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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B60K |
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管理番号 | 1393985 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-10-01 |
確定日 | 2022-12-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6899954号発明「一体型電気駆動動力アセンブリ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6899954号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、〔5〜9〕について訂正することを認める。 特許第6899954号の請求項3ないし9に係る特許を維持する。 特許第6899954号の請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6899954号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜9に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)6月11(優先権主張外国庁受理 2018年6月12日 中国(CN))を国際出願日とする出願であって、令和3年6月17日にその特許権の設定登録がされ、令和3年7月7日に特許掲載公報が発行された。その後、令和3年10月1日に特許異議申立書が提出され、特許異議申立人馬場勝久(以下、「異議申立人」という。)から本件特許の請求項1〜9に係る特許について特許異議の申立てがあったものである。 その後の本件異議申立事件に関する手続の経緯は次のとおりである。 令和 4年 3月30日付け 取消理由通知 同年 6月29日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 8月10日 異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 令和4年6月29日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである。 なお、下線部は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項3に 「前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離している、 ことを特徴とする請求項2に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。」 と記載されているのを、 「モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする一体型電気駆動動力アセンブリ。」 に訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5に 「前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする請求項4に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。」 と記載されているのを、 「モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており、 前記主軸の両端には、左端ベアリングと右端ベアリングがそれぞれ設けられており、前記左端ベアリングが前記ギアボックスの後ケースに固定的に取り付けられ、前記後ケースには、それに対応してベアリングシートが設けられており、前記右端ベアリングが前記モータの前端カバーに固定的に取り付けられ、前記前端カバーには、それに対応してベアリングシートが設けられており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする一体型電気駆動動力アセンブリ。」 に訂正する。 請求項5の記載を引用する請求項6〜9も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項3の記載に 「モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、」(以下、「訂正事項1−1」という。) との事項を付加し、訂正前の請求項1及び2の記載を引用する記載であったのを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の記載に改め、さらに、 「前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている」(以下、「訂正事項1−2」という。) との事項を付加し、ギアボックスの構造を限定するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」及び第4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、訂正事項1−1は、訂正前の請求項1及び2に記載された事項であり、訂正事項1−2は、訂正前の請求項5に記載された事項、または段落【0033】の記載から導き出せる事項であるので、訂正事項1は願書に添付した明細書または特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 そして、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項5が請求項1〜4の記載を引用する形式であったのを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の記載に改めるものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、訂正事項2は、請求項5の記載を独立形式に改めたものであり、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3及び4 訂正事項3は訂正前の請求項1を削除する訂正であり、訂正事項4は訂正前の請求項2を削除する訂正であり、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 そして、訂正事項3及び4は、請求項1及び2を削除する訂正であるので、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 3.一群の請求項及び別の訂正単位とする求め 訂正前の請求項1〜9について、請求項2〜9は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、請求項1〜9は一群の請求項であり、上記訂正事項1〜4は、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。 