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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E05B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E05B |
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管理番号 | 1393799 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-02-22 |
確定日 | 2023-01-12 |
事件の表示 | 特願2017−240898「電気錠制御システム、表示方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月4日出願公開、特開2019−108683〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年12月15日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 6月22日付け:拒絶理由通知書 同年 8月30日 :意見書、手続補正書の提出 同年11月17日付け:拒絶査定(同年同月24日発送) 令和4年 2月22日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和4年2月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和4年2月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正の後における特許請求の範囲の請求項1の記載及び本件補正の前における特許請求の範囲の請求項1、7の記載は、次のとおりである。(下線部は、補正箇所である。)。 (1)本件補正後 「【請求項1】 建物の開口部を開閉する開閉部材を施錠又は解錠する電気錠を制御する錠制御情報を出力する第1出力部と、 前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報、及び当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報を出力する第2出力部と、 前記電気錠の状態に関する情報、前記電気錠の制御に関する情報、前記機器の状態に関する情報、及び前記機器の制御に関する情報のうち少なくとも1つを、提示する提示部と、を備え、 前記提示部は、前記電気錠を制御するための情報端末が有する表示部を含む 電気錠制御システム。」 (2)本件補正前 「【請求項1】 建物の開口部を開閉する開閉部材を施錠又は解錠する電気錠を制御する錠制御情報を出力する第1出力部と、 前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報、及び当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報を出力する第2出力部と、を備える 電気錠制御システム。」 「【請求項7】 前記電気錠の状態に関する情報、前記電気錠の制御に関する情報、前記機器の状態に関する情報、及び前記機器の制御に関する情報のうち少なくとも1つを、提示する提示部を、更に備える 請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気錠制御システム。」 2 補正目的 本件補正は、本件補正前の請求項1を、同請求項を引用する請求項7に記載された「提示部」について、「前記提示部は、前記電気錠を制御するための情報端末が有する表示部を含む」ことを特定して限定するものである。そのため、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした補正を含む。 3 独立特許要件 上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした補正を含むものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)は、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合すること(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであること)を要する。 以下、本件補正発明の独立特許要件を検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2007−235230号公報(平成19年9月13日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)。 a 「【技術分野】 【0001】 本発明はインターホン装置に関し、詳しくは無線受信機能を備えて外部から無線制御可能なインターホン装置に関する。 ・・・ 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、無線受信手段を玄関に設置することで、室内に入ることなく玄関において電気機器の制御が可能となり、制御したい電気機器まで赴いてリモコンを操作する必要が無くなる。」 b 「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るインターホン装置の一例を示す構成図である。