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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  H01L
管理番号 1393967
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-11-24 
確定日 2022-11-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6698925号発明「窒化物半導体発光素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6698925号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕について訂正することを認める。 特許第6698925号の請求項1、2及び5に係る特許を維持する。 特許第6698925号の請求項3及び4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6698925号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜5に係る特許についての出願(以下「本件出願」という。)は、令和元年8月6日の出願であって、令和2年5月1日にその特許権の設定登録がされ、令和2年5月27日に特許掲載公報が発行された。
その後の本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和2年11月24日 :特許異議申立人小林喜一(以下「申立人」と
いう。)による特許異議の申立て
令和3年 3月 5日付け:取消理由通知書
令和3年 4月23日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 6月22日 :申立人による意見書(以下「第1回意見書」
という。)の提出
令和3年 9月30日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年12月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年 4月22日 :申立人による意見書(以下「第2回意見書」
という。)の提出
なお、令和3年4月23日付け訂正請求書による訂正の請求は、同年12月10日付け訂正請求書による訂正の請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年12月10日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、次のとおりである(下線は、訂正箇所として特許権者が付したものである。)。なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1〜5〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1〜5〕について請求されたものであると解される。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「AlGaN系の障壁層を含む活性層と、
前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、
前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、
を備え、
前記電子ブロック積層体は、
前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、
前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、
を備え、
前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有する、
窒化物半導体発光素子」とあるのを、「AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、
前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、
前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、
を備え、
前記電子ブロック積層体は、
前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、
前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、
を備え、
前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有し、
前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備え、
前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し、
前記p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、
窒化物半導体発光素子」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記活性層は、前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層をさらに備え、」とあるのを、削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。」とあるのを、「請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。」に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書(以下、特許請求の範囲及び図面と併せて「本件明細書等」という。)の【0007】に、「本発明は、上記課題を解決することを目的として、障壁層を含む活性層と、前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、を備え、前記電子ブロック積層体は、前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、を備え、前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有する窒化物半導体発光素子を提供する。」とあるのを、「本発明は、上記課題を解決することを目的として、AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、を備え、前記電子ブロック積層体は、前記活性層側に位置し、AlGaNからなり、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、を備え、前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有し、前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備え、前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し、前記p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、窒化物半導体発光素子を提供する。」に訂正する。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に対して、次の内容からなるものである。
(ア)「AlGaN系の障壁層を含む」「活性層」について、「障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層」を含むと更に限定すること。

(イ)(i)「第2の電子ブロック層」と「p型コンタクト層」との間に、「第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、」「井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層」を備えると限定すること。
(ii)「p型クラッド層」が、「膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有」すると限定すること。
(iii)「p型クラッド層」が、「p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、」「第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、」「井戸層のAl組成比よりも大きい」と限定すること。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
(ア)上記ア(ア)について
本件明細書等の【請求項2】には、「前記活性層は、前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層をさらに備え」と記載されている。
よって、上記ア(ア)の点は、新規事項を追加するものではない。

(イ)上記ア(イ)(i)〜(iii)について
a 上記ア(イ)(i)について、本件明細書等の【請求項3】には、「前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備える」と記載されている。
よって、上記ア(イ)(i)の点は、新規事項を追加するものではない。

b 上記ア(イ)(ii)について、本件明細書等の【請求項4】には、「前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有する」と記載されている。
よって、上記ア(イ)(ii)の点は、新規事項を追加するものではない。

c 上記ア(イ)(iii)について、本件明細書等の【0048】には、「また、Al組成比が傾斜している場合、上述したAl組成比に係る関係式(すなわち、a<z≦y<x<b)は、p型クラッド層70のAl組成比zの最大値に対して成立する」と記載されている。そして、【0021】及び【0025】に記載のとおり、「a」は「井戸層のAl組成比」であり、「y」は「第2の電子ブロック層のAl組成比」であるから、「前記p型クラッド層の膜厚方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい」ことは、本件明細書等に記載されているといえる。
よって、上記ア(イ)(iii)の点は、新規事項を追加するものではない。

(ウ)小括
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項1の小括
よって、訂正事項1は、訂正要件を満たす。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載されていた「前記活性層は、前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層をさらに備え」との事項が、訂正事項1により引用元の本件訂正後の請求項1に特定されたことに伴って、重複して特定されることになるところ、そのことによる不明瞭さを解消するために、当該事項に係る記載を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
訂正事項2は、上記アのとおりの訂正であるから、新たな技術的事項を追加するものではない。
よって、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項2の小括
よって、訂正事項2は、訂正要件を満たす。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものである。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記ア及びイに照らせば、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項3の小括
よって、訂正事項3は、訂正要件を満たす。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4を削除するものである。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4を削除するものであるから、新規事項を追加するものではない。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記ア及びイに照らせば、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項4の小括
よって、訂正事項4は、訂正要件を満たす。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5が引用していた請求項のうち、請求項3及び4を引用しないものとするものである。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5が引用していた請求項のうち、請求項3及び4を引用しないものとするものであるから、新規事項を追加するものではない。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項5の小括
よって、訂正事項5は、訂正要件を満たす。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、上記(1)に示した請求項1の訂正に伴う本件明細書等の【0007】の訂正である。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無
訂正事項6は、上記(1)に示した請求項1の訂正に伴う本件明細書等の【0007】の訂正であるから、新規事項を追加するものではない。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の実質拡張変更の有無
上記ア及びイにも照らせば、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項6の小括
よって、訂正事項6は、訂正要件を満たす。

3 訂正の適否の小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜5に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、2及び5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

[本件発明1]
「AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、
前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、
前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、
を備え、
前記電子ブロック積層体は、
前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、
前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、
を備え、
前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有し、
前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備え、
前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し、
前記p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、
窒化物半導体発光素子。」

[本件発明2]
「前記第2の電子ブロック層のAl組成比は、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、
請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。」

[本件発明3]
(削除)

[本件発明4]
(削除)

[本件発明5]
「前記第1の電子ブロック層のAl組成比は、80%以上であり、
前記第2の電子ブロック層のAl組成比は、40%以上90%以下である、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。」

第4 取消理由の概要
1 令和3年9月30日付け取消理由(決定の予告)で通知した取消理由の概要
当審が令和3年9月30日付け取消理由通知書(以下「取消理由通知書(決定の予告)」という。)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(拡大先願)令和3年4月23日付け訂正請求書による訂正後の請求項1〜5に係る発明は、本件出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許法第41条第3項の規定により出願公開がされたものとみなされた下記甲第1号証の2に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、当該各発明に係る特許は、同法第29条の2の規定に違反してされたものである。

