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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
管理番号 1393969
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-03 
確定日 2022-11-25 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6740507号発明「剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6740507号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜19〕について訂正することを認める。 特許第6740507号の請求項9、10、15〜19に係る特許を維持する。 特許第6740507号の請求項1〜8、11〜14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6740507号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜19に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)11月11日(優先権主張2018年(平成30年)11月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月28日にその特許権の設定登録がされ、令和2年8月12日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。

令和3年 2月 3日 : 特許異議申立人高橋麻衣子(以下「申立人」
という。)による本件特許に対する特許異議
の申立て
同 年 5月31日付け: 取消理由通知書
同 年 8月 5日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同 年12月 7日 : 申立人による意見書の提出
令和4年 4月27日付け: 取消理由通知書(決定の予告)
同 年 7月 7日 : 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同 年 8月23日 : 申立人による意見書の提出

なお、令和4年7月7日の訂正請求により、上記令和3年8月5日の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
令和4年7月7日の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9の「前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の剥離紙。」との記載を、「紙基材と、
前記紙基材の片面又は両面に、生分解性樹脂を含む目止め層と、
前記目止め層の少なくとも一方に剥離剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙であり、
前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して100重量%含み、
前記生分解性樹脂が、バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであり、
前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であり、
前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする剥離紙」と訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10、15〜19も同様に訂正する。)。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項15の「請求項1〜10のいずれか1項に記載」との記載を、「請求項9又は10に記載」と訂正する。
(15)訂正事項15
明細書の【0048】の最終行の「及びその誘導体」を削除する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の明細書の【0049】の「及びその誘導体」を削除する。
(17)訂正事項17
明細書の【0051】の「、昭和電工社製ポリブチレンサクシネート樹脂「ビオノーレ」(登録商標)」を削除する。
(18)訂正事項18
明細書の【0053】の「及びその誘導体」、「ビオノーレ1000シリーズ(登録商標:昭和電工(株)製)」、「、ビオノーレ3000シリーズ(登録商標:昭和電工(株)製))」、「(例えば、アオニレックス(登録商標「(株)カネカ製))」、「(例えば、エコフレックス(登録商標:ビー・エー・エス・エフ社製))」、「(例えば、バイオマックス(登録商標:デュポン社製))」、「(例えば、REVODE(登録商標:海正生物材料社製)、Inego(登録商標:ネイチャーワークス社製))」及び「(例えば、CAPA6800(登録商標:パーストープ社製))」を削除する。
(19)訂正事項19
明細書の【0085】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(20)訂正事項20
明細書の【0086】の「実施例2」を「参考例2」に訂正する。
(21)訂正事項21
明細書の【0087】の「実施例3」を「実施例1」に訂正する。
(22)訂正事項22
明細書の【0088】の「実施例4」を「実施例2」に訂正する。
(23)訂正事項23
明細書の【0089】の「実施例5」を「参考例3」に訂正するとともに、同【0089】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(24)訂正事項24
明細書の【0090】の「実施例6」を「参考例4」に訂正するとともに、同【0090】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(25)訂正事項25
明細書の【0091】の「実施例7」を「参考例5」に訂正するとともに、同【0091】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(26)訂正事項26
明細書の【0092】の「実施例8」を「参考例6」に訂正するとともに、同【0092】の「実施例1」を「参考例1」に訂正する。
(27)訂正事項27
明細書の【0096】の「実施例1〜8」を「実施例1〜2、参考例1〜6」に訂正する。
(28)訂正事項28
明細書の【0097】の【表1】について、「実施例1」を「参考例1」に、「実施例2」を「参考例2」に、「実施例3」を「実施例1」に、「実施例4」を「実施例2」に、「実施例5」を「参考例3」に、「実施例6」を「参考例4」に、「実施例7」を「参考例5」に、「実施例8」を「参考例6」に、それぞれ訂正する。
(29)訂正事項29
明細書の【0098】について、実施例1及び2、実施例3及び4、実施例5〜8をそれぞれ、参考例1及び2、実施例1及び2、参考例3〜6に訂正する。

2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1〜19は、請求項2〜19が、請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項について請求されたものである。
また、明細書に係る訂正は、一群の請求項について請求されたものである。

3 本件訂正の適否
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1〜8、10〜13について
訂正事項1〜8、10〜13に係る請求項1〜8、11〜14についての訂正は、請求項の削除であるから特許請求の範囲の減縮であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項9について
(ア)訂正事項9は、訂正前の請求項1及び請求項6を引用する請求項9を、引用関係を解消し独立請求項へ改めることに加えて、
(イ)訂正前の請求項1において「バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層」と選択的に記載されていたうちの「バイオマス由来の樹脂」に係る「前記バイオマス由来の樹脂がバイオマス由来のモノマーが重合してなるバイオマスポリオレフィンを含む」との発明特定事項を削除し、「生分解性樹脂を含む目止め層」に限定し、
(ウ)「剥離紙」が「ラベル用原紙に用いる」ことを限定し、
(エ)訂正前の請求項6において、「前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して50重量%以上含む」との記載において、「50重量%以上」を「100重量%」に限定し、
(オ)「前記生分解性樹脂」が「バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであ」ることを限定し、
(カ)「前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であ」ることを限定するものである。
そして、
前記(ア)については、訂正事項1〜8により削除する請求項を引用しない記載へと改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(イ)については、選択的に記載されていた事項のうち一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(ウ)については、本件発明に係る「剥離紙」の用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0076】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(エ)については、「生分解性樹脂」の含有割合を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0048】、【0087】、【0088】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(オ)については、「生分解性樹脂」の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0044】、【0048】、【0049】、【0051】、【0087】、【0088】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
前記(カ)については、「目止め層」の厚さを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮であり、明細書の【0056】、【0087】、【0088】に記載されている事項であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項14
訂正事項14に係る請求項15についての訂正は、訂正事項1〜8により削除する請求項を引用しない記載へと改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項15〜18
訂正事項15〜18に係る明細書についての訂正は、訂正事項1〜14により特許請求の範囲に含まれなくなった「ポリブチレンサクシネート系樹脂」の「誘導体」に対応する事項を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項19〜29
訂正事項19〜29に係る明細書についての訂正は、訂正事項1〜18の訂正の結果、訂正後の本件発明に該当しない項目を、「実施例●」から「参考例▲」へ記載を改めるとともに、「実施例●」の番号を整えるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)小括
上記のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第4項〜第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜19〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1〜19に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
紙基材と、
前記紙基材の片面又は両面に、生分解性樹脂を含む目止め層と、
前記目止め層の少なくとも一方に剥離剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙であり、
前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して100重量%含み、
前記生分解性樹脂が、バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであり、
前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であり、
前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする剥離紙。」
【請求項10】
前記シリコーン系剥離剤が、エマルション型又は無溶剤型のシリコーン系剥離剤であることを特徴とする請求項9に記載の剥離紙。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
請求項9又は10に記載の剥離紙と、粘着剤層と、ラベル用基材と、を有してなることを特徴とするラベル用原紙。
【請求項16】
前記粘着剤層がバイオマス粘着剤を含むことを特徴とする請求項15に記載のラベル用原紙。
【請求項17】
前記バイオマス粘着剤は、粘着付与剤を含み、前記粘着付与剤は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、前記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上であることを特徴とする、請求項16に記載のラベル用原紙。
【請求項18】
前記ラベル用原紙は、紙又はバイオマス樹脂フィルムであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載のラベル用原紙。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載のラベル用原紙を用いたことを特徴とするラベル。」

第4 令和4年4月27日付け取消理由通知(決定の予告)の概要
進歩性)本件特許の請求項5、6、9〜19に係る発明は、その出願前に、日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平7−44104号公報(甲第1号証)
引用文献2:実願昭58−22398号(実開昭59−149944号)の
マイクロフィルム(甲第2号証)
引用文献3:特開2017−196780号公報(甲第5号証)
引用文献4:特開2018−1608号公報(甲第6号証)
引用文献5:特開2012−203022号公報(当審にて追加した文献)
参考資料1:大島一史,総論―バイオプラスチック開発の進展と実用化・普
及に向けた今後の課題,プラスチックス・エージ,株式会社プ
ラスチックス・エージ,平成27年5月1日,Vol.61,
p.38(申立人が提出した参考資料1)
参考資料2:木村良晴, グリーンポリマーの化学合成,高分子,社団法人
高分子学会,2001年6月,50巻,6月号 p.372(
申立人が提出した参考資料2)
参考資料3:特開平6−171050号公報(申立人が提出した参考資料3


明確性)本件特許の特許請求の範囲の記載は下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

本件特許の請求項5には「前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネート系樹脂及びその誘導体の中から選ばれ、」とあるが、「その誘導体」の記載が指すものが明らかではない。

