• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B21K
管理番号 1394018
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-07-22 
確定日 2023-02-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第7060176号発明「軸受要素の製造方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、車両の製造方法、軸受要素、軸受、機械、及び車両」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7060176号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7060176号の請求項1〜12に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)7月6日(優先権主張 令和2年7月7日)に国際出願され、令和4年4月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年7月22日に特許異議申立人山田英一(以下単に「申立人」という。)は、上記特許のうち、請求項1に係る特許に対して特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第7060176号の上記特許異議の申立てが行われた請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
所定形状を含む第1ピースを用意する第1工程であり、前記所定形状は軸方向に並んで配される第1リング部と第2リング部とを含み、前記第1リング部の内径及び外径は前記第2リング部の内径及び外径に比べてそれぞれ大きい、前記第1工程と、
前記第1ピースを加工して第2ピースを得る第2工程であり、前記第2ピースは、前記第1リング部に対応する第3リング部と前記第2リング部に対応する第4リング部とを含む、前記第2工程と、
互いに分かれた第1リング要素と第2リング要素とを得る第3工程であり、前記第1リング要素は前記第3リング部に対応し、前記第2リング要素は前記第4リング部に対応する、前記第3工程と、
を備え、
前記第2工程は、
第1部材と、前記第1部材の内側に配された第2部材と、を含む第1セットを用意することと、
第3部材と、前記第3部材の内側に配された第4部材と、を含む第2セットを用意することと、
ダイスの内側かつ前記ダイスの軸方向における第1側に前記第1部材及び前記第2部材を配置することと、
前記ダイスの内側かつ前記ダイスの前記軸方向における第2側に前記第3部材及び前記第4部材を配置することと、
前記軸方向における前記第1セットと前記第2セットとの間に前記第1ピースが配置された状態で、前記第2セットに対して相対的に前記第1セットを前記軸方向に相対的に移動させるとともに、(i)前記第1部材における前記第2側を向く面と、(ii)前記第2部材における前記第2側を向く面と、(iii)前記第3部材における第1側を向く面と、(iv)前記第4部材における前記第1側を向く面と、(v)前記ダイスにおける前記第1側を向く面とを、前記第1ピースに接触させ、前記第1ピースを変形させることと、
を有する、
軸受要素の製造方法。」

第3 申立理由の概要
1 申立理由における主張
申立人は、証拠として下記2の証拠一覧の甲第1号証〜甲第4号証(以下甲第1号証を「甲1」、同様に甲第2〜4号証をそれぞれ「甲2」〜「甲4」という。)を提出した。そして、主たる証拠を甲1、従たる証拠を甲2〜甲4として、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張する。

2 証拠一覧
(1)甲第1号証:特開2018−12109号公報
(2)甲第2号証:特開平8−52530号公報
(3)甲第3号証:特開2019−51526号公報
(4)甲第4号証:特開平11−285770号公報

第4 各甲号証の記載
1 甲1の記載内容
(1)甲1の記載事項
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
円筒部を有する金属製の中間素材を造った後、
この円筒部の軸方向端面の径方向端部を、金型装置を構成する金型に設けられた円環状の面取り加工面に押し付ける事により、この円筒部の軸方向端部周縁に正規の面取り部を形成する工程である、冷間鍛造による面取り加工工程を行う、
円筒状リング部材の製造方法であって、
前記円筒部の軸方向端部周縁に、その径方向の幅寸法が前記正規の面取り部の径方向の幅寸法よりも大きい、予備の面取り部を形成した状態で、前記冷間鍛造による面取り加工工程を行う事を特徴とする、
円筒状リング部材の製造方法。
【請求項2】
前記金型装置は、前記面取り加工面と同軸に且つ径方向に隣接して配置された円輪状の抑え面が設けられた第二金型を更に備えたものであり、
前記冷間鍛造による面取り加工工程は、前記円筒部の軸方向端面の径方向端部を前記面取り加工面に対し、この軸方向端面のうちでこの径方向端部と径方向に隣接する部分を前記抑え面に対し、それぞれ軸方向に押し付ける事により行い、
前記冷間鍛造による面取り加工工程を行う際に、前記抑え面を、前記円筒部の軸方向端面の径方向中間部に最初に接触させる、
請求項1に記載した円筒状リング部材の製造方法。
【請求項3】
前記予備の面取り部を形成する為の加工と、前記中間素材を得る過程で行われる他の部位を形成する為の加工とを、冷間鍛造により同時に行う、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した円筒状リング部材の製造方法。」

