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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1393806
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-25 
確定日 2023-01-26 
事件の表示 特願2017−233311「損失価格評価システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019−101849、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 9月29日付け 拒絶理由通知書
令和3年11月 1日 意見書、手続補正書の提出
令和3年12月17日付け 拒絶査定
令和4年 2月25日 審判請求書の提出
令和4年 9月28日付け 拒絶理由通知書
令和4年11月14日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年12月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2004−318667号公報
2.米国特許第9824453号明細書
3.米国特許出願公開第2017/0148102号明細書

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和4年9月28日付け拒絶理由通知)の概要は次のとおりである。

1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
3.(進歩性)この出願の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.米国特許出願公開第2017/0148102号明細書(拒絶査定における引用文献3)

第4 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和4年11月14日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する損失価格評価システムであって、
前記移動体の種類を入力する入力部と、
前記移動体の前記損傷を含む部分を3次元スキャンして、3次元スキャンデータを取得する3次元スキャンデータ入力部と、
前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める損傷解析部と、
前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価部とを備え、
前記3次元スキャンデータは、前記3次元スキャンによって得られる前記移動体の表面の各構成点の3次元座標と、隣接する複数の構成点によって形成される格子面の面法線ベクトルとを有しており、
前記損傷解析部は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める損失価格評価システム。」

なお、本願発明2ないし6の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし4は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5及び6は、本願発明1の「損失価格評価システム」に対応する発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同じ。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の損傷解析技術に関し、好適には、板金修理の見積もり作業等を支援する損傷解析技術に関する。」

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記車両修理見積もりシステムでは、衝撃状況の入力と、各部品に割り当てられた衝撃伝達データに基づき損傷状態を把握しており、三次元立体化された画像データ等は、損傷状態の解析に用いられていなかった。つまり、システム上、多くの三次元画像データを保有するものの、その三次元画像データの用途は、見積もりの把握を容易にするに留まり、必ずしも有効なデータ活用がなされているとは言い難かった。
【0007】
本発明は、上記した技術的背景を考慮してなされたもので、三次元画像データの活用によっても、損傷を解析し得る損傷解析技術の提供を課題とする。
また、三次元画像データを用いた損傷解析技術の提供により、簡易に損傷状態を解析し得る損傷解析支援システムを提供する。また、その損傷解析プログラム及び損傷解析方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した技術的課題を解決するため、本発明では以下のシステム構成とした。すなわち、本発明は、車両の損傷を解析する損傷解析支援システムであって、ポリゴン描画化された解析対象部位を対象として、その損傷の及んだ範囲を指定するための損傷範囲指定手段と、前記損傷範囲指定手段で指定した範囲に位置したポリゴン数を計数し、この計数したポリゴン数をパラメータの一つとして、損傷を解析する損傷解析手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
なお、本明細書に於いて解析対象部位とは、車輌全体を対象としてもよく、また、車輌の一構成要素である部品等を対象にしてもよい。
【0010】
また、前記損傷解析手段は、前記解析対象部位の規定ポリゴン数と、前記計数したポリゴン数との割合に基づき前記解析対象部位の損傷度を算出する構成としてもよい。
すなわち、計数したポリゴン数を損傷量として、解析対象部位に対する損傷量の割合を以て、損傷度を算出する。
【0011】
また、前記損傷解析手段は、前記損傷度に対応した作業項目を選出するための閾値を記憶しており、前記損傷解析手段は、前記計数したポリゴン数が、この閾値を上回るか否かに基づき前記解析対象部位に求められる作業項目を選択してもよい。
【0012】
また、前記解析対象部位を表示する表示装置を備え、前記損傷範囲指定手段は、前記表示装置に表示される解析対象部位を対象としたその衝撃の入力方向、幅、高さ、衝撃力の指定の何れかを条件として損傷範囲を特定する構成であってもよい。
【0013】
すなわち、画面上に表示される解析対象部位をモデルとして損傷範囲を指定できるため、その範囲指定が容易であり、また、実車との比較もなし得るため、精度の高い損傷範囲の指定が行える。
【0014】
また、前記損傷解析手段の解析結果に基づき、この解析対象部位の修復に要する費用を見積もる見積もり手段を備えた構成としてもよい。
【0015】
また、上記した課題を解決するため、本発明は、以下の損傷解析プログラムを提供する。すなわち、車両の損傷を解析するコンピュータ実行可能な損傷解析プログラムであって、ポリゴン描画化された解析対象部位を対象として、その損傷の及んだ範囲の指定を受け付けるステップと、前記ステップにて指定された範囲に位置するポリゴン数を計数し、この計数したポリゴン数をパラメータの一つとして、損傷を解析するステップと、を含み構成される損傷解析プログラム。
【0016】
また、前記損傷を解析するステップでは、前記解析対象部位の規定ポリゴン数と、前記計数したポリゴン数との割合に基づき前記解析対象部位の損傷度を算出するプログラム構成としてもよい。
【0017】
また、前記損傷を解析するステップでは、前記損傷度に対応した作業項目を選出するための閾値を参照し、この参照した閾値を、前記計数したポリゴン数が、上回るか否かに基づき前記解析対象部位に求められる作業項目を選択するプログラム構成としてもよい。
【0018】
また、前記解析対象部位を表示するステップを備え、前記損傷範囲を指定するステップでは、前記表示された解析対象部位を対象として、その衝撃の入力方向、幅、高さ、衝撃力の何れかの入力を条件に損傷範囲を特定するプログラム構成としてもよい。
【0019】
また、前記損傷解析手段の解析結果に基づき当該解析対象部位の修復に要する費用を見積もるステップをさらに備えてもよい。
【0020】
また、上記した課題を解決するため、本発明は、以下の損傷解析方法を提供する。すなわち、車両の損傷を解析する損傷解析方法であって、ポリゴン描画化された解析対象部位を対象として、その損傷の及んだ範囲を指定する工程と、前記工程で指定した範囲に位置するポリゴン数を計数し、この計数したポリゴン数をパラメータの一つとして、損傷を解析する工程と、を含むことを特徴とする。
【0021】
また、前記損傷を解析する工程では、前記解析対象部位の規定ポリゴン数と、前記計数したポリゴン数との割合に基づき前記解析対象部位の損傷度を算出してもよい。
【0022】
また、前記損傷を解析する工程では、前記損傷度に対応した作業項目を選出するための閾値を参照し、この参照した閾値を、前記計数したポリゴン数が、上回るか否かに基づき前記解析対象部位に求められる作業項目を選択してもよい。
【0023】
また、前記解析対象部位を表示する工程を備え、前記損傷範囲を指定する工程では、前記表示された解析対象部位を対象として、その衝撃の入力方向、幅、高さ、衝撃力の何れかの入力を条件に損傷範囲を特定してもよい。
【0024】
また、前記損傷解析手段の解析結果に基づき当該解析対象部位の修復に要する費用を見積もる工程を、さらに含んでもよい。
【0025】
このように本発明では、ポリゴン描画化(三次元立体化)された解析対象部位を対象として損傷範囲を指定し、この損傷範囲に位置したポリゴンの数から損傷状態を解析している。つまり、損傷の解析にあたり、解析対象部位の三次元立体化と損傷範囲の指定で、損傷状態を精度よく数値化できる。」

「【0031】
<車種データベース>
車種属性データベースD1には、メーカー名、車種名、形式、形式指定番号、類別区分番号等、車種の特定に要する車種特定データが記憶されている。また、各車種に対応して複数の三次元画像データが記憶されている。
【0032】
この三次元画像データは、主に車体の形状(例えば、輪郭)、並びに車体に組み込まれた部品の形状にポリゴンを割り当て三次元立体化したものである。そして、損傷解析プログラムの実行時には、当該三次元画像データをもとに、車体の立体透視図等がポリゴン描画化(3Dグラフィック化)されてディスプレイ106上に表示される。
【0033】
なお、車体及び部品の三次元立体化は、3Dモデリングソフト等によって製作されている。より詳しくは、解析対象部位(例えば、車体)の4面画をスキャナー等を用いて取り込み、そのデータに四角及び三角形等の平面からなるポリゴンを割り当て実際の形状に近づけていくなどの手法が用いられている。」