第5 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 引用文献に記載された事項、引用発明
(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、強調のために、当審が付した。
ア 「【請求項1】 生分解性ポリマー層からなる粘着ラベル基材上に粘着剤層が積層されてなる生分解性粘着ラベル本体と、生分解性ポリマー層からなる剥離シート基材上に剥離剤層が積層されてなる生分解性剥離シートとからなり、前記生分解性粘着ラベル本体と前記生分解性剥離シートとが、生分解性粘着ラベル本体の粘着剤層と剥離シートの生分解性剥離剤層とが接するように積層されていることを特徴とする生分解性粘着ラベル。」
イ 「【請求項6】 前記剥離シート基材が生分解性ポリマー層と紙層との積層シートであり、かつ、該生分解性ポリマー層上に前記剥離剤層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の生分解性粘着ラベル。」
ウ 「【0010】一方、剥離シート基材は、生分解性ポリマー層のみから構成されていてもよい。また、この剥離シート基材は、生分解性ポリマー層と紙層との積層体であってもよく、生分解性ポリマー層/紙層/生分解性ポリマー層の積層体であってもよい。
【0011】
【発明の具体的説明】本発明に係る生分解性粘着ラベルの具体例を図1〜図3に示す。図1に示す生分解性粘着ラベル10は、生分解性粘着ラベル本体20と、生分解性剥離シート30とから形成されている。」
エ 「【0012】このうち、生分解性ポリマー層aは、生分解性ポリマーから形成されている限り、どのような生分解性ポリマーを用いることもできるが、具体的には下記のような生分解性ポリマーから形成されていることが好ましい。
【0013】a)3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステル(商品名 バイオポール、英国ICI社製)なお、この直鎖状ポリエステル(バイオポール)は、Alcaligenes Europhusによる糖発酵によって得られる。
【0014】・・・
・・・
g)ポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリグリコリッドあるいはこれらの誘導体などの生分解性ポリマー
・・・。」
オ 「【0017】また、上記粘着ラベル基材1の片面には粘着剤層2が形成されているが、このような粘着剤層2を形成しうる粘着剤としては、例えばロジンおよびその誘導体(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなど)、テルペンおよびその誘導体(α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、ジペンテン樹脂およびこれらの水添物)から選ばれた1種または2種以上の粘着付与性樹脂と天然ゴムとの混合物からなる粘着剤が挙げられる。このうち、天然ゴムは、固形であってもラテックス状であってもよい。なお、粘着剤中では、天然ゴム100重量部に対し、1〜150重量部の粘着付与性樹脂が配合されていることが好ましい。
・・・
【0021】なお、上記のような粘着剤塗布液の溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチルなどが用いられる。一方、生分解性剥離シート30では、生分解性ポリマー層aのみからなる剥離シート基材3上に剥離剤層4が積層されている。
【0022】このような生分解性ポリマー層aのみで構成された剥離シート基材3の厚さは、通常、12〜125μmであり、好ましくは25〜100μmである。そして、上記のような生分解性ポリマー層aのみで構成された剥離シート基材3は、生分解性剥離シート30を土中に廃棄しても自然環境を破壊することがないので、本発明にとって好ましいものである。
【0023】また、剥離剤層4を形成しうる剥離剤としては、シェラック、天然ワックス、カゼイン、スターチ等の天然化合物からなる剥離剤、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、シリコーン等の合成剥離剤の1種または2種以上が用いられる。
・・・
【0027】図2に示す生分解性粘着ラベル10は、生分解性粘着ラベル本体20の粘着ラベル基材1を除いては図1の生分解性粘着ラベル10と同様である。図2に示された生分解性粘着ラベル本体20では、粘着ラベル基材1が生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層シートから構成されている。
【0028】このうち、生分解性ポリマー層aおよびその厚さは、上述したものと同一である。また、紙層bとしては、通常、50〜150g/m2、好ましくは60〜100g/m2の紙が用いられる。
【0029】このような生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層シートから構成された粘着ラベル基材1は、例えば、生分解性ポリマー層aを紙シートbに押出成形機で100〜300℃の温度でラミネートするなどの方法によって得られる。
・・・
【0033】図4に示す生分解性粘着ラベル10は、生分解性剥離シート30の剥離シート基材3を除いては図1の生分解性粘着ラベル10と同様である。図4に示された生分解性剥離シート30では、剥離シート基材3が生分解性ポリマー層aと紙シートbとの積層体で構成され、生分解性ポリマー層a上に剥離層4が形成されている。
【0034】このうち、生分解性ポリマー層aおよびその厚さは、上述したものと同一である。また、紙層bとしては、通常、50〜150g/m2、好ましくは60〜100g/m2の紙が用いられる。
【0035】このような生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層体で構成された生分解性剥離シート基材3は、図2に示す粘着ラベル基材1と同様の方法で得ることができる。」

カ 「【0041】
【実施例】生分解性ポリマー層として厚さ70μmの3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ琥珀酸との共重合体で構成されたフィルム(「バイオポール」、英国ICI社製)の片面に、5×10−5torrの真空度でアルミニウムを蒸着してアルミニウム薄膜を形成した。
【0042】このアルミニウム薄膜上に、粘着剤として天然ゴムとテルペン系樹脂との混合物を20%の濃度で含むトルエン溶液をコンマコーターで塗布して付着量30g/m2の粘着剤層を形成し、生分解性粘着ラベル本体を得た。
【0043】次いで、坪量80g/m2の上質紙(リンテック(株)社製)に上記生分解性ポリマー層を加熱温度200℃で押出成形機でラミネートすることにより、生分解性ポリマー層と紙シートとからなる剥離シート基材を得た。
【0044】この剥離シート基材の生分解性ポリマー層上にシリコーン系剥離剤(商品名SRX244、東レシリコーン(株)社製)を用いて剥離剤層を形成し、生分解性剥離シートを得た。
【0045】上記生分解性粘着ラベル本体の粘着剤層と生分解性剥離シートの剥離剤層とを重ね合わせて貼着して生分解性粘着ラベルを得た。・・・」

キ 「【図1】

【図2】


【図3】

【図4】



上記カ記載の実施例の積層構造において、製造に係る参考とし、上記エ記載の好ましいとされる生分解性ポリマーと、上記オ記載の基材の厚さに着目すると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「生分解性ポリマー層からなる粘着ラベル基材1上に粘着剤層2が積層されてなる生分解性粘着ラベル本体20と、該ラベル本体20の粘着剤層2と生分解性剥離シート30の剥離剤層4とが接するように、前記生分解性粘着ラベル本体20に積層される生分解性剥離シート30とを備えた生分解性粘着ラベル10であって、
前記生分解性剥離シート30は、
剥離剤層4と剥離シート基材3とが積層されてなり、
前記剥離シート基材3は、生分解性ポリマー層aと紙層bとの積層シートであり、かつ、該生分解性ポリマー層a上に剥離剤層4が形成され、
前記剥離シート基材3の生分解性ポリマー層aの厚さは12〜125μmである
生分解性粘着ラベル10。」

(2)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲
1 紙の片面若しくは両面に(A)DSC(differential scanning calorimeter示差走査熱量計)による融点120℃以上の中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレンと、
(B)DSCによる融点100℃以上のリニアー低密度ポリエチレン若しくは高圧法低密度ポリエチレンとから成る平均密度0.930〜0.950g/cm3の(A)(B)混合樹脂層が設けられ、且つ紙と該混合樹脂層との接着強度が80g/20mm以上である剥離紙用基材。」
イ 「本考案では、中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレンと、高圧法低密度ポリエチレン若しくはリニアー低密度ポリエチレンとの混合樹脂が目止め層として用いられなければならない。」(明細書4ページ9行〜同ページ12行)
ウ 「また、本考案における高圧法低密度ポリエチレン若しくはリニアー低密度ポリエチレンはDSCによる融点が100℃以上でなければならない。100℃未満であると良好な耐熱性が得られない。なお、密度としては0.910〜0.925g/cm3、メルトフローレートとしては2〜25g/10分のものが使用される。」(明細書6ページ17行〜7ページ3行)
エ 「本考案の剥離紙用基材のポリエチレン表面には剥離剤との密着性を更に向上させる目的で、コロナ放電処理を行なうことも可能である。」(明細書8ページ2〜4行)

以上に摘記した事項を総合すると、上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「紙の片面若しくは両面に、目止め層として、
(A)DSC(differential scanning calorimeter示差走査熱量計)による融点120℃以上の中密度ポリエチレン若しくは高密度ポリエチレンと、
(B)DSCによる融点100℃以上のリニアー低密度ポリエチレン若しくは高圧法低密度ポリエチレンとから成る平均密度0.930〜0.950g/cm3の(A)(B)混合樹脂層が設けられ、且つ紙と該混合樹脂層との接着強度が80g/20mm以上である剥離紙用基材。」

(3)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
少なくとも、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含む、請求項1に記載の積層体。」
イ 「【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。」
ウ 「【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン樹脂の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたバイオマスポリオレフィン(以下、単に「バイオマスポリオレフィン」ということがある)を含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン(以下、単に「化石燃料由来のポリオレフィン」ということがある)からなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。」
エ 「【0036】
バイオマスポリオレフィンは、好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下、より好ましくは0.912g/cm3以上0.928g/cm3以下、さらに好ましくは0.915g/cm3以上0.925g/cm3以下の密度を有するものである。バイオマスポリオレフィンの密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−198のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。バイオマスポリオレフィンの密度が0.91g/cm3以上あれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。また、バイオマスポリオレフィンの密度が0.93g/cm3以下であれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。」

(4)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層と、紙基材層と、ポリオレフィン樹脂層と、第2の熱可塑性樹脂層とをこの順に備える積層体であって、
前記ポリオレフィン樹脂層が、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含み、
前記ポリオレフィン樹脂層中のバイオマス度が5%以上である、積層体。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂層が、化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含む、請求項1に記載の積層体。」
イ 「【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目
されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、各種の樹脂をバイオマス原料から製造する試みも行われている。」
ウ 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリオレフィン樹脂の原料であるエチレンに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレンに代えて、バイオマス由来のエチレンをその原料としたバイオマスポリオレフィン(以下、単に「バイオマスポリオレフィン」ということがある)を含むポリオレフィン樹脂層を備える積層体は、従来の化石燃料から得られるエチレンを用いて製造されたポリオレフィン(以下、単に「化石燃料由来のポリオレフィン」ということがある)からなるポリオレフィン樹脂層を備える積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。」
エ 「【0036】
バイオマスポリオレフィンは、好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下、より好ましくは0.912g/cm3以上0.928g/cm3以下、さらに好ましくは0.915g/cm3以上0.925g/cm3以下の密度を有するものである。バイオマスポリオレフィンの密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される値である。バイオマスポリオレフィンの密度が0.91g/cm3以上あれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の剛性を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。また、バイオマスポリオレフィンの密度が0.93g/cm3以下であれば、バイオマスポリオレフィンを含むポリオレフィン樹脂層の透明性や機械的強度を高めることができ、包装製品の内層として好適に用いることができる。」