イ 発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばラジアル転がり軸受や一方向クラッチ等を構成する内輪及び外輪を造る為の素材となる、円筒状リング部材を製造する方法の改良に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、円筒部の軸方向端部周縁に形成する面取り部の形状精度を良好にできる製造方法を実現すべく発明したものである。
・・・
【0017】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜6を参照しつつ説明する。
本例の場合には、第一工程で、図1の(A)に示す様な円柱状のビレット8を、同図の(B)に示す様な第一中間素材21とする。次に、第二工程で、この第一中間素材21を、図2の(B)に示す様な第二中間素材22とする。次に、第三工程で、この第二中間素材22を、図3に示す様な第三中間素材23とする。次に、第四工程で、この第三中間素材23を、図4の(B)に示す様な第四中間素材24とする。更に、その後の工程で、この第四中間素材24を、例えば、前述の図11の(F)→(G)に示す様に打ち抜き加工を施して、それぞれが円筒状で直径が互いに異なる、小径円筒状リング部材18及び大径円筒状リング部材20とする。そこで、以下、これら各工程のうち、第一工程〜第四工程に就いて、具体的に説明する。尚、本例に関する以下の説明中、上下方向は、図1〜6の上下方向を意味する。但し、図1〜6の上下方向は、必ずしも加工時の上下方向と一致するとは限らない。
・・・
【0030】
「第三工程」
第三工程では、前記第二中間素材22に打ち抜き加工を施して、この第二中間素材22の底板部49を打ち抜き、図3に示した前記第三中間素材23とする。尚、図示の例では、この底板部49の打ち抜き方向を上方としているが、本発明を実施する場合には、この打ち抜き方向を下方とする事もできる。何れにしても、上述の様な第三中間素材23は、前記打ち抜き加工を施す為の装置から取り出し、次の第四工程に送る。
【0031】
「第四工程」
第四工程では、前記第三中間素材23に対し、図4〜5に示す様な金型装置50により、冷間鍛造による加工を施す事で、前記小径円筒部46の形状及び寸法を、最終製品の形状及び寸法に近づけて、前記第四中間素材24とする。尚、本例の場合には、この第四工程が、特許請求の範囲に記載した冷間鍛造による面取り加工工程に相当する。
この様な第四工程で使用する、前記金型装置50は、ダイス26aと、スリーブ51と、ダイスピン27aと、パンチ28bとを備える。
【0032】
前記ダイス26aは、段付円筒状の内周面を有する。即ち、このダイス26aの内周面は、互いに同軸に配置された、下側の小径円筒面部29aと上側の大径円筒面部30aとを、これら小径、大径両円筒面部29a、30aの中心軸に直交する円輪状の段部31aにより連続させた段付円筒状である。
【0033】
又、特許請求の範囲に記載した第二金型に相当する、前記スリーブ51は、円筒状に造られたもので、前記ダイス26aの中心孔の小径円筒面部29aの下端部乃至中間部に径方向のがたつきなく内嵌されている。又、このスリーブ51の内径は、前記第三中間素材23の小径円筒部46の内径よりも大きく、且つ、この小径円筒部46の下端部内周縁に設けられた前記第一予備R面取り部36の外径よりも僅かに小さくなっている。又、前記スリーブ51の上端面は、このスリーブ51の中心軸に直交する円輪状の抑え面52になっている。
【0034】
又、特許請求の範囲に記載した金型に相当する、前記ダイスピン27aは、段付円柱状に造られたもので、前記スリーブ51に径方向のがたつきなく内嵌されている。この様なダイスピン27aは、互いに同軸に配置された、上端部に位置する小径円柱部53と、下端部乃至中間部に位置する大径円柱部54とを備えると共に、これら小径、大径両円柱部53、54の外周面同士を、特許請求の範囲に記載した面取り加工面に相当する、第一正規R面取り加工面55により連続させている。この第一正規R面取り加工面55は、径方向内側に向かう程上方に向かう方向に傾斜した、断面形状が1/4凹円弧形で円環状の面である。前述した様に、この第一正規R面取り加工面55の断面形状の曲率半径r1は、前記第一予備R面取り加工面32(前記第一予備R面取り部36)の断面形状の曲率半径R1よりも小さくなっている(r1<R1)。又、前記第一正規R面取り加工面55の断面形状は1/4凹円弧形である為、この第一正規R面取り加工面55の径方向(及び軸方向)の幅寸法もr1である。従って、本例の場合、前記第一予備R面取り部36の径方向(及び軸方向)の幅寸法R1は、前記第一正規R面取り加工面55の径方向(及び軸方向)の幅寸法もr1よりも大きくなっている。又、この様なダイスピン27aは、前記大径円柱部54を、前記スリーブ51に径方向のがたつきなく内嵌した状態で、前記第一正規R面取り加工面55を、前記スリーブ51の上端面である抑え面52の径方向内側に隣接配置している。
【0035】
