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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1393750
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-14 
確定日 2023-01-18 
事件の表示 特願2020−324号「統合制御装置を備える植込み可能な血液ポンプ」拒絶査定不服審判事件〔令和2年4月16日出願公開、特開2020−58861号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)5月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年6月18日 米国(US))を国際出願日とする特願2016−576097号の一部を、平成30年6月6日に新たな特許出願とした特願2018−108269号の一部を、さらに令和2年1月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 2年 2月 4日提出:手続補正書
令和 3年 1月 6日付け:拒絶理由通知
令和 3年 4月 8日提出:意見書
令和 3年 9月10日付け:拒絶査定
令和 4年 1月14日提出:審判請求書及び手続補正書

第2 令和4年1月14日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和4年1月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示す。)。

「植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記経皮ケーブルは、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合されたリード線を含み、前記リード線は、動作中に、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動している2本のリード線のみを含み、追加的なリード線は、動作中に、電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動しない、経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の令和2年2月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記経皮ケーブルは、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合されたリード線を含み、前記リード線は、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供するように適合された2本のリード線を含み、電力を提供するように適合された追加的なリード線を含まない、経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。」

2 補正の適否
本件補正は、電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルに含まれるリード線について、本件補正前は「前記リード線は、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供するように適合された2本のリード線を含み、電力を提供するように適合された追加的なリード線を含まない」とされていたのを、「前記リード線は、動作中に、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動している2本のリード線のみを含み、追加的なリード線は、動作中に、電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動しない」と補正するものである。
本件補正後においては、「動作中に、電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動しない」追加的なリード線が存在することになるが、審判請求書において補正の根拠とされた段落【0023】及び【0026】の記載及び対応する図4及び7の記載を参照しても、動作中に、電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動しない追加的なリード線の存在を示唆する記載はない。また、本件補正前の請求項7には、「電力を提供するように適合された追加的なリード線を含まない」と記載されており、この記載からも、動作中に、電力を提供し、且つ前記情報及び/又は制御信号を提供するように作動しない追加的なリード線の存在を導き出すことはできない。
よって、本件補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてされたものとは認められない。
また、本件補正は、補正前において、追加的リード線が存在しないとされていたものを、存在するとするものであり、相互に異なる内容に補正するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」や「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものではないし、「請求項の削除」や「誤記の訂正」を目的とするものでもない。

3 小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び同条第5項の規定に違反してなされたものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜15に係る発明は、令和2年2月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1(2)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、拒絶の理由として、概略、次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許出願公開第2007/0142696号明細書

第4 引用文献1の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、次の記載がある
(1)「[0001] The present invention relates to improvements to active implantable medical devices. An active implantable medical device may generally include a power source (e.g. a battery), control means (e.g. an electronic circuit) and a means providing the therapeutic action (e.g. an electrode or mechanical pump).」
(訳:本発明は、能動型埋め込み医療装置の改良に関する。能動型埋め込み医療装置は、通常、電源(例えば、バッテリ)、制御手段(例えば電子回路)および治療作用(例えば、電極、又は機械式ポンプ)を提供するための手段を含むことができる。)

(2)「[0021] In a first preferred embodiment of the present invention, as depicted in FIG. 1, an active implantable medical device 16 is shown. In this embodiment, the active implantable medical device 16 includes rotary blood pump 5 comprising: a DC brushless motor comprising stator coils 7 mounted on opposed sides of an impeller 11. The impeller 11 includes permanent encapsulated magnets (not shown) which interact and cooperate with the stator coils 7, when sequentially energised. Preferably, the stator coils are energised in a manner to facilitate the imparting of a magnetic torque force on the impeller 11 to encourage the impeller 11 to rotate within a cavity of a housing 1. The impeller 11 preferably includes four blades 9 connected by struts 10. The blades 9 preferably include a hydrodynamic bearing surface on the upper and lower surfaces of the blades 9 , which provide a means for hydrodynamic suspension when the impeller 11 is rotating at a sufficient speed.」
(訳:本発明の第1の好ましい実施形態では、図1に示すように、能動型埋め込み医療装置16が示されている。この実施形態では、能動型埋め込み医療装置16は、インペラ11の反対側に装着されたステータコイル7からなるDCブラシレスモーター回転血液ポンプ5を含む。インペラ11は、順次電圧を印加された時にステータコイル7と相互作用および協働する永久的に封止した磁石(図示せず)を含む。好ましくは、ステータコイル7は、インペラ11をハウジング1のキャビティ内でのインペラ11の回転を助長するために、インペラ11上に磁気トルク力の付与するように励起される。インペラ11は、好ましくはストラット10によって接続された4枚のブレード9を有する。ブレード9は、好ましくはインペラ11が十分な速度で回転しているとき、流体力学的サスペンションを提供するブレード9の上部面及び下部面に流体動圧軸受面を有する。)