甲第1号証の1:特開2020−77874号公報
甲第1号証の2:特願2018−208392号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面

2 令和3年3月5日付け取消理由の概要
当審が令和3年3月5日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、上記1に係るもののほか、次のとおりである。

明確性)本件特許の特許登録時の請求項4及び5の記載は、その「p型クラッド層」が、層全体にわたって「Al組成比は、井戸層のAl組成比より大きく第2の電子ブロック層のAl組成比より小さい」ものであるのか、それとも、前記特定を満たさない部分を有するものも含まれるのかが分からず不明であるから、当該請求項4及び5に係る特許は特許法第36条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由に対する当審の判断
1 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証の2(特願2018−208392号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)に記載された事項
甲第1号証の2に係る特許出願である特願2018−208392号は、本件出願前の平成30年11月5日の出願であるところ、その出願を優先権主張の基礎として特願2019−198185号が出願され、当該特願は、本件出願後の令和2年5月11日に出願公開(甲第1号証の1:特開2020−77874号公報)されている。
ここで、以下の摘記事項は、甲第1号証の2(特願2018−208392号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)に記載された事項であり、甲第1号証の1(特開2020−77874号公報)に記載された事項でもある。
ア 甲第1号証の2には、図面と共に、次の記載がなされている(下線は当審が付与した。以下同じ。)。

「【請求項1】
発光波長が200〜350nmのIII族窒化物半導体発光素子において、
n型III族窒化物半導体層と、障壁層および前記障壁層のバンドギャップの小さい井戸層をこの順に交互にN層ずつ(但し、Nは整数である)積層してなるIII族窒化物半導体発光層と、AlNガイド層と、電子ブロック層と、p型III族窒化物半導体層とをこの順に有し、
前記電子ブロック層がp型のAlzGa1−zN(0.50≦z≦0.80)であり、
前記障壁層がn型のAlbGa1−bN(z+0.01≦b≦0.95)であることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記障壁層のAl組成比(b)が、b≦z+0.20である、請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記AlNガイド層の厚さが0.5nm以上2.0nm以下である、請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体発光素子。」

「【0024】
<n型層>
n型層30は、少なくともAlを含むIII族窒化物半導体層であり、III族窒化物半導体発光素子100におけるn型の半導体層として機能すれば一般的なn型半導体層を用いることができる。n型層30は、例えばAlGaN材料からなり、また、III族元素としてのAlとGaに対して5%以内の量のInを含んでいてもよい。n型層30には、n型のドーパント(不純物)がドープされ、n型ドーパントとしては、Si,Ge,Sn,S,O,Ti,Zr等を例示することができる。ドーパント濃度は、n型として機能することのできるドーパント濃度であれば特に限定されず、例えば1.0×1018atoms/cm3〜1.0×1020atoms/cm3とすることができる。また、n型層30のAl含有率は、特に制限はなく、一般的な範囲とすることができる。n型層30を単層または複数層からなる構造とする他、III族元素の組成比を結晶成長方向に組成傾斜させた組成傾斜層や超格子構造を含む構成することもできる。n型層30は、n側電極とのコンタクト部を形成するだけでなく、基板から発光層に至るまでに結晶性を高める機能を兼ねることができる。」
「【0033】
<電子ブロック層>
続いて、電子ブロック層60がAlNガイド層50上に隣接して設けられる。電子ブロック層60は一般的に、発光層として機能する量子井戸構造(MQW)とp型層(p型クラッド層またはp型コンタクト層)との間に設けることにより、電子を堰止めして、電子を発光層(MQWの場合には井戸層)内に注入して、電子の注入効率を高めるための層として用いられる。これは、発光層のAl組成比が高い場合には、p型層70のホール濃度が低いため、ホールを発光層に注入しにくく、一部の電子がp型層70側に流れてしまうところ、電子ブロック層60を設けることにより、こうした電子の流れを防止することができるからである。本実施形態でも、AlNガイド層50に隣接して設けられた電子ブロック層60は、上記したのと同様にp型層70側への電子の流れを防止することができ、電子の注入効率を高めることができる。
【0034】
ところで前述のように、従来、このような電子ブロック層60は、障壁層40bのAl組成比(b)に対し、例えばAlzGa1−zN材料(b<z<1)のように、障壁層のAl組成比(b)よりも高いAl組成比(z)とすることが一般的であった。しかしながら、本発明では、こうした技術常識に反して、電子ブロック層のAl組成比(z)を障壁層のAl組成比(b)よりも低くするものである。そして、電子ブロック層60をAlzGa1−zN(0.5≦z≦0.8)としつつ、障壁層40bのAl組成比(b)よりも低いAl組成比(z)であって、z+0.01≦b(すなわち、z≦b−0.01)とすることにより、発光出力のさらなる向上が得られることを本発明者は見出した。電子ブロック層60全体の厚みは、例えば6nm〜60nmであることが好ましい。なお、電子ブロック層にドープするp型ドーパントについては、後述のp型層70におけるp型ドーパントと同様であるが、必要に応じてp型以外のドーパントをドープしてもよく、部分的にアンドープの領域を設けてもよい。
【0035】
<p型層>
電子ブロック層60に続き設けられるp型層70は、正孔を発光層40に注入できる限りは、特に限定されず、一般的な構成とすることができ、Al組成比の異なるAlGaN材料を用いて、p型コンタクト層のみ、または、p型クラッド層およびその上のp型コンタクト層を含む複数層構造としてもよい(詳細を後述する)。また、p型層70にドープするp型ドーパントとしては、Mg,Zn,Ca,Be,Mn等を例示することができる。また、p型層70全体の平均ドーパント濃度は、p型として機能することのできるドーパント濃度であれば特に限定されず、例えば1.0×1018atoms/cm3〜5.0×1021atoms/cm3とすることができる。
【0036】
p型の「クラッド層」のAl組成比は、電子ブロック層のAl組成比よりも0.1を超えて小さく、p型コンタクト層よりも0.1を超えて大きいものを指すものとする。p型クラッド層のAl組成比をyとし、電子ブロック層60のAl組成比をz、p型コンタクト層のAl組成比をxとすると、x+0.1<y<z−0.1である。
【0037】
なお、本実施形態に従うIII族窒化物半導体発光素子100において、p型クラッド層は任意であり、設けなくてもよく、p型層70を、p型コンタクト層のみから構成することが好ましい。なお、p型クラッド層を設けるのであれば、その厚みは、2nm〜300nmとすることができる。また、p型コンタクト層の厚みを5nm以上200nm以下とすることができる。なお、図示しないが、p型コンタクト層は、Al組成比、ドーパント種、ドーパント濃度、形成時のキャリアガス種などのいずれか1つまたは複数要素を変えた、複数層構造(超格子構造を含む)とすることも好ましい。」

