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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47J
管理番号 1394005
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-15 
確定日 2022-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6928081号発明「加熱調理器、携帯端末装置、調理予約プログラムおよび記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6928081号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−7〕について訂正することを認める。 特許第6928081号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許6928081号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜7に係る特許についての出願は、2017年9月1日(優先権主張2017年4月10日)を国際出願日とする出願であって、令和3年8月10日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月1日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和4年 2月15日 :特許異議申立人星野裕司(以下「異議申立人」という。)による請求項1〜7に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 5月12日付け:取消理由通知書
令和4年 7月 5日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和4年 8月 8日 :異議申立人による意見書の提出
令和4年 9月15日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年10月17日 :特許権者による意見書の提出

第2 訂正の適否についての判断
令和4年7月5日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、以下のとおりである。

1 訂正の内容
(1)訂正事項(下線は訂正箇所を示すため当審で付したものである。)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「前記変更要求に応じた前記予約時刻の変更を前記メニューの調理仕上がりの状態に加熱過多あるいは加熱不足が生じないと想定される時間範囲に制限することを特徴とする加熱調理器。」
を、
「前記変更要求に応じた前記予約時刻の変更を前記メニューの調理仕上がりの状態に加熱過多あるいは加熱不足が生じないと想定される時間範囲に制限し、前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始されることを特徴とする加熱調理器。」と訂正する。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜7も同様に訂正する。

2 訂正拒絶理由通知の概要
訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

3 訂正の適否について
(1)訂正の目的
訂正事項は、請求項1の「予約調理」について、「前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始される」と具体的に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

(2)新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について(下線は当審にて付したものである。)
訂正事項に関して、特許明細書等の段落【0059】には、「調理制御部120は、予約ボタン348の操作後にスタート・決定ボタン342が操作されることによって、予約調理を開始し、通常の調理と同じように加熱調理を実行するように各部を制御する。」と記載されている。
上記記載において、スタート・決定ボタン342を操作すれば、スタート・決定ボタン342を操作した時点の予約内容で予約調理が行われる。そして、予約調理が開始されることにより加熱調理が実行されて食材の状態は変化し、加熱調理が開始された後で加熱調理前の状態に戻すことはできない。 つまり、スタート・決定ボタン342の操作により、予約のキャンセルはできなくなるという意味で予約は「確定」しているといえる。
また、訂正事項は「予約が確定された」というものであり、予約時刻が確定されたというものではないから、請求項1の「設定された予約時刻を変更要求に応じて変更する予約変更部」との特定事項と矛盾するものではない。
したがって、特許明細書等には、予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始されることが記載されているから、訂正事項は、特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
そして、訂正事項は、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(3)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1〜7について、請求項2〜7はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、本件訂正の訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1〜7に対応する訂正後の請求項1〜7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 小活
したがって、本件訂正の訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するから、訂正後の請求項1〜7について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1〜7に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明7」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される加熱調理器であって、
指定されたメニューの調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部と、
前記メニューおよび前記予約時刻のそれぞれのデータを含む予約データをサーバに登録する予約登録部と、
前記サーバに登録された前記予約データを取得した携帯端末装置によってなされた前記予約時刻の変更要求を、前記サーバを介して受けると、設定された前記予約時刻を前記変更要求に応じて変更する予約変更部と、を備え、
前記予約変更部は、
前記変更要求の予約時刻が、予約調理の開始とともに開始する加熱調理の終了時刻である加熱調理終了時刻より所定時間前の時点を基準として規定した、前記予約時刻の変更可能な変更可能範囲にあるか否かに基づいて、前記予約時刻が受け付け可能であるか否かを判定し、
予約を変更しようとしている現在時刻を基準として、前記変更可能範囲を定め、
前記変更要求に応じた前記予約時刻の変更を前記メニューの調理仕上がりの状態に加熱過多あるいは加熱不足が生じないと想定される時間範囲に制限し、
前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始されることを特徴とする加熱調理器。

【請求項2】
前記予約変更部は、前記時間範囲外の前記変更要求をした前記携帯端末装置に対して前記予約時刻の変更が不可であることを通知することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。

【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器としてコンピュータを機能させるための調理予約プログラムであって、前記予約設定部、前記予約登録部および前記予約変更部としてコンピュータを機能させるための調理予約プログラム。

【請求項4】
請求項3に記載の調理予約プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【請求項5】
通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される携帯端末装置であって、
請求項1または2に記載の加熱調理器によって設定され、かつ前記サーバに登録された、指定のメニューの調理の終了を規定する予約時刻および前記メニューのそれぞれのデータを含む予約データを前記サーバから取得する取得部と、
取得された前記予約データから得た前記予約時刻を変更する変更要求を生成する変更要求生成部と、を備えていることを特徴とする携帯端末装置。

