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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1393871
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-04-25 
確定日 2023-01-23 
事件の表示 特願2017−129950「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日出願公開、特開2019− 10456〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願は、平成29年6月30日の出願であって、令和2年11月19日に手続補正書が提出され、令和3年3月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年7月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月5日に意見書が提出され、令和4年1月20日付け(送達日:同年2月8日)で、拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和4年4月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年4月25日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であって、令和3年5月14日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「【請求項1】
抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、
扉枠と、発光体が実装される装飾基板を有する複数の装飾部と、を備える遊技機であって、
発光体を発光させる発光手段は、演出制御部から発光体を駆動する発光体駆動回路に対して、発光体駆動データを送信し、
前記装飾基板のうち前記扉枠に設けられる扉枠用装飾基板は、特別発光体が実装され、
前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、
前記扉枠用装飾基板の前記特別発光体が実装される実装面は、白色塗膜が略全面に形成されると共に、該白色塗膜の上に黄色で形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有し、
さらに前記白色塗膜の下層にベタグランドを有する、
ことを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「【請求項1】
抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、
扉枠と、発光体が実装される装飾基板を有する複数の装飾部と、を備える遊技機であって、
発光体を発光させる発光手段は、演出制御部から発光体を駆動する発光体駆動回路に対して、発光体駆動データを送信し、
前記装飾基板のうち前記扉枠に設けられる扉枠用装飾基板は、特別発光体が実装され、
前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、且つ、白色を有する外装を備え、
前記扉枠用装飾基板の前記特別発光体が実装される実装面は、白色塗膜が略全面に形成されると共に、該白色塗膜の上に黄色で形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有し、
さらに前記白色塗膜の下層にベタグランドを有する、
ことを特徴とする遊技機。」とする補正である(なお、下線は、補正後の箇所を明示するために当審判合議体が付した。)。

2 補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特別発光体」に関して、「白色を有する外装を備え、」と限定することを含むものである。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

3 新規事項について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【1671】の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

4 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A〜Hは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「A 抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、
B 扉枠と、発光体が実装される装飾基板を有する複数の装飾部と、を備える遊技機であって、
C 発光体を発光させる発光手段は、演出制御部から発光体を駆動する発光体駆動回路に対して、発光体駆動データを送信し、
D 前記装飾基板のうち前記扉枠に設けられる扉枠用装飾基板は、特別発光体が実装され、
E 前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、且つ、白色を有する外装を備え、
F 前記扉枠用装飾基板の前記特別発光体が実装される実装面は、白色塗膜が略全面に形成されると共に、該白色塗膜の上に黄色で形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有し、
G さらに前記白色塗膜の下層にベタグランドを有する、
H ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1の記載及び引用発明
原査定の拒絶の理由において引用された、本件の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2006−141683号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体が付した。以下同じ。)。

ア 記載事項
(ア)
「【0006】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、外部への光の放射効率の向上を図ることができ、しかも熱源が発する熱による悪影響を低減することができる表示用基板を提供することを目的とするものである。」

(イ)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態である遊技機の概略正面図、図2はその遊技機の概略制御ブロック図である。ここでは、遊技機が、いわゆるパチスロ機といわれる回胴式遊技機である場合について説明する。」

(ウ)
「【0029】
電飾表示部40は、各種の遊技状態を報知したり、遊技の演出を行ったりするものである。かかる電飾表示部40は、図1及び図2に示すように、三つのトップLEDユニット41a,41b,41cと、八つのパネルLEDユニット42a,42b,・・・,42hと、三つのバックライト(不図示)と、冷陰極管(不図示)と、三つのトップLED基板44a,44b,44cと、八つのパネルLED基板45a,45b,・・・,45hと、三つのバックライト基板46a,46b,46cと、冷陰極管基板47とを有する。
【0030】
三つのトップLEDユニット41a,41b,41cはそれぞれ、前扉の内側上部の左側、中央、右側に設けられている。これらのトップLEDユニット41a,41b,41cは、それぞれトップLED基板44a,44b,44cに搭載されており、演出制御基板80に搭載されたLED用の駆動回路(不図示)により駆動される。
【0031】
前扉の内側であって表示窓12の左側には、パネルLEDユニット42a,42b,42c,42d,42eがこの順番で上から下に向かう方向に沿って設けられている。また、前扉の内側であって表示窓12の右側には、パネルLEDユニット42f,42g,42hがこの順番で上から下へ向かう方向に沿って設けられている。8個のパネルLEDユニット42a,42b,・・・,42hは、それぞれパネルLED基板45a,45b,・・・,45hに搭載されており、演出制御基板80に搭載されたLED用の駆動回路(不図示)により駆動される。」

(エ)
「【0036】
主制御基板70は、主に遊技内容やメダルの払出しの制御及び管理を行う。かかる主制御基板70には、複数の集積回路素子が実装されている。具体的に、主制御基板70は、図2に示すように、ROM71と、RAM72と、CPU(遊技制御手段)73とを備える。ROM71には、遊技内容の制御等に関する各種のプログラムが格納されている。また、RAM72は、データを一時的に記憶する作業用のメモリである。
【0037】
CPU73は、ROM71に格納されたプログラムを実行することにより、遊技内容の制御等を行う。例えば、CPU73は、役の抽選処理を行う。具体的に、この役の抽選処理は次のようにして行われる。ROM71には、役と乱数値との対応関係を示した抽選テーブルが格納されている。CPU73は、スタートレバー操作検出センサ64からの信号を受けると、乱数値を取得する。そして、その取得した乱数値が、抽選テーブルにおいていずれの役に該当するかを調べることにより、役の不当選、各種の役の当選のいずれであるかを決定する。CPU73は、抽選結果に応じて所定のコマンドを演出制御基板80に送信する。
・・・
【0041】
また、CPU73は、遊技状態の管理をも行っている。本実施形態の回胴式遊技機では、遊技機の遊技状態として、「BB未作動時の一般遊技状態」、「BB内部中状態」、「RB内部中状態」、「BB作動時の一般遊技状態」等の各種の遊技状態が設定されている。CPU73は、役の抽選結果に基づいて遊技状態の移行を制御する。」

