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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B65D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B65D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B65D |
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管理番号 | 1394008 |
総通号数 | 14 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-02-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-25 |
確定日 | 2022-11-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6930625号発明「カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6930625号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜13〕について訂正することを認める。 特許第6930625号の請求項1〜13に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6930625号の請求項1〜13に係る特許についての出願は、令和2年3月30日の出願であって、令和3年8月16日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月1日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年2月25日 :特許異議申立人松永健太郎(以下「申立人」という。)による請求項1〜13に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年6月17日付け:取消理由通知書 令和4年8月18日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和4年9月30日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に記載された 「からなる群より選ばれる1以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ。」を、 「からなる群より選ばれる1以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ。ここで、前記タック力T60は、以下[手順1]に記載の方法で求める。 [手順1] プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜13も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項9に記載された 「T60/T25が3.2以上である、カバーテープ。」を、 「T60/T25が3.2以上である、カバーテープ。ここで、前記タック力T25は、以下[手順2]に記載の方法で求める。 [手順2] プローブ径:5mmφ、プローブ温度:25℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T25とする。」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13も同様に訂正する)。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1〜13は、請求項2〜13が、本件訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1〜13〕について請求されたものである。 3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「タック力T60」を限定し、また、「タック力T60」の用語の意味を明確化するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項1は、本件特許の明細書の【0095】、【0096】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、用語の意味を明確化するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項9に記載された「タック力T25」を限定し、また、「タック力T25」の用語の意味を明確化するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許の明細書の【0095】〜【0097】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2は、本件訂正前の請求項9に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、用語の意味を明確化するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜13〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1〜13に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1〜13を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 電子部品包装用のカバーテープであって、 当該カバーテープは、基材層と、中間層と、シーラント層とをこの順に備え、 前記中間層と前記シーラント層は接触して設けられており、 前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであり、 前記中間層は、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびスチレン共重合体からなる群より選ばれる1以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ。ここで、前記タック力T60は、以下[手順1]に記載の方法で求める。 [手順1] プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする。 