そして、特許権者は、訂正後の請求項5〜9について、これらの請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 4.特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件において、訂正前の全ての請求項1〜9について特許異議の申立てがされているので、「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正事項1により訂正された訂正後の請求項3及び4に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 また、訂正事項3及び4により削除された請求項1及び2に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 5.小括 以上のとおりであるので、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、〔5〜9〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1〜9に係る発明(以下「本件発明1〜9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項4】 前記主軸の両端には、左端ベアリングと右端ベアリングがそれぞれ設けられており、前記左端ベアリングが前記ギアボックスの後ケースに固定的に取り付けられ、前記後ケースには、それに対応してベアリングシートが設けられており、前記右端ベアリングが前記モータの前端カバーに固定的に取り付けられ、前記前端カバーには、それに対応してベアリングシートが設けられている、 ことを特徴とする請求項3に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項5】 モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており、 前記主軸の両端には、左端ベアリングと右端ベアリングがそれぞれ設けられており、前記左端ベアリングが前記ギアボックスの後ケースに固定的に取り付けられ、前記後ケースには、それに対応してベアリングシートが設けられており、前記右端ベアリングが前記モータの前端カバーに固定的に取り付けられ、前記前端カバーには、それに対応してベアリングシートが設けられており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項6】 前記パーキングギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記パーキングギアのボスは、その右端面が前記ブッシュを押し付けており、左端面が前記左端ベアリングの内輪によって押し付けられている、 ことを特徴とする請求項5に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項7】 前記主軸の左端には、前記左端ベアリングの内輪を押し付けるロックナットが設けられている、 ことを特徴とする請求項6に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項8】 前記ギアボックスには、二段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが前記モータに近づいており、二段目のギアペアが前記一段目のギアペアの左側に位置し、該二段目のギアペアは、噛合伝動する第三のギアと第四のギアを含み、前記第三のギアが前記中間軸と一体に形成され、前記第四のギアが差動装置に固定的に取り付けられており、前記差動装置がアクスルに連結される、 ことを特徴とする請求項5に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項9】 前記中間軸の両端にそれぞれベアリングが設けられており、前記ギアボックスの前ケース及び後ケースには、それに合わせてベアリングシートが設けられており、 前記ギアボックスの前ケースにおいて、前記軸孔にベアリングシート及びシール溝が設けられており、前記シール溝が前記ベアリングシートの右側に位置し、前記中間ベアリングが前記ベアリングシートに取り付けられ、前記オイルシールが前記シール溝に取り付けられており、前記ベアリングシートとシール溝との間には、前記中間ベアリングの右側の位置を規制する第一の段差部が設けられ、前記シール溝の右側には、前記オイルシールの右側の位置を規制する第二の段差部が設けられており、前記軸孔の左側端面には、前記中間ベアリングの外輪を押し付けて軸方向で位置を規制するプレス板がボルトによって固定的に取り付けられている、 ことを特徴とする請求項8に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。」 第4 特許異議申立理由、及び、取消理由通知に記載した取消理由について (1)特許異議申立理由の概要 異議申立人が特許異議申立書で主張する、訂正前の請求項1〜9に係る発明に対する特許異議申立理由は、概略次のとおりである。 〔進歩性〕本件特許の請求項1〜9に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明、及び、甲第3〜7号証に記載された事項に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 〔甲各号証一覧〕 甲第1号証:特開2018−62314号公報 項第2号証:特開2017−61994号公報 項第3号証:中国特許出願公開第104377881号明細書 甲第4号証:実願昭55−88358号(実開昭57−11363号)のマイクロフィルム 甲第5号証:国際公開第2011/007602号 甲第6号証:実願平1−11228号(実開平2−102053号)のマイクロフィルム 甲第7号証:特開平9−226394号公報 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1〜4に係る特許に対して、当審が令和4年3月30日付けで特許権者に通知した取消理由は、概略次のとおりである。 〔進歩性〕本件特許の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 〔引用文献一覧〕 引用文献1:特開2018−62314号公報 引用文献2:特開2017−61994号公報 引用文献3:中国特許出願公開第104377881号明細書 なお、引用文献1〜3は、異議申立人が提出した甲第1〜3号証である。 (3)引用文献及び甲各号証に記載された事項、引用発明 (3−1)引用文献1に記載された事項及び引用発明1 引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は、インホイールモータ駆動装置に関する。」 イ 「【0019】 図1に示すように、インホイールモータ駆動装置10は、駆動力を発生させるモータ部21と、このモータ部21の回転を減速して出力する減速部31と、この減速部31からの出力を駆動輪に伝える車輪ハブ軸受部11とを備えている。