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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C01B 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C01B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C01B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C01B |
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管理番号 | 1394007 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-18 |
確定日 | 2022-11-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6922104号発明「高酸性度の低シリカチャバザイトゼオライト」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6922104号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜8〕、〔9〜16〕、〔17〜24〕について訂正することを認める。 特許第6922104号の請求項1〜7、9〜15、17〜23に係る特許を維持する。 特許第6922104号の請求項8、16、24に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6922104号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2019年(平成31年)4月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年4月30日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和3年7月30日にその請求項1〜24に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年8月18日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、令和4年2月18日に特許異議申立人 岩部 英臣(以下、「申立人」という。)により甲第1号証〜甲第5号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年4月12日付けで当審より取消理由が通知され、同年7月15日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年9月7日に申立人より意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年7月15日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を「特許第6922104号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜24について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、次のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」 と記載されていたのを、 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」 に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項9に 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」 と記載されていたのを、 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」 に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10〜15も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10に 「前記接触の工程は、アンモニア、尿素、アンモニア生成化合物、または炭化水素化合物の存在下で行われる」 と記載されていたのを 「前記接触の工程は、アンモニア、尿素、または炭化水素化合物の存在下で行われる」 に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項17に 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」 と記載されていたのを、 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」 に訂正する(請求項17の記載を直接的又は間接的に引用する請求項18〜23も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項24を削除する。 (8)一群の請求項について 訂正前の請求項1の記載を請求項2〜8が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1〜8は一群の請求項であり、訂正前の請求項9の記載を請求項10〜16が引用する関係にあるから、訂正前の請求項9〜16は一群の請求項であり、訂正前の請求項17の記載を請求項18〜24が引用する関係にあるから、訂正前の請求項17〜24は一群の請求項であるところ、訂正事項1〜7に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項1〜8、9〜16、17〜24を訂正の単位として請求されたものである。 なお、特許権者は、訂正後の請求項1〜8について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正すること、訂正後の請求項9〜16について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正すること、訂正後の請求項17〜24について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1、3及び6について 訂正事項1、3及び6は、それぞれ、本件訂正前の請求項1、9及び17における「マイクロポーラス結晶性材料」を、本件特許明細書の段落【0006】〜【0008】、【0044】〜【0063】の記載に基づいて、「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上」であるものに限定するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2、5及び7について 訂正事項2、5、及び7は、それぞれ、本件訂正前の請求項8、16及び24を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項4について 訂正事項4は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10の「接触の工程」において存在する選択物質から「アンモニア生成化合物」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)独立特許要件について 本件特許異議の申立ては本件訂正前の全ての請求項についてされているので、訂正事項1〜7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 小括 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 そして、特許権者は、訂正後の請求項1〜8について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正すること、訂正後の請求項9〜16について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正すること、及び、訂正後の請求項17〜24について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めているところ、一群の請求項である請求項1〜8、9〜16、17〜24は、そもそも別の請求の単位であるので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜8〕、〔9〜16〕、〔17〜24〕について訂正することを認める。 第3 本件発明について 本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるので、本件訂正により訂正された請求項1〜7、9〜15、17〜23に係る発明(以下、項番号に合わせて「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜7、9〜15、17〜23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある、マイクロポーラス結晶性材料。 【請求項2】 前記マイクロポーラス結晶性材料は、n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が、0.63から1.00の範囲である、請求項1に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項3】 前記SARは12〜14の範囲である、請求項1に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項4】 少なくとも1つの触媒活性金属をさらに含む、請求項1に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項5】 前記少なくとも1つの触媒活性金属は銅または鉄を含む、請求項4に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項6】 前記触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅(Cu)を含む、請求項5に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項7】 前記材料は、775〜800℃で最大16時間蒸気に曝された後、XRD保持が少なくとも65%である、請求項6に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 排気ガス中の窒素酸化物を選択的に触媒還元する方法であって、 前記排気ガスを、CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にあるマイクロポーラス結晶性材料を含む物品と、少なくとも部分的に接触させることを含む方法。 【請求項10】 前記接触の工程は、アンモニア、尿素、または炭化水素化合物の存在下で行われる、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記マイクロポーラス結晶性材料は、n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が、0.63から1.00の範囲である、請求項9に記載の方法。 【請求項12】 前記SARは12〜14の範囲である、請求項9に記載の方法。 【請求項13】 銅または鉄から選択される少なくとも1つの触媒活性金属をさらに含む、請求項9に記載の方法。 【請求項14】 前記触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅(Cu)を含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記材料は、775〜800℃で最大16時間蒸気に曝された後、XRD保持が少なくとも65%である、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にあるマイクロポーラス結晶性材料の製造方法であって、 ゲルを形成するために、アルミナ、シリカ、アルカリ含有添加剤、有機構造規定剤、水、および選択的にシード材料の供給源を混合すること、 結晶性CHA生成物を形成するために、オートクレーブ内で前記ゲルを加熱すること、 前記CHA生成物をか焼すること、および 前記CHA生成物をアンモニウム交換することを含む方法。 【請求項18】 少なくとも1つの触媒活性金属を、液相または固相イオン交換、含浸、直接合成またはそれらの組み合わせによって、マイクロポーラス結晶性材料に導入することをさらに含む、請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記少なくとも1つの触媒活性金属は銅または鉄を含む、請求項18に記載の方法。 【請求項20】 前記触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅Cuを含む、請求項19に記載の方法。 【請求項21】 前記材料は、775〜800℃で最大16時間蒸気に曝された後、XRD保持が少なくとも65%である、請求項20に記載の方法。 