図1において、1は玄関に設置されて居住者を呼び出すためのカメラ付玄関子機、2は住戸内に設置されて呼び出しに応答するためのモニタ付居室親機、3は持ち運びができ居室親機2に電気機器10の制御信号を無線送信する携帯端末、4は携帯端末3の発する制御信号を受信する受信機(無線受信手段)、5は居室親機2により制御可能な電気錠6を備えた玄関扉、7は電気機器10を制御するための赤外線信号を出力する送信手段(第1送信手段7a,第2送信手段7b)である。 尚、制御対象の2台の電気機器10(10a、10b)は、エアコン、照明、更には浴室の給湯器等の赤外線リモコン操作が可能な機器であり、ここでは一方の電気機器10aを居室Aのエアコン、他方の電気機器10bを居室Bのエアコンとして示している。 【0014】 玄関子機1、受信機4は夫々伝送線L1,L2を介して居室親機2に接続され、電気錠6、送信手段7は居室親機2の制御端子(図示せず)に制御線L3,L4を介して接続されている。受信機4は、携帯端末3から送信される赤外線信号を受信する赤外線受光部(赤外線ポート)4aを備え、玄関に設置された玄関子機1の近くに設置され、玄関先において携帯端末3が出力する赤外線信号を受信可能となっている。 【0015】 携帯端末3は、図2の回路ブロック図に示すように構成されている。但し、携帯電話機能を有した構成を示している。図2において、12は公衆電話網に接続するための無線送受信部、13は赤外線LEDを備えて赤外線信号による送受信を行う赤外線送受信部、14はプログラムや設定情報を記憶する端末メモリ、15はマイク及びスピーカを備えた通話部、16は設定情報や受信情報を表示する表示部、17は携帯端末3を制御する端末制御手段である端末CPU、18はテンキー等から成る操作部である。そして、端末メモリ14には、居室親機2が受信可能な電気機器制御信号を生成するプログラム、生成した赤外線信号を送信するためのプロトコルが記憶されている。 【0016】 電気機器10を制御する赤外線制御信号は、例えばインターネットを利用して電気機器メーカーのWEBサイトにアクセスして入手することができ、入手した赤外線制御信号情報を基に予め記憶しているプログラムにより必要な情報を加えて電気機器制御信号を生成する。そして、電気機器制御信号の送信は、赤外線通信プロトコル(例えば、IrDAプロトコル)に従い送信される。 受信機4は、送信された電気機器制御信号を赤外線受光部4aで受信し、電気信号に変換して居室親機2に伝送する。 【0017】 図3は居室親機2の回路ブロック図を示している。19は玄関子機伝送線L1、受信機伝送線L2を接続する第1IF(インターフェイス)、20は電気錠制御線L3、2本の送信手段制御線L4を接続する第2IF(インターフェイス)、21は玄関子機1から伝送されてきたカメラ撮像信号を復調する復調回路、22はカメラ撮像映像を出画するモニタ、23は各種設定操作をする操作部、24は各種設定を記憶したり送信された電気機器制御信号情報を記憶する親機メモリ、25は玄関子機1との通話を制御する通話部、26はマイク、27はスピーカ、28は受信機4と同様の機能を有する受光部、29は居室親機2を制御すると共に送信制御手段でもある親機CPUである。」 c 「【0018】 以下、このインターホン装置の動作を説明する。但し、玄関子機1からの呼び出し、及びそれに応じて居室親機2との間の通話は従来と同様であり、本発明の要部ではないので省略し、携帯端末3の操作による居室親機2の制御動作を説明する。 【0019】 先ず、操作対象の電気機器10毎(制御端子に接続された制御線L4毎)にIDを設定し、携帯端末3及び居室親機2に記憶させる。そして、携帯端末3を操作して、操作したい電気機器10のリモコン操作情報(赤外線リモコンの操作信号情報)を入手する。この情報の入手は、インターネットを利用して入手することができるし、赤外線送受信部13から直接リモコンの赤外線信号を入手することも可能である。 入手した情報は、内蔵されているプログラムにより、設定された電気機器毎のID情報等がヘッダーとして自動的に付加されて電気機器制御信号として記憶される。 【0020】 こうして電気機器制御信号が記憶された携帯端末3を、玄関に設置された受信機4に近づけて送出操作することで、受信機4はその赤外線信号を受信して居室親機2に電気信号に変換して伝送する。このとき、複数の電気機器10を制御する場合は1回の操作でシリアルに制御信号が送出される。 居室親機2の親機CPU29は、伝送されてきた信号からIDを読み取り、設定されたID情報に従って信号の送出先を選択する。そして、伝送されてきた電気機器制御信号からリモコン信号を取り出して、選択した電気機器10を制御する制御線L4に出力する。この信号により制御線L4の先に設けられた送信手段7の赤外線LEDが点滅動作して赤外線信号を送出し、この信号を電気機器10の赤外線受光部が検知することで、リモコン操作と同様に受信信号内容に従い制御動作を開始する。 【0021】 また、屋内に入ってからも居室親機2に設けられた受光部28を利用して携帯端末3により電気機器10を制御できる。受光部28が受信した赤外線信号から成る電気機器制御信号は、上記同様に親機CPU29でIDが読み取られ、選択された送信手段7がリモコン信号を発して電気機器10が制御される。 【0022】 尚、携帯端末3が送信する信号は、電気機器制御信号とシリアルに電気錠解錠信号を送出可能となっている。この信号を受けた居室親機2は、電気錠6に対して解錠信号を送出し、電気錠6が解錠動作する。 