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審決分類 審判 訂正 特123条1項8号訂正、訂正請求の適否 訂正しない G03B
審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正しない G03B
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない G03B
管理番号 1393728
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-12-16 
確定日 2022-11-25 
事件の表示 特許第3845446号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第3845446号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成17年8月11日の特許出願であって、平成18年8月25日にその特許権の設定登録がされたものである。
その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和3年12月16日 訂正審判の請求
令和4年 4月28日 手続補正書の提出
(書面上の日付は、令和4年4月26日。)
令和4年 7月29日付け 訂正拒絶理由通知書
(訂正拒絶理由通知書の発送の日は、令和4年8月3日。)
令和4年 8月 7日 意見書(以下「意見書1」という。)の提出
(書面上の提出日は、令和4年8月6日。)
令和4年 8月10日 意見書(以下「意見書2」という。)の提出
令和4年 8月21日 意見書(以下「意見書3」という。)の提出
令和4年 9月11日 意見書(以下「意見書4」という。)の提出
令和4年 9月15日 上申書(以下「上申書1」という。)の提出
(書面上の提出日は、令和4年9月14日。)
令和4年 9月17日 上申書(以下「上申書2」という。)の提出


第2 請求の趣旨および理由
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第3845446号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り、訂正することを求める。」というものであり、すなわち、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を下記訂正事項1および2のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるというものである。
なお、審判請求書の「4 請求の趣旨」にある「本件審判請求書請求」なる記載は、「本件審判請求書」の誤記と認める。

・訂正事項1
訂正事項1は、本件特許の請求項3(以下「本件発明3」という。)から、審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された請求項3(以下「訂正発明3」という。)に変更することを求めるものである。
なお、下線は、変更箇所を強調するために当審で付した。以下、同様。

本件発明3:「上記ディジタルカメラは上記撮影レンズをレンズ交換可能に構成され、該交換レンズとカメラ本体との間に、該カメラ本体の内部を密閉するための防塵板を取り付け、前記カメラ本体内の撮像素子表面に塵埃が付着しないように構成したことを特徴とする請求項1記載のディジタルカメラ。」

訂正発明3:「撮影レンズはレンズ交換可能に構成され、該交換レンズとカメラ本体との間に、該カメラ本体の内部を密閉するための防塵板を取り付け、前記カメラ本体内の撮像素子表面に塵埃が付着しないように構成したことを特徴とするディジタルカメラ。」

・訂正事項2
訂正事項2は、本件特許の請求項4(以下「本件発明4」という。)から、審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された請求項4(以下「訂正発明4」という。)に変更することを求めるものである。なお、下線は当審で付した。

本件発明4:「上記ディジタルカメラの本体側壁に外部と連通する通気孔を形成すると共に、前記カメラ本体の通気孔と対応する内側箇所に、可撓性仕切部材を前記カメラ本体の内外の圧力差が作用するように設け、該可撓性仕切部材の撓み変形により前記圧力差が緩和されるように構成したことを特徴とする請求項1記載のディジタルカメラ。」

訂正発明4:「上記ディジタルカメラの本体側壁に外部と連通する通気孔を形成すると共に、前記カメラ本体の通気孔と対応する内側箇所に、可撓性仕切部材を前記カメラ本体の内外の圧力差が作用するように設け、該可撓性仕切部材の撓み変形により前記圧力差が緩和されるように構成したことを特徴とする請求項3記載のディジタルカメラ。」


第3 当審の判断
1 訂正の目的について
(1)訂正事項1の「訂正の目的」の適否について
訂正事項1に係る訂正は、本件発明3を訂正発明3に訂正するものであり、以下の2つの訂正事項(訂正事項1−1および訂正事項1−2)を含むものである。

・訂正事項1−1:
本件発明3の「上記ディジタルカメラは上記撮影レンズを」を、訂正発明3の「撮影レンズは」とする訂正。

・訂正事項1−2:
本件発明3が請求項1を引用するものであったところ、訂正発明3では、請求項1の引用を取り止める訂正。

そして、本件発明3は、請求項1を引用しており、構成として請求項1に記載の全ての構成を備えるものである。なお、本件特許の請求項1(以下「本件発明1」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
撮像素子に結像される画像を電子ディスプレイによって視認しつつ、パースペクティブコントロールを行って撮影するディジタルカメラであって、
前記撮像素子を搭載した撮影基板は、カメラのボディーフレームの前面又は後面に板バネ等の押圧付勢部材で押圧され、かつ、撮影レンズの光軸と垂直方向となる縦方向及び横方向に各別に位置調整可能に設けられ、
前記撮影レンズによる投影像が前記撮像素子上に結像するように前記撮影基板を位置調整することにより、撮影前に前記電子ディスプレイによってパースペクティブ状態を視認調節できるように構成したディジタルカメラに於いて、
上記撮像素子を搭載した撮影基板は、該撮影基板の上方左右端近傍に上下方向に第一のラックが固定され、該第一のラックには、カメラ本体側に支持された横方向に延びる第一のピニオンの両端側部分が噛合し、かつ、前記撮影基板の上方端部近傍には、第二のラックが横方向に固定され、該ラックにはカメラ本体に支持された上下方向に延びる第二のピニオンが噛合して、前記カメラボディーフレームに設けられてなることを特徴とするディジタルカメラ。」