【請求項22】 前記有機構造規定剤は、N、N、N―トリメチル―1―アダマンチルアンモニウムヒドロキシドを含む、請求項17に記載の方法。 【請求項23】 前記アルカリ含有添加剤は、カリウムもしくはナトリウム、またはそれらの混合物の供給源を含む、請求項17に記載の方法。 【請求項24】 (削除)」 第4 特許異議申立理由の概要 1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)本件特許に係る発明の課題は、「水熱安定性が向上したNOx選択還元用のマイクロポーラス結晶性材料を提供すること」である。 これに対して、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、SARが10〜15であるCHA骨格を有する「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にあることを特定しているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、酸性度が1.60mmol/g、1.68mmol/g又は1.79mmol/gいずれかの「マイクロポーラス結晶性材料」(実施例2、5、8)をか焼した後にCu交換したもの(実施例3、6、9)のXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率が高くなることが示されているにすぎず、本件特許明細書には、か焼及びCu交換により酸性度が変化しないことを示す何らの開示もなく、これを裏付ける証拠もないから、前記実施例においてXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率を確認している「マイクロポーラス結晶性材料」(実施例3、6、9)の酸性度を理解することができないので、当業者は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、前記請求項1で特定されている酸性度の範囲内であれば前記課題を解決できることを認識できない。 仮に、前記実施例における酸性度がか焼及びCu交換前の酸性度と見なせたとしても、前記発明の詳細な説明においては、酸性度が1.35mmol/g以上1.60mmol/g未満、1.79mmol/g超2.0mmol/g以下の範囲にあるときにXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率が高くなることが何ら実証されておらず、これを裏付ける証拠もないから、酸性度が実施例で実証される範囲外のものを含む前記請求項1に係る発明は課題を解決できると認識できる範囲のものではないので、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(特許異議申立書31ページ下から7行〜33ページ19行。)。 (2)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、「マイクロポーラス結晶性材料」のゼオライト骨格中のAlの割合が特定されていないが、本件特許明細書の発明の詳細な説明においては、前記ゼオライト骨格中のAlの割合を0.63以上とすることを前提としており、前記ゼオライト骨格中のAlの割合が0.63未満であっても課題を解決を解決できることが記載も示唆もされていないから、前記請求項1に係る発明は、課題を解決できると認識できる範囲のものではないので、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 なお、前記発明の詳細な説明の実施例においては、ゼオライト骨格中のAlの割合が0.73〜0.75である「マイクロポーラス結晶性材料」をか焼及びCu交換した実施例(実施例3、6、9)が記載されるだけであり、ゼオライト骨格中のAlの割合が0.73未満である場合や0.75超の場合について課題を解決を解決できることが記載も示唆もされていないから、仮に特許請求の範囲中でゼオライト骨格中のAlの割合を特定したとしても、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(特許異議申立書33ページ20行〜35ページ14行)。 (3)本件特許に係る発明の課題は、前記(1)に記載したとおりであるが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1においては、「マイクロポーラス結晶性材料」が触媒活性金属を含むことが特定されていない。 一方、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、触媒活性金属として銅を含有する「マイクロポーラス結晶性材料」(実施例3、6、9)のXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率が高くなることが示されているにすぎず、また、甲第1号証及び甲第4号証の記載から、CHA型ゼオライトにCuが含まれると水熱安定性が向上することは、本件特許出願の優先日当時の周知技術であるのに、本件特許明細書においては、触媒活性金属である銅を含有しない「マイクロポーラス結晶性材料」の水熱安定性につては何ら実証されていない。 このため、「マイクロポーラス結晶性材料」が触媒活性金属を含むことや触媒活性金属の種類について特定されていない前記請求項1に係る発明が前記課題を解決できると認識できる範囲のものではないので、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない。 なお、本件特許明細書の段落【0029】には、触媒活性金属として銅を含む場合、「マイクロポーラス結晶性材料」におけるCu:Alの原子比が少なくとも0.25となるように存在する必要があることが記載されており、「マイクロポーラス結晶性材料」が銅を含むとしても、Cu:Alの原子比が0.25未満である場合には、課題を解決できると認識することができない(特許異議申立書35ページ15行〜37ページ1行)。 (4)本件特許明細書には、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における「マイクロポーラス結晶性材料」の定義が記載されておらず、「マイクロポーラス結晶性材料」としてゼオライトだけでなく活性炭等の「マイクロポーラス結晶性材料」や、結晶性アルミノリン酸塩、結晶性シリコアルミノリン酸塩が含まれると解されるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、「マイクロポーラス結晶性材料」としてゼオライトの水熱安定性を評価しているだけであり、当業者はゼオライト以外の「マイクロポーラス結晶性材料」により課題を解決できるとは認識できないから、前記請求項1に係る発明は、課題を解決できると認識できる範囲のものではないので、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たさない(特許異議申立書37ページ2行〜38ページ1行)。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1)本件特許明細書の段落【0041】の記載から、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における酸性度の計算は、前記段落【0041】に記載される参考文献(甲第5号証)を参照することで理解することができるが、前記甲第5号証の参照は前記酸性度の計算に関するものでしかなく、n−プロピルアミンを吸着させるときの条件によって前記酸性度が変化することは明らかであるのに、前記請求項1及び本件特許明細書には、n−プロピルアミンを吸着させるときの条件が記載されていない。 また、前記甲第5号証では、n−プロピルアミン吸着前にゼオライトを700Kで加熱する前処理をしているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例では前記前処理の有無が記載されておらず、前記前処理の有無により酸性度は変化するものであるから、請求項1に係る発明における酸性度が一義的に定まらないので、前記請求項1に係る発明は明確でない。 なお、前記請求項1における酸性度が前記甲第5号証に記載された前処理をして求められる酸性度であったとしても、前記甲第5号証に記載された前処理は、アンモニウムイオンの少なくとも一部のプロトンへの置換が生じるため、前記請求項1における酸性度は少なくともNH4型又はプロトン型の「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度のはずであるのに、前記請求項1においては、「マイクロポーラス結晶性材料」のイオン型がNH4型又はプロトン型であることを特定しておらず、前記請求項1における酸性度が何を意味するのかが不明確であるから、この場合でも前記請求項1に係る発明は明確でない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書38ページ2行〜41ページ23行)。 (2)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における酸性度は、触媒活性金属を含んだ状態での酸性度であると解されるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、触媒活性金属を含んだ状態での酸性度を測定しておらず、触媒活性金属を含有する前の状態の「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度を、触媒活性金属を含んだ状態での酸性度と見なしている。 ところが、CHA型ゼオライトに銅などの金属を含有させると酸点が失われてしまうから、触媒活性金属を含有する前の状態の酸性度を触媒活性金属を含んだ状態での酸性度と見なすことはできないので、前記請求項1における酸性度が、触媒活性金属を含んだ状態での酸性度であるか、触媒活性金属を含有する前の状態の酸性度であるのかを理解できない。 このため、前記請求項1に係る発明は明確でないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書41ページ24行〜43ページ4行)。 (3)本件特許明細書の段落【0017】の記載によれば、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2におけるゼオライト骨格中のAlの割合は、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数を材料中のAlの総量で除すことで求められるのであるが、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数は、n−プロピルアミン吸着の吸着条件によって大きく変化するから、当該吸着条件が特定されていない前記請求項2に係る発明におけるゼオライト骨格中のAlの割合を一義的に定めることができないので、前記請求項2に係る発明は明確でない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書43ページ5行〜21行)。 (4)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2におけるゼオライト骨格中のAlの割合は、触媒活性金属を含んだ状態でのゼオライト骨格中のAlの割合であると解されるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例においては、触媒活性金属を含んだ状態でのゼオライト骨格中のAlの割合を測定しておらず、触媒活性金属を含有する前の状態のゼオライト骨格中のAlの割合を、触媒活性金属を含んだ状態でのゼオライト骨格中のAlの割合と見なしている。 ところが、触媒活性金属を含有する前の状態のゼオライト骨格中のAlの割合を触媒活性金属を含んだ状態でのゼオライト骨格中のAlの割合と見なすことはできないので、前記請求項2におけるゼオライト骨格中のAlの割合が、触媒活性金属を含んだ状態でのゼオライト骨格中のAlの割合であるか、触媒活性金属を含有する前の状態のゼオライト骨格中のAlの割合であるのかを理解できない。 このため、前記請求項2に係る発明は明確でないのであり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書43ページ22行〜44ページ27行)。 (5)本件特許明細書の発明の詳細な説明の比較例1の「マイクロポーラス結晶性材料」の製造工程は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項17で特定された工程を全て含んでいるにも関わらず、前記比較例1の「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度は、前記請求項17で特定された酸性度と相違しているから、前記請求項17に係る製造方法における必須の工程が特定されていないことが明らかであるので、前記請求項17に係る発明は明確でない。 