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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1393911
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-17 
確定日 2023-01-24 
事件の表示 特願2019−570201「基板作業システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月15日国際公開、WO2019/155551、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2018年2月7日を国際出願日とする出願であって、令和3年8月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月8日に意見書とともに手続補正書が提出され、令和4年3月22日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月29日)がなされ、これに対して同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年8月23日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和4年3月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1、5−6
・引用文献等 1、4−5

・請求項 2、4
・引用文献等 1、4−5

・請求項 3
・引用文献等 1−5

<引用文献等一覧>
1.特開2017−063071号公報
2.特開2014−134877号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2008−219091号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2017/216950号(周知技術を示す文献)
5.特開2003−090802号公報(周知技術を示す文献)


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)が、特許法17条の2第3項から第6項までの要件を満たすものであるか否かを検討する。

(1)補正事項及び補正の目的について
本件補正により、本件補正前の「基板に対する所定作業を行う作業装置」に対し、「ノズルにより吸着された部品を基板に実装する実装作業を行う実装装置」とする補正事項(以下、「補正事項1」という。)は、本件補正前の「所定作業」及び「作業装置」をそれぞれ限定的に減縮するものと認める。
また、本件補正により、本件補正前の「前記作業装置において撮像された画像を格納したファイルを作成するファイル作成部」を、「前記実装装置において前記ノズルにより吸着された部品が撮像された画像と、該画像の画像処理で判定された前記部品の実装可否の旨とを格納したファイルを作成するファイル作成部」とする補正事項(以下、「補正事項2」という。)は、概ね、本件補正前の「作業装置」を「実装装置」に限定的に減縮し、「撮像された画像」を「前記ノズルにより吸着された部品が撮像された画像」に限定的に減縮するとともに、本件補正前の「ファイル」に「該画像の画像処理で判定された前記部品の実装可否の旨」も格納されることをそれぞれ限定的に減縮するものと認める。
さらに、本件補正により、本件補正前の「前記画像を表示させるディスプレイ」を、「前記画像と前記部品の実装可否の旨とを表示させるディスプレイ」とする補正事項(以下、「補正事項3」という。)は、本件補正前の「ディスプレイ」に表示されるものが、「前記画像」のほか、「前記部品の実装可否の旨」であることを限定的に減縮するものと認める。
以上を総合すると、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであるといえる。

(2)新規事項
上記補正事項1〜3が、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に新規事項を追加するものであるか否かについて検討する。(下線は当審で付加。)

ア 補正事項1は、当初明細書の段落[0011]及び[0012]に記載された事項の範囲内でなされたものである。

イ 補正事項2のうち、「実装可否の旨」について検討する。
当初明細書等には、「実装可否の旨」についての具体的な定義は記載されていない。しかしながら、当初明細書段落[0020]には、「ここで、図5は画像ファイルFLの一例を示す説明図である。図示するように、画像ファイルFLは、ファイル名にUUIDとして例えば「56995efd−38e0−413a−9975−e72bf8ba0a25」が設定されている。また、画像ファイルFLには、上述したように、パーツカメラ27により撮像された画像と、実装作業情報と実装可否の旨とファイル名とが格納されている。実装作業情報は、部品を実装した基板Sの基板IDや部品の実装位置、部品種、部品を供給したフィーダ22のフィーダID、実装に用いられたヘッド23のヘッドID、部品を吸着したノズル24のノズルIDなどを含む。」と記載され、同[0032]には、「上述した実施形態では、実装作業情報として生産ジョブの情報や実装可否の旨を示す情報を画像ファイルFLに格納するものとしたが、これに限られず、これら以外の情報を画像ファイルFLに格納するものなどとしてもよい。あるいは、実装作業情報を画像ファイルFLに格納しないものとしてもよい。」と記載され、また、「画像ファイルFL」の内容を示す図5及び図7には、「実装可否」との項目とともに、「可」との情報が書き込まれることを示唆する記載がそれぞれ認められるから、補正事項2は当初明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものである。

