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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1393941
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-08-10 
確定日 2023-02-07 
事件の表示 特願2017−130011「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日出願公開、特開2019− 10473、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月3日の出願であって、令和2年3月27日に手続補正書が提出され、同年12月25日に手続補正書及び上申書が提出され、令和3年7月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月30日付けで拒絶の理由が通知され、令和4年2月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年4月28日付け(謄本送達日:5月17日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年8月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(新規事項)令和4年2月7日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

請求項1の「前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示す処理を含む所定の処理を実行する処理実行手段」との記載の「前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示す処理を含む所定の処理」には、所謂ベース値算出目的の処理などの新たな技術的事項が導入されているから、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「当初明細書等」という。)の範囲内のものではない。

第3 審判請求時の補正について
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和4年2月7日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
(本件補正前の請求項1)
「発射手段と、
該発射手段によって発射された遊技球が流下する流下領域と、
該流下領域の所定の領域を通過した遊技球を検知する複数の所定検知手段と、
前記所定の領域の一部に対応して設けられ、対応する所定の領域への遊技球の通過を制御する遊技球誘導部材と、
前記複数の所定検知手段と電気的に接続され、遊技に対する遊技価値を付与するための処理を実行する遊技価値付与手段と、
前記遊技価値として遊技球を払い出す払出手段と、
前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示す処理を含む所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備える遊技機であって、
前記遊技価値付与手段は、
前記遊技に対する遊技価値を付与するための処理に用いられる情報であって、前記所定検知手段の検知に対して参照される参照用情報を記憶する第1参照用情報記憶手段と、
当該遊技機への電力の所定の供給が開始された後であって遊技を進行させるための所定処理の実行を開始する前に、前記第1参照用情報記憶手段に記憶されている前記参照用情報に対応した参照用情報信号を前記処理実行手段に対して送信する第1送信手段と、
前記所定検知手段による検知に基づいて取得された情報である入球情報に基づく所定情報信号を前記処理実行手段に対して送信する第2送信手段と、
を備え、
前記処理実行手段は、
前記遊技価値付与手段から送信された前記参照用情報信号に対応した参照用情報を記憶する第2参照用情報記憶手段と、
前記第2送信手段から送信された前記所定情報信号と、前記第2参照用情報記憶手段に記憶された前記参照用情報とに基づいて前記所定の処理を実行する実行手段と、
該実行手段による前記所定の処理の処理結果に関する情報である処理結果情報を記憶する処理結果情報記憶手段と、
前記処理結果情報に基づいて所定の表示手段を制御する表示制御手段と、を備え、
前記表示手段には、少なくとも数字情報が表示され、
電源が断された場合に、前記第2参照用情報記憶手段は、記憶していた前記参照用情報を失い得ることを特徴とする遊技機。」とあったものを、
(本件補正後の請求項1)
「A 発射手段と、
B 該発射手段によって発射された遊技球が流下する流下領域と、
C 該流下領域の所定の領域を通過した遊技球を検知する複数の所定検知手段と、
D 前記所定の領域の一部に対応して設けられ、対応する所定の領域への遊技球の通過を制御する遊技球誘導部材と、
E 前記複数の所定検知手段と電気的に接続され、遊技に対する遊技価値を付与するための処理を実行する遊技価値付与手段と、
F 前記遊技価値として遊技球を払い出す払出手段と、
G 前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示すための所定の処理を実行する処理実行手段と、
を備える遊技機であって、
E 前記遊技価値付与手段は、
E1 前記遊技に対する遊技価値を付与するための処理に用いられる情報であって、前記所定検知手段の検知に対して参照される参照用情報を記憶する第1参照用情報記憶手段と、
E2 当該遊技機への電力の所定の供給が開始された後であって遊技を進行させるための特定処理の実行を開始する前に、前記第1参照用情報記憶手段に記憶されている前記参照用情報に対応した参照用情報信号を前記処理実行手段に対して送信する第1送信手段と、
E3 前記所定検知手段による検知に基づいて取得された情報である入球情報に基づく所定情報信号を前記処理実行手段に対して送信する第2送信手段と、
を備え、
G 前記処理実行手段は、
G1 前記遊技価値付与手段から送信された前記参照用情報信号に対応した参照用情報を記憶する第2参照用情報記憶手段と、
G2 前記第2送信手段から送信された前記所定情報信号と、前記第2参照用情報記憶手段に記憶された前記参照用情報とに基づいて前記所定の処理を実行する実行手段と、
G3 該実行手段による前記所定の処理の処理結果に関する情報である処理結果情報を記憶する処理結果情報記憶手段と、
G4 前記処理結果情報に基づいて所定の表示手段を制御する表示制御手段と、を備え、
H 前記表示手段には、少なくとも数字情報が表示され、
I 電源が断された場合に、前記第2参照用情報記憶手段は、記憶していた前記参照用情報を失い得ることを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(なお、A〜Iは、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)を分説するために合議体が付した。以下、符号A等が付された事項を「特定事項A」等という。また、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。以下同じ。)。