「図2



「図3B



イ 甲第1号証の2に記載された発明
以上より、甲第1号証の2には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、甲1発明の認定に用いた甲第1号証の2の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<甲1発明>
「発光波長が200〜350nmのIII族窒化物半導体発光素子において、
n型III族窒化物半導体層と、障壁層および前記障壁層のバンドギャップの小さい井戸層をこの順に交互にN層ずつ(但し、Nは整数である)積層してなるIII族窒化物半導体発光層と、AlNガイド層と、電子ブロック層と、p型III族窒化物半導体層とをこの順に有し、
前記電子ブロック層がp型のAlzGa1−zN(0.50≦z≦0.80)であり、
前記障壁層がn型のAlbGa1−bN(z+0.01≦b≦0.95)であり、(請求項1)
前記障壁層のAl組成比(b)が、b≦z+0.20であり、(請求項2)
前記AlNガイド層の厚さが0.5nm以上2.0nm以下であり、(請求項3)
p型III族窒化物半導体層は、Al組成比の異なるAlGaN材料を用いて、p型クラッド層およびその上のp型コンタクト層を含む複数層構造であり、(【0035】)
p型クラッド層のAl組成比は、電子ブロック層のAl組成比よりも0.1を超えて小さく、p型コンタクト層よりも0.1を超えて大きいものを指すものとする、(【0036】)
III族窒化物半導体発光素子。」

2 甲第1号証の2に記載された発明に基づく拡大先願同一性について
(1)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1の「AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、を備え、」との特定事項について
甲1発明は、「発光波長が200〜350nmのIII族窒化物半導体発光素子」であるところ、その「発光層」は、「障壁層および前記障壁層のバンドギャップの小さい井戸層をこの順に交互にN層ずつ(但し、Nは整数である)積層してなる」ものであり、その「障壁層」は、「AlbGa1−bN(z+0.01≦b≦0.95)」である。そして、甲1発明は、当該「発光層」と、「AlNガイド層と、電子ブロック層と、p型III族窒化物半導体層とをこの順に有し」ている。そして、当該「p型III族窒化物半導体層」は、「p型クラッド層およびその上のp型コンタクト層を含む複数層構造」からなるものである。
そうすると、甲1発明の「障壁層」、「井戸層」、「発光層」、(「p型III族窒化物半導体層」に含まれる)「p型コンタクト層」及び「AlNガイド層及び電子ブロック層」は、それぞれ、本件発明1の「障壁層」、「井戸層」、「活性層」、「p型コンタクト層」及び「電子ブロック積層体」に相当するといえる。そして、甲1発明は、「III族窒化物半導体発光素子」であって、その発光波長を踏まえると、甲1発明の「井戸層」は、本件発明1の「AlGaN系」からなるといえるとともに「前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する」との特定を満たすといえる。さらに、甲1発明の「この順に有し」との特定を踏まえれば、甲1発明は、本件発明1の「前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体」を備えることを満たすといえる。
よって、甲1発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。

(イ)本件発明1の「前記電子ブロック積層体は、前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、を備え、」との特定事項について
a 上記(ア)のとおり、甲1発明の「AlNガイド層及び電子ブロック層」は、本件発明の「電子ブロック積層体」に相当するところ、当該「AlNガイド層」及び当該「電子ブロック層」は、それぞれ、本件発明1の「第1の電子ブロック層」及び「第2の電子ブロック層」に相当するといえる。

b 甲1発明の「AlNガイド層」のAl組成比は「1」であるところ、甲1発明の「障壁層」は、「AlbGa1−bN(z+0.01≦b≦0.95)」であるから、甲1発明の「AlNガイド層」のAl組成比(=1)は、「障壁層」のAl組成比より大きいといえる。そして、「AlNガイド層」のAl組成比が一定であることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「AlNガイド層」は、本件発明1の「前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する」との特定を満たすものといえる。

c 甲1発明の「電子ブロック層」について、甲1発明の「電子ブロック層」は、「AlzGa1−zN(0.50≦z≦0.80)」であるところ、「障壁層」は、「AlbGa1−bN(z+0.01≦b≦0.95)」であるから、甲1発明の「電子ブロック層」のAl組成比(z)は、「障壁層」のAl組成比(b)より小さいといえる、そして、当該「電子ブロック層」は、Al組成比の変化が特定されていないことに鑑みれば、そのAl組成比は一定であると解することが自然といえる。
そうすると、甲1発明の「電子ブロック層」は、本件発明1の「前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する」との特定を満たすものといえる。

d よって、甲1発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。

(ウ)本件発明1の「前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有し、」との特定事項について
甲1発明の「AlNガイド層」(本件発明1の「第1の電子ブロック層」に相当。)の厚さは、「0.5nm以上2.0nm以下」であり、「電子ブロック層」(本件発明1の「第2の電子ブロック層」に相当。)の厚さは、特定されていない。
よって、甲1発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしているか不明である。

(エ)本件発明1の「前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備え、」との特定事項について
甲1発明は、「電子ブロック層と、p型III族窒化物半導体層とをこの順に有し」、当該「p型III族窒化物半導体層」を「Al組成比の異なるAlGaN材料を用いて、p型クラッド層およびその上のp型コンタクト層を含む複数層構造」とするものであるから、甲1発明では、「電子ブロック層」(本件発明1の「第2の電子ブロック層」に相当。)及び「p型コンタクト層」(本件発明の「p型コンタクト層」に相当。)の間には、「AlGaN材料を用い」た「p型クラッド層」が存在している。
そのため、甲1発明の「p型クラッド層」が本件発明1の「p型クラッド層」に相当するとみる余地があるものの、甲1発明では、当該「p型クラッド層」の「Al組成比」が、「電子ブロック層のAl組成比よりも0.1を超えて小さく、p型コンタクト層よりも0.1を超えて大きいものを指すもの」と特定されているにとどまることから、当該「p型クラッド層」は、そのAl組成比が「井戸層」のそれよりも小さくなる可能性があり、よって、通常の意味の「クラッド層」(そのAl組成比が、キャリア閉じ込めの観点から、井戸層のAl組成比よりも大きいものであり、以下「通常意味クラッド層」という。)といえるのかが不明である。したがって、本件発明1の「p型クラッド層」と甲1発明の「p型クラッド層」とは、p型半導体層という点で一致するにとどまる。
そして、甲1発明の「p型クラッド層」は、本件発明1の「p型クラッド層」とは、「前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さ」「いAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成された」p型半導体層である点で一致するが、本件発明1の「前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有する」との特定を満たしているかどうかは不明である。