「【0041】
<損傷解析プログラム>
まず、CPU101は、損傷解析プログラムの起動後、図4に示す車種選択画面200をディスプレイ106に表示し、オペレータによる車種選択を本車種選択画面200に於いて受け付ける(S101)。
【0042】
車種選択画面200は、解析対象である車種を特定するための操作画面に相当し、例えば、画面左方のメーカ一覧201にマウス等のポインタPを移動すると、順次その右方に車種名202、及び車種形式203等の一覧が展開表示され、各欄での指定によって最終的に所望の車種選択が可能になっている。
【0043】
続いて、CPU101は、3D画像ビュアーを立ち上げ、選択された車種に対応する三次元画像データを車種属性データベースD1から読み出し、ディスプレイ106に初期設定画面300と共に表示する(S102)。
【0044】
初期設定画面300では、衝撃の入力方向を設定(指定)すべく、画面中央に車体の外形が表示される(図5参照)。また、オペレータの操作のもと、車体の向きは、適宜変更可能であり、この向きの変更によって衝撃入力方向の設定が可能になっている。
【0045】
なお、本実施の形態では、車体の向き変更にあたり、画面右上に「フロント」「リア」「右サイド」「左サイド」等の方向選択欄301を設け、当該方向選択欄での操作によって、向きの変更操作を受け付けている。また、その他、画面上でマウス103をクリックすると、順次車体が回転する画面構成になっている。
【0046】
そして、オペレーターは、この初期設定画面300に於いて衝撃の入力方向を設定する。なお、車体のフロント部分の損傷を例に説明すれば、車体のフロント部分が画面正面側に向くように、車体(画像)を回転して衝撃の入力方向を定める。
【0047】
続いて、CPU101は、衝撃の入力方向として設定された方向に対応する立体透視図を車両属性データD1から読み出し、ディスプレイ106に表示する。また、この立体透視図において衝撃の幅の設定を受け付ける(S103)。
【0048】
なお、衝撃幅の設定では、衝撃幅の設定画面400をディスプレイ106に表示し(図6参照)、この設定画面400上に所定間隔毎に表示される設定ポイント401をマウス103等で指定することにより衝撃幅の指定が可能になっている。
【0049】
なお、図6の例では、車体の右サイドから、フロント、左サイドの順に設定ポイント401が30度間隔で複数表示されており、これら設定ポイントの少なくとも2点を指定することで、その設定ポイント401に挟まれる領域が損傷幅として認識される。なお、図6の例では、車体前方を中立位置(0度)として車体の左方30度から60度の幅で衝撃が加わったことになる。また、本損傷解析プログラムでは、衝撃幅の設定と同時に、その設定範囲の色を変更することで、その設定事項を視覚上、容易に把握できるようにしている。
【0050】
続いて、CPU101は、衝撃幅の設定を受け、衝撃高さの設定画面500をディスプレイ106上に表示し、この設定画面500上での設定操作によって、衝撃高さの指定を受け付けている(S104)。
【0051】
なお、衝撃高さの設定画面500では、図7に示すように、車体の全高を把握し易い斜め前方からの立体透視図が適用される。そして、車体の上下方向に於いて、複数の設定ポイント501が表示され、所望の高さに位置した設定ポイント501をマウス103等でクリックすることで、衝撃の高さが設定される。また、衝撃の高さ設定においても、同様に、その設置箇所は、色の変更によって視覚上、容易に認識できるようになっている。
【0052】
続いて、CPU101は、衝撃力の設定画面600をディスプレイ106上に表示し、この設定画面600上に於いて衝撃力の指定を受け付ける(S105)。
【0053】
なお、衝撃力の設定画面では、画面右上に「弱」、「中」、「強」といった衝撃力を指定するための衝撃力指定欄601が表示され、この衝撃力指定欄601での設定操作によって衝撃力の指定が可能になっている。また、その下方には、衝撃力を微調整するための調整部602が設けられており、この調整部602に表示される操作レバー602(画像)をマウス103でスライドすることで衝撃力の微調整が可能である。
【0054】
また、衝撃力の調節に伴い、画面上では、損傷範囲に相当する着色部分の奥行きが変化し、この奥行きの変化から、衝撃力をイメージとして認識できるようになっている。つまり、車体全体を解析対象部位と考えた場合、その解析対象部位の色の変化によって、損傷範囲を正確に把握でき、例えば、実車との比較等によって、損傷範囲を精度よく特定することが可能になる。
【0055】
また、衝撃力の設定画面600に表示される「小計」の操作欄603の操作により、CPU101は、続く損傷解析処理に移る(S106)
【0056】
本ステップ106では、まず、設定された損傷範囲に於いて、その損傷範囲に組み付けられている部品を把握する(S201)。なお、本実施の形態に示す例では、損傷範囲がフロント左サイド全域に及ぶため本損傷解析処理では、フロントバンパASSYを解析対象部位として損傷解析を実行している。また、図12は、本損傷解析処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0057】
次いで、CPU101は、損傷範囲に位置した部品群を対象として、損傷の及んだ範囲に位置するポリゴン数を計数し(S202)、この計数したポリゴン数と、当該解析対象部位の三次元立体化にあたり割り当てられたポリゴン数(規定ポリゴン数)との割合に基づき損傷度を算出する(S203)。なお、損傷度の算出においては、下記損傷解析ロジックの実行によって損傷度が定量化(数値化)される。
【数1】

【0058】
続いて、CPU101は、部品データベースD2を参照し、損傷の及んだ部品のデータを部品データベースから読み出し、損傷範囲のサムネール画像703と共に、損傷の及んだ部品のイメージ画像及び部品番号、部品名称、部品価格等の一覧を小計画面700(図9参照)として、ディスプレイ106に表示する(S107)。
【0059】
また、これら部品番号等の一覧701の下方には、CPU101に見積もりを指示するための見積もり指示欄702が設けられており、マウス103等のクリックによって、見積もり処理が開始される(S108)。
【0060】
本見積もり処理では、まず、解析対象部位の損傷判定データを参照し、先のステップ106で計数したポリゴン数と、解析対象部位に相当するフロントバンパーASSYに対応した判定ラインとを比較し、計数したポリゴン数が判定ラインとして設定されているポリゴン数を上回るか否かに基づき、この損傷部位に求められる作業項目が選択される。
【0061】
なお、判定ラインを50%に設定した例を説明すれば、規定ポリゴン数50000の解析対象部位では、損傷範囲に位置したポリゴン数が25000以上の場合に「要交換」に価する損傷とみなす。また、250000未満の場合に「要修理」に価する損傷とみなす。
【0062】
そして、CPU101は、これら解析結果に基づき損傷の修復に要する費用を算出してディスプレイ106に表示する。より詳しくは、部品に設定された付帯作業並びに作業指数等を考慮して、部品毎に工賃を見積もり、また、この工賃に部品代を加算して、見積もり合計金額として算出する(図10参照)。
【0063】
このように本実施の形態に示す損傷解析支援システムでは、ポリゴン描画化(三次元立体化)された解析対象部位を対象として損傷範囲を指定し、この損傷範囲に位置したポリゴンの数から損傷状態を解析している。つまり、損傷の解析にあたり、解析対象部位の三次元立体化と損傷範囲の指定のみで、損傷状態を精度よく数値化できる。
【0064】
また、損傷範囲の指定では、ディスプレイ106に表示された解析対象部位の三次元画像に基づき損傷範囲を指定できるため、その範囲指定作業が容易であり、また、実車との比較も容易且つ明瞭に行えるため、精度の高い損傷範囲の指定が可能である。
【0065】
なお、上記した実施形態は、あくまでも一実施形態であり、その詳細は、所望に応じて変更可能である。例えば、上記実施形態では、損傷解析に用いる三次元画像データを予め車両属性データとして記憶しているが、必ずしもその必要はなく、例えば、実車の各部をデジタルカメラ等で写し、その画像を3Dモデリングの技法に従い、三次元立体化して解析対象部位の特定に必要な三次元画像データを取得し、この三次元画像データを元に損傷を解析するようにも構成できる。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)の記載から以下のことが言える。
ア 段落【0008】の記載によると、引用文献1には、「車両の損傷を解析する損傷解析支援システム」が記載されている。
イ 段落【0041】の記載によると、引用文献1には、「車種選択画面200をディスプレイ106に表示し、オペレータによる車種選択を本車種選択画面200に於いて受け付ける(S101)」ことが記載されている。
ウ 段落【0043】の記載によると、引用文献1には、「選択された車種に対応する三次元画像データを車種属性データベースD1から読み出し、ディスプレイ106に初期設定画面300と共に表示する(S102)」ことが記載されている。
エ 段落【0046】【0047】の記載によると、引用文献1には、「衝撃の入力方向として設定された方向に対応する立体透視図を車両属性データD1から読み出し、ディスプレイ106に表示」し、「この立体透視図において衝撃の幅の設定を受け付ける(S103)」ことが記載されている。
オ 段落【0050】の記載によると、引用文献1には、「衝撃幅の設定を受け、衝撃高さの設定画面500をディスプレイ106上に表示し、この設定画面500上での設定操作によって、衝撃高さの指定を受け付けている(S104)」ことが記載されている。
カ 段落【0052】の記載によると、引用文献1には、「衝撃力の設定画面600をディスプレイ106上に表示し、この設定画面600上に於いて衝撃力の指定を受け付ける(S105)」ことが記載されている。
キ 段落【0055】【0056】【0057】の記載によると、引用文献1には、「設定された損傷範囲に於いて、その損傷範囲に組み付けられている部品を把握する(S201)」こと、「損傷範囲に位置した部品群を対象として、損傷の及んだ範囲に位置するポリゴン数を計数し(S202)、この計数したポリゴン数と、当該解析対象部位の三次元立体化にあたり割り当てられたポリゴン数(規定ポリゴン数)との割合に基づき損傷度を算出する(S203)」ことにより、「損傷解析処理」(S106)が行われることが記載されている。
ク 段落【0058】の記載によると、引用文献1には、「部品データベースD2を参照し、損傷の及んだ部品のデータを部品データベースから読み出し、損傷範囲のサムネール画像703と共に、損傷の及んだ部品のイメージ画像及び部品番号、部品名称、部品価格等の一覧を小計画面700(図9参照)として、ディスプレイ106に表示する(S107)」ことが記載されている。
ケ 段落【0059】【0060】【0062】の記載によると、引用文献1には、「マウス103等のクリックによって、見積もり処理が開始される(S108)」こと、「解析対象部位の損傷判定データを参照し、先のステップ106で計数したポリゴン数と、解析対象部位に相当する判定ラインとを比較し、計数したポリゴン数が判定ラインとして設定されているポリゴン数を上回るか否かに基づき、この損傷部位に求められる作業項目が選択され」ること、「これら解析結果に基づき損傷の修復に要する費用を算出してディスプレイ106に表示する。より詳しくは、部品に設定された付帯作業並びに作業指数等を考慮して、部品毎に工賃を見積もり、また、この工賃に部品代を加算して、見積もり合計金額として算出する」ことが記載されている。