・・・」 ウ 「【0024】 モータ部21は、モータ回転軸22、ロータ23、ステータ24、およびモータケーシング25を有し、この順序でモータ部21の軸線Mから外径側へ順次配置される。・・・」 エ 「【0025】 ・・・モータ回転軸22の両端部は、転がり軸受27,28を介して、モータケーシング25に回転自在に支持される。・・・」 オ 「【0026】 減速部31は、3軸の平行軸歯車減速機であって、外輪13の外周面に同軸に設けられる出力歯車36と、モータ部21のモータ回転軸22と同軸に結合する入力歯車32と、入力歯車32から出力歯車36へ回転を伝達する複数の中間歯車である第1中間歯車33と第2中間歯車35と、これらの歯車を収容する本体ケーシング38とを有する。 【0027】 入力歯車32は小径の外歯歯車であり、軸線Mに沿って配置される軸部32sの軸線方向一方端部外周(当審注:「軸線方向他方端部外周」の誤記と認める。)に形成される多数の歯である。軸部32sの軸線方向他方端部外周は、モータ回転軸22の軸線方向一方端部と相対回転不可能に嵌合する。軸部32sは入力歯車32の両端側で、転がり軸受32m,32nを介して、本体ケーシング38に回転自在に支持される。本実施の形態の本体ケーシング38は、互いに平行に延びる軸線O、M、Rを取り囲むように減速部31および車輪ハブ軸受部11を覆うとともに、減速部31の軸線方向両側を覆う。軸部32sは減速部31の入力軸を構成する。本体ケーシング38の軸線方向一方端面は、ブレーキロータと対向する。本体ケーシング38の軸線方向他方端面は、モータケーシング25と結合する。モータケーシング25は本体ケーシング38に附設されて、本体ケーシング38から軸線方向他方側へ突出する。本体ケーシング38は、減速部31の全ての回転要素(軸および歯車)を収容する。つまり、本体ケーシング38は、減速部31を内部に収容する。 【0028】 小径の入力歯車32は、大径の外歯歯車になる第1中間歯車33と噛合する。第1中間歯車33は中間軸34によって小径の外歯歯車になる第2中間歯車35と同軸に結合する。中間軸34の両端部は、転がり軸受34m,34nを介して、本体ケーシング38に回転自在に支持される。第1中間歯車33および第2中間歯車35は、転がり軸受34mと転がり軸受34nとの間に配置され、互いに隣接する。本実施形態では、第1中間歯車33と中間軸34が一体に形成され、第2中間歯車35が中間軸34の外周に相対回転不可能に嵌合する。中間軸34の中心を通る軸線Rは、車輪ハブ軸受部11の軸線Oと平行に延びる。これにより減速部31は、車輪ハブ軸受部11からオフセットして配置される。小径の第2中間歯車35は大径の出力歯車36と噛合する。軸線O,R,Mの位置関係は図2に示すとおりである。減速部31は、互いに平行に延びる軸線O,R,Mを有する平行3軸式歯車減速機である。」 カ 「【0032】 本実施の形態の減速部31は、互いに平行に延びる第1軸A1と、第2軸A2と、第3軸A3とからなる3軸の歯車軸を含んでいる。第1〜3軸A1〜A3は、伝達要素である。第1軸A1は、モータ部21の回転軸であるモータ回転軸22と結合され、減速部31の入力軸である。第2軸A2は、第1軸A1の回転を減速して第3軸A3に伝え、減速部31の中間軸である。なお、図1では中間軸は第2軸(1つ)であるが、本発明の中間軸は複数であってもよい。第3軸A3は、車輪ハブ軸受部11の車輪ハブである内輪12と結合され、減速部31の出力軸である。」 キ 「【0033】 本実施の形態のインホイールモータ駆動装置10は、図1及び図2に示すように、パークロック機構50を備えている。パークロック機構50は、パークギア51と、パークポール52と、移動部材としてのパークカム54とを主に含んでいる。以下、パークロック機構50について図1〜図3を参照して説明する。 【0034】 パークギア51は、第1軸A1に取り付けられている。図1では、パークギア51は、軸部32sの外周に嵌合して設けられている。このような嵌合は、例えばスプライン嵌合である。パークギア51は、歯車の歯底面を有する凹部51aを含んでいる。」 上記記載事項及び図1の記載からみて、引用文献1には以下の事項が記載されていると認められる。 ク 図1から、モータ部21のモータ回転軸22と減速部31の軸部32sとは相対回転不可能に嵌合され、インホイールモータ駆動装置10の主軸を構成していると認められる。 ケ 上記オ段落【0026】の「減速部31は、3軸の平行軸歯車減速機であって、・・・これらの歯車を収容する本体ケーシング38とを有する。」との記載、及び、図1からパークギア51は本体ケーシング38内に設けられていることを看取しうることから、パークギア51は減速部31内に設けられていると認められる。 コ 上記オ段落【0027】の「軸部32sの軸線方向他方端部外周は、モータ回転軸22の軸線方向一方端部と相対回転不可能に嵌合する。」との記載から、軸部32sのモータ回転軸22側が軸線方向他方側で、軸部32sの反対側(モータ回転軸22から離れた側)が軸線方向一方側と認められ、図1の記載から、入力歯車32は軸部32sの軸線方向他方側でモータ部21に隣接して形成され、パークギア51は軸部32sの軸線方向一方側に位置していると認められる。 サ 上記オ段落【0027】の「軸部32sは入力歯車32の両端側で、転がり軸受32m,32nを介して、本体ケーシング38に回転自在に支持される。」「本体ケーシング38の軸線方向他方端面は、モータケーシング25と結合する。モータケーシング25は本体ケーシング38に附設されて、本体ケーシング38から軸線方向他方側へ突出する。・・・本体ケーシング38は、減速部31を内部に収容する。」との記載に照らせば、図1から、本体ケーシング38には軸孔が設けられ、軸孔には転がり軸受32nが取り付けられ軸部32sを支持していることを看取できる。 シ 図1から、減速部31には中間軸34が設けられていることを看取できる。 以上の記載事項及び認定事項からみて、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明1〕 「モータ部21と減速部31とを備え、前記モータ部21のモータ回転軸22の軸線方向一方端部と前記減速部31の入力軸を構成する入力歯車32の軸部32sの軸線方向他方端部外周とが相対回転不可能に嵌合され、インホイールモータ駆動装置10の主軸を構成しており、前記減速部31内にパークギア51が設けられ、前記パークギア51が前記軸部32sの外周に嵌合して設けられており、 前記減速部31には、入力歯車32と噛合する第1中間歯車33、及び、第2中間歯車35と噛合する出力歯車36を有し、前記入力歯車32が前記軸部32sの軸線方向他方側外周に形成されて前記モータ部21に隣接し、前記パークギア51が前記軸部32sの軸線方向一方側に位置しており、 前記モータ部21のモータケーシング25と前記減速部31を収容する本体ケーシング38とは結合し、前記本体ケーシング38には軸孔が設けられており、 前記軸孔には転がり軸受32nが取り付けられ前記軸部32sを支持しており、 前記減速部31には中間軸34が設けられており、前記入力歯車32と噛合する前記第1中間歯車33は前記中間軸38に一体に形成されている、 インホイールモータ駆動装置10。」 (3−2)引用文献2に記載された事項および引用発明2 引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア 「【0019】 以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。 図1に示す2モータ車両駆動装置Aは、2基の減速機2L、2Rを左右並列に収容する減速機ケーシング20を中央にし、その減速機ケーシング20の左右に2基の電動モータ1L、1Rのモータケーシング3L、3Rを固定配置したものである。」 イ 「【0026】 2モータ車両駆動装置Aにおける左右の電動モータ1L、1Rは、図1に示すように、モータケーシング3L、3R内に収容されている。」 ウ 「【0029】 ロータ12は、モータ軸12aを中心部に有し、そのモータ軸12aはモータケーシング本体3aL、3aRの内側壁3cL、3cRの開口部からそれぞれ減速機2L、2R側に引き出されている。モータケーシング本体3aL、3aRの開口部とモータ軸12aとの間にはシール部材13が設けられている。」 エ 「【0032】 減速機ケーシング20の側面ケーシング20bL、20bRのアウトボード側(車体外側)の側面と電動モータ1L、1Rのモータケーシング本体3aL、3aRの内側壁3cL、3cRとを、複数のボルト29によって固定することにより、減速機ケーシング20の左右に2基の電動モータ1L、1Rが固定配置される(図1)。 ・・・ 【0034】 減速機2L、2Rは、図1に示すように、左右対称形に設けられ、モータ軸12aから動力が伝達される入力歯車23aを有する入力歯車軸23と、この入力歯車23aに噛み合う大径歯車24aと出力歯車25aに噛み合う小径歯車24bを有する中間歯車軸24と、出力歯車25aを有し、減速機ケーシング20から引き出されて等速ジョイント15、中間シャフト16(図5)を介して駆動輪に駆動力を伝達する出力歯車軸25とを備える平行軸歯車減速機である。左右2基の減速機2L、2Rの各入力歯車軸23、中間歯車軸24、出力歯車軸25は、それぞれ同軸上に配置されている。 【0035】 減速機2L、2Rの入力歯車軸23の両端は、中央ケーシング20aの仕切り壁21の左右両面に形成した軸受嵌合穴27aと側面ケーシング20bL、20bRに形成した軸受嵌合穴27bに転がり軸受28a、28bを介して回転自在に支持されている。 【0036】 入力歯車軸23のアウトボード側の端部は、側面ケーシング20bL、20bRに設けた開口部27cから外側に引き出されており、開口部27cと入力歯車軸23の外側端部との間にはオイルシール31を設け、減速機2L、2Rに封入された潤滑油の漏洩および外部からの泥水などの浸入を防止している。 【0037】 入力歯車軸23は中空構造であり、この中空の入力歯車軸23に、モータ軸12aが挿入される。入力歯車軸23とモータ軸12aとは、スプライン(セレーションも含む以下同じ)結合されている。 【0038】 中間歯車軸24は、外周面に入力歯車23aに噛み合う大径歯車24aと出力歯車25aに噛み合う小径歯車24bを有する段付き歯車軸である。この中間歯車軸24の両端は、中央ケーシング20aの仕切り壁21の両面に形成した軸受嵌合穴32と側面ケーシング20bL、20bRに形成した軸受嵌合穴33とに転がり軸受34a、34bを介して支持されている。 【0039】 出力歯車軸25は、大径の出力歯車25aを有し、中央ケーシング20aの仕切り壁21の両面に形成した軸受嵌合穴35と側面ケーシング20bL、20bRに形成した軸受嵌合穴36に転がり軸受37a、37bによって支持されている。」 オ 「【0045】 この発明の車両駆動装置Aは、2基の減速機2L、2Rを左右並列に収容する減速機ケーシング20を中央にし、その減速機ケーシング20の左右に2基の電動モータ1L、1Rのモータケーシング3L、3Rを固定配置している。そして、パーキングロック機構40は、中央に配置される減速機ケーシング20に収容される左右の減速機2L、2Rの入力歯車軸23にそれぞれ設けている。パーキングロック機構40は、車両が停車しているときに、駆動輪である前輪52をロックさせる構成となっている。 【0046】 パーキングロック機構40は、パーキングギア41、パーキングポール42、パーキングロッド44等を備える(図3)。左右の減速機2L、2Rの入力歯車軸23のインボード側に、入力歯車軸23と一体に回転するパーキングギヤ41を設ける。・・・」 上記記載事項及び図1の記載から、引用文献2には以下の事項が記載されていると認められる。 カ 図1から、入力歯車軸23とモータ軸12aとは、2モータ車両駆動装置Aの主軸を構成していると認められる。 キ 上記エ段落【0032】の記載及び図1の記載から、入力歯車23aは入力歯車軸23のアウトボード側に形成され減速機ケーシング20の側面ケーシング20bL、20bRと電動モータ1L、1Rのモータケーシング本体3aL、3aRとを介在して電動モータ1L、1Rと隣接していると認められる。 以上の記載事項及び認定事項からみて、引用文献2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 〔引用発明2〕 「電動モータ1L、1Rと減速機2L、2Rとを配置し、前記電動モータ1L、1Rのモータ軸12aと前記減速機2L、2Rの入力歯車23aを有する入力歯車軸23とがスプライン結合され、2モータ車両駆動装置Aの主軸を構成しており、前記減速機2L、2Rの減速機ケーシング20内にパーキングギヤ41が設けられ、前記パーキングギヤ41が前記入力歯車軸23と一体に回転するように設けられており、 前記減速機2L、2Rは、入力歯車23aに噛み合う大径歯車24aと、小径歯車24bに噛み合う出力歯車25aとを有する中間歯車軸24を備え、前記入力歯車23aが前記入力歯車軸23のアウトボード側に形成され減速機ケーシング20の側面ケーシング20bL、20bRと電動モータ1L、1Rのモータケーシング本体3aL、3aRとを介在して前記電動モータ1L、1Rに隣接し、前記パーキングギヤ41が前記入力歯車軸23のインボード側に、前記入力歯車軸23と一体に回転するよう設けられた、 2モータ車両駆動装置A。」 (3−3)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、翻訳は、異議申立人が甲第3号証に添付した訳文を基に当審で作成した。 ア (翻訳: [0020] 図4に示すように、新エネルギ車用一体化駆動装置は、ハウジング1、駆動モータ、減速機、ディファレンシャルから成る。駆動モータはモータ固定子2、モータロータ3、モータ端部カバー4、モータ軸受5、モータ背面カバープレート6、レゾルバ7、モータ軸8、モータ軸オイルシール9を含み、減速機は第1軸歯車20、第1段減速歯車18、中間軸17、第2段減速歯車13、第1軸ベアリング19、中間軸ベアリング10及び減速機キャップ21を含み、ディファレンシャルはデフケース11、サイドギア14、出力軸軸受12、半軸オイルシール15を含み、ハウジング1は駆動モータ、ディファレンシャルと減速機を共通使用したハウジングとし、減速機キャップ21とモータ端部カバー4はそれぞれボルトによってハウジング1の両端に固定的に接続する。