(オ)本件発明1の「前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し、前記p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、」との特定事項について
甲1発明の「p型クラッド層」は、傾斜するAl組成比を有していると特定されてはいない。

(カ)以上より、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、
前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、
前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、
を備え、
前記電子ブロック積層体は、
前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、
前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、
を備え、
前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型半導体層をさらに備える、
窒化物半導体発光素子。」

<相違点>
・相違点1
本件発明1は、「前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有」するものであるのに対し、甲1発明は、「AlNガイド層」の厚さが0.5nm以上2.0nm以下であり、「電子ブロック層」の厚さが不明である点。

・相違点2
「前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型半導体層」が、本件発明1は、「p型クラッド層」であって、さらに、「前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有する」ものであり、「膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し」ており、そ「の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい」ものであるのに対し、甲1発明は、「p型クラッド層」と特定されてはいるものの、p型クラッド層のAl組成比は、電子ブロック層のAl組成比よりも0.1を超えて小さく、p型コンタクト層よりも0.1を超えて大きいものを指すものとされているため、井戸層のAl組成比との関係が「p型クラッド層」の定義に含まれているとはいえない点。

イ 判断
(ア)事案に鑑みて、相違点2について検討する。
本件発明1と甲1発明とが特許法第29条の2所定の「同一」であるといえるためには、まず、(i)甲1発明における「p型クラッド層」が、「前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有する」ものであること、つまり、通常意味クラッド層であること、次に、(ii)当該「p型クラッド層」が、「膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有」するもの、つまり「組成傾斜層」であって、そ「の膜厚の方向における最大のAl組成比は、第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、井戸層のAl組成比よりも大きい」ものであるともいえること(以下、上記(i)及び(ii)の事項を合わせて「p型クラッド層事項」という。)が、甲第1号証の2に記載されているに等しいといえるか、又は、記載されているに等しいとはいえないとしても課題解決のための具体的手段における微差にとどまるといえることを少なくとも要するので、以下これについて検討する。

(イ)p型クラッド層事項が甲第1号証の2に記載されているに等しいといえるかについて
a 上記(i)について、本件発明1の「p型クラッド層」は、「p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比」が「井戸層のAl組成比よりも大きい」から、通常意味クラッド層であると理解できる。
他方、甲1発明では、「p型クラッド層」の「Al組成比」が、「電子ブロック層のAl組成比よりも0.1を超えて小さく、p型コンタクト層よりも0.1を超えて大きいものを指すもの」とされることから、井戸層のAl組成比との関係が「p型クラッド層」の定義に含まれているとはいえず、よって、「p型クラッド層」の「Al組成比」が、井戸層のAl組成比よりも小さくなっても差し支えないとされていることになる。そうすると、当該「p型クラッド層」は、甲1号証の2の記載を参酌しても、通常意味クラッド層ではないと解される。
そのため、甲1発明の「p型クラッド層」は、本件発明1の「p型クラッド層」に相当するとはいえないのであり、そうである以上、上記(i)の事項は、甲第1号証の2に記載されているに等しいともいえない。

b 上記(ii)について、甲第1号証の2では、甲1発明の「p型クラッド層およびその上にp型コンタクト層を含む複数層構造」の上位概念である「p型層70」について、「正孔を発光層40に注入できる限りは、特に限定され」ない「一般的な構成」(【0035】)にできると記載されるとともに、その例示として、「Al組成比の異なるAlGaN材料を用いて、p型コンタクト層のみ、または、p型クラッド層およびその上のp型コンタクト層を含む複数層構造としてもよい」ことが記載されていると解される。
そして、半導体発光素子の技術分野においては、半導体層として組成傾斜層を用いるという技術が広く知られていることから、上記の「一般的な構成」として当業者が「p型クラッド層」が「組成傾斜層」であることを読み込めるのかが問題となり得る。しかしながら、上記の「一般的な構成」についての例示の内容に照らすと、同証拠における「p型層70」の「一般的な構成」は、せいぜい、機能層としてどのような層を設けるのかというレベルの内容にとどまっているのであり、それよりも進んで「p型クラッド層」の具体的構造についてまで含意するものとは言い難い。
加えて、同証拠では、甲1発明の「n型III族窒化物半導体層」に関連する「n型層30」については「組成傾斜層」が例示されている(【0024】)一方で、「p型層70」については同様の例示がない。この点は、n型層30については、「基板から発光層に至るまでに結晶性を高める機能を兼ねることができる」(【0024】)と記載されている一方で、p型層は活性層を形成した後に形成されるので、上記の結晶性を高める機能を奏し得ないことからも、技術的に理解できる。そして、その他に、n型層に「組成傾斜層」が採用されていることをもって、p型層に同様の層を設けることを適切に導くことができる技術常識の存在も認められない。
このように、甲第1号証の2においては、甲1発明の「p型クラッド層およびその上にp型コンタクト層を含む複数層構造」の上位概念である「p型層70」を「一般的な構成」にできる旨記載されているとしても、その意味する内容が「p型クラッド層」の具体的構造についてまで及んでいるとはいえない上、「n型層30」に対しては記載されている「組成傾斜層」の文言が「p型層70」に対しては記載されておらず、さらに、「n型層30」が「組成傾斜層」であるとしても、そのことをもって、「p型層70」のうちの「p型クラッド層」も「組成傾斜層」であるのが通常であるとする技術常識の存在も認められないことから、甲1発明の「p型クラッド層」が、同証拠の記載及び技術常識に基づいて、「組成傾斜層」であることが記載されているに等しいとはいえない。

(ウ)p型クラッド層事項が、課題解決のための具体化手段における微差といえるかについて
a p型クラッド層事項が上記の微差といえるためには、(iii)上記(イ)aのとおり、甲1発明の「p型クラッド層」が、通常意味クラッド層といえないとしても、甲1発明の「p型クラッド層」を、通常意味クラッド層とすることが、課題解決のための具体化手段における微差であって、新たな効果を奏するものではないといえるとともに、(iv)上記(イ)bのとおり、甲1発明の「p型クラッド層」が「組成傾斜層」であることが、甲第1号証の2に記載されているに等しいとまではいえないとしても、当該「p型クラッド層」を、「膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し」、「膜厚の方向における最大のAl組成比」は、「前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大き」くすることが、課題解決のための具体化手段における微差であって、新たな効果を奏するものではないといえる必要があるものと解される。

b しかしながら、以下のとおり、上記(iii)及び(iv)の事項を同時になすこと、すなわち、甲1発明において、「p型クラッド層」を通常意味クラッド層に変えた上で、さらに「組成傾斜層」とすることまでも、課題解決のための具体化手段における微差であって、新たな効果を奏するものではないということはできない。
すなわち、上記(iii)の事項については、上記(イ)aで説示したとおり、甲1発明の「p型クラッド層」は、そのAl組成比の定義から、通常意味クラッド層が備える機能を意識しているとはいえない。また、上記(iv)の事項については、p型の組成傾斜層が知られているとしても、そこまで一般的ともいえないことは、甲第1号証の2において、n型の組成傾斜層は記載されているにも関わらずp型の組成傾斜層の記載がないことからも理解できる。このような甲第1号証の2の記載を総合的にみれば、甲1発明において、上記(iii)及び(iv)の事項を同時になすことまでを、課題解決のための具体化手段における微差であって、新たな効果を奏するものではないということはできない。