(5)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「【0026】
剥離紙は、一般的には基材となる紙と、接着剤層に接触する剥離層と、剥離剤が基剤に浸透するのを防止する目止め層からなる。基材には、用途により半晒紙、上質紙、グラシン紙などを用いる。目止め層にはポリエチレン系が多く用いられ、厚みは数〜数十μmである。」

(6)参考資料1
参考資料1には、次の事項が記載されている。
ア 「バイオマス(以降“BP”)由来のプラスチック、いわゆる“バイオマスプラスチック”、更には生分解性プラスチック(以降“BdP”)を含むバイオプラスチック(以降、これらを総称して“BP”)について、国の普及に向けた政策、及び民間による工業化を前提とする実用化に向けた取組み経緯と上市資材を概観し、普及に向けた課題・論点を整理する。」(P.32左欄)
イ 「(2)ポリブチレンサクシネート
実質唯一のBdPとして市場を形成しているポリブチレンサクシネート(PBS)は、コハク酸と1.4-ブタンジオール(1.4-BD)からの縮合反応で合成される(1992年に昭和高分子(当時)と昭和電工によって開発された我が国初の軟質系BdP)。コハク酸は一般にはマレイン酸経由で合成されるが、BM由来とする技術、すなわちバイオコハク酸が開発され、海外では商業生産が始まっている。昭和電工から「ビオノーレ」(別途詳細解説を参照)、三菱化学から(GSプラ)として上市されているタイプは、・・・生ごみ回収袋やマルチフィルム、更には包装資材や土嚢など土木資材としての展開に実績を持っている。」(P.38右欄)

(7)参考資料2
参考資料2には、次の事項が記載されている。
「4.3 ポリコハク酸ブチレン(PBS)
コハク酸ジメチル(DMS)とブタンジオール(BD)の重縮合によって得られるPBSは、“Non-Carothers’Polymers”のひとつであり、性能的に問題があるとして開発から見放されてきた高分子材料である。実際に、その融点は120℃前後であり、実用上からもやや低いと思われる。ところが、高重合体の開発が行われてみると、結構強い素材となることが分かってきた。一般に、重縮合法では分子量を上昇させることが困難であり、実用に耐える高分子量体を得るには工夫がいる。その工夫のひとつは、ジイソシアネートを鎖延長剤に用いた重付加による分子量増加である。第一段目の重縮合で分子量10,000〜20,000程度のPBSを合成し、それをたとえばヘキサメチレンジイソシアネートと反応させて鎖延長を行い、分子量200,000程度のPBS誘導体を得る。このようにして開発されたものがビオノーレ○Rである。ビオノーレには、PBSおよびPESの鎖延長されたもののほかに、アジピン酸をコモノマーとして含むpoly(butylene succinate/adipate)(PBSA)を鎖延長したものがある。」(注:「○R」は登録商標を示すマーク。)(P.372)

(8)参考資料3
参考資料3には、次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】紙または布等の基材の合成樹脂を積層したラミネートは各種の用途に用いられている。例えば剥離基材としては、従来紙または布の片面もしくは両面に目止め層として315〜345℃で通常高圧法で得られる長鎖分岐を有する低密度ポリエチレンあるいは低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンをブレンドした中密度ポリエチレンあるいは低密度ポリエチレンとポリプロピレンをブレンドした組成物が用いられ、該目止め層の上に剥離層が設けられたものがよく知られている。」
イ 「【0006】更に使用済みの紙カップ、紙トレー等は、紙に微生物分解性のないポリオレフィン組成物が積層されているため土中に埋めても分解せず、また紙を回収しようとする場合はこの使用済みの紙カップ及び紙トレーをアルカリ水溶液中に浸漬しポリオレフィン組成物を分離するという非常に面倒で人手とコストを要するため紙と一緒に生分解するような撥水層用組成物が強く求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、剥離用基材の目止め層として、溶融コーティング時の発煙を少なくするためには低温で成形でき、しかも紙または布等の基材に接着、密着性のよいポリマーであって、しかも自然界のごくあたり前の土中の微生物により容易に分解させられるようなポリマーで目止めされた剥離基材の開発、並びに高温度積層による製品基材に残るポリオレフィンの酸化劣化臭と多量の煙の発生の問題を解決し、併せて紙製容器に微生物分解性を付与して使用済み容器の廃棄に伴う非分解性物質が蓄積する自然界環境の保全に有利な紙容器用基材の開発を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、温度190℃、剪断速度100(sec−1)における溶融粘度が1.0×103〜1.0×105ポイズであり、融点が70〜200℃である脂肪族ポリエステル樹脂を、基材に溶融押出コーティングしたことを特徴とする剥離基材を開発することにより、さらに温度190℃、剪断速度100(sec−1)における溶融粘度が1.0×103〜1.0×105ポイズであり、融点が85〜200℃とした脂肪族ポリエステル樹脂を、原紙に積層したことを特徴とする紙製容器用基材を開発することにより、上記のそれぞれの目的を達成した。
【0009】本発明で言う脂肪族ポリエステルとは、グリコール類と脂肪族多塩基酸またはその酸無水物とから合成されるポリエステルを主成分とするものであり、分子量を充分に高くするため、両端にヒドロキシル基を有する比較的高分子量のポリエステルプレポリマーを合成した後カップリング剤により、さらにこれらプレポリマーをカップリングさせたものである。」
ウ 「【0044】
【実施例】
(実施例1)700Lの反応器を窒素置換してから、1,4−ブタンジオール183kg、コハク酸224kgを仕込んだ。窒素気流中において昇温を行い、195〜210℃にて3.0時間、更に窒素を停止して15〜5mmHgの減圧下に3.5時間にわたり脱水縮合によるエステル化反応を行った。採取された試料は、酸価が6.3mg/g、数平均分子量(Mn)が5,200、また重量平均分子量(Mw)が10,100であった。引き続いて、常圧の窒素気流下に触媒のテトライソプロポキシチタン3.4gを添加した。温度を上昇させ、温度215〜220℃で5〜0.2mmHgの減圧下に7.5時間、脱グリコール反応を行った。採取された試料は数平均分子量(Mn)が18,600、また重量平均分子量(Mw)が50,300であった。このポリエステル(A1)は凝縮水を除くと収量は339kgであった。
【0045】ポリエステル(A1)339kgを入れた反応器にヘキサメチレンジイソシアナート4070gを添加し、180〜200℃で1時間カップリング反応を行った。粘度は急速に増大したが、ゲル化は生じなかった。次いで抗酸化剤としてイルガノックス1010(チバガイギー社製)を1700g及び滑剤としてステアリン酸カルシウムを1700g加えて更に30分間撹拌を続けた。この反応生成物をエクストルーダーにて水中に押出し、カッターで裁断してペレットにした。90℃で6時間、真空乾燥した後のポリエステル(B1)の収量は270kgであった。
【0046】得られたポリエステル(B1)は、わずかにアイボリー調の白色ワックス状結晶で、融点が110℃、数平均分子量(Mn)が29,500、重量平均分子量(Mw)が127,000、MFR(190℃)は9.2g/10分、オルトクロロフェノールの10%溶液の粘度は170ポイズ、温度190℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度は8.0×103ポイズであった。平均分子量の測定は、Shodex GPC System−11(昭和電工(株)製ゲルクロマトグラフィー),溶媒はCF3 COONaのヘキサフロロイソプロピルアルコール5ミリモル溶液、濃度0.1重量%、検量線は昭和電工(株)製PMMA標準サンプル Shodex Standard M−75で行った。次いでこのポリエステル樹脂(B1)をスクリュー径50mmφ、L/D=28の押出機に幅320mmのT−ダイを用い、ダイリップギャップ0.8mm、エアギャップ120mm、樹脂温度220℃で押出し、速度150m/minで供給される上質紙(70g/m2)上に20μmの厚みでラミネートし、剥離基材を製造した。」

進歩性に係る取消理由についての判断
(1)本件発明9と引用発明1との対比
本件発明9と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「紙層b」、「剥離剤層4」、「生分解性剥離シート30」は、本件発明9の「紙基材」、「剥離剤層」、「剥離紙」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「生分解性剥離シート30」は「該ラベル本体20の粘着剤層2と剥離シート30の剥離剤層4とが接するように、前記生分解性粘着ラベル本体20に積層される」ものであるから、本件発明9の「ラベル用原紙に用いる剥離紙」に相当する。
そして、引用発明1の「生分解性ポリマー層a」と、本件発明9の「生分解性樹脂を含む目止め層」とは、「生分解性樹脂を含む」「層」という限りにおいて一致する。
したがって、本件発明9と引用発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

[一致点]
「紙基材と、前記紙基材の片面に、生分解性樹脂を含む層と、
前記層の少なくとも一方に剥剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙。」