【請求項6】
表示部と、
予約時刻の変更が可能な時間範囲を前記表示部に表示させる時間範囲表示制御部と、をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の携帯端末装置。

【請求項7】
前記変更要求に応じて前記加熱調理器における前記予約時刻が変更されると、前記加熱調理器からサーバを介して送信された前記予約時刻の変更完了通知と、前記サーバから取得した広告情報とを出力部に併せて出力させる出力制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項5または6に記載の携帯端末装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1〜6に係る特許に対して、当審が令和4年5月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。(なお、訂正前の請求項7に係る特許については取消理由を通知していない。)

本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明6」ということがある。)は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



甲第2号証:特開2006−221504号公報
甲第3号証:特開2016−83079号公報
甲第4号証:特開2006−334131号公報
(以下、甲第2号証〜甲第4号証をそれぞれ「甲2」〜「甲4」という。)

2 甲各号証の記載(下線は当審にて付したものである。また、「・・・」は記載の省略を意味する。)
(1)甲2
甲2には以下の事項が記載されている。

ア「【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、機器の動作状態および負荷状態から動作開始から完了までの稼働時間の変化を考慮して動作開始時刻を算出する算出手段を備えることで、予約完了時刻を設定することで開始時刻を正確に把握することができ、万が一、利用者が予約変更したい場合でも変更可能な時刻を予約設定者へ通知することで、正確に動作完了でき利便性の高い予約システムを提供することを目的とする。」

イ「【0043】
また、家庭内ネットワーク6Aを介して機器予約手段102から機器(洗濯機)200だけでなく機器(エアコン)300の空気清浄およびフィルタ掃除の動作完了時刻、機器(炊飯器)400の炊き上げ動作完了時刻を同時に一括予約し、予約変更可能時刻通知手段103(フローチャートS7)で機器(洗濯機)200および機器(エアコン)300、機器(炊飯器)400の予約変更可能時刻を一括管理し、携帯電話5Aに通知する。
・・・
【0046】
なお、携帯電話5Aから予約設定し、通知を受信するとしたが、パソコン4Aであっても同様である。また、予約設定は、携帯電話5Aからおこなう場合にセンター装置3Aを介して通信制御装置100へおこなうことであっても同様である。
【0047】
なお、ここでは、算出手段203を機器200側に搭載したが、動作開始から動作完了までの時間を機器側で算出した後、その算出時間を基に予約変更可能時刻である動作開始時刻を通信制御装置100側でおこなうようにしても機能、動作、効果はおなじである
・・・
【0049】
以上のように、本実施の形態においては、機器予約手段102で機器の動作完了時刻を予約し、算出手段203で機器の動作時間、動作完了時刻を算出することで予約設定者が予約の変更をおこなう場合に、いつまでに設定変更をおこなうことができるかを容易に把握でき、確実に予約した時刻に機器の動作を完了させることが実現でき、予約設定者の操作性、利便性を向上することができる。」

ウ「【0057】
また、機器(炊飯)400Bの構成は、実施の形態1の通信制御装置100を通信制御部100Bとして機器(炊飯)400B内部に搭載し、機器予約手段102を炊飯器の炊き上げ動作完了時刻予約専用とした炊飯機予約手段102Dとし、機器(炊飯器)400Bの炊飯動作開始から炊き上げ完了までの動作時間と予約動作完了時刻から動作開始時刻を算出する炊飯算出手段206Dとから構成する。また、その他の構成は実施の形態1と同じなので説明は省略する。
・・・
【0059】
予約システムの動作は、携帯電話5Aから動作完了予約時刻を設定する際に、インターネット網2Aを介して家庭内のネットワークLAN6Bを中継して機器(洗濯機)200Bへ指令を送り、機器(洗濯機)200B内部の外部通信部105で受信し、制御部101でデータを解析し、洗濯機予約手段102Bで洗濯、脱水指令および動作完了時刻を予約条件として判別する。通信制御部100Bと機器通信手段202間は内部の配線により通信をおこなう。」

エ「【図3】



オ 段落【0057】の記載、及び図3から、インターネット網2Aを介してセンター装置3Aと接続される機器(炊飯器)400Bが看取できる。

カ 実施の形態1として記載された段落【0043】には、「予約変更可能時刻通知手段103(フローチャートS7)で機器(洗濯機)200および機器(エアコン)300、機器(炊飯器)400の予約変更可能時刻を一括管理し、携帯電話5Aに通知する。」と記載され、段落【0046】には、「なお、携帯電話5Aから予約設定し」と記載されている。また、実施の形態2として記載された段落【0057】には、「機器(炊飯)400Bの構成は、・・・炊飯機予約手段102Dとし、・・・炊飯算出手段206Dとから構成する。また、その他の構成は実施の形態1と同じなので説明は省略する。」と記載されている。
よって、実施の形態2として記載された、炊飯器予約手段102D、及び炊飯算出手段206Dを備えた機器(炊飯器)400Bにおいても、予約変更可能時刻を携帯電話5Aに通知し、携帯電話5Aから予約設定するといえる。

