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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1393630
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-04 
確定日 2023-01-12 
事件の表示 特願2017−22235号「電子レンジ用パウチ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月16日出願公開、特開2018−127257号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月9日の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和2年10月23日付け :拒絶理由通知
令和2年12月24日 :意見書、手続補正書
平成3年2月26日付け :拒絶理由通知
令和3年4月22日 :意見書、手続補正書
令和3年6月18日付け :拒絶査定
令和3年10月4日 :審判請求、手続補正書

第2 令和3年10月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年10月4日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により、補正される前の(すなわち、令和3年4月22日提出の手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1が下記の(2)に示す請求項1に補正された(下線は、補正箇所を示す。)。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「蒸通機構を備え、底部ガセット部を有するパウチであって、
表面フィルムと、裏面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に位置する底面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムを接合する側部シール部と、を有し、
前記側部シール部は、前記蒸通機構に近い側の第1側部シール部と、前記蒸通機構から遠い側の第2側部シール部と、で構成され、
前記第2側部シール部が第1部分と第2部分を含み、前記第2部分のシール幅が前記第1部分のシール幅より大きく、前記第1部分のシール幅が一定であり、前記第2部分はパウチの上縁から下方に向かって延びており、前記第2部分において、前記蒸通機構と対向する位置より下方に開封手段が設けられており、前記第2部分の上下方向の長さが前記第1部分の上下方向の長さより長い、電子レンジ用パウチ。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「蒸通機構を備え、底部ガセット部を有するパウチであって、
表面フィルムと、裏面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に位置する底面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムを接合する側部シール部と、を有し、
前記側部シール部は、前記蒸通機構に近い側の第1側部シール部と、前記蒸通機構から遠い側の第2側部シール部と、で構成され、
前記第2側部シール部が第1部分と第2部分を含み、前記第2部分のシール幅が前記第1部分のシール幅より大きく、前記第1部分のシール幅が一定であり、前記第2部分はパウチの上縁から下方に向かって延びており、前記第2部分において、前記蒸通機構と対向する位置より下方に開封手段が設けられており、前記第2部分の上下方向の長さが前記第1部分の上下方向の長さより長く、
前記第2側部シール部の前記第2部分のシール幅は、前記第1側部シール部の前記第2部分と対向する部分のシール幅より大きい、電子レンジ用パウチ。」
2 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第2側部シール部」の「第2部分のシール幅」について、「前記第1側部シール部の前記第2部分と対向する部分のシール幅より大きい」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正によって補正された請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかどうか(特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか)について、以下、検討する。
3 独立特許要件の判断
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項、引用発明
ア 引用文献1:特開平11−278556号公報
ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献1には、「包装袋」について、次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。また、「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様。)。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 隅角部を形成する互いに交わる端縁熱接着部を有する熱接着により袋状に形成された包装袋において、前記包装袋を隅角部側に形成された小空間部とその他の大空間部とからなる2つの空間部に2分割するように、かつ、前記2つの空間部が連通口を有するように前記端縁熱接着部のそれぞれから突出する突出熱接着部が形成され、前記小空間部の隅角部側に包装袋内の空気を抜く通気口を設けた際に、該通気口に大空間部の空気が直線的に流れないように構成されていることを特徴とする包装袋。
