前記アクチュエータの前記フィルムに作用させる力を制御する第1制御部」を備え、「前記第1制御部は、前記フィルム搬送機構が前記フィルムの搬送速度を加速する時、又は、減速する時に、前記流体圧シリンダを制御し、上昇した前記流体圧シリンダの内圧を低下させ、又は、低下した前記流体圧シリンダの内圧を上昇させる」との発明特定事項に関連して、本願の発明の詳細な説明には、
「仮に、第1制御部91aがシリンダチューブ15aの内圧の制御を行わないとすると、搬送ベルト40がフィルムFの搬送速度を加速する場合・・・シリンダチューブ15aの内圧は上昇し、可動ローラ14がフィルムFを押す力が上昇する」ときに「搬送ベルト40がフィルムFの搬送速度を加速する時、第1制御部91aは、エアシリンダ15のシリンダチューブ15aの内圧が低下するようにエアシリンダ15を制御する」こと(段落【0084】)、
「仮に、第1制御部91aがシリンダチューブ15aの内圧の制御を行わないとすると、搬送ベルト40がフィルムFの搬送速度を減速する場合・・・シリンダチューブ15aの内圧は低下し、可動ローラ14がフィルムFを押す力が低下する」ときに「搬送ベルト40がフィルムFの搬送速度を減速する時、第1制御部91aは、エアシリンダ15のシリンダチューブ15aの内圧が上昇するようにエアシリンダ15を制御する」こと(段落【0085】)、
「第1制御部により、可動ローラがフィルムを押す力が一定になるように調整されるため、運転状態によらず、フィルムに一定の張力を生じさせることができる。そのため、フォーマでフィルムをきれいに成形することが容易な、信頼性の高い製袋包装機を実現できる」(段落【0018】)こと、
が記載されている。

(イ)これに対し、引用発明は、
「付勢手段はエアシリンダによって構成され」ており、
「付勢手段にはエアが供給されてそのロッドは常に一定の力で付勢され、これによって軸支手段の揺動軸には力が常に加わり、揺動ローラには常に包装材料ウエブをその進行方向とは異なる方向に引っ張り出す方向へ向けて一定の付勢力が加わり、」
「管状に成形されて液体が充填された包装材料ウエブはジョーユニットによって成形、密封、切断され、そのとき管状に成形された包装材料ウエブは、ジョーユニットによって挟持されて引っ張られることによって移送され、そのとき包装材料ウエブを引っ張る力は一定ではなく、
包装材料ウエブに加わる張力が増減しようとしても、揺動ローラは包装材料ウエブに対して常に所定の張力を付与するように弾発した状態で揺動し、包装材料ウエブに加わる張力は常に一定の値を保持でき、
包装材料ウエブに加わる張力の調整は、付勢手段の付勢力を調整することによって行」う、
という構成を有している。

(ウ)したがって、引用発明では、ジョーユニットが移動速度が一定でない、すなわち、加速、減速を伴って、包装材料ウエブを引っ張り出すとき、包装材料ウエブに加わる張力は増減しようとし、揺動ローラは揺動するが、包装材料ウエブに一定の張力を付与する。揺動ローラが揺動するときに包装材料ウエブに一定の張力を付与することは、エアシリンダによって構成される付勢手段へのエアの供給によって行われる。
ここで、エアシリンダが揺動ローラの揺動に伴って伸長又は縮長する際には、エアシリンダの構造上、仮に内部のエアの量が変わらなければ伸長又は縮長に伴う内容積の変動に伴って内圧の上昇又は低下が生じ、包装材料ウエブを押圧する力も変動するはずであるが、引用発明では「エアが供給されてそのロッドは常に一定の力で付勢されて」いるのであるから、引用発明においては、付勢手段としてのエアシリンダが揺動ローラの揺動に伴って伸長または縮長する際に、伸長又は縮長によって当該内圧の上昇又は低下が生じようとするのを、供給するエアの調整を行って、エアシリンダの内圧が上昇又は低下しようとするのを抑制して内圧を維持し、エアシリンダのロッドを付勢する力を一定にする制御がなされているものと解される。
すると、引用発明は、上記制御を行う装置を備え、それにより、加速または減速に際し、エアシリンダの内圧の上昇または減少しようとするのを抑制して内圧を維持して、上昇したエアシリンダの内圧を低下させ、又は、低下したエアシリンダの内圧を上昇させる制御がされているものであるといえる。
してみると、相違点3は実質的な相違点であるとはいえない。

エ 本願発明の作用ないし効果について
本願発明によってもたらされる作用ないし効果は、引用発明から予測できる作用ないし効果以上の顕著なものではない。

オ よって、本願発明は、引用発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-11-15 
結審通知日 2022-11-22 
審決日 2022-12-06 
出願番号 P2015-056584
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 藤井 眞吾
柳本 幸雄
発明の名称 製袋包装機  
代理人 新樹グローバル・アイピー特許業務法人  

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