【請求項2】 請求項1に記載のカバーテープであって、 前記基材層と前記シーラント層の間には、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、かつ、前記第二中間層と前記シーラント層が接触して設けられており、 前記第二中間層が、前記樹脂(A)を含む、カバーテープ。 【請求項3】 請求項2に記載のカバーテープであって、 前記第一中間層は、密度が0.910g/cm3超のポリエチレンを含む、カバーテープ。 【請求項4】 請求項2または3に記載のカバーテープであって、 前記第一中間層の厚みをt1とし、前記第二中間層の厚みをt2としたとき、t2/t1の値が0.05〜5である、カバーテープ。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記基材層は、ポリエステル系樹脂を含む、カバーテープ。 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記シーラント層は、帯電防止剤を含む、カバーテープ。 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記シーラント層中のスチレン共重合体中のスチレンユニットの比率が15質量%以上である、カバーテープ。 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記中間層の25℃におけるタック力をT25としたとき、T60/T25が3.2以上である、カバーテープ。ここで、前記タック力T25は、以下[手順2]に記載の方法で求める。 [手順2] プローブ径:5mmφ、プローブ温度:25℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T25とする。 【請求項10】 請求項2〜4のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記第二中間層は、樹脂として、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびスチレン共重合体からなる群より選ばれる1のみの樹脂(A)を含む、カバーテープ。 【請求項11】 請求項2〜4のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記第二中間層は、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる群より選ばれる2以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ。 【請求項12】 請求項1に記載のカバーテープであって、 前記中間層は、単層である、カバーテープ。 【請求項13】 電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1〜12のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、 前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1〜13に係る特許に対して、当審が令和4年6月17日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 本件特許は、請求項1〜13に係る発明が次の点で明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)請求項1に記載された「タック力T60」の用語に関し、その用語の意味するものが明確でなく、また、出願時の技術常識であるともいえず、その力がどのようなものか不明である。 (2)請求項9に記載された「タック力T25」の用語についても同様の点が指摘される。 2 当審の判断 本件訂正により、請求項1に記載された「タック力T60」は、「プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする」という[手順1]の方法で求められるものであることが明らかとなった。 また、請求項9に記載された「タック力T25」は、「プローブ径:5mmφ、プローブ温度:25℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T25とする」という[手順2]の方法で求められるものであることが明らかとなった。 よって、本件発明1〜13は、明確である。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要 申立人は、以下に示す甲第1号証〜甲第13号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1〜13に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 (1)申立理由1(明確性) 本件特許は、請求項1〜13に係る発明が次の点で明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件発明が含む「製造工程でシーラント層3と中間層2を同時に設ける等により、シーラント層3と中間層2を同時に有するカバーテープのみが得られる場合」であって、界面剥離又は凝集剥離(凝集破壊)を生じるカバーテープについては、以下の不備がある。 ア 「中間層の60℃におけるタック力T60」の測定方法が不明である。 イ 「中間層」それ自体がもともと有しているタック力と、その上にシーラント層を形成し、その後、剥離という工程の影響を受けた後の中間層のタック力とでは、その値が大きく異なることは明らかであり、本件発明における「中間層の60℃におけるタック力T60」の意義を理解することができない。 ウ シーラント層を丁寧に除去し、中間層を露出させることでタック力を測定する場合、本件発明における「中間層の60℃におけるタック力T60」の値は、「シーラント層を丁寧に除去」する程度によって変動するものであって、一義的に決めることができない。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件特許は、請求項1〜13に係る発明が次の点で発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 本件特許明細書の実施例では、シーラント層を設けずに中間層が露出しているカバーテープの中間層の露出面のタック力は測定されていないから、シーラント層を設けずに中間層が露出している場合、「中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gf」であれば、課題を解決できると当業者が認識することができない。 