(オ)
「【0044】
演出制御基板80は、主に遊技の演出に関する制御を行うものである。演出制御基板80には、複数の集積回路素子が実装されている。具体的に、演出制御基板80は、図2に示すように、ROM81と、RAM82と、CPU(演出制御手段)893とを備える。ROM81には、遊技演出の制御等に関する各種のプログラム、画像演出用パターンデータ、電飾演出用パターンデータ、音声データ等の各種のデータが格納されている。また、RAM82は、データを一時的に記憶する作業用のメモリである。
【0045】
CPU83は、ROM81に格納されたプログラムを実行することにより、画像表示部30、電飾表示部40、スピーカ部50を制御する。具体的には、CPU83は、主制御基板70から演出コマンドを受けたとき、その演出コマンドに基づいて遊技の演出の内容を決定する。そして、CPU83は、その決定した内容に対応する画像演出用パターンデータをROM81から読み出し、画像表示部30に送出する。これにより、画像表示部30は、その画像演出用パターンデータに基づいて画像の表示を制御する。
【0046】
また、CPU83は、その決定した内容に対応する電飾演出用パターンデータをROM81から読み出した後、その電飾演出用パターンデータに基づいて所定の点灯指令信号を生成する。そして、CPU83は、その生成した点灯指令信号をLEDやバックライト等の駆動回路に送る。なお、図示していないが、駆動回路は、演出制御基板80に設けられている。駆動回路、例えばLED用の駆動回路は、この点灯指令信号に基づいて、LED基板44a,44b,44c,45a,45b,・・・,45hに搭載された各LEDユニットの点灯を制御する。同様にして、バックライト用の駆動回路は各バックライトの点灯を制御し、冷陰極管用の駆動回路は冷陰極管の点灯を制御する。更に、CPU83は、その決定した内容に基づいて所定の音声データをROM81から読み出した後、スピーカ部50に送出する。これにより、音声がスピーカ部50から出力される。
【0047】
次に、演出制御基板80により点灯が制御されるLED基板について説明する。本実施形態には、各種のLED基板44a〜44c,45a,45b〜45hが配置されているが、どのLED基板も、同じ特徴を備えているので、以下では、トップLED基板44cを例に挙げて説明する。なお、以下では、このトップLED基板44cを、単にLED基板44cとも称する。図3は、本実施形態のLED基板44cの一例を示す概略正面図、図4はその概略裏面図である。なお、図4に示す概略裏面図は、説明を簡易にするために、LED基板44cを正面から透視したときの裏面に配列された電子部品の配置状態を示している。また、図3に示すLED基板44cは、実際に遊技機に取着するときには、カラーLED10120や赤色LED10310が配置されている、幅の広い方の基板端部を上に、幅の狭い方の基板端部を下にして遊技機に取着する。」

(カ)
【図3】の部分拡大図




(キ)
【図4】の部分拡大図




(ク)
「【0048】
本実施形態のLED基板44cの表面には、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜(以下、この薄膜をレジスト薄膜とも称する。)111が形成されている。また、本実施形態のLED基板44cの表面には、トップLEDユニット41cとして、図3に示すように、20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310とが搭載されている。また、LED基板44cの表面には、演出制御基板80と接続するためのコネクタ110が配置されている。」

(ケ)
「【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明の表示用基板によれば、表面に光源を配置し、光源の点灯制御に用いる電子部品を裏面に配置したことにより、表面に形成された、光を反射するための薄膜の表面積を大きくして、光源が発する光を効率よく反射して、外部に放射することができる。また、光源の点灯制御ために用いる電子部品を裏面に分散配置したことにより、熱源となる電子部品の間隔を十分に離して配置することができるので、熱源となる電子部品が発する熱による光源等への悪影響を低減することかできる。したがって、本発明は、回胴式遊技機等の遊技機の表示用基板に適用することができる。」

イ 認定事項
(ア)引用文献1の【0048】の「本実施形態のLED基板44cの表面には、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜・・・111が形成されている。・・・LED基板44cの表面には、・・・図3に示すように、20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310とが搭載されている。」との記載、【0058】の「・・・表面に形成された、光を反射するための薄膜の表面積を大きくして、光源が発する光を効率よく反射して、外部に放射することができる。」との記載、および、【図3】の図示内容からみて、引用文献1には、「トップLED基板44cの表面に搭載された各LEDのそれぞれの近傍に電子部品番号(U1ないしU20、LED1ないしLED10)が表示される」こと(以下「認定事項ア」という。)が示されていると認められる。

(イ)一般的なLEDがケーシングを有することは技術常識であり、当該技術常識を踏まえて図3を参酌すれば、各LED(カラーLED1011〜10120、赤色LED1031〜10310)が、ケーシングを有することは明らかである。
そうすると、引用文献1の上記【0048】の記載、および、【図3】の図示内容からみて、「トップLED基板44cの表面に搭載された各LEDは、ケーシングを有」すること(以下「認定事項イ」という。)が示されていると認められる。