(3)「[0026] The hermetically sealed housing 1 preferably encapsulates the therapeutic device portions, the rechargeable battery 3, and the controller 12. This encapsulation allows all of the implanted components of the blood pump 5 to be positioned and mounted within the single housing 1. This significantly reduces the surface area required by the entire active implantable medical device 16 by concentrating the volume of the active implantable medical device 16 in one area. Additionally, the implantation of the active implantable medical device 16 with a patient may be significantly easier and quicker for the clinician as there are fewer objects being implanted. A further advantage may be that having only a single housing 1 reduces the risk of infection, as the risk of infection is generally proportional to the surface area of the active implantable medical device 16 .」
(訳:気密封止されたハウジング1は、好ましくは、治療用装置、充電池3及びコントローラ12を封止する。この封止により、血液ポンプ5の埋め込み型構成要素の全ては、単一のハウジング1内に配置され、取り付けられる。これは、1つのエリア内の能動型埋め込み医療装置16の容積を圧縮することによって全能動型埋め込み医療装置16によって必要とされる面積を著しく減少させる。さらに、患者の能動型埋め込み医療装置16の移植は、移植されるオブジェクトがより少数であるため、臨床医にとって、より容易かつ迅速に行われる。更なる利点は、単一のハウジング1は、感染の危険性は、一般に、能動型埋め込み医療装置16の表面積に比例するので、感染の危険性を減少させる。)

(4)「[0028] Preferably, the controller 12 receives instructions, data and power via a percutaneous lead 2 which exits the patient and electrically connects to an external power source (not shown in FIG. 1 ) or external controller (not shown in FIG. 1 ). The controller 12 also includes a commutator circuit and sequentially energises the stators 7 to produce the rotational torque drive force on the impeller 11 in accordance with a speed signal derived by the controller 12. The controller 12 also is electrically connected to the rechargeable battery 3. The controller 12 uses the rechargeable battery 3 as a means for storing an electrical charge so that if the percutaneous lead 2 is disconnected the pump may continue to operate. Preferably, the rechargeable battery 3 is charged when the percutaneous lead 2 is connected to an external power source.」
(訳:好ましくは、コントローラ12は、患者から出る経皮リード線2を介して命令、データ及び電力を受け取り、外部電源(図1には図示せず)または外部コントローラ(図1には図示せず)に電気的に接続する。コントローラ12は、また、整流回路を含み、ステータ7は、コントローラ12によって導出された速度信号に応じてインペラ11に回転駆動力を発生するように作動する。コントローラ12は、また、充電池3に電気的に接続される。コントローラ12は、充電池3を経皮リード線2が断線している場合にポンプが作動し続けることができる充電池3を充電するための手段として使用する。好ましくは、充電池3は、経皮リード線2が外部電源に接続されているときに充電池3を充電する。)

(5)「[0031] A second preferred embodiment, similar to first preferred embodiment, is depicted in FIG. 2. In the second preferred embodiment, the rotary blood pump 5 is driven by a commutator 4 which receives a drive signal from the pump controller 12.
[0032] Preferably in the second embodiment, the pump controller 12 may be able to selectively switch between the two power sources depending on the circumstances and the power requirements of the active implantable medical device 16.
[0033] Additionally in the second preferred embodiment, the commutator circuit 4 is shown as a separate component within the hermetically sealed housing 1. The commutator circuit 4 in this embodiment is also maintained and controlled by the pump controller 12 .」
(訳:第1の好ましい実施形態に類似した、第2の好ましい実施形態を図2に示す。第2の好ましい実施形態において、回転血液ポンプ5は、ポンプコントローラ12から駆動信号を受信する整流回路4によって駆動される。
好ましくは、第2の実施態様では、ポンプコントローラ12は、能動型埋め込み医療装置16の電力要求と状況に応じて2つの電源を選択的に切り換えることができる。
また、第2の好ましい実施形態において、整流回路4は、密閉ハウジング1内で別の構成要素として示されている。本実施の形態でもまた、整流回路4は、ポンプコントローラ12によって維持および制御される。)