2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示す処理を含む所定の処理を実行する処理実行手段」との記載を、「前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示すための所定の処理を実行する処理実行手段」とすることにより、「所定の処理」が「前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示すための」処理であることに限定するものと、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「遊技を進行させるための所定処理」を「遊技を進行させるための特定処理」に表現を改めて当該処理が「遊技価値を示すための所定の処理」とは異なる処理であることを明確にするものを含むものである。
そして、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無について
(1) 当初明細書等の記載
当初明細書等には、以下のとおり記載されている(下線は合議体が付した。)。

「【0031】
図2に示すように、遊技盤13は、正面視略正方形状に切削加工した木製のベース板60に、球案内用の多数の釘や風車およびレール61,62、第1普通入賞口63a、第2普通入賞口63b、第1始動口64a、第2始動口64b、可変入賞装置65、スルーゲート67、可変表示装置ユニット80等を組み付けて構成され、その周縁部が内枠12の裏面側に取り付けられる。第1普通入賞口63a、第2普通入賞口63b,第1始動口64a,第2始動口64b、可変入賞装置65、可変表示装置ユニット80は、ルータ加工によってベース板60に形成された貫通穴に配設され、遊技盤13の前面側から木ネジ等により固定されている。また、遊技盤13の前面中央部分は、前面枠14の窓部14c(図1参照)を通じて内枠12の前面側から視認することができる。以下に、主に図2を参照して、遊技盤13の構成について説明する。」

「【0062】
一方、第2始動口64bには、その第2始動口64bへ球が入球する開口部を覆う2枚の羽根を有する電動役物が設けられている。電動役物は、2枚の羽根を開閉することによって、第2始動口64bを開放状態(拡大状態)または閉鎖状態(縮小状態)とする。通常時において、第2始動口64bは、電動役物の羽根が閉じた(羽根が上方に起立した)閉鎖状態となっており、球が第2始動口64bへ入球できない、または、入球しづらい状態となっている。
【0063】
そして、第2図柄表示装置83における変動表示が「○」の図柄で停止すると、第2始動口64bの電動役物が所定時間だけ作動される。電動役物が作動されている間、電動役物の羽根が上方に起立した状態から。略V字形(逆ハの字形)に可動した状態となり、第2始動口64bが開放状態となる。第2始動口64bが開放状態になると、球が第2始動口64bへ入球できる状態、または、閉鎖状態に比して球が入球しやすい状態となる。つまり、第2図柄表示装置83における変動表示の結果として「○」の図柄で停止して当たりとなり、第2始動口64bが開放状態となった場合に、第2始動口64bへ球が入球して大当たり抽選が多く行える状態とすることができる。
・・・
【0067】
可変入賞装置65は、具体的には、大入賞口65aを覆う横長矩形状の開閉板と、その開閉板の下辺を軸として前方側に開閉駆動するための大入賞口ソレノイド(図示せず)とを備えている。大入賞口65aは、通常時は、球が入賞できないか又は入賞し難い閉状態になっている。大当たりの際には大入賞口ソレノイドを駆動して開閉板を前面下側に傾倒し、球が大入賞口65aに入賞しやすい開状態を一時的に形成し、その開状態と通常時の閉状態との状態を交互に繰り返すように作動する。」

「【0075】
遊技盤13には、球の落下方向を適宜分散、調整等するために多数の釘が植設されていると共に、風車等の各種部材(役物)が配設されている。」

「【0090】
主制御装置110には、パチンコ機10における役物比率に関する情報を管理する役物比率管理チップが設けられている。役物比率管理チップ207は、信号線206を介してMPU201と接続され、MPU201より役物比率の管理に必要な情報を受け取り、受け取った情報を加工して記憶することにより、パチンコ機10の役物比率に関する情報を管理するマイクロチップ(集積回路)である。」

「【0235】
ここで、役物比率は、遊技者に払い出された球(賞球)の総数のうち、役物が作動する第2始動口64a及び大入賞口65aへの入賞に伴って払い出された球(賞球)の数の比率を示したものであり、70%以下と定められている。また、連続役物比率は、遊技者に払い出された球(賞球)の総数のうち、連続して役物が作動する大入賞口65aへの入賞に伴って払い出された球(賞球)の数の比率を示したものであり、60%以下と定められている。」

(2) 検討
ア 特定事項Gの「前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示すための所定の処理」が当初明細書等に記載されているか否かを検討するにあたり、まず、「前記遊技球誘導部材」について検討する。
特定事項Gの「前記遊技球誘導部材」は、特定事項Dにおいて「前記所定の領域の一部に対応して設けられ、対応する所定の領域への遊技球の通過を制御する遊技球誘導部材」と特定されている。
ここで、令和2年12月25日提出の上申書の「第1普通入賞口63a、第2普通入賞口63b、第1始動口64a、第2始動口64b、大入賞口65aといった流下領域の所定の領域」と記載されているとおり、「第1普通入賞口63a、第2普通入賞口63b、第1始動口64a、第2始動口64b、大入賞口65a」が「前記所定の領域」に対応すると認められる。
そして、【0062】には「第2始動口64bには、・・・電動役物が設けられている。電動役物は、2枚の羽根を開閉することによって、第2始動口64bを開放状態(拡大状態)または閉鎖状態(縮小状態)とする。」と、【0063】には「第2始動口64bが開放状態になると、球が第2始動口64bへ入球できる状態、または、閉鎖状態に比して球が入球しやすい状態となる」と、それぞれ記載されている。
したがって、「第2始動口64b」に設けられた「電動役物」は、「対応する所定の領域」である「第2始動口64b」「への遊技球の通過を制御する」ものといえる。
また、【0067】には「大入賞口65aを覆う横長矩形状の開閉板」との記載があり、さらに「大入賞口65aは、通常時は、球が入賞できないか又は入賞し難い閉状態になっている。大当たりの際には大入賞口ソレノイドを駆動して開閉板を前面下側に傾倒し、球が大入賞口65aに入賞しやすい開状態を一時的に形成し、その開状態と通常時の閉状態との状態を交互に繰り返すように作動する。」と、記載されている。
したがって、「開閉板」は、「対応する所定の領域」である「大入賞口65a」「への遊技球の通過を制御する」ものといえる。
よって、当初明細書等の「第2始動口64b」に設けられた「電動役物」及び「大入賞口65aを覆う」「開閉板」は、本件補正発明の特定事項Dの「遊技球誘導部材」に対応し、当初明細書等の「第2始動口64b」及び「大入賞口65a」は、本件補正発明の特定事項Dの 「前記所定の領域の一部」に対応するものといえる。

イ 令和2年12月25日提出の上申書の「役物比率管理チップ207(処理実行手段)」に記載されているとおり、当初明細書等の「役物比率管理チップ207」が、本件補正発明の特定事項Gの「処理実行手段」に対応するものと認められる。
そして、【0090】の「役物比率管理チップ207は、・・・MPU201より役物比率の管理に必要な情報を受け取り、受け取った情報を加工して記憶することにより、パチンコ機10の役物比率に関する情報を管理する」との記載、【0235】の「役物比率は、遊技者に払い出された球(賞球)の総数のうち、役物が作動する第2始動口64a及び大入賞口65aへの入賞に伴って払い出された球(賞球)の数の比率を示したもの」及び「連続役物比率は、遊技者に払い出された球(賞球)の総数のうち、連続して役物が作動する大入賞口65aへの入賞に伴って払い出された球(賞球)の数の比率を示したもの」との記載から、当初明細書等には、「役物比率管理チップ207(処理実行手段)は」、「役物が作動する第2始動口64a及び大入賞口65aへの入賞(前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過)に伴って払い出された球(賞球)(付与される遊技価値)の数の比率」を示す処理を実行することが記載されているといえる。
よって、特定事項Gの「前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示すための所定の処理」は、当初明細書等に記載されたものである。

ウ 次に、特定事項Gの「所定の処理」に、所謂ベース値算出目的の処理が含まれるか否かについて検討する。
当初明細書等には、【0031】に「遊技盤13は、・・・球案内用の多数の釘・・・を組み付けて構成され」と、【0075】に「遊技盤13には、球の落下方向を適宜分散、調整等するために多数の釘が植設されている」と、それぞれ記載されている。
また、遊技機の技術分野において、各入賞口(「所定の領域」に対応)に対応して、その近傍に「釘」が植設されることは技術常識でもある。
そして、これらの「釘」は、遊技球を誘導する機能を備えるものといえるから、「遊技球誘導部材」ということができる。
しかしながら、特定事項Dの「遊技球誘導部材」は、「前記所定の領域の一部に対応して設けられ」るものであり、各入賞口に対応して、すなわち、「前記所定の領域の」全部「に対応して設けられ」る「釘」は、特定事項Dの「遊技球誘導部材」に含まれるものとはいえない。
また、特定事項Dの「遊技球誘導部材」は、「対応する所定の領域への遊技球の通過を制御する」ものである。
ここで、「制御」とは、「2(当審注:2は丸囲いされた2)機械や設備が目的通り作動するように操作すること。「自動−」」(広辞苑第6版)であるところ、「釘」によって、誘導され又は「釘」に衝突し、弾かれながら不規則な動きをする個々の遊技球が「所定の領域」を通過するか否かを「釘」の存在から予測することは不可能である、すなわち、「釘」は、遊技球が「所定の領域」を通過するか否かをコントロールするものではない。
よって、「釘」は、「対応する所定の領域への遊技球の通過を制御する」部材である特定事項Dの「遊技球誘導部材」に対応するとはいえない。
以上のことから、特定事項Dの「遊技球誘導部材」には、「釘」は含まれないと認められる。
そして、上記ア及びイの検討を踏まえると、特定事項Gの「前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値」は、「第2始動口64b」及び「大入賞口65a」への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を意図するものであり、「第2始動口64b」、「大入賞口65a」に加え、対応して「釘」のみが設けられたその他の入賞口への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値(総賞球数)を意図しているとはいえない。
よって、特定事項Gの「所定の処理」は、通常遊技状態における総賞球数とアウト球数(総発射球数)の比である所謂ベース値の算出に必要な処理を含むものとはいえない。

エ 以上のことから、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであり、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

4 独立特許要件について
原査定の理由は、上記第2のとおり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないことのみであるところ、上記3のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、その他に本件補正発明について新たな拒絶理由を発見しないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである(同法同条第6項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)の規定に適合する。)。

5 まとめ
以上のとおり、本件補正は適法にされたものと認められる。

第4 本願発明について
1 本願の請求項1に係る発明
上記第3のとおり、本件補正は適法にされたものであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記「第3 1」に(本件補正後の請求項1)として記載したとおりのものであり、本件補正発明である。

2 原査定(新規事項)について
原査定の拒絶の理由は、上記第2のとおり、令和4年2月7日付けの手続補正書でした補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものである。

3 検討
審判請求時の補正により、補正前の「前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示す処理を含む所定の処理を実行する処理実行手段」という記載は、「前記遊技価値付与手段と電気的に接続され、前記払出手段と制御信号の送受信を行う事なく、前記遊技球誘導部材が設けられた前記所定の領域への遊技球の通過に係る情報に基づき付与される遊技価値を示すための所定の処理を実行する処理実行手段」に補正されており、上記「第3 3」において検討したとおり、原査定の拒絶の理由が解消したため、原査定の理由を維持することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-01-24 
出願番号 P2017-130011
審決分類 P 1 8・ 55- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 蔵野 いづみ
北川 創
発明の名称 遊技機  
代理人 岡田 伸一郎  

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