ウ 引用発明
上記アの記載事項および上記イの認定事項によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a〜hは、本願発明のA〜Hに概ね対応させて付与した。)。
「a
役の抽選処理を行い、抽選結果に基づいて遊技状態の移行制御を行うCPU73を有する主制御基板70(【0036】、【0037】、【0041】)と、
CPU83を有し、主に遊技の演出に関する制御を行う演出制御基板80(【0044】、【0045】)と、


表示窓12が設けられた前扉(【0031】)と、
トップLEDユニット41cと、トップLEDユニット41cが搭載され、演出制御基板80により点灯が制御されるトップLED基板44cを有し、さらに、八つのパネルLEDユニットと、三つのバックライトと、八つのパネルLED基板45a,45b,・・・,45hと、三つのバックライト基板を有する、各種の遊技状態を報知したり遊技の演出を行ったりする電飾表示部40(【0029】、【0030】、【0047】)と、
を備える回胴式遊技機(パチスロ機)(【0013】)であって、


演出制御基板80のCPU83は、主制御基板70から受けた演出コマンドに基づいて遊技の演出の内容を決定し、決定した内容に対応する電飾演出用パターンデータを読み出した後、その電飾演出用パターンデータに基づいて生成した点灯指令信号をLEDやバックライト等の駆動回路に送り(【0044】〜【0046】)、

d、e
トップLEDユニット41cは、前扉の内側上部の右側に設けられ(【0030】)、
トップLED基板44cの表面には、トップLEDユニット41cとして、カラーLEDと赤色LEDが搭載されており(【0030】、【0047】、【0048】)、
トップLED基板44cの表面に搭載された各LEDは、ケーシングを有し(認定事項イ)、


トップLED基板44cは、
20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310と、コネクタ110とが搭載された表面(【0048】)を有し、
表面に搭載された各LEDのそれぞれの近傍に電子部品番号(U1〜U20、LED1〜10)が表示され(認定事項ア)、
外部への光の放射効率の向上を図るために(【0006】)、LED基板44cの表面に形成された、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111(【0048】)を有する、


回胴式遊技機(パチスロ機)(【0013】)。」

(3)周知例の記載及び周知技術
ア 周知技術1
(ア)ALLPCB,"White Soldermask is Commonly Used in LED PCB Applications",[online],2017年 2月21日,INTERNETARCHIVE waybackmachine,[2020年12月7日検索],URL,https://web.archive.org/web/20170221212558/https://www.allpcb.com/soldermask/white_soldermask.html(原査定の拒絶の理由において引用され、本件の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献。以下「引用文献2」という。)
引用文献2には、「White Soldermask is Commonly Used in LED PCB Applications ・・・」(日本語訳)「白色のソルダーマスクが、LEDプリント基板の分野において、一般に用いられている。」と題して、その("Notice")には、「White silkscreen cannot be used if the soldermask is white. You can use black,yellow,red,and other colors,so as to see the characters clearly.」(日本語訳)「LED基板のソルダーマスクが白色である場合には、白色のシルクスクリーンは使用できないこと。文字等を鮮明に見せるために、黒色、黄色、赤色、他の色が使える。」ことが記載されている。
したがって、引用文献2には、「LEDプリント基板に白色のソルダーマスクを形成し、文字等を鮮明に見せるために、シルクスクリーンの色として黄色を選択可能であること」が記載されている。

(イ)STM32F4基板,OSQZSS[online],2014年 3月 8日,[2020年1月22日検索],URL,https://blog.goo.ne.jp/osqzss/e/5509fd23c1672827a8f81e4bad56f816(原査定の拒絶理由において引用され、本件の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献。以下「引用文献3」という。)
引用文献3には、「STM32F4基板」と題して、「・・・最近、白レジスト+パステルカラーのシルクという基板が増えてきた気がします。綺麗なので自分でも試してみたくなりPCBメーカを探したのですが、カラーのシルクに対応しているところが見つかりません。
たまたまあった黄色を今回は選んでみたのですが、コレジャナイ感がハンパない・・・」ことが、ブログ形式で記載されている。
したがって、引用文献3には、「プリント基板に白レジストを形成し、パステルカラーのシルクとして黄色を選択可能であること」が記載されている。

(ウ)小括
上記(ア)、(イ)に示したように、「プリント基板の技術分野において、文字等を鮮明に見せるために、基板表面に白色のレジスト層に黄色で表記部を形成する」ことは、本件の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術1」という。)である。