以上の事項を総合すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「インターネット網2Aを介してセンター装置3Aと接続される機器(炊飯器)400Bであって、
炊飯器の炊き上げ動作完了時刻予約専用とした炊飯器予約手段102Dと、
炊飯動作開始から炊き上げ完了までの動作時間と予約動作完了時刻から動作開始時刻を算出する炊飯算出手段206Dと、を備え、
動作開始時刻である予約変更可能時刻を携帯電話5Aに通知し、携帯電話5Aから予約設定し、予約の変更を行うことができる
機器(炊飯器)400B。」

(2)甲3
甲3には以下の事項が記載されている。

ア「【0004】
特許文献1に記載される加熱調理器によれば、食材データを入力するだけで、ユーザーの目的とするメニューが自動的に検索されるため、ユーザーが複数の自動調理メニューから、食材に合致するメニューを選択する手間を省くことができる。しかしながら、同じ食材を使用した同じメニューの場合でも、食材の分量によっては仕上がりが異なるため、自動調理メニューでの加熱調理を行った場合に、ユーザーの意図した仕上がりにならないことがある。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、加熱調理器に投入した内容に応じた加熱調理を行い、ユーザーが意図した仕上がりを実現することが可能な加熱調理器を提供することを目的とする。」

イ「【0029】
次に、本実施の形態の加熱調理器100の動作について説明する。図4は、本実施の形態における加熱制御処理を示すフローチャートである。本処理を開始する前に、まず、ユーザーによって加熱調理を行う食材が鍋状容器5内に投入される。その後、鍋状容器5が容器カバー2に載置され、外蓋11が閉められる。これにより、内蓋12の内蓋パッキン13が鍋状容器5のフランジ部に圧接されて、鍋状容器5と内蓋12が密閉シールされる。そして、ユーザーによって入力受付部20が操作され、調理情報、食材情報および分量情報、ならびに予約調理を行う場合は予約時刻が入力される。その後、ユーザーによって開始ボタン21aが押下されることで加熱制御処理が開始される。」

ウ「【0053】
図7は本実施の形態における加熱調理システム300の概略構成図である。本実施の形態では、加熱調理器100B、宅内コントローラ40、ルーター45、インターネット60、クラウドサーバ70および端末装置50によって加熱調理システム300が構成される。本実施の形態の加熱調理器100Bの制御部6は、宅内コントローラ40と通信可能に接続される。ここで、加熱調理器100Bが無線通信部30を備え、制御部6は、無線通信部30を介して宅内コントローラ40と無線通信可能に接続されても良い。
【0054】
宅内コントローラ40は、加熱調理器100を含む宅内の家電機器および電力計測装置に接続され、宅内ネットワークを形成する。宅内コントローラ40は、宅内ネットワーク内の家電機器および電力計測装置の管理および制御を行うものである。また、宅内コントローラ40は、ルーター45を介してインターネット60に接続され、さらにインターネット60を介して、クラウドサーバ70および端末装置50に接続される。
【0055】
クラウドサーバ70には、各種食材の調理メニュー、レシピ、および電力情報などの各種情報が格納されている。端末装置50は、スマートフォン、携帯電話またはタブレットなどの携帯情報端末であり、例えばタッチパネルで構成される操作表示部55を備える。
【0056】
宅内コントローラ40は、クラウドサーバ70から電力情報または新たな調理メニューをダウンロードできるとともに、宅内ネットワークを介して接続される電力計測装置から入手した各家電機器の消費電力または運転状況情報を端末装置50に送信することができる。例えば、宅内コントローラ40は、電力情報として、宅内ネットワークが載置されている地域に関する電力の需給状況を入手し、地域の消費電力が供給可能電力に迫っている場合には、特に消費電力の大きい家電機器に対して節電指示を送信する。また、加熱調理器100Bに対しては、仕上がり予約時刻に合わせて調理可能な最小の火力にて調理するよう、制御部6に対して指示することができる。制御部6は、宅内コントローラ40からの指示に応じて、加熱制御工程を変更する。
【0057】
また、宅内コントローラ40は、制御部6から加熱調理器100Bにて加熱調理を実施したメニュー、所要時間、および消費電力量を取得し、インターネット60を介して、クラウドサーバ70に送信する。そして、クラウドサーバ70において、受信したメニュー、所要時間、および消費電力量が保存され、ユーザー認証によってこれらを参照することが可能となる。また、お気に入りのメニューおよび予約時刻をクラウドサーバ70に保存しておくことも可能であり、加熱調理器100Bにおける各種情報の入力に再利用すること、または過去のメニューをレシピ集として蓄積し、献立の参考にすることができる。
【0058】
さらに、端末装置50からインターネット60を介して宅内コントローラ40にアクセスすることで、加熱調理器100Bの鍋状容器5に投入した材料に関する情報(食材情報および分量情報)、または仕上がり予約時刻を遠方からも入力することができる。また、調理開始後にも仕上がり予約時刻を変更することもでき、その場合には、再加熱または煮詰め時間、加圧時間、放冷時間、減圧タイミングを自動で算出、変更し、ユーザーの指定した仕上がりに近付けるように加熱制御工程が変更される。」