【0023】 このように、赤外線LEDを制御してリモコン信号と互換な信号を送出するので、電気機器専用のリモコン操作と同様に電気機器の制御ができ、電気機器に別途制御線やネットワークアダプタ等を接続する必要がない。そのため、制御したい電気機器のリモコンを操作することなく玄関から電気機器の制御が可能となり、例えば帰宅した際に複数の電気機器をワンタッチ操作で作動及び動作制御することが可能となる。 また、制御対象の電気機器IDを合わせて送信するので、制御対象の電気機器を容易に特定でき、電気機器の有る部屋まで入って個々の電気機器のスイッチを入れる等の煩わしい操作をする必要がなくなる。 更に、携帯端末と受信機との通信に赤外線通信を用いるので、送信回路及び受信回路を簡易な構成にできるし、微弱な信号であるため屋外で使用しても近隣の電気機器に影響を及ぼすことがない。 また、携帯端末の1回の操作で、電気機器の制御と同時に解錠操作も実施できるので、帰宅した居住者が荷物等を抱えていても、容易に解錠操作できるし、合わせて電気機器の操作もできる。 また、居室親機にも受光部を有するので、居室内で居室親機に向けて携帯端末を操作しても電気機器を操作できるので、例えば帰宅時に点けた玄関の照明を居室内で消すことができるし、他の部屋の電気機器の制御も可能となり便利である。」 d 「【0024】 次に、携帯端末3が複数の場合を説明する。この場合、個々の携帯端末3に端末を識別するための端末IDが付与され、電気機器制御信号には、この端末IDが電気機器IDと共に付加される。そして、居室親機2もこの端末IDが登録され、更に端末ID毎の制御可能電気機器一覧が親機メモリ24に記憶される。 【0025】 図4はこの一覧を示し、携帯端末3が第1、第2、第3の3台の場合を示している。夫々異なるメインIDを有し、更にサブIDが付加されて端末IDを構成している。サブIDにより操作可能な電気機器10を選択指定でき、例えば第1携帯端末3の場合、サブID1を設定すれば玄関の照明オン操作ができるし、サブID2を設定すれば居室Aのエアコンをオン操作可能となっている。この選択は、例えば操作部18の操作により行われる。 【0026】 このような設定において、複数の居住者のうち居住者M1が第1携帯端末、他の居住者M2が第2携帯端末、更に他の居住者M3が第3携帯端末を携行した場合、次のように動作する。 居住者M1が帰宅し、玄関に設置されている受信機4に第1携帯端末3を近づけて制御信号の送信操作をすることで、居室親機2に解錠信号の送信が行われて電気錠6が解錠されると共に、居住者M1が設定していた居室Aのエアコンの電源オン信号の送信が行われる(サブID=2に設定されている場合)。居室親機2はこの電気機器制御信号を受けて、居室Aのエアコンの制御信号であると判断して、対応する送信手段7に対してその信号を送信する。こうしてエアコンのスイッチがオンされる。尚、温度設定情報を含んでいる場合は、温度制御が合わせて成される。 【0027】 また、居住者M2が帰宅した場合には、受信機4に第2携帯端末3を近づけて制御信号の送信操作をすることで、居室親機2に解錠信号の送信が行われて電気錠6が解錠されると共に、給湯器の電源オン信号の送信が行われる(サブID=2に設定されている場合)。この制御信号を受信した居室親機2は、給湯器に対応する送信手段7に対して赤外線信号を送信し、給湯器のスイッチがオンされる。更に、居住者M3が帰宅した際の制御動作も同様であり、例えば居室Bのエアコンのスイッチがオンされる。尚、この制御例では、携帯端末3が解錠信号を合わせて送信しているが、設定により解錠信号の無い電気機器制御信号の送信を容易に実施できる。 【0028】 このように、その携帯端末固有の端末IDと解錠信号および各電気機器10の設定情報が、赤外線通信により居室親機2に転送され、電気錠6の解錠および各電気機器10の設定情報が反映され、例えば主婦が使用する携帯端末3と、夫が使用する携帯端末3とで制御対象を区分けでき、携帯する人に合わせて設定し直す必要が無くなり便利であるし、設定間違いを防ぐことができる。また、制御機器が区分けされてもサブIDにより共通の電気機器を制御できるので共用することもでき便利である。」 e 「【0030】 また、玄関に設置される受信機4は、玄関子機1と一体に形成しても何ら差し支えないし、逆に居室親機2に受光部28が組み込まれているが、受信機4と同様に別体としても良い。 また、携帯端末3の受信機4への送信は赤外線を使用しているが、出力の弱い無線信号で有れば使用でき、例えばブルートゥースを使用しても良い。 更に、電気機器10の制御を専用のリモコンと同様に赤外線を使用して制御しているが、居室親機2から直接制御線を電気機器10に接続して制御しても良い。この場合、送信手段が必要無くなり、赤外線LEDを発光させるための回路が必要無くなる。」 (イ)上記(ア)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明1) 「玄関に設置されて居住者を呼び出すためのカメラ付玄関子機1、住戸内に設置されて呼び出しに応答するためのモニタ付居室親機2、持ち運びができ居室親機2に電気機器10の制御信号を無線送信する携帯端末3、携帯端末3の発する制御信号を受信する受信機4(無線受信手段)、居室親機2により制御可能な電気錠6を備えた玄関扉5、電気機器10を制御するための赤外線信号を出力する送信手段7を備えるインターホン装置であって、(【0013】) 制御対象の電気機器10は、エアコン、照明、更には浴室の給湯器等の赤外線リモコン操作が可能な機器であり、(【0013】) 玄関子機1、受信機4は夫々伝送線L1,L2を介して居室親機2に接続され、電気錠6、送信手段7は居室親機2の制御端子に制御線L3,L4を介して接続され、受信機4は、携帯端末3から送信される赤外線信号を受信する赤外線受光部(赤外線ポート)4aを備え、玄関に設置された玄関子機1の近くに設置され、玄関先において携帯端末3が出力する赤外線信号を受信可能となっており、(【0014】) 携帯端末3は、携帯電話機能を有し、公衆電話網に接続するための無線送受信部12、赤外線LEDを備えて赤外線信号による送受信を行う赤外線送受信部13、プログラムや設定情報を記憶する端末メモリ14、マイク及びスピーカを備えた通話部15、設定情報や受信情報を表示する表示部16、携帯端末3を制御する端末制御手段である端末CPU17、テンキー等から成る操作部18を備えて構成され、端末メモリ14には、居室親機2が受信可能な電気機器制御信号を生成するプログラム、生成した赤外線信号を送信するためのプロトコルが記憶され、(【0015】) 受信機4は、送信された電気機器制御信号を赤外線受光部4aで受信し、電気信号に変換して居室親機2に伝送し、(【0016】) 携帯端末3の操作による居室親機2の制御動作は、先ず、操作対象の電気機器10毎にIDを設定し、携帯端末3及び居室親機2に記憶させ、携帯端末3を操作して、操作したい電気機器10のリモコン操作情報を入手し、入手した情報は、設定された電気機器毎のID情報等がヘッダーとして自動的に付加されて電気機器制御信号として記憶され、(【0018】、【0019】) 電気機器制御信号が記憶された携帯端末3を、玄関に設置された受信機4に近づけて送出操作することで、受信機4はその赤外線信号を受信して居室親機2に電気信号に変換して伝送し、(【0020】) 居室親機2は、伝送されてきた電気機器制御信号からリモコン信号を取り出して、選択した電気機器10を制御する制御線L4に出力し、リモコン操作と同様に受信信号内容に従い制御動作を開始し、(【0020】) 屋内に入ってからも居室親機2に設けられた受光部28を利用して携帯端末3により電気機器10を制御でき、(【0021】) 携帯端末3が送信する信号は、電気機器制御信号とシリアルに電気錠解錠信号を送出可能となっており、この信号を受けた居室親機2は、電気錠6に対して解錠信号を送出し、電気錠6が解錠動作し、(【0022】) 居室親機にも受光部を有するので、居室内で居室親機に向けて携帯端末を操作しても電気機器を操作できるので、他の部屋の電気機器の制御も可能となり便利であり、(【0023】) 携帯端末3が複数の場合、個々の携帯端末3に端末を識別するための端末IDが付与され、電気機器制御信号には、この端末IDが電気機器IDと共に付加され、居室親機2もこの端末IDが登録され、更に端末ID毎の制御可能電気機器一覧が親機メモリ24に記憶され、 携帯端末3が夫々異なるメインIDを有し、更にサブIDが付加されて端末IDを構成し、サブIDにより操作可能な電気機器10を選択指定でき、この選択は、例えば操作部18の操作により行われ、 このような設定において、居住者M1が帰宅し、受信機4に第1携帯端末3を近づけて制御信号の送信操作をすることで、居室親機2に解錠信号の送信が行われて電気錠6が解錠されると共に、居室Aのエアコンの電源オン信号の送信が行われ(サブIDに設定されている場合)、温度設定情報を含んでいる場合は、温度制御が合わせて成され、 居住者M2が帰宅した場合には、受信機4に第2携帯端末3を近づけて制御信号の送信操作をすることで、居室親機2に解錠信号の送信が行われて電気錠6が解錠されると共に、給湯器の電源オン信号の送信が行われ(サブIDに設定されている場合)、この制御例では、携帯端末3が解錠信号を合わせて送信しているが、設定により解錠信号の無い電気機器制御信号の送信を容易に実施でき、(【0024】〜【0027】) 携帯端末固有の端末IDと解錠信号および各電気機器10の設定情報が、赤外線通信により居室親機2に転送され、電気錠6の解錠および各電気機器10の設定情報が反映され、制御機器が区分けされてもサブIDにより共通の電気機器を制御できるので共用することもでき便利であり、(【0028】) 携帯端末3の受信機4への送信は、無線信号、例えばブルートゥースを使用しても良く、居室親機2から直接制御線を電気機器10に接続して制御しても良い、(【0030】) インターホン装置。」 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2001−309067号公報(平成13年11月2日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 a 「【0011】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施の形態は、インターネットにダイアルアップ接続するWeb端末機に接続されたセンサや各種装置を、iモード携帯電話機を利用して、センターのサーバを介して遠隔制御するモバイル制御・計測システムである。 【0012】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるモバイル制御・計測システムの概念図である。図1において、iモード携帯電話機1は、インターネット網にアクセス可能な携帯電話機であり、携帯端末機として利用する。Webサーバ2は、モバイル制御・計測サービスセンタに設置され、インターネット網を介してモバイル制御・計測サービスを提供するサーバである。