なお、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例2は、前記請求項17で特定された工程のうちのか焼条件のみが比較例1と異なる実施例であり、前記実施例2では、前記請求項17で特定された「マイクロポーラス結晶性材料」が製造されているから、前記請求項17においてか焼条件を限定することで、前記請求項17における製造工程と「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度とが整合するとも考えられるが、前記請求項17においてはか焼条件が特定されていないし、か焼条件をどのような範囲にすれば前記請求項17で特定された「マイクロポーラス結晶性材料」を製造できるのかを理解することもできないから、前記請求項17における製造工程と「マイクロポーラス結晶性材料」とは整合しない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項18〜24に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書44ページ28行〜47ページ2行)。 (6)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6の「Cu:Al原子比が少なくとも0.25」の意味が明らかでないので、前記請求項6に係る発明は明確でない。 そして、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7、14、20及び21に係る発明について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書47ページ3行〜10行)。 (7)本件特許明細書には本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10において特定された「アンモニア生成化合物」が定義されておらず、また、「アンモニア生成化合物」は通常用いられる技術用語でもないないから、前記「アンモニア生成化合物」の意味が不明確であるので、前記請求項10に係る発明は明確でない。 このため、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確性要件を満たさない(特許異議申立書48ページ11行〜49ページ14行)。 3 特許法第29条第1項第3号、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について(特許異議申立書49ページ15行〜79ページ14行) (1)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜24に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。 (2)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜24に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜24に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2012/086753号 甲第2号証:Brent A. Aufdembrink et al.,「Spectroscopic Characterization of Acidity in Chabazite」,J. Phys. Chem. B, 2003年,Vol. 107, No. 37, p. 10025-10031 甲第3号証:Linn Sommer et al.,「Mesopore formation in zeolite H-SSZ-13 by desilication with NaOH」, Microporous and Mesoporous Materials, 2010年, Vol. 132, p. 384-394 甲第4号証:Ja Hun Kwak et al.,「Effects of hydrothermal aging on NH3-SCR reaction over Cu/zeolites」, Journal of Catalysis, 2012年, Vol. 287, p. 203-209 甲第5号証:D. J. Parrillo et al., 「Amine adsorption in H-ZSM-5」, Applied Catalysis, 1990年, Vol. 67, p. 107-118 第5 取消理由の概要 1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (1)ゼオライト骨格中のAlの割合について 本件特許に係る発明は、「マイクロポーラス結晶性材料」において、ゼオライト骨格中のAlの割合を0.63以上とすることで課題を解決するものと認められるが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、「マイクロポーラス結晶性材料」におけるゼオライト骨格中のAlの割合が特定されていないし、前記請求項1に係る発明の発明特定事項である、「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」ことから、「マイクロポーラス結晶性材料」におけるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上となると直ちにいえるものでもないから、当業者は、「マイクロポーラス結晶性材料」におけるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であることが特定されない前記請求項1に係る発明により課題を解決できることを理解できないので、前記請求項1に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえない。 2 特許法第36条第6項第2号(明確性)について (1)「平均結晶サイズ」について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8、16及び24に係る発明における「平均結晶サイズ」の測定方法が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載をみても明らかでなく、前記「平均結晶サイズ」はその定義が不明確であるので、前記請求項8、16及び24に係る発明は明確でない。 (2)「アンモニア生成化合物」について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に係る発明における「アンモニア生成化合物」がいかなる化合物をいうのかが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載をみても明らかでないので、前記請求項10に係る発明は明確でない。 第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断 事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由及び前記第5の取消理由についてまとめて判断する。 1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って、後記(3)において、サポート要件について判断した後、後記(4)において、取消理由及び特許異議申立理由について検討する。 (2)本件特許明細書の記載事項 本件特許明細書には以下のア〜ウの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 ア「【0001】 本開示は、概して、ゼオライト骨格中のAlの割合が高く、したがって酸性度の高い、低シリカチャバザイト(CHA)ゼオライト、低シリカCHAゼオライトを製造する方法、および開示のゼオライトを使用した選択触媒還元方法に関する。 【背景技術】 【0002】 一酸化窒素(NOx)は、主にそれらの腐食作用を理由に、ガスを汚染することが長い間知られている。実際、それらは酸性雨が生じる主要な理由である。NOxによる汚染の主な原因(contributor)は、ディーゼル自動車の排気ガス、ならびに石炭火力発電所およびタービンなどの固定汚染源における、それらの排出である。これらの有害な排出を回避するために、SCRが採用されており、SCRはNOxを窒素と水に変換する際にゼオライト触媒の使用を伴う。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 したがって、排気ガス中のNOxの選択触媒還元を可能にするために、性能および水熱安定性の向上した、改良されたマイクロポーラス結晶性材料が引き続き必要とされている。 【0004】 アルミノシリケートCHA型ゼオライトは、自動車用途のNOx低減のための、市販の選択触媒還元(SCR)システムにおいて重要な構成要素である。自動車用SCR触媒が運転中にさらされる過酷な条件のため、市販のCHAゼオライトは、高い熱及び水熱の安定性を示すことが求められる。 【0005】 本明細書に開示されるのは、上記の問題の1つまたは複数、および/または、従来技術の他の問題を克服することを目的とする、ゼオライト材料およびそのような材料を製造する方法である。」 イ「【課題を解決するための手段】 【0006】 (概要) シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上である、マイクロポーラス結晶性材料を含む材料が開示される。 【0007】 排気ガス中の窒素酸化物の選択触媒還元方法も開示される。一実施形態では、該方法は、排気ガスを、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上である、マイクロポーラス結晶性材料を含む物品(article)と、少なくとも部分的に接触させることを含む。接触工程は、アンモニア、尿素、アンモニア生成化合物、または炭化水素化合物の存在下で実施されうる。 【0008】 本明細書に記載の、例えば、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上である、マイクロポーラス結晶性材料を製造する方法も開示される。一実施形態では、該方法は、ゲルを形成するために、アルミナ、シリカ、アルカリ金属、有機構造規定剤および水の供給源を混合すること、結晶性CHA生成物を形成するため、オートクレーブ内で前記ゲルを加熱すること、および前記CHA生成物をか焼すること(calcining)を含む。 ・・・ 【0011】 (定義) 「水熱的に安定」とは、(室温と比較して)高い温度および/または湿度の条件に一定期間曝露した後、初期の表面積および/またはマイクロポーラスの体積を、一定の割合保持する能力を有することを意味する。・・・ ・・・ 【0016】 「酸性度」は、ゼオライト材料のブレンステッド酸部位の量であり、ゼオライト1グラムあたりのブレンステッド酸部位のmmolとして表される。ここで、ブレンステッド酸部位の量は、n−プロピルアミンの吸着によって決定される。ゼオライト骨格の位置に存在する各Alは、1つのブレンステッド酸部位を生じさせる。 【0017】 「ゼオライト骨格中のAlの割合」は、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数と、元素分析によって決定された材料中のAlの総量との比である。 ・・・ 【0023】 出願人は、酸性度が例えば1.35超と高く、例えばシリカ対アルミナのモル比(SAR)が、例えば10から14まで、または12〜14、または更に13〜14などの、10から15の範囲にある低シリカ量の、有用なマイクロポーラス結晶性材料を見出した。本開示の材料は、一酸化窒素の選択触媒還元に特に有用である。 【0024】 酸性度の有用な範囲は、例えば総Al含有量の作用(function)によって決定される。例えば、13〜14SARの範囲のSARでは、酸性度は、通常、例えば1.40〜1.75mmol/g、または1.50〜1.70mmol/gなどの、1.35〜1.8mmol/gの範囲にある。より一般的には、SARが10〜15の範囲の材料の場合、酸性度は、典型的には、例えば1.40〜2.0mmol/g、・・・さらには1.80〜2.0mmol/gなどの、1.35〜2.0mmol/gの範囲にある。 【0025】 ゼオライト骨格中のAlの割合の有用な範囲は0.63以上であり、例えば、0.63から1.00、または0.65から1.00、または0.70から1.00でありうる。 【0026】 一実施形態では、マイクロポーラス結晶性材料は、CHA(チャバザイト)の構造コードを有する結晶構造を含み得る。 【0027】 一実施形態では、マイクロポーラス結晶性材料は、銅または鉄などの、少なくとも1つの触媒活性金属をさらに含み得る。一実施形態では、触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅(Cu)を含む。」 ウ「【0041】 (酸性度の測定) n−プロピルアミンは、CHAのブレンステッド酸部位に選択的に化学吸着(化学的に吸着)するため、n−プロピルアミンは、CHA材料の酸性度決定のためのプローブ分子として使用される。熱重量分析装置(TGA)が該測定に使用され、物理的に吸着したn−プロピルアミンは280℃に加熱することで除去され、化学的に吸着したn−プロピルアミンは、280〜500℃の温度範囲での重量変化から決定された。酸性度(酸部位密度)の値は、280℃と500℃の間の重量変化から、mmol/gの単位で計算された。酸性度の値の計算に関して、D. Parrillo et al., Applied Catalysis, vol.67, pp.107-118, 1990が参照により組み込まれる。 ・・・ 【0045】 実施例1−14SAR CHAの合成 1009グラムのDI水、155グラムのN、N、N−トリメチル−1−アダマンチアンモニウムヒドロキシド(Sachem、25重量%溶液)、12グラムの水酸化カリウム(EMDミリポア、71.4重量%K2O)、および2グラムの水酸化ナトリウム(Southern Ionics、50重量%溶液)を最初に混合した。次に、276グラムのシリカゾル(Nalco、40質量%SiO2)を混合物に加えた。次に、47.5グラムのアルミン酸ナトリウム(Southern Ionics、23.5質量%Al2O3)を混合物に加えた。次に、0.7グラムの合成ままのチャバザイトゼオライト粉末(14SAR)を加えた。ゲルのモル組成は[16.8SiO2:1:0Al2O3:0.8K2O:1.7Na2O:1.7TMAAOH:672H2O]であった。得られたゲルを、150RPMで撹拌しながら、ステンレス鋼オートクレーブ(Parr Instruments、2000ml)内にて180℃で48時間結晶化させた。回収された固体を濾過し、脱イオン水で洗浄し、大気中105℃で一晩乾燥させた。合成ままの生成物は、表1に要約される通り、チャバザイトのX線回折パターンを有し、SiO2/Al2O3比(SAR)は13.5であった。実施例1のXRDパターンを図1に示す。実施例1の平均SEM結晶サイズは1.4ミクロンである。 【0046】 実施例2−550℃での14SAR CHAのか焼(Calcination) 実施例1からの乾燥ゼオライト粉末を、大気中、450℃で1時間、続いて3℃/分の昇温速度(ramp rate)で、550℃で6時間か焼を行った。か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換された。アンモニウム交換の後、サンプルのSARは13.5、Na2Oは0.00重量%、K2Oは0.22重量%であった。n−プロピルアミン吸着によって測定された、アンモニウム交換サンプルの酸性度は、1.60mmol/gであった。アンモニウム交換サンプルは、表1に要約された特性を示した。 【0047】 実施例3−実施例2のCu交換 実施例2からのアンモニウム交換ゼオライトは、5.0重量%CuOのCuO含有量を達成するために、硝酸銅とCu交換された。このCu交換材料は、さらに800℃で16時間、10%H2O/大気中にて蒸気に曝された。 【0048】 実施例4−12SAR CHAの合成 375グラムのDI水、273グラムのN、N、N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(Sachem、25重量%溶液)、16グラムの水酸化カリウム(EMDミリポア、71.4重量%K2O)、および12グラムの水酸化ナトリウム(Southern Ionics、50重量%溶液)を最初に混合した。次に、605グラムのシリカゾル(Nalco、40重量%SiO2)を混合物に加えた。次に、97グラムのアルミン酸ナトリウム(Southern Ionics、23.5重量%Al2O3)を混合物に加えた。次に、120グラムの硫酸アルミニウム溶液(7.6重量%Al2O3)を加えた。最後に、CHAトポロジーを有する3.3グラムのシード材料(seed material)が追加された。ゲルのモル組成は[12.5SiO2:1:0Al2O3:0.4K2O:1.3Na2O:1.0TMAAOH:188H2O]であった。得られたゲルを、150RPMで撹拌しながら、ステンレス鋼オートクレーブ(Parr Instruments、2000ml)内にて160℃で48時間結晶化させた。回収された固体を濾過し、DI水で洗浄し、大気中105℃で一晩乾燥させた。合成ままの生成物は、表1に要約される通り、チャバザイトのX線回折パターンを有し、SiO2/Al2O3比(SAR)は12.3であった。実施例4のXRDパターンを図2に示す。実施例4の平均SEM結晶サイズは0.9ミクロンである。 【0049】 実施例5−550℃での12SAR CHAのか焼 実施例4からの乾燥ゼオライト粉末を、大気中、450℃で1時間、続いて3℃/分の昇温速度(ramp rate)で、550℃で6時間か焼を行った。か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換された。アンモニウム交換の後、サンプルのSARは12.3、Na2Oは0.00重量%、K2Oは0.13重量%であった。n−プロピルアミン吸着によって測定された、アンモニウム交換サンプルの酸性度は、1.79mmol/gであった。アンモニウム交換サンプルは、表1に要約された特性を示した。 【0050】 実施例6−実施例5のCu交換 実施例5からのアンモニウム交換ゼオライトは、5.0重量%CuOのCuO含有量を達成するために、硝酸銅とCu交換された。このCu交換材料は、さらに775℃で16時間、10%H2O/大気中にて蒸気に曝された。 【0051】 実施例7−13SARチャバザイトの合成 200グラムのDI水、375グラムのN、N、N−トリメチル−1−アダマンチアンモニウムヒドロキシド(Sachem、25重量%溶液)、15グラムの水酸化カリウム(EMDミリポア、71.4重量%K2O)、および20グラムの水酸化ナトリウム(Southern Ionics、50重量%溶液)を最初に混合した。次に、664グラムのシリカゾル(Nalco、40重量%SiO2)を混合物に加えた。次に、94グラムのアルミン酸ナトリウム(Southern Ionics、23.5重量%Al2O3)を混合物に加えた。次に、132グラムの硫酸アルミニウム溶液(7.6重量%Al2O3)を加えた。最後に、CHAトポロジーを有する3.6グラムのシード材料(seed material)が追加された。ゲルのモル組成は[13.4SiO2:1:0Al2O3:0.3K2O:1.4Na2O:1.3TMAAOH:174H2O]であった。得られたゲルを、150RPMで撹拌しながら、ステンレス鋼オートクレーブ(Parr Instruments、2000ml)内にて160℃で48時間結晶化させた。回収された固体を濾過し、脱イオン水で洗浄し、大気中105℃で一晩乾燥させた。合成ままの生成物は、表1に要約される通り、チャバザイトのX線回折パターンを有し、SiO2/Al2O3比(SAR)は13.0であった。実施例7のXRDパターンを図3に示す。実施例6の平均SEM結晶サイズは1.3ミクロンである。 【0052】 実施例8−550℃での13SAR CHAのか焼 実施例7からの乾燥ゼオライト粉末を、大気中、450℃で1時間、続いて3℃/分の昇温速度(ramp rate)で、550℃で6時間か焼を行った。か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換された。アンモニウム交換の後、サンプルのSARは13.0、Na2Oは0.00重量%、K2Oは0.11重量%であった。n−プロピルアミン吸着によって決定された、アンモニウム交換サンプルの酸性度は、1.68mmol/gであった。アンモニウム交換は、表1に要約された特性を示した。 【0053】 実施例9−実施例8のCu交換 実施例8からのアンモニウム交換ゼオライトは、5.0重量%CuOのCuO含有量を達成するために、硝酸銅とCu交換された。このCu交換材料は、さらに775℃で16時間、10%H2O/大気中にて蒸気に曝された。 【0054】 比較例1−650℃での14SAR CHAのか焼 実施例1からの乾燥ゼオライト粉末を、大気中、450℃で1時間、続いて3℃/分の昇温速度(ramp rate)で、650℃で6時間か焼を行った。か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換された。アンモニウム交換の後、サンプルのSARは13.5、Na2Oは0.00重量%、K2Oは0.16重量%であった。n−プロピルアミン吸着によって測定された、アンモニウム交換サンプルの酸性度は、1.34mmol/gであった。 【0055】 比較例2−比較例1のCu交換 比較例1からのアンモニウム交換ゼオライトは、5.0重量%CuOのCuO含有量を達成するために、硝酸銅とCu交換された。このCu交換材料は、さらに800℃で16時間、10%H2O/大気中にて蒸気に曝された。 【0056】 比較例3−14SAR CHA 14.1SAR CHAは、DI水、N、N、N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、シリカゾル、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム溶液、およびCHAトポロジーを有するシード材料(seed material)を含むゲルから合成された。回収された固体を濾過し、DI水で洗浄し、乾燥させた。合成ままの生成物は、チャバザイトのX線回折パターンを有し、SiO2/Al2O3比(SAR)は14.1であった。か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換された。n−プロピルアミン吸着によって決定された、アンモニウム交換サンプルの酸性度は、1.19mmol/gであった。 【0057】 比較例4−比較例3のCu交換 比較例3からのアンモニウム交換ゼオライトは、5.5重量%CuOのCuO含有量を達成するために、硝酸銅とCu交換された。このCu交換材料をさらに775℃で16時間、10%H2O/大気中にて蒸気に曝された。 【0058】 【表1】 【0059】 Cu交換材料のXRDパターンを、XRD保持を得るための水熱処理の前後に測定した。その結果を表2に要約する。本明細書に記載の開示された方法を使用して調製されたゼオライトは、775℃または800℃で水熱処理後に高い結晶性を維持したのに対し、ゼオライト骨格におけるAlの割合が低い比較例では、XRD保持が低くなった。 【0060】 本発明例および比較例のCu交換バージョンもまた、SCR活性について評価された。その結果は表3に要約される。アンモニウム交換ゼオライトは、5.0〜5.5重量%CuOのCuO含有量を達成するために硝酸銅とCu交換された。Cu交換材料は、さらに775℃または800℃で16時間、10%H2O/大気中で蒸気処理された。ゼオライト骨格中のAlの割合が高い本発明例は、より高い安定性を保持し、150℃および200℃などの低温で、より高いNOx転化率を示した。 【0061】 【表2】 【0062】 【表3】 【0063】 表3から明らかなように、(ゼオライト骨格におけるAlの割合を得るために、n−プロピルアミン吸着によって決定される)ゼオライト骨格中のAlの割合が0.63未満であるマイクロポーラス結晶性材料は、該材料が、ゼオライト骨格中のAlの割合が0.63よりも高い材料と同様のシリカ対アルミナ比(SAR)(すなわち、10から15の範囲)および同じ重量%の銅を有していても、150℃および200℃でのNOx転化率は著しく低かった。」 (3)サポート要件についての当審の判断 ア 前記(2)ア(段落【0003】〜【0005】)によれば、本件発明は、排気ガス中のNOxの選択触媒還元を可能にするために、性能および水熱安定性の向上した、改良された「マイクロポーラス結晶性材料」が引き続き必要とされている、という課題や、アルミノシリケートCHA型ゼオライトは、自動車用途のNOx低減のための、市販の選択触媒還元(SCR)システムにおいて重要な構成要素であるが、自動車用SCR触媒が運転中にさらされる過酷な条件のため、市販のCHAゼオライトは、高い熱及び水熱の安定性を示すことが求められる、という課題(以下、これらをまとめて「本件課題」という。)の1つまたは複数を解決しようとするものである。 イ そして、前記(2)ウ(段落【0045】〜【0063】)によれば、CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が12.3〜13.5の範囲にあり、n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.73〜0.75の範囲にあり、酸性度が1.60mmol/g〜1.79mmol/gの範囲にある実施例2、5及び8のゼオライトをCu交換したCu交換材料である実施例3、6及び9のXRD保持及びNOx転化率は、比較例1及び3のゼオライトをCu交換したCu交換材料である比較例2及び4のXRD保持及びNOx転化率よりも高いことが看取されるのであるが、前記実施例2、5及び8のゼオライトは、触媒活性金属を含むものではない。 すると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、前記実施例2、5及び8のゼオライトは、触媒活性金属の含有の有無に関わらず、一酸化窒素の選択触媒還元に際して、XRD保持及びNOx転化率を高くでき、本件課題の1つまたは複数を解決できることを理解することができる。 ウ 更に、前記(2)イ(段落【0023】〜【0026】)によれば、本件発明においては、酸性度が例えば1.35超と高く、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にある低シリカ量の「マイクロポーラス結晶性材料」が、一酸化窒素の選択触媒還元に特に有用なのであって、酸性度の有用な範囲は、SARが10〜15の範囲の材料の場合、1.35〜2.0mmol/gの範囲にあるものであり、ゼオライト骨格中のAlの割合の有用な範囲は0.63以上であり、一実施形態では、「マイクロポーラス結晶性材料」は、CHA(チャバザイト)の構造コードを有する結晶構造を含むものである。 