エ「【図7】



オ 段落【0053】、【0054】の記載、及び図7から、インターネット60を介してクラウドサーバ70に接続される加熱調理器100B、及びインターネット60に接続された宅内コントローラ40が看取できる。

以上の事項を総合すると、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「インターネット60を介してクラウドサーバ70に接続される加熱調理器100Bであって、
インターネット60に接続された宅内コントローラ40からの指示に応じて、加熱制御工程を変更する制御部6を備え、
クラウドサーバ70には、各種食材の調理メニュー、レシピ、および電力情報などの各種情報が格納されており、お気に入りメニューおよび仕上がり予約時刻を保存しておくことも可能であり、
ユーザーによって入力受付部20が操作され、調理情報、食材情報および分量情報、ならびに予約調理を行う場合は予約時刻が入力され、その後、開始ボタン21aが押下されることで加熱制御処理が開始され、
端末装置50からインターネット60を介して仕上がり予約時刻を遠方からも入力することができ、調理開始後にも仕上がり予約時刻を変更することができる加熱調理器100B。」

(3)甲4
甲4には以下の事項が記載されている。

ア「【0001】
本発明は、指定時刻に炊き上げる予約炊飯機能を備えた炊飯器に関するものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の炊飯器では、炊飯の工程は予約設定確定時に決まるため、予約設定確定後に使用者の予定が変更になった場合などで再度設定をした場合には、再度設定したときのとき間に応じた予約炊飯を行うことになり、予約炊飯の終了時間までが短く、希望の時間が設定できなかったり、最適な予約炊飯を行うことができないといった問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、一旦予約設定を確定した後、使用者の予定が変更になった場合などでも、それを取り消すことなく変更前の状態を維持しつつ予約炊飯の終了時刻を変更できるようにすることで、使用者の希望する時刻に設定できるとともにより最適な予約炊飯を行うことができるようにすることを目的としている。」

イ「【0022】
上記構成において動作を説明する。予約設定開始手段3から制御手段10に信号が送られると予約設定が開始される。このとき、予約炊飯終了時刻は時刻表示手段7aに表示される。予約時刻設定手段4により設定中の予約炊飯終了時刻を変更し、都度設定中の予約炊飯終了時刻は時刻表示手段7aに表示される。予約設定確定手段5から制御手段10に信号が送られると予約設定が完了する。このとき、確定時刻記憶手段6aは予約設定確定手段5から制御手段10に信号が送られた時刻を記憶する。予約設定完了後は、確定時刻記憶手段6aに記憶された時間と設定された予約炊飯終了時刻の差に応じて指定時刻に終了するように炊飯開始を待つ予約待機動作となり、指定時刻に終了するための予約炊飯動作を開始し、指定時刻に炊飯を終了する。
【0023】
この予約待機動作中に、再度予約設定開始手段3から制御手段10に信号が送られると予約設定変更が開始される。このとき、予約炊飯終了時刻は時刻表示手段7aに表示される。予約時刻設定手段4により設定中の予約炊飯終了時刻を変更し、都度その時刻を変更中の時刻を記憶する変更中時刻記憶手段6bに記憶し、変更された予約炊飯終了時刻が、確定時刻記憶手段6aおよび変更中時刻記憶手段6bの時刻から設定不可能な時間である場合、設定可能な時間に変更し、時刻表示手段7aに表示される。
【0024】
以上のように、本実施の形態においては、一旦予約設定を完了させた後でも、予約待機中であれば、予約炊飯終了時刻を変更することができるが、その変更範囲を限定するようにしているため、例えば、午前8時の時点で午後6時30分に設定していれば、午後6時に予約炊飯に移行する場合において、午前8時の時点で、午後8時の予約炊飯終了時刻を設定した後、予約炊飯が開始していない予約待機中の午後6時少し前の段階で、予定を変更して予約炊飯完了時刻を早い時刻に変更しようとした場合、午後6時30分より前に予約時刻を変更しようとしても設定不可能であるため、予約時刻は設定可能な午後6時30分までしか変更できず、炊き上がりが期待できない予約時刻に変更されることもなく、変更した午後6時でなく、最初の午前8時の時点で午後6時30分の予約炊飯終了時刻を設定した場合と同じ動作で予約炊飯を行うことができるなど、より最適な条件で希望する時間に近い炊き上がる予約炊飯の設定ができる。」