以上、上記ア〜ケから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「車両の損傷を解析する損傷解析支援システムであって、
車種選択画面200をディスプレイ106に表示し、オペレータによる車種選択を本車種選択画面200に於いて受け付け(S101)、
選択された車種に対応する三次元画像データを車種属性データベースD1から読み出し、ディスプレイ106に初期設定画面300と共に表示し(S102)、
衝撃の入力方向として設定された方向に対応する立体透視図を車両属性データD1から読み出し、ディスプレイ106に表示し、この立体透視図において衝撃幅の設定を受け付け(S103)、
衝撃幅の設定を受け、衝撃高さの設定画面500をディスプレイ106上に表示し、この設定画面500上での設定操作によって、衝撃高さの指定を受け付け(S104)
衝撃力の設定画面600をディスプレイ106上に表示し、この設定画面600上に於いて衝撃力の指定を受け付け(S105)、
設定された損傷範囲に於いて、その損傷範囲に組み付けられている部品を把握し(S201)、損傷範囲に位置した部品群を対象として、損傷の及んだ範囲に位置するポリゴン数を計数し(S202)、この計数したポリゴン数と、当該解析対象部位の三次元立体化にあたり割り当てられたポリゴン数(規定ポリゴン数)との割合に基づき損傷度を算出する(S203)、損傷解析処理(S106)を行い、
部品データベースD2を参照し、損傷の及んだ部品のデータを部品データベースから読み出し、損傷範囲のサムネール画像703と共に、損傷の及んだ部品のイメージ画像及び部品番号、部品名称、部品価格等の一覧を表示し(S107)、
解析対象部位の損傷判定データを参照し、先のステップ106で計数したポリゴン数と、解析対象部位に相当する判定ラインとを比較し、計数したポリゴン数が判定ラインとして設定されているポリゴン数を上回るか否かに基づき、この損傷部位に求められる作業項目が選択され、これら解析結果に基づき損傷の修復に要する費用を算出してディスプレイ106に表示する、見積もり処理を行う(S108)、
損傷解析支援システム。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。なお、引用文献2の記載事項は、当審の訳文で示す。

「要約
システム及び方法は、車両のための車両及び/又はベースライン画像の3次元(3D)画像を生成するための自動システムを提供する。このシステムは、複数の同型(例えば、同じメーカー、モデル、年など)の3D画像を受信し、特定のタイプの車両の複数の3D画像に基づいて、同様のタイプの車両のためのベースラインの3D画像を生成することができる。このシステムは、別の車両の特性を決定するためにベースラインの3D画像を使用することができ、車両を改良した、自動車への損傷、車両を修理または車両の部品を交換するコストは、車両の値、保険見積り、等である。いくつかの態様では、3D画像は、3次元の点群を含んでいてもよいし、3Dレーザスキャナ型センサは車両の3D画像を捕らえるために使用されてもよい。」

「技術分野
本発明は、車両用の3次元画像を生成するためのシステムおよび方法に関する。」(第1列第17行ないし20行)

「ステップ5414では、コンピューティングデバイスは、車両5330の3次元画像とベースライン(例えば、損傷を受けていない車両)の画像を比較することができる。この比較を使用して、損傷された車両の部分を(以前のまたは新しい損傷)示すために使用される。例えば、コンピューティングデバイスは、ベースライン画像内の点の座標を、生成された3D画像の点座標と比較して、車両への潜在的な損傷を識別することができる。2つの画像中のポイントが合致した場合、コンピューティングデバイスは、損傷が生じなかったことを判定することができる。一致しない場合(2ポイント間の距離が閾値よりも大きい場合等)、コンピューティングデバイスは、その領域内で損傷が起きたことを判断することができる。コンピューティングデバイスは、ベースライン画像には、ポイントXが存在するが、撮影された画像にはポイントXを有していない場合(およびその逆)、損傷を識別することもできる。同様の分析は、損傷を決定するために、2ポイント、3ポイント、または任意の数の結合されたポイントの上で実施することができる。いくつかの態様では、主座標分析(PCA)を用いて、ポイントが一致するか否かを決定することができる。PCAを用いては、どの3つの垂直軸が3D画像(例えば、3次元点群)の最も広い部分を中心とするのが最適かを判断する。例えば、セダン用のPCAは、x軸(第1成分)を車両の車長、y軸を車幅、およびz軸を車両の高さを使用することができる。同様に、PCAを使用して、軸をトラックやミニバン等の、長さ、幅、および高さに合わせることができる。しかしながら、車両の幅と高さがより類似しているような車両に対しては、位置合わせがより難しいかもしれない。PCAを使用して車両のメーカー/モデル/年にわたって位置合わせした後、バンパー、ホイール等を位置合わせするように座標をシフトさせることができる。PCAは、当業者によって理解されるように、損傷を決定するためのポイント(もしあれば)を識別するために使用することができる。いくつかの態様では、新規または最近の損傷を識別することができ、ベースラインスキャンの前に発生した損傷は、ベースライン画像に以前の損傷が含まれているため、記録しない可能性がある。」(第57列第53行ないし第58列第22行)

3 引用文献3(引用文献A)について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用文献3(当審拒絶理由に引用した引用文献A)には、次の事項が記載されている。なお、引用文献3の記載事項は、当審の訳文で示す。

「[0037]図1は、車両の損傷評価および修理のためのシステムを示す図である。一般に、システム100は、車両などのアイテムの状態の損傷評価または他の一般的な評価のために使用されてもよい。
システム100は、物品をスキャンし、スキャンに基づいて分析を実行するためのプラットフォームを提供してもよい。
スキャンは、品目の任意の関連する表面又は特徴をカバーしてもよく、システム100は、画像分析又は他の任意の適切なデータ処理技術を実行し、損傷に関連する幾何学的変化を特定してもよい。車両の場合、本明細書に記載のシステム100は、修理プロセス(例えば、修理の見積もり又は修理の評価)、保険プロセス(例えば、損傷が保険でカバーされるかどうかの判断、鑑定、修理及び関連サービスの調整等)、レンタル及びリースプロセス(例えば、車両への返却時の車両の損傷の評価)、車両販売プロセス(例えば、損傷又はその他スキャンによって判断される車両の状態に基づく価値の決定)等を拡張するために使用されてもよい。」

「[0038]図示のように、システム100は、通信関係にある複数のエンティティ(例えば、デバイス、システム、コンポーネント、リソース、施設など)を相互接続するネットワーク102を含んでもよい。エンティティは、例えば、スキャンシステム104、任意の数のクライアント106、分析施設108、様々なサービスプロバイダ等(例えば、保険業者プラットフォーム110、レンタル提供者プラットフォーム112、修理提供者プラットフォーム114、及び他のサービスプロバイダ116)によって独立して運営されるコンピューティングシステム又はインフラストラクチャ、リモートリソース118、データベース120、及びサーバ122を含んでもよい。」

「[0042]スキャンシステム104は、一般に、携帯型又は移動型のスキャンシステムであってよく、くぼみ検出に使用するために形状又は局所的な表面法線などの表面情報を捕捉してもよい。本明細書で一般的に説明するように、スキャンシステム104は、光学的技術、機械的技術、及び音響的技術のうちの少なくとも1つを使用して三次元表面データを捕捉してもよい。」

「[0044]スキャンシステム104は、一般に、本明細書で企図されるような客観的損傷評価に用いることができる物品のデジタル表面表現を捕捉するのに適した任意のシステムであってよい。スキャンシステム104は、例えば、スキャンされる物品の表面検査(例えば、ひょう害検出又は他のタイプの欠陥検出のための自動車のスキャン、リース又はレンタル期間の終了時の検査、又は自動車の状態のベースラインを確立するために必要な他のプロセス)のための光学測定システム、例えば、カスタマイズした光学測定システム、又はモバイル光学測定システム、を含んでもよい。したがって、スキャンシステム104は、光学的技術を使用して、スキャンされる品目の三次元表面データを捕捉してもよい。一態様では、表面データは、表面の三次元モデルであってもよい。別の態様では、表面データは、起こり得る損傷を示す表面偏差情報を符号化してもよい。スキャンシステム104はまた、またはその代わりに、機械的技法、音響技法などを用いてスキャンされている品目の三次元表面データを捕捉してもよい。」