・・・
【請求項6】 前記包装袋の熱接着部周縁辺の所定位置に前記大空間部に収容された内容物を取り出す開封口を形成するための引き裂き開始端となる開封口形成用切欠が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の包装袋。
【請求項7】 前記積層体の外層を構成する合成樹脂製のフィルムに、包装袋になったときに前記大空間部に収容された内容物を取り出す開封口を形成するように開封口形成用切目が所定位置に刻設されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の包装袋。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子レンジ用包装袋に関し、さらに詳しくは、食品等の内容物を包装袋に入れたままの状態で電子レンジにより解凍、加熱する際に適度の通気性を有し、破袋することのない電子レンジ用包装袋に関する。」
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、電子レンジを用いて包装袋に収容された食品等の内容物を包装袋ごと解凍や加熱する際に、解凍や加熱により発生する空気や水蒸気等を外部へ放出するための通気口を容易に形成することができ、かつ、解凍や加熱により発生する空気や水蒸気等を有効に活用し、内容物に対して満遍なく熱をゆきわたらせて、ムラのない解凍や加熱を行うことができると共に、解凍や加熱により包装袋が膨張しても確実に通気口を確保することができ、さらに、解凍や加熱後に包装袋に付着した内容物から発生する油分等で手指が汚れることなく、また、通気口から外部へ放出される熱い空気や水蒸気に触れることなく、容易に開封して内容物が取り出すことができる包装袋を提供することである。」
「【0014】また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の包装袋において、前記包装袋の熱接着部周縁辺の所定位置に前記大空間部に収容された内容物を取り出す開封口を形成するための引き裂き開始端となる開封口形成用切欠が形成されていることを特徴とするものである。このように構成することにより、開封口を設けるための引き裂き開始端が明確になると共に引き裂きのきっかけを与えることができる。また、開封口形成用切欠を通気口を設ける位置から離すことにより、包装袋を解凍や加熱後に手指が汚れることなく、また、水蒸気等の吹き出しで熱い思いをすることもなく容易に開封して開封口を設けることができて、内容物を取り出すことができる。」
「【0020】
【発明の実施の形態】上記の本発明について、以下に詳しく説明する。まず、本発明の包装袋を構成する材料は、内層としては熱接着性を有する樹脂を用いることができ、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、たとえば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーポリプロピレン共重合体等の樹脂の一種ないしそれ以上からなる樹脂ないしはこれらをフィルム化したシートを使用することができ、その厚さとしては20〜200μmが適当である。
【0021】また、外層としては、本発明の包装袋を構成する基本素材となることから、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有する合成樹脂を用いることができ、たとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系等の樹脂を用いることができる。又、これらの樹脂を用いたフィルムとしては、未延伸フィルムあるいは1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができ、フィルムの厚さとしては基本素材としての強度、剛性などについて必要最低限に保持され得る厚さであればよく、厚過ぎるとレーザー加工不良等を発生して引き裂き性が低下し、また、コストが上昇するという欠点もあり、逆に薄過ぎると強度、剛性等が低下して好ましくない。本発明においては、上記のような理由から12〜25μm程度が適当である。また、前記合成樹脂製のフィルムは、必要に応じてポリ塩化ビニリデンが塗工されたフィルムであってもよいし、酸化珪素の蒸着層が形成されたフィルムであってもよい。また、前記外層として使用する合成樹脂製のフィルムは、前記合成樹脂製フィルムの内層側に一般的には印刷が施されることが多く、そのために、前記外層として使用する合成樹脂製フィルムは印刷適性が求められ、1軸延伸または2軸延伸フィルムが好適である。
【0022】さらに、本発明においては、前記内層と前記外層の間に中間層を設けてもよく、前記中間層は通常前記内層と前記外層だけでは包装袋としての機能を十分に果たすことができない場合等に設けられる。前記機能としては、気体遮断性、機械的強靱性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐寒性、耐熱性、耐薬品性等であり、包装袋として要求されるこれらの最終的な機能を中間層を設けることで達成するものである。該中間層として用いられる基材としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレンープロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルムあるいはこれらにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムないしは酸化珪素蒸着を施したフィルムあるいはポリ塩化ビニリデン等のフィルムなどを用いることができる。また、必要に応じてこれら基材の一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。尚、上記基材の厚さとしては、包装体として要求される機能を満たすことができればよいのであって、必要に応じて適宜選択することができる。