又、特許請求の範囲に記載した金型装置を構成する金型に相当する、前記パンチ28bは、段付円柱状に造られたもので、前記ダイス26aの中心孔の大径円筒面部30aの内側に上方から挿入され、この大径円筒面部30aと同軸に設けられている。この様なパンチ28bは、互いに同軸に配置された、下端部に位置する小径円柱部56と、上端部乃至中間部に位置する大径円柱部57とを備えると共に、これら小径、大径両円柱部56、57の外周面同士を、段部58により連続させている。この段部58は、径方向内端部を除く部分が、中心軸に直交する円輪状の押圧面59になっていると共に、径方向内端部が、特許請求の範囲に記載した面取り加工面に相当する、第二正規R面取り加工面60になっている。この第二正規R面取り加工面60は、径方向内側に向かう程下方に向かう方向に傾斜した、断面形状が1/4凹円弧形で円環状の面である。前述した様に、この第二正規R面取り加工面60の断面形状の曲率半径r2は、前記第二予備R面取り加工面33(前記第二予備R面取り部37)の断面形状の曲率半径R2よりも小さくなっている(r2<R2)。又、第二正規R面取り加工面60の断面形状は1/4凹円弧形である為、この第二正規R面取り加工面60の径方向(及び軸方向)の幅寸法もr2である。従って、本例の場合、前記第二予備R面取り部37の径方向(及び軸方向)の幅寸法R2は、前記第二正規R面取り加工面60の径方向(及び軸方向)の幅寸法もr2よりも大きくなっている。又、前記大径円柱部57の外径(前記押圧面59の外径)は、前記中心孔の大径円筒面部30aよりも小さく、この中心孔の小径円筒面部29aの内径と実質的に同じ大きさになっている。
【0036】
この様な金型装置50により、前記第三中間素材23に対し、上述の様な冷間鍛造による加工を施す場合には、図4の(A)及び図5の(A)に示す様に、前記金型装置50に前記第三中間素材23をセットする。具体的には、前記パンチ28bを前記ダイス26aの中心孔の内側に挿入する前に、前記第三中間素材23のうち、前記小径円筒部46を前記中心孔の小径円筒面部29aに、前記大径円筒部47をこの中心孔の大径円筒面部30aに、それぞれ径方向のがたつきなく内嵌すると共に、前記第三中間素材23を前記段部31aに載置する(この段部31aに、前記大径円筒部47及び前記連結部48の下面を突き当てる)。これと共に、前記小径円筒部46の下端面のうち、前記第一予備R面取り部36に対して径方向外側に隣接した部分を、前記スリーブ51の上端面である抑え面52のうち、径方向内端寄り部分(径方向内端縁よりも少しだけ径方向外側に寄った部分)に接触させる。尚、この状態で、前記ダイスピン27aに設けられた第一正規R面取り加工面55は、前記小径円筒部46の下端面の径方向内端部に設けられた前記第一予備R面取り部36と接触はせず、軸方向に近接対向した状態となる。そして、この状態で、前記パンチ28bを、前記中心孔の大径円筒面部30aの内側に上方から挿入し、このパンチ28bの小径円柱部56を、前記小径円筒部46の上端部に径方向のがたつきなく内嵌する。これと共に、前記パンチ28bの段部58のうち、前記押圧面59を、前記小径円筒部46の上端面のうちで、前記第二予備R面取り部37の径方向外側に隣接する部分に突き当てる。尚、この状態で、前記段部58のうち、前記第二正規R面取り加工面60は、前記小径円筒部46の上端面の径方向内端部に設けられた前記第二予備R面取り部37と接触はせず、軸方向に近接対向した状態となる。
・・・
【0038】
そして、本例の場合には、上述の様に金型装置50に第三中間素材23をセットした状態から、図4の(A)→(B)の順、及び、図5の(A)→(B)の順に示す様に、前記パンチ28bを更に下降させて、このパンチ28bの段部58(前記押圧面59及び前記第二正規R面取り加工面60)と、前記スリーブ51の抑え面52及び前記ダイスピン27aの第一正規R面取り加工面55との間で、前記第三中間素材23の小径円筒部46を軸方向に圧縮する(これに伴い、前記押圧面59及び前記第二正規R面取り加工面60を、前記小径円筒部46の上端面に対し軸方向に押し付けると共に、この小径円筒部46の下端面を、前記抑え面52及び前記第一正規R面取り加工面55に対し軸方向に押し付ける)。これにより、前記小径円筒部46の軸方向寸法を、所定の長さになるまで縮める。これと同時に、この小径円筒部46の上端面のうち、前記第二正規R面取り加工面60を押し付けた部分である径方向内端部(内周縁)に、この第二正規R面取り加工面60と合致する、断面形状が1/4凸円弧形の第二正規R面取り部62を形成する。即ち、この第二正規R面取り部62の断面形状の曲率半径は、前記第二正規R面取り加工面60と同じくr2となる。更に、これと同時に、前記小径円筒部46の下端面のうち、前記第一正規R面取り加工面55に押し付けた部分である径方向内端部(内周縁)に、この第一正規R面取り加工面55と合致する、断面形状が1/4凸円弧形の第一正規R面取り部61を形成する。即ち、この第一正規R面取り部61断面形状の曲率半径は、前記第一正規R面取り加工面55と同じくr1となる。又、上述した様に、本例の場合には、この様な第四工程の加工に伴い、前記抑え面52が前記小径円筒部46から加わる下方への圧力に基づいて少しだけ下方に変位し、この加工の終了段階で、この抑え面52と前記第一正規R面取り加工面55の下端縁との上下位置が一致する。尚、本例の場合には、前記第一、第二各正規R面取り部61、62が、それぞれ特許請求の範囲に記載した正規の面取り部に相当する。
この様にして得られた第四中間素材24に、前記小径円筒部46を打ち抜く(これら小径、大径両円筒部46、47を分離する)為の打ち抜き加工や前記連続部48を除去する為の打ち抜き加工その他研削、切削等の後加工を施す事で、ラジアル玉軸受1を構成する外輪2及び内輪3(図10参照)を造る。」