そうすると、本件発明3は、「請求項1記載のディジタルカメラ」であるから、請求項1に記載した全ての構成を備えるものである。しかし、訂正発明3は、訂正事項1−2によって「請求項1記載のディジタルカメラ」を「ディジタルカメラ」と訂正することで、本件発明1に記載した全ての構成を備えないものとするものである。また、訂正発明3は、他に訂正事項1−1によっても訂正されているが、訂正事項1−1は、本件発明1の構成を備えるものとする訂正ではない。さらに、本件訂正の訂正事項1および2を総合的に勘案しても、訂正発明3は、本件発明1の全ての構成を含むものとは認められない。したがって、訂正事項1に係る訂正によって、訂正発明3が、本件発明3の全ての構成を備えるものとなっているとは認められない。
よって、訂正事項1による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当しない。

また、訂正事項1は、本件発明3において直列的に発明を特定する事項(請求項1に記載された構成)を削除して訂正発明3とするものであるから、特許請求の範囲を減縮するものでない。よって、訂正事項1は、同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当しない。
そして、訂正事項1が同第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」および同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当しないことは、明らかである。

以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。

(2)訂正事項2の「訂正の目的」の適否について
訂正事項2に係る訂正は、本件発明4を訂正発明4に訂正するものである。
本件発明4は、「請求項1記載のディジタルカメラ」であるから、請求項1に記載した全ての構成を備えるものである。しかし、訂正発明4は、「請求項3記載のディジタルカメラ」であるから、訂正発明3(訂正された請求項3)を引用するものであり、また、当該訂正発明3は、上記(1)のとおり、請求項1の全ての構成を含むものとは認められない。したがって、訂正事項2に係る訂正によって、訂正発明4が、本件発明4の全ての構成を備えるものとなっているとは認められない。
よって、訂正事項2による訂正は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当しない。

また、訂正事項2は、本件発明4において直列的に発明を特定する事項(請求項1に記載された構成)を削除して、訂正発明4とするものであるから、特許請求の範囲を減縮するものでない。よって、訂正事項2は、同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当しない。
そして、訂正事項2が同第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」および同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正に該当しないことは、明らかである。

以上のとおり、訂正事項2に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。

2 特許請求の範囲の拡張または変更について
本件訂正の訂正事項1および2に係る訂正発明3および4への訂正は、上記1で述べたとおり、本件発明3および4に係る発明から本件発明1の全ての構成を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。したがって、訂正事項1および2は、特許法第126条第6項の規定に違反するものである。

3 請求人の主張について
(1)意見書および上申書による主張の整理
請求人は、意見書1ないし3を提出して種々意見を主張している。また、請求人は、上申書1および2を提出して、訂正発明3による特許請求の範囲に係る発明が、本件特許に係る出願において、当初より、要約、明細書及び図面に記載されていたものであり、かつ、新規性のあるものであるから、本件審判における訂正は認められるべきであるとの趣旨の主張を行うものである。
これらの主張を考慮すると、意見書1ないし3による請求人の主張の基礎となる条文は、以下のアないしウの3つであると認められる。また、意見書1ないし3における主張のそれぞれを摘記して示す。

なお、請求人は、意見書4を提出して、訂正発明3による特許請求の範囲は、本件発明3の特許請求の範囲を拡張せず、実質的に減少する旨を主張しているが、意見書4は、令和4年9月11日付けで提出されているものであり、提出の期限(対応する訂正拒絶理由通知書の発送の日は、令和4年8月3日であり、意見書等の提出の期限は、発送の日から30日以内である。)を過ぎて提出したものであるから、当審は、意見書4の主張について、検討の対象としない。

ア 特許法第126条第6項に係る主張
・意見書1の(3)および意見書2の(3) 「従って、『特許法第126条第6項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。』には違反していないと思います。」
・意見書3の第3ページ第2行から第3行まで 「請求項3は、訂正以前でも、又は、訂正以後でも、作用効果は不変です。」