【0023】次に、本発明において、上記の外層として使用する合成樹脂製フィルムに包装袋になった時に通気口形成用あるいは開封口形成用切目を刻設する方法としては、たとえば、加熱した針を押しつけるニードルパンチ法、エンボスロール法、研磨ロール、砥石、研磨テープ等を用いてフィルムを溶融し、穿孔する熱溶融穿孔法、ナイフ、カッター等を用いる物理的穿孔法、レーザービーム加工、コロナ放電、プラズマ放電等の加工法等の方法によって行うことができる。しこうして、本発明において、外層として使用する合成樹脂製フィルムに通気口形成用あるいは開封口形成用切目を刻設するに当たっては、該合成樹脂製フィルムの単体の状態、あるいは、外層に内層として使用するヒートシール性を有する樹脂ないし該樹脂をフィルム化したシートを積層した2層からなる積層体の状態、あるいは、前記外層と前記内層との間に上記の中間層を設けた少なくとも3層からなる積層体の状態、さらには、該積層体を使用してなる包装袋の状態等いずれの状態において刻設してもよく、これによって外層として使用する合成樹脂製フィルムに通気口形成用あるいは開封口形成用切目を設けることができる。
【0024】本発明において、通気口形成用あるいは開封口形成用切目の形状としては、直線状、曲線状、ミシン目線状、破線状等の任意の形状でよく、その本数は、一本ないしそれ以上でよく、また、連続状であっても、不連続状等のいずれでもよい。さらに、通気口形成用あるいは開封口形成用切目の構造は、貫通孔、ハーフカットの状態あるいはそれらが混在する状態のいずれの状態でもよく、本発明では、切れ目部分が弱体化して包装袋の通気口形成用あるいは開封口形成用切目として作用すればよい。
【0025】ところで、本発明において、外層として使用する合成樹脂製フィルムに通気口形成用あるいは開封口形成用切目を設ける方法としては、パルス発振型のレーザーを用いてミシン目状の通気口形成用あるいは開封口形成用切目を刻設する方法が最も適した方法である。これに用いるレーザーの種類は、たとえば、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、アルゴンイオンレーザー等で可能であり、特に限定されるものではない。しかし、外層として使用する合成樹脂製フィルムに通気口形成用あるいは開封口形成用切目を刻設する場合は、用いる樹脂のフィルムがレーザー発振波長を吸収することが必要である。たとえば、炭酸ガスレーザーを使用する場合は、炭酸ガスレーザー光の10.6ミクロンの波長は、ポリアミドフィルム(ナイロンー6フィルム)に選択的に吸収されやすく、線状低密度ポリエチレンやエチレンー酢酸ビニル共重合体を主体とするフィルムではその殆どが透過される。そのため、内層のヒートシール性を有するフィルムとして、線状低密度ポリエチレンやエチレンー酢酸ビニル共重合体を主体とするフィルムを用い、外層として使用する合成樹脂製フィルムに2軸延伸ポリアミドフィルム(ナイロンー6フィルム)を用い、その両者を組み合わせて積層してなる2層からなる積層体を使用し、これに炭酸ガスレーザーを照射してレーザー加工を行うと、前記の2軸延伸ポリアミドフィルム(ナイロンー6フィルム)のみに選択的に通気口形成用あるいは開封口形成用切目を刻設することができると共に、前記通気口形成用あるいは開封口形成用切目は線状低密度ポリエチレンやエチレンー酢酸ビニル共重合体を主体とするフィルムが溶融してその通気口形成用あるいは開封口形成用切目を閉塞することがなく、極めて良好に包装体を引き裂いて通気口あるいは開封口を設けることができる。また、前記積層体を用いてなる包装袋の状態で炭酸ガスレーザーを照射してレーザー加工を行っても、上記と同様な結果を得ることができる。上記したようにレーザー加工によって、その波長を選択することにより、外層として使用する合成樹脂製フィルムのみに選択的に通気口形成用あるいは開封口形成用切目を刻設することができる。
【0026】また、本発明の包装袋の形態としては、三方シールタイプ、四方シールタイプ、スタンディングパウチ、ガセットタイプ、封筒貼りシールタイプ、ピロータイプ等を任意に選ぶことができ、特に限定されるものではないが、スタンディングパウチや三方シールタイプ、四方シールタイプの包装袋に適しており、なかでもスタンディングパウチはそれ自体が自立性のある包装袋であり、電子レンジで解凍や加熱する際に、立たせた状態で解凍や加熱を行うことができ、内容物が液状物であっても、あるいは、液状物を含むものであっても解凍や加熱後に液状物が漏れる心配がなく、本発明の包装袋としては最も好適なものである。」
「【0029】
【実施例】次に、図を用いて実施例を詳述する。図1は本発明にかかる包装袋の第1の実施形態の平面図、図2は本発明にかかる包装袋の第2の実施形態の平面図、図3は本発明にかかる包装袋の第3の実施形態の要部拡大図、図4は本発明にかかる包装袋の第4の実施形態の要部拡大図、図5は本発明にかかる包装袋の第5の実施形態の要部拡大図、図6は本発明にかかる包装袋の第6の実施形態の要部拡大図、図7は図1〜6の包装袋の層構成を示す断面図であり、図中の1A、1B、1C、1D、1E、1Fは包装袋、2、3は端縁熱接着部、4は小空間部、4'は溝状空間部、5、6、15、16は突出熱接着部、7、17は連通口、8は大空間部、9は通気口形成用切目、10は通気口形成用切欠、11は熱接着部、12、13は緩衝熱接着部、19は開封口形成用切目、20は開封口形成用切欠、30はエンボス部、40は引き裂き防止壁、50は外層、60は内層、70は積層体をそれぞれ示す。