ウ 図面
「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

・・・
【図10】

【図11】


(2)甲1の記載事項の整理
ア 【請求項1】、段落【0001】、【0008】、【0017】、【0030】及び図3の記載からみて、甲1には、軸受の内輪及び外輪を造るための素材である円筒状リング部材を製造する方法に関するものであって、その第一工程〜第三工程において、円筒部の形状を有する第三中間素材23を造るものである。
イ 段落【0017】、【0030】、及び図3の図示内容からみて、甲1記載の軸受けの製造方法は、第三工程後において、第三中間素材23の円筒部の形状は、軸方向に並んで配される大径円筒部47と小径円筒部46とを含み、大径円筒部47の内径及び外径は小径円筒部46の内径及び外径に比べてそれぞれ大きい。(以下、この第三工程後における第三中間素材23の大径円筒部47及び小径円筒部46を、それぞれ「第三工程後の大径円筒部47」及び「第三工程後の小径円筒部46」という。)
ウ 段落【0017】、【0031】、及び図4の図示内容からみて、甲1記載の軸受の製造方法は、第四工程において、第三中間素材23を加工して第四中間素材24とし、この第四工程後における第四中間素材24の大径円筒部47及び小径円筒部46は、上記第三中間素材23の第三工程後における大径円筒部47及び小径円筒部46にそれぞれ対応する。(以下、この第四工程後における第四中間素材24の大径円筒部47及び小径円筒部46を、それぞれ「第四工程後の大径円筒部47」及び「第四工程後の小径円筒部46」という。)
エ 段落【0001】、【0017】、【0038】、及び図10〜11の図示内容からみて、甲1記載の軸受の製造方法は、軸受の外輪となる大径円筒状リング部材20と内輪となる小径円筒状リング部材18とを得るために、小径及び大径両円筒部46及び47を分離する工程を有し、大径円筒状リング部材20は上記第四工程後の大径円筒部47に対応し、小径円筒状リング部材18は上記第四工程後の小径円筒部46に対応する。
オ 段落【0031】〜【0035】、及び図4の図示内容からみて、上記第四工程で用いられるために設けられる金型装置50の上側の金型はパンチ28bを含み、下側の金型はスリーブ51と、スリーブ51の内側に配されたダイスピン27aを含むものである。
また、ダイス26aの内側かつダイス26aの軸方向における上方に上側の金型に含まれるパンチ28bが配置され、ダイス26aの内側かつダイス26aの軸方向における下方に下側の金型に含まれるスリーブ51及びパンチ28bが配置されている。
カ 段落【0036】、【0038】、及び図4〜5の図示内容からみて、上記ウの第四工程においては、軸方向における上側の金型と下側の金型との間に第三中間素材23が配置された状態で、下側の金型に対して相対的に上側の金型を軸方向に相対的に移動させるとともに、上側の金型に含まれるパンチ28bにおける下方を向く面と、下側の金型に含まれるスリーブ51における上方を向く面と、下側の金型に含まれるダイスピン27aにおける上方を向く面と、ダイス26aにおける上方を向く面とを、第三中間素材23に接触させ、この第三中間素材23を変形させることが、認められる。