(6)「[0034] FIG. 2 also depicts diagrammatically the manner by which the percutaneous lead 2 exits the skin layer 17 of the patient and connects to an external power supply 13. Preferably, the active implantable medical device 16 is also electrically connected to the external controller and/or data manager 14 (herein referred to as ECDM 14). The ECDM 14 may serve as a backup controller in situations where the pump controller 12 fails. Additionally, the ECDM 14 may manage and store relevant patient or active implantable medical device 16 data. The data may be received from the pump controller 12 through the percutaneous lead 2. Preferably, the ECDM 14 maybe a personal computer or laptop computer running software designed specifically for the purpose of an active implantable medical device control and/or an active implantable medical device data management.」
(訳:図2は、また、患者の皮膚層17を出て、外部電源13に接続する経皮リード線2の態様を概略的に示している。好ましくは、能動型埋め込み医療装置16は、外部制御及び/又はデータ管理部14(本明細書ではECDM14とする)に電気的に接続される。ECDM14は、ポンプコントローラ12が故障した場合、バックアップ・コントローラとして機能することができる。また、ECDM14は、関連の患者または能動型埋め込み医療装置16データを管理及び格納することができる。データは、経皮的リード2を介してポンプコントローラ12から受信することができる。好ましくは、ECDM14は、能動型埋め込み医療装置の制御及び/又は管理のために特別に設計されたソフトウェアで作動されるパーソナルコンピュータ又はラップトップコンピュータであってよい。)

(7)「[0037] The external power supply 13 maybe a mains power connection which is rectified to provide the required power for the active implantable medical device 16 and/or it may also be rechargeable or long life batteries.」
(訳:外部電源13は、能動型埋め込み医療装置16に必要な電力を供給するために整流された主電源であってもよいし、及び/又は充電池または長寿命電池であってもよい。)

(8)「



(9)「



(10)上記(1),(2)の下線部の記載及び(8)の図面の記載からすれば、引用文献1には「機械式ポンプを含む能動型埋め込み医療装置16」が記載されている。

(11)上記(2),(3)の下線部の記載及び(8)の図面の記載からすれば、引用文献1には「DCブラシレスモーター、ストラット10によって接続された4枚のブレード9を有する回転するインペラ11、及びステータコイル7をその中に配置する単一のハウジング1」が記載されている。

(12)上記(3),(4),(5)の下線部の記載及び(9)の図面の記載からすれば、引用文献1には「単一のハウジング1内に配置され、インペラ11に回転駆動力を発生させるステータ7に連結されたコントローラ12及び回転血液ポンプ5を駆動する整流回路4」が記載されている。

(13)上記(4),(6),(7)の下線部の記載及び(9)の図面の記載からすれば、引用文献1には「コントローラ12に接続された経皮リード線2であって、前記経皮リード線2は能動型埋め込み医療装置16に電力を供給し、コントローラ12とECDM14との間でデータをやりとりする経皮リード線2」が記載されている。

2 引用発明
上記1の(10)〜(13)の認定によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「機械式ポンプを含む能動型埋め込み医療装置16であって、
DCブラシレスモーター、ストラット10によって接続された4枚のブレード9を有する回転するインペラ11、及びステータコイル7をその中に配置する単一のハウジング1と、
単一のハウジング1内に配置され、インペラ11に回転駆動力を発生させるステータコイル7に連結されたコントローラ12及び回転血液ポンプ5を駆動させる整流回路4と、
コントローラ12に接続された経皮リード線2であって、前記経皮リード線2は能動型埋め込み医療装置16に電力を供給し、コントローラ12とECDM14との間でデータをやりとりする経皮リード線2と
を備える、能動型埋め込み医療装置16。」

第5 対比・判断
1 対比
(1)引用発明の「機械式ポンプを含む能動型埋め込み医療装置16」は、機能及び構造上、本願発明の「植込み可能なポンプ装置」に相当する。

(2)引用発明の「DCブラシレスモーター」、「ステータコイル7」及び「単一のハウジング1」は、機能及び構造上、本願発明の「ポンプ・モータ」、「モータ巻線」及び「植込み可能なポンプ本体」に相当する。
また、引用発明の「4枚のブレード9を有する回転するインペラ11」は、本願発明の「インペラ」に相当し、当該インペラ11は、回転駆動させられるものであるから、ロータとしての構成を備えているものと認められる。
よって、引用発明の「DCブラシレスモーター、ストラット10によって接続された4枚のブレード9を有する回転するインペラ11、及びステータコイルをその中に配置する単一のハウジング1」は、本願発明の「ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体」に相当する。