ウ 補正事項3について検討する。
当初明細書段落[0018]には、「実装制御装置29は、S150で部品を実装可能であると判定すると、画像処理にて設定した補正量に基づいて部品を基板Sに実装し(S160)、実装した部品の撮像画像と実装完了の旨と部品の実装作業情報とを格納した画像ファイルFLを作成する(S170)。また、実装制御装置29は、S150で部品を実装可能でないと判定すると、所定の廃棄位置に部品を廃棄し(S180)、廃棄した部品の撮像画像と実装不可(廃棄)の旨と部品の実装作業情報とを格納した画像ファイルFLを作成する(S190)。なお、S170、S190の実装作業情報には、S100の生産ジョブ情報に基づく情報、フィーダIDやヘッドID、ノズルIDの情報、S110の基板IDの情報などを含む。」と記載されるとともに、「画像ファイルFL」の内容を示す図5及び図7には、「実装可否」との項目とともに、「可」との情報が書き込まれることを示唆する記載がそれぞれ認められ、上記「実装完了の旨」及び「実装不可(廃棄)の旨」が、「実装可否の旨」を表すものであることを読取ることができる。
また、当初明細書段落[0014]には、「管理装置40は、図3に示すように、管理制御装置42と、記憶部44と、入力デバイス46と、ディスプレイ48と、を備える。管理制御装置42は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。記憶部44は、処理プログラムなどの各種情報を記憶するHDDなどの装置である。入力デバイス46は、作業者が各種指令を入力するキーボード及びマウスなどを含む。ディスプレイ48は、各種情報を表示する液晶表示装置である。」と記載され、同[0015]には、「ファイルサーバ50の記憶部54に記憶された各種ファイルは、LAN18上で共有できるものとなっている。このため、例えば、作業者は、ファイルサーバ50の記憶部54に記憶されたファイルの読み出し指示を入力デバイス46を用いて入力し、そのファイルの内容をディスプレイ48に表示させることができる。」と記載され、同[0022]には、「また、作業者は部品種や実装位置などの情報を用いて、実装作業時に撮像された部品の画像をディスプレイ48に表示させることができる。さらに、各画像ファイルFLには実装作業情報も格納されているから、実装作業時の部品の画像と実装作業情報とをディスプレイ48に表示させることができる。したがって、作業者は、実装検査装置30などの実装作業の後工程において部品の実装不良が検出された場合に、実装作業時の画像から部品の吸着状態を確認することができるだけでなく、部品の実装に用いられたフィーダIDやヘッドID、ノズルIDを容易に特定して実装不良の原因調査を行うこともできる。」と記載されていることから、上記イで検討した、「実装可否の旨」に関する検討を踏まえれば、ディスプレイには、実装時の部品の画像とともに実装可否の旨も表示されるであろうことを当業者であれば読取ることができるといえることから、補正事項3は当初明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものである。

エ 以上、ア〜ウで検討したとおり、補正事項1〜3は、いずれも当初明細書等に新規事項を追加するものとはいえない。

(3)むすび
以上の検討から、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としてなされたものであり、また、当初明細書等に新規事項を追加するものとはいえない。
そして、以下、第4〜第6に示すように、本件補正後の請求項1〜6に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1〜6に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明6」といい、これらをまとめて、「本願発明」ということがある。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された、次のとおりのものと認める。(この項において、下線は、審判請求人によって補正した箇所を示すために付されたものである。)

「 【請求項1】
ノズルにより吸着された部品を基板に実装する実装作業を行う実装装置と、
前記実装装置において前記ノズルにより吸着された部品が撮像された画像と、該画像の画像処理で判定された前記部品の実装可否の旨とを格納したファイルを作成するファイル作成部と、前記ファイルのファイル名として、当該ファイルを一意に識別する識別情報を含むファイル名を設定するファイル名設定部と、を備えるファイル管理装置と、
前記実装装置において撮像された前記画像をそれぞれ格納した前記ファイルを記憶可能なファイルサーバと、
前記画像と前記部品の実装可否の旨とを表示させるディスプレイと、
を備える基板作業システム。
【請求項2】
請求項1に記載の基板作業システムであって、
前記ファイル名設定部は、前記実装装置の識別情報と、前記画像の撮像日時または前記ファイルの作成日時に関する日時情報とを含むファイル名を設定する
基板作業システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板作業システムであって、
前記ファイル名設定部は、前記画像の撮像または前記ファイルの作成に伴ってUUID(Universally Unique Identifier)を生成し、該生成したUUIDを含むファイル名を設定する
基板作業システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基板作業システムであって、
前記ファイル作成部は、前記実装装置で行われた前記実装作業に関する作業情報を前記ファイルに格納する
基板作業システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の基板作業システムであって、
前記ファイル作成部は、前記ファイル名設定部により設定されたファイル名を前記ファイルに格納する
基板作業システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の基板作業システムであって、
前記実装装置を複数備え、
前記ファイルサーバは、異なる前記実装装置において撮像された前記画像をそれぞれ格納した前記ファイルを記憶可能な共用のファイルサーバである
基板作業システム。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2017−63071号公報(平成29年3月30日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