[相違点1]
生分解性樹脂を含む層について、本件発明9は「バイオマス度が35%以上50%以下であ」り「バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであ」る「生分解性樹脂を」「層全体に対して100重量%含み、」「厚さ」が「17μm以上32μm以下であ」る「目止め層」であるのに対し、引用発明1の「生分解性ポリマー層a」は、由来が不明であり、「目止め」を行うか否かが明らかでなく、厚さが「12〜125μm」である点。

[相違点2]
剥離剤層について、本件発明9は「シリコーン系剥離剤を含む」のに対し、引用発明1ではかかる構成が特定されていない点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、生分解性ポリマーの例として、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステル(【0013】)やポリ乳酸、ポリ酪酸、ポリグリコリッドあるいはこれらの誘導体(【0014】)について記載されているが、本件発明9で特定する「ポリブチレンサクシネート又はポリブチレンサクシネート・アジペート」とすること及び「バイオマス由来」とすることの記載はないし、加えて、「バイオマス度が35%以上50%以下であ」ること及び「生分解性樹脂を」「層全体に対して100重量%含み」といった具体化手段についての記載もない。さらには、引用文献1の生分解性ポリマーが目止め層であることの記載もない。そうすると、参考資料1の生分解性樹脂であるポリブチレンサクシネート(PBS)及び参考資料2のPBS誘導体の記載、並びに、参考資料3の目止め層として生分解性ポリマーに係る脂肪族ポリエステルを用いることの記載があるとしても、これらの記載の存在が、引用文献1の実施例に係る3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸との直鎖状ポリエステルや他の例示される材料とは異なる特定の材料とし、さらに当該材料をバイオマス由来とし、そのバイオマス度を特定の数値にしつつ、さらに目止め層として用いるよう構成することの着想を動機付けるものとはいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明15〜19について
本件発明15〜19は、本件発明9の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明15〜19は、当業者が引用発明1及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.明確性に係る取消理由についての判断
本件訂正により、本件発明9、15〜19には「その誘導体」との記載は含まれないものとなったから、明確性に係る取消理由は解消された。

第6 取消理由(決定の予告)で通知しなかった特許異議申立理由について
新規性及び進歩性に係る申立理由について
申立人は、請求項1〜4、7〜10に係る発明について、請求項1において目止め層がバイオマス由来の樹脂を含む場合は、引用文献2(甲第2号証)に記載された発明に基づき進歩性を有していないと主張する(申立書の特に27ページの(3)の(ii))。
しかしながら、本件訂正により、目止め層が単にバイオマス由来の樹脂を含むものではなく、生分解性樹脂であることが特定されたため、申立人が主張する上記理由は解消した。

2 サポート要件及び実施可能要件に係る申立理由について
(1)申立人は、請求項1には、「バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層」とあり、目止め層がバイオマス由来の樹脂及び生分解性樹脂の両方を含む態様も含まれ得ることが特定されているところ、本件特許明細書の実施例には、目止め層にバイオマス由来の樹脂若しくは生分解性樹脂のいずれかを含む例しか開示されていないと主張する(申立書48ページの(5)の(i))。
しかしながら、本件訂正により、目止め層を単にバイオマス由来の樹脂とする構成は削除されたため、申立人が主張する上記理由は解消した。
(2)申立人は、請求項3では、目止め層が含むバイオマス由来の樹脂が含むバイオマスポリオレフィンについて「0.910g/cm3以上0.965g/cm3未満の密度を有する」と特定されているところ、本件特許明細書の実施例では、バイオマスポリオレフィンとして、密度0.916g/cm3のものしか開示されていないと主張する(申立書48ページの(5)の(ii))。
しかしながら、本件訂正により、目止め層を単にバイオマス由来の樹脂とする構成は削除されたため、申立人が主張する上記理由は解消した。
(3)申立人は、請求項6の「生分解性樹脂の含有量が目止め層全体に対して50重量%以上である」点について、本件特許明細書には100重量%の実施例しか記載されておらず、50重量%以上100重量%未満の態様についてサポートされておらず、数値範囲の意義も明らかでないでないと主張する(申立書49ページの(5)の(iii))。
しかしながら、本件特許明細書には、「目止め層12中の生分解性樹脂の含有が50重量%以上であれば、剥離紙10の一部が生分解性を有し、従来に比べて環境負荷を削減することができる。」(【0054】)と記載されており、目止め層12中の生分解性樹脂が100重量%未満の範囲においても、環境負荷を削減するという本件発明の解決しようとする課題が解決できることを理解できるし、環境負荷を削減する効果があるという点においては数値範囲の意義も明らかである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)申立人は、請求項9の「前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含む」点及び請求項10の「前記シリコーン系剥離剤が、エマルション型又は無溶剤型のシリコーン系剥離剤である」点について、本件特許明細書の実施例では、シリコーン系剥離剤について一切の情報が開示されていないため、実施例において、エマルション型のシリコーン系剥離剤もしくは無溶剤型のシリコーン系剥離剤を用いた例が開示されているか否かを判断できないと主張する(申立書49ページの(5)の(iv))。
しかしながら、本件特許明細書には「シリコーン系剥離剤は、・・・、環境面の観点から、エマルション型又は無溶剤型が好ましい。」(【0067】)と記載されているのだから、個別の実施例において「シリコン系剥離剤」についての具体的な記載がなくとも、上記【0067】等の記載に基いて、エマルション型か無溶剤型のシリコーン系剥離剤を用いることができることは当業者であれば理解できる。
したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。

明確性要件に係る申立理由について
申立人は、請求項13及び17の「前記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上」との記載において、粘着剤層におけるバイオマス度の定義が不明であると主張する(申立書49ページの(6))。
しかしながら、本件特許明細書には、「目止め層12中のバイオマス度が1%以上であれば、従来に比べて環境負荷を減らすことができる。ここで、バイオマス度とは、化石燃料由来の原料とバイオマス由来の原料との混合比率を表す指標であり、放射性炭素(C14)の濃度を測定することにより決定され、下記式で表される。
バイオマス度(%)=C14濃度(pMC)×0.935」(【0043】〜【0044】)と記載されている。そして、目止め層の原料の放射性炭素の濃度を測定することができることは明らかである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。