イ 周知技術2
(ア)特開2016−202464号公報(原査定の拒絶の理由において引用され、本件の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献。以下「引用文献4」という。)
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0699】
なお、遊技盤側第1装飾基板〜遊技盤側第21装飾基板における抵抗YILR0〜YILR503、LED、そして遊技盤側第1装飾基板用コネクタ〜遊技盤側第21装飾基板用コネクタがそれぞれ実装される実装面は、抵抗YILR0〜YILR503、LED、そして遊技盤側第1装飾基板用コネクタ〜遊技盤側第21装飾基板用コネクタを電気的に接続するための配線パターンが形成されとともに、この配線パターンと電気的に絶縁され配線パターンが形成されない実装面側ベタパターンが形成されていてもよい。この実装面側ベタパターンは、基板取付貫通孔より一回り大きい領域を除いて実装面に形成されていない。配線パターンには、抵抗YILR0〜YILR503、LED、そして遊技盤側第1装飾基板用コネクタ〜遊技盤側第21装飾基板用コネクタをハンダ付けするための領域と、抵抗YILR0〜YILR503の真下の領域と、を除いて、実装面側ベタパターンとともに、保護膜として実装面全体にレジスト印刷されている。また、遊技盤側第1装飾基板〜遊技盤側第21装飾基板の実装面の反対側の裏面側には非実装面側ベタパターンが全体に形成されており、非実装面側ベタパターンとともに、保護膜として非実装面全体にレジスト印刷されている。この非実装面側ベタパターンは、基板取付貫通孔より一回り大きい領域を除いて非実装面である遊技盤側第1装飾基板〜遊技盤側第21装飾基板の実装面の反対側の裏面側に形成されていない。実装面側ベタパターンと非実装面側ベタパターンとは複数のスルーホールにより電気的に接続されている。遊技盤側第1装飾基板〜遊技盤側第21装飾基板の実装面に抵抗YILR0〜YILR503がそれぞれ実装されると、抵抗YILR0〜YILR503の電極(ハンダ付けされる電極)を除く部分である本体部分が実装面側ベタパターンと当接する状態となる。これにより、抵抗YILR0〜YILR503により発する熱を、実装面側ベタパターン全体へ伝えるとともに、実装面側ベタパターンへ伝わった熱をスルーホールを介して非実装面側ベタパターンへ伝えることによって、抵抗YILR0〜YILR503により発する熱を、実装面側ベタパターン全体と非実装面側ベタパターン全体とで奪うことにより、抵抗YILR0〜YILR503の冷却効果を期待することができる。実装面側ベタパターンと非実装面側ベタパターンとにより、遊技盤側第1装飾基板〜遊技盤側第21装飾基板が温度の影響を受けて反り返りを防止することができるため、LED、抵抗YILR0〜YILR503、そして遊技盤側第1装飾基板用コネクタ〜遊技盤側第21装飾基板用コネクタをハンダ付けした部分にハンダクラック(亀裂)の発生による電気的な接続の不具合を防止することができる。」

(イ)特開2016−16088号公報(原査定の拒絶の理由において引用され、本件の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献。以下「引用文献5」という。)
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、枠体も含めて新規に開発された遊技機の中には、前面に備えた装飾カバーに静電気が帯電して、遊技者が触れたときに不快感を与えるものがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、前面に備えた装飾カバーに静電気が帯電し難い遊技機の提供を目的とする。」

「【0026】
詳細には、電飾基板20,21は、図2及び図3にハッチングを付して示したように、上下に延びた形状をなし、前面の全体に複数のLED25Aを分散配置して備えている。そして、それら電飾基板20,21は、図3に示すように第2支持枠13の前面に重ねた状態に取り付けられている。
【0027】
また、電飾基板20,21は、多層構造になっていて、外面全体をソルダーレジスト層で覆われると共に、表裏のソルダーレジスト層の下に、図4の黒塗り部分で示すように、膜状に広がったベタ導体層25Bを有し、そのベタ導体層25Bが電飾基板20,21のアースラインに接続されている。・・・」

(ウ)特開2010−28500号公報(本件の出願前に頒布された刊行物。以下「引用文献6」という。)
引用文献6には、次の事項が記載されている。
「【0024】
図5(b)に、無線受信回路モジュールの基板構成を示す。
誘電体である基板13においてアンテナ11が実装される面(おもて面)には、導体層である基板グランド面13aと、給電線11dを受ける導体層の受けランド13bと、基板グランド面13a及び受けランド13bを保護するレジスト層13rと、が設けられる。このとき、基板グランド面13aはベタグランドパターンであるが、給電線11dを通す部分のみ、グランドパターンが抜かれて、該グランドパターン(基板グランド面13a)とは絶縁した状態の受けランド13bが形成されている。なお、基板13は多層基板である。」

(エ)
上記(ア)〜(ウ)に示したように、「回路基板の技術分野において、冷却効果向上や、静電気対策のために電子部品が搭載された基板の表面に形成された保護膜の下にベタグランド層を設ける」ことは、本件の出願前に周知の技術事項である(以下「周知技術2」という。)。

ウ 周知技術3
(ア)特開2013−258161号公報(本件の出願前に頒布された刊行物。以下「引用文献7」という。)
引用文献7には、次の事項が記載されている。
「【0102】
図40〜図42は、LEDランプA11に用いられるLEDモジュール103の他の変形例を示している。この変形例においては、LEDモジュール103は、ケース135を備えている。ケース135は、たとえば白色樹脂からなり、LEDチップ131および樹脂パッケージ132を囲む反射面135aを有している。反射面135aは、LEDチップ131から側方に進行する光を反射することにより上方に向かわせるためのものである。このため、このLEDモジュール103は、比較的高輝度のタイプに属する。LEDモジュール103は、その平面視寸法が4.0mmx2.0mm、高さが0.55mm程度とされている。この場合、隣り合うLEDモジュール103どうしの隙間を0.5mmとすれば、基板101の面積に対するLEDモジュール103の合計面積の占有割合を70%程度に高めることができる。」