このWebサーバ2は、課金機能も有する。Web端末機3は、ユーザの自宅に設置した制御管理装置である。センサ4は、Web端末機3に接続されたセンサである。アクチュエータ5は、Web端末機3に接続された各種の駆動装置である。 【0013】図2は、アクチュエータ5を制御する時の通信の流れと、課金のタイミングを説明する図である。図3は、センサ4からiモード携帯電話機1を自動発呼するときの通信の流れを説明する図である。 【0014】上記のように構成された本発明の第1の実施の形態におけるモバイル制御・計測システムの動作を説明する。図1に示すWeb端末機3は、センサ4から定期的あるいは異常等発生時にデータを取得して、Webサーバ2に送信する。Webサーバ2は、Web端末機3から送信されたセンサデータを、ユーザに対応するWebページに書き込む。ユーザは、そのWebページを閲覧することで、いつでもセンサの最新の計測値を知ることができる。 【0015】図2を参照して、ユーザがiモード携帯電話機1から自宅の家電機器などを制御する場合を説明する。iモード携帯電話機1のWeb機能を利用して、Webサーバ2のWebページを開き、ユーザIDとパスワードを入力する。ユーザIDの認証が完了しユーザが確認されると、Webサーバ2は、Web端末機3に回線接続要求を出して起動する。 【0016】ところで、通常の家庭でのインターネット網への接続環境は、ダイアルアップ接続が一般的である。したがって、Web端末機3は、通常はインターネット網に回線接続されていない。Webサーバ2から接続する場合は、Webサーバ2から公衆電話回線を介してWeb端末機3に通信し、Web端末機3からダイアルアップ接続するように指令を出す。Web端末機3は、Webサーバ2からの回線接続要求に応じて、インターネット網を介してWebサーバ2に接続する。ISDN回線を利用する場合は、Webサーバ2からDチャンネルを利用してWeb端末機3を起動してもよい。 【0017】しかし、Web端末機3が、専用線でインターネット網に常時接続されている場合は、Webサーバ2からWeb端末機3を起動する処理は必要ない。Webサーバ2からWeb端末機3に接続要求をかけ、Webサーバ2に接続させる。Web端末機3が常にWebサーバ2に接続されている場合は、接続要求も必要ない。 【0018】接続確立後、Web端末機3は、Webサーバ2に設定されたアクチュエータ制御用Webページを開く。同時にWebサーバ2は、課金の処理を行なうために、ユーザIDとWebページ使用開始日時を、課金情報としてデータベースに書き込む。 【0019】ユーザは、iモード携帯電話機1からWebページを介してアクチュエータ5の制御要求を行なう。例えば、Webページに表示された目的の機器のオン/オフアイコンをクリックする。Webサーバ2は、制御要求に応じてWeb端末機3にコマンドを送信する。Web端末機3は、Webサーバ2からのコマンドに従って、アクチュエータ5を駆動する。 【0020】アクチュエータ5の動作が完了すると、Web端末機3は、Webサーバ2のアクチュエータ制御用Webページへ動作結果を書き込む。Webページを更新することによって、アクチュエータ5の制御結果がiモード携帯電話機1に表示される。制御のほかに、家電機器の状態を確認したい場合も、前述と同様に、Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリックすることで確認できる。 【0021】回線の切断の場合は、iモード携帯電話機1からWebページを介して回線切断依頼を行なうと、Web端末機3がWebサーバ2との回線切断処理を行なう。このとき、Webサーバ2は、ユーザIDとWebページ使用終了日時をデータベースに書き込む。前述した課金情報と照合を行ない、Webページ使用時間の算出処理を行なう。算出された使用時間に応じてユーザに課金を行なう。このほかに、回線接続サービスとして定額の基本料金をユーザから徴収する。」 b 「【0023】以下、簡易ホームセキュリティのいくつかの具体例について説明する。監視カメラアングルなどの微調整を行なう場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の矢印アイコンをクリックすることで、1度単位で方向を変えることができる。ズームの場合も同様にしてできる。赤外線センサが侵入者を検出した場合に、携帯端末機1を呼び出して監視カメラの映像を送ることができる。アイコン表示でない場合は、対象装置の番号を選択して数値を入力するなどの方法で制御する。 【0024】金庫・ショーケースの監視の場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の金庫アイコンをクリックすると、金庫の施錠状態と監視カメラの映像が表示される。施錠したいときは、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の施錠アイコンをクリックすることで施錠できる。 【0025】ガレージのシャッタ開閉操作を行なう場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上のガレージアイコンをクリックすると、開閉状態が表示されるので、開閉ボタンをクリックすると開閉できる。自家用車に盗難センサとDoPa網を利用する携帯電話機を搭載して、センサ情報をパケット通信でサービスセンタに送信することで、自家用車両の防犯管理を行なうこともできる。 【0026】数値入力による温度、音量、光量などの微調整を行なう場合は、数値入力欄を開いて、ダイアルボタンから数値入力をする。