ア 「【0001】
本発明は、基板のトレーサビリティシステム、及び基板のトレーサビリティ方法に関し、基板を識別する個体識別情報を基板に付与する必要のない基板のトレーサビリティシステム、及び基板のトレーサビリティ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の回路基板を製造する場合において、製品の製造工程管理、品質検査等の目的で、トレーサビリティ(traceability:追跡可能性)が求められている。
【0003】
回路基板に回路基板を識別する個体識別情報を付与せずに、回路基板のトレーサビリティを得る技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示の回路基板の固体識別装置は、位置情報取得手段と、登録手段とを備えている。位置情報取得手段は、回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、この計測値と計測対象の設計値との差を計測対象ごとの位置情報として取得する。計測対象は、スルーホール、ランドパターン、レジスト開口部、配線パターン等である。登録手段は、位置情報取得手段によって取得された位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−69838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示の回路基板の固体識別装置は、回路基板上に予め設定された複数の計測対象(スルーホール、ランドパターン、配線パターン等)の位置の計測値と、計測対象の設計値との差の組み合わせを基板識別符号として登録する。そして、この基板識別符号により、回路基板を識別できるようにしている。
【0006】
一般的に、回路基板は、基板自体を製造し、この製造した基板にスルーホール、ランドパターン、回路パターンを形成し、その後、回路部品を搭載し、これらをはんだ等により固定する等により製造する。
【0007】
特許文献1に開示の装置は、スルーホール、ランドパターン、配線パターン等の基板自体の製造後に形成された部分を使用して、基板識別符号を作成している。
【0008】
このため、スルーホール、ランドパターン、配線パターン等の形成以前には適用できないといった問題がある。また、回路部品の搭載後にはスルーホール、ランドパターン等が回路部品に隠される等のため、計測対象の位置の正確な計測が難しくなるといった問題がある。また、これらをはんだ等により固定した後には、はんだによるスルーホール、ランドパターン、配線パターン等の形状自体の変形や汚れ等により、計測対象の位置の正確な計測が難しくなるといった問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決して、基板の製造工程の段階において基板を識別する個体識別情報を基板に付与せずに、基板を識別できる基板のトレーサビリティシステム、及び基板のトレーサビリティ方法を提供することである。」

イ 「【0015】
本実施の形態に係る基板のトレーサビリティシステム1は、基板情報処理装置2と、複数(n台)の基板処理装置3と、搬送器5とにより構成される。図1では、n=4として記載している。図1には、基板を投入する基板投入部、基板を取り出す基板取り出し部も記載してある。
【0016】
複数の基板処理装置3は、直列接続され、基板に対し、はんだ印刷、部品搭載等のそれぞれ所定の処理をする装置である。
【0017】
搬送器5は、複数の基板処理装置3を縦走するように設置され、基板投入部に投入された基板を、複数(n台)の基板処理装置3を通って基板取り出し部へと搬送する。搬送器5は、例えばコンベアである。
【0018】
基板情報処理装置2は、複数(n台)の基板処理装置3に対応して複数(n台)の撮像部を備える。
【0019】
基板情報処理装置2は、搬送された基板が複数の基板処理装置3のうちの第k(k=1からn)の基板処理装置3に達した際に、第kの基板処理装置3の、例えば入口に設置された第kの撮像部により基板の表面状態の情報を含む画像を撮像する。そして、この画像に含まれる基板の表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を付加して格納部(不図示)に格納する。
【0020】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、搬送された基板(基板自体)の表面状態の情報を含む画像を撮像し、撮像した画像に含まれる表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出する。そして、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を作成し格納する。基板自体の表面状態は、基板自体の製造後のどの段階においても変化がないので、基板自体の表面状態から抽出した所定の特徴量も変化がない。この変化がない所定の特徴量に対応した区別情報とともに、各基板処理装置(各工程)におけるそれぞれの基板の所定の情報を生産履歴サーバ等の上位装置に登録するようにすれば、基板のトレーサビリティが可能となる。この基板のトレーサビリティは、変化がない所定の特徴量に対応した区別情報を使用しているので、基板の製造工程の段階において基板を識別する個体識別情報を基板に付与せずに、基板を識別することができる。
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る基板のトレーサビリティシステムの一例を示す図である。本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態の基板情報処理装置2を撮像部6、特徴量抽出部7、格納部8、制御部9で構成させて、具体化したものである。本図には、複数の基板処理装置3に応じた所定の情報を登録する生産履歴サーバ4も記載してある。
主に第1の実施の形態と相違する部分について説明する。」

ウ 「【0037】
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る基板のトレーサビリティシステムの「部品搭載工程時の動作」の一例を示すフローチャートである。」