イ 本件発明で特定されているシーラント層を設ける前の中間層それ自体がもともと有しているタック力T60は、課題解決のための必須の技術手段であって、シーラント層を除去して中間層を露出させてから測定されるタック力T60とは異なるものであるから、シーラント層を丁寧に除去し、中間層を露出させることでタック力を測定する場合、課題解決のために必須の技術手段が本件発明では特定されておらず、本件発明により課題を解決できると当業者が認識することができない。 (3)申立理由3(新規性)、申立理由4(進歩性) ア 甲3に基づく理由 本件発明1、2、4、7、9、10は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本件発明3、5、11、13は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 イ 甲5に基づく理由 本件発明1、2、6、7、9、10は、甲5に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本件発明4、5、7、13は、甲5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 ウ 甲6に基づく理由 本件発明1、5、6、8〜10、12は、甲6に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本件発明2、7、11、13は、甲6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 エ 甲7に基づく理由 本件発明1〜7、9、10は、甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本件発明13は、甲7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 オ 甲9に基づく理由 本件発明1〜10は、甲9に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 本件発明13は、甲9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (4)申立理由5(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、次の点で当業者が請求項1〜13に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものに適合しないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ア 中間層が本件発明1で特定される樹脂(A)を含んでいる場合でも、必ずしも「前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであり」との要件を満たさないとすると、本件発明には、「前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであり」との要件を満たすように実施できない態様が含まれていることになるから、本件発明は実施可能要件違反の不備がある。 イ 本件発明9で特定される「前記中間層の25℃におけるタック力をT25としたとき、T60/T25が3.2以上である」との要件についても同様である。 [提出された文献等] 甲1:特開2006−312489号公報 甲2:特開2019−127286号公報 甲3:特開2014−31197号公報 甲4:“製品紹介 ユメリット(R)(当審注:(R)は丸囲いのR。以下同じ。)(メタロセン触媒L−LDPE)”、[online]、宇部丸善ポリエチレン株式会社、[2022年(令和4年)2月4日ダウンロード]、インターネット 甲5:特開2006−327624号公報 甲6:特開2008−273602号公報 甲7:国際公開第2012/137630号 甲8:特開2011−51336号公報 甲9:特開2010−76832号公報 甲10:特開2017−66403号公報 甲11:“ノバテックTM LD”、[online]、2012年(平成24年)10月11日、日本ポリエチレン株式会社、インターネット 甲12:“製品紹介 離型・転写用フィルム パナピール(R) ノンシリコーンタイプ/低シリコーンタイプ”、[online]、2017年(平成29年)10月、パナック株式会社、インターネット 甲13:“Product Data Sheet ポリエステル粘着テープ NO.31B”、[online]、日東電工株式会社、[2022年(令和4年)9月29日ダウンロード]、インターネット 2 当審の判断 (1)申立理由1(明確性)について ア 測定方法について 本件訂正により、本件発明1において「中間層の60℃におけるタック力T60」は、「中間層」について、「プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする」方法が特定され、測定方法は明確である。 イ 「中間層の60℃におけるタック力T60」の意義について 「中間層の60℃におけるタック力T60」の測定方法は、上記アのように、加熱(60℃)された細い(5mmφ)ステンレス製プローブを、大きな力(2500gf)で一定時間(20秒間)押し付けてから10mm/sの速度で引きはがすものであるから、中間層の樹脂に相当程度押し込むことになり、熱による中間層が含む樹脂の一部のシーラント層への流れやすさ(本件特許明細書等の段落【0018】)の程度を測定することができる。そのため、その測定結果は、シーラント層を設けずに中間層の露出面のタック力を測定した場合(同じく段落【0017】)と、中間層の上にシーラント層を形成し、その後、シーラント層の剥離を経た中間層の露出面のタック力を測定した場合とで、大きな差異が生じるとはいえない。また、申立人は、これらの場合の間で、「中間層の60℃におけるタック力T60」が異なる結果になることを示す具体的な証拠は提出していない。 ウ 「シーラント層を丁寧に除去」する程度について また、上記のように、シーラント層を形成し、その後、剥離した後でも測定結果に大きな差異がないのだから、シーラント層のはがし方の程度でも大きな差異が生じるとはいえない。 エ 小括 よって、本件発明1〜13は、明確であり、申立人の明確性に係る申立理由には理由がない。 (2)申立理由2(サポート要件)について ア 発明の詳細な説明の記載 本件発明が解決しようとする課題は、「大きな剥離強度を得ることができるカバーテープを提供すること」(【0006】。