(エ)以上より、本件発明1は甲1発明とは同一ではなく、甲第1号証の2の他の記載をみても、この判断を左右するものはない。

ウ これに対し、申立人は、次のことを主張するが、以下のとおりであるから、申立人の主張は、上記判断を左右するものではない。
(ア)甲1発明の「p型クラッド層」は、本件発明1の「p型クラッド層」に相当すること。(第2回意見書)
(イ)甲第1号証の2には、n型層について「組成傾斜層」が記載されており、この記載から、p型層に「組成傾斜層」を適用することは技術常識であるといえること。(第2回意見書)
(ウ)甲1発明の「p型クラッド層」を、「膜厚の方向において傾斜するAl組成比」とすることは、周知技術・慣用技術の付加・転換にととどまるものであり、新たな効果を奏するものではないこと。(第2回意見書)
(エ)刊行物1(特開2018−049949号公報)を提示し、本件発明1は、刊行物1に記載された発明によっても特許性を否定されるべきものであること。(第1回意見書)
上記(ア)について、上記イ(イ)aの説示のとおり、甲1発明の「p型クラッド層」は、本件発明1の「p型クラッド層」に相当するとはいえないものである。
上記(イ)について、上記イ(イ)bの説示のとおり、甲第1号証の2に、n型層について記載されている「組成傾斜層」の記載をもって、甲1発明の「p型クラッド層」に適用し得るとはいえないものである。
上記(ウ)について、上記イ(ウ)bに説示のとおりである。
上記(エ)について、刊行物1は、特許異議申立期間経過後に提出されたものであり、適切な取消理由を構成することが一見して明らかなものでもない。

エ 本件発明1についての小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証の2に記載された発明とは同一ではない。

(2)本件発明2及び5について
これらの各発明は、いずれも、甲1発明との間に相違点2を含むものであるから、上記(1)と同様の理由により、甲第1号証の2に記載された発明とは同一ではない。

(3)甲第1号証に記載された発明に基づく拡大先願同一性についての小括
以上のとおり、本件発明1、2及び5は、甲第1号証の2に記載された発明とは同一ではない。

3 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由に対する当審の判断の小括
以上のとおり、上記取消理由は、成り立たない。