この一体化駆動装置は1個のパーキングギア16を含む。 [0021] ハウジング1はモータ室と減速機室に分けられ、モータ室と減速機室の間でオイルシール9によって密封し、減速機の潤滑油はモータに影響を生じさせない。減速機とディファレンシャルは減速機室内に設置して、駆動モータは主にモータ室内に設置し、駆動モータのモータ軸8はモータ室を通って減速機室に入る。) イ 図4から、モータ軸8は減速機の入力軸として一体に形成されていることを看取しうる。 ウ 図4から、ハウジング1には駆動モータと減速機との間を仕切る壁が形成されており、当該壁にモータ軸8が通る孔が設けられていることを看取しうる。 エ 図4から、当該孔に軸受とモータ軸オイルシール9が設けられていることを看取しうる。 オ 図4から、モータ軸8の両端をモータ端部カバー4に設けたモータ軸受5と減速機キャップ21に設けた第1軸ベアリング19で支持することを看取しうる。 (3−4)甲第4号証に記載された事項 甲第4号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア 「シヤフト3にはさらにスプライン3aを介して摺動ギヤ7および8が軸方向に摺動自在なるように軸支されている。」(5頁7〜9行) イ 「摺動ギヤ7又は8のスプライン孔72はその摺動中心と噛合中心とが一致するような巾にしてあり、そのためにスプライン孔72の側部にヌスミ孔73が穿設されている。このヌスミ孔73に対し内径D3を有するブツシユ74が挿入固定されている。内径D3はスプライン孔72の大径Dと同径以下でかつシヤフト3のスプライン3aの外径D4よりも大であるように加工されている。」(6頁6〜14行) (3−5)甲第5号証に記載された事項 甲第5号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア 「ギヤ機構44は、入力軸42上に一体形成された第1ギヤ47と、この第1ギヤ47と噛み合うとともに第1ギヤ47よりも径が大きく、かつ、歯数も多い第2ギヤ48とを備える歯車対である。第2ギヤ48は、出力軸46にスプライン圧入などによって固定されている。また、出力軸46には、出力ギヤOGが一体形成されており、ディファレンシャル装置50のリングギヤRGが噛み合っている。」(8頁3〜7行) イ 「パーキング装置20は、図1および図2に示すように、減速装置40の入力軸42にスプライン圧入などによって固定されたパーキングギヤ22と、減速装置40の入力軸42と平行に配置されたポールシャフト24に回転可能に支持されたパーキングポール26と、ケース3から立設されパーキングポール26の先端部と当接してパーキングポール26の回動を規制するストッパーピン23と、板バネ28を介してパーキングポール26に接続された直動式アクチュエータ30とを備える。」(8頁11〜16行) ウ FIG.1から、パーキングギヤ22、第1ギヤ47、第2ギヤ48及び出力ギヤOGのボスの端面がベアリングの内輪を押し付けていることを看取できる。 (3−6)甲第6号証に記載された事項 甲第6号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 ア 「ここで、図示右側よりワツシヤ13を挿入し、ナツト14を締めつけることにより、歯車部11aと軸嵌合部11bがテーパ部11c,11dを介して摩擦力で締結され、また、軸嵌合部11bは図示されないキー又はスプラインにより回転軸12の端部12aに締結され、タイミングギヤ全体として回転軸12に締結されている。」 イ 第5図から、回転軸27の右端にベアリング、歯車、ナットが順に設けられ、ナットは歯車のボスをベアリングの内輪に押し付けていることを看取できる。 (3−7)甲第7号証に記載された事項 甲第7号証には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 「【0015】ギヤ部9は、上記モータ1のロータシャフト2の回転を減速し、トルク増幅して、同方向回転として車輪に伝達すべく、カウンタギヤ機構とディファレンシャル機構とから構成されている。カウンタギヤ機構は、両端をベアリングを介してギヤケース90に支持されたカウンタ軸93と、該軸の一端側に固定され、モータ1のロータシャフト2の一端に固定された出力歯車91に噛み合う大径の歯車92と、カウンタ軸93の他端側に一体に形成された小径の歯車94とから構成されている。また、ディファレンシャル機構は、周知のベベルギヤからなる差動ギヤと、それを収容するデフケース96と、該ケース96に固定されて、上記歯車94に噛み合うリングギヤ95とから構成されており、デフケース96の両端は、ベアリングを介してギヤケース90に支持されている。そして、デフケース96内の差動ギヤはユニバーサルジョイントを介して、図示しない左右の車軸に連結されている。」 (4)当審の判断 (4−1)本件発明3 ア 引用発明1を主引用例として 本件発明3と引用発明1とを対比する。 後者の「モータ部21」、「減速部31」、「備え」は、前者の「モータ」、「ギアボックス」、「含み」にそれぞれ相当する。 後者の「モータ部21のモータ回転軸22」は、前者の「モータの出力軸」に相当し、後者の「減速部31の入力軸を構成する入力歯車32の軸部32s」は、前者の「ギアボックスの入力軸」に相当する。 後者の「モータ部21のモータ回転軸22の軸線方向一方端部と減速部31の入力軸を構成する入力歯車32の軸部32sの軸線方向他方端部外周とが相対回転不可能に嵌合」されることは、モータ回転軸22と軸部32sとが一体となって回転するよう結合されているといえるので、前者の「モータの出力軸とギアボックスの入力軸とが一体に形成」されることと、「モータの出力軸とギアボックスの入力軸とが一体的に結合され」ている限りにおいて一致する。 後者の「インホイールモータ駆動装置10」は、前者の「動力アセンブリ」、「一体型電気駆動動力アセンブリ」に相当する。 後者のモータ回転軸22と入力歯車32の軸部32sとからなる「インホイールモータ駆動装置10の主軸」は、前者のモータの出力軸とギアボックスの入力軸とからなる「動力アセンブリの主軸」に相当する。 後者の「パークギア51」は、前者の「パーキングギア」に相当する。 後者の「パークギア51が軸部32sの外周に嵌合して設けられ」ていることは、軸部32sが主軸を構成していることからみて、前者の「パーキングギアが主軸に固定的に取り付けられて」いることに相当する。 後者の「入力歯車32と噛合する第1中間歯車33」、「第2中間歯車35と噛合する出力歯車36」は、前者の「伝動ギアペア」に相当するとともに「数段の伝動ギアペア」を構成し、後者の「有し」は、前者の「設けられており」に相当する。 後者の「入力歯車32が軸部32s」「に形成され」ることは、入力歯車32が主軸を構成する軸部32sに形成されてモータ回転軸22の動力を伝道する最初の伝動ギアペアを構成するものであることから、前者の「一段目のギアペアが、主軸に連結される」ことに相当する。 