エ 「【0050】
…中略…

「部品搭載工程時の動作」(第2工程時の動作)
図8のステップB1では、基板情報処理装置2の制御部9は、第2の検出信号の受信を待つ。第2の検出信号は、はんだ印刷機によりはんだ印刷され搬送器5により下流側に搬送された基板が部品搭載機の入口に達した際に、部品搭載機の入口に備えられている、基板が搬送され到着したことを検出する第2の検出器により出力される。
【0051】
図8のステップB2では、基板情報処理装置2の制御部9は、第2の検出信号を受信すると、第2の撮像部6に撮像指示を出力し、第2の撮像部6に基板の表面状態を撮像させ基板の表面状態を含む画像を取得する。
【0052】
図8のステップB3では、基板情報処理装置2の特徴量抽出部7は、この取得した画像に含まれる表面状態の情報から基板の所定の特徴量を、図7のステップA3で示した処理と同様にして抽出する。
【0053】
図8のステップB4では、制御部9は、この抽出した特徴量の画像ファイルに画像ファイル名(区別情報)を付加して格納部8に格納する。
【0054】
図8のステップB5では、制御部9は、この画像ファイル名(区別情報)を、基板情報(基板の製品名、、製品番号)に部品搭載機における基板通過日時(この基板の撮像日時)を含めた新たな基板情報(基板通過履歴)と共に、生産履歴サーバ4に登録する。そして、ステップB1へ戻る。」

オ 「図2



カ 「図8



(2)上記(1)の記載事項ア〜カより、引用例1には、次の事項が記載されているといえる。

ア 上記(1)記載事項イから、引用例1には、“
基板情報処理装置2と、複数(n台)の基板処理装置3と、搬送器5とにより構成されるトレーサビリティシステム1であって(【0015】)、
複数の基板処理装置3は、直列接続され、基板に対し、はんだ印刷、部品搭載等のそれぞれ所定の処理をする装置であり(【0016】)、
基板情報処理装置2は、複数(n台)の基板処理装置3に対応して複数(n台)の撮像部を備え(【0018】)、搬送された基板が複数の基板処理装置3のうちの第kの基板処理装置3に達した際に、第kの基板処理装置3の第kの撮像部により基板の表面状態の情報を含む画像を撮像し、この画像に含まれる基板の表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を付加して格納部に格納し(【0019】)、
各基板処理装置におけるそれぞれの基板の所定の情報を生産履歴サーバ等の上位装置に登録して基板のトレーサビリティが可能となる”こと(【0020】)が記載されているといえる。

イ 上記(1)記載事項イの「図2は、本発明の第2の実施の形態に係る基板のトレーサビリティシステムの一例を示す図である。本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態の基板情報処理装置2を撮像部6、特徴量抽出部7、格納部8、制御部9で構成させて、具体化したものである。本図には、複数の基板処理装置3に応じた所定の情報を登録する生産履歴サーバ4も記載してある。主に第1の実施の形態と相違する部分について説明する。」(【0020】)との記載、上記(1)記載事項オ(図2)を参照して、引用例1には、“基板情報処理装置2は、撮像部6、特徴量抽出部7、格納部8、制御部9で構成され、複数の基板処理装置3に応じた所定の情報を登録する生産履歴サーバ4を有”することが記載されているといえる。

ウ 上記(1)記載事項ウの「図8は、本発明の第2の実施の形態に係る基板のトレーサビリティシステムの「部品搭載工程時の動作」の一例を示すフローチャートである。」(【0037】)との記載、及び上記(1)記載事項カ(図8)のフローチャート、並びに、上記(1)記載事項エより、引用例1には、“
基板情報処理装置2の制御部9は、第2の撮像部6に基板の表面状態を撮像させ基板の表面状態を含む画像を取得し(【0051】)、この取得した画像に含まれる表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し(【0052】)、
制御部9は、この抽出した特徴量の画像ファイルに画像ファイル名(区別情報)を付加して格納部8に格納し(【0053】)、この画像ファイル名(区別情報)を、基板情報(基板の製品名、、製品番号)に部品搭載機における基板通過日時(この基板の撮像日時)を含めた新たな基板情報(基板通過履歴)と共に、生産履歴サーバ4に登録する”(【0054】)ことが記載されているといえる。

エ 以上、ア〜ウの検討から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「基板情報処理装置2と、複数(n台)の基板処理装置3と、搬送器5とにより構成されるトレーサビリティシステム1であって、
複数の基板処理装置3は、直列接続され、基板に対し、はんだ印刷、部品搭載等のそれぞれ所定の処理をする装置であり、
基板情報処理装置2は、複数(n台)の基板処理装置3に対応して複数(n台)の撮像部を備え、搬送された基板が複数の基板処理装置3のうちの第kの基板処理装置3に達した際に、第kの基板処理装置3の第kの撮像部により基板の表面状態の情報を含む画像を撮像し、この画像に含まれる基板の表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を付加して格納部に格納し、
各基板処理装置におけるそれぞれの基板の所定の情報を生産履歴サーバ等の上位装置に登録して基板のトレーサビリティが可能となるものにおいて、
基板情報処理装置2は、撮像部6、特徴量抽出部7、格納部8、制御部9で構成され、複数の基板処理装置3に応じた所定の情報を登録する生産履歴サーバ4を有し、
基板情報処理装置2の制御部9は、第2の撮像部6に基板の表面状態を撮像させ基板の表面状態を含む画像を取得し、この取得した画像に含まれる表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し、
制御部9は、この抽出した特徴量の画像ファイルに画像ファイル名(区別情報)を付加して格納部8に格納し、この画像ファイル名(区別情報)を、基板情報(基板の製品名、、製品番号)に部品搭載機における基板通過日時(この基板の撮像日時)を含めた新たな基板情報(基板通過履歴)と共に、生産履歴サーバ4に登録する
トレーサビリティシステム1。」