(イ)特開2009−200403号公報(本件の出願前に頒布された刊行物。以下「引用文献8」という。)
引用文献8には、次の事項が記載されている。
「【0015】
以下、この発明の実施の形態につき図例を参照しながら説明をする。
図1(A)は実施例の発光装置1を正面から見た斜視図であり、同じく図1(B)は背面からみた斜視図である。図2は6面図であり、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図、(E)は底面図、(F)は背面図である。また、図3は図2(C)におけるIII-III線断面図、図4は図2(A)におけるIV-IV線断面図、図5は図2(A)におけるV-V線断面図である。
図1に示すように、実施例の発光装置1は筐体部10、第1のリード部材30、第2のリード部材40、及びLEDチップ60を備えてなる。
図1及び図3に示されるように、筐体部10は反射ケース11と端子保持部20とからなる。反射ケース11は薄幅なカップ形状であり、その凹部13の内周面が反射面15とされている。
凹部には封止材14としてシリコーン樹脂が充填され、このシリコーン樹脂には蛍光体が均一に分散されている。この蛍光体としてLEDチップ60からの青色光を吸収して黄色系の光を放出するYAG系またはBOS系など、既知のものを採用することができる。
反射面15は側壁反射部155と底部反射部156(白色反射層)からなる。これら反射部155、156は筐体部10と一体的に白色樹脂で形成されている。
【0016】
この反射面15は全体的に椀状の曲面であり、曲面の中心点にLEDチップ60が配置される。反射面の全面を椀状の曲面とすることにより、LEDチップ60から横方向へ放出される光が反射ケース11の光軸方向へ効率よくかつ均一に反射される。」

「【図3】



(ウ)特開2017−112340号公報(本件の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献。以下「引用文献9」という。)
引用文献9には、次の事項が記載されている。
「【0024】
LED素子22は、いわゆるSMD型の素子であり、白色光を発する。LED素子22は、パッケージ22aと、パッケージ22aの凹部底面に実装されたLEDチップ22bと、パッケージ22aの凹部に充填され、LEDチップ22bを封止する封止部材22cとを備える。また、LED素子22は、LED素子22を基板21に実装するための金属端子(図示せず)を備える。
【0025】
パッケージ22aは、非透光性樹脂(白樹脂等)で成型された容器であり、逆円錐台形状の凹部(キャビティ)を備える。凹部の内側面は傾斜面であり、LEDチップ22bからの光を下方(Z軸−方向)に反射させるように構成されている。」

「【図3】




(エ)国際公開第2016/111298号(本件の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献。以下「引用文献10」という。)
引用文献10には、次の事項が記載されている。
「【0179】
図36は、LEDモジュール20の一例を示している。同図のLEDモジュール20は、LEDチップ21、一対のリード22、ケース23および透光樹脂24を具備している。LEDチップ21は、たとえばGaN系半導体からなり、たとえば青色光を発する。透光樹脂24は、LEDチップ21を覆っており、たとえば透明樹脂に蛍光材料が混入された材質からなる。この蛍光材料は、LEDチップ21からの青色光によって励起されることにより黄色光を発する。この蛍光材料の種類および濃度は、LEDチップ21からの青色光とこの蛍光材料からの黄色光とが混色することにより昼白色などの白色を呈するように調整されている。一対のリード22は、LEDチップ21を支持し、かつLEDチップ21への導通経路となるものであり、たとえばCu合金などからなる。ケース23は、たとえば白色樹脂からなり、LEDチップ21を囲む枠状である。ケース23の内側面は、LEDチップ21からの光を反射することによりこの光を出射させるリフレクタとして機能している。」








(オ)小括
上記(ア)〜(エ)に示したように、「LEDを用いた発光装置の技術分野において、LEDからの光を反射させるためにLEDの樹脂ケースを白色樹脂で形成する」ことは、本件の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術3」という。)である。

(4)周知の課題
特開2003−198092号公報(本件の出願前に頒布された刊行物。以下「引用文献11」という。)
引用文献11は、引用文献1に従来技術として提示された文献であって、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はパチンコ機におけるランプ、LED等表示部品、電気部品を組み付けるプリント配線基板の前面を改良して表示効果を向上し、表示部品の装着を簡単とするパチンコ機における表示基板構造に関する。」

「【0014】プリント配線基板50にマスキング処理を行う作業工程について説明する。マスキング処理の第1の方法。マスキングを行う材料は、UV硬化樹脂材、基板上にUV硬化樹脂材を貼着(塗布)してマスキング面が形成される。貼着したUV硬化樹脂に対し紫外線を投射してマスキング処理面54が定着される。マスキング処理の第2の方法。熱可塑性シートをプリント配線基板50上に貼着してマスキング処理面を形成し、熱を投射してマスキング処理面54が定着される。マスキングを行う材料にはインク、顔料を混入して適正な色彩を調合する。マスキング面を白色、白系とすることにより光、拡散、投射、反射機能をはかる。」

「【0025】
【発明の効果】この発明によれば、プリント配線基板の取付け孔と導体面を除く全面にマスキング処理を施すことにより絶縁保護機能を高め、基板とプリント配線部分との色彩の差をなくしてランプ、LED等表示部品の表示時にマスキング面により光を拡散して投射でき、反射機能を生じすることにより表示効果を向上することができ、そのマスキング面に印刷した表示記号、文字を見やすくすることができ、作業能率を向上できる。また、表示部品に取着手段を一体的に形成し、プリント配線基板の取付け孔に簡単に脱着できるとともに、表示部品の取付け孔への嵌着時に表示部品の導線がプリント配線の導体面に接続できるので、表示部品のプリント配線基板上の所定位置への装着を簡便化できる。」

したがって、「遊技機に用いられるLED基板において、マスキング面の反射機能の向上、および、マスキング面に印刷した表示記号、文字を視認性の向上を両立させる」ことは、本件の出願前に周知の技術課題(以下「周知の課題」という。)である。

(5)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)
引用発明の「役の抽選処理を行」う「CPU73」は、本件補正発明の「抽選手段」の機能を有する。
引用発明の「抽選結果に基づいて遊技状態の移行制御を行う」ことは、本件補正発明の「抽選結果に基づいて遊技を進行する」ことに相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Aを備える。