以上の事項を総合すると、甲4には以下の事項(以下「甲4記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
「午前8時の時点で、午後8時の予約炊飯終了時刻を設定した後、予約炊飯が開始していない予約待機中の午後6時少し前の段階で、予定を変更して予約炊飯完了時刻を早い時刻に変更しようとした場合、午後6時30分より前に予約時刻を変更しようとしても設定不可能であるため、予約時刻は設定可能な午後6時30分までしか変更できず、炊き上がりが期待できない予約時刻に変更されることがない炊飯器。」

3 当審の判断
3−1 甲2を主引例とする場合
(1)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「インターネット網2A」、「機器(炊飯器)400B」は、それぞれ、本件発明1の「通信ネットワーク」、「加熱調理器」に相当する。また、甲2発明の「センター装置3A」が、サーバを有していることは明らかである。
よって、甲2発明の「インターネット網2Aを介してセンター装置3Aと接続される機器(炊飯器)400B」は、本件発明1の「通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される加熱調理器」に相当する。

イ 甲2発明の「炊き上げ動作完了」は、本件発明1の「調理の終了」に相当する。
よって、甲2発明の「炊飯器の炊き上げ動作完了時刻予約専用とした炊飯器予約手段102D」と、本件発明1の「指定されたメニューの調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部」とは、「調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部」という限りにおいて一致する。

ウ 甲2発明は、「動作開始時刻である予約変更可能時刻を携帯電話5Aに通知し、携帯電話5Aから予約設定し、予約の変更を行うことができる」ものであるから、甲2発明の「機器(炊飯)400B」は、予約変更部を有しているといえる。
よって、甲2発明の、「動作開始時刻である予約変更可能時刻を携帯電話5Aに通知し、携帯電話5Aから予約設定し、予約の変更を行うことができる」点と、本件発明1の「前記サーバに登録された前記予約データを取得した携帯端末装置によってなされた前記予約時刻の変更要求を、前記サーバを介して受けると、設定された前記予約時刻を前記変更要求に応じて変更する予約変更部」を備える点とは、
「携帯端末装置によってなされた予約時刻の変更に応じて、前記予約時刻を変更する予約変更部」を備えるという限りにおいて一致する。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される加熱調理器であって、
調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部と、
携帯端末装置によってなされた予約時刻の変更に応じて、前記予約時刻を変更する予約変更部と、を備える加熱調理器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部」に関して、本件発明1においては、「指定されたメニューの調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部」であるのに対して、甲2発明においては、「炊飯器の炊き上げ動作完了時刻予約専用とした炊飯器予約手段102D」である点。

[相違点2]
本件発明1は、「メニューおよび予約時刻のそれぞれのデータを含む予約データをサーバに登録する予約登録部」を備えるのに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。

[相違点3]
「携帯端末装置によってなされた予約時刻の変更に応じて、前記予約時刻を変更する予約変更部」に関して、本件発明1においては、「前記サーバに登録された前記予約データを取得した携帯端末装置によってなされた前記予約時刻の変更要求を、前記サーバを介して受けると、設定された前記予約時刻を前記変更要求に応じて変更する予約変更部」であるのに対して、甲2発明においては、「動作開始時刻である予約変更可能時刻を携帯電話5Aに通知し、携帯電話5Aから予約設定し、予約の変更を行うことができる」ものである点。

[相違点4]
本件発明1は、「予約変更部は、
変更要求の予約時刻が、予約調理の開始とともに開始する加熱調理の終了時刻である加熱調理終了時刻より所定時間前の時点を基準として規定した、前記予約時刻の変更可能な変更可能範囲にあるか否かに基づいて、前記予約時刻が受け付け可能であるか否かを判定し、
予約を変更しようとしている現在時刻を基準として、前記変更可能範囲を定め、
前記変更要求に応じた前記予約時刻の変更を前記メニューの調理仕上がりの状態に加熱過多あるいは加熱不足が生じないと想定される時間範囲に制限する」のに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。

[相違点5]
本件発明1は、「前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始される」のに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。