【0030】図1は本発明にかかる包装袋の第1の実施形態の平面図であって、包装袋1Aは周縁部が熱接着されたスタンディングパウチであって、該包装袋1Aの隅角部(図上の左上隅角部)を形成する互いに交わる端縁熱接着部2、3の前記端縁熱接着部2から突出する突出熱接着部5が前記端縁熱接着部3との間に空間を形成するように設けられ、前記空間を覆うと共に前記突出熱接着部5の先端との間に隙間が形成されるように前記端縁熱接着部3から延びる突出熱接着部6が形成され、前記端縁熱接着部2、3と前記突出熱接着部5と前記突出熱接着部6とで囲まれた小空間部4が形成されている。このように構成することにより、包装袋1Aは前記突出熱接着部5、6により小空間部4とその他の大空間部8に2分割されると共に前記隙間が前記小空間部4と前記大空間部8とを繋ぐ連通口7となる。また、前記連通口7は前記小空間部4の角隅部側に包装袋1A内の空気を抜く通気口を設けた際に、該通気口に前記連通口7から前記大空間部8の空気が直線的に流れないように構成され、前記大空間部8に内容物が収容された包装袋1Aを電子レンジで解凍や加熱等の調理を行った際に内容物が突沸したとしても、突沸したものが直接通気口から外部へ吹き出すことがないようになっている。
【0031】また、前記小空間部4を横断するように前記端縁熱接着部3の周縁辺から通気口形成用切目9が形成されると共に、前記通気口形成用切目9の一方の端部と前記端縁熱接着部3の前記周縁辺との交点にV字形状の通気口形成用切欠10が設けられている。また、前記通気口形成用切目9の他方の端部は前記突出熱接着部5に設けられた長穴形状の引き裂き防止壁40に至っている。この引き裂き防止壁40の形成は、たとえば、包装袋1Aを製造する周知のスタンディングパウチ製袋機に前記引き裂き防止壁40とする形状の熱板で型押しすることにより形成できるし、また、前記突出熱接着部5を形成する熱板の前記引き裂き防止壁40とする部分を凹部形状にして未接着部とすることによっても形成するこができるし、また、I字形状の切刃や長穴形状の切欠部を設けることによっても形成することができる。ところで、引き裂き防止壁40の形状は長穴形状にこだわることなく、円形状、楕円形状、多角形状等いずれの形状であってもよく、要するに前記小空間部4に通気口を設ける際に通気口形成用切欠10から通気口形成用切目9に沿って包装袋1Aを引き裂いた場合に、この引き裂き防止壁40が堰となり、この引き裂き防止壁40より先には引き裂き難くしているものである。
【0032】一方、前記通気口形成用切欠10を設けた前記端縁熱接着部3を構成する辺と対向する辺の対向する位置に幅広に構成された熱接着部11が形成されると共に、前記熱接着部11の周縁辺にV字形状の開封口形成用切欠20が形成され、前記V字形状の開封口形成用切欠20から前記V字形状の通気口形成用切欠10が設けられている前記端縁熱接着部3まで開封口形成用切目19が形成されている。さらに前記V字形状の開封口形成用切欠20が設けられた前記熱接着部11に前記V字形状の開封口形成用切欠20を挟むようにエンボス部30、30が形成されている。
【0033】ところで、前記熱接着部11を幅広に構成したのは、包装袋1Aを電子レンジで解凍や加熱等の調理をした場合に包装袋1Aが熱くなり手指で持ち難くなるのを防止するためであるが、この構成は必要に応じて設ければよい。また、前記熱接着部11に前記V字形状の開封口形成用切欠20を挟むようにエンボス部30、30を設けたのは、電子レンジで解凍や加熱等の調理後に包装袋1Aを開封して内容物を取り出すときに、滑り難くして開封し易くするためである。また、前記エンボス部30、30は包装袋1Aにおいて、開封口形成用切目19が形成されているのみでV字形状の開封口形成用切欠20が設けられていない場合においては、包装袋1Aの開封位置を明示するものとしても機能するものであるが、この構成についても上記同様に必要に応じて設ければよい。」
「【0038】図2は本発明にかかる包装袋の第2の実施形態の平面図であって、包装袋1Bは図1の第1の実施形態の包装袋1Aにおいて端縁熱接着部2、3にそれぞれ設けた突出熱接着部5、6を逆の位置にして設けると共に、通気口形成用切欠10、通気口形成用切目9、引き裂き防止壁40の設ける位置をこれに伴って変更した以外は第1の実施形態と同じであり説明は省略する。」
「【0044】図7は図1〜6の包装袋の層構成を示す断面図であって、包装袋1A〜1Fは、15μmの2軸延伸ポリアミドフィルム(ナイロンー6フィルム)からなる外層50と60μmのポリプロピレンからなる内層60との2層の積層体70から構成されている。図7の積層体70は外層50と内層60とを周知のドライラミネーション法で作製したが、周知のTダイ押し出しラミネーション法で作製してもよく、その場合は必要に応じてアンカーコート剤を用いることができる。この積層体70を包装袋1A〜1Fにするには、周知のスタンディングパウチ製袋機で積層体70の内層60の面を対向させて重ね合わせて胴部にすると共に、底部(図1、2において下方部)に前記積層体70からなる底材の内層60を前記胴部を形成する積層体70の内層60と対向するようにV字状に折り重ねて前記胴部を形成する積層体70の内層60間に挿入し、その周縁部を所定形状の熱板で熱接着することにより作製することができる。」




イ) 引用文献1に記載された事項から、以下のことがわかる。
a 引用文献1の図1、上記【0032】、【0033】より、電子レンジ用のスタンディングパウチの両側部に、それぞれ、端縁熱接着部を有し(以下、図1でみて、左側部の端縁熱接着部を「第1端縁熱接着部」、右側部の端縁熱接着部を「第2端縁熱接着部」という。)、第2端縁熱接着部は、図1でみて上部の端縁熱接着部から延びる幅広に構成された熱接着部と、これに続く第2端縁熱接着部のシール幅が一定な部分を有していること。
b 引用文献1の図1の開封口形成用切欠は、通気口形成用切欠の位置より下部に位置していること。
ウ) 引用文献1に記載された発明
上記ア)及びイ)の記載事項を総合しつつ、請求項1を引用する請求項6について、電子レンジ用のスタンディングパウチの用途に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「隅角部を形成する互いに交わる端縁熱接着部を有する熱接着により袋状に形成された電子レンジ用スタンディングパウチにおいて、
スタンディングパウチ製袋機で積層体の内層の面を対向させて重ね合わせて胴部にし、
電子レンジ用スタンディングパウチの両側部を、それぞれ、第1端縁熱接着部、第2端縁熱接着部とし、