「[0048]また、本明細書で企図されるようなスキャナ124は、複数のスキャナを含んでもよいことが理解されよう。したがって例えば、上述した技術のいくつかは、形状を決定し、ひょうのへこみまたは小さな物体からの他の衝撃損傷のような小さな大きさの欠陥を検出するために、反射面(自動車パネルなど)の表面法線を測定するために特に有利である。これらの技術を用いたスキャナは、特に表面欠陥の大きさは小さいが、欠陥の中心またはその付近での表面法線の変化率が大きい場合に、一貫した客観的な方法でひょうのへこみを見つけ、その特徴を示すのに有用である。これは、そうでなければ、鑑定人または他の技術者による識別困難な表面欠陥の一貫性のない主観的評価に依存する他の技術、または総体的なパネル形状を捕捉するのには適しているかもしれないが、ひょう害または比較的高速(例えば、影響を受けた表面を塑性変形させるのに十分)で小さな表面への他の衝撃から生じる小さな表面欠陥を捕捉する感度または分解能が不足している他のデジタル三次元走査技術に勝る大きな利点を提供するものである。同時に、衝突などによる内部損傷を評価するためには、直線的な寸法(例えば、バンパーからバンパーまでの長さ)が重要になる場合がある。これは、レーザー距離測定や、距離や長さの単一で正確な測定に適した他の技術を使用して、より有用に測定できる。別の態様では、集合的な三次元形状は、例えば、車両のタイプを自動的に決定するため、または車両の一部に対する中程度または重度の損傷、またはずれたパネル、バンパーなどの大規模な欠陥または損傷を検出するために有用である場合がある。この種の損傷が評価される場合、他の種類の三次元走査、例えば、シェイプフロムモーション、構造化光、レーザー飛行時間(例えば、Lidarなど)、コンピュータ断層撮影などを使用する技術が使用されてもよい。別の態様では、二次元の視覚的損傷が、例えば、光学的文字認識(「OCR」)(例えば、ナンバープレート情報の捕捉のため)、塗装または仕上げにおける欠陥のマシンビジョン認識のため、または全体的な車両形状の二次元捕捉のために有用である場合がある。本明細書で企図する有用な走査システムは、査定、損傷評価、修理検証などの下流工程で使用するために、車両の客観的なデジタル評価を取り込むために、これらの異なるタイプのスキャナのいくつかまたはすべてを統合してもよく、そのようなすべての組み合わせは、本開示の範囲に入ることが意図されている。」

「[0053]分析設備108は、スキャンシステム104又はクライアント106などのシステム100の参加者から受信したデータ132を分析してもよい。分析設備108は、本明細書に記載される機能を実行するためにアルゴリズム144を適用するように構成されたプロセッサ140及びメモリ142を含んでもよい。具体的には、プロセッサ140は、データ132を分析し、規則136のセットを適用して、スキャナデータの処理、損傷の位置特定、修理見積りの作成など、任意の所望の分析機能を実行するように構成されてもよい。解析設備108上のメモリ142は、ルールエンジン134を実行するためのコンピュータコードを格納してもよく、また、メモリ142はデータ132を格納してもよい。」

「[0054]分析設備108は、スキャンシステム104と協働して、画像を取り込み、画像を結合し、信号処理を行い、そこから取り出されたデータをスキャンされた物品の損傷の表現に変換するソフトウェアを含んでもよい。分析設備108は、レポート146を生成してもよい。レポート146は、スキャンされたアイテムの損傷に関するデータ、例えば、へこみ、傷、欠け(例えば、石の欠け)、及び他の表面損傷の形態での車両の損傷に関するデータを含んでもよい。損傷に関するデータは、損傷の検出及び分類に関する情報、これらに限定されないが、場所、サイズ、修理費用などを含んでもよい。」

「[0059]レポート146は、スキャンで見つかった欠陥又は損傷領域の全体数を含んでもよく、それは、領域(例えば、パネル)、サイズ(例えば、コインなどの所定のオブジェクトに関連して−例えば、米国市場では、ダイム、クォーター、ハーフダラー、特大などのサイズ)によりさらに分類され得、または、1ミリ未満、2ミリ未満、3ミリ未満などの他の適切なサイズビンまたはカテゴリ)、および重大度(例えば、深さ、不規則性、塗装損傷などを表す0〜100などのスケールで、またはより一般的に修復の難しさを表す)で評価される。そして、各パネルの損傷部分の平均的な大きさを、深刻度と共に計算することができる。このようにして客観的な損傷情報が作成されると、さらなる自動処理が可能になる。例えば、この情報を用いて、車両の各エリア(例えば、車両の各パネル)の交換又は修理の推定金額を生成してもよい。これらの費用の合計は、レポート146の全体的な見積もりを提供するために使用されてもよい。さらに、例えば部品コストや人件費に基づいて、異なる修理や交換の選択肢の中から選択するための規則が適用されてもよい。一態様では、分析設備108は、ダメージを評価し、例えばレポート146の中でダメージを修理費用に変換するためのコンポーネントを含んでもよい。これは、車両を修理する最も費用対効果の高い方法、および他の自動修理費用計算(例えば、相手先商標製品製造会社(OEM)対再生部品または非OEM部品を使用する部品価格)を含んでもよい。したがって例えば、パネルが過度の数のひょう害のへこみを有する場合、パネル全体を交換するよりもへこみを個別に修理する方がより高価である場合があり、これらの選択肢の間の規則に基づく選択を客観的に適用し、レポート146に組み入れることができる。」

「[0065]上述したように、解析設備108は、測定のために1つ以上のアルゴリズム144を使用してもよい。これらのアルゴリズム144は、高鏡面又は反射面用に特別に選択されたイメージング技術、例えば、偏向法又は立体反射法を適用してもよい。これらの技法は、完全な三次元モデルの捕捉のために適合されてもよい(すなわち、偏光モード分散(PMD)復調のために三次元モデルを使用する)。したがって、実装は、システム100に三次元車両モデルを仮想的に位置決めし、次いで、反射光と表面法線の測定に基づいてモデル上の損傷を検出することを含んでもよい。正規化された理想的な車両モデルをベースラインとして使用し、この理想的な車両モデルとスキャンされたモデルとの間の差を使用して、損傷領域の候補を検出してもよい。生のスキャンデータ、(理想化された三次元モデルなどに基づく)予想データ、および他の情報の他の組み合わせも、測定アルゴリズム144において使用されてもよく、またはその代わりに使用されてもよい。」

「[0073]リモートリソース118は、分析設備108を含むか、またはそうでなければ、上述した分析設備108の機能性または構成要素を含んでよく、またはリモートリソース118は、本明細書で企図されるように損傷評価および修理機能に有用な任意の他のリモートリソースであり得る。例えば、リモートリソース118は、第三者によって提供され、分析施設108によって実行される分析に有用に統合され得る交換部品コストデータベース、オンライン見積もりツールなどを提供してもよい。リモートリソース118はまた、またはその代わりに、中古車価格システム、部品注文プラットフォームなどのインフラストラクチャリソースを含んでもよい。」

「[0078]サーバ122は、分析施設108などのシステム100の構成要素、または本明細書に記載される他のプラットフォームおよびリソースをホストしてもよい。一般に、サーバ122は、サーバ122上でかかるサービスを実装するか、またはネットワーク102を介してかかるサービスを互いに協調関係で結合するためのアプリケーションプログラミングインターフェースまたは他のコネクタ(複数可)などのインターフェースを提供することによって、かかるサービスの一部または全部を統合してもよい。サーバ122はまた、またはその代わりに、所有者、保険会社、修理専門家、鑑定人、管理者などが操作するクライアント装置を介したリモートアクセスおよび人間同士の対話のためのグラフィカルユーザインターフェースを提供してもよい。一態様では、サーバ122は、例えば、ネットワーク102上の他のサービスおよびプラットフォームによるプログラム的アクセスをサポートするために、データベース120のネットワークインターフェースを提供してもよく、または、クライアント106などのクライアント装置における人間のユーザによるアクセスのためにグラフィカルユーザインターフェース160を提供してもよい。」

「[0082]データベース120は、モデル128、データ132、ルール13
6などを含む情報を無制限に格納することができる。」

「[0085]データベース120内のデータ132は、保険会社情報、調整レポートの基準及びフォーマット、供給者情報(例えば、修理及び部品のコスト)、車両のメーカー及びモデルに対する三次元モデルなど、本明細書で参照される任意のデータを制限なく含むことができる。規則136は、任意のコスト見積もり規則、保険契約または適用範囲規則、損害評価または分析規則、任意の参加事業体の承認規則、または本明細書で企図される損害評価および修理システムを促進するために有用な任意の他の規則などを含んでもよい。」