事案に鑑み、まず相違点5について検討する。
甲2発明は、段落【0009】に記載のとおり、「機器の動作状態および負荷状態から動作開始から完了までの稼働時間の変化を考慮して動作開始時刻を算出する算出手段を備えることで、予約完了時刻を設定することで開始時刻を正確に把握することができ、万が一、利用者が予約変更したい場合でも変更可能な時刻を予約設定者へ通知することで、正確に動作完了でき利便性の高い予約システムを提供することを目的とする」ものである。
すなわち、甲2発明においては、動作開始時刻(予約調理を開始する時刻)は、炊き上げ完了までの動作時間と予約動作完了時刻から算出し、これを予約変更可能時刻として携帯電話5Aに通知するものであり、予約が確定されたことを契機として予約調理を開始するものではない。
そして、甲2発明は、炊飯器に関するものであり、炊飯器は、予約が確定されたことを契機として予約調理が開始されることはない。これは、炊飯器においては、一度加熱を開始してしまうと、その後で炊き上がりの時刻を変更することは困難であるためである。
したがって、甲2発明を、予約が確定されたことを契機として加熱調理を行う構成に変更することには、阻害要因がある。
また、甲4記載の事項も炊飯器に関するものであるから、甲4記載の事項を考慮しても、同様に予約が確定されたことを契機として加熱調理を行う構成に変更することはできない。
さらに、ネットワーク接続された機器の予約データをセンタ装置などのサーバに登録して、サーバで予約データを管理することは、周知の技術であるが、上記予約が確定されたことを契機として加熱調理を行うことと直接関係するものではない。
以上のことから、甲2発明、甲4記載の事項及び周知の技術に基いて、上記相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととは言えない。

よって、相違点1〜4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲4記載の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲2発明、甲4記載の事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3−2 甲3を主引例とする場合
(1)本件発明1について
本件発明1と甲3発明とを対比する。
ア 甲3発明の「インターネット60」、「クラウドサーバ70」は、それぞれ、本件発明1の「通信ネットワーク」、「サーバ」に相当する。
よって、甲3発明の「インターネット60を介してクラウドサーバ70に接続される加熱調理器100B」は、本件発明1の「通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される加熱調理器」に相当する。

イ 甲3発明は、仕上がり予約時刻を変更することができるものであるから、加熱制御工程を変更する制御部6は、調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部としての機能も有しているといえる。
また、甲3発明においては、クラウドサーバ7には、各種食材の調理メニュー、レシピ、および電力情報などの各種情報が格納されており、ユーザーが調理情報等を入力するものであるから、メニューを指定できるものといえる。
よって、甲3発明の「加熱制御工程を変更する制御部6」は、本件発明1の「指定されたメニューの調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部」に相当する。

ウ 甲3発明は、クラウドサーバ70に調理メニューを格納し、仕上がり予約時刻を保存するものであるから、加熱調理器100Bには、調理メニュー、及び仕上がり予約時刻を登録する予約登録部を備えているといえる。
よって、甲3発明の「クラウドサーバ70には、各種食材の調理メニュー、レシピ、および電力情報などの各種情報が格納されており、お気に入りメニューおよび仕上がり予約時刻を保存しておくことも可能であ」る点は、本件発明1の「前記メニューおよび前記予約時刻のそれぞれのデータを含む予約データをサーバに登録する予約登録部」を備える点に相当する。

エ 甲3発明の「端末装置30」は、本件発明1の「携帯端末装置」に相当する。
よって、甲3発明の「端末装置50からインターネット60を介して仕上がり予約時刻を遠方からも入力することができ、調理開始後にも仕上がり予約時刻を変更することができる」点は、本件発明1の「前記サーバに登録された前記予約データを取得した携帯端末装置によってなされた前記予約時刻の変更要求を、前記サーバを介して受けると、設定された前記予約時刻を前記変更要求に応じて変更する予約変更部」を備える点とは、「携帯端末装置によって予約時刻を変更する予約変更部」を備えるという限りにおいて一致する。

オ 甲3発明の「予約時刻が入力され、その後、開始ボタン21aが押下され」る点は、本件発明1の「予約が確定され」る点に相当する。また、甲3発明の「加熱制御処理が開始され」る点は、本件発明1の「予約調理」が「開始」される点に相当する。
よって、甲3発明の「ユーザーによって入力受付部20が操作され、調理情報、食材情報および分量情報、ならびに予約調理を行う場合は予約時刻が入力され、その後、開始ボタン21aが押下されることで加熱制御処理が開始され」る点は、本件発明1の「前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始される」点に相当する。

そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される加熱調理器であって、
指定されたメニューの調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部と、
前記メニューおよび前記予約時刻のそれぞれのデータを含む予約データをサーバに登録する予約登録部と、
携帯端末装置によって予約時刻を変更する予約変更部と、を備え、
前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始されることを特徴とする加熱調理器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点6]
「携帯端末装置によって予約時刻を変更する予約変更部」に関して、本件発明1においては、「前記サーバに登録された前記予約データを取得した携帯端末装置によってなされた前記予約時刻の変更要求を、前記サーバを介して受けると、設定された前記予約時刻を前記変更要求に応じて変更する予約変更部」であるのに対して、甲3発明においては、「端末装置50からインターネット60を介して仕上がり予約時刻を遠方からも入力することができ」るものであるが、サーバとの関係が不明である点。

[相違点7]
本件発明1は、「前記予約変更部は、
前記変更要求の予約時刻が、予約調理の開始とともに開始する加熱調理の終了時刻である加熱調理終了時刻より所定時間前の時点を基準として規定した、前記予約時刻の変更可能な変更可能範囲にあるか否かに基づいて、前記予約時刻が受け付け可能であるか否かを判定し、
予約を変更しようとしている現在時刻を基準として、前記変更可能範囲を定め、
前記変更要求に応じた前記予約時刻の変更を前記メニューの調理仕上がりの状態に加熱過多あるいは加熱不足が生じないと想定される時間範囲に制限」するのに対し、甲3発明は、そのように特定されていない点。

事案に鑑み、まず相違点7について検討する。
甲3発明は、予約時刻が入力され、その後、開始ボタン21aが押下されることで加熱制御処理(予約調理)が開始される加熱調理器に関するものである。一方、甲4記載の事項は、予約炊飯終了時刻を設定した後、予約炊飯(予約調理)が開始していない予約待機中に予約の変更を行う炊飯器に関するものである。
すなわち、甲3発明は、予約が確定されると予約調理が開始されるものであり、甲4記載の事項は、予約が確定しても予約調理は開始されず、予約調理が開始されない予約待機中に予約の変更を行うものである。そして、甲3発明においては、予約調理が開始されない予約待機中の期間は存在しないから、甲4記載の事項の予約時刻の変更を適用する動機付けがない。
したがって、甲3発明及び甲4記載の事項に基いて、上記相違点7に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たこととは言えない。
よって、相違点6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲4記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲3発明及び甲4記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 異議申立人の主張について
(1)予約が確定されたことを契機として加熱調理を行う点について
異議申立人は、本件特許の明細書には、「予約ボタン348の操作後にスタート・決定ボタン342が操作されることによって、予約調理を開始」することは記載されているが、「前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始される」ことは記載されておらず、たとえ、「予約ボタン348の操作後にスタート・決定ボタン342が操作されることによって、予約調理を開始」することが「前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始される」ことに相当すると仮定しても、「予約ボタン348の操作後にスタート・決定ボタン342が操作されることによって、予約調理を開始」することは、甲3の段落【0029】等に記載されているように周知の技術である旨主張する(令和4年8月8日付け意見書の第5頁第11行〜第6頁第14行)。
しかしながら、上記「第2 3(2)」で検討したとおり、特許明細書等には、予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始されることが記載されているといえる。
そして、「予約ボタン348の操作後にスタート・決定ボタン342が操作されることによって、予約調理を開始」が周知の技術であっても、甲2発明を主引例とする場合については、上記「第4 3−1(1)」で検討したとおり、炊飯器である甲2発明を予約が確定されたことを契機として加熱調理を行う構成(上記周知の技術の構成)に変更することには、阻害要因がある。
また、甲3発明を主引例とする場合については、甲3発明は、上記周知の技術に相当する構成を包含しているから、上記周知の技術の存在が結論を左右するものではなく、上記「第4 3−2(1)」で検討したとおり、甲3発明において、甲4記載の事項の予約の変更を適用する動機付けがない。
よって、異議申立人の主張は採用できない。

(2)明確性(特許法第36条第6項第2号)について
異議申立人は、当初明細書等の段落【0117】には、「また、本実施形態では、撹拌機構33を備えた加熱調理器1について説明した。本発明は、このような加熱調理器1に限らず、インターネット102に接続可能に構成することができれば、炊飯器、オーブンレンジなどの加熱調理器にも適用が可能である。」と記載されているように、「炊飯器」にも適用が可能であるとする一方で、特許権者は、炊飯器の予約炊飯は、本件発明1で特定されている「予約が確定されたことを契機として」開始されることはないと主張している。そのため、本件発明1における「加熱調理器」はどのようなものを指しているのかが不明確であると主張する(令和4年8月8日付け意見書の第7頁第22行〜第8頁第3行)。
しかしながら、本件発明1の「加熱調理器」は、「予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始される」と特定されているから、そのような加熱調理器であることが明確であり、特許権者が、炊飯器の予約炊飯は、本件発明1で特定されている「予約が確定されたことを契機として」開始されることがないと主張するのであれば、本件発明1の「加熱調理器」は、炊飯器が除外されることが明らかである。
よって、異議申立人の主張は採用できない。