以下「本件課題」という。)である。 本件課題を解決するための手段について、発明の詳細な説明には次の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0008】 本発明によれば、 電子部品包装用のカバーテープであって、 当該カバーテープは、基材層と、中間層と、シーラント層とをこの順に備え、 前記中間層と前記シーラント層は接触して設けられており、 前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであり、 前記中間層は、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびスチレン共重合体からなる群より選ばれる1以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ が提供される。」 「【0017】 カバーテープ10においては、中間層2の60℃におけるタック力T60は、60〜500gf、好ましくは100〜400gf、より好ましくは100〜350gfである。 「中間層2のタック力」とは、シーラント層3を設けずに中間層2が露出しているカバーテープの、中間層2の露出面のタック力を、タッキング試験機を用いて測定することで求めることができる。 製造工程でシーラント層3と中間層2を同時に設ける等により、シーラント層3と中間層2を同時に有するカバーテープのみが得られる場合は、例えば、シーラント層3にキャリアテープ用シート(例えば導電ポリスチレンキャリアテープ、住友ベークライト社製「CEL−E980A」))をヒートシールし、その後、ヒートシールされたキャリアテープ用シートを、シーラント層3とともに剥離することでシーラント層3を丁寧に除去し、そして中間層2を露出させる。このようにして中間層2を露出させることで、タック力を測定することができる。 【0018】 カバーテープ10は、上記のような構成により、キャリアテープにヒートシールしたときに強い剥離強度を示す。この理由については以下のように説明される。ただし、以下説明は推測を含む。また、以下説明により本発明は限定されない。 中間層2の60℃におけるタック力T60が大きいことにより、カバーテープ10の製造の際に加えられる熱(例えば、シーラント層3を塗布により設ける場合には、塗布溶液を乾燥させる際の加熱)によって、中間層2が含む樹脂の一部がシーラント層3に流れやすくなる。換言すると、T60が大きいことにより、カバーテープ10の製造の際、中間層2とシーラント層3が界面で「適度に混ざる」と考えられる。これにより、中間層2とシーラント層3の間の剥離強度が大きくなると考えられる。 (念のため述べておくと、カバーテープ10をキャリアテープから剥離する際には、中間層2とシーラント層3の間で剥離がなされる。) 【0019】 ちなみに、剥離強度の観点では、T60は大きければ大きいほど好ましい。ただし、中間層2のT60が大きすぎると、通常の剥離条件で剥離できず、例えば破断が生じる恐れがある。また、フィルムを搬送する際に「引っ掛かって」、シワなどの塗布不良が発生することがある。このため、T60の上限値を500gfに設定している。」 「【0094】 <中間層のタック力(T25、T60)の測定> まず、製造されたカバーテープのシーラント層側と、導電ポリスチレンキャリアテープ(住友ベークライト社製「CEL−E980A」)を、条件150℃、0.5MPa、1秒でヒートシールした。その後、手剥離にてヒートシールされたキャリアテープ用シートをシーラント層とともに剥離し、シーラント層3を丁寧に除去した。このようにして中間層を露出させた。 【0095】 タッキング試験機TAC−1000(株式会社レスカ製)を用い、上記で露出させた中間層(露出面)に対し、以下の荷重・時間で60℃に加熱されたSUS(ステンレス)製プローブを押し付け、その後、カバーテープからプローブを垂直に引きはがした。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60として採用した。 【0096】 測定条件の詳細は下記の通りである。 ・プローブ径:5mmφ ・プローブ温度:60℃ ・プローブがカバーテープを押し付ける荷重:2500gf ・押し付けを継続する時間:20秒 ・プローブを引きはがす速度:10mm/s」 「【0105】 【表1】 【0106】 【表2】 」 イ 判断 上記アの記載によると、本件特許の発明の詳細な説明には、プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃、プローブがカバーテープを押し付ける荷重:2500gf、押し付けを継続する時間:20秒、プローブを引きはがす速度:10mm/sを測定条件として(【0096】)、60℃に加熱されたSUS(ステンレス)製プローブを押し付け、その後、カバーテープからプローブを垂直に引きはがし、この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を採用したタック力T60(【0095】)について、中間層2の60℃におけるタック力T60が大きいことで、カバーテープ10の製造の際、中間層2とシーラント層3が界面で「適度に混ざる」ことにより、中間層2とシーラント層3の間の剥離強度が大きくなる(【0018】)という作用機序が記載されている。 ここで、本件発明は、「前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gf」であり、「前記タック力T60」は、[手順1]「プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする」方法で求めることを発明特定事項としており、上記作用機序を踏まえると、当該発明特定事項により、本件課題を解決できることが当業者であれば認識することができる。 ウ 申立人の主張について (ア)上記1(2)アについて 上記(1)イで示したとおり、シーラント層を設けずに「中間層」の露出面のタック力を測定した場合と、中間層の上にシーラント層を形成し、その後、シーラント層の剥離を経た中間層の露出面のタック力を測定した場合とで、大きな差異が生じるとはいえないため、本件特許明細書に、シーラント層を設けずに中間層が露出しているカバーテープの中間層の露出面のタック力が測定された実施例が記載されていないことをもって、本件課題を解決できると当業者が認識することができないとはいえない。 (イ)上記1(2)イについて 申立人は、シーラント層を設ける前の中間層それ自体がもともと有しているタック力T60が課題解決のための必須の技術手段である旨の主張をしている。 