(b)
引用発明の「表示窓12が設けられた前扉」は、本件補正発明の「扉枠」に相当する。
そして、引用発明の「トップLEDユニット41c」は、構成d、eや構成fによると、複数個の「カラーLED」や「赤色LED」から構成されるものである。ここで、引用発明の「カラーLED」や「赤色LED」は、本件補正発明の「発光体」に含まれる。
また、引用発明の「トップLED基板44c」は、本件補正発明の「装飾基板」に含まれる。
さらに、引用発明の「電飾表示部40」は、「トップLED基板44c」を含むものであって、「電飾表示部40」のうち、「トップLED基板44c」に対応するものは、本件補正発明の「装飾部」に含まれる。
したがって、引用発明の「トップLEDユニット41cが搭載され」「るトップLED基板44cを有」する「電飾表示部40」は、本件補正発明の「発光体が実装される装飾基板を有する複数の装飾部」に含まれる。
また、引用発明の「回胴式遊技機(パチスロ機)」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本件補正発明の構成Bを備える。

(c)
引用発明の
「演出制御基板80」、
「LEDやバックライト等の駆動回路」、
「点灯指令信号」を「生成」する基になる「電飾演出用パターンデータ」は、それぞれ、
本件補正発明の
「演出制御部」、
「発光体を駆動する発光体駆動回路」、
「発光体駆動データ」に相当する。
そして、引用発明の「演出制御基板80のCPU83」は、「点灯指令信号をLEDやバックライト等の駆動回路に送」り、「LEDやバックライト等」を発光させるものであるから、本件補正発明の「発光体を発光させる発光手段」としての機能を有する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Cを備える。

(d)
上記(b)より、引用発明の「トップLED基板44c」は、本件補正発明の「装飾基板」に含まれる。
そうすると、引用発明の「前扉の内側上部の右側に設けられ」る「トップLED基板44c」は、本件補正発明の「装飾基板のうち扉枠に設けられる扉枠用装飾基板」に相当する。
そして、引用発明の「カラーLEDと赤色LED」のうち、「カラーLED」が「搭載され」ることは、本件補正発明の「特別発光体が実装され」ることに相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Dを備える。

(e)
上記(d)より、引用発明の「カラーLED」は、本件補正発明の「特別発光体」に相当する。
また、引用発明の「カラーLED」は、本件補正発明の「多色に発光可能な発光体」に相当する。
そして、引用発明の「ケーシングを有」することと、本件補正発明の「白色を有する外装を備え」ることとは、「外装を備え」ることで共通する。
したがって、引用発明の構成d、eと本件補正発明の構成Eとは、「特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、且つ、外装を備え」ることで共通する。

(f)
上記(d)より、引用発明の「トップLED基板44c」は、本件補正発明の「扉枠用装飾基板」に含まれる。
また、上記(d)、(e)より、引用発明の「カラーLED」は、本件補正発明の「特別発光体」に相当する。
そうすると、引用発明の「トップLED基板44c」の「20個のカラーLED1011〜10120」「が搭載された表面」は、本件補正発明の「特別発光体が実装される実装面」に相当する。

そして、引用発明の「LED基板44cの表面に」「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」が「形成され」ることは、本件補正発明の「実装面」に「白色塗膜が略全面に形成される」ことに相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Fの「扉枠用装飾基板の特別発光体が実装される実装面は、白色塗膜が略全面に形成される」を備える。

また、引用発明の「トップLED基板44c」の「薄膜111」が「形成された」「表面に搭載された各LEDのそれぞれの近傍に電子部品番号が表示され」ることは、「電子部品番号」が、電子部品としての各LEDを特定するための識別番号であることから、各「電子部品番号」が「薄膜111」と識別可能に「薄膜111」上に「表示され」ることであるといえる。
したがって、引用発明の「電子部品番号」は、本件補正発明の「特別発光体を特定可能な表記部」に相当する。
そうすると、引用発明の「トップLED基板44c」の「薄膜111」が「形成された」「表面」の「各LEDのそれぞれの近傍に電子部品番号が表示され」ることと、本件補正発明の「白色塗膜の上に黄色で形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有」することとは、「白色塗膜の上に、白色塗膜と識別可能に形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有」することで共通する。

(h)
上記(b)より、引用発明の構成hの「回胴式遊技機(パチスロ機)」は、本件補正発明の構成Hの「遊技機」に相当する。

上記(a)〜(h)によれば、本願発明と引用発明は、
「A 抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、
B 扉枠と、発光体が実装される装飾基板を有する複数の装飾部と、を備える遊技機であって、
C 発光体を発光させる発光手段は、演出制御部から発光体を駆動する発光体駆動回路に対して、発光体駆動データを送信し、
D 前記装飾基板のうち前記扉枠に設けられる扉枠用装飾基板は、特別発光体が実装され、
E´ 前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、且つ、外装を備え、
F´ 前記扉枠用装飾基板の前記特別発光体が実装される実装面は、白色塗膜が略全面に形成されると共に、該白色塗膜の上に白色塗膜と識別可能に形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有する、
H 遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成E)
「発光体の外装」の色が、本件補正発明は、「白色」であるのに対して、引用発明は、何色であるのか特定されていない点。

[相違点2](構成F)
「白色塗膜の上に、白色塗膜と識別可能に形成され」される「表記部」の色が、本件補正発明では、「黄色」であるのに対して、引用発明では、何色であるのか特定されていない点。