例えば、エアコンの状態を見て、18.5℃に設定したい場合は、その数値を入力する。 【0027】介護、看護関連の支援を行なう場合は、監視カメラで状態を見ることができる。マイクとスピーカを接続することで、会話することもできる。ペットの世話・監視を行なう場合は、監視カメラで状態を見ることもできるし、給水器や給餌器を制御して、水や餌を与えることもできる。」 (イ)上記(ア)より、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明2) 「インターネットにダイアルアップ接続するWeb端末機に接続されたセンサや各種装置を、iモード携帯電話機を利用して、センターのサーバを介して遠隔制御するモバイル制御・計測システムであって、(【0011】) iモード携帯電話機1は、インターネット網にアクセス可能な携帯電話機であり、インターネット網を介してモバイル制御・計測サービスを提供するWebサーバ2、ユーザの自宅に設置した制御管理装置であるWeb端末機3、Web端末機3に接続されたセンサ4、Web端末機3に接続されたアクチュエータ5を有して構成され、(【0012】) ユーザがiモード携帯電話機1から自宅の家電機器などを制御する場合、iモード携帯電話機1のWeb機能を利用して、Webサーバ2のWebページを開き、(【0015】) ユーザは、iモード携帯電話機1からWebページに表示された目的の機器のオン/オフアイコンをクリックしてアクチュエータ5の制御要求を行い、Webサーバ2は、制御要求に応じてWeb端末機3にコマンドを送信し、Web端末機3は、Webサーバ2からのコマンドに従って、アクチュエータ5を駆動し、(【0019】) 家電機器の状態を確認したい場合、Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリックすることで確認できる、 モバイル制御・計測システム。」 (3)本件補正発明と引用発明1との対比 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「玄関扉5」及び「玄関扉5」が備える「電気錠6」は、それぞれ、本件補正発明の「建物の開口部を開閉する開閉部材」及び「建物の開口部を開閉する開閉部材を施錠又は解錠する電気錠」に相当する。 イ 引用発明1は「居室親機2は、電気錠6に対して解錠信号を送出し、電気錠6が解錠動作」するものであるところ、引用発明1の「電気錠6に対して」「送出」する「解錠信号」は、本件補正発明の「建物の開口部を開閉する開閉部材を施錠又は解錠する電気錠を制御する錠制御情報」に相当し、引用発明1の「居室親機2」の「電気錠6に対して解錠信号を送出」する部分は、本件補正発明の「建物の開口部を開閉する開閉部材を施錠又は解錠する電気錠を制御する錠制御情報を出力する第1出力部」に相当する。 ウ 引用発明1は「居室親機2は、伝送されてきた電気機器制御信号からリモコン信号を取り出して、選択した電気機器10を制御する制御線L4に出力し、リモコン操作と同様に受信信号内容に従い制御動作を開始」するものであるから、引用発明1の「リモコン信号」は、本件補正発明の「前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報」に相当する。また、本件補正発明の「前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報、及び当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報を出力する第2出力部」と引用発明1の「居室親機2」の「リモコン信号」を「出力」する部分とは、「前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報を出力する第2出力部」の点で共通する。 エ 引用発明1の「各電気機器10の設定情報」は、本件補正発明の「前記機器の制御に関する情報」に相当し、引用発明1の「携帯端末3」の「設定情報や受信情報を表示する表示部16」は、「設定情報」に「各電気機器10の設定情報」が含まれるから、本件補正発明の「前記電気錠の状態に関する情報、前記電気錠の制御に関する情報、前記機器の状態に関する情報、及び前記機器の制御に関する情報のうち少なくとも1つを、提示する提示部」に相当する。 オ 引用発明1の「電気錠解錠信号を送出可能」な「携帯端末3」の「表示部」は、本件補正発明の「前記電気錠を制御するための情報端末が有する表示部」に相当し、上記エの対比を踏まえると、引用発明1は、本件補正発明の「前記提示部は、前記電気錠を制御するための情報端末が有する表示部を含む」に相当する構成を備える。 カ 引用発明1の「インターホン装置」は、本件補正発明の「電子錠制御システム」に相当する。 キ 上記ア〜カより、本件補正発明と引用発明1とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 建物の開口部を開閉する開閉部材を施錠又は解錠する電気錠を制御する錠制御情報を出力する第1出力部と、 前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報を出力する第2出力部と、 前記電気錠の状態に関する情報、前記電気錠の制御に関する情報、前記機器の状態に関する情報、及び前記機器の制御に関する情報のうち少なくとも1つを、提示する提示部と、を備え、 前記提示部は、前記電気錠を制御するための情報端末が有する表示部を含む 電気錠制御システム。 (相違点) 第2出力部が、本件補正発明は、電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報とともに「当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報」を出力するのに対し、引用発明1は、そのように特定されていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 ア(ア)引用発明2は、「iモード携帯電話機1からWebページに表示された目的の機器のオン/オフアイコンをクリック」して「アクチュエータ5の制御要求」を行い、「Webサーバ2」が「制御要求」を受け取って「Web端末機3にコマンドを送信」し、「Web端末機3」が「Webサーバ2からのコマンドに従って、アクチュエータ5を駆動」するものであるから、引用発明2の「アクチュエータ5の制御要求」によってWebサーバ2に送信される情報は、相違点1に係る本件補正発明の「電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報」に相当する。 (イ)引用発明2の「家電機器の状態を確認」するために「Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリック」することは、上記アのアクチュエータ5の制御要求と同様に、Webサーバ2に対して送信し、Webサーバ2が要求を受け取ってiモード携帯電話機1によって家電機器の状態を確認できるようにするものといえるから、「Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリック」することによってWebサーバ2に送信される情報は、相違点1に係る本件補正発明の「当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報」に相当する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、引用発明2の「iモード携帯電話機1」の「Webサーバ2」に対して「機器制御情報」及び「状態要求情報」に相当する情報を送信する部分は、相違点1に係る本件補正発明の「前記電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報、及び当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報を出力する第2出力部」に相当する。 イ 引用発明1と引用発明2とは、建物に備わる機器を遠隔で操作するという共通の作用、機能を有する。 ウ ここで、建物に備わる機器を遠隔で操作することに関して、引用発明1及び引用文献1の記載をみると、引用発明1は、「携帯端末3」からの信号を受信する「受信機4」を「玄関」に備え、「居室親機2に設けられた受光部28を利用して」「居室内」から「電気記機器10」を操作できるように構成したものであるところ、引用文献1は、建物に備わる機器を遠隔で操作する利点として、「制御したい電気機器のリモコンを操作することなく玄関から電気機器の制御が可能とな」ること、「電気機器の有る部屋まで入って個々の電気機器のスイッチを入れる等の煩わしい操作をする必要がなくなる」こと、「例えば帰宅時に点けた玄関の照明を居室内で消すことができるし、他の部屋の電気機器の制御も可能となり便利である」ことを明示する。(上記(2)ア(ア)c 段落【0023】) エ そして、建物に備わる機器を遠隔で操作する具体的な態様について、引用発明1は、居住者M1に関し、電気機器制御信号(本願の「機器制御情報」に相当する「リモコン信号」が「取り出」されるもとなる信号)に「温度設定情報」が含まれるものである。一方、引用文献2には「例えば、エアコンの状態を見て、18.5℃に設定したい場合は、その数値を入力する」(上記(2)イ(ア)b 段落【0026】)と記載されており、このようにエアコン等の機器の状態に関する情報を得て状態を確認してから設定温度の選択等の制御をできるようにすることは、機器制御の分野における技術常識であるといえる。 オ そうすると、引用発明1において、各機器の制御のみならず、各機器の状態に関する情報の把握についても、電気機器の有る部屋まで入っていかなくても行うことができるよう、第2出力部を、引用発明2のように、電気錠以外の少なくとも1つの機器を制御する機器制御情報とともに「当該機器の状態に関する情報を要求する状態要求情報」を出力するものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (5)請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は審判請求書において、概略以下の主張をしている(審判請求書3.(d))。 「本願発明は、電気錠を制御するための情報端末が有する表示部に提示される電気錠の状態に関する情報、電気錠の制御に関する情報、機器の状態に関する情報、及び機器の制御に関する情報のうち少なくとも1つを情報端末のユーザが確認することによって、例えば外出時に情報端末を用いて電気錠の施錠を行う際に、制御対象である電気錠以外の機器の状態を確認でき、必要な場合には機器の状態を変更するように制御できる、という利点がある。 引用文献1には、制御対象である特定の電気機器を制御するための電気機器制御信号を送信する携帯端末と、携帯端末から送信される電気機器制御信号を受信して住戸内に設置される居室親機に伝送する受信機と、を有するインターホン装置が記載されている。