第6 令和3年3月5日付け取消理由通知書に記載した取消理由に対する当審の判断
上記取消理由は、本件特許登録時の請求項4(及びこれを含む請求項を引用する請求項5)が請求項3を引用していることに伴い、当該請求項4の記載内容に曖昧な点が生じることを説示したものであるが、本件訂正により、請求項4が削除され、請求項5における請求項4に係る引用部分も削除されたことから、当該理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)及び令和3年3月5日付け取消理由通知書に記載された取消理由(特許異議申立書に記載された特許異議申立理由)によっては、本件発明1、2及び5に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に、本件発明1、2及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件発明3及び4に係る特許は、本件訂正により削除され、特許異議の申立てについて、当該各発明に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外光を出力する発光ダイオードやレーザダイオード等の窒化物半導体発光素子が実用化されており、発光出力の向上を可能とする窒化物半導体発光素子の開発が進められている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の発光素子は、III族窒化物単結晶上に形成され、障壁層と井戸層とからなる多重量子井戸層を備え、当該障壁層のうちp型のIII族窒化物層側に位置するファイナルバリア層の厚さを2nmから10nmとし、当該井戸層の厚さをそれぞれ2nm以下とするように調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5641173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発光素子のように、ファイナルバリア層及び井戸層の膜厚を最適化するような施策を施してもなお、十分な発光強度を得られない場合があり、発光強度の向上について更なる改良の余地が残されている。
【0006】
そこで、本発明は、発光出力を向上させることができる窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、を備え、前記電子ブロック積層体は、前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、を備え、前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有し、前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備え、前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し、前記p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、窒化物半導体発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光出力を向上させることができる窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子を構成する半導体層のAl組成比の一例を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子を構成する半導体層のAl組成比の一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子を構成する半導体層のAl組成比の一例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る発光素子の発光出力の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。また、図1及び図3に示す各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の窒化物半導体発光素子の寸法比と一致するものではない。
【0011】
[第1の実施の形態]
(窒化物半導体発光素子の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る窒化物半導体発光素子の構成の一例を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す窒化物半導体発光素子を構成する半導体層のAl組成比(「AlNモル分率」ともいう)の一例を模式的に示す図である。この窒化物半導体発光素子1(以下、単に「発光素子1」ともいう)には、例えば、レーザダイオードや発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)が含まれる。本実施の形態では、発光素子1として、中心波長が250nm〜360nmの紫外光を発する発光ダイオード(LED)を例に挙げて説明する。
【0012】
図1に示すように、発光素子1は、基板11と、バッファ層12と、n型クラッド層30と、活性層50と、複数の電子ブロック層が積層された電子ブロック積層体60と、p型コンタクト層80と、n側電極90と、p側電極92と、を含んで構成されている。
【0013】
活性層50は、n型クラッド層30側に位置する障壁層52aを含む3つの障壁層52a,52b,52cと、電子ブロック積層体60に位置する井戸層54cを含む3つの井戸層54a,54b,54cと、を備えている。電子ブロック積層体60は、第1の電子ブロック層61と、第2の電子ブロック層62と、順に積層した構造を含んでいる。なお、以下の説明において、3つの障壁層52a,52b,52cを総称する場合は、「障壁層52」ともいい、3つの井戸層54a,54b,54cを総称する場合は、「井戸層54」ともいう。
【0014】
発光素子1を構成する半導体には、例えば、AlrGasIn1−r−sN(0≦r≦1、0≦s≦1、0≦r+s≦1)にて表される2元系、3元系若しくは4元系のIII族窒化物半導体を用いることができる。また、これらのIII族元素の一部は、ホウ素(B)、タリウム(Tl)等で置き換えても良く、また、Nの一部をリン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、又はビスマス(Bi)等で置き換えても良い。以下、各構成要素について説明する。
【0015】
(1)基板11
基板11は、発光素子1が発する紫外光に対して透光性を有する基板である。基板11には、例えば、サファイア(Al2O3)により形成されたサファイア基板が用いられる。なお、基板11は、窒化アルミニウム(AlN)により形成されたAlN単結晶基板でもよい。
【0016】
(2)バッファ層12
バッファ層12は、基板11上に形成されている。バッファ層12は、AlNにより形成されたAlN層である。バッファ層12は、1.0μmから4.5μm程度の膜厚を有する。バッファ層12の構造は、単層でも多層構造でもよい。なお、基板11がAlN単結晶基板の場合、バッファ層12は、必ずしも設けなくてもよい。バッファ層12上にAlGaNにより形成されたアンドープのAlGaN層を設けてもよい。
【0017】
(3)n型クラッド層30
n型クラッド層30は、バッファ層12上に形成されている。n型クラッド層30は、n型AlGaNにより形成された層であり、例えば、n型の不純物としてシリコン(Si)がドープされたAlGaN層である。なお、n型の不純物としては、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、又はテルル(Te)等を用いてよい。n型クラッド層30は、1μmから4μm程度の膜厚を有し、例えば、2μmから3μm程度の膜厚を有している。
【0018】
また、n型クラッド層30を形成するn型AlGaNのAl組成比は、井戸層を形成するAlGaNのAl組成比よりも大きい。発光素子がフリップチップタイプで実装された構成、つまり活性層50から出射された光をn型クラッド層30側から取り出す構成の場合に、該出射された光がn型クラッド層30で吸収されて光の取り出し効率が低下してしまうことを抑制するためである。なお、n型クラッド層30の構造は、単層でもよく、多層構造でもよい。
【0019】
(4)活性層50
活性層50は、n型クラッド層30上に形成されている。本実施の形態では、活性層50は、3層の障壁層52a,52b,52c、及び3層の井戸層54a,54b,54cを交互に積層した量子井戸構造を有している。
【0020】
障壁層52は、例えば、3nmから50nm程度の範囲の膜厚を有する。また、井戸層54は、例えば、1nmから5nm程度の範囲の膜厚を有する。障壁層52及び井戸層54の数は3つに限定されるものではなく、障壁層52及び井戸層54はそれぞれ1つずつ設けてもよく、2ずつ設けてもよく、4つ以上設けてもよい。ここで、障壁層52及び井戸層54がそれぞれ1つずつ設けられた構成を、単一量子井戸構造(SQW:Single Quantum Well)ともいい、複数設けられた構成を、多重量子井戸構造(MQW:Multi Quantum Well)ともいう。
【0021】
図2に示すように、障壁層52aは、AlxGa1−xNを含んで形成され、井戸層54は、AlaGa1−aNを含んで形成されている(0≦x≦1、0≦a≦1、a<x)。ここで、xは、障壁層52を形成するAlGaNのAl組成比(以下、「障壁層52のAl組成比」ともいう)であり、aは、井戸層54を形成するAlGaNのAl組成比(以下、「井戸層54のAl組成比」ともいう)である。
【0022】
また、障壁層52のAl組成比x及び井戸層54のAl組成比aはそれぞれ、活性層50が波長360nm以下の紫外光を出力できるようにするために活性層50内のバンドギャップが3.4eV以上となるように適宜調整される。
【0023】
(5)電子ブロック積層体60
電子ブロック積層体60は、活性層50上に形成されている。電子ブロック積層体60は、p型コンタクト層80側への電子の流出を抑制する役割を担う層である。電子ブロック積層体60は、活性層50側に位置する第1の電子ブロック層61と、この第1の電子ブロック層61上に位置する第2の電子ブロック層62と、を積層した構造を含んでいる。
【0024】
第1の電子ブロック層61及び第2の電子ブロック層62はともに、p型AlGaNにより形成された層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされたAlGaN層である。なお、p型の不純物としては、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、又は炭素(C)等を用いてもよい。なお、電子ブロック層61は、アンドープでもよい。
【0025】
具体的には、第1の電子ブロック層61は、AlbGa1−bNを含んで構成され、第2の電子ブロック層62は、AlyGa1−yNを含んで構成されている(0≦b≦1、0≦y≦1)。ここで、bは、第1の電子ブロック層61を形成するp型AlGaNのAl組成比(以下、「第1の電子ブロック層61のAl組成比」ともいう)であり、yは、第2の電子ブロック層62を形成するp型AlGaNのAl組成比(以下、「第2の電子ブロック層62のAl組成比」ともいう)である。Al組成比が低い第2の電子ブロック層62を第1の電子ブロック層61よりも活性層50側に配置にした場合、Al組成比が高い第1の電子ブロック層61の位置までオーバーフローする電子の存在確率が向上することになる。そのため、井戸層54中の電子の存在確率が減ることとなり、その分発光効率が低下する。よって、井戸層54での電子の存在確率を向上させ発光効率を高めるために、Al組成比が高い第1の電子ブロック層61が活性層50側に設けられる。
【0026】
図2に示すように、第2の電子ブロック層62のAl組成比yは、第1の電子ブロック層61のAl組成比bよりも小さい(y<b)。電子ブロック積層体60を第1の電子ブロック層61と第2の電子ブロック層62とを含む複数の層で構成し、第1の電子ブロック層61のAl組成比bを第2の電子ブロック層62よりも高くすることにより上述した電子ブロック積層体60の機能、すなわちp型コンタクト層80側への電子の流出を抑制する機能を向上させることができる。
【0027】
また、第2の電子ブロック層62のAl組成比yを第1の電子ブロック層61よりも低くすることにより、電子ブロック積層体60全体としてAl組成比を高くすることによって生じ得る抵抗の増加を抑制することができる。すなわち、電子ブロック積層体60をAl組成比の異なる2層で構成し、その組成比及び層厚を調整することにより、電子の流出を抑制することと抵抗の増加を抑制することとを両立させることができる。
【0028】
また、上述のように第2の電子ブロック層62のAl組成比yを一定の値(一例として、第1の電子ブロック層61のAl組成比b)よりも小さくすることによって、Al組成比が高い場合にMg等の不純物がドープされにくくなることによって生じ得る発光効率の低下を抑制することができる。
【0029】
また、図2に示すように、第1の電子ブロック層61のAl組成比bは、障壁層52のAl組成比xよりも大きい(すなわち、x<b)。第2の電子ブロック層62のAl組成比yは、障壁層52のAl組成比xよりも小さく(すなわち、y<x)、井戸層54のAl組成比aよりも大きい(すなわち、a<y)。以上をまとめると、各Al組成比a,b,x,yは、a<y<x<bの関係を満たしている。以下の表1に各Al組成比a,b,x,yの具体例をまとめる。
【0030】
【表1】