ここで、前記(2)イ(段落【0016】〜【0017】)によれば、酸性度は、ゼオライト材料のブレンステッド酸部位の量であり、ゼオライト1グラムあたりのブレンステッド酸部位のmmolとして表され、ブレンステッド酸部位の量は、n−プロピルアミンの吸着によって決定されるものであり、ゼオライト骨格中のAlの割合は、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数と、元素分析によって決定された材料中のAlの総量との比であるものである。 エ 前記ウによれば、本件発明においては、CHA(チャバザイト)の構造コードを有する結晶構造を含み、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数と、元素分析によって決定された材料中のAlの総量との比であるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、ゼオライト材料のブレンステッド酸部位の量である酸性度が1.35〜2.0mmol/gの範囲にある「マイクロポーラス結晶性材料」が、一酸化窒素の選択触媒還元に特に有用なものである。 そして、CHA(チャバザイト)の構造コードを有する結晶構造を含み、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数と、元素分析によって決定された材料中のAlの総量との比であるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、ゼオライト材料のブレンステッド酸部位の量である酸性度が1.35〜2.0mmol/gの範囲にある「マイクロポーラス結晶性材料」は、本件発明1の「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある、マイクロポーラス結晶性材料」にほかならない。 オ 前記エによれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、前記イの実施例2、5及び8のゼオライトを拡張ないし一般化して、本件発明1の発明特定事項を有する「マイクロポーラス結晶性材料」により、本件課題の1つまたは複数を解決できることを理解することができる。 そして、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえ、同請求項2〜7、9〜15及び17〜23について検討しても事情は同じである。 (4)取消理由及び特許異議申立理由についての検討 ア 始めに、前記第4の1(1)の特許異議申立理由について検討すると、前記(3)アによれば、本件課題は、「マイクロポーラス結晶性材料」、すなわちCHA型ゼオライトの性能や水熱安定性を向上することにあるのであって、水熱安定性が向上したNOx選択還元用の「マイクロポーラス結晶性材料」を提供すること、すなわち、触媒活性金属を含有した「マイクロポーラス結晶性材料」の水熱安定性を向上することにあるわけではない。 すると、水熱安定性が向上したNOx選択還元用の「マイクロポーラス結晶性材料」を提供することを本件課題とすることを前提とした前記第4の1(1)の特許異議申立理由は、前提において誤っており、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例において、酸性度が1.60mmol/g、1.68mmol/g又は1.79mmol/gいずれかの「マイクロポーラス結晶性材料」(実施例2、5、8)をか焼した後にCu交換したもの(実施例3、6、9)のXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率が高くなることが示されているにすぎず、本件特許明細書に、か焼及びCu交換により酸性度が変化しないことを示す何らの開示もなく、これを裏付ける証拠もないとしても、本件特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するといえることに変わりはない。 更に、発明の詳細な説明において、酸性度が1.35mmol/g以上1.60mmol/g未満、1.79mmol/g超2.0mmol/g以下の範囲にあるときにXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率が高くなることが何ら実証されておらず、これを裏付ける証拠もないとしても、前記(3)オに記載したのと同様の理由により、本件特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するといえることに変わりはないから、前記第4の1(1)の特許異議申立理由は理由がない。 イ 次に、前記第4の1(2)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)の取消理由について検討すると、本件発明は、「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上」である、との発明特定事項を有するものである。 また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例において、ゼオライト骨格中のAlの割合が0.73未満である場合や0.75超の場合について課題を解決を解決できることが記載も示唆もされていないとしても、前記(3)オに記載したのと同様の理由により、本件特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するといえることに変わりはないから、前記第4の1(2)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)の取消理由はいずれも理由がない。 ウ 次に、前記第4の1(3)の特許異議申立理由について検討すると、前記アに記載したのと同様の理由により、水熱安定性が向上したNOx選択還元用の「マイクロポーラス結晶性材料」を提供することを本件課題とすることを前提とした前記第4の1(3)の特許異議申立理由も、前提において誤っているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例において、触媒活性金属として銅を含有する「マイクロポーラス結晶性材料」のXRD保持率や蒸気処理後のNOx転化率が高くなることが記載されているにすぎないとしても、また、甲第1号証及び甲第4号証に記載された事項及びCu:Alの原子比の特定の有無に関わらず、本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえることに変わりはないので、前記第4の1(3)の特許異議申立理由は理由がない。 エ 最後に、前記第4の1(4)の特許異議申立理由について検討すると、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」は「CHA骨格を有」するものであり、更に、「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上」であるものであるから、前記「マイクロポーラス結晶性材料」はゼオライトと解するのが妥当であり、活性炭や、結晶性アルミノリン酸塩、結晶性シリコアルミノリン酸塩まで含まれるとは解されないので、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するといえ、同請求項2〜7、9〜15、17〜23について検討しても事情は同じである。 したがって、前記第4の1(4)の特許異議申立理由は理由がない。 (5)小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するから、前記第4の1の特許異議申立理由及び第5の1の取消理由はいずれも理由がない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断手法 請求項に係る発明が明確性要件に適合するか否かは、当該請求項の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきであるから、以下、この観点に立って、前記特許異議申立理由及び取消理由に係る各指摘事項について検討する。 (2)明確性要件についての当審の判断 ア 本件訂正により、本件発明1及び9において、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2及び11の「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合」が特定されたので、以下、前記第4の2(3)及び(4)の本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2及び11についての主張を、本件発明1及び9についての主張と解して検討する。 イ 始めに、前記第4の2(1)及び(3)の特許異議申立理由について検討すると、本件特許明細書の記載(1(2)ウ段落【0041】)からみれば、本件特許明細書には、酸性度の測定に熱重量分析装置(TGA)が使用されることが記載されており、このときのn−プロピルアミンの吸着条件は特に記載されていないから、本件特許明細書の前記記載に接した当業者は、n−プロピルアミンは、熱重量分析装置(TGA)による通常の吸着条件において吸着されるものと解するので、n−プロピルアミンの吸着条件は明確である。 また、前記段落【0041】には、酸性度の値の計算に関して、D. Parrillo et al., Applied Catalysis, vol.67, pp.107-118, 1990、すなわち甲第5号証が参照により組み込まれることが記載されているにすぎず、酸性度を、真空中700Kまで加熱して水素形態としたゼオライトで測定することが記載されるものではないし、更に、本件特許明細書(1(2)ウ段落【0046】)には、アンモニウム交換サンプルの酸性度が1.60mmol/gであったことが記載されており、前記アンモニウム交換サンプルは、甲第5号証に記載された、700Kで加熱する前処理を経たものと解することはできない。 すると、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明における酸性度が、前記前処理を経た水素形態のゼオライトで測定されるものとは理解しないので、本件発明1において「マイクロポーラス結晶性材料」のイオン型がNH4型またはプロトン型であることを特定していないとしても、本件発明1における酸性度は一義的に定まるものであり、明確である。 更に、n−プロピルアミンの吸着条件が明確であることからみれば、n−プロピルアミン吸着によって決定されたブレンステッド酸部位の数と、元素分析によって決定された材料中のAlの総量との比であるゼオライト骨格中のAlの割合も一義的に定まるものである。 これらのことからみれば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、前記請求項1の記載は明確性要件に適合するといえ、同請求項2〜7、9〜15、17〜23について検討しても事情は同じである。 したがって、前記第4の2(1)及び(3)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 ウ 次に、前記第4の2(2)及び(4)の特許異議申立理由について検討すると、前記1(4)アに記載したのと同様の理由により、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明における酸性度及びゼオライト骨格中のAlの割合が、触媒活性金属を含んだ状態での酸性度及びゼオライト骨格中のAlの割合であるとは理解しないから、前記第4の2(2)及び(4)の特許異議申立理由は前提において誤っているので、いずれも理由がない。 エ 次に、前記第4の2(5)の特許異議申立理由について検討する。なお、申立人意見書1ページ下から10行〜4ページ4行の主張も、前記第4の2(5)の特許異議申立理由と同旨であるので、まとめて検討すると、本件発明17には、製造される「マイクロポーラス結晶性材料」が、「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にあるマイクロポーラス結晶性材料」であることが特定されているから、本件発明17においては、これ以外の「マイクロポーラス結晶性材料」を製造する製造方法は排除されるものである。 すると、本件発明17においてか焼条件が特定されていないとしても、本件発明17において製造された「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度及びゼオライト骨格中のAlの割合と、本件発明17において特定された製造工程とは整合するものである。 してみれば、本件特許請求の範囲の請求項17の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、前記請求項17の記載は明確性要件に適合するといえ、同請求項18〜23について検討しても事情は同じであるから、前記第4の2(5)の特許異議申立理由及び申立人意見書における主張はいずれも理由がない。 