2 引用例2に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2014−134877号公報(平成26年7月24日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態の情報処理装置100を利用した通信システムを示すシステム構成図である。図1に示す通り、情報処理装置100は、ネットワークを介してサーバ200と通信接続することができる。本実施形態においては、情報処理装置100は、当該装置に対して受け付けられた操作履歴情報や、当該装置にインストールされているアプリケーションに対して受け付けられた操作履歴情報およびそのアプリケーションの処理結果情報をメッセージキューとして生成して、記憶することができる。そして、情報処理装置100は、生成されたメッセージキューに基づいて、操作履歴情報や処理結果情報を所定のタイミングでサーバ200に送信し、サーバ200は、受信した操作履歴情報や処理結果情報を記憶する。
【0020】
ここで情報処理装置100は、メッセージキューとして、操作履歴情報および処理結果情報を示す文字列を生成し、その文字列をファイル名としたメッセージキューファイルを生成する。そして、情報処理装置100は、所定のタイミングで、この生成したメッセージキューファイルのファイル名から操作履歴情報や処理結果情報を抽出して、サーバ200に出力し、また同期処理を行うことができる。」

イ 「【0027】
ここで、図4を用いて、生成する文字列およびその文字列からなるファイル名の記述について説明する。図4は、ディレクトリエントリと、iノードデータ構造とからなるファイル構造を示す説明図である。この説明図は、一般的に、UNIX(登録商標)などにおけるファイル構造を示したものである。
【0028】
図4(a)に示される通り、ディレクトリエントリは、iノード番号とファイル名とからなるデータ構造をとる。また、iノードデータ構造は、ファイル区分(ディレクトリか、ファイルの区分)、iノード番号、ユーザID、およびファイルサイズ等を含んだものである。メッセージキュー管理部104は、そのディレクトリエントリにおけるファイル名の領域に、処理結果を示す文字列を記述することができる。なお、iノードデータ構造には、実体データを含めないことでデータサイズを極力小さくすることができる。
【0029】
図4(a)を用いてさらに、ファイル名の構造について説明する。上述した通り、ファイル名は、少なくとも、CUE番号および操作履歴情報や処理結果情報を示す文字列からなる。CUE番号は、入力の時系列的な順番を示すIDであり、操作履歴情報や処理結果情報は、どのキーが押下(またはタッチ)されたかを示す情報である。なお、この情報に限るものではなく、例えば図4(b)に示されるように、UUID、CUE番号、タイプ、および処理結果内容を示す文字列を生成するようにしてもよい。なお、ここでUUID(Universally Unique Identifier)は、標準化された一意に識別するための識別子であり、タイプは、アプリケーションなどの操作対象を示し、処理結果内容は、操作に対するアプリケーションにより処理された結果を示す情報である。また、図4(c)に示される文字列としてもよい。図4(c)においては、UUID、CUE番号、タイプ、処理結果前ステータス、および処理結果後ステータスを示す文字列を生成することが示されている。」

ウ 「図4



3 引用例3に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2008−219091号公報(平成20年9月18日公開。以下、これを「引用例3」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、画像ファイルを検索するために画像ファイル名に識別情報を付加する画像処理システム、情報処理装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラなどの普及により、画像を撮影する機会が増えてきたのに伴い、ユーザは大量の画像ファイルを扱わなければならなくなった。そのため、数多くの画像ファイルを効率的に整理、検索を行うべく、画像ファイルに一意な識別情報を付加する技術が提案されている。
【0003】
従来の技術では、撮像装置の製造番号などを用いて、一意な識別情報を画像ファイル名にするものが知られている(特許文献1参照)。また、デジタルカメラで今まで何枚撮影したのかを示すカウンタ情報から撮影する画像ファイル名を作成するものも知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−023602号公報
【特許文献2】特開2005−027350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮像装置の製造番号などは一般に数字の羅列など、ユーザになじみのないものである。その結果、上記特許文献1では、画像ファイル名は数字の羅列となってしまい、ユーザには画像ファイル名が分かりにくいものとなってしまう欠点があった。
【0005】
また、特許文献2記載の技術によれば、同一のデジタルカメラ内では画像ファイルを一意に区別することができるが、PC等に送信されてしまうと画像ファイルを一意に区別できなくなってしまうおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、撮像装置などの画像処理装置で画像に識別情報を付加した場合に、画像の転送先となる情報処理装置においても、取り扱いが容易な画像ファイル名を付加することができる情報処理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。」