イ 同条第7項に係る主張
・意見書1の(3)および意見書2の(3) 「特許第3845446号において、引用された特許文献の中において、独立して、特許を受けられることを確信しています。」

ウ 同条第1項ただし書第4号に係る主張
・意見書3の第2ページ第5行から第9行まで 「本願は、要旨は元より、明細書及び図面も別々に記載していますので 訂正請求後の請求項3は、『請求項1(他の請求項の記載)を、引用する請求項を、当該他の請求項の記載を引用しないようにすること』に、合致していると思います。」

(2)上記アの主張について
まず、特許法第126条第6項は、願書に添付した「明細書」、「特許請求の範囲」または「図面」を訂正する際の規定であり、これらを訂正することによって、実質上「特許請求の範囲」を拡張し、または変更してはならないことを規定するものである。

一方で、請求人は、意見書1の(1)において、本件特許に係る出願の特許公開公報(特開2007−47596号公報)に記載された「【要約】」の欄を挙げており、意見書1の(2)および(3)において、本件特許に係る出願の図3および4を挙げている。
しかし、「【要約】」の欄は、特許請求の範囲を考慮する際に参酌する欄ではなく、また、同項の規定に関係するものでもない。
そして、請求人が意見書1の(2)および(3)で挙げた箇所は、本件特許に係る願書に添付した図3および4であり、訂正発明3および4に記載された防塵板および撮影レンズに係る図面である。これらの構成は、本件発明1に記載された構成について説明したものではないから、訂正発明3または4が本件発明1の構成を備えない場合にも、訂正発明3および4が、本件発明3および4を拡張または変更するものでないことについて、説明するものではない。
また、意見書2に記載された上記アに関する主張も同様である。

さらに、請求人は、意見書3において、「請求項3は、訂正以前でも、又は、訂正以後でも、作用効果は不変です。」と記載しているが、その根拠については、なんら記載されていないから、本件発明1に記載した全ての構成を備えないものとすることが、本件発明3と訂正発明3とで作用効果が不変であるとはいえない。

したがって、本件訂正は、意見書1ないし3に記載された上記1のアに係る主張を採用することはできず、上記2で検討したとおり、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。よって、本件訂正は、依然として特許法第126条第6項の規定に違反するものである。

(3)上記イの主張について
まず、特許法第126条第7項は、同条第1項ただし書第1号または第2号に掲げる事項を目的とする訂正について、その訂正にさらに追加の制限を課す規定であるところ、請求人は、本件訂正に係る各訂正事項が、これらの各号(特許法第126条第1項ただし書第1号または第2号)に掲げる事項を目的とするものとは主張していない。
そして、上記「第3」の1のとおり、本件訂正に係る各訂正事項は、これらの各号に掲げる事項を目的とするものとも認められないから、本件補正は、同条第7項について判断を要するものでもない。
したがって、請求人の上記イの主張は、失当である。

(4)上記ウの主張について
請求人は意見書3において、「本願は、要旨は元より、明細書及び図面も別々に記載しています」と述べることにより、訂正発明3に本件発明1に係る全ての構成を記載しなくても実質的に訂正発明3が本件発明1に係る全ての構成を記載したものといえる旨の意見を主張するものである。しかし、当該主張を勘案しても、上記1(1)のとおり、訂正事項1に係る訂正によって、訂正発明3が、本件発明3の全ての構成を備えるものとなっているとは認められない。
したがって、意見書3に記載された上記(1)のウに係る主張を採用することはできず、本件訂正は、依然として上記1で検討したとおり、特許法第126条第1項ただし書第4号として掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当しない。

(5)まとめ
上記(2)ないし(4)のとおりであるから、本件訂正は、意見書1ないし3に記載された主張を勘案しても、依然として上記1および2のとおり、特許法第126条第6項の規定に違反するものであり、同条第1項ただし書第4号として掲げる事項に該当しないものである。


第4 むすび
本件訂正審判の請求は、その訂正が、上記「第3」の1のとおり、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。
また、本件訂正審判の請求は、その訂正が、上記「第3」の2のとおり、実質上特許請求の範囲を拡張するものであるから、同条第6項の規定に違反するものである。

したがって、特許第3845446号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認めることはできない。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-10-04 
結審通知日 2022-10-07 
審決日 2022-10-19 
出願番号 P2005-233514
審決分類 P 1 41・ 831- Z (G03B)
P 1 41・ 857- Z (G03B)
P 1 41・ 854- Z (G03B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 五十嵐 努
特許庁審判官 木方 庸輔
渡辺 努
登録日 2006-08-25 
登録番号 3845446
発明の名称 ディジタルカメラ  

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