オ 次に、前記第4の2(6)の特許異議申立理由について検討すると、本件発明6の「Cu:Al原子比」がCu原子÷Al原子の比を意味することは明らかであるから、本件特許請求の範囲の請求項6の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないのであり、このことを前記(1)の判断手法に当てはめれば、前記請求項6の記載は明確性要件に適合するといえ、同請求項14及び20について検討しても事情は同じである。 したがって、前記第4の2(6)の特許異議申立理由は理由がない。 カ 次に、前記第5の2(1)の取消理由について検討すると、本件訂正により本件特許請求の範囲の請求項8、16及び24は削除されたので、前記第5の2(1)の取消理由は理由がない。 キ 最後に、前記第4の2(7)の特許異議申立理由及び前記第5の2(2)の取消理由について検討すると、本件訂正により本件特許請求の範囲の請求項10の「アンモニア生成化合物」は削除されたので、前記第4の2(8)の特許異議申立理由及び前記第5の2(2)の取消理由はいずれも理由がない。 (3)小括 よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するから、前記第4の2の特許異議申立理由及び第5の2の取消理由はいずれも理由がない。 3 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1)甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には、以下の(1a)〜(1e)の記載がある。 (1a)「請求の範囲 ・・・ [請求項7] SiO2/Al2O3モル比が15未満であって、平均粒子径が1.0μm以上8.0μm以下であり、銅が担持されていることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。 ・・・ [請求項13] 請求項7及至請求項12のいずれか一項に記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする窒素酸化物還元除去触媒。」 (1b)「[0062] 実施例8(ゼオライト8の製造) TMADAOH25%水溶液589g、純水2270g、水酸化ナトリウム48%水溶液27g、水酸化カリウム48%水溶液127g、及び、無定形アルミノシリケートゲル582gを加えよく混合して原料組成物を得た。原料組成物の組成はSiO2:0.072Al2O3:0.081TMADAOH:0.021Na2O:0.063K2O:18H2Oとした。 この原料組成物を4Lのステンレス製オートクレーブに密閉し、直接に撹拌しながら150℃で91時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥して生成物を得た。粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライト、即ち、チャバザイト型ゼオライトの単相であった。また、このチャバザイト型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が13.4であった。このチャバザイト型ゼオライトについて実施例1と同様にSEM観察と粒子径分布測定を行った。その結果、このチャバザイト型ゼオライトは、SEM粒子径が2.34μm、10%粒子径が2.69μm、50%粒子径が6.38μm、及び、90%粒子径が9.96μmであった。このチャバザイト型ゼオライトをゼオライト8とした。」 (1c)「[0077] [表2] [0078][表3] 」 (1d)「[0097] 実施例18(銅の担持) 銅を担持するゼオライトとしてゼオライト7(実施例7)を使用したこと以外は実施例15と同様にして、触媒を製造した。 ゼオライト7の乾燥粉末を空気流通下600℃で2時間焼成した。ゼオライトに含まれるアルミニウム量に対して過剰量の塩化アンモニウムを溶解した水溶液に投入して、イオン交換処理を行った。イオン交換処理後、固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。得られた乾燥粉末の蛍光X線分析を行い、NaあるいはKが蛍光X線分析の検出下限(Na2O、K2O≦0.01wt%)まで除去できていることを確認した。このNH4+型チャバザイト型ゼオライトを500℃で1時間焼成して、H+型チャバザイト型ゼオライトにした。 純水80gに酢酸銅一水和物0.95gを投入後、200rpmで10分攪拌することで、酢酸銅水溶液を作製した。酢酸銅水溶液に、上記のH+型チャバサイト型ゼオライト5.45g(dry base)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌後、ヌッチェで固液分離した。固液分離で得られた固相を温純水400gで洗浄し、110℃で一晩乾燥して触媒を製造した。ICP組成分析の結果、得られた触媒は、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.24であった。 ・・・ [0099] 実施例19(銅の担持) 酢酸銅一水和物の量を1.5倍(1.42g)として調製した酢酸銅水溶液を用いたこと以外は実施例18と同様にして、触媒を製造した。ICP組成分析の結果、得られた触媒は、銅のアルミニウムに対する原子割合が0.29であった。 ・・・ [0101] 実施例20(銅の担持) 銅を担持するゼオライトとしてゼオライト8(実施例8)を使用したこと以外は実施例19と同様にして触媒を製造した。ICP組成分析の結果、得られた触媒は銅のアルミニウムに対する原子割合が0.30であった。」 (1e)「[0120][表6] 」 (イ)前記(ア)(1a)〜(1e)の記載によれば、甲第1号証には「窒素酸化物還元除去触媒」が記載されており、その実施例20に注目すると、甲第1号証には、 「窒素酸化物還元除去触媒であって、 TMADAOH25%水溶液589g、純水2270g、水酸化ナトリウム48%水溶液27g、水酸化カリウム48%水溶液127g、及び、無定形アルミノシリケートゲル582gを加えよく混合して原料組成物を得、原料組成物の組成はSiO2:0.072Al2O3:0.081TMADAOH:0.021Na2O:0.063K2O:18H2Oであり、 この原料組成物を4Lのステンレス製オートクレーブに密閉し、直接に撹拌しながら150℃で91時間加熱し、加熱後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥して生成物を得、粉末X線回折と蛍光X線分析から、生成物は純粋なチャバザイト型ゼオライト、即ち、チャバザイト型ゼオライトの単相であったものであり、また、このチャバザイト型ゼオライトのSiO2/Al2O3モル比が13.4であったものであり、このチャバザイト型ゼオライトについてSEM観察と粒子径分布測定を行った結果、このチャバザイト型ゼオライトは、SEM粒子径が2.34μm、10%粒子径が2.69μm、50%粒子径が6.38μm、及び、90%粒子径が9.96μmであったものであり、 銅を担持するゼオライトとして前記チャバザイト型ゼオライトを使用して、触媒を製造したものであり、すなわち、前記チャバザイト型ゼオライトの乾燥粉末を空気流通下600℃で2時間焼成し、ゼオライトに含まれるアルミニウム量に対して過剰量の塩化アンモニウムを溶解した水溶液に投入して、イオン交換処理を行い、イオン交換処理後、固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥し、得られた乾燥粉末の蛍光X線分析を行い、NaあるいはKが蛍光X線分析の検出下限(Na2O、K2O≦0.01wt%)まで除去できていることを確認し、このNH4+型チャバザイト型ゼオライトを500℃で1時間焼成して、H+型チャバザイト型ゼオライトにしたものであり、 純水80gに酢酸銅一水和物1.42gを投入後、200rpmで10分攪拌することで、酢酸銅水溶液を作製し、酢酸銅水溶液に、上記のH+型チャバサイト型ゼオライト5.45g(dry base)を投入し、200rpmで30℃において2時間攪拌後、ヌッチェで固液分離し、固液分離で得られた固相を温純水400gで洗浄し、110℃で一晩乾燥して触媒を製造したものであり、 ICP組成分析の結果、得られた触媒は銅のアルミニウムに対する原子割合が0.30であり、Cuの含有量が4.1重量%であり、900℃1時間処理後窒素酸化物還元率が150℃で61%、500℃で79%である、窒素酸化物還元除去触媒。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、以下の(2a)〜(2c)の記載がある。 (2a)「2. Experimental Section Synthesis of Chabazite. Chabazite was prepared by conversion of calcined NH4+-Y(UOP LZ-Y64) as described in US Patent 4,925,460.30 Analysis by X-ray fluorescence of base-treated(2 M KOH, 8 h) showed 55.3% SiO2, 22.9% Al2O3, 20.4% K2O, corresponding to the following molar ratios; Si/Al=2.05, K/Al=0.98.」(10026頁左欄8行〜14行) (当審訳:2 実験セクション チャバザイトの合成。 チャバザイトは米国特許4,925,460号に記載されているように、焼成NH4+−Y(UOP LZ−Y64)の変換によって調整された。塩基処理(2M KOH、8h)の蛍光X線分析では、55.3% SiO2、22.9% Al2O3、20.4% K2O、であり、以下のモル比;Si/Al=2.05、K/Al=0.98に相当する。) (2b)「27Al NMR MAS results (Figure 4) of the same series of samples confirm dealumination with increased activation temperature; dealumination noted through the increasing contribution of pentacoordinate(P) and octahedral(O) aluminum. The sample activated at 350℃ showed a major signal at 〜60 ppm, indicating the presence of primarily tetrahedral Al(T). Resonances centered at 30 ppm(P) and 0 ppm(O) indicate increased dealumination with increased activation temperature.」(10027頁右欄33行〜40行) (当審訳:同じシリーズの試料の27Al NMR MASの結果(図4)は、活性化温度の増加による脱アルミニウムを確認する;脱アルニニウムは、五配位(P)と八面体(O)のアルミニウムの寄与の増加により示される。350℃で活性化された試料は〜60ppmに主要な信号を示し、主に四面体のAl(T)の存在を示している。30ppm(P)と0ppm(O)を中心とする共鳴は、活性化温度の上昇に伴う脱アルミニウムの増加を示している。) (2c)「 」(10028頁左欄) (当審訳:図4.高い活性化温度で脱アルミニウム化することを示すCHA−4の27Al NMR MAS(T=四面体、P=五配位、O=八面体)) ウ 甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、以下の(3a)〜(3b)の記載がある。 (3a)「2. Experimental 2.1. Catalyst synthesis The as-synthesized zeolite H-SSZ-13 sample was provided by SINTEF, Oslo. It was prepared by dissolving 0.045 g aluminium iso-propoxide(Al(O-i-Pr)3) in 0.9 g tetraethyl orthosilicate(TEOS). The solution was stirred for 30 min at room temperature. Under vigorous stirring, 1.96 g water was added and the solution was stirred for another 60 min at room temperature. To the resulting homogeneous gel, 0.132 g 1.0 M NaOH was added and after vigorous stirring for another 30 min, the synthesis mixture was dried carefully by using an oil bath at 80℃. The final synthesis mixture was prepared by mixing the dried precursor, 7.1 g water and 4.83 g tetramethyl adamantanehydroxide(TMAdOH). The molar composition of the resulting gel was 100SiO2:2.5Al2O3:1.5Na2O:529TMAdOH:9078H2O. The mixture was transferred to a Teflon lined autoclave and left at 160℃ for 7 Days.」