5 小括
以上のことから、本件発明1〜6は、甲2〜4に基いて当業者が容易に発明をできたものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲1及び甲5について
甲1には、予約時刻を設定する電気炊飯器が記載されているが、段落【0085】に「予約時刻が設定された電気炊飯器100は、その予約時刻が到来すると、炊飯を開始する。」と記載されているように、その予約時刻は、炊飯を開始する時刻であり、本件発明1で特定されるような「調理の終了を規定する予約時刻」ではないから、主引例として採用することはできない。
また、甲5には、予約時刻を変更する自動製パン機が記載されているが、段落【0022】に「望みの時間が「12:00」であった場合、予約時間を(2)に示すように「12:00」に設定してスタートキーを押すと、食パンの調理時間は4時間なので望みの時間に焼き上げることはできない。したがって、(3)に示すように現在時刻の9:00に4時間を加えた「13:00」に予約時刻を変更し、注意喚起のためのブザーと注意表示19を表示し、調理ランプ16を点灯させて調理をスタートする。」と記載されているように、予約時刻の設定の際に、調理時間を考慮して予約時刻を変更するものであり、予約が確定された後に予約時刻を変更するものではない。
そして、本件発明1〜6は、甲2〜4に基いて当業者が容易に発明をできたものではないことは、上記「第4 5」で述べたとおりである。
したがって、本件発明1〜6は、甲1〜甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)請求項7について
本件発明7の「前記加熱調理器からサーバを介して送信された前記予約時刻の変更完了通知と、前記サーバから取得した広告情報とを出力部に併せて出力させる出力制御部をさらに備え」る点は、甲1〜5のいずれにも記載されておらず、この点が文献を示すまでもないほどの周知技術であるともいえない。
したがって、本件発明7は、甲1〜甲5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される加熱調理器であって、
指定されたメニューの調理の終了を規定する予約時刻を設定する予約設定部と、
前記メニューおよび前記予約時刻のそれぞれのデータを含む予約データをサーバに登録する予約登録部と、
前記サーバに登録された前記予約データを取得した携帯端末装置によってなされた前記予約時刻の変更要求を、前記サーバを介して受けると、設定された前記予約時刻を前記変更要求に応じて変更する予約変更部と、を備え、
前記予約変更部は、
前記変更要求の予約時刻が、予約調理の開始とともに開始する加熱調理の終了時刻である加熱調理終了時刻より所定時間前の時点を基準として規定した、前記予約時刻の変更可能な変更可能範囲にあるか否かに基づいて、前記予約時刻が受け付け可能であるか否かを判定し、
予約を変更しようとしている現在時刻を基準として、前記変更可能範囲を定め、
前記変更要求に応じた前記予約時刻の変更を前記メニューの調理仕上がりの状態に加熱過多あるいは加熱不足が生じないと想定される時間範囲に制限し、
前記予約調理は、予約が確定されたことを契機として開始されることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記予約変更部は、前記時間範囲外の前記変更要求をした前記携帯端末装置に対して前記予約時刻の変更が不可であることを通知することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器としてコンピュータを機能させるための調理予約プログラムであって、前記予約設定部、前記予約登録部および前記予約変更部としてコンピュータを機能させるための調理予約プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載の調理予約プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項5】
通信ネットワークを介してサーバと通信可能に接続される携帯端末装置であって、
請求項1または2に記載の加熱調理器によって設定され、かつ前記サーバに登録された、指定のメニューの調理の終了を規定する予約時刻および前記メニューのそれぞれのデータを含む予約データを前記サーバから取得する取得部と、
取得された前記予約データから得た前記予約時刻を変更する変更要求を生成する変更要求生成部と、を備えていることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項6】
表示部と、
予約時刻の変更が可能な時間範囲を前記表示部に表示させる時間範囲表示制御部と、をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の携帯端末装置。
【請求項7】
前記変更要求に応じて前記加熱調理器における前記予約時刻が変更されると、前記加熱調理器からサーバを介して送信された前記予約時刻の変更完了通知と、前記サーバから取得した広告情報とを出力部に併せて出力させる出力制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項5または6に記載の携帯端末装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-11-17 
出願番号 P2019-512342
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A47J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 平城 俊雅
白土 博之
登録日 2021-08-10 
登録番号 6928081
権利者 シャープ株式会社
発明の名称 加熱調理器、携帯端末装置、調理予約プログラムおよび記録媒体  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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