第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び申立人が提出した特許異議の申立理由によっては、本件特許の請求項9、10、15〜19に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項9、10、15〜19に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項1〜8、11〜14に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1〜8、11〜14に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベル
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減のため、樹脂の原料の一部を化石燃料由来の原料から、動植物から生まれた再生可能な有機性資源であるバイオマス由来の原料や生分解性の樹脂に代替することが検討されている。
【0003】
ところで、紙基材の表面に剥離剤層を備える剥離紙において、剥離剤の紙基材への浸透を極力抑制し、その剥離性を最大限に発揮させるために、紙基材と剥離剤層の間に、目止め層としてポリオレフィン層を形成させることが一般的に行われている(特許文献1参照)。目止め層は、剥離剤塗工時の紙基材への侵入を防ぎ、表面に均一な剥離剤層を形成させる目的で設けられる。そして、このポリオレフィン層を形成するポリオレフィンについても、上記のような理由から、バイオマスを用いた樹脂や生分解性の樹脂を含むことが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−191796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオマス由来の樹脂としては、例えば、ポリ乳酸;セルロース系樹脂;バイオマス由来の1,3−プロパンジオールを用いたポリトリメチレンテレフタレート、バイオマス由来のエチレングリコールを用いたバイオマスポリエステル;バイオマス由来の脂肪酸を用いたナイロン11、ナイロン4等のバイオマスポリアミド;バイオマス由来のジオールを用いたバイオマスポリウレタン;バイオマス由来のエチレンを用いたバイオマスポリエチレンやバイオマス由来のプロピレンを用いたバイオマスポリピロピレン等のバイオマスポリオレフィン等、様々な種類のものが研究・開発されている。
【0006】
しかし、環境負荷を低減した剥離紙の開発が望まれつつも、バイオマス由来の樹脂や生分解性樹脂は、製造コストや汎用性の観点から、剥離紙における目止め層として使用されることはなかった。
【0007】
したがって、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層であっても、化石燃料由来のポリオレフィン層と同等の剥離性を有し、従来のものと遜色のない剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層が化石燃料由来のポリオレフィン層と同等の剥離性を有し、従来のものと遜色のない剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベルが得られるとの知見を得た。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、紙基材と、上記紙基材の片面又は両面に、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層と、上記目止め層の少なくとも一方に剥離剤層と、を備えることを特徴とする剥離紙である。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の剥離紙であって、上記バイオマス由来の樹脂がバイオマス由来のモノマーが重合してなるバイオマスポリオレフィンを含むことを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(2)に記載の剥離紙であって、上記バイオマス由来のモノマーがバイオマス由来のエチレンであることを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(2)に記載の剥離紙であって、上記バイオマスポリオレフィンが0.910g/cm3以上0.965g/cm3未満の密度を有することを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の剥離紙であって、上記目止め層が上記バイオマス由来の樹脂を上記目止め層全体に対して1重量%以上含むことを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)に記載の剥離紙であって、上記生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル及びその誘導体の中から選ばれることを特徴とするものである。
【0015】
(7)本発明の第7の態様は、(1)に記載の剥離紙であって、上記目止め層が、上記生分解性樹脂を上記目止め層全体に対して50重量%以上含むことを特徴とするものである。
【0016】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の剥離紙であって、さらに、上記目止め層が化石燃料由来のポリオレフィンを含むことを特徴とする
【0017】
(9)本発明の第9の態様は、(2)から(5)のいずれかに記載の剥離紙であって、上記目止め層を形成する主たる樹脂がポリエチレンであることを特徴とするものである。
【0018】
(10)本発明の第10の態様は、(1)から(9)のいずれかに記載の剥離紙であって、上記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とするものである。
【0019】
(11)本発明の第11の態様は、(10)に記載の剥離紙であって、上記シリコーン系剥離剤が、エマルション型又は無溶剤型のシリコーン系剥離剤であることを特徴とするものである。
【0020】
(12)本発明の第12の態様は、(1)から(11)のいずれかに記載の剥離紙と、粘着剤層と、粘着シート用基材と、を有してなることを特徴とする粘着シートである。
【0021】
(13)本発明の第13の態様は、(12)に記載の粘着シートであって、上記粘着剤層がバイオマス粘着剤を含むことを特徴とするものである。
【0022】
(14)本発明の第14の態様は、(13)に記載の粘着シートであって、上記バイオマス粘着剤は、粘着付与剤を含み、上記粘着付与剤は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、上記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上であることを特徴とするものである。
【0023】
(15)本発明の第15の態様は、(12)から(14)のいずれかに記載の粘着シートであって、上記粘着シート用基材は、紙又はバイオマス樹脂フィルムであることを特徴とするものである。
【0024】
(16)本発明の第16の態様は、(1)から(11)のいずれかに記載の剥離紙と、粘着剤層と、ラベル用基材と、を有してなることを特徴とするラベル用原紙である。
【0025】
(17)本発明の第17の態様は、(16)に記載のラベル用原紙であって、上記粘着剤層がバイオマス粘着剤を含むことを特徴とするものである。
【0026】
(18)本発明の第18の態様は、(17)に記載のラベル用原紙であって、上記バイオマス粘着剤は、粘着付与剤を含み、上記粘着付与剤は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、上記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上であることを特徴とするものである。
【0027】
(19)本発明の第19の態様は、(16)から(18)のいずれかに記載のラベル用原紙であって、上記ラベル用基材は、紙又はバイオマス樹脂フィルムであることを特徴とするものである。
【0028】
(20)本発明の第20の態様は、(16)から(19)のいずれかに記載のラベル用原紙を用いたことを特徴とするラベルである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層であっても、化石燃料由来のポリオレフィン層と同等の剥離性を有し、従来のものと遜色のない剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による剥離紙の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明による剥離紙の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明による剥離紙を用いたラベル用原紙の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0032】
(剥離紙)
図1は、本発明による剥離紙10の一実施形態を示す模式断面図である。本実施形態に係る剥離紙10は、紙基材11と、上記紙基材11の片面又は両面に、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含む目止め層12と、上記目止め層12の少なくとも一方に剥離剤層13と、を備えている。なお、剥離紙10は、目止め層12及び剥離剤層13を紙基材11の両面に設けて、両面剥離紙(図示せず)としてもよい。また、本実施形態に係る剥離紙10は、紙基材11における、目止め層12及び剥離剤層13が設けられた面とは反対側の面に、カール抑制層を設けてもよい。カール抑制層としては、特に限定されず、例えば、目止め層12、後述する化石燃料由来のポリオレフィン層14であってもよい。
【0033】
(紙基材)
本実施形態に係る剥離紙10に用いる紙基材11としては、特に限定はなく、例えば、グラシン紙、セミグラシン紙、上質紙、クラフト紙、クレーコート紙、中質紙、アルカリ性紙、塗工紙、板紙、白板紙、又は特公平6−11959号公報で開示されるような、発塵の少ないいわゆる無塵紙等が挙げられる。また、紙基材11は、目止め層12との接着性を高めるために、あらかじめ加熱あるいはコロナ放電処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0034】
紙基材11は、40μm以上300μm以下の厚みを有することが好ましい。紙基材11の厚みが40μm未満であると、剥離紙10やラベル用原紙20、粘着シートの製造時に、しわの発生が増加したり、ラベル用原紙20を製造する場合、ラベル加工時の抜き加工適性に劣ったりする。一方、紙基材11との厚みが300μmを超えると、剛性が高くなりすぎて、取り扱い性が低下する。なお、紙基材11の厚みは、JIS P8118:2014に準拠して測定する。
【0035】
紙基材11の坪量は、40g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以上160g/m2以下であることがより好ましい。紙基材11の坪量が40g/m2未満であると、紙力が弱く、加工適性が悪くなる場合がある。一方、紙基材11の坪量が200g/m2を超えると取り扱い性が悪くなる場合がある。
【0036】
(目止め層)
本実施形態に係る目止め層12は、バイオマス由来の樹脂及び/又は生分解性樹脂を含むものであり、化石燃料由来のポリオレフィンをさらに含んでもよい。本発明においては、目止め層12がバイオマス由来の樹脂を含む場合、従来に比べて化石燃料由来のポリオレフィンの量を削減し、環境負荷を減らすことができる。また、目止め層12が生分解性樹脂を含む場合、剥離紙10の一部が生分解性を有し、環境負荷を減らすことができる。
【0037】
バイオマス由来の樹脂とは、バイオマスを原料に製造される樹脂である。なお、バイオマス由来の樹脂として、生分解する機能を有していてもよい。本発明において、生分解する機能を有するバイオマス樹脂は、バイオマス樹脂と定義する。このとき、目止め層12は、異なるバイオマス度のバイオマス由来の樹脂を2種以上含むものであってもよい。バイオマス由来の樹脂を製造するためのバイオマス由来のモノマーとしては、例えば、バイオマス由来のエチレン、バイオマス由来のプロピレン等のバイオマス由来のオレフィンが挙げられるが、中でもバイオマス由来のエチレンが好ましい。これらバイオマス由来のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、バイオマス由来の樹脂はバイオマス由来のモノマーが重合してなるバイオマスポリオレフィンを含むことが好ましく、バイオマスポリオレフィンは、バイオマス由来のエチレンが重合されてなるバイオマス由来のポリエチレンであることが好ましい。また、本発明において、「バイオマス由来の樹脂」及び「バイオマスポリオレフィン」とは、原料として少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いたものであって、原料の全てがバイオマス由来のものであることを意味するものではない。
【0038】
上記バイオマス由来のエチレンは、例えば、以下のようにバイオマス由来の原料から製造することができる。まず、バイオマスからバイオエタノールを生成する。バイオエタノールの原料となるバイオマスとしては、サトウキビ、トウモロコシ、甜菜、キャッサバ、ビート、木材、藻類等が挙げられる。これらのバイオマスの中では、生産効率の面から、糖質又はデンプン質を多く含む、サトウキビ、トウモロコシ及び甜菜が好ましい。
【0039】
次に、バイオエタノールを出発物質として、脱水反応によりエチレンに変換し、得られたバイオマス由来のエチレンと生成水等とを分離した後、分離されたバイオマス由来のエチレンを吸着法等により精製することができる。精製されたバイオマス由来のエチレンは、従来公知の化学工学的技術を応用してポリエチレンの原料として用いることができる。
【0040】
上記バイオマス由来のポリエチレンとしては、特に限定はなく、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。これらの中でも、バイオマス由来のポリエチレンは、汎用性、入手のしやすさ等の観点から直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることが好ましい。
【0041】
また、バイオマス由来のプロピレンは、例えば、上記バイオマス由来のエチレンを出発物質として、メタセシス反応によって、バイオマス由来のプロピレンを製造することができる。さらに、別の製造方法としては、上記バイオマス由来の原料に対し、発酵条件を変更することで、1,3−プロピレングリコールを製造し、これを脱水反応させることで、バイオマス由来のプロピレンを製造することができる。
【0042】
目止め層12には、上記バイオマス由来のモノマーが重合してなるバイオマス由来の樹脂を、目止め層12全体に対して1重量%以上含むことが好ましく、5重量%以上含むことがより好ましく、8重量%以上含むことがさらに好ましい。目止め層12中のバイオマス由来の樹脂の含有が1重量%以上であれば、従来に比べて化石燃料の使用量を削減することができる。また、目止め層12は、バイオマス由来の樹脂を100重量%含む必要はない。また、目止め層12は、生分解性樹脂及び/又はバイオマス由来の樹脂の他に、化石燃料由来のポリオレフィンを含んでいてもよい。一方、目止め層12において、バイオマスポリオレフィンを用いた場合、バイオマス由来の樹脂の配合率が高くなるにつれて、目止め層12の表面のタック値が上昇する傾向があり、紙基材11上に目止め層12を積層した場合、巻き取り性等の加工適性が低下する場合がある。そのため、バイオマスポリオレフィンを用いた場合には、目止め層12は、生分解性樹脂及び/又はバイオマス由来の樹脂の他に、化石燃料由来のポリオレフィンを含むことが好ましく、バイオマス由来の樹脂を上記目止め層12全体に対して100重量%以下含むことが好ましく、50重量%以下含むことがより好ましく、30重量%以下含むことがさらに好ましい。
【0043】