(3)引用発明の「インペラ11に回転駆動力を発生させるステータコイル7に連結されたコントローラ12」は、機能及び構造上、本願発明の「ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成」に相当し、引用発明の「回転血液ポンプ5を駆動させる整流回路4」は、上記第4の1(5)を参照すると、コントローラ12からの駆動信号を受信し回転血液ポンプ5を駆動するものであるから、本願発明の「ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成」に相当する。
そして、引用発明の「コントローラ12」と「整流回路4」とを合わせたものは、本願発明の「電力及び制御装置モジュール」に相当する。
よって、引用発明の「単一のハウジング1内に配置され、インペラ11に回転駆動力を発生させるステータ7に連結されたコントローラ12及び回転血液ポンプ5を駆動させる整流回路4」は、本願発明の「ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、ポンプ・モータを動作させるためのモータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュール」に相当する。

(4)引用発明の「経皮リード線2」及び「ECDM14」は、機能及び構造上、本願発明の「経皮ケーブル」及び「体外モニタ」に相当し、経皮リード線2がリード線を含むことは自明のことである。
また、引用発明の「コントローラ12」は、上記(3)のとおり、本願発明の「電力及び制御装置モジュール」の一部である。
よって、引用発明の「コントローラ12に接続された経皮リード線2であって、前記経皮リード線2は能動型埋め込み医療装置16に電力を供給し、コントローラ12とECDM14との間でデータをやりとりする経皮リード線2」は、本願発明の「前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記経皮ケーブルは、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合されたリード線を含」む「経皮ケーブル」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明は次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
植込み可能なポンプ装置であって、
ポンプ・モータ、ロータ、インペラ、及びモータ巻線を取り囲んでいる植込み可能なポンプ本体と、
前記ポンプ本体の中に取り囲まれている電力及び制御装置モジュールであって、前記ポンプ・モータを動作させるための前記モータ巻線に連結された第1の電力電子機器回路構成、及び前記ポンプ・モータを制御するように適合された第1の制御回路構成を含む電力及び制御装置モジュールと、
前記電力及び制御装置モジュールに連結された経皮ケーブルであって、前記経皮ケーブルは、前記植込み可能なポンプ装置に電力を提供し、前記電力及び制御装置モジュールと体外モニタとの間で情報及び/又は制御信号をやりとりするように適合されたリード線を含む、経皮ケーブルと
を備える、植込み可能なポンプ装置。

【相違点】
本願発明では、経皮ケーブルに含まれるリード線が、植込み可能なポンプ装置に電力を提供するように適合された2本のリード線を含み、電力を提供するように適合された追加的なリード線を含まないのに対して、引用発明では、経皮リード線2に含まれるリード線について記載されていない点。

2 判断
(1)相違点について
上記相違点について検討する。
引用文献1には、経皮リード線2が接続された外部電源13はバッテリ又は整流された主電源であり(第4の1(7)参照。)、また、当該外部電源13から供給された電力が充電池3の充電及びポンプのDCブラシレスモーターの駆動に用いられること(第4の1(2)(4)参照。)が記載されているから、引用発明の当該経皮リード線2から供給する電流は直流電流であるものと認められる。
そして、格別の必要性がなければ直流電流の供給には2本のリード線が用いられることが技術常識であるから、引用発明の経皮リード線2に含まれるリード線に電力を提供するように適合された2本のリード線を用い、電力を提供するように適合された追加的なリード線を含まないようにすることは、当業者であれば通常採用する態様にすぎない。

なお、請求人は令和3年4月8日付け意見書において、「本願明細書の〔0004〕段等にも記載されるように、引用文献1に開示されるような従来の血液ポンプは、三相電気モータによって駆動され、ポンプモータの三相に対応する少なくとも3本のリード線(ワイヤ)が、ポンプの外側の電力電子機器及びポンプの内側のモータ巻線を接続するために、経皮ケーブルの中で使用されます。従って、当業者が、引用文献1に基づいて、上記(1)に示す本願発明1、7の特徴的な構成のように設計変更することはありません。」(1頁下から6〜1行)と主張しているが、上記のとおり引用発明は経皮リード線2から直流電流を供給しているのであるから、2本のリード線を用いているものと認められ、上記請求人の主張は失当である。

(2)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明から予測され得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 佐々木 正章
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-08-19 
結審通知日 2022-08-23 
審決日 2022-09-07 
出願番号 P2020-000324
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 井上 哲男
倉橋 紀夫
発明の名称 統合制御装置を備える植込み可能な血液ポンプ  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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