イ 「【0052】
次に、PC101が、UUID及びUUIDを付加された画像ファイルをデジタルカメラ100から受信し、新たなファイル名を付与して記録する処理について説明する。本処理のフローを図5に示す。
【0053】
まず、ステップS5001で、PC101はデジタルカメラ100からUUIDと画像ファイルを受信する。このUUID及び画像ファイルの送受信処理については後で詳しく述べるが、画像ファイルの受信とUUIDの受信は1度の通信で行われる場合もあるし、複数回の通信により行われる場合もある。
【0054】
ステップS5002で、PC101は受信した画像ファイルのファイル名を変更する。具体的には、画像ファイルにPC内の「C:¥Temp」フォルダで取り扱うためのファイル名(以下、「PC内ファイル名」)を付与するファイル名付与処理を行う。付与された新たなファイル名は、後述するUUIDの照合を利用した各種処理を行うために用いられる。本実施形態におけるPC内ファイル名は、UUIDとカメラ内ファイル名を連結したファイル名とする。」

4 引用例4に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、国際公開第2017/216950号(2017年12月21日公開。以下、これを「引用例4」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

ア 「[0022] 又、装着機16は、パーツカメラ90と、マークカメラ91(図2参照)とを備えている。パーツカメラ90は、図1に示すように、フレーム部32上の搬送装置22と供給装置28との間に、上を向いた状態で配設されている。これにより、パーツカメラ90は、装着ヘッド26の吸着ノズル62によって吸着保持された部品を撮像し得る。そして、マークカメラ91は、下方を向いた状態でスライダ50に取り付けられており、装着ヘッド26と共に、X方向、Y方向及びZ方向に移動させられる。これにより、マークカメラ91は、フレーム部32上の任意の位置を撮像し得る。
[0023] 図2に示すように、当該装着機16は、制御装置100を備えている。制御装置100は、コントローラ102を有しており、コントローラ102は、CPU、ROM、RAM等を備え、コンピュータを主体とするものである。コントローラ102は、複数の駆動回路106に接続されており、それら複数の駆動回路106は、電磁モータ46、電磁モータ52、電磁モータ54、基板保持装置48、ノズル昇降装置65、正負圧供給装置66、送出装置82に接続されている。これにより、搬送装置22、移動装置24等の作動が、コントローラ102によって制御される。
[0024] 又、コントローラ102は、画像処理装置110と、記憶装置115と、ディスプレイ120と、データ作成装置130に対して接続されている。画像処理装置110は、パーツカメラ90及びマークカメラ91によって得られた画像データに対して画像処理を施すものであり、コントローラ102は、画像データから各種情報を取得する。ディスプレイ120は、種々の情報を表示可能な表示装置であって、コントローラ102からの制御信号に基づいて、当該部品実装システム1の稼働状況、エラーの発生、記憶装置115の記憶内容(図5参照)等、部品実装システム1に関する種々の情報を表示する。」

イ 「図2



5 引用例5に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2003−90802号公報(平成15年3月28日公開。以下、これを「引用例5」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体ウェハ基板や液晶ガラス基板などの欠陥を撮像して取得された画像データを用いて基板を自動的に検査するオート欠陥検査と、基板を目視により検査するマニュアル欠陥検査とを行う基板検査システムに関する。」

イ 「【0009】図1は基板検査システムの構成図である。基板カセット1には、検査対象となる複数の半導体ウエハ基板やフラットディスプレイ基板(以下、基板と省略する)2が収納されている。この基板カセット1とオートマクロ検査装置7及びマニュアルマクロ検査装置8との間の搬送路に基板搬送ロボット3が設けられている。この基板搬送ロボット3は、直線状の搬送レール4上を矢印イ方向、すなわち基板カセット1への基板2の取り出し差し入れ方向と同一方向に移動自在に設けられている。この基板搬送ロボット3は、基板2を吸着保持するためのコ字形状のハンドを有するロボットアーム5が矢印ロ方向に回動自在に備えられ、かつ基板搬送ロボット3の本体上において前進、後退、回転するものとなっている。」

ウ 「【0019】このマニュアルマクロ検査装置8の目視観察位置、例えばマニュアルマクロ検査装置8において揺動する基板2をオペレータが目視によりマクロ検査する視線範囲の傍には、表示手段としてのオートマクロ検査結果を表示する画像表示用PC16が設けられている。」