また引用文献1には、電気錠の解錠時に、携帯端末に記憶されたIDに対応する特定の電気機器を制御するために、携帯端末が電気機器制御信号を受信機に送信することが記載されている。つまり、引用文献1に記載されたインターホン装置は、電気錠の解錠動作と特定の電気機器の制御を同時に行うことで、利便性を向上させることを目的としている。したがって、引用文献1には、例えば外出時に電気錠の施錠を行う際に、制御対象である電気錠以外の機器の状態を確認することができるようにする、という本願の課題は存在せず、引用文献1には、本願発明を想到する動機付けとなる記載が存在しない。 また引用文献2には、簡易ホームセキュリティに含まれる機器(金庫、ショーケース、シャッタ、エアコン等)の状態確認及び制御指示を行うことができる携帯端末機と、インターネット網に接続され携帯端末機と通信を行うWebサーバ及びWeb端末機を備えるモバイル制御・計測システムが記載されているが、電気錠を制御するための情報端末に、制御対象である電気錠以外の機器に関する情報を提示する本願発明の構成については記載も示唆もない。 したがって、引用文献1に引用文献2を適用して本願発明を想到するのは当業者といえども容易ではなく、本願発明は特許法第29条第2項の規定に該当するものではない。」 イ 請求人の主張の検討 引用文献1について、請求人は、「引用文献1に記載されたインターホン装置は、電気錠の解錠動作と特定の電気機器の制御を同時に行うことで、利便性を向上させることを目的としている」と主張する。しかし、引用発明1は、「居室親機にも受光部を有するので、居室内で居室親機に向けて携帯端末を操作しても電気機器を操作できるので、他の部屋の電気機器の制御も可能となり便利であ」り、「設定により解錠信号の無い電気機器制御信号の送信」ができることが明示されるように、解錠動作とは別に、特定の電気機器の制御を行うものである。 引用文献2について、請求人は、「電気錠を制御するための情報端末に、制御対象である電気錠以外の機器に関する情報を提示する本願発明の構成については記載も示唆もない」と主張する。 しかし、引用文献1及び引用文献2は、建物に備わる機器を遠隔で操作する点で共通するものであり、引用文献2に電気錠(実施例における「玄関錠」)について記載がないことをもって、引用発明1と引用発明2との組み合わせが困難というものではない。 そして、引用発明1に引用発明2を適用する阻害要因はなく、引用発明1に引用発明2の構成を採用すれば、電気機器の有る部屋まで入って個々の電気機器に関する情報を取得しなくてもよくなり、電気機器の制御の利便性が高まるから、引用発明1に引用発明2を適用する動機はある。 また、請求人が主張する、「外出時に情報端末を用いて電気錠の施錠を行う際に、制御対象である電気錠以外の機器の状態を確認でき、必要な場合には機器の状態を変更するように制御できる」との効果は、引用発明1及び引用発明2から予測される範囲の効果に過ぎない。 以上のとおり、いずれの請求人の主張を考慮しても、上記(4)の判断を覆すべき事情は見いだせない。 (6)独立特許要件についてのまとめ 本件補正発明は、引用発明1及び2に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和4年2月22日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、令和3年8月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものである。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし10に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2007−235230号公報 引用文献2:特開2001−309067号公報 3 引用文献の記載事項 (1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2及びその記載事項は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2[理由]3で検討した本件補正発明から、「前記電気錠の状態に関する情報、前記電気錠の制御に関する情報、前記機器の状態に関する情報、及び前記機器の制御に関する情報のうち少なくとも1つを、提示する提示部と、を備え、前記提示部は、前記電気錠を制御するための情報端末が有する表示部を含む」との限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]3(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-11-10 |
結審通知日 | 2022-11-15 |
審決日 | 2022-11-28 |
出願番号 | P2017-240898 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(E05B)
P 1 8・ 121- Z (E05B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
桐山 愛世 土屋 真理子 |
発明の名称 | 電気錠制御システム、表示方法、及びプログラム |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |