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審決分類 |
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する A42B 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A42B 審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する A42B 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する A42B 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A42B |
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管理番号 | 1393957 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2022-07-01 |
確定日 | 2022-12-05 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6236566号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第6236566号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件訂正審判に係る特許第6236566号(以下「本件特許」という。)は、平成25年7月29日を出願日とする特願2013−156944の一部を平成29年7月10日に新たな特許出願(特願2017−135010号)としたものである。その後、平成29年11月2日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成29年11月22日)がされ、令和4年7月1日に本件訂正審判が請求されたものであり、令和4年8月2日に上申書が提出されたものである。 第2 請求の趣旨 本件訂正審判は、本件特許の特許請求の範囲を、本件審判請求書 (以下「請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであって、その請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。(なお、下線は訂正箇所を示す。) <訂正事項> 特許請求の範囲の請求項1の「ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモックであって」との記載を、「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモックであって」に訂正する。 第3 当審の判断 1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項は、本件訂正前の請求項1の「ヘルメット用ハンモック」が用いられるヘルメットを「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用」のものに限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)には、 「【0025】 上記の墜落時保護性能を確認するために、図1に示すように、ハンモック1を帽体4の内部に設けたヘルメットに対し、「日本工業規格T8131:2000付属書2」における転倒・転落時保護用安全帽の規定に基づく試験を行った。その結果、前頭部試験及び後頭部試験では、帽体4、ハンモック1及び衝撃吸収構造部7の複合体として何れも、衝撃力が9.81kN以下に抑えられており、前頭部保護領域F及び後頭部保護領域Rは、高い墜落時保護性能を有することが明らかとなった。」 と記載されており、ヘルメット用ハンモックが用いられたヘルメットに対して、「日本工業規格T8131:2000付属書2」における転倒・転落時保護用安全帽の規定に基づく試験を行い、ヘルメットが墜落時保護性能を有する旨が記載されているから、ヘルメット用ハンモックが用いられるヘルメットが日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用である構成は本件特許明細書等に記載されているといえる。 よって、訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第126条第5項の規定に適合する。 さらに、訂正事項によって、「ヘルメット用ハンモック」の技術的事項は減縮されるから、実質上特許請求の範囲を拡張あるいは変更するものでないことは明らかであるので、特許法第126条第6項の規定に適合する。 2 独立特許要件について 本件訂正の訂正事項は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (1)本件訂正発明について 訂正後の請求項1〜5に係る発明(以下「本件訂正発明1」などという。また、本件訂正発明1〜5を「本件訂正発明」と総称することもある。)は、次のとおりである。 【請求項1】 日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモックであって、前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部を有して放射状に配設された複数本の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部とからなるハンモック本体を備えるものにおいて、 前記ハンモック本体は、前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、 前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結していることを特徴とするヘルメット用ハンモック。 【請求項2】 前記衝撃吸収構造部は、互いに隣り合う前記脚部間に位置することを特徴とする請求項1記載のヘルメット用ハンモック。 【請求項3】 前記衝撃吸収構造部は、複数の前記延出部に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載のヘルメット用ハンモック。 【請求項4】 前記ハンモック本体と前記衝撃吸収構造部とは、合成樹脂により一体成型されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のヘルメット用ハンモック。 【請求項5】 前記衝撃吸収構造部は、複数の筒状部と、各筒状部の一端を互いに連結する板状の基部とを備えて各筒状部の軸線方向に付与される衝撃力に対して所定の衝撃吸収能力を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のヘルメット用ハンモック。 (2)特許権侵害差止等請求事件(令和3年(ワ)第31050号)での特許無効の抗弁に係る被告の主張 本件特許に関し、東京地方裁判所において係属中の特許権侵害差止等請求事件(令和3年(ワ)第31050号)の特許無効の抗弁に係る被告の主張内容及び当該主張を裏付けるための証拠の提出を求めたところ、令和4年8月2日提出の上申書に添付して、被告側提出の書面として、被告第1準備書面、被告第2準備書面及び乙第1、7〜16号証が、原告側提出の書面として、原告第2準備書面及び甲第17、19、20号証が提出された。 当該無効の抗弁に係る理由の概要は次のとおりである。 ア 理由1(乙第7、8号証に基づく公然実施された発明に係る新規性、進歩性) 訂正前の本件の請求項1に係る発明は、乙第7、8号証に基づく本件特許出願前に公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の本件の請求項1に係る発明は、乙第7、8号証に基づく本件特許出願前に公然実施された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 理由2(乙第9〜15号証に基づく公然実施された発明に係る新規性、進歩性) 訂正前の本件の請求項1に係る発明は、乙第9〜15号証に基づく本件特許出願前に公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の本件の請求項1に係る発明は、乙第9〜15号証に基づく本件特許出願前に公然実施された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ウ 理由3(乙第14、16号証に基づく刊行物に記載された発明又は公然実施された発明に係る新規性、進歩性) 訂正前の本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された乙第14号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の本件の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された乙第14号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 訂正前の本件の請求項1に係る発明は、乙第14、16号証に基づく本件特許出願前に公然実施された発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、訂正前の本件の請求項1に係る発明は、乙第14、16号証に基づく本件特許出願前に公然実施された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 エ そこで当審は、上記理由1〜3について、本件訂正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。 オ なお、事案に鑑み、上記理由1〜3の公然実施に係る検討の前に、各乙号証から把握される引用発明と本件訂正発明との対比検討を最初に行う。 (3)特許無効の抗弁に係る乙第7〜16号証から把握される事項等及び乙第14号証に記載された発明について 請求人は、上記上申書に添付して、以下の乙第7〜16号証を提出している。以下「乙第7号証」などを「乙7」などという。 乙第7号証:佐野 辰巳、写真撮影報告書、令和4年2月18日 乙第8号証:佐野 辰巳、インターネット検索報告書、令和4年2月16日 乙第9号証:FICHE PRODUIT Casquette BUJO、AUBOUEIX s.a.、2008年 乙第10号証:BUJO industrial bump−cap、AUBOUEIX s.a.、2009年 乙第11号証:FICHE PRODUIT Casquette BUJO、auboueix s.a.、2018年 乙第12号証:PRODUCT SHEET CAP、auboueix sas、2019年 乙第13号証:FICHE PRODUIT CASQUETTE、auboueix sas、2020年 乙第14号証:PRODUKTKATALOG 2011/12 Helme und Anstosskappen、auboueix S.A.、2012年11月(本製品カタログの表紙には「2011/12」と記載されている一方、18ページには「2012/11」と記載されており、両者は整合しないが、審決では、両者のうち、遅い日付である2012/11を公知日として扱うこととする。) 乙第15号証:佐野 辰巳、写真撮影報告書、令和4年4月22日 乙第16号証:佐野 辰巳、写真撮影報告書、令和4年5月7日 ア 乙7、乙8に係る発明について 乙7及び乙8から、株式会社イエローが製造した品名「タタメットBCP」について次の事項が看取できる。なお、甲17は、請求人(原告)が、乙8の記載が不鮮明であるとして同じ内容のものを提出したものである。 (ア) 乙7及び乙8に示された、株式会社イエローが製造した「タタメットBCP」は、「折りたたみ式ヘルメット」である。このヘルメットは、乙7の写真5の「労(平25/4)検 飛来・落下物用」との記載、及び乙8(甲17)の「Q&A」欄の「厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格「飛来・落下物用」の型式検定に合格しています」との記載から、「厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格したヘルメット」であることが把握される。 (イ) 乙7の写真3及び乙8(甲17)の「各部の名称と機能」欄の記載から、このヘルメットは、「頭部を覆う、硬い殻体」としての「帽体」、「保護帽を頭部に固定し衝撃を緩和する部品」としての「ハンモック」及び「頭部への衝撃を吸収する部品」としての「衝撃吸収ライナー」を備えることが把握できる。 (ウ) 乙7の写真6から、「ハンモック」は、頭頂部の中央部に円形の穴が空いた環状部分を備え、当該環状部分から放射状に延びる複数の部分を備えており、当該環状部分は、当該放射状に延びる複数の部分を互いに連結していることから、「連結部」であるといえる。当該放射状に延びる複数の部分は、乙7の写真7、9によれば当該連結部から下方に延びており、乙7の写真3によれば帽体との間で連結部を下方から支える態様をとることから、「複数の脚部」であるといえる。また、乙7の写真6、11、12から、各脚部の先端には帽体内面に着脱自在に係止する係止部を有することが看て取れる。さらに、乙7の写真6、10から、脚部間に多数の円柱状突起を有する部材が配置され、この部材と連結部が接続されたことが看て取れる。 よって、乙7、乙8を総合すると、以下の「引用発明1」が認められる。 <引用発明1> 厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格した折りたたみ式ヘルメットであって、頭部を覆う硬い殻体としての帽体、保護帽を頭部に固定し衝撃を緩和する部品としてのハンモック、頭部への衝撃を吸収する部品としての衝撃吸収ライナーを備えるものにおいて、 前記ハンモックは、頭頂部の中央部に円形の穴が空いた連結部を備え、該連結部から複数の脚部が放射状に延び、各脚部の先端には帽体内面に着脱自在に係止する係止部を有し、脚部間に多数の円柱状突起を有する部材が配置され、この部材と連結部が接続されている、 厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格した折りたたみ式ヘルメットに取り付けられるハンモック。 イ 乙9〜乙15に係る発明について 乙9〜乙15から、オーボエ社(auboueix S.A.)が製造した「キャップBUJO」について次の事項が看取できる。 (ア) 乙9から、オーボエ社が製造した「キャップBUJO」は、「欧州規格EN812に準拠し」試験を行ったもので、「頭部に硬い静止物が衝突したときに、着用者の頭部をけがから保護するための産業用バンプキャップ」である。 乙9によれば、この「産業用バンプキャップ」は、「落下・飛来物や移動中の吊り荷との衝突による衝撃から利用者を保護するものではありません」とされている。 (イ) この産業用バンプキャップは、ポリエチレンダイキャスト製帽体と着装体から構成され、この着装体は、4点固定式低密度ポリエチレン製ハンモックと低密度ポリエチレン製ヘッドバンドを含む。 (ウ) 乙9〜乙13及び乙14の10ページから、4点固定式低密度ポリエチレン製ハンモックは、放射状に延びる複数の部分と、これらの部分を頭頂部で連結する「連結部」が看て取れる。当該放射状に延びる複数の部分は、当該連結部から下方に延びており、かつ、ハンモックが4点固定式であることから、ポリエチレンダイキャスト製帽体との間で連結部を下方から支える態様をとり、「複数の脚部」であるといえる。また、脚部間に向かって伸びる延出部を備えることが看て取れる。 (エ) 乙15の写真6も併せみると、乙9〜乙14のハンモックは、脚部間に向かって伸びる延出部に接続された多数の突起を有する部材を備えることが看て取れる。 よって、乙9〜乙15を総合すると、以下の「引用発明2」が認められる。 <引用発明2> 欧州規格EN812に準拠し試験を行ったもので、頭部に硬い静止物が衝突したときに、着用者の頭部をけがから保護するためのものであって、落下・飛来物や移動中の吊り荷との衝突による衝撃から利用者を保護するものではないとされる産業用バンプキャップが、ポリエチレンダイキャスト製帽体と着装体から構成され、この着装体が、4点固定式低密度ポリエチレン製ハンモックと低密度ポリエチレン製ヘッドバンドを含むものにおいて 前記ハンモックは、放射状に配設された複数の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部を備え、前記脚部はポリエチレンダイキャスト製帽体との間で連結部を下方から支えており、 前記ハンモックは、前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された多数の突起を有する部材を備える、 産業用バンプキャップに取り付けられるハンモック。 ウ 乙14に係る発明について 乙14から、テヒニシャー グロース ウント アインツェルハンデル社が作成した製品カタログ12ページに掲載された、バンプキャップの付属品について次の事項が看取できる。 乙14の10ページを参照すると、乙14の12ページの上記バンプキャップの付属品には、乙14の10ページのバンプキャップに取り付けられる「4点固定式低密度ポリエチレン製着装体」が含まれると認められ、このバンプキャップは、「欧州規格EN812に対応し」試験を行ったもので、「硬い静止物との衝突によるけがから着用者の頭部を保護するための産業用保護キャップ」であり、「墜落、飛来、落下物による衝撃から着用者を保護するものではありません」とされている。また、乙14の10ページのバンプキャップは、ポリエチレンダイキャスト製帽体と着装体から構成され、この着装体は、4点固定式低密度ポリエチレン製着装体と低密度ポリエチレン製ヘッドバンドを含むものである。 乙14の10ページを参照すると、乙14の12ページの上記4点固定式低密度ポリエチレン製着装体は、放射状に延びる複数の部分と、これらの部分を頭頂部で連結する「連結部」が看て取れる。当該放射状に延びる複数の部分は、当該連結部から下方に延びており、かつ、4点固定式低密度ポリエチレン製着装体が4点固定式であることから、ポリエチレンダイキャスト製帽体との間で連結部を下方から支える態様をとり、「複数の脚部」であるといえる。また、連結部から脚部間に向かって伸びる延出部を備え、この延出部に接続された円板状の部材が、取り付けられていることが看て取れる。 よって、乙14の10、12ページの記載を総合すると、以下の「引用発明3」が認められる。 <引用発明3> 欧州規格EN812に対応し試験を行ったもので、硬い静止物との衝突によるけがから着用者の頭部を保護するためのものであって、墜落、飛来、落下物による衝撃から着用者を保護するものではないとされるバンプキャップが、ポリエチレンダイキャスト製帽体と着装体から構成され、この着装体が、4点固定式低密度ポリエチレン製着装体と低密度ポリエチレン製ヘッドバンドを含むものにおいて 前記4点固定式低密度ポリエチレン製着装体は、放射状に配設された複数の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部を備え、前記脚部はポリエチレンダイキャスト製帽体との間で連結部を下方から支えており、 前記4点固定式低密度ポリエチレン製着装体は、前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された円板状の部材とを備える、バンプキャップに取り付けられる4点固定式低密度ポリエチレン製着装体。 (4)理由1について(乙第7、8号証に基づく公然実施された発明に係る新規性、進歩性) ア 本件訂正発明1について (ア) 対比 引用発明1の「厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格した折りたたみ式ヘルメット」と、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」とは、「頭部を保護する部材」という限りで一致する。 引用発明1の「厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格した折りたたみ式ヘルメットであって、頭部を覆う硬い殻体としての帽体、保護帽を頭部に固定し衝撃を緩和する部品としてのハンモック」と、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモック」とは、「頭部を保護する部材の帽体内部に設けられて人頭に接するハンモック」という限りで一致する。 また、引用発明1の「脚部間に多数の円柱状突起を有する部材が配置され、この部材と連結部が接続されている」ことと、本件訂正発明1の「前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結していること」とは、「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された部材を備える」という限りで一致する。 そうすると、本件訂正発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1−1及び相違点1−2で相違する。 一致点1 頭部を保護する部材の帽体内部に設けられて人頭に接するハンモックであって、前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部を有して放射状に配設された複数本の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部とからなるハンモック本体を備えるものにおいて、 前記ハンモック本体は、前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された部材を備える、 ハンモック。 相違点1−1 本件訂正発明1が「前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結している」のに対し、引用発明1は「脚部間に多数の円柱状突起を有する部材が配置され、この部材と連結部が接続されている」点。 相違点1−2 本件訂正発明1が「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」用の「ハンモック」であるのに対して、引用発明1は「厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格した折りたたみ式ヘルメット」用の「ハンモック」である点。 (イ) 新規性について 以下、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」を「JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメット」といい、引用発明1の「厚生労働省労働安全衛生法の保護帽規格で飛来・落下物用の型式検定に合格した折りたたみ式ヘルメット」を「厚労省規格の飛来・落下物用ヘルメット」という。 相違点1−1について検討する。引用発明1のハンモックは、「多数の円柱状突起を有する部材」を備えるものであるが、「多数の円柱状突起」が「衝撃吸収」の機能を有するものとは、乙7、乙8からは把握できず、「衝撃吸収構造部」に相当するものか不明である。なお、引用発明1は「頭部への衝撃を吸収する部品としての衝撃吸収ライナー」を備えるが、「衝撃吸収ライナー」は、乙7、乙8(甲17)を参照すると、ハンモックに取り付けられたものではないため、本件訂正発明1の「衝撃吸収構造部」に相当するものではない。 次に相違点1−2について検討する。引用発明1の厚労省規格の飛来・落下物用ヘルメットと、JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットとは、規格が異なることに加えて、頭部の保護を必要とする状況(危険)、すなわち、飛来・落下物用なのか、転倒・転落時保護用なのかについても異なるものである。 よって、相違点1−1及び相違点1−2は実質的な相違点である。 (ウ) 進歩性について 相違点1−1及び相違点1−2についてさらに検討する。 a 相違点1−1について(衝突吸収構造部について) 乙7、乙8(甲17)からは、ハンモックが「多数の円柱状突起を有する部材」を備えることが把握されるが、「多数の円柱状突起」が「衝撃吸収」の機能を有するものであるとは直ちにいえるものではない。しかも、引用発明1は、別に「頭部への衝撃を吸収する部品としての衝撃吸収ライナー」を備えることを考慮すると、この衝撃吸収ライナーに加えて、更に「多数の円柱状突起を有する部材」を、頭部への衝撃を吸収する部品の「衝撃吸収構造部」として構成することの動機付けは、乙7、乙8からは認められない。 b 相違点1−2について(ヘルメットの規格、保護状況の相違について) 引用発明1の厚労省規格の飛来・落下物用ヘルメットは、折りたたみ可能として収納時の厚さを薄くして使いやすさを向上させたものである(乙8(甲17))。 引用発明1のハンモックが取り付けられるヘルメットが、収納時の厚さを薄くして使いやすさを向上させることを意図した折りたたみ式ヘルメットであり、かつ、厚労省規格の飛来・落下物用ヘルメットと、JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットとは、規格が異なることに加えて、頭部をどのような状況(危険)から保護するかについても異なるものであることから、引用発明1のハンモックが取り付けられる厚労省規格の飛来・落下物用ヘルメットを、規格や保護状況が異なるJIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに変更することの動機付けはない。 c したがって、引用発明1において、相違点1−1及び相違点1−2に係る本件訂正発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件訂正発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件訂正発明2〜5について 本件訂正発明2〜5発明は、本件訂正発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、引用発明1ではない。 また、本件訂正発明2〜5は、本件訂正発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明1に基いて容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 したがって、引用発明1が本件特許出願前に公然に実施されていたか否かを検討するまでもなく、本件訂正発明1〜5は、引用発明1ではなく、引用発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 (5)理由2について(乙第9〜15号証に基づく公然実施された発明とする新規性、進歩性) ア 本件訂正発明1について (ア) 対比 引用発明2の「欧州規格EN812に準拠し試験を行ったもので、頭部に硬い静止物が衝突したときに、着用者の頭部をけがから保護するためのものであって、落下・飛来物や移動中の吊り荷との衝突による衝撃から利用者を保護するものではないとされる産業用バンプキャップ」と、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」とは、「頭部を保護する部材」という限りで一致する。 引用発明2の「欧州規格EN812に準拠し試験を行ったもので、頭部に硬い静止物が衝突したときに、着用者の頭部をけがから保護するためのものであって、落下・飛来物や移動中の吊り荷との衝突による衝撃から利用者を保護するものではないとされる産業用バンプキャップ」に取り付けられる「ハンモック」と、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモック」とは、「頭部を保護する部材の帽体内部に設けられて人頭に接するハンモック」という限りで一致する。 また、引用発明2の「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された多数の突起を有する部材を備える」ことと、本件訂正発明1の「前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結していること」とは、「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された部材を備える」という限りで一致する。 そうすると、本件訂正発明1と引用発明2とは、以下の一致点2で一致し、相違点2−1〜相違点2−3で相違する。 一致点2 頭部を保護する部材の帽体内部に設けられて人頭に接するハンモックであって、放射状に配設された複数本の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部とからなるハンモック本体を備えるものにおいて、 前記ハンモック本体は、前記脚部間に向かって延びる延出部と、この延出部に接続された部材を備える、 ハンモック。 相違点2−1 本件訂正発明1が「前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結している」のに対し、引用発明2は「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された多数の突起を有する部材を備える」ものである点。 相違点2−2 本件訂正発明1が「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」用の「ハンモック」であるのに対し、引用発明2は「欧州規格EN812に準拠し試験を行ったもので、頭部に硬い静止物が衝突したときに、着用者の頭部をけがから保護するためのものであって、落下・飛来物や移動中の吊り荷との衝突による衝撃から利用者を保護するものではないとされる産業用バンプキャップ」に取り付けられる「ハンモック」である点。 相違点2−3 係止部を有する脚部について、本件訂正発明1は、脚部が「前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部」を有するのに対して、引用発明2は、脚部はポリエチレンダイキャスト製帽体との間で連結部を下方から支えているものの、「前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部」を有するか否かが特定されていない点。 (イ) 新規性について 相違点2−1について検討する。引用発明2のハンモックは、「多数の突起を有する部材」を備えるものであるが、「多数の突起」が「衝撃吸収」の機能を有するものとは、乙9〜乙15からは把握できず、「衝撃吸収構造部」に相当するものか不明である。 次に相違点2−2について検討する。JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに対して、引用発明2のバンプキャップは、規格が異なることに加えて、頭部の保護を必要とする状況(危険)について、引用発明2は、「頭部に硬い静止物が衝突したときに、着用者の頭部をけがから保護するためのもの」であり、これは、例えば、バンプキャップを装着した者が、歩行時に上部構造物等に頭部が衝突した際に保護するものであって、さらに、「落下・飛来物や移動中の吊り荷との衝突による衝撃から利用者を保護するものではない」については、前記歩行時における衝突とは比較にならない、大きな衝撃荷重に対する保護用として当該バンプキャップを用いることはできないとするものであるから、当該引用発明2のバンプキャップが、本件訂正発明1のJIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットと異なるものであることは明らかである。 したがって、相違点2−1及び相違点2−2は実質的な相違点である。 よって、相違点2−3を検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用発明2ではない。 (ウ) 進歩性について 相違点2−1及び相違点2−2についてさらに検討する。 a 相違点2−1について(衝突吸収構造部について) 乙9〜乙15からは、多数の突起が「衝撃吸収構造部」に相当するものであるか把握できないし、それを示唆する記載もない。 また、脚部間に向かって伸びる延出部に接続された部材にある多数の突起が「衝撃吸収構造部」に相当するものであることは、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。 b 相違点2−2について(ヘルメットの規格、保護状況の相違について) JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに対して、引用発明2のハンモックが取り付けられるバンプキャップは、規格が異なることに加えて、頭部をどのような状況(危険)から保護するかについても異なることは、上記(5)ア(イ)で述べた通りあるから、引用発明2のハンモックが取り付けられるバンプキャップを、規格や保護状況が異なるJIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに変更することの動機付けはない。 c したがって、引用発明2において、相違点2−1及び相違点2−2に係る本件訂正発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点2−3を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件訂正発明2〜5について 本件訂正発明2〜5発明は、本件訂正発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、引用発明2ではない。 また、本件訂正発明2〜5は、本件訂正発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明2に基いて容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 したがって、引用発明2が本件特許出願前に公然に実施されていたか否かを検討するまでもなく、本件訂正発明1〜5は、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 (6)理由3について(乙第14、16号証に基づく公然実施された発明または乙第14号証に記載された発明とする新規性、進歩性) ア 本件訂正発明1について (ア) 対比 引用発明3の「4点固定式低密度ポリエチレン製着装体」は本件訂正発明1の「ハンモック」に相当する。また、引用発明3の「欧州規格EN812に対応し試験を行ったもので、硬い静止物との衝突によるけがから着用者の頭部を保護するためのものであって、墜落、飛来、落下物による衝撃から着用者を保護するものではないとされるバンプキャップ」と、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」とは、「頭部を保護する部材」という限りで一致する。 引用発明3の「欧州規格EN812に対応し試験を行ったもので、硬い静止物との衝突によるけがから着用者の頭部を保護するためのものであって、墜落、飛来、落下物による衝撃から着用者を保護するものではないとされるバンプキャップ」用の「4点固定式低密度ポリエチレン製着装体」と、本件訂正発明1の「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモック」とは、「頭部を保護する部材の帽体内部に設けられて人頭に接するハンモック」という限りで一致する。 また、引用発明3の「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された円板状の部材とを備える」ことと、本件訂正発明1の「前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結していること」とは、「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された部材を備える」という限りで一致する。 そうすると、本件訂正発明1と引用発明3とは、以下の一致点3で一致し、相違点3−1〜相違点3−3で相違する。 一致点3 頭部を保護する部材の帽体内部に設けられて人頭に接するハンモックであって、放射状に配設された複数本の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部とからなるハンモック本体を備えるものにおいて、 前記ハンモック本体は、前記脚部間に向かって延びる延出部と、この延出部に接続された部材とを備える、 ハンモック。 相違点3−1 本件訂正発明1が「前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結している」のに対し、引用発明3は「前記脚部間に向かって伸びる延出部と、この延出部に接続された円板状の部材とを備える」ものである点。 相違点3−2 本件訂正発明1が「日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメット」用の「ハンモック」であるのに対し、引用発明3は「欧州規格EN812に対応し試験を行ったもので、硬い静止物との衝突によるけがから着用者の頭部を保護するためのものであって、墜落、飛来、落下物による衝撃から着用者を保護するものではないとされるバンプキャップ」に取り付けられる「4点固定式低密度ポリエチレン製着装体」である点。 相違点3−3 係止部を有する脚部について、本件訂正発明1は、脚部が「前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部」を有するのに対して、引用発明3は、脚部はポリエチレンダイキャスト製帽体との間で連結部を下方から支えているものの、「前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部」を有するか否かが特定されていない点。 (イ) 新規性について 相違点3−1について検討する。引用発明3の4点固定式低密度ポリエチレン製着装体は、「円板状の部材」を備えるものであるが、この「円板状の部材」が「衝撃吸収」の機能を有するものとは、乙14からは把握できず、「衝撃吸収構造部」に相当するものか不明である。 次に相違点3−2について検討する。JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに対して、引用発明3の、円板状の部材を備えた4点固定式低密度ポリエチレン製着装体が取り付けられたバンプキャップは、規格が異なることに加えて、頭部をどのような状況(危険)から保護するかについても異なることは、上記(5)ア(イ)で述べた通りであるから、当該引用発明3のバンプキャップが、本件訂正発明1のJIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットと異なるものであることは明らかである。 したがって、相違点3−1及び相違点3−2は実質的な相違点である。 よって、相違点3−3を検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用発明3ではない。 (ウ) 進歩性について 相違点3−1及び相違点3−2についてさらに検討する。 a 相違点3−1について(衝突吸収構造部について) 乙14、16からは、円板状の部材が「衝撃吸収構造部」に相当するものであるか把握できないし、それを示唆する記載もない。 また、脚部間に向かって伸びる延出部に接続された円板状の部材が「衝撃吸収構造部」に相当するものであることは、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。 b 相違点3−2について(ヘルメットの規格、保護状況の相違について) JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに対して、引用発明3の4点固定式低密度ポリエチレン製着装体が取り付けられるバンプキャップは、規格が異なることに加えて、頭部をどのような状況(危険)から保護するかについても異なるものであることは、上記(5)ア(イ)で述べたとおりであるから、引用発明3の4点固定式低密度ポリエチレン製着装体が取り付けられるバンプキャップを、JIS準拠の転倒・転落時保護用ヘルメットに変更することの動機付けはない。 c したがって、引用発明3において、相違点3−1及び相違点3−2に係る本件訂正発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点3−3を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 (エ) 乙16について 引用発明3を認定する際に、乙16の記載事項を考慮して、引用発明3の、脚部間に向かって伸びる延出部と接続する円板状の部材に「多数の突起」が配置されているとしても、上記(ウ)bで検討したとおり、相違点3−2の、ハンモックが取り付けられるヘルメットの規格、保護状況の相違は、実質的な相違点であり、引用発明3において、相違点3−2に係る本件訂正発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえないため、本件訂正発明1は、新規性、進歩性を有する。 イ 本件訂正発明2〜5について 本件訂正発明2〜5発明は、本件訂正発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、引用発明3ではない。 また、本件訂正発明2〜5は、本件訂正発明1の技術的事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、当業者が引用発明3に基いて容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 したがって、引用発明3が本件特許出願前に公然に実施されていたか否かを検討するまでもなく、本件訂正発明1〜5は、引用発明3ではなく、引用発明3に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。 (7)また、他に本件訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。 (8)よって、本件訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 日本工業規格T8131に準拠する転倒・転落時保護用ヘルメットの硬質の帽体内部に設けられて人頭に接するヘルメット用ハンモックであって、前記帽体内面に着脱自在に係止する係止部を有して放射状に配設された複数本の脚部と、各脚部を頭頂部で互いに連結する連結部とからなるハンモック本体を備えるものにおいて、 前記ハンモック本体は、前記脚部間に向かって延びる延出部と、人頭と帽体との間に位置して衝撃を吸収する衝撃吸収構造部とを備え、 前記延出部は、前記衝撃吸収構造部を吊り下げ状態で連結していることを特徴とするヘルメット用ハンモック。 【請求項2】 前記衝撃吸収構造部は、互いに隣り合う前記脚部間に位置することを特徴とする請求項1記載のヘルメット用ハンモック。 【請求項3】 前記衝撃吸収構造部は、複数の前記延出部に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載のヘルメット用ハンモック。 【請求項4】 前記ハンモック本体と前記衝撃吸収構造部とは、合成樹脂により一体成型されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のヘルメット用ハンモック。 【請求項5】 前記衝撃吸収構造部は、複数の筒状部と、各筒状部の一端を互いに連結する板状の基部とを備えて各筒状部の軸線方向に付与される衝撃力に対して所定の衝撃吸収能力を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のヘルメット用ハンモック。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2022-11-08 |
結審通知日 | 2022-11-10 |
審決日 | 2022-11-25 |
出願番号 | P2017-135010 |
審決分類 |
P
1
41・
855-
Y
(A42B)
P 1 41・ 854- Y (A42B) P 1 41・ 856- Y (A42B) P 1 41・ 851- Y (A42B) P 1 41・ 841- Y (A42B) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
石田 智樹 藤原 直欣 |
登録日 | 2017-11-02 |
登録番号 | 6236566 |
発明の名称 | ヘルメット用ハンモック |
代理人 | 横尾 太郎 |
代理人 | 横尾 太郎 |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 宮前 徹 |