積層体からなる底材の内層を、前記胴部を形成する積層体の内層と対向するようにV字状に折り重ねて、前記胴部を形成する積層体の内層間に挿入し、その周縁部を所定形状の熱板で熱接着し、
前記包装袋を隅角部側に形成された小空間部とその他の大空間部とからなる2つの空間部に2分割するように、かつ、前記2つの空間部が連通口を有するように前記端縁熱接着部のそれぞれから突出する突出熱接着部が形成され、前記小空間部の隅角部側に包装袋内の空気を抜く通気口を設けた際に、該通気口に大空間部の空気が直線的に流れないように構成され、
前記包装袋の前記第2端縁熱接着部周縁辺の所定位置に前記大空間部に収容された内容物を取り出す開封口を形成するための引き裂き開始端となる開封口形成用切欠が形成され、
前記小空間部を横断するように前記第1端縁熱接着部の周縁辺から通気口形成用切目が形成されると共に、前記通気口形成用切目一方の端部と前記第1端縁熱接着部の前記周縁辺との交点にV字形状の通気口形成用切欠が設けられ、
前記通気口形成用切欠を設けた前記第1端縁熱接着部を構成する辺と対向する第2端縁熱接着部の辺の対向する位置に幅広に構成された熱接着部が形成され、
前記第2端縁熱接着部は、上部の端縁熱接着部から延びる幅広に構成された熱接着部と、これに続く前記第2端縁熱接着部のシール幅が一定な部分を有し、
前記開封口形成用切欠は、前記通気口形成用切欠の位置より下部に位置している、
電子レンジ用スタンディングパウチ。」

イ 引用文献2:実願平4−42861号(実開平6−3849号)のCD−ROM
ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 食品が収納可能で且つ起立可能な袋本体1の少なくとも一方の側縁に把手12が設けられてなることを特徴とする食品の包装用袋。
・・・
【請求項4】 前記袋本体1の側縁に切目5が形成されてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の食品の包装用袋。」
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は食品の包装用袋と包装体、さらに詳しくは、主として麺類等の食品を包装した包装用袋と包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、うどん、ラーメン等の麺類は鉢に入れて喫食されるため、別に鉢を準備することが必要となる。
【0003】
特に、ハイキング等屋外で喫食する場合には、鉢を持参することが必要となるために、屋外への持参、喫食は不適である。
【0004】
このような点に鑑み、近年では屋外へも持参可能なカップに収納されたインスントの麺類が数多く市販されている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、このようなカップに収納された麺類は、収納される乾燥麺に比し、カップ自体の体積が非常に大きく、従って運搬時等において不用意にスペースをとり、保存、取扱いが不便となる問題点を有していた。
【0006】
また、カップが発泡性樹脂等で略有底円筒状等に定型化して形成されているため、廃棄処理が必ずしも容易ではなく、廃棄物としてもスペースをとるという問題点があった。
【0007】
さらに、このようなカップ麺は、給湯時において上記のような発泡性樹脂等の容器本体の開口端縁に単なる薄紙を貼着して閉塞していたものであるが、このような薄紙による閉塞ではどうしても隙間が生じ、しかも閉塞作業自体も煩雑であった。
【0008】
本考案は、このような問題点を解決するためになされたもので、鉢等を別に準備する必要がなく包装状態のまま喫食することができ、また運搬時等において不用意にスペースをとることもなく、保存、取扱いが便利であり、さらに喫食後の廃棄処理も容易に行え、しかもインスタントの乾燥麺等を収納して給湯する場合にも隙間を生じさせることのない全く新規な食品の包装用袋と包装体を提供することを課題とするものである。」
「【0018】
6は前記袋本体1の底部に形成されたガゼットを示す。
【0019】
図4及び図5は、うどんを収納した食品包装体の一実施例を示し、図4は正面図、図5は図4のC−C線断面図を示す。
【0020】
すなわち、この食品包装体7は、上記のような袋本体1内にうどん麺8、具9、葱10をつゆ11中に浸漬した状態で収納し、上部には開口部2を密閉シールすべく所定幅のシール部3cが形成されている。
【0021】
そして、このような食品包装体7は、袋本体1の底部に上記のようなガゼット6が形成されているために、袋本体1の内部にうどん麺8、具9、葱10、及びつゆ11が収納された状態においては、これらの収納物の自重によって図5に示すように起立可能となる。
【0022】
従って、このような食品包装体7を熱湯等に浸漬した後、テーブル等に載置することができ、その載置した状態で図6に示すように上部の切目5、5の位置から切断すると、密閉状態であった食品包装体7の上部が開口し、テーブル等に載置した状態のまま、袋本体1内のうどんを喫食することができるのである。
【0023】
また、喫食によってうどんの量が減ると、下部の切目5、5の位置を切断することによって開口部の位置を低くすることができ、よって収納物たるうどんの量の減少に応じて開口部の位置を低くして喫食を容易にすることができる。」
「【0025】
尚、上記実施例では、袋本体1の両側縁に把持用孔4と切目5が形成されているが、この把持用孔4と切目5は必ずしも両側に形成されている必要はなく、図7に示すように袋本体1の一側縁側のみに形成することも可能である。」
「【0033】
さらに、切目5も、数多く形成されることによって、食品の量の減少に応じて喫食し易い位置に順次開口部を形成できるという効果があるが、切目5の数も問うものではない。」











イ) 引用文献2に記載された技術的事項
上記ア)の記載事項から、引用文献2には、以下の技術的事項(以下「引2事項」という。)が記載されていると認められる。