しかしながら、本件発明の発明特定事項により、本件課題を解決できることを当業者であれば認識することができることは、上記イに示したとおりである。 エ 小括 よって、本件発明1〜13は、発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人のサポート要件に係る申立理由には理由がない。 (3)申立理由3(新規性)、申立理由4(進歩性)について ア 甲3、甲5、甲6、甲7、甲9に記載された各発明 (ア)甲3に記載された発明 甲3(【請求項1】、【0047】、【0057】、【0075】、【0079】、【0082】、【0096】、【0156】、【0166】、【0170】)には、申立人の特許異議申立書での主張も参照すると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。 「基材層と、シール層と、前記基材層及び前記シール層の間に設けられた中間層と、を備える電子部品包装用カバーテープであって、 前記基材層が、プロピレン系単独共重合体(サンアロマー(株)PL500A、融点161℃)/導電剤1(ポリエーテル−ポリオレフィン共重合体(三洋化成工業(株)ペレスタットVH230))=80/20で形成された、厚み10μmの基材層(A)であり、 前記シール層が、SL2(EVAエマルジョン(中央理化工業(株)、主成分がEVAからなる導電剤を含有するエマルジョン))で形成された、厚み6μmのシール層(C)、又は、SL3(PEエマルジョン(中央理化工業(株)、主成分がPEからなる導電剤を含有するエマルジョン))で形成された、厚さ6μmのシール層(C)であり、 前記中間層が、 AD2(接着性樹脂(三井化学(株)アドマーQF500、融点161℃))で形成された、厚み4μmの接着剤層(B2)と、 Nyl(MXD6ナイロン(三菱瓦斯化学(株)MXナイロンS7008))で形成された、厚み5μmの剛性層(B1)と、 AD2(接着性樹脂(三井化学(株)アドマーQF500、融点161℃))で形成された、厚み4μmの接着剤層(B2)と、 PP1(プロピレン系単独共重合体(サンアロマー(株)PL500A、融点161℃ )で形成された、厚み10μmの耐熱層(B3)と、 AC1(ポリウレタン系アンカーコート剤(東洋インキ(株)EL540))で形成された、厚み0.5μmの接着層(B2)と、 LL1(線状超低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン(株)ユメリット022GS、融点119℃))で形成された、厚み15μm又は10μmのクッション層(B4)と、 をこの順で有し、 幅方向における熱収縮率が80℃において3%又は2%、且つ130℃ において19%又は17%であり、 長さ方向における降伏点荷重が21N又は23Nである、カバーテープ。」 (イ)甲5に記載された発明 甲5(【請求項1】、【0001】、【0025】、【0033】〜【0035】)には、申立人の特許異議申立書での主張も参照すると、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。 「厚さ16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人(株)製テトロンフィルムFタイプ)である基材フィルムと、 該基材フィルム上に接着層を介して積層された中間層と、 ヒートシール層用組成物(大日精化工業(株)製 Neoconoa+ DS−6)で形成された、厚み2μmのヒートシール層とを備え、 前記接着層は、ポリオール系主剤25重量部(固形分)(東洋モートン(株)製EL−510)及びイソシアネート系硬化剤2重量部(固形分)(東洋モートン(株)製CAT−RT37)で構成される、ヤング率が0.5MPaである層であり、 前記中間層は、メタロセンLLDPE(宇都丸善ポジエチレン(株)製ユメリット022GS、比重:0.906)からなる厚み85μmの層であることを特徴とするカバーテープ。」 (ウ)甲6に記載された発明 甲6(【請求項1】、【0001】、【0014】、【0018】、【0022】、【0024】〜【0026】、【0032】)には、申立人の特許異議申立書での主張も参照すると、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されている。 「基材層、中間層、シーラント層からなるカバーフィルムであり、 基材層が、厚さ16μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、 中間層が、スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加樹脂(旭化成ケミカルズ社製、「タフテックH1041」、スチレン含量30質量%)で形成された、厚み15μmの中間層であり、 シーラント層が、スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加樹脂(旭化成ケミカルズ社製、「タフテックH1041」、スチレン含量30質量%)100質量都と、架橋アクリル粒子(積水化成品工業社製、「テクポリマーMBX」)10質量部とを混合したシーラント樹脂組成物で形成された、厚み10μmのシーラント層である、カバーフィルム。」 (エ)甲7に記載された発明 甲7([0001]、[0030]、[0031]、[0033]〜[0037]、[0044]、[請求項1])には、申立人の特許異議申立書での主張も参照すると、次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されている。 「順に基材層(A)、中間層(B)、剥離層(C)、およびヒートシール層(D)を含んでなるカバーフィルムにおいて、 基材層(A)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製)で形成された、厚み16μmの基材層であり、 中間層(B)が、m−LLDPE1:ハーモレックスNH745N(日本ポリエチレン社製)で形成された、厚み25μmの中間層であり、 剥離層(C)が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体1:クリアレン1(電気化学工業社製、ビカット軟化温度:76℃ 、スチレン比率83質量%)40質量%と、スチレン−ブタジエンブロック共重合体2:TR−2000(JSR社製、ビカット軟化温度:45℃、スチレン比率:40質量%)25質量%と、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体1:カーネルKF270T(日本ポリエチレン社製、ビカット軟化温度:88℃)35質量%とで形成された、ビカット軟化温度72℃、厚み15μmの剥離層であり、 ヒートシール層(D)が、アクリル樹脂1:メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸シクロヘキシルのランダム共重合体のエマルジョン溶液(新中村化学社製、ガラス転移温度:60℃)100質量部と、導電フィラー溶液「SN−100D」(石原産業社製)400質量部とから形成された、厚み0.5μmのヒートシール層である、カバーフィルム。」 (オ)甲9に記載された発明 甲9(【0036】、【0037】、【0039】、【0040】、【0042】)には、申立人の特許異議申立書での主張も参照すると、次の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されている。 「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで形成された、厚さ16μmの基材層と、 低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC」)で形成された、厚さ18μmの中間層と、 (a)10:LDPE;カーネルKF370(日本ポリエチレン社製)で形成された、厚さ30μmの中間層と、 (b)2:スチレン比率が85質量%、ブタジエン比率が15質量%からなるスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体(電気化学工業社製、「クリアレン」);55質量%と、スチレン比率が40質量%、ブタジエン比率が60質量%からなるスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体(JSR社製、「TR」);25質量%と、スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加樹脂(旭化成ケミカルズ社製、「タフテックH1052」);20質量%とで形成された、厚み15μmのシーラント層と、 を備えるカバーテープであって、 カバーテープの表裏面に、界面活性型の帯電防止剤(花三社製、「エレクトロストリッパーQN」)の溶液が塗布されている、カバーテープ。」 イ 本件発明1について 本件発明1と甲3発明、甲5発明、甲6発明、甲7発明、甲9発明の各発明とは、少なくとも次の相違点1で相違する。 [相違点1] 本件発明1は、「前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gf」であり、「前記タック力T60」は、[手順1]「プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重:2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする」方法で求めるのに対して、甲3発明、甲5発明、甲6発明、甲7発明、甲9発明の各発明は、中間層のタック力T60が不明である点。 相違点1について検討する。 相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲3発明、甲5発明、甲6発明、甲7発明、甲9発明ではない。 また、甲3、甲5、甲6、甲7、甲9の各文献には、中間層のタック力T60について記載も示唆もされておらず、また、相違点1に係る本件発明1の構成が本件特許に係る出願前における周知技術でもない。 したがって、甲3発明、甲5発明、甲6発明、甲7発明、甲9発明の各発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、甲3発明、甲5発明、甲6発明、甲7発明、甲9発明の各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2〜13について 本件発明2〜13は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、本件発明2、4、7、9、10は、甲3に記載された発明ではなく、また、本件発明3、5、11、13は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、 本件発明2、6、7、9、10は、甲5に記載された発明ではなく、また、本件発明4、5、7、13は、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、 本件発明5、6、8〜10、12は、甲6に記載された発明ではなく、また、本件発明2、7、11、13は、甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、 本件発明2〜7、9、10は、甲7に記載された発明ではなく、また、本件発明13は、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、 本件発明2〜10は、甲9に記載された発明ではなく、また、本件発明13は、甲9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人の主張について 申立人は、本件特許の明細書には、中間層が所定のタック力T60を有するためには、中間層の素材として樹脂(A)を選択することが好ましいことが記載されており(【0021】)、また、本件発明1において、中間層が樹脂(A)を含むことが特定されているから、各甲号証に記載の発明において、本件発明1の「中間層」に相当する層が、本件発明1で特定される樹脂(A)に相当するものを含んでいれば、「前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであり」との要件を満たす旨を述べている。 しかしながら、本件特許の明細書には、「タック力T60」に関して、「T60が60〜500gfであるカバーテープ10は、素材や製造条件を適切に選択することで製造することができる。素材の観点では、中間層2の素材として後述の樹脂(A)を選択すること(特に、共重合体については、適切な共重合比率を有するものを選択すること)が好ましい。また、製造条件は限定されないが、例えば後述のTダイによる押出法で中間層2を形成する例が挙げられる。」(【0021】)、「ちなみに、例えば金属含有フィラー(金属酸化物粒子など)を用いることで、帯電防止能の向上に加え、タック力や剥離強度を適切に調整できる場合がある。タック力や剥離強度の調整の観点も考慮すると、金属含有フィラー(金属酸化物粒子など)の一次粒子径は、好ましくは5〜1000nm、好ましくは10〜500nmである。」