前者の「右側」、「左側」とは、図1の記載に基づいて、主軸18のモータ側を「右側」とし、ギアボックス側を「左側」としていると認められる。そうすると、後者の「軸部32sの軸線方向他方側」は、前者の「右側」に相当し、後者の「軸部32sの軸線方向一方側」は、前者の「左側」に相当する。 後者の「入力歯車32が軸部32sの軸線方向他方側外周に形成されてモータ部21に隣接し」ていることは、入力歯車32が軸部32sの軸線方向他方側の最もモータ部21側に設けられていることといえるので、前者の「一番右側の一段目のギアペアが」「モータに隣接し」ていることに相当する。 後者の「パークギア51が入力歯車32の軸部32sの軸線方向一方側に位置している」ことは、前者の「パーキングギアが一段目のギアペアの左側に位置している」ことに相当する。 後者の「モータ部21のモータケーシング25」、「減速部31を収容する本体ケーシング38」は、前者の「モータの後端カバー」、「ギアボックスの前ケース」にそれぞれ相当し、後者の「モータ部21のモータケーシング25と減速部31を収容する本体ケーシング38とは結合」することは、前者の「モータの後端カバーとギアボックスの前ケースとが一体に形成され」ることに相当する。 後者の「体ケーシング38には軸孔が設けられて」いることは、前者の「前ケースに軸孔が設けられて」いることに相当する。 後者の「軸孔には転がり軸受32nが取り付けられ」ていることは、前者の「軸孔には、中間ベアリング」「が取り付けられて」いることに相当し、後者の「転がり軸受32nが」「軸部32sを支持して」いることは、軸部32sが主軸を構成するものであるので、前者の「中間ベアリングが主軸を支持して」いることに相当する。 後者の軸孔の転がり軸受32nが主軸を構成する軸部32sを支持する構成は、主軸が軸孔を通る構成であるので、後者は、前者の「主軸が軸孔を通ってギアボックス内に入り」との構成を備えている。 後者の「中間軸34」は、前者の「中間軸」に相当する。 後者の「入力歯車32」と「第1中間歯車33」とは、噛合するものであるので、前者の「噛合伝動する第一のギアと第二のギア」に相当し、前者の「一段目のギアペア」を構成している。 後者の「入力歯車32」は、軸部32sを備えるものであるので、前者の「第一のギアがスプラインで主軸に連結され」ることと、「第一のギアが主軸に連結され」る限りにおいて一致する。 後者の「第1中間歯車33は中間軸38に一体に形成されている」ことは、前者の「第二のギアがスプラインで中間軸に連結され」ることと、「第二のギアが中間軸に連結され」る限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりといえる。 〔一致点1〕 「モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体的に結合され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアが前記主軸に連結され、前記第二のギアが前記中間軸に連結されている、 一体型電気駆動動力アセンブリ。」 〔相違点1−1〕 「動力アセンブリの主軸」に関し、本件発明3は、モータの出力軸とギアボックスの入力軸とが「一体に形成され」たものであるのに対して、引用発明1は、モータ部21のモータ回転軸22と減速部31の入力軸を構成する入力歯車32の軸部32sとが「相対回転不可能に嵌合され」たものである点。 〔相違点1−2〕 本件発明3は、軸孔に「オイルシール」が取り付けられており、「前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離して」いるのに対し、引用発明1は、オイルシールを備えていない点。 〔相違点1−3〕 本件発明3は、第一のギア及び第二のギアが主軸及び中間軸へ「スプライン」で連結され、「前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられ」ているのに対し、引用発明1は、入力歯車32が軸部32sに形成され、第1中間歯車33は中間軸38に一体に形成されており、入力歯車32及び第1中間歯車33は、一方の端面にベアリングの内輪を押すボスを設け、他方の端の内孔に各歯車を固定するブッシュが設けられるものではない点。 事案に鑑み、相違点1−3について検討する。 引用文献2には、後記イで述べるとおり、相違点1−3の構成は記載されていない。 引用文献3には、第1軸歯車20、第1段減速歯車18、第2段減速歯車13が記載されているが、各歯車がその端部でベアリングの内輪を押し付けることは記載されていない。 甲第4号証には、摺動ギヤ7がスプライン3aでシヤフト3に連結され、摺動ギヤ7の内孔になるヌスミ孔73にブツシユ74が挿入固定されることが記載されているが、摺動ギヤ7は軸方向に摺動自在なるように軸支されているので(上記(3)(3−4)ア参照。)、ブツシユ74は摺動ギヤ7を軸に固定するためのものではないし、摺動ギヤ7がその端部でベアリングの内輪を押し付けることは記載されていない。 甲第5号証には、出力軸46にスプライン圧入などによって固定された第2ギヤ48、及び、減速装置40の入力軸42にスプライン圧入などによって固定されたパーキングギヤ22の、ボスの端面がベアリングの内輪を押し付けていることは記載されているが、第2ギヤ48、パーキングギヤ22がブッシュにより軸に固定されることは記載されていない。 甲第6号証には、回転軸27の右端にベアリング、歯車、ナットが順に設けられ、歯車のボスがベアリングの内輪を押し付けていることは記載されているが、歯車がブッシュにより回転軸27に固定されることは記載されていない。 甲第7号証にも、相違点1−3の構成は記載されていない。 そうすると、引用文献2、3及び甲第4〜7号証は、相違点1−3の構成を示唆するものではなく、引用発明1を相違点1−3に係る本件発明3の構成とすることは、引用文献2、3に記載された事項及び甲第4〜7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 異議申立人は令和4年8月10日提出の意見書において、参考資料1(特開2005−106214号公報)、参考資料2(特許第2737848号公報)、参考資料3(中国特許出願公開第103072476号明細書)、参考資料4(中国特許第100456604号明細書)を添付し、本件発明3の「前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており」との事項は、参考資料1〜4から容易に想到し得ることであり、訂正後の請求項3〜9は進歩性を有さず、取り消されるべきである旨主張している。 しかしながら、参考資料1〜4には、本件発明3の「左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられ」との事項は記載されておらず、相違点1−3に係る本件発明3の構成を示唆するものではない。 したがって、本件発明3は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 引用発明2を主引用例として 本件発明3と引用発明2とを対比する。 