「[0121]図4は、損傷報告書を生成するための方法を示す図である。一般に、方法400は、スキャンと保険又は修理関連情報とをリンクさせることを含んでもよい。以下の説明は、自動車車両の損傷に焦点を当てているが、本発明の原理は、より一般的に、損傷推定及び修理管理が三次元スキャン又は他のデジタル表面表現からの表面情報を有用に活用できる任意の環境に適応され得ることが理解されるであろう。」

「[0122]ステップ402に示すように、方法400は、車両のスキャンを取得することを含んでもよい。スキャンは、上述した技術のいずれかを用いたスキャンなど、車両のパネルのデジタル表面表現を含んでもよい。これは、多数の異なるスキャンシステムでスキャンを得ることを含んでもよい。例えば、あるデジタル表面表現は、ひょう害によるへこみなどの表面変形を特定してもよく、別のスキャンは、大規模損傷の特定、車両タイプの特定(および完全性チェックとして他の車両識別情報との照合)、または車両の外装上の様々なパネルおよび他のハードウェアの位置特定などの様々な目的のために車両全体の三次元スキャンを取得してもよい。また、スキャンは、車両または他のアイテムを特徴付ける他のタイプのデジタルデータを含んでもよく、またはその代わりに、車両または他のアイテムを特徴付ける他のタイプのデジタルデータを含んでもよい。例えば、車両の状態を記録するため、または表面の損傷、塗装の劣化などを分析するために、1つまたは複数の二次元画像を取得してもよい。スキャンは、長さ、幅、高さ、重量などの車両総寸法の測定も含むことができ、またはその代わりに、車両総寸法の測定も含むことができる。」

「[0128]ステップ406に示すように、方法400は、パネル内の欠陥を検出し、区別するためにスキャンを分析することを含んでもよい。一般に、これは、ステップ402からのスキャンの結果を期待される結果と比較することを含んでもよい。一態様では、これは、スキャン中に得られたデジタル表面表現からの三次元データを、車両に基づく(例えば、車両が製造されたときのパネルの表面形状に基づく)理想化スキャン、または評価されている特定の車両に対する先行スキャンに基づくなどの対応するパネルに対する代表的な三次元モデルと空間比較することを含んでもよい。これは、ドアやフェンダーパネルの潰れなど、比較的深刻な損傷に対して特に有用であると考えられる。しかしながら、車両の三次元モデルを捕捉するために使用され得る三次元スキャン技術は、道路の破片またはひょうによって引き起こされる小さな変形に対して十分に敏感でない可能性がある。」

「[0129]上述のように、表面法線はひょう害のような小さな衝撃のへこみに対して非常に敏感であり、反射面の表面法線を測定するための任意の技術(本明細書に記載されたもののいずれかなど)は、これらのへこみの位置、サイズ、深さに関する有用な情報を捉えるために使用することができる。したがって、一態様では、スキャンを分析することは、ひょう害または同様の小衝撃変形などの欠陥を検出するために、パネルの表面法線を評価することを含んでもよい。スキャンを分析することはさらに、検出されたこれらのへこみを数える、特徴付ける、または測定する、および要約データ、グラフ表示などを提供するなどの関連処理を含んでもよい。」

「[0133]ステップ410に示すように、方法400は、パネル内の複数の欠陥を有するパネルの画像を含むパネルの視覚化を作成することを含んでもよい。これは、例えば、サイズ(直径、深さ)、重大性、修理コスト、原因などの任意の数の欠陥属性に従ったへこみなどの様々な表面欠陥の色分け識別とともに、車両のパネルの二次元または三次元レンダリングを含んでもよい。したがって、1つの態様において、例えばひょう害による表面欠陥の視覚的強調表示と共に車両のパネルを表示するユーザインタフェースと、重大度及び推定修理コストのような関連情報と、このようなユーザインタフェースを生成するためのシステムとが、本明細書において企図される。画像データの変動を特定するための多数の画像処理技術が知られており、例えば、パネルのデジタル表面表現がどのように符号化されるかに依存し得る(例えば、ポリゴンメッシュ対表面法線データ)。このように、ひょう害を自動的に識別するための特定の技術は、ここでは詳細に議論されず、当業者であれば、多数の異なる自動化された損傷検出技術を容易に展開することができるであろう。上述したように、反射面上の表面法線を検出するための技術は、パネル表面における小さな偏向を突き止めるのに特に適しており、これらの画像キャプチャ技術は、自動検出と評価を容易にするために適切な画像処理技術と有用に組み合わされるかもしれない。一般に、得られた可視化は、本明細書で企図されるような損傷報告書に組み込まれることがある。」

「[0138]ステップ418に示すように、方法400は、スキャンに基づいて修理方法を選択することを含んでもよい。一態様では、修理方法は自動的に選択されてもよい。例えば、へこみまたは他の表面欠陥などの損傷は、どのような種類の損傷が存在するかを決定し、各欠陥に対する修理オプションを決定し、その後、パネルまたは車両全体に対する最も安価な全体的修理を決定するために、ルール、機械学習、または他の技術を使用して最初に評価されてもよい。例えば、方法400は、各利用可能な技術(例えば、ペイントレスデント除去または他の修理技術)が損傷の少なくとも一部に対して可能であるかまたは適しているかを考慮することによって、修理技術が多数の異なる選択肢から選択される選択プロセスを組み込んでよい。一態様では、ペイントレスデント除去にかかるコストを従来の修理と比較衡量し、システムは自動的に最も安価なオプションを選択するか、またはオプションと関連コストをユーザに提供することができる。」

「[0139]その選択には、「プッシュ・トゥ・ペイント」技術(すなわち、へこみを押し出し、その後、塗料で仕上げる)、接着剤引き出し技術(すなわち、ルーフレール上のへこみ、例えば、押すことができないので、接着剤ポイントを適用してへこみを引き出す)等、他の修理技術の中から選択することができる。損傷の位置は、どのような種類の修理が可能かを決定する要因になり得る。したがって、システムは、様々な要因(例えば、場所、サイズ、分類など)を用いて、利用可能な修理オプションを分析し、それらが物理的または実際的に可能かどうかを評価し、それらが金銭的に効率的かどうかを決定することができる。例えば、このシステムは、損傷が押したり引いたりできる場所に配置されているかどうかを分析し、その後、自動的に修理技術を選択し、それに基づいて修理見積もりを計算することができる。修理見積りを決定するための上記の特性は、任意の適切な一連の客観的基準または規則に基づいてもよい。」

「[0141]ステップ420に示すように、方法400は、車両の修理見積もりを作成することを含んでもよい。修理見積もりは、上述したように自動的に選択された修理方法または手動で選択された修理方法に基づいてもよい。見積もりは、修理に必要な部品及び労働力の見積もりに基づく、修理を行うための総費用の見積もりを含んでもよい。コストは、車両スキャン、修理方法の選択、及びスキャン中に自動的に得られるか又は技術者若しくは他のユーザによって手動で入力される他の有用な情報を含む利用可能なデータに基づいて、ローカル又はオンラインの修理原価計算ガイドライン又はツールを用いて計算されてもよい。修理見積もりは、損害報告書に追加することができる。上述したように、修理見積もりは、例えば、損傷の位置(例えば、パネル上)、損傷領域の数(例えば、へこみの数)、損傷の大きさ、及び損傷の分類、並びに上述したような異なる修理技術の中からの選択を用いて得ることができる。」

「[0145]ステップ428に示すように、方法400は、損害報告書を作成することを含んでもよい。一般に、損害報告書は、例えば、車両識別情報、スキャン(車両状態に関する任意の数のデジタル表面表現又は他の客観的データを含む)、損害の分析、損害を修復するためのコストの見積もり、及び他の任意の有用な情報を含む、上述したデータのいずれか又は全てを組み込んでよい。損害報告書は、保険代理店または他の適切な当事者によって維持される中央リポジトリに送信されてもよく、そこで損害報告書は、意思決定の通知、対応する修理のスケジュールおよび管理、承認の受領、支払いの処理などのために様々なエンティティが対話できるライブレコードとして動作することが可能である。」

「[0184]上記のシステム、装置、方法、プロセスなどは、ハードウェア、ソフトウェア、または特定の用途に適したこれらの任意の組み合わせで実現することができる。ハードウェアは、汎用コンピュータ及び/又は専用コンピューティングデバイスを含んでもよい。これは、内部及び/又は外部メモリと共に、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、組み込みマイクロコントローラ、プログラム可能なデジタル信号プロセッサ又は他のプログラム可能なデバイス又は処理回路における実現を含む。これはまた、またはその代わりに、1つ以上の特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイ論理コンポーネント、または電子信号を処理するように構成され得る任意の他の装置またはデバイスを含んでもよい。上記のプロセスまたはデバイスの実現は、Cなどの構造化プログラミング言語、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、または任意の他の高レベルまたは低レベルプログラミング言語(アセンブリ言語、ハードウェア記述言語、およびデータベースプログラミング言語および技術を含む)を使用して作成されたコンピュータ実行可能コードを含み、上記デバイスの1つ、ならびにプロセッサ、プロセッサアーキテクチャ、または異なるハードウェアおよびソフトウェアの異種組み合わせ上で実行するように格納、コンパイル、または解釈され得ることはさらに理解されよう。別の態様では、方法は、そのステップを実行するシステムで具現化されてもよく、多くの方法でデバイス間に分散されてもよい。同時に、処理は、上述した様々なシステムなどのデバイスに分散されてもよく、または、機能のすべてが専用のスタンドアロンデバイスまたは他のハードウェアに統合されてもよい。別の態様では、上述した処理に関連するステップを実行するための手段は、上述したハードウェアおよび/またはソフトウェアのいずれかを含んでもよい。そのようなすべての順列および組み合わせは、本開示の範囲に入ることが意図されている。」