(【0067】)と記載されている。 すなわち、「タック力T60」は、中間層の素材だけでなく、製造条件や金属含有フィラーによって調整されるものであるから、各甲号証に記載の発明において、本件発明1の「中間層」に相当する層が、本件発明1で特定される樹脂(A)に相当するものを含んでいたとしても、必ずしも「前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであ」るとは限らない。 オ よって、申立人の新規性・進歩性に係る申立理由は、いずれも理由がない (4)申立理由5(実施可能要件)について 本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0005】、【0006】)、当該課題を解決するための手段(【0007】〜【0009】)、本件発明の効果(【0010】)、本件発明を実施するための形態(【0012】〜【0087】)、実施例(【0088】〜【0108】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1〜13の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、申立人の実施可能要件に係る申立理由には理由がない。 第6 むすび したがって、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1〜13に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1〜13に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 電子部品包装用のカバーテープであって、 当該カバーテープは、基材層と、中間層と、シーラント層とをこの順に備え、 前記中間層と前記シーラント層は接触して設けられており、 前記中間層の60℃におけるタック力T60が、110〜491gfであり、 前記中間層は、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびスチレン共重合体からなる群より選ばれる1以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ。ここで、前記タック力T60は、以下[手順1]に記載の方法で求める。 [手順1] プローブ径:5mmφ、プローブ温度:60℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T60とする。 【請求項2】 請求項1に記載のカバーテープであって、 前記基材層と前記シーラント層の間には、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、かつ、前記第二中間層と前記シーラント層が接触して設けられており、 前記第二中間層が、前記樹脂(A)を含む、カバーテープ。 【請求項3】 請求項2に記載のカバーテープであって、 前記第一中間層は、密度が0.910g/cm3超のポリエチレンを含む、カバーテープ。 【請求項4】 請求項2または3に記載のカバーテープであって、 前記第一中間層の厚みをt1とし、前記第二中間層の厚みをt2としたとき、t2/t1の値が0.05〜5である、カバーテープ。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記基材層は、ポリエステル系樹脂を含む、カバーテープ。 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記シーラント層は、帯電防止剤を含む、カバーテープ。 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記シーラント層中のスチレン共重合体中のスチレンユニットの比率が15質量%以上である、カバーテープ。 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記中間層の25℃におけるタック力をT25としたとき、T60/T25が3.2以上である、カバーテープ。ここで、前記タック力T25は、以下[手順2]に記載の方法で求める。 [手順2] プローブ径:5mmφ、プローブ温度:25℃のSUS(ステンレス)製プローブを、前記中間層に荷重2500gfで20秒間押し付けて、その後、10mm/sの速度で前記中間層から前記プローブを垂直に引きはがす。この引きはがしの際にかかる荷重のピーク値を、タック力T25とする。 【請求項10】 請求項2〜4のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記第二中間層は、樹脂として、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物およびスチレン共重合体からなる群より選ばれる1のみの樹脂(A)を含む、カバーテープ。 【請求項11】 請求項2〜4のいずれか1項に記載のカバーテープであって、 前記第二中間層は、密度が0.890〜0.912g/cm3であるポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる群より選ばれる2以上の樹脂(A)を含む、カバーテープ。 【請求項12】 請求項1に記載のカバーテープであって、 前記中間層は、単層である、カバーテープ。 【請求項13】 電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1〜12のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、 前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-11-02 |
出願番号 | P2020-059687 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B65D)
P 1 651・ 537- YAA (B65D) P 1 651・ 113- YAA (B65D) P 1 651・ 536- YAA (B65D) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
石田 智樹 藤井 眞吾 |
登録日 | 2021-08-16 |
登録番号 | 6930625 |
権利者 | 住友ベークライト株式会社 |
発明の名称 | カバーテープおよび電子部品包装体 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 速水 進治 |