(385ページ左欄47行〜最終行) (当審訳:2.実験 2.1.触媒の合成 合成されたままのゼオライトH−SSZ−13試料は、オスロのSINTEFから提供された。これは、0.045gのアルミニウムイソプロポキシド(Al(O−i−Pr)3)を0.9gのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)に溶解することによって調製された。この溶液を室温で30分間撹拌した。激しく撹拌しながら、水1.96gを加え、溶液を室温でさらに60分間撹拌した。得られた均一なゲルに0.132gの1.0MのNaOHを加え、さらに30分間激しく攪拌した後、合成混合物を80 のオイルバスを使用して注意深く乾燥させた。乾燥前駆体、7.1gの水、および4.83gのテトラメチルアダマンタンヒドロキシド(TMAdOH)を混合することにより、最終合成混合物を調製した。得られたゲルのモル組成は、100SiO2:2.5Al2O3:1.5Na2O:529TMAdOH:9078H2Oであった。この混合物をテフロンライニングのオートクレーブに移し、160℃で7日間放置した。) (3b)「2.2. Ion exchange and post synthesis treatment In order to remove the template the sample was calcined at 500℃ for 6 h followed by 550℃ overnight in oxidizing atmosphere. After threefold ion exchange with 1 M NH4NO3(20 mL/g) for 2 h at 75℃, the samples were washed with deionized water and calcined in air at 550℃ for 2 h. The temperature was reached by using a ramp of 5℃/min. The alkaline treatment was carried out at 75℃ for 2 h using 20 mL alkaline solution per gram zeolite. Afterwards, the samples were washed with water until pH neutral and dried overnight at 100℃. In order to obtain the protonated zeolite, the ion exchange and calcination procedures were applied again as described above.」(385ページ右欄1行〜12行) (当審訳:2.2.イオン交換および合成後の処理 テンプレートを除去するために、試料を500℃で6時間焼成し、続いて酸化雰囲気で550℃で一晩焼成した。1M NH4NO3(20mL/g)で75℃で2時間3回イオン交換した後、試料を脱イオン水で洗浄し、空気中で550℃で2時間焼成した。温度は、5℃/分のランプを使用して到達した。 アルカリ処理は、ゼオライト1gあたり20mLのアルカリ溶液を使用して、75℃で2時間行った。その後、試料をpHが中性になるまで水で洗浄し、100℃で一晩乾燥させた。プロトン化ゼオライトを得るために、イオン交換および焼成の手順を前記のように再度適用した。) (2)対比・判断 ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「窒素酸化物還元除去触媒」は、「チャバザイト型ゼオライト」を有するものであるから、本件発明1における「CHA骨格を有」する「マイクロポーラス結晶性材料」に相当し、甲1発明において、「SiO2/Al2O3モル比が13.4」であることは、本件発明1において「シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲」にあることを満たす。 すると、本件発明1と甲1発明とは、 「CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にある、マイクロポーラス結晶性材料。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「マイクロポーラス結晶性材料」が、「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は前記発明特定事項を有しない点。 イ 始めに、前記アの相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討すると、甲第1号証には、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」が、「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある」ことは記載も示唆もされていないし、このことを示す技術常識も存在しないから、前記相違点1は実質的な相違点であるので、本件発明1が甲1発明であるとはいえないのであり、本件発明2〜7、9〜15及び17〜23について検討しても事情は同じである。 ウ 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、甲第2〜3号証にも、「マイクロポーラス結晶性材料」を、「n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲」とすることは記載も示唆もされていないから、当業者は、甲1発明において、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとするには至らない。 してみれば、本件発明1は、甲1発明及び甲第1〜3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないのであり、本件発明2〜7、9〜15及び17〜23について検討しても事情は同じである。 (3)申立人の主張について ア 申立人の主張の概要 (ア)本件特許明細書の段落【0024】には、SARが13〜14であるときには、通常、酸性度が1.35〜1.8mmol/gの範囲になることが記載されているから、「SiO2/Al2O3モル比が13.4」である甲1発明も、酸性度が1.35〜1.8mmol/gである蓋然性が高い。 甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」は、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」と同じ製造方法で製造されているから、甲1発明係る「マイクロポーラス結晶性材料」は、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」と実質的に同一物質であり、酸性度が1.35〜2.0mmol/gである蓋然性が高い。 甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」と本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法が、焼成条件やか焼条件において異なるとしても、甲第2号証には、CHA型ゼオライトに加える温度が高くなるにつれて骨格外Alが増えること、すなわち酸性度が下がることが記載されているから、焼成温度が600℃である甲1発明の酸性度は、最高か焼温度が650℃である本件特許明細書の比較例1の酸性度である1.34mmol/gよりも高くなるはずであるので、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度は1.35〜2.0mmol/gである蓋然性が高い。 甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」における窒素酸化物還元率は、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の窒素酸化物還元率と同等であるから、これらは実質的に同一物質であるので、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度は1.35〜2.0mmol/gである蓋然性が高い。 してみれば、本件発明1は甲1発明であるか、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書50ページ13行〜55ページ4行)。 (イ)甲1発明は、窒素酸化物を還元除去するため、固体酸量の観点からAl含有量を高くすることを目的の1つとする発明であるから、甲1発明においてブレンステッド酸点の量を増加させる動機はあるのに対して、甲第2号証には、CHA型ゼオライトに加える温度が高くなるにつれて骨格外Alが増えること、すなわち酸性度が下がることが記載されているから、甲1発明において、ブレンステッド酸点の量を増加するため、か焼温度を600℃からそれよりも低い450℃以上600℃未満とすることは容易である。 また、甲第3号証に記載された事項によれば、CHA型ゼオライトの製造過程で行うか焼処理を2段階で行うことは本件特許出願の優先日当時の周知技術であるから、甲1発明の製造過程のか焼処理を2段階とすることは容易であるので、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法を本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法と一致させることは容易である。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2〜3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書55ページ5行〜56ページ9行)。 イ 検討 (ア)始めに、前記ア(ア)の主張について検討すると、本件特許明細書の段落【0024】(前記1(2)イ)の記載は、SARが10〜15の範囲の材料の場合、酸性度の有用な範囲が1.35〜2.0mmol/gの範囲にあることをいうものにすぎず、SARが10〜15の範囲の材料において、酸性度が1.35〜2.0mmol/gとなることをいうものではない。 また、本件特許明細書の段落【0054】(前記1(2)ウ)によれば、本件特許明細書に記載された比較例1のSARは13.5であり、10〜15の範囲にあるが、その酸性度は1.34mmol/gであるから、酸性度が1.35〜2.0mmol/gの範囲にあるものではない。 そうすると、SARが10〜15の範囲にあるからといって、必ずしも、酸性度が1.35〜2.0mmol/gの範囲となるとはいえないから、単に、甲1発明における「SiO2/Al2O3モル比が13.4」であるからといって、酸性度が1.35〜1.8mmol/gである蓋然性が高いとはいえない。 また、本件特許明細書の段落【0045】(前記1(2)ウ)によれば、本件特許明細書に記載された実施例1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」は、1009グラムのDI水、155グラムのN、N、N−トリメチル−1−アダマンチアンモニウムヒドロキシド(Sachem、25重量%溶液)、12グラムの水酸化カリウム(EMDミリポア、71.4重量%K2O)、および2グラムの水酸化ナトリウム(Southern Ionics、50重量%溶液)を最初に混合し、次に、276グラムのシリカゾル(Nalco、40質量%SiO2)を混合物に加え、次に、47.5グラムのアルミン酸ナトリウム(Southern Ionics、23.5質量%Al2O3)を混合物に加え、次に、0.7グラムの合成ままのチャバザイトゼオライト粉末(14SAR)を加え、得られたゲルを、150RPMで撹拌しながら、ステンレス鋼オートクレーブ(Parr Instruments、2000ml)内にて180℃で48時間結晶化させ、回収された固体を濾過し、脱イオン水で洗浄し、大気中105℃で一晩乾燥させ、この乾燥ゼオライト粉末を、大気中、450℃で1時間、続いて3℃/分の昇温速度(ramp rate)で、550℃で6時間か焼を行い、か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換されて製造されたものである。 これに対して、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」は、TMADAOH25%水溶液589g、純水2270g、水酸化ナトリウム48%水溶液27g、水酸化カリウム48%水溶液127g、及び、無定形アルミノシリケートゲル582gを加えよく混合して原料組成物を得、この原料組成物を4Lのステンレス製オートクレーブに密閉し、直接に撹拌しながら150℃で91時間加熱し、加熱後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥して生成物として純粋なチャバザイト型ゼオライトを得、前記チャバザイト型ゼオライトの乾燥粉末を空気流通下600℃で2時間焼成し、ゼオライトに含まれるアルミニウム量に対して過剰量の塩化アンモニウムを溶解した水溶液に投入して、イオン交換処理を行い、イオン交換処理後、固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥し、このNH4+型チャバザイト型ゼオライトを500℃で1時間焼成して、H+型チャバザイト型ゼオライトにして製造されたものである。 