[相違点3](構成G)
本件補正発明は、「白色塗膜の下層にベタグランドを有する」のに対して、引用発明は、グランドを有することについて特定されていない点。

(6)当審判合議体の判断
ア 相違点1(構成E)について
上記相違点1について検討する。
上記(3)のウに周知技術3として示したように、「LEDを用いた発光装置の技術分野において、LEDからの光を反射させるためにLEDの樹脂ケースを白色樹脂で形成する」ことは、本件の出願前に周知の技術事項である。
そして、引用発明は、構成fに特定されるように「外部への光の放射効率の向上を図る」ことを目的とするものである。
したがって、引用発明に上記周知技術3を適用して、カラーLED101のケーシングを白色樹脂で形成し、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2(構成F)について
上記相違点2について検討する。
上記(3)のアに周知技術1として示したように、「プリント基板の技術分野において、文字等を鮮明に見せるために、基板表面に形成された白色のレジスト層に黄色で表記部を形成する」ことは、本件の出願前に周知の技術事項である。

一方、引用発明は、「外部への光の放射効率の向上を図る」ことを目的として、「トップLED基板44cの表面に」「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」が「形成され」るものであるから、引用発明における「光を反射する薄膜111」上に表示される「電子部品番号」にも、放射効率(反射率)の向上を考慮する必要があるといえる。
また、引用発明における「電子部品番号」は、上記「(5)対比」の(f)において検討したように、「薄膜111」上に「薄膜111」と識別可能に「表示され」るものであるから、「電子部品番号」の表示色は、視認性の向上のために「トップLED基板44cの表面」の色である「白色」と異ならせる必要があることも明らかである。

そして、引用発明と上記周知技術1とは、基板表面に白色のレジスト膜を形成するという共通の機能を有する。
また、一般に、反射率が明色において高いことは、当業者に広く知られていることである。
さらに、上記「(4)周知の課題」に示したように、遊技機の技術分野において、LED基板の表面の反射機能の向上および電子部品番号等の視認性の向上を両立させることは、本願出願前から周知の課題である。

これらのことからみて、引用発明に上記周知技術1を適用して、反射機能の向上を図った「白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」上に「電子部品番号(U1〜U20、LED1〜10)」を形成するに際して、視認性の向上も加味して、反射率の高い明色の中から黄色を選択し、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点3(構成G)について
上記相違点3について検討する。
引用文献1に、例えば、「熱源となる電子部品の間隔を十分に離して配置することができるので、熱源となる電子部品が発する熱による光源等への悪影響を低減することかできる。」(【0058】)と記載されているように、引用発明において、基板に搭載されるLED等の電子部品の冷却対策や、基板における静電気対策を図ることは、当業者における自明の課題である。
そして、上記(3)のイに周知技術2として示したように、「回路基板の技術分野において、冷却効果向上や、静電気対策のために電子部品が搭載された基板の表面に形成された保護膜の下にベタグランド層を設ける」ことは、本件の出願前に周知の技術事項である。
また、引用発明と上記周知技術2とは、電子部品が搭載された基板の表面にレジスト膜が形成されるという共通の機能を有する。
したがって、引用発明の「トップLED基板44a,44b,44c」に上記周知技術2を適用して、レジスト膜の下にベタグランド層を設け、上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

エ 効果
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明及び周知技術1〜3から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。

オ 小括
上記ア〜エの検討内容からみて、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1〜3に基づいて当業者が容易になし得たものである。

(7)請求人の主張について
ア 請求人の主張
請求人は、令和4年4月25日付けの審判請求書において、次の主張(ア)、及び、構成D〜Gの特徴的な構成を備えることにより奏する効果についての主張(イ)を行っている。
主張(ア):
「「LED実装面に白いレジストを使用し、さらにLEDの発する光の反射効率を高くするためにLED実装面のシルクの色を考慮する」という課題は、引用文献1−5ともになく、課題の共通性がありませんので引用文献1と引用文献2−5とを結び付ける動機がなく、当業者においてはLED実装面のLEDの発する光の反射効率を高めるためにレジストが白色である実装面に黄色のシルクを採用することは困難であると思料いたします。
また、「LED実装面に白いレジストを使用し、さらにLEDの発する光の反射効率を高くするためにLED実装面のシルクの色を考慮する」という課題において、引用文献1−5を結び付ける動機がないので、引用文献1−5から『LED実装面の白色のレジスト上に黄色で識別記号を記す』に対する効果を予測できるものではないと思慮いたします」

主張(イ):
「1.扉枠用装飾基板のLEDが実装される実装面の白色塗膜上に形成する表記部を、従来の遊技機で用いられる黒色等に比べて白色塗膜とのコントラスト比が低い黄色で形成するため、LEDが実装される実装面に形成される表記部を遊技者が見つけ出すことを困難とすることができる。
2.LEDが実装される実装面の表記部を黄色で形成することで表記部自体の反射率を白色塗膜に近い状態とすることができるため、LEDが実装される実装面における反射率が低下を防止することができる。
3.白色と反射率の近い黄色でLEDが実装される実装面の表記部を形成することにより、LEDが実装される実装面における表記部が形成される領域と表記部が形成されない領域との反射率の差を小さくすることができ、均一な発光を実現して発光ムラの発生を抑制できる。
4.白色塗膜と黄色の表記部という組み合わせにおいてLEDの光に対して高い反射率を維持することができ、さらに、LEDを白色のパッケージとすることでLEDの光に対してより高い反射率を維持できる。
5.LEDが実装される実装面のLEDから照射される光が、ベタグランドによってLEDが実装されない実装面側に透過することを抑制できるため、LEDが実装される実装面における白色塗膜と黄色の表記部の反射率をさらに向上させることができ、効率的な発光装飾を実現できる。
という顕著な効果を奏します。
しかして、引用文献1−5には、請求項1に係る発明の顕著な効果を奏するための上記した特徴的な構成が開示も示唆もされていませんので、本願の請求項1に係る発明が引用文献1−5に記載される発明から容易に想到し得るものではないと思料いたします。」