バイオマスポリオレフィンにおいては、理論上、ポリオレフィンの原料として、全てバイオマス由来のエチレン等のオレフィンを用いれば、バイオマス由来の炭素濃度は100%であり、バイオマスポリオレフィンのバイオマス度は100%となる。また、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリオレフィン中のバイオマス由来の炭素濃度は0%であり、化石燃料由来のポリオレフィンのバイオマス度は0%となる。目止め層12において、原料として少なくとも一部がバイオマス由来の原料を用いたものであり、必ずしもバイオマス度が100%である必要はない。目止め層12中のバイオマス度は、1%以上が好ましく、より好ましくは3%以上であり、さらに好ましくは5%以上である。目止め層12中のバイオマス度が1%以上であれば、従来に比べて環境負荷を減らすことができる。
【0044】
ここで、バイオマス度とは、化石燃料由来の原料とバイオマス由来の原料との混合比率を表す指標であり、放射性炭素(C14)の濃度を測定することにより決定され、下記式で表される。
バイオマス度(%)=C14濃度(pMC)×0.935
【0045】
このC14は、バイオマス中には一定濃度で含まれるが、化石燃料中には、ほとんど存在しない。したがって、C14の濃度を加速器質量分析で測定することにより、バイオマスの含有割合の指標とすることができる。
【0046】
本実施形態に係るバイオマスポリオレフィンの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて適宜調節するのが好ましい。また、重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。
【0047】
バイオマスポリオレフィンは、0.910g/cm3以上0.965g/cm3未満の密度を有することが好ましい。密度が0.910g/cm3未満であると、耐熱性が低下する傾向を示す。一方、密度が0.965g/cm3以上であると、剥離力が重くなる。バイオマスポリオレフィンの密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定することができる。
【0048】
生分解性樹脂としては、生分解性を有すると共に、製膜性が良好で、目止め層12を形成した場合に、剥離紙10としての機械特性や耐久性などを満たすものであればよく、特に制限されず、生物由来の材料であってもよく、石油由来の材料であってもよい。このような生分解性樹脂として、例えば脂肪族ポリエステル及びその誘導体、微生物産生ポリエステル、芳香族一脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族ポリエステルエーテル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、デンプン、セルロース及び酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、キチン、キトサン、マンナン等の多糖類等が挙げられるが、中でも脂肪族ポリエステルが好ましく用いられる。
【0049】
上記脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート系樹脂、モノマー単位として3−ヒドロキシアルカン酸を含有するポリエステル等が挙げられる。
【0050】
上記ポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシなどの植物を発酵して得られる乳酸を原料として製造され、そして微生物によって水と二酸化炭素に分解され、再び植物の育成を助けるという連鎖性を有することから、バイオリサイクル型として、本発明においては、好ましく用いられる。
【0051】
上記ポリブチレンサクシネート系樹脂の具体例としては、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート・ラクタイド等が挙げられる。ポリブチレンサクシネート系樹脂として使用可能な製品(市販品)としては、三菱化学製ポリブチレンサクシネート系樹脂「BioPBS」(登録商標)(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等)、Shandong Fuwin New Material社製ポリブチレンサクシネート樹脂、BASF社製ポリブチレンアジペートテレフタレート系樹脂「エコフレックス」(登録商標)等が挙げられる。上記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、生物由来の材料であってもよく、石油由来の材料であってもよい。
【0052】
上記モノマー単位として3−ヒドロキシアルカン酸を含有するポリエステルの具体例としては、例えば、PHB〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、又はポリ3−ヒドロキシ酪酸〕、PHBH〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)、又はポリ(3−ヒドロキシ酪酸−co−3−ヒドロキシヘキサン酸)〕、PHBV〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、又はポリ(3−ヒドロキシ酪酸−co−3−ヒドロキシ吉草酸)〕、P3HB4HB〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)、又はポリ(3−ヒドロキシ酪酸−co−4−ヒドロキシ酪酸)〕、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)、又はポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。
【0053】
上記脂肪族ポリエステルの市販品としては、例えば、グリコール(ジオール)と多価カルボン酸との重縮合反応で得られる脂肪族ポリエステルに1,4ブタンジオールとコハク酸から得られるPBS(例えば、BiOPBS FZシリーズ(登録商標:三菱化学(株)製))、PBSにアジピン酸を共重合したPBSA(例えば、BiOPBS FDシリーズ(登録商標:三菱化学(株)製))、エチレングリコールとコハク酸とから得られるポリエチレンサクシネート(PES)、ヒドロキシアルカン酸と多価カルボン酸とから得られる脂肪族ポリエステル共重合体のポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(中でも、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、脂肪族ポリエステルとテレフタル酸エステルの共重合体として1,4ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸との共重合体であるPBAT、1,4−ブタンジオールとコハク酸とテレフタル酸の共重合体であるポリブチレンテレフタレートサクシネート(PBTS)、PLA、ポリカプロラクトン(PCL)等が挙げられる。
【0054】
目止め層12には、上記生分解性樹脂を、目止め層12全体に対して50重量%以含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましい。目止め層12中の生分解性樹脂の含有が50重量%以上であれば、剥離紙10の一部が生分解性を有し、従来に比べて環境負荷を削減することができる。
【0055】
目止め層12は、化石燃料由来のモノマーが重合してなる化石燃料由来のポリオレフィンを含んでもよい。化石燃料由来のモノマーとしては、特に限定はなく、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、2、2−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、2、2−ジメチル−1−ペンテン、3、3−ジメチル−1−ペンテン、2、3−ジメチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、2、2、3−トリメチル−1−ブテン、1−オクテン、2、2、4−トリメチル−1−オクテン等のα−オレフィンが挙げられる。これら化石燃料由来のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、目止め層12を形成する主たる樹脂は、ポリエチレンであることが好ましい。
【0056】
目止め層12は、0.5μm以上50μm以下の厚みを有することが好ましく、5μm以上50μm以下の厚みを有することがより好ましい。目止め層12の厚みが0.5μm未満であると、剥離剤の紙基材11への浸透を抑制しにくくなる。一方、目止め層12の厚みが50μmを超えると、不必要に厚くなり、実用上適さない。
【0057】
目止め層12中には、本発明の効果を損なわない範囲で、所望により、各種添加剤や、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のフィラーを添加してもよい。
【0058】
紙基材11の片面又は両面に目止め層12を形成する方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、紙基材11上に生分解性樹脂とバイオマス由来の樹脂を含む塗液を塗布し、乾燥させて、目止め層12を形成する方法や、紙基材11と目止め層12とを接着剤を介して積層する方法、溶融押出法を用いて紙基材11と目止め層12を同時に押出して成形する方法が挙げられる。本実施形態においては、溶融押出法又は接着剤を介して積層する方法により形成することが好ましい。
【0059】
紙基材11と目止め層12とを接着剤を介して積層する方法の場合、用いる接着剤としては、特に制限はなく、例えば、感圧接着剤、感熱接着剤、ラミネート接着剤などを挙げることができる。また、接着剤を構成するポリマーからみると、例えば、アクリル系接着剤、ポリイソシアネート系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤などを使用することができる。これらの中で、アクリル系接着剤は、単一成分からなるため透明性に優れ、耐久性が良好であるので、特に好適に使用することができる。アクリル系接着剤としては、例えば、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどを主成分とし、これに凝集力を与える成分として、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルなど、架橋点となる官能性モノマーとして、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド誘導体、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどを共重合して得られるポリマーに、適当な架橋剤を配合した接着剤を使用することができる。
【0060】
本発明に係る剥離紙10は、さらに、化石燃料由来の樹脂層を有してもよい。具体的には、化石燃料由来のポリオレフィン層14を有してもよい。化石燃料由来のポリオレフィン層14を有することで、目止め性や耐ピンホール性等を向上させることができる。化石燃料由来のポリオレフィン層14は、化石燃料由来のモノマーを含む樹脂材料からなる樹脂層であり、化石燃料由来のポリオレフィン層14のバイオマス度は0%である。図2は、本発明による剥離紙10の他の一実施形態を示す模式断面図である。剥離紙10は、紙基材11と、上記紙基材11の片面又は両面に生分解性樹脂とバイオマス由来の樹脂を含む目止め層12と、化石燃料由来の原料のみで製造された化石燃料由来のポリオレフィン層14と剥離剤層13と、を備えている。また、剥離紙10は、目止め層12及び/又は化石燃料由来のポリオレフィン層14と、剥離剤層13と、を紙基材11の両面に設けて、両面剥離紙(図示せず)としてもよい。また、本実施形態に係る剥離紙10は、紙基材11における目止め層12、化石燃料由来のポリオレフィン層14および剥離剤層13が設けられた面とは反対側の面に、カール抑制層を設けてもよい。カール抑制層としては、特に限定されず、例えば、目止め層12又は化石燃料由来のポリオレフィン層14であってもよい。
【0061】
化石燃料由来のポリオレフィン層14は、上記の化石燃料由来のモノマーが重合してなるポリオレフィンを含む。化石燃料由来のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。化石燃料由来のポリオレフィンは、エチレンを含むモノマーが重合されてなるポリエチレンであることが好ましい。
【0062】
化石燃料由来のポリオレフィンの重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。重合温度や重合圧力は、重合方法や重合装置に応じて適宜調節するのが好ましい。また、重合装置についても特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。
【0063】
化石燃料由来のポリオレフィン層14は、0.1μm以上30μm以下の厚みを有することが好ましい。なお、化石燃料由来のポリオレフィン層14は、2層以上有してもよく、それぞれが、同一の組成でもよく、異なる組成でもよい。
【0064】
化石燃料由来のポリオレフィン層14中には、本発明の効果を損なわない範囲で、所望により、各種添加剤や、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等のフィラーを添加してもよい。
【0065】
目止め層12の上に化石燃料由来のポリオレフィン層14を形成する方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法、例えば、目止め層12上に化石燃料由来のポリオレフィン塗液を塗布し、乾燥させて、化石燃料由来のポリオレフィン層14を形成する方法や、溶融押出法を用いて紙基材11と目止め層12と化石燃料由来のポリオレフィン層14とを同時に押出して成形する方法が挙げられる。本実施形態においては、溶融押出法により形成することが好ましい。
本実施形態の剥離紙10において、目止め層12は紙基材11に剥離剤層13中の剥離剤が浸透するのを抑制する、いわゆる目止め層の役割を果たす。よって、本実施形態の剥離紙10が目止め層12を有することにより、紙基材11に剥離剤層13中の剥離剤が浸透するのを抑制することができる。
【0066】
(剥離剤層)
本実施形態に係る剥離剤層13に用いる剥離剤としては、特に限定はなく、例えば、シリコーン系、フッ素系、アルキッド樹脂、長鎖アルキル系樹脂、各種ワックス類等の剥離剤が挙げられる。これらの中でも、剥離特性から、剥離剤はシリコーン系剥離剤を含むことが好ましい。また、生分解性の剥離剤、例えば、特開2002−212428号公報で開示されるような剥離剤も好ましく用いることができる。
【0067】
シリコーン系剥離剤の樹脂としては、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン等の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらは単独又は任意の2種以上を混合して用いることができる。また、シリコーン系剥離剤は、溶剤型、無溶剤型、エマルション型のいずれの形態でも用いることができるが、環境面の観点から、エマルション型又は無溶剤型が好ましい。
【0068】
剥離剤層13は、0.01μm以上10μm以下の厚みを有することが好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。
【0069】
剥離剤の目止め層12への塗布方法としては、特に限定はなく、例えば、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロッドブレードコータ、バーブレードコータ、グラビアコータ、バーコータ、多段ロールコータ等の各種塗工装置を適宜選択して使用することができる。
【0070】
本実施形態に係る剥離紙10の用途としては、特に限定されないが、例えば、粘着シート、粘着テープ、ラベルなどの粘着剤層の保護(粘着製品の粘着面の保護)が挙げられる。
【0071】
(粘着シート)
本実施形態の剥離紙10は、剥離剤層13の表面に粘着剤層を介して粘着シート用基材を貼合してなる粘着シートに用いることができる。粘着シートは、本発明の前述した剥離紙10の剥離剤層13の表面に、公知の方法によって粘着剤を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層の上に粘着シート用基材を貼合し、巻き取ることによって容易に製造することができる。
【0072】