「食品が収納可能で且つ起立可能な袋本体の少なくとも一方の側縁に、上部と下部に切目を設けること。」
ウ 引用文献3:特開2000−281083号公報
ア) 引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 食品を収容する自立型の食品包装容器の上端部に設けられた、この食品を取り出すための第1の切断部と、
この第1の切断部の下方であって、かつ、上記食品包装容器を自立させた際に配置される上記食品の上端位置より上方に設けられた第2の切断部と、を有することを特徴とする食品包装容器。」
「【0002】
【従来の技術】従来より、例えば調理済み食品等をその内部に収容したものとして、例えばレトルトパウチ等の食品包装容器が使われている。このレトルトパウチを使用する使用者は、先ず、この調理済み食品等が収容されているレトルトパウチをお湯等に入れ、温める。このレトルトパウチを温めるのは、その内容物である食品を温めるためである。このように、その内容物である食品が温められた後、使用者は、このレトルトパウチをお湯等から取り出し、このレトルトパウチの上部を開封して、その内容物である調理済み食品を、別の器等に移しかえる。そして、この器等で調理済み食品を食するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなレトルトパウチ等の食品包装容器においては、以下のような問題があった。すなわち、このレトルトパウチで食事等を行うとき、必ず、別の器等にその内容物である調理済み食品を移しかえる必要があるため、近くに器等がない場合、不便であるという問題あった。また、乳幼児等にレトルトパック内の食品を与える際は、乳幼児等が空腹で騒ぐ等するため、別の器等への移しかえを行うことで、食品を与えるまでに時間がかかり、より乳幼児等が騒ぎだす等の問題もあった。
【0004】本発明は、以上の点に鑑み、別の器等を用いることなく、食品包装容器を簡易食器として用いることができる食品包装容器及び自立補助部材付き食品包装容器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明によれば、食品を収容する自立型の食品包装容器の上端部に設けられた、この食品を取り出すための第1の切断部と、この第1の切断部の下方であって、かつ、上記食品包装容器を自立させた際に配置される上記食品の上端位置より上方に設けられた第2の切断部と、を有することを特徴とする食品包装容器により、達成される。
【0006】上記構成によれば、上記食品包装容器には、食品を取り出すための第1の切断部と、この第1の切断部の下方であって、かつ、上記食品包装容器を自立させた際に配置される上記食品の上端位置より上方に設けられた第2の切断部とを有しているため、その食品を別の器等に移しかえるときは、第1の切断部で上記食品包装容器を切断し、この食品を移しかえることができる。また、上記第2の切断部で、この自立型の食品包装容器を切断すれば、この食品がこぼれることなく、切断された食品包装容器内に保持される。」
「【0014】上記構成によれば、食品包装容器の自立を補助する箱状自立補助部材に上記食品包装容器が収容されるため、この食品包装容器が自立型でなくとも自立させることができる。また、上記食品包装容器には、食品を取り出すための第1の切断部と、この第1の切断部の下方であって、かつ、上記食品包装容器を自立させた際に配置される上記食品の上端位置より上方に設けられた第2の切断部とを有しているため、その食品を別の器等に移しかえるときは、第1の切断部で上記食品包装容器を切断し、この食品を移しかえることができる。また、上記第2の切断部で、この自立型の食品包装容器を切断すれば、この食品がこぼれることなく、切断された食品包装容器内に保持される。」
「【0024】(第1の実施の形態)図1は、本発明の食品包装容器の第1の実施の形態に係る自立型のレトルトパウチ容器10を示す図である。図において、自立型のレトルトパウチ容器10は、積層プラスチックと金属のラミネートフィルム11により形成されている袋状の容器である。すなわち、この自立型のレトルトパウチ容器10は、図1に示すように、正面より見て、全体が略四角形を成すように形成され、それぞれの四辺は、内容物である食品が外部に漏れ出す等しないように塞がれた状態となっている。この食品としては、調理済みの食品である例えばベビーフード等が収容されるようになっている。そして、この自立型のレトルトパウチ容器10の低面部には、ベビーフードが収容される袋部12、自立部材13、13及び自立型のレトルトパウチ容器10の両側端部14、14が配置されている。このうち袋部12の図において底面の部分には、内側に向かって折り込み部が設けられており、この折り込み部を外方に向かって押し出すことにより、この袋部12が図において前後方向に広がり、自立に適するようになっている。」
「【0027】また、上記自立型のレトルトパウチ容器10の図1の上端部も他の3辺と同様に閉状態となっているため、ベビーフードの販売者は、この自立型のレトルトパウチ容器10内にベビーフードを収容して消費者に対して販売等することができる。そして、消費者が、この自立型のレトルトパウチ容器10内のベビーフードを乳幼児等に与えるときは、先ず、自立型のレトルトパウチ容器10を熱湯等に入れ加熱し、内部のベビーフードをも加熱することになる。そして、加熱後、この自立型のレトルトパウチ容器10内のベビーフードを、別の器に取り出すときは、図1に示すように、第1の切断部である開封部15を操作することになる。この開封部15は、図1に示すように、自立型のレトルトパウチ容器10の両側端部14、14に設けられた切り欠き部15a、15aと、これら両側端部14、14を結ぶように形成された案内部である切断線15bとを有している。この切断線15bは、具体的には、例えば図3に示すようになっている。すなわち、自立型のレトルトパウチ容器10の積層プラスチックと金属のラミネートフィルム11の一部を形成している、例えば二軸延伸ナイロンフィルム(図2参照)に図3に示す、「ハ」の字状のカットラインであるミシン目を配置することによって切断線15bが形成されている。この切断線15bの方向は、この二軸延伸ナイロンフィルムの延伸方向と合致しており、上記ミシン目は、図3に示すように直線的に配置されているため、このミシン目に沿って直線的に開封することができる。また、この他にも上記二軸延伸ナイロンフィルム層の延伸方向を引き裂く方向(切断方向)に合わせるように構成することによっても上記開封部15を直線的に開封することができる。」