イ 請求人の主張に対する検討
そこで、請求人の上記主張(ア)、(イ)について検討する。
(ア)請求人の主張(ア)について
上記(6)の「イ 相違点2(構成F)について」において検討したように、引用発明は「外部への光の放射効率の向上を図る」ことを目的とするものであって、電子部品番号の表示にも、放射効率の向上を考慮する必要があるといえる。
そして、一般に、反射率が明色において高いことは、広く知られていることであり、その中から黄色を選択することに格別の困難性は認められない。
一方、引用発明において、「電子部品番号」は、基板に表示されるものであって、電子部品を識別させるためのものであるから、「電子部品番号」の表示色は、基板の表面色と区別させる必要があることも明らかである。
さらに、上記(4)に示したように、「遊技機に用いられるLED基板において、マスキング面の反射機能の向上、および、マスキング面に印刷した表示記号、文字を視認性の向上を両立させる」ことは、本件の出願前に周知の課題である。
これらのことからみて、引用発明に、上記周知技術1を適用する動機付けは十分にあるといえる。
したがって、請求人の上記主張(ア)は、採用できない。

(イ)請求人の主張(イ)について
上記(ア)において検討したことからみて、請求人の主張する上記効果「2」及び「3」は、引用発明に上記周知技術1を適用することにより奏される効果であり、効果「1」は、引用発明に上記周知技術1を適用し、「電子部品番号等」に必要とされる視認性の程度に応じて、黄色の濃淡を調整することで、自ずと奏される効果であるといえる。

ここで、引用発明、周知技術1、及び、周知技術3は、いずれも、LEDからの光を、LEDを搭載した基板表面から反射させるという共通の機能を有するものである。
そうすると、請求人の主張する上記効果「4」は、上記(6)の「ア 相違点1(構成E)について」及び上記(6)の「イ 相違点2(構成F)について」において検討した内容からみて、引用発明に上記周知技術1及び3を個別に適用することにより奏される効果である。

また、上記(6)の「ウ 相違点3(構成G)について」において検討した内容からみて、引用発明のレジスト膜の下にベタグランド層を設けることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、ベタグランド層を良電性かつ光不透過の金属により形成することは、当業者における技術常識である。
そうすると、請求人の主張する上記効果「5」は、引用発明に上記周知の技術事項1〜3を個別に適用することにより奏される効果である。

したがって、請求人の上記主張(イ)は、採用できない。

(ウ)
上記(ア)、(イ)より、請求人の主張は、採用できない。

(8)小括
上記(5)〜(7)において検討したように、本件補正発明は、当業者が引用発明及び周知技術1〜3に基づいて容易に発明できたものである。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

5 まとめ
上記4において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年5月14日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(記号A〜Hは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「A 抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、
B 扉枠と、発光体が実装される装飾基板を有する複数の装飾部と、を備える遊技機であって、
C 発光体を発光させる発光手段は、演出制御部から発光体を駆動する発光体駆動回路に対して、発光体駆動データを送信し、
D 前記装飾基板のうち前記扉枠に設けられる扉枠用装飾基板は、特別発光体が実装され、
E2 前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、
F 前記扉枠用装飾基板の前記特別発光体が実装される実装面は、白色塗膜が略全面に形成されると共に、該白色塗膜の上に黄色で形成されて当該特別発光体を特定可能な表記部を有し、
G さらに前記白色塗膜の下層にベタグランドを有する、
H ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要(令和3年7月1日付け)
原査定の拒絶の理由は、概ね次のとおりである。
進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2006−141683号公報
2.ALLPCB,"White Soldermask is Commonly Used in LED PCB Applications",[online],2017年 2月21日,INTERNETARCHIVE waybackmachine,[2020年12月7日検索],URL,https://web.archive.org/web/20170221212558/https://www.allpcb.com/soldermask/white_soldermask.html(周知技術を示す文献)
3.STM32F4基板,OSQZSS[online],2014年 3月 8日,[2020年1月22日検索],URL,https://blog.goo.ne.jp/osqzss/e/5509fd23c1672827a8f81e4bad56f816(周知技術を示す文献)
4.特開2016−202464号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2016−16088号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2006−141683号公報の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2[理由]」「4」「(2)引用文献1の記載及び引用発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本件補正発明において、発明を特定するために必要な事項である、「特別発光体」について、「前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、且つ、白色を有する外装を備え、」とあったものを「前記特別発光体は、多色に発光可能な発光体であり、」とすることで、その限定を省くものである。
そうすると、前記「第2[理由]」「4」「(5)対比」における検討内容からみて、本願発明と引用発明とは、前記[相違点2]及び[相違点3]で相違し、その余の点において一致する。
そして、前記[相違点2]及び[相違点3]についての判断は、前記「第2[理由]」「4」「(6)当審判合議体の判断」において検討したように、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易になし得たものである。
したがって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術1、2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
上記1〜4より、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-12-01 
結審通知日 2022-12-02 
審決日 2022-12-13 
出願番号 P2017-129950
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 長崎 洋一
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  

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