【0031】
第2の電子ブロック層62の膜厚は、第1の電子ブロック層61の膜厚よりも厚い。第2の電子ブロック層62は、例えば、第1の電子ブロック層61の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有している。一例として、第1の電子ブロック層61は、1nm以上10nm以下の膜厚を有し、第2の電子ブロック層62は、5nm以上100nm以下の膜厚を有する。
【0032】
電子ブロック層は、Al組成比が高ければ高いほど、あるいは、膜厚が厚いほど電子の流出する機能を向上させることができるが、Al組成比が高い層の膜厚を厚くすると、発光素子1の電気抵抗が大きくなる虞がある。しかしながら、上述のように、Al組成比が低い第2の電子ブロック層62の膜厚を、Al組成比が高い第1の電子ブロック層61の膜厚よりも厚くすれば、Al組成比が高い第1の電子ブロック層61を薄く積層させつつ、電子ブロック積層体60全体の膜厚を一定以上に保つことができる。したがって、第2の電子ブロック層62の膜厚を第1の電子ブロック層61の膜厚よりも厚くすれば、電子ブロック積層体60の電気抵抗の上昇を抑えつつ、電子の流出を抑制する機能を向上させることができる。
【0033】
(6)p型コンタクト層80
p型コンタクト層80は、電子ブロック積層体60上、具体的には第2の電子ブロック層62上に形成されている。p型コンタクト層80は、例えば、Mg等の不純物が高濃度にドープされた、例えば、10%以下のAl組成比を有するp型AlGaNにより形成された層である。好ましくは、p型コンタクト層80は、p型のGaNにより形成されたp型GaN層である。
【0034】
(7)n側電極90
n側電極90は、n型クラッド層30の一部の領域上に形成されている。n側電極90は、例えば、n型クラッド層30上に順にチタン(Ti)/アルミニウム(Al)/Ti/金(Au)が順に積層された多層膜で形成される。
【0035】
(8)p側電極92
p側電極92は、p型コンタクト層80上に形成されている。p側電極92は、例えば、p型コンタクト層80上に順に積層されるニッケル(Ni)/金(Au)の多層膜で形成される。
【0036】
(発光素子1の製造方法)
次に、発光素子1の製造方法について説明する。まず、基板11上にバッファ層12を高温成長させる。次に、このバッファ層12上にn型クラッド層30、活性層50、電子ブロック積層体60及びp型コンタクト層80を順に積層して、所定の直径(例えば、50mm程度)を有する円板状の窒化物半導体積層体(「ウエハ」又は「ウェハ」ともいう)を形成する。
【0037】
これらn型クラッド層30、活性層50、電子ブロック積層体60及びp型コンタクト層80は、有機金属化学気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)、分子線エピタキシ法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)、ハライド気相エピタキシ法(Hydride Vapor Phase Epitaxy:HVPE)等の周知のエピタキシャル成長法を用いて形成してよい。
【0038】
次に、p型コンタクト層80上にマスクを形成し、活性層50、電子ブロック積層体60及びp型コンタクト層80においてマスクが形成されていないぞれぞれの露出領域を除去する。活性層50、電子ブロック積層体60及びp型コンタクト層80の除去は、例えば、プラズマエッチングにより行ってよい。
【0039】
n型クラッド層30の露出面30a(図1参照)上にn側電極90を形成し、マスクを除去したp型コンタクト層80上にp側電極92を形成する。n側電極90及びp側電極92は、例えば、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法などの周知の方法により形成してよい。このウエハを所定の寸法に切り分けることにより、図1に示す発光素子1が形成される。
【0040】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子1の構成の一例を概略的に示す断面図である。図4は、図3に示す発光素子1を構成する半導体層のAl組成比の一例を模式的に示す図である。第2の実施の形態に係る発光素子1は、p型クラッド層70を有する点で第1の実施の形態の発光素子1と相違する。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0041】
本実施の形態に係る発光素子1は、上述した第1の実施の形態に係る発光素子1の構成に加えて、電子ブロック積層体60とp型コンタクト層80との間に位置するp型クラッド層70をさらに備えている。p型クラッド層70は、10nm〜1000nm程度の膜厚を有し、例えば、20nm〜800nm程度の膜厚を有する。p型クラッド層70は、p型AlGaNにより形成された層である。
【0042】
具体的には、p型クラッド層70は、AlzGa1−zNを含んで構成されている(0≦z≦1)。ここで、zは、p型クラッド層70を形成するp型AlGaNのAl組成比(以下、「p型クラッド層70のAl組成比」ともいう)である。
【0043】
図4に示すように、p型クラッド層70のAl組成比zは、第2の電子ブロック層62のAl組成比y以下であり(すなわち、z≦y)、かつ、井戸層54のAl組成比aよりも大きい(すなわち、a<z)。以上をまとめると、各Al組成比a,b,x,y,zは、a<z≦y<x<bの関係を満たしている。なお、一例として、p型クラッド層70のAl組成比zは、0%以上70%以下である。
【0044】
第2の電子ブロック層62のAl組成比yよりも小さいAl組成比zを有するp型クラッド層70をさらに設けることにより、Al組成比を高くすることによって生じ得る抵抗の増加を抑制する機能をさらに高めることができる。
【0045】
[第3の実施の形態]
図5は、第3の実施の形態に係る発光素子1を構成する半導体層のAl組成比の一例を模式的に示す図である。第3の実施の形態に係る発光素子1は、Al組成比が膜厚の方向において傾斜するp型クラッド層70を有する点で第1の実施の形態の発光素子1と相違する。以下、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。なお、第3の実施の形態に係る発光素子1の構成は、図3に示した第2の実施の形態に係る発光素子1と実質的に同一であるため、その詳細な説明は省略する。
【0046】
本実施の形態に係る発光素子1は、上述した第1の実施の形態に係る発光素子1の構成に加えて、電子ブロック積層体60とp型コンタクト層80との間に位置するp型クラッド層70をさらに備えている。p型クラッド層70のAl組成比zは、p型コンタクト層80に向かうに連れて減少する。Al組成比zの傾斜率(p型コンタクト層80側に向かう方向における減少率)は、0.025/nm以上0.20/nm以下(すなわち、2.5%/nm以上20%/nm以下)である。
【0047】
なお、p型クラッド層70のAl組成比zは、必ずしも図5に示すように、直線的に減少しなくてもよく、例えば、階段状に段階的に減少してもよく、あるいは、曲線(例えば、二次関数的な曲線や指数関数的な曲線等)状に減少してもよい。p型クラッド層70のAl組成比zが曲線状に減少する場合、p型コンタクト層80のAl組成比と滑らかに接続するように、p型コンタクト層80に向かうに連れてAl組成比の減少率が小さくなるようにすることが好ましい。
【0048】