「【0028】このように消費者が開封部15を操作し、開封することで自立型のレトルトパウチ容器10に開口が形成され、内容物であるベビーフードを別の器に移しかえることができる。
【0029】一方、消費者が別の器を準備できないときは、消費者は自立型のレトルトパウチ容器10を上述のように自立させた後、第2の切断部である食器用開封部16を操作することになる。この食器用開封部16は、上記開封部15と同様に自立型のレトルトパウチ容器10の両側端部14、14に設けられた切り欠き部16a、16aと、これら両側端部14、14を結ぶように形成された切断線16bとを有している。この切断線16bは、上記開封部15の切断線15bと同様に、例えば図3に示すように形成されている。また、この食器用開封部16は、上記開封部15より下方であって、且つ、この自立型のレトルトパウチ容器10を自立させた際に配置された上記ベビーフードの上端位置より上方に設けられている。すなわち、この自立型のレトルトパウチ容器10を自立させ、内容物であるベビーフードを下方に移動させた状態で、この食器用開封部16を切断しても、ベビーフードは外部にこぼれることがないような位置に、この食器用開封部16は配置されている。したがって、本実施の形態では、この食器用開封部16は、自立型のレトルトパウチ容器10の略中央部に、図において水平方向に設けられているが、これに限らず、自立型のレトルトパウチ容器10内に収容する食品の種類及び量等によって適宜決定されるものである。」
イ) 引用文献3に記載された技術的事項
上記ア)の記載事項から、引用文献3には、以下の技術的事項(以下「引3事項」という。)が記載されていると認められる。
「食品を収容する自立型のレトルトパウチ容器の上端部に設けられた、この食品を取り出すための第1の切断部と、
この第1の切断部の下方であって、かつ、上記レトルトパウチ食品容器を自立させた際に配置される上記食品の上端位置より上方に設けられた第2の切断部と、を有する食品包装容器。」
(3) 対比・判断
ア 対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明の「電子レンジ用スタンディングパウチ」、「開封口形成用切欠」、「第1端縁熱接着部」、「第2端縁熱接着部」、「底材」は、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮すると、それぞれ、本件補正発明の「パウチ」及び「電子レンジ用パウチ」、「開封手段」、「第1側部シール部」、「第2側部シール部」、「底面フィルム」に相当する。
また、引用発明の「スタンディングパウチ製袋機で積層体の内層の面を対向させて重ね合わせて胴部にし」ていることから、引用発明は、本件補正発明の「表面フィルムと、裏面フィルムと」を有したものといえる。
また、引用発明の「第2端縁熱接着部」及び「第1端縁熱接着部」は、その配置から見て、本件補正発明の「側部シール部」に相当する。
そうすると、引用発明の「層体からなる底材の内層を、前記胴部を形成する積層体の内層と対向するようにV字状に折り重ねて、前記胴部を形成する積層体の内層間に挿入し、その周縁部を所定形状の熱板で熱接着し」ている態様は、本件補正発明の「前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に位置する底面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムを接合する側部シール部と、を有し」た態様に相当し、「パウチ」が「底部ガセット部を有する」ことに相当する。
引用発明の「上部の端縁熱接着部から延びる幅広に構成された熱接着部」、「これに続く第2端縁熱接着部のシール幅が一定な部分」は、それぞれ、本件補正発明の「パウチの上縁から下方に向かって延び」る「第2部分」、「シール幅が一定であ」る「第1部分」に相当する。
引用発明の「前記小空間部の隅角部側に包装袋内の空気を抜く通気口を設け」、「前記小空間部を横断するように前記第1端縁熱接着部の周縁辺から通気口形成用切目が形成されると共に、前記通気口形成用切目一方の端部と前記第1端縁熱接着部の前記周縁辺との交点にV字形状の通気口形成用切欠が設けられ」る態様は、通気口がパウチ内の水蒸気をパウチの外へ通過させることは明らかなので、本件補正発明の「パウチ」が「蒸通機構を備え」る態様に相当する。
引用発明の「第1端縁熱接着部」と「第2端縁熱接着部」との配置態様は、その配置から見て、本件補正発明の「前記側部シール部は、前記蒸通機構に近い側の第1側部シール部と、前記蒸通機構から遠い側の第2側部シール部と、で構成され」た配置態様に相当する。
引用発明の「開封口形成用切欠は、通気口形成用切欠の位置より下部に位置している」態様は、本件補正発明の「前記第2部分において、前記蒸通機構と対向する位置より下方に開封手段が設けられ」た態様に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明とは、以下の構成において一致する。

「蒸通機構を備え、底部ガセット部を有するパウチであって、
表面フィルムと、裏面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に位置する底面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムを接合する側部シール部と、を有し、