エ 「図1




第6 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「複数の基板処理装置3」のうち、「部品搭載」を行う装置は、本願発明1の「ノズルにより吸着された部品を基板に実装する実装作業を行う実装装置」と、下記の点(相違点1)で相違するものの、“部品を基板に実装する実装作業を行う実装装置”である点で共通する。

イ 引用発明の「基板情報処理装置2」に備えられる「撮像部」は、「第kの基板処理装置3の第kの撮像部により基板の表面状態の情報を含む画像を撮像」し、当該「画像に含まれる基板の表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を付加して格納部に格納」するところ、「基板情報処理装置2の制御部9」によって、「この抽出した特徴量の画像ファイルに画像ファイル名(区別情報)を付加して格納部8に格納」することから、引用発明は、当該「画像ファイル」を作成する本願発明1の「ファイルを作成するファイル作成部」に相当する構成を有することは明らかである。
また、引用発明は、「基板の表面状態の情報を含む画像」から「基板の所定の特徴量を抽出し、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を付加し」ているから、当該「一意に区別可能な区別情報」は本願発明1の「一意に識別する識別情報」に対応するものといえ、上記「画像ファイル」には、“当該ファイルを一意に識別する識別情報”を実質的に設定する本願発明1の「ファイル名を設定するファイル名設定部」に相当する構成を有することは明らかであり、引用発明の「基板情報処理装置2」と本願発明1の「前記実装装置において前記ノズルにより吸着された部品が撮像された画像と、該画像の画像処理で判定された前記部品の実装可否の旨とを格納したファイルを作成するファイル作成部と、前記ファイルのファイル名として、当該ファイルを一意に識別する識別情報を含むファイル名を設定するファイル名設定部と、を備えるファイル管理装置」とは、下記の点(相違点2)で相違するものの、“前記実装装置において前記部品が撮像された画像を格納したファイルを作成するファイル作成部と、前記ファイルのファイル名として、当該ファイルを一意に識別する識別情報を含むファイル名を設定するファイル名設定部と、を備えるファイル管理装置”である点で一致する。

ウ 引用発明の「基板情報処理装置2」は、「複数(n台)の基板処理装置3に対応して複数(n台)の撮像部を備え、搬送された基板が複数の基板処理装置3のうちの第kの基板処理装置3に達した際に、第kの基板処理装置3の第kの撮像部により基板の表面状態の情報を含む画像を撮像し、この画像に含まれる基板の表面状態の情報から基板の所定の特徴量を抽出し、この特徴量を一意に区別可能な区別情報を付加して格納部に格納」するものであるから、当該「格納部」は、本願発明1の「前記実装装置において撮像された前記画像をそれぞれ格納した前記ファイルを記憶可能なファイルサーバ」と、下記の点(相違点3)で相違するものの、“前記実装装置において撮像された前記画像をそれぞれ格納した前記ファイルを記憶可能な装置”である点で一致する。

エ 引用発明の「トレーサビリティシステム1」は、「直列接続され、基板に対し、はんだ印刷、部品搭載等のそれぞれ所定の処理をする装置」である「複数の基板処理装置3」をその構成要素とするものであるから、本願発明1の「基板作業システム」に相当するといえる。

オ 以上、ア〜エの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
部品を基板に実装する実装作業を行う実装装置と、
前記実装装置において前記部品が撮像された画像を格納したファイルを作成するファイル作成部と、前記ファイルのファイル名として、当該ファイルを一意に識別する識別情報を含むファイル名を設定するファイル名設定部と、を備えるファイル管理装置と、
前記実装装置において撮像された前記画像をそれぞれ格納した前記ファイルを記憶可能な装置と、
を備える基板作業システム。

〈相違点1〉
本願発明1の「部品」が、「ノズルにより吸着された」ものであるのに対し、引用発明において、「部品搭載」が具体的にどのような態様で行われるものかの特定が無い点。

〈相違点2〉
本願発明1の「ファイル作成部」が、部品が撮像された画像とともに、「該画像の画像処理で判定された前記部品の実装可否の旨」を格納したファイルを作成するのに対し、引用発明は、「画像ファイル」に「部品の実装可否の旨」を格納することが特定されていない点。

〈相違点3〉
実装装置において撮像された画像を格納するものが、本願発明1は、「ファイルサーバ」であるのに対し、引用発明は、「基板情報処理装置2」の「格納部」である点。