(2)引用文献3に記載された発明
上記(1)の記載から以下のことが言える。
ア 段落[0037]、[0038]、[Fig.1]の記載によると、引用文献3には、「スキャンシステム104、任意の数のクライアント106、分析施設108」、「リモートリソース118、データベース120、及びサーバ122」、それらを「相互接続するネットワーク102を含」む、「車両の損傷評価および修理のためのシステム」が記載されている。
イ 段落[0042]、[0044]の記載によると、引用文献3には、「スキャンシステム104は」、「携帯型又は移動型のスキャンシステムであってよく」、「光学的技術を使用して、スキャンされる品目の三次元表面データを捕捉し」、「くぼみ検出に使用するために形状又は局所的な表面法線などの表面情報を捕捉」することが記載されている。
ウ 段落[0048]、[0053]、[0054]、[0065]、[0082]、[0085]の記載によると、引用文献3には、「分析設備108は、スキャンシステム104又はクライアント106などのシステム100の参加者から受信したデータ132を分析」するもので、「三次元車両モデルを仮想的に位置決めし、次いで、反射光と表面法線の測定に基づいてモデル上の損傷を検出する」ものであって、「特に表面欠陥の大きさは小さいが、欠陥の中心またはその付近での表面法線の変化率が大きい場合に、一貫した客観的な方法でひょうのへこみを見つけ」ることができ、「プロセッサ140及びメモリ142を含」み、「プロセッサ140は、データ132を分析し」、「任意のコスト見積もり規則、保険契約または適用範囲規則、損害評価または分析規則」であり、「データベース120」に「格納」された「規則136のセットを適用して、スキャナデータの処理、損傷の位置特定、修理見積りの作成など」「の分析機能を実行するように構成」され、「スキャンされたアイテムの」「へこみ、傷、欠け(例えば、石の欠け)、及び他の表面損傷の形態」についての、「場所、サイズ、修理費用」といった、「損傷の検出及び分類に関する情報」を含む「車両の損傷に関するデータを含」む「レポート146を生成」することが記載されている。
エ 段落[0059]の記載によると、引用文献3には、「レポート146は、スキャンで見つかった欠陥又は損傷領域の全体数を含んでもよく、それは、領域(例えば、パネル)、サイズによりさらに分類され」、「各パネルの損傷部分の平均的な大きさを、深刻度と共に計算することができ」、「このようにして客観的な損傷情報が作成されると、さらなる自動処理が可能にな」り、「この情報を用いて、車両の各エリア(例えば、車両の各パネル)の交換又は修理の推定金額を生成してもよ」く、「部品コストや人件費に基づいて、異なる修理や交換の選択肢の中から選択するための規則が適用され」、「分析設備108は、」「例えば、パネルが過度の数のひょう害のへこみを有する場合、パネル全体を交換するよりもへこみを個別に修理する方がより高価である場合があり、これらの選択肢の間の規則に基づく選択を客観的に適用し、レポート146に組み入れることができ」ることが記載されている。
オ 段落[0073]、[0078]の記載によると、引用文献3には、「リモートリソース118は、第三者によって提供され、分析施設108によって実行 される分析に有用に統合され得る交換部品コストデータベース」を「提供」し、「サーバ122は、分析施設108などのシステム100の構成要素」「をホスト」し、「データベース120のネットワークインターフェースを提供」することが記載されている。
カ 段落[0121]、[0122]、[0128]、[0133]、[Fig.4]の記載によると、引用文献3には、「損傷報告書を生成するため」に、「大規模損傷の特定、車両タイプの特定(および完全性チェックとして他の車両識別情報との照合)、または車両の外装上の様々なパネルおよび他のハードウェアの位置特定などの様々な目的のために車両全体の三次元スキャンを取得」し、「ひょう害または同様の小衝撃変形などの欠陥を検出するために、パネルの表面法線を評価することを含」む「スキャンを分析すること」を行い、「サイズ(直径、深さ)、重大性、修理コスト、原因などの任意の数の欠陥属性に従ったへこみなどの様々な表面欠陥の色分け識別とともに、車両のパネルの二次元または三次元レンダリングを含」む、「パネル内の複数の欠陥を有するパネルの画像を含むパネルの視覚化を作成」することが記載されている。
キ 段落[0138]、[0139]、[0141]、[0145]、[Fig.4]の記載によると、引用文献3には、「スキャンに基づいて」「修理方法は自動的に選択」し、「選択には、「プッシュ・トゥ・ペイント」技術(すなわち、へこみを押し出し、その後、塗料で仕上げる)、接着剤引き出し技術(すなわち、ルーフレール上のへこみ、例えば、押すことができないので、接着剤ポイントを適用してへこみを引き出す)等」があり、「自動的に修理技術を選択し、それに基づいて修理見積もりを計算」し、「見積もりは、修理に必要な部品及び労働力の見積もりに基づく、修理を行うための総費用の見積もりを含」み、「車両識別情報、スキャン、損害の分析、損害を修復するためのコストの見積もり、及び他の任意の有用な情報を含む」「損害報告書を作成する」ことが記載されている。

以上、上記ア〜キから、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。

「スキャンシステム104、任意の数のクライアント106、分析施設108、リモートリソース118、データベース120、及びサーバ122、それらを相互接続するネットワーク102を含む、車両の損傷評価および修理のためのシステムであって(上記ア)、 スキャンシステム104は、携帯型又は移動型のスキャンシステムであってよく、光学的技術を使用して、スキャンされる品目の三次元表面データを捕捉し、くぼみ検出に使用するために形状又は局所的な表面法線などの表面情報を捕捉し(上記イ)、
分析設備108は、スキャンシステム104又はクライアント106などのシステム100の参加者から受信したデータ132を分析するもので、三次元車両モデルを仮想的に位置決めし、次いで、反射光と表面法線の測定に基づいてモデル上の損傷を検出するものであって、プロセッサ140及びメモリ142を含み、プロセッサ140は、データ132を分析し、任意のコスト見積もり規則、保険契約または適用範囲規則、損害評価または分析規則であり、データベース120に格納された規則136のセットを適用して、スキャナデータの処理、損傷の位置特定、修理見積りの作成などの分析機能を実行するように構成され、スキャンされたアイテムのへこみ、傷、欠け(例えば、石の欠け)、及び他の表面損傷の形態についての、場所、サイズ、修理費用といった、損傷の検出及び分類に関する情報を含む車両の損傷に関するデータを含むレポート146を生成し(上記ウ)、
レポート146は、スキャンで見つかった欠陥又は損傷領域の全体数を含んでもよく、それは、領域(例えば、パネル)、サイズによりさらに分類され、各パネルの損傷部分の平均的な大きさを、深刻度と共に計算することができ、このようにして客観的な損傷情報が作成されると、さらなる自動処理が可能になり、この情報を用いて、車両の各エリア(例えば、車両の各パネル)の交換又は修理の推定金額を生成してもよく、部品コストや人件費に基づいて、異なる修理や交換の選択肢の中から選択するための規則が適用され、分析設備108は、例えば、パネルが過度の数のひょう害のへこみを有する場合、パネル全体を交換するよりもへこみを個別に修理する方がより高価である場合があり、これらの選択肢の間の規則に基づく選択を客観的に適用し、レポート146に組み入れることができ(上記エ)、
リモートリソース118は、第三者によって提供され、分析施設108によって実行される分析に有用に統合され得る交換部品コストデータベースを提供し、
サーバ122は、分析施設108などのシステム100の構成要素をホストし、データベース120のネットワークインターフェースを提供し(上記オ)、
損傷報告書を生成するために、
大規模損傷の特定、車両タイプの特定(および完全性チェックとして他の車両識別情報との照合)、または車両の外装上の様々なパネルおよび他のハードウェアの位置特定などの様々な目的のために車両全体の三次元スキャンを取得し、
ひょう害または同様の小衝撃変形などの欠陥を検出するために、パネルの表面法線を評価することを含むスキャンを分析することを行い、
サイズ(直径、深さ)、重大性、修理コスト、原因などの任意の数の欠陥属性に従ったへこみなどの様々な表面欠陥の色分け識別とともに、車両のパネルの二次元または三次元レンダリングを含む、パネル内の複数の欠陥を有するパネルの画像を含むパネルの視覚化を作成し(上記カ)、
スキャンに基づいて修理方法は自動的に選択し、選択には、「プッシュ・トゥ・ペイント」技術(すなわち、へこみを押し出し、その後、塗料で仕上げる)、接着剤引き出し技術(すなわち、ルーフレール上のへこみ、例えば、押すことができないので、接着剤ポイントを適用してへこみを引き出す)等があり、自動的に修理技術を選択し、それに基づいて修理見積もりを計算し、見積もりは、修理に必要な部品及び労働力の見積もりに基づく、修理を行うための総費用の見積もりを含み、車両識別情報、スキャン、損害の分析、損害を修復するためのコストの見積もり、及び他の任意の有用な情報を含む損害報告書を作成する(上記キ)、
車両の損傷評価および修理のためのシステム。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1の「車両の損傷を解析する損傷解析支援システム」の「車両の損傷」は、本願発明1の「移動体」の「外部から視認できる変形を伴う損傷」に相当し、引用発明1は、解析結果に基づき損傷の修復に要する費用を算出し、見積もり処理を行うものであるから、下記の相違点を除き、本願発明1の「外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する損失価格評価システム」に相当する。