前記側部シール部は、前記蒸通機構に近い側の第1側部シール部と、前記蒸通機構から遠い側の第2側部シール部と、で構成され、
前記第2側部シール部が第1部分と第2部分を含み、前記第1部分のシール幅が一定であり、前記第2部分はパウチの上縁から下方に向かって延びており、前記第2部分において、前記蒸通機構と対向する位置より下方に開封手段が設けられている、
電子レンジ用パウチ。」

そして、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。

<相違点1>
第2側部シール部の第1部分と第2部分について、本件補正発明は、「前記第2部分のシール幅が前記第1部分のシール幅より大きく」、「前記第2部分の上下方向の長さが前記第1部分の上下方向の長さより長く」と特定されているのに対して、引用発明は、そのように特定されておらず、引用文献1の図1でみると、上部の端縁熱接着部から延びる幅広に構成された熱接着部(第2部分)の上下方向の長さは、これに続く第2端縁熱接着部のシール幅が一定な部分(第1部分)の上下方向の長さより短い点。
<相違点2>
本件補正発明は、「前記第2側部シール部の前記第2部分のシール幅は、前記第1側部シール部の前記第2部分と対向する部分のシール幅より大きい」と特定されているのに対して、引用発明は、そのような特定はされていない点。
イ 判断
ア)上記相違点1について、以下に検討する。
a シール幅について
上記引2事項及び引3事項を参酌すると、食品が収容した自立型の容器において、食品を取り出すための開封手段(切目、切り欠き部)を、容器の一側縁に上下方向に2つ設けることは、本願出願前に周知の事項である。
そして、引用発明も内容物として食品を想定した(引用文献1【0001】、【0026】)自立型の容器(電子レンジ用スタンディングパウチ)であるから、上記周知の事項を採用し、引用発明の袋状に形成された電子レンジ用スタンディングパウチの開封口形成用切欠を上下方向の二つとすることは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に想到し得たことである。
さらに、引用文献1には、「【0033】ところで、前記熱接着部11を幅広に構成したのは、包装袋1Aを電子レンジで解凍や加熱等の調理をした場合に包装袋1Aが熱くなり手指で持ち難くなるのを防止するためである・・・」と記載されていることから、引用発明において、電子レンジ用スタンディングパウチの開封口形成用切欠を上下方向の二つとした際に、電子レンジ用スタンディングパウチの上部の端縁熱接着部から、手指で持つ対象となる、下側の開封口形成用切欠に至るまで、熱接着部を幅広に形成するものといえる。
そして、引用発明において、上記態様としたものは、自ずと、引用発明の「第2端縁熱接着部」が、本件補正発明の「前記第2部分のシール幅が前記第1部分のシール幅より大きく」された態様を備えるものとなるし、また、そのように構成することに格別の創意は要しない。
b シールの上下方向長さについて
下側の開封口形成用切欠を設ける位置については、スタンディングパウチ内の食品の内容量に応じて、適宜決め得るものであるから、引用発明において、上部の端縁熱接着部から延びる幅広に構成された熱接着部(第2部分)の上下方向の長さを、これに続く第2端縁熱接着部のシール幅が一定な部分(第1部分)の上下方向の長さより長くすることも、当業者が適宜なし得たことである。
c 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ) 次に、上記相違点2について、以下に検討する。
引用文献1には、「前記通気口形成用切欠10を設けた前記端縁熱接着部3を構成する辺と対向する辺の対向する位置に幅広に構成された熱接着部11が形成される」(【0032】)と記載される。
そうすると、上記相違点2は、実質的な相違点ではないか、仮に相違するとしても、上記引用文献1の記載(【0032】)に基づき、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 効果について
本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から予測し得る程度のものであり、当業者の予測を超える格別のものとは認められない。
(4) 結論
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年4月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 (1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」参照。)により特定されるとおりのものと認める。
2 引用文献
原査定の拒絶理由に引用された引用文献、その記載事項及び引用発明は、前記「第2 3 (2) 引用文献の記載事項、引用発明」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「第2側部シール部」の「第2部分のシール幅」について、「前記第1側部シール部の前記第2部分と対向する部分のシール幅より大きい」という限定を省いたものであり、本願発明と引用発明とは、上記相違点1で相違する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本件補正発明についての前記「第2 3 (3) 対比・判断」における検討を踏まえると、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-11-08 
結審通知日 2022-11-15 
審決日 2022-11-29 
出願番号 P2017-022235
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 山崎 勝司
藤井 眞吾
発明の名称 電子レンジ用パウチ  
代理人 藤枡 裕実  

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