また、Al組成比が傾斜している場合、上述したAl組成比に係る関係式(すなわち、a<z≦y<x<b)は、p型クラッド層70のAl組成比zの最大値に対して成立する。ここで、p型クラッド層70のAl組成比zの最大値とは、p型クラッド層70の第2の電子ブロック層62側のAl組成比をいう。換言すれば、p型クラッド層70のAl組成比の最小値(つまり、p型クラッド層70のお型コンタクト層80側のAl組成比)は、井戸層のAl組成比aよりも小さくてもよい。なお、pクラッド層70と第2の電子ブロック層62との間でAl組成比zが不連続であってもよい(z<y)。
【0049】
以上のようにp型クラッド層70のAl組成比zを厚さ方向において傾斜させることにより、p型コンタクト層80のAl組成比とp型クラッド層70のAl組成比との間の段差が低減されるため、Al組成比が不連続となる箇所で格子不整合により生じる転位の発生を抑制することがさらにできると考えられる。
【0050】
(発光出力)
図6は、上述した実施の形態に係る発光素子1の発光出力の測定結果の一例を示す図である。横軸の「実施例1」は、第1の実施の形態に係る発光素子1の測定結果を示し、「実施例2」は、第2の実施の形態に係る発光素子1の測定結果を示し、「実施例3」は、第3の実施の形態に係る発光素子1の測定結果を示している。発光出力は、種々の公知の方法で測定することが可能であるが、本実施例では、一例として、上述したn側電極90及びp側電極92の間に一定の電流(例えば、100mA)を流し、発光素子1の下側に設置した光検出器により測定した。
【0051】
図6に示すように、実施例1では、中心波長279nmでの光出力が7.2×103μWであった。また、実施例2では、中心波長275nmでの光出力が7.6×103μWであった。さらに、実施例3では、中心波長282nmでの光出力が8.6×103μWであった。この測定結果により、第2の電子ブロック層62のAl組成比yよりも小さいAl組成比zを有するp型クラッド層70や、傾斜するAl組成比zを有するp型クラッド層70を設けることにより、発光出力がさらに向上することが確認された。
【0052】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0053】
[1]AlGaN系の障壁層(52)を含む活性層(50)と、前記活性層(50)の上側に位置するp型コンタクト層(80)と、前記活性層(50)及び前記p型コンタクト層(80)の間に位置する電子ブロック積層体(60)と、を備え、前記電子ブロック積層体(60)は、前記活性層(50)側に位置し、前記障壁層(52)のAl組成比よりも大きいAl組成比を有する第1の電子ブロック層(61)と、前記p型コンタクト層(80)側に位置し、前記障壁層(52)のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する第2の電子ブロック層(62)と、を備える、窒化物半導体発光素子(1)。
[2]前記活性層(50)は、前記障壁層(52)のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層(54)をさらに備え、前記第2の電子ブロック層(62)のAl組成比は、前記井戸層(54)のAl組成比よりも大きい、前記[1]に記載の窒化物半導体発光素子(1)。
[3]前記第2の電子ブロック層(62)は、前記第1の電子ブロック層(61)の膜厚よりも大きい膜厚を有する、前記[1]又は[2]に記載の窒化物半導体発光素子(1)。
[4]前記第2の電子ブロック層(62)は、前記第1の電子ブロック層(61)の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有する、前記[3]に記載の窒化物半導体発光素子(1)。
[5]
前記第2の電子ブロック層(62)及び前記p型コンタクト層(80)の間に、前記第2の電子ブロック層(62)のAl組成比よりも小さく、前記井戸層(54)のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層(70)をさらに備える、前記[1]から[4]のいずれか1つに記載の窒化物半導体発光素子(1)。
[6]前記p型クラッド層(70)は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有する、前記[5]に記載の窒化物半導体発光素子(1)。
[7]前記第1の電子ブロック層(61)のAl組成比は、80%以上であり、前記第2の電子ブロック層(62)のAl組成比は、40%以上90%以下である、前記[1]から[6]のいずれか1つに記載の窒化物半導体発光素子(1)。
【符号の説明】
【0054】
1…窒化物半導体発光素子(発光素子)
11…基板
12…バッファ層
30…n型クラッド層
30a…露出面
50…活性層
52,52a,52b,52c…障壁層
54,54a,54b,54c…井戸層
60…電子ブロック積層体
61…第1の電子ブロック層
62…第2の電子ブロック層
70…p型クラッド層
80…p型コンタクト層
90…n側電極
92…p側電極
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlGaN系の障壁層及び前記障壁層のAl組成比よりも小さいAl組成比を有する井戸層を含む活性層と、
前記活性層の上側に位置するp型コンタクト層と、
前記活性層及び前記p型コンタクト層の間に位置する電子ブロック積層体と、
を備え、
前記電子ブロック積層体は、
前記活性層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも大きく、前記活性層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第1の電子ブロック層と、
前記p型コンタクト層側に位置し、前記障壁層のAl組成比よりも小さく、前記第1の電子ブロック層側の一端から前記p型コンタクト層側の他端に亘って一定値であるAl組成比を有する第2の電子ブロック層と、
を備え、
前記第2の電子ブロック層は、前記第1の電子ブロック層の膜厚の5倍以上20倍以下の膜厚を有し、
前記第2の電子ブロック層及び前記p型コンタクト層の間に、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きいAl組成比を有するp型のAlGaNにより形成されたp型クラッド層をさらに備え、
前記p型クラッド層は、膜厚の方向において傾斜するAl組成比を有し、
前記p型クラッド層の膜厚の方向における最大のAl組成比は、前記第2の電子ブロック層のAl組成比よりも小さく、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、
窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2の電子ブロック層のAl組成比は、前記井戸層のAl組成比よりも大きい、
請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記第1の電子ブロック層のAl組成比は、80%以上であり、
前記第2の電子ブロック層のAl組成比は、40%以上90%以下である、
請求項1又は2に記載の窒化物半導体発光素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-11-10 
出願番号 P2019-144676
審決分類 P 1 651・ 16- YAA (H01L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 瀬川 勝久
吉野 三寛
登録日 2020-05-01 
登録番号 6698925
権利者 日機装株式会社
発明の名称 窒化物半導体発光素子  
代理人 弁理士法人平田国際特許事務所  
代理人 特許業務法人平田国際特許事務所  

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