〈相違点4〉
本願発明1は、「前記画像と前記部品の実装可否の旨とを表示させるディスプレイ」を有するのに対し、引用発明は、ディスプレイを有することが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2及び4について先に検討する。
本願発明は、ファイル管理装置および基板作業システムに関するものであって(本願明細書[0001])、従来より、部品をピックアップして基板に配置するなどの基板に対する作業が行われる際に、部品のピックアップ動作や配置動作に関連して撮像された画像のファイルを管理するものが知られており、画像に追跡キーを対応付けたファイルを管理するものにおいて、作業後の検査にて部品の配置エラーなどの不良が生じた場合に、追跡キーから画像を検索することで不良の原因調査などを可能としたものが知られていたところ(同[0002]、[0003])、上述したような画像が複数の作業装置のそれぞれで撮像されるなど多数の画像が撮像される場合、異なる画像を格納したファイル間でファイル名が重複する可能性があり、特に、近年は要求される作業品質の向上に伴って、できるだけ多くの画像を撮像して不良の原因調査を行えるようにする必要性が高まっているから、ファイル名の重複の可能性もより高いものとなり、ファイル名が重複した場合、上書き保存されたファイル内の画像が消去されるから画像を用いた原因調査ができなくなってしまうことを課題とし(同[0004])、ファイル名の重複を防止して画像ファイルを適切に管理することを主目的としてなされたものである。(同[0005])
本願発明1は、とりわけ、上記相違点2及び4に係る構成、すなわち、部品が撮像された画像とともに、「該画像の画像処理で判定された前記部品の実装可否の旨」を格納する(相違点2)とともに、当該「部品の実装可否の旨」を「ディスプレイ」に表示する(相違点4)ため、作業者が、ディスプレイにおいて、部品の実装可否の旨とを認識することができるとの効果を奏するものである。

一方、引用発明は、上記第5 1(1)記載事項アから、基板を識別する個体識別情報を基板に付与する必要のない基板のトレーサビリティシステムに関するものであって(【0001】)、プリント配線基板等の回路基板を製造する場合において、製品の製造工程管理、品質検査等の目的で、トレーサビリティ(traceability:追跡可能性)が求められており(【0002】)、回路基板に回路基板を識別する個体識別情報を付与せずに、回路基板のトレーサビリティを得る従来技術が提案されており、当該従来技術の回路基板の固体識別装置は、位置情報取得手段と、登録手段とを備え、位置情報取得手段は、回路基板上の複数の計測対象の位置を計測し、この計測値と計測対象の設計値との差を計測対象ごとの位置情報として取得し、計測対象は、スルーホール、ランドパターン、レジスト開口部、配線パターン等であり、登録手段は、位置情報取得手段によって取得された位置情報の組み合わせを基板識別符号として登録したものが知られていたことを背景とし(【0003】)、そのような従来技術の回路基板の固体識別装置は、回路基板上に予め設定された複数の計測対象(スルーホール、ランドパターン、配線パターン等)の位置の計測値と、計測対象の設計値との差の組み合わせを基板識別符号として登録し、この基板識別符号により、回路基板を識別できるようにしており(【0005】)、一般的に、回路基板は、基板自体を製造し、この製造した基板にスルーホール、ランドパターン、回路パターンを形成し、その後、回路部品を搭載し、これらをはんだ等により固定する等により製造するところ(【0006】)、従来技術の装置は、スルーホール、ランドパターン、配線パターン等の基板自体の製造後に形成された部分を使用して、基板識別符号を作成している(【0007】)ため、スルーホール、ランドパターン、配線パターン等の形成以前には適用できないといった問題や、回路部品の搭載後にはスルーホール、ランドパターン等が回路部品に隠される等のため、計測対象の位置の正確な計測が難しくなるといった問題があり、また、これらをはんだ等により固定した後には、はんだによるスルーホール、ランドパターン、配線パターン等の形状自体の変形や汚れ等により、計測対象の位置の正確な計測が難しくなるといった問題があることを課題とし(【0008】)、基板の製造工程の段階において基板を識別する個体識別情報を基板に付与せずに、基板を識別できる基板のトレーサビリティシステムを提供することを目的としたなされたものである。(【0009】)

そうすると、基板の製造工程の段階において基板を識別する個体識別情報を基板に付与せずに、基板を識別できる基板のトレーサビリティシステムである引用発明において、「画像ファイル」に「実装可否の旨」を格納する動機付けは存在せず、また当該「実装可否の旨」を画像ファイルに格納することが、本願出願前に周知であったということもできない。
さらに、上記第5に示した、引用例2〜5にも、相違点2及び4に係る構成は見いだせず、したがって、上記その余の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、及び引用例2〜5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、本願発明1をさらに限定したものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2〜5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

<特許法29条2項について>
審判請求時の補正により、本願発明1〜6は上記第4に記載されたとおりのものとなっており、上記第6に示したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1〜5(上記第5の引用例1〜5)に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-01-10 
出願番号 P2019-570201
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 須田 勝巳
特許庁審判官 中村 信也
山崎 慎一
発明の名称 基板作業システム  
代理人 弁理士法人アイテック国際特許事務所  

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