そして、これらの製造方法を対比すると、前記実施例1においては、1009グラムのDI水、155グラムのN、N、N−トリメチル−1−アダマンチアンモニウムヒドロキシド(Sachem、25重量%溶液)、12グラムの水酸化カリウム(EMDミリポア、71.4重量%K2O)、および2グラムの水酸化ナトリウム(Southern Ionics、50重量%溶液)を最初に混合し、次に、276グラムのシリカゾル(Nalco、40質量%SiO2)を混合物に加え、次に、47.5グラムのアルミン酸ナトリウム(Southern Ionics、23.5質量%Al2O3)を混合物に加え、次に、0.7グラムの合成ままのチャバザイトゼオライト粉末(14SAR)を加え、得られたゲルを、150RPMで撹拌しながら、ステンレス鋼オートクレーブ(Parr Instruments、2000ml)内にて180℃で48時間結晶化させ、回収された固体を濾過し、脱イオン水で洗浄し、大気中105℃で一晩乾燥させて、CHA型ゼオライトを製造しているのに対して、甲1発明においては、TMADAOH25%水溶液589g、純水2270g、水酸化ナトリウム48%水溶液27g、水酸化カリウム48%水溶液127g、及び、無定形アルミノシリケートゲル582gを加えよく混合して原料組成物を得、この原料組成物を4Lのステンレス製オートクレーブに密閉し、直接に撹拌しながら150℃で91時間加熱し、加熱後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥して、CHA型ゼオライトを製造しているから、前記実施例1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」と甲1発明に係るそれとは、物としての構造以前に、そもそもCHA型ゼオライトの製造方法からして全く異なるものである。 更に、前記実施例1においては、得られた乾燥ゼオライト粉末を、大気中、450℃で1時間、続いて3℃/分の昇温速度(ramp rate)で、550℃で6時間か焼を行い、か焼後、サンプルは硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換されるものであるのに対して、甲1発明においては、チャバザイト型ゼオライトの乾燥粉末を空気流通下600℃で2時間焼成し、ゼオライトに含まれるアルミニウム量に対して過剰量の塩化アンモニウムを溶解した水溶液に投入して、イオン交換処理を行い、イオン交換処理後、固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥し、このNH4+型チャバザイト型ゼオライトを500℃で1時間焼成して、H+型チャバザイト型ゼオライトにするものであるから、これらの製造方法は、か焼や焼成の温度、時間、回数、昇温速度や、アンモニウム交換後のさらなる焼成の有無においても全く異なるので、この点からみても、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」が、前記実施例1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」と同じ製造方法で製造されているとは到底いえないのであり、本件特許明細書に記載されたそのほかの実施例について検討しても事情は同じである。 すると、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」が、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」と同じ製造方法で製造されているとはいえないから、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度が1.35〜2.0mmol/gである蓋然性が高いとはいえないし、同様の理由により、甲1発明の焼成温度が600℃であるとしても、その酸性度が、最高か焼温度が650℃である前記比較例1の酸性度である1.34mmol/gよりも高くなるということもできない。 また、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」における窒素酸化物還元率が、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の窒素酸化物還元率と同等であるとしても、これらの製造方法が全く異なることからみれば、これらが実質的に同一物質であるとはいえないので、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の酸性度が1.35〜2.0mmol/gである蓋然性が高いとはいえない。 したがって、本件発明1が甲1発明であるとも、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないので、前記ア(ア)の主張は採用できない。 (イ)次に、前記ア(イ)の主張について検討すると、前記(ア)に記載したとおり、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法と、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法は全く異なるから、仮に、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法において、か焼温度を600℃からそれよりも低い450℃以上600℃未満としたり、か焼処理を2段階で行ったとしても、本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法と同一の製造方法とはならないので、甲第2〜3号証に記載された事項を参酌しても、甲1発明に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法を本件発明1に係る「マイクロポーラス結晶性材料」の製造方法と一致させることが容易であるとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2〜3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえないから、前記ア(イ)の主張も採用できないので、申立人の主張はいずれも採用できない。 (4)小括 よって、本件発明1〜7、9〜15及び17〜23は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないので、前記第4の3の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、請求項1〜7、9〜15及び17〜23に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては、特許法第113条第2号または第4号に該当するとして取り消すことができない。 また、他に請求項1〜7、9〜15及び17〜23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正により請求項8、16及び24は削除されたので、請求項8、16及び24に係る特許異議の申立てについては対象となる特許が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にある、マイクロポーラス結晶性材料。 【請求項2】 前記マイクロポーラス結晶性材料は、n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が、0.63から1.00の範囲である、請求項1に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項3】 前記SARは12〜14の範囲である、請求項1に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項4】 少なくとも1つの触媒活性金属をさらに含む、請求項1に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項5】 前記少なくとも1つの触媒活性金属は銅または鉄を含む、請求項4に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項6】 前記触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅(Cu)を含む、請求項5に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項7】 前記材料は、775〜800℃で最大16時間蒸気に曝された後、XRD保持が少なくとも65%である、請求項6に記載のマイクロポーラス結晶性材料。 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 排気ガス中の窒素酸化物を選択的に触媒還元する方法であって、 前記排気ガスを、CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にあるマイクロポーラス結晶性材料を含む物品と、少なくとも部分的に接触させることを含む方法。 【請求項10】 前記接触の工程は、アンモニア、尿素、または炭化水素化合物の存在下で行われる、請求項9に記載の方法。 【請求項11】 前記マイクロポーラス結晶性材料は、n−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が、0.63から1.00の範囲である、請求項9に記載の方法。 【請求項12】 前記SARは12〜14の範囲である、請求項9に記載の方法。 【請求項13】 銅または鉄から選択される少なくとも1つの触媒活性金属をさらに含む、請求項9に記載の方法。 【請求項14】 前記触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅(Cu)を含む、請求項13に記載の方法。 【請求項15】 前記材料は、775〜800℃で最大16時間蒸気に曝された後、XRD保持が少なくとも65%である、請求項13に記載の方法。 【請求項16】 (削除) 【請求項17】 CHA骨格を有し、シリカ対アルミナのモル比(SAR)が10から15の範囲にあり、かつn−プロピルアミン吸着によって決定されるゼオライト骨格中のAlの割合が0.63以上であり、かつ酸性度が1.35mmol/gから2.0mmol/gの範囲にあるマイクロポーラス結晶性材料の製造方法であって、 ゲルを形成するために、アルミナ、シリカ、アルカリ含有添加剤、有機構造規定剤、水、および選択的にシード材料の供給源を混合すること、 結晶性CHA生成物を形成するために、オートクレーブ内で前記ゲルを加熱すること、 前記CHA生成物をか焼すること、および 前記CHA生成物をアンモニウム交換することを含む方法。 【請求項18】 少なくとも1つの触媒活性金属を、液相または固相イオン交換、含浸、直接合成またはそれらの組み合わせによって、マイクロポーラス結晶性材料に導入することをさらに含む、請求項17に記載の方法。 【請求項19】 前記少なくとも1つの触媒活性金属は銅または鉄を含む、請求項18に記載の方法。 【請求項20】 前記触媒活性金属は、Cu:Al原子比が少なくとも0.25となるように銅Cuを含む、請求項19に記載の方法。 【請求項21】 前記材料は、775〜800℃で最大16時間蒸気に曝された後、XRD保持が少なくとも65%である、請求項20に記載の方法。 【請求項22】 前記有機構造規定剤は、N、N、N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウムヒドロキシドを含む、請求項17に記載の方法。 【請求項23】 前記アルカリ含有添加剤は、カリウムもしくはナトリウム、またはそれらの混合物の供給源を含む、請求項17に記載の方法。 【請求項24】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-11-08 |
出願番号 | P2020-560905 |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(C01B)
P 1 651・ 121- YAA (C01B) P 1 651・ 537- YAA (C01B) P 1 651・ 113- YAA (C01B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
宮澤 尚之 |
特許庁審判官 |
正 知晃 金 公彦 |
登録日 | 2021-07-30 |
登録番号 | 6922104 |
権利者 | エコヴィスト・カタリスト・テクノロジーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー |
発明の名称 | 高酸性度の低シリカチャバザイトゼオライト |
代理人 | 中谷 俊博 |
代理人 | 中谷 俊博 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 山尾 憲人 |
代理人 | 山田 純子 |
代理人 | 大釜 典子 |
代理人 | 山田 純子 |
代理人 | 大釜 典子 |