(イ)引用発明1の「車種選択画面200をディスプレイ106に表示し、オペレータによる車種選択を本車種選択画面200に於いて受け付け(S101)」ることは、本願発明1の「前記移動体の種類を入力する」ことに相当する。そうすると、引用発明1は、本願発明1の「前記移動体の種類を入力する入力部」と同様の手段を備えていることは明らかである。

(ウ)引用発明1の「衝撃力の設定画面600をディスプレイ106上に表示し、この設定画面600上に於いて衝撃力の指定を受け付け(S105)、設定された損傷範囲に於いて、その損傷範囲に組み付けられている部品を把握し(S201)、損傷範囲に位置した部品群を対象として、損傷の及んだ範囲に位置するポリゴン数を計数し(S202)、この計数したポリゴン数と、当該解析対象部位の三次元立体化にあたり割り当てられたポリゴン数(規定ポリゴン数)との割合に基づき損傷度を算出する(S203)、損傷解析処理(S106)」を行うことは、S108において、「先のステップ106で計数したポリゴン数と、解析対象部位に相当する判定ラインとを比較し、計数したポリゴン数が判定ラインとして設定されているポリゴン数を上回るか否かに基づき、この損傷部位に求められる作業項目が選択され、これら解析結果に基づき損傷の修復に要する費用を算出してディスプレイ106に表示する、見積もり処理を行」っているから、「損傷の修復に要する費用」(本願発明1の「損失価格」に相当する。)を算出するためのパラメータ値を求めているといえる。
そうすると、引用発明1の「衝撃力の設定画面600をディスプレイ106上に表示し、この設定画面600上に於いて衝撃力の指定を受け付け(S105)、設定された損傷範囲に於いて、その損傷範囲に組み付けられている部品を把握し(S201)、損傷範囲に位置した部品群を対象として、損傷の及んだ範囲に位置するポリゴン数を計数し(S202)、この計数したポリゴン数と、当該解析対象部位の三次元立体化にあたり割り当てられたポリゴン数(規定ポリゴン数)との割合に基づき損傷度を算出する(S203)、損傷解析処理(S106)」を行うことと、本願発明1の「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める」ことは、「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を求める」点で共通する。
そうすると、引用発明1と本願発明1とは、「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を求める損傷解析部」を備えている点で共通するといえる。

(エ)引用発明1の「部品データベースD2」は、本願発明1の「データベース」に相当する。
そうすると、引用発明1の「部品データベースD2を参照し、損傷の及んだ部品のデータを部品データベースから読み出し、損傷範囲のサムネール画像703と共に、損傷の及んだ部品のイメージ画像及び部品番号、部品名称、部品価格等の一覧を表示し(S107)、解析対象部位の損傷判定データを参照し、先のステップ106で計数したポリゴン数と、解析対象部位に相当する判定ラインとを比較し、計数したポリゴン数が判定ラインとして設定されているポリゴン数を上回るか否かに基づき、この損傷部位に求められる作業項目が選択され、これら解析結果に基づき損傷の修復に要する費用を算出してディスプレイ106に表示する、見積もり処理を行う(S108)」ことと、本願発明1の「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する」ことは、「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する」点で共通する。
そうすると、引用発明1は、本願発明1の「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価部」と同様の手段を備えているといえる。

(オ)以上、(ア)〜(エ)によると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する損失価格評価システムであって、
前記移動体の種類を入力する入力部と、
前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を求める損傷解析部と、
前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価部とを備える損失価格評価システム。

[相違点]
(相違点1)
本願発明1は、「前記移動体の前記損傷を含む部分を3次元スキャンして、3次元スキャンデータを取得する3次元スキャンデータ入力部」を備えているのに対して、引用発明1は対応する構成を備えていない点。

(相違点2)
「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を求める損傷解析部」が、本願発明1は「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める損傷解析部」であるのに対して、引用発明1は「損傷解析処理」において、3次元スキャンデータを用いていない点。

(相違点3)
本願発明1は「前記3次元スキャンデータは、前記3次元スキャンによって得られる前記移動体の表面の各構成点の3次元座標と、隣接する複数の構成点によって形成される格子面の面法線ベクトルとを有して」いるのに対して、引用発明1は対応する特定がない点。

(相違点4)
本願発明1は「前記損傷解析部は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求め」ているのに対して、引用発明1は対応する特定がない点。

イ 相違点についての当審の判断
事案に鑑み、上記相違点4について先に検討する。
相違点4に係る本願発明1の「前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」ことは、引用文献2及び3には記載されておらず、本願出願前に周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用発明3について
ア 対比
本願発明1と引用発明3を対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明3の「車両の損傷評価および修理のためのシステム」は、車両全体の三次元スキャンを取得し、損傷の検出を行い、修理方法を選択し、それに基づいて修理見積もりを計算するものであり、ここでいう「損傷」は、修理を要するような「外部から視認できる変形を伴う損傷」を含むことは明らかである。よって、引用発明3の「損傷」、「車両」、「修理見積もり」は、それぞれ本願発明1の「外部から視認できる変形を伴う損傷」、「移動体」、「損傷による損失価格」に相当する。
また、引用発明3が対象とする「車両」は「損傷」を受けたものであるから、引用発明3の「損傷」を有する「車両」について修理見積もりを計算する「車両の損傷評価および修理のためのシステム」は、下記の相違点を除き、本願発明1の「外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する損失価格評価システム」に相当する。

(イ)引用発明3では、車両全体の三次元スキャンを取得することや車両識別情報との照合によって「車両タイプ」を特定しており、当該「車両タイプ」は、車両の種類を示すものといえるから、引用発明3の「車両タイプ」は、本願発明1の「移動体の種類」に相当する。また、引用発明3の「車両の損傷評価および修理のためのシステム」が、「スキャナデータの処理」の「分析機能」といった、当該「車両タイプ」を取得する手段を有することは明らかである。
よって、引用発明3の「車両タイプ」を取得する手段は、本願発明1の「前記移動体の種類を入力する入力部」と、「前記移動体の種類を取得する手段」である点で共通する。

(ウ)引用発明3の「スキャンシステム104」は、スキャンされる車両全体の三次元スキャンを取得するものであって、その結果、損傷を検出するから、対象となる車両の「損傷」を含む部分についても三次元スキャンするものである。
よって、引用発明3の、車両の「損傷」を含む車両全体を三次元スキャンした「三次元表面データ」は、下記の相違点を除いて、本願発明1の「移動体の前記損傷を含む部分を3次元スキャン」した「3次元スキャンデータ」に相当する。
そして、引用発明3の「スキャンシステム104」は、車両の「損傷」を含む車両全体を三次元スキャンして、車両の三次元表面データを補足し、三次元表面データを分析設備108へ入力するものであるから、引用発明3の当該「スキャンシステム104」は、本願発明1の「前記移動体の前記損傷を含む部分を3次元スキャンして、3次元スキャンデータを取得する3次元スキャンデータ入力部」に相当する。

(エ)引用発明3では、スキャンによる三次元表面データ、局所的な表面法線の表面情報に基づいてモデル上の損傷を検出し、欠陥又は損傷領域の全体数、各パネルの損傷部分の平均的な大きさ、深刻度といった「損傷情報」に基づいて交換又は修理の推定金額を生成しており、当該「損傷情報」は損傷に応じて決まり、「修理見積もり」の根拠となるものであるから、引用発明3の、損傷に応じて決まり、修理見積もりの根拠となる「損傷情報」は、本願発明1の「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値」に相当する。
また、引用発明3の「損傷情報」は「分析装置108」によって作成されるものであり、「分析設備108」が、「スキャナデータの処理、損傷の位置特定」をする「分析機能」といった、「損傷情報」を作成する手段を有することは明らかである。
そして、引用発明3の「損傷情報」は、スキャンによる三次元表面データ及び局所的な表面法線の表面情報に基づいて求められるものであるから、引用発明3の、損傷に応じて決まり、修理見積もりの根拠となる「損傷情報」を、スキャンによる三次元表面データ及び表面法線の測定結果によって作成する手段は、本願発明1の「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて解析する損傷解析部」に相当する。