後者の「電動モータ1L、1R」、「減速機2L、2R」、「配置し」は、前者の「モータ」、「ギアボックス」、「含み」にそれぞれ相当する。 後者の「電動モータ1L、1Rのモータ軸12a」は、前者の「モータの出力軸」に相当し、後者の「減速機2L、2Rの入力歯車23aを有する入力歯車軸23」は、前者の「ギアボックスの入力軸」に相当する。 後者の「電動モータ1L、1Rのモータ軸12aと減速機2L、2Rの入力歯車23aを有する入力歯車軸23とがスプライン結合され」ることは、モータ軸12aと入力歯車軸23とが一体となって回転するよう結合されているといえるので、前者の「モータの出力軸とギアボックスの入力軸とが一体に形成」されることと、「モータの出力軸とギアボックスの入力軸とが一体的に結合され」ている限りにおいて一致する。 後者の「2モータ車両駆動装置A」は、前者の「動力アセンブリ」、「一体型電気駆動動力アセンブリ」に相当する。 後者のモータ軸12aと入力歯車軸23とからなる「2モータ車両駆動装置Aの主軸」は、前者のモータの出力軸とギアボックスの入力軸とからなる「動力アセンブリの主軸」に相当する。 後者の「パーキングギヤ41」は、前者の「パーキングギア」に相当し、後者の「減速機2L、2Rの減速機ケーシング20内にパーキングギヤ41が設けられ」ていることは、前者の「ギアボックス内にパーキングギアが設けられ」ていることに相当する。 後者の「パーキングギヤ41が入力歯車軸23と一体に回転するように設けられ」ていることは、入力歯車軸23が主軸を構成していることからみて、前者の「パーキングギアが主軸に固定的に取り付けられて」いることに相当する。 後者の「入力歯車23aに噛み合う大径歯車24a」、「小径歯車24bに噛み合う出力歯車25a」は、前者の「伝動ギアペア」に相当するとともに「数段の伝動ギアペア」を構成し、後者の「有し」は、前者の「設けられており」に相当する。 後者の「入力歯車23aは入力歯車軸23」「に形成され」ることは、入力歯車23aが主軸を構成する入力歯車軸23に形成されてモータ軸12aの動力を伝道する最初の伝動ギアペアを構成するものであることから、前者の「一段目のギアペアが、主軸に連結される」ことに相当する。 前者の「右側」、「左側」とは、図1の記載に基づいて、主軸18のモータ側を「右側」とし、ギアボックス側を「左側」としていると認められる。そうすると、後者の「入力歯車軸23のアウトボード側」は、前者の「右側」に相当し、後者の「入力歯車軸23のインボード側」は、前者の「左側」に相当する。 後者の「入力歯車23aが入力歯車軸23のアウトボード側に形成され」「電動モータ1L、1Rに隣接し」ていることは、入力歯車23aが入力歯車軸23の電動モータ1L、1R側に設けられていることといえるので、前者の「一番右側の一段目のギアペアが」「モータに隣接し」ていることに相当する。 後者の「パーキングギヤ41が入力歯車軸23のインボード側に、入力歯車軸23と一体に回転するよう設けられた」ことは、前者の「パーキングギアが一段目のギアペアの左側に位置している」ことに相当する。 後者の「中間歯車軸24」は、前者の「中間軸」に相当する。 後者の「入力歯車23a」と「大径歯車24a」とは、噛み合うものであるので、前者の「噛合伝動する第一のギアと第二のギア」に相当し、前者の「一段目のギアペア」を構成している。 後者の「入力歯車23a」は、入力歯車軸23に設けられるものであるから、前者の「第一のギアがスプラインで主軸に連結され」ることと、「第一のギアが主軸に連結され」る限りにおいて一致する。 後者の「大径歯車24a」は、中間歯車軸24に設けられるものであるから、前者の「第二のギアがスプラインで中間軸に連結され」ることと、「第二のギアが中間軸に連結され」る限りにおいて一致する。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりといえる。 〔一致点2〕 「モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体的に結合され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアが前記主軸に連結され、前記第二のギアが前記中間軸に連結されている、 一体型電気駆動動力アセンブリ。」 〔相違点2−1〕 「動力アセンブリの主軸」に関し、本件発明3は、モータの出力軸とギアボックスの入力軸とが「一体に形成され」たものであるのに対して、引用発明2は、電動モータ1L、1Rのモータ軸12aと減速機2L、2Rの入力歯車23aを有する入力歯車軸23とが「スプライン結合され」たものである点。 〔相違点2−2〕 本件発明3は、「前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており」との構成を備えているのに対し、引用発明2は、減速機ケーシング20とモータケーシング本体3aL、3aRとが一体に形成されるものではなく、それに伴う軸孔、中間ベアリング及びオイルシールの配置に関する構成を備えてない点。 〔相違点2−3〕 本件発明3は、第一のギア及び第二のギアが主軸及び中間軸へ「スプライン」で連結され、「前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられ」ているのに対し、引用発明2は、入力歯車23aが入力歯車軸23に形成され、大径歯車24aが中間歯車軸24に形成されており、入力歯車23a及び大径歯車24aは、一方の端面にベアリングの内輪を押すボスを設け、他方の端の内孔に各歯車を固定するブッシュが設けられるものではない点。 事案に鑑み、相違点2−3について検討する。 相違点2−3は上記アで挙げた相違点1−3と同じ内容であり、上記アで検討したと同様に、引用文献1、3及び甲第4〜7号証には相違点1−3の構成を示唆する記載はない。 そうすると、引用発明2を相違点2−3に係る本件発明3の構成とすることは、引用文献1、3に記載された事項及び甲第4〜7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、本件発明3は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4−2)本件発明4 本件発明4は、本件発明3の事項をすべて含みさらに限定を付すものであるので、本件発明3と同様に、引用発明1又は2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4−3)本件発明5 本件発明5は、本件発明3に、 「前記主軸の両端には、左端ベアリングと右端ベアリングがそれぞれ設けられており、前記左端ベアリングが前記ギアボックスの後ケースに固定的に取り付けられ、前記後ケースには、それに対応してベアリングシートが設けられており、前記右端ベアリングが前記モータの前端カバーに固定的に取り付けられ、前記前端カバーには、それに対応してベアリングシートが設けられており、」 との事項を付加したものである。 