本実施形態に係る粘着シート用基材としては、特に限定はなく、紙系の原料から構成されていてもよく、樹脂系の原料を主成分とする樹脂系フィルムから構成されていてもよい。樹脂系フィルムとしては、化石燃料由来の原料からなる樹脂フィルム、リサイクル樹脂からなる再生樹脂フィルム、バイオマス由来の樹脂からなるバイオマス樹脂フィルム等が挙げられる。粘着シート用基材としては、中でも、環境負荷を減らすという観点から、紙、リサイクル樹脂からなる再生樹脂フィルム又はバイオマス由来の樹脂からなるバイオマス樹脂フィルムが好ましく、紙又はバイオマス樹脂フィルムがより好ましい。紙系の粘着シート用基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙等の塗工紙、ホイル紙、カラー・ファンシー紙、含浸紙、セロハン、無塵紙等が挙げられる。樹脂フィルムに用いる樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリウレタンウレア、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ABS、ポリエステル系合成紙等が挙げられる。粘着シート用基材は、粘着シートとして使用する用途や環境により、適宜選択することができる。
【0073】
本実施形態に係る粘着剤層に用いる粘着剤としては、特に限定はなく、例えば、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリオレフィン系、ビニルエーテル系、又はバイオマス由来の材料を含むバイオマス粘着剤等が挙げられるが、環境負荷を減らすという観点から、中でもバイオマス粘着剤が好ましい。また、溶剤型粘着剤、エマルション型粘着剤、ホットメルト型粘着剤などの無溶剤型粘着剤、エネルギー線の照射により硬化して再剥離性となるエネルギー線硬化型粘着剤であってもよい。
また、本実施形態に係る粘着剤層に用いる粘着剤には、必要に応じて粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、填料、染料又は顔料などの着色剤などを配合することができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
本実施形態に係る粘着剤層は、粘着付与剤を含むことが好ましい。粘着付与剤としては、植物由来の樹脂であるロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含むことが好ましい。粘着付与剤が、植物由来の樹脂であるロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含むことによって、粘着剤層のバイオマス度が向上する。本実施形態に係る粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上であることが好ましい。粘着剤層のバイオマス度の上限は、大きいほど好ましいが、実用上、90%以下が好ましい。
【0074】
バイオマス粘着剤としては、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成されることが好ましい。また、エマルション型粘着付与剤の粘着付与樹剤は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、粘着剤層のバイオマス度が2.9%以上24.8%未満であることが好ましい。
【0075】
本実施形態の粘着シートは、シート状やテープ状やラベル状等の適宜な形態に成形して被着体の接着などの従来の粘着シートに準じた各種の用途に用いうる。以下、本実施形態の粘着シートを好適に適用可能な具体例を例示する。
【0076】
(ラベル用原紙及びラベル)
本実施形態の剥離紙10は、ラベル用原紙20に用いることができる。図3は、本発明による剥離紙10を用いたラベル用原紙20の一実施形態を示す模式断面図である。ラベル用原紙20は、剥離紙10と、粘着剤層21と、ラベル用基材22と、を有してなる。また、図示していないが、ラベル用基材22の表面には、ラベル用基材22の保護や退色防止のために、従来公知のラミネートフィルムを備えることもできる。
【0077】
さらに、本実施形態のラベル用原紙20は、剥離紙10と、粘着剤層21と、ラベル用基材22と、粘着剤層21と、剥離紙10とを有してなるものでもよい(図示しない)。上記と同様に、ラベル用基材22の表面には、ラベル用基材22の保護や退色防止のために、従来公知のラミネートフィルムを備えることもできる(図示しない)。
【0078】
本実施形態に係る粘着剤層21に用いる粘着剤としては、特に限定はなく、上述した粘着シートに用いる粘着剤と同様の粘着剤を用いることができるが、環境負荷を減らすという観点から、中でもバイオマス粘着剤が好ましい。バイオマス粘着剤としては、エマルション型粘着剤とエマルション型粘着付与剤とを含むエマルション型粘着剤組成物から形成されることが好ましい。また、粘着剤層21は粘着付与剤を含むことが好ましく、粘着付与剤としては、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、粘着剤層21のバイオマス度が1.0%以上であることが好ましい。
【0079】
粘着剤層21は、5μm以上200μm以下の乾燥厚みを有することが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。乾燥厚みが5μm未満であると、粘着力が不足したり、粘着剤層21の厚みを均一にすることが困難になる場合があったりする。一方、乾燥厚みが200μmを超えると、粘着剤塗布後の乾燥に時間を要したり、粘着剤がラベル用原紙20からはみ出し易くなり、生産効率が低下したりする。
【0080】
本実施形態に係るラベル用基材22としては、特に限定はなく、上述した粘着シート用基材に用いる基材と同様の基材を用いることができるが、環境負荷を減らすという観点から、中でも紙、リサイクル樹脂からなる再生樹脂フィルム又はバイオマス由来の樹脂からなるバイオマス樹脂フィルムが好ましく、紙又はバイオマス樹脂フィルムがより好ましい。ラベル用基材22は、ラベル用原紙20として使用する用途や環境により、適宜選択することができる。ラベル用基材22は、各種の印刷手段により表示や情報を印刷又は印字できる印刷用基材であることが好ましい。
【0081】
また、トナーやインク等の定着を良好とする観点から、ラベル用基材22の粘着剤層21とは反対側の表面上に、さらに、印刷受容層を有してもよい(図示しない)。
印刷受容層としては、例えば、種々の印字用コーティング剤を塗布することにより設けることができる。印字用コーティング剤としては、好ましくはアクリル樹脂又はポリエステル樹脂、あるいはそれらを併用した印字用コーティング剤が挙げられる。環境負荷を減らすという観点から、印字用コーティング剤としては、バイオマス由来の樹脂からなるコーティング剤であってもよい。
【0082】
さらに、ラベル用原紙20は、トナーやインク等を保護するために、ラベル用基材22又は印刷受容層の上にコーティング剤を塗布してもよい。用いるコーティング剤としては、特に限定はないが、環境負荷を減らすという観点から、中でもバイオマス由来のポリウレタン系樹脂やポリ乳酸系樹脂を好ましく用いることができる。
【0083】
また、本実施形態のラベル用原紙20を用いて、必要に応じてラベル用基材22に対する印刷や、ラベル用原紙20のハーフカット、裁断等の加工を行うことで、本実施形態に係るラベルを得ることができる。
プラスチックボトル、商品の表示を兼ねたラベル、ラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途では、環境意識の高まり及び省資源の面から、バイオマス樹脂の使用比率が高い材料が求められている。そのため、本実施形態の剥離紙10を使用した本実施形態のラベル用原紙20は、このような用途に特に適している。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。なお、%及び部は、特に断りのない限り、重量%及び重量部を表す。
【0085】
(参考例1)
坪量83g/m2のグラシン紙の片面に、バイオマスポリオレフィンとして、バイオマス由来のLLDPE(ブラスケム社製、商品名:SLL118、密度0.916g/cm3、MFR=1.0g/10分、バイオマス度87%)10重量%、化石燃料由来のLDPE(バイオマス度0%)を45重量%及び化石燃料由来のHDPE(バイオマス度0%)を45重量%の混合物を溶融押出法により、厚さ20μmのバイオマスポリオレフィン層(バイオマス度8.7%)を設けた。このバイオマスポリオレフィン層上に、シリコーン系剥離剤による厚さ0.5μmの剥離剤層を設け、剥離紙を得た。この剥離剤層上にアクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:PAT1)をキャスト法より、乾燥厚みが20μmとなるように塗布した。その後、ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を貼り合わせ、粘着シートを作成した。
【0086】
(参考例2)
坪量78g/m2の上質紙の両面に、バイオマスポリオレフィンとして、バイオマス由来LLDPE(ブラスケム社製、商品名:SLL118、密度0.916g/cm3、MFR=1.0g/10分、バイオマス度87%)10重量%、化石燃料由来LDPE(バイオマス度0%)を45重量%及び化石燃料由来HDPE(バイオマス度0%)を45重量%の混合物を溶融押出法により、厚さ20μmのバイオマスポリオレフィン層(バイオマス度8.7%)を設けた。このバイオマスポリオレフィン層上に、シリコーン系剥離剤による厚さ0.5μmの剥離剤層を設け、剥離紙を得た。この剥離剤層上にアクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:PAT1)をキャスト法より、乾燥厚みが20μmとなるように塗布した。その後、ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を貼り合わせ、粘着シートを作成した。
【0087】
(実施例1)
坪量83g/m2のグラシン紙の片面に、バイオマス樹脂として、脂肪族ポリエステル樹脂であるPBS(ポリブチレンサクシネート)(バイオマス由来のPBS(三菱ケミカル株式会社製、商品名:BioPBS FZ91、密度1.26g/cm3、MFR=5.0g/10分、バイオマス度50%))100重量%、を溶融押出法により、厚さ17μmのバイオマスPBS層を設けた。このバイオマスPBS層上に、シリコーン系剥離剤による厚さ0.5μmの剥離剤層を設けた。この剥離剤層上にアクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:PAT1)をキャスト法より、乾燥厚みが20μmとなるように塗布した。その後、ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を貼り合わせ、粘着シートを作成した。
【0088】
(実施例2)
坪量83g/m2のグラシン紙の片面に、バイオマス樹脂として、脂肪族ポリエステル樹脂であるPBSA(ポリブチレンサクシネート・アジペート)(バイオマス由来のPBS(三菱ケミカル株式会社製、商品名:BioPBS FD92、密度1.24g/cm3、MFR=4.0g/10分、バイオマス度35%))100重量%、を溶融押出法により、厚さ32μmのバイオマスPBS層を設けた。このバイオマスPBSA層上に、シリコーン系剥離剤による厚さ0.5μmの剥離剤層を設けた。この剥離剤層上に粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:PAT1)をキャスト法より、乾燥厚みが20μmとなるように塗布した。その後、ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を貼り合わせ、粘着シートを作成した。
【0089】
(参考例3)
参考例1のポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を、厚さ50μmのポリ乳酸系フィルム(三菱樹脂社製、商品名「エコロージュSA 50μm厚」脂肪族ポリエステル含有量95重量%以上)に変更したこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着シートを作成した。
【0090】
(参考例4)
参考例1のポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を、紙基材(厚さ80μm、坪量100g/m2の上質紙)に変更したこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着シートを作成した。
【0091】
(参考例5)
参考例1のポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂フィルム(厚さ50μm、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂の含有量:80重量%、非再生樹脂の含有量:20重量%)に変更したこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着シートを作成した。
【0092】
(参考例6)
参考例1の粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:PAT1)を、下記のエマルション型粘着剤に変更したこと以外は、参考例1と同様の方法により粘着シートを作成した。
【0093】
(エマルション型粘着剤の製造)
エマルション型粘着剤の製造には、攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下漏斗を備えた反応釜を用いた。反応釜において、イオン交換水55重量%を攪拌しながら80℃まで昇温した。そして、イオン交換水の温度が80℃に到達した段階で、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.1重量%を添加し、過硫酸アンモニウム水溶液を調製した。
また、過硫酸アンモニウム水溶液とは別に、アクリル酸2−エチルヘキシル60重量%、アクリル酸ブチル38重量%、及びアクリル酸2重量%と、アニオン系の反応性乳化剤(製品名「ニューフロンティアA−229E」、第一工業製薬株式会社製)1重量%と、中和のための25%アンモニウム水適当量と、過硫酸アンモニウム0.4重量%とを、イオン交換水43重量%に加えてミキサーで攪拌し、プレエマルションを得た。
【0094】
次いで、反応釜内の温度を80℃に保ちながら、過硫酸アンモニウム水溶液にプレエマルションを2時間かけて滴下した。そして、プレエマルションの滴下が完了してから1時間経過時及び2時間経過時に過硫酸をそれぞれ1重量%ずつ添加して、重合反応を完結させることにより、アクリル系エマルション粘着剤を製造した。
次いで、製造したアクリル系エマルション型粘着剤100重量%(固形分換算)に対して、エマルション型粘着付与剤1(製品名「ハリエスター」、品番「SK−218NS」、ハリマ化成グループ株式会社製、粘着付与樹脂:ロジン樹脂、粘着付与樹脂の軟化点:100℃)を10重量%(固形分換算)、エマルション型粘着付与剤2(製品名「スーパーエステル」、品番「E−730−55」、荒川化学工業株式会社製、粘着付与樹脂:ロジン樹脂、粘着付与樹脂の軟化点:125℃)を0.5重量%(固形分換算)、及びエマルション型粘着付与剤3(製品名「スーパーエステル」、品番「E−788」、荒川化学工業株式会社製、粘着付与樹脂:ロジン樹脂、粘着付与樹脂の軟化点:160℃)を2.5重量%(固形分換算)混合し、エマルション型粘着剤組成物を調製した。
【0095】
(比較例1)
坪量83g/m2のグラシン紙の片面に、化石燃料由来LDPEを50重量%及び化石燃料由来HDPEを50重量%の混合物を溶融押出法により、厚さ20μmのポリオレフィン層を設けた。このポリオレフィン層上に、シリコーン系剥離剤による厚さ0.5μmの剥離剤層を設けた。この剥離剤層上に粘着剤(リンテック株式会社製、商品名:PAT1)をキャスト法より、乾燥厚みが20μmとなるように塗布した。その後、ポリプロピレン系合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション社製、商品名:SGS−80)を貼り合わせ、サンプルを作成した。この剥離紙のポリオレフィン層のバイオマス度は0%であった。
【0096】
〈剥離評価〉
各粘着シートから粘着シート用基材と粘着剤層との積層体を剥離した。剥離紙が破断せずに積層体が剥がせた場合を○、剥離紙が破断した場合を×とした。実施例1〜2、参考例1〜6及び比較例1で得られた結果を表1に示す。
【0097】
【表1】



【0098】
表1から明らかなように、バイオマスポリオレフィンを用いた参考例1、グラシン紙の代わりに上質紙を用いた参考例2、バイオマスポリオレフィンの代わりに生分解性樹脂を用いた実施例1及び2、ポリプロピレン系合成紙の代わりにそれぞれポリ乳酸フィルム、紙、メカニカルリサイクルポリエステル樹脂フィルムを用いた参考例3〜5、アクリル系粘着剤の代わりにバイオマス型粘着剤を用いた参考例6は、いずれも化石燃料由来ポリオレフィンを用いた比較例1と同等の優れた剥離性を示した。
よって、本発明に係る剥離紙は、従来のものと遜色のない剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベルを提供することができる。
【0099】
以上、本発明について、実施形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態及び実施例の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態及び実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0100】
10 剥離紙
11 紙基材
12 目止め層
13 剥離剤層
14 化石燃料由来のポリオレフィン層
20 ラベル用原紙
21 粘着剤層
22 ラベル用基材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
紙基材と、
前記紙基材の片面又は両面に、生分解性樹脂を含む目止め層と、
前記目止め層の少なくとも一方に剥離剤層と、
を備える、ラベル用原紙に用いる剥離紙であり、
前記目止め層が、前記生分解性樹脂を前記目止め層全体に対して100重量%含み、
前記生分解性樹脂が、バイオマス度が35%以上50%以下であるポリブチレンサクシネート系樹脂であり、
前記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、バイオマス由来のポリブチレンサクシネート又はバイオマス由来のポリブチレンサクシネート・アジペートであり、
前記目止め層の厚さは、17μm以上32μm以下であり、
前記剥離剤層がシリコーン系剥離剤を含むことを特徴とする剥離紙。
【請求項10】
前記シリコーン系剥離剤が、エマルション型又は無溶剤型のシリコーン系剥離剤であることを特徴とする請求項9に記載の剥離紙。
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
(削除)
【請求項15】
請求項9又は10に記載の剥離紙と、粘着剤層と、ラベル用基材と、を有してなることを特徴とするラベル用原紙。
【請求項16】
前記粘着剤層がバイオマス粘着剤を含むことを特徴とする請求項15に記載のラベル用原紙。
【請求項17】
前記バイオマス粘着剤は、粘着付与剤を含み、前記粘着付与剤は、ロジン樹脂及びテルペン樹脂から選択される1種以上を含み、前記粘着剤層のバイオマス度が1.0%以上であることを特徴とする、請求項16に記載のラベル用原紙。
【請求項18】
前記ラベル用基材は、紙又はバイオマス樹脂フィルムであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載のラベル用原紙。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載のラベル用原紙を用いたことを特徴とするラベル。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-11-11 
出願番号 P2020-517612
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B32B)
P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 稲葉 大紀
井上 茂夫
登録日 2020-07-28 
登録番号 6740507
権利者 リンテック株式会社
発明の名称 剥離紙、並びにそれを用いた粘着シート、ラベル用原紙及びラベル  
代理人 弁理士法人坂本国際特許商標事務所  
代理人 弁理士法人坂本国際特許商標事務所  

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