(オ)引用発明3の「分析設備108」は、「損傷情報」によって、修理見積もりを計算するものであり、その際、任意のコスト見積もり規則といった、データベース120に格納された規則136のセット、「リモートソース118」が提供する「交換部品コストデータベース」、部品コストや人件費に基づいて、交換又は修理の推定金額を生成しており、一般に、部品コストは車種によって異なることを考慮すると、データベースから交換部品コストを抽出するにあたって上記イで示した「車両タイプ」を利用していることは明らかである。
また、修理見積の計算は、「分析設備108」によって行われるものであり、引用発明3の「分析設備108」が、「修理見積りの作成」の「分析機能」といった、交換又は修理の推定金額を生成する手段を有することは明らかである。
よって、引用発明3の、「車両タイプ」、「損傷情報」に基づき、「交換部品コストデータベース」を用いて、修理見積を計算する手段は、本願発明1の「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価部」に相当する。

(カ)一般に三次元スキャンデータはスキャン対象の各構成点の三次元座標からなるものであるから、引用発明3の「スキャンシステム104」によって取得される、スキャンされる車両の三次元表面データは、車両の表面の各構成点の三次元座標を有するものといえる。
また、引用発明3は、局所的な法線を表現するにあたり、三次元車両モデルを仮想的に位置決めした上で表面法線を測定するものであるから、引用発明3の「局所的な表面法線」は、車両の三次元表面データに対する局所的な表面法線、すなわち、車両の表面の複数の構成点によって形成される面についての表面法線であることは明らかである。
さらに、三次元データ上での表面法線を情報処理するためには、通常、表面法線ベクトルを用いるから、引用発明3の「表面法線」の「表面情報」が「表面法線ベクトル」であることは明らかである。
よって、引用発明3の「三次元表面データ」が、車両の表面の各構成点の三次元座標を有することは、本願発明1の「前記3次元スキャンデータは、前記3次元スキャンによって得られる前記移動体の表面の各構成点の3次元座標」を有することに相当し、引用発明3の、車両の表面の複数の構成点によって形成される面についての「局所的な表面法線」の「表面情報」は、本願発明1の「隣接する複数の構成点によって形成される格子面の面法線ベクトル」に相当する。
以上のとおりであるから、引用発明3において、「三次元表面データ」が、車両の表面の各構成点の三次元座標を有することと、本願発明1の「前記3次元スキャンデータは、前記3次元スキャンによって得られる前記移動体の表面の各構成点の3次元座標と、隣接する複数の構成点によって形成される格子面の面法線ベクトルとを有」することとは、「前記3次元スキャンデータは、前記3次元スキャンによって得られる前記移動体の表面の各構成点の3次元座標を有」する点で共通する。

(キ)上記(エ)で示したとおり、引用発明3の「分析設備108」が備える「損傷情報」を作成する手段は、損傷に応じて決まり、修理見積もりの根拠となる「損傷情報」を、スキャンによる三次元表面データ及び表面法線の測定結果によって作成するものであり、表面法線の測定結果は、上記(カ)で示した「面法線ベクトル」(車両の表面の複数の構成点によって形成される面についての「局所的な表面法線」の「表面情報」)を指すといえるから、引用発明3の「分析設備108」が備える「損傷情報」を作成する手段が、「面法線ベクトル」を用いて「損傷情報」を作成することと、本願発明1の「前記損傷解析部は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」ことは、「前記損傷解析部は、面法線ベクトルを用いて前記パラメータ値を求める」点で共通する。

(ク)以上、(ア)〜(キ)によると、本願発明1と引用発明3とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する損失価格評価システムであって、
前記移動体の種類を取得する手段、
前記移動体の前記損傷を含む部分を3次元スキャンして、3次元スキャンデータを取得する3次元スキャンデータ入力部と、
前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める損傷解析部と、
前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価部とを備え、
前記3次元スキャンデータは、前記3次元スキャンによって得られる前記移動体の表面の各構成点の3次元座標を有しており、
前記損傷解析部は、面法線ベクトルを用いて前記パラメータ値を求める損失価格評価システム。

[相違点]
(相違点5)
「移動体の種類を取得する手段」が、本願発明1では「移動体の種類を入力する入力部」であるのに対し、引用発明3では、「移動体の種類」(「車両タイプ」)を「取得する手段」である点。

(相違点6)
「隣接する複数の構成点によって形成される格子面の面法線ベクトル」を、本願発明1では「3次元スキャンデータ」が有するのに対し、引用発明3ではそのような特定がされていない点。

(相違点7)
「面法線ベクトルを用いて前記パラメータ値を求める」ことについて、本願発明1では「前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」のに対して、引用発明3はそのような特定がされていない点。

イ 相違点についての当審の判断
事案に鑑み、上記相違点7について先に検討する。
相違点7に係る本願発明1の「前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」ことは、引用文献1及び2には記載されておらず、本願出願前に周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明3及び引用文献1、2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を更に減縮した発明であり、本願発明1の相違点4及び7に係る、「前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」ことを行っているから、上記1(1)イ及び1(2)イでの判断と同じ理由により、本願発明2ないし4は、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明5及び6について
本願発明5及び6は、それぞれ、本願発明1の「損失価格評価システム」に対応する、「損失価格評価方法」及び「コンピュータプログラム」の発明であり、本願発明1の「前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」ことに対応することを、それぞれ「損傷解析工程」及び「損傷解析機能」で行っているから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和4年11月14日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1は「前記損傷解析部は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」という事項、請求項5は「前記損傷解析工程は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」という事項、請求項6は「前記損傷解析機能は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める機能である」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし6は、上記引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 特許法第29条第2項について
令和4年11月14日に提出された手続補正書により、補正後の請求項1ないし4は「前記損傷解析部は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」という事項を有し、補正後の請求項5は「前記損傷解析工程は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める」という事項を有し、補正後の請求項6は「前記損傷解析機能は、前記移動体の表面から所定の距離だけ外方向に離れた検査面を設定し、該検査面と前記面法線ベクトルとの交点を求め、該交点の分布に基づいて前記パラメータ値を求める機能である」という事項を有することとなった結果、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第1号について
(1)補正前の請求項1に記載された「損傷解析部」、補正前の請求項7に記載された「損傷解析工程」、補正前の請求項8に記載された「損傷解析機能」が、発明の詳細な説明に記載されていないという拒絶の理由は、令和4年11月14日に提出された手続補正書により、補正後の請求項1の「損傷解析部」の記載が、「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める損傷解析部」と補正され、補正後の請求項5の「損傷解析工程」の記載が、「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める損傷解析工程」と補正され、補正後の請求項6の「損傷解析機能」の記載が、「前記損傷に応じて定まり、前記損失価格に影響を与える所定のパラメータ値を、前記3次元スキャンデータに基づいて求める損傷解析機能」と補正された結果、解消した。

(2)補正前の請求項1に記載された「損失価格評価部」、補正前の請求項7に記載された「損失価格評価工程」、補正前の請求項8に記載された「損失価格評価機能」が、発明の詳細な説明に記載されていないという拒絶の理由は、令和4年11月14日に提出された手続補正書により、補正後の請求項1の「損失価格評価部」の記載が、「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価部」と補正され、補正後の請求項5の「損失価格評価工程」の記載が、「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価工程」と補正され、補正後の請求項6の「損失価格評価機能」の記載が、「前記移動体の種類および前記パラメータ値に基づいて、所定の計算式またはデータベースを用いて前記損失価格を評価する損失価格評価機能」と補正された結果、解消した。

3 特許法第36条第6項第2号について
(1)補正前の請求項6に記載された「損失評価システム」が明確でないとの拒絶の理由は、令和4年11月14日に提出された手続補正書により、補正後の請求項4の「損失評価システム」の記載が、「請求項1〜3いずれか記載の損失価格評価システムであって、端末とサーバとをネットワークで接続して構成されており、前記端末は、前記入力部と、前記3次元スキャンデータ入力部の一部または全部を有する損失価格評価システム。」と補正された結果、解消した。

(2)補正前の請求項7の「コンピュータによって外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する修理費用見積方法であって」との記載、補正前の請求項8の「コンピュータによって外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価するためのコンピュータプログラムであって」との記載が明確でないとの拒絶の理由は、令和4年11月14日に提出された手続補正書により、補正後の請求項5について「コンピュータによって、外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価する修理費用見積方法であって」と補正され、補正後の請求項6について「コンピュータによって、外部から視認できる変形を伴う損傷を受けた移動体について、該損傷による損失価格を評価するためのコンピュータプログラムであって」と補正された結果、解消した。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は、当業者が引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明1ないし6は、明確であり、かつ、発明の詳細な説明に記載されたものである。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-01-12 
出願番号 P2017-233311
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 鹿野 博嗣
小田 浩
発明の名称 損失価格評価システム  
代理人 加藤 光宏  

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