そうすると、本件発明5と引用発明1とを対比すると、少なくとも上記(4−1)アで挙げた相違点1−1〜1−3で相違することとなり、上記(4−1)アで述べたと同様の理由により、本件発明5は引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明5と引用発明2とを対比すると、少なくとも上記(4−1)イで挙げた相違点2−1〜2−3で相違することとなり、上記(4−1)イで述べたと同様の理由により、本件発明5は引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4−4)本件発明6〜9 本件発明6〜9は、本件発明5の事項をすべて含みさらに限定を付すものであるので、本件発明5と同様に、引用発明1又は2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項3〜9に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件請求項3〜9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1及び2に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項4】 前記主軸の両端には、左端ベアリングと右端ベアリングがそれぞれ設けられており、前記左端ベアリングが前記ギアボックスの後ケースに固定的に取り付けられ、前記後ケースには、それに対応してベアリングシートが設けられており、前記右端ベアリングが前記モータの前端カバーに固定的に取り付けられ、前記前端カバーには、それに対応してベアリングシートが設けられている、 ことを特徴とする請求項3に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項5】 モータとギアボックスとを含み、前記モータの出力軸と前記ギアボックスの入力軸とが一体に形成され、動力アセンブリの主軸を構成しており、前記ギアボックス内にパーキングギアが設けられ、前記パーキングギアが前記主軸に固定的に取り付けられており、 前記ギアボックスには、数段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが、前記主軸に連結されると共に前記モータに隣接し、前記パーキングギアが前記一段目のギアペアの左側に位置しており、 前記モータの後端カバーと前記ギアボックスの前ケースとが一体に形成され、前記前ケースに軸孔が設けられており、前記主軸が前記軸孔を通って前記ギアボックス内に入り、 前記軸孔には、中間ベアリング及びオイルシールが取り付けられており、前記中間ベアリングが前記主軸を支持しており、前記オイルシールが前記主軸と前記軸孔との間の隙間を封止し、前記ギアボックスと前記モータとを封止して隔離しており、 前記主軸の両端には、左端ベアリングと右端ベアリングがそれぞれ設けられており、前記左端ベアリングが前記ギアボックスの後ケースに固定的に取り付けられ、前記後ケースには、それに対応してベアリングシートが設けられており、前記右端ベアリングが前記モータの前端カバーに固定的に取り付けられ、前記前端カバーには、それに対応してベアリングシートが設けられており、 前記ギアボックスには、中間軸が設けられており、前記一段目のギアペアが、噛合伝動する第一のギアと第二のギアを含み、前記第一のギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記第二のギアがスプラインで前記中間軸に連結され、前記第一のギアのボスは、その右端面が前記中間ベアリングの内輪を押し付けており、左端の内孔に、前記主軸と締り嵌めして前記第一のギアを固定するブッシュが設けられている、 ことを特徴とする一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項6】 前記パーキングギアがスプラインで前記主軸に連結され、前記パーキングギアのボスは、その右端面が前記ブッシュを押し付けており、左端面が前記左端ベアリングの内輪によって押し付けられている、 ことを特徴とする請求項5に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項7】 前記主軸の左端には、前記左端ベアリングの内輪を押し付けるロックナットが設けられている、 ことを特徴とする請求項6に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項8】 前記ギアボックスには、二段の伝動ギアペアが設けられており、一番右側の一段目のギアペアが前記モータに近づいており、二段目のギアペアが前記一段目のギアペアの左側に位置し、該二段目のギアペアは、噛合伝動する第三のギアと第四のギアを含み、前記第三のギアが前記中間軸と一体に形成され、前記第四のギアが差動装置に固定的に取り付けられており、前記差動装置がアクスルに連結される、 ことを特徴とする請求項5に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 【請求項9】 前記中間軸の両端にそれぞれベアリングが設けられており、前記ギアボックスの前ケース及び後ケースには、それに合わせてベアリングシートが設けられており、 前記ギアボックスの前ケースにおいて、前記軸孔にベアリングシート及びシール溝が設けられており、前記シール溝が前記ベアリングシートの右側に位置し、前記中間ベアリングが前記ベアリングシートに取り付けられ、前記オイルシールが前記シール溝に取り付けられており、前記ベアリングシートとシール溝との間には、前記中間ベアリングの右側の位置を規制する第一の段差部が設けられ、前記シール溝の右側には、前記オイルシールの右側の位置を規制する第二の段差部が設けられており、前記軸孔の左側端面には、前記中間ベアリングの外輪を押し付けて軸方向で位置を規制するプレス板がボルトによって固定的に取り付けられている、 ことを特徴とする請求項8に記載の一体型電気駆動動力アセンブリ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-11-22 |
出願番号 | P2020-506207 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B60K)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
小川 恭司 |
特許庁審判官 |
内田 博之 平田 信勝 |
登録日 | 2021-06-17 |
登録番号 | 6899954 |
権利者 | ジン−ジン エレクトリック テクノロジーズ カンパニー リミテッド |
発明の名称 | 一体型電気駆動動力アセンブリ |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 小川 護晃 |
代理人 | 西山 春之 |
代理人 | 池本 理絵 |
代理人 | 小川 護晃 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 西山 春之 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 関谷 充司 |
代理人 | 池本 理絵 |
代理人 | 関谷 充司 |