(3)甲1発明
上記(1)及び(2)からみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

「円筒部の形状を有する第三中間素材23を造る第一工程〜第三工程であり、前記円筒部の形状は軸方向に並んで配される第三工程後の大径円筒部47と第三工程後の小径円筒部46とを含み、前記第三工程後の大径円筒部47の内径及び外径は前記第三工程後の小径円筒部46の内径及び外径に比べてそれぞれ大きい、前記第一工程〜第三工程と、
前記第三中間素材23を加工して第四中間素材24とする第四工程であり、前記第四中間素材24は、前記第三工程後の大径円筒部47に対応する第四工程後の大径円筒部47と前記第三工程後の小径円筒部46に対応する第四工程後の小径円筒部46とを含む、前記第四工程と、
分離された大径円筒状リング部材20と小径円筒状リング部材18とを得るために、小径及び大径両円筒部46及び47を分離する工程であり、前記大径円筒状リング部材20は前記第四工程後の大径円筒部47に対応し、前記小径円筒状リング部材18は前記第四工程後の小径円筒部46に対応する、前記小径及び大径両円筒部46及び47を分離する工程と、
を備え、
前記第四工程は、
パンチ28bを含む金型装置50の上側の金型を設け、
スリーブ51と、前記スリーブ51の内側に配されたダイスピン27aと、を含む金型装置50の下側の金型を設け、
ダイス26aの内側かつ前記ダイス26aの軸方向における上方に前記パンチ28bを配置することと、
前記ダイス26aの内側かつ前記ダイス26aの前記軸方向における下方に前記スリーブ51及び前記パンチ28bを配置することと、
前記軸方向における前記上側の金型と前記下側の金型との間に前記第三中間素材23が配置された状態で、前記下側の金型に対して相対的に前記上側の金型を前記軸方向に相対的に移動させるとともに、前記パンチ28bにおける前記下方を向く面と、前記スリーブ51における上方を向く面と、前記ダイスピン27aにおける前記上方を向く面と、前記ダイス26aにおける前記上方を向く面とを、前記第三中間素材23に接触させ、前記第三中間素材23を変形させることと、
を有する、
軸受要素の製造方法。」

2 甲2の記載内容
(1)甲2の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,フランジ付中空部品の製造方法,特に冷間鍛造による製造方法に関する。
・・・
【0009】
【課題の解決手段】本発明は,少なくとも,外周にフランジを有すると共に,軸方向に深穴を有する筒部と底穴を有する底部とを有し,かつ上記深穴と底穴とは連通されているフランジ付中空部品を製造するものであり,しかも,上記フランジを形成する第1キャビティと上記筒部の外径を形成する第2キャビティを有するダイスと,上記第2キャビティ内に挿入され上記深穴を形成するためのカウンタパンチと,上記ダイスに対向配設したアウタパンチ及びインナパンチとを設け,上記ダイスの第2キャビティ内に,金属素材を投入し,該金属素材を上記カウンタパンチと上記アウタパンチと上記インナパンチとにより冷間鍛造して,上記金属素材を据え込み加工して上記フランジと底部とを形成すると共に上記第2キャビティと上記カウンタパンチとにより押出し加工して上記筒部を形成することを特徴とするフランジ付中空部品の冷間鍛造方法にある。
・・・
【0013】上記アウタパンチの内孔は,フランジ付中間材の底部の外径と同一の内径寸法を有する。上記内孔に挿入されたインナパンチは,上記底部と同一の外径寸法を有する。上記ダイスは,軸方向にフローティング状態に保持され,該ダイスと上記カウンタパンチとは相対的に移動可能に配設されている,複動機構の金型を用いることが好ましい。これにより,スムーズな成形を行うことができる。
・・・
【0022】このハウジング14におけるフランジ付中間材(図1b)を製造するに当たっては,図2に示す製造工程を行う。即ち,まず,図2aに示すごとく,上記フランジ3を形成する第1キャビティ61と上記筒部25の外径を形成する第2キャビティ62を有するダイス53とを準備する。また,上記第2キャビティ62内に挿入され上記深穴2を形成するためのカウンタパンチ56と,上記ダイス53に対向配設したアウタパンチ52及びインナパンチ51とを準備する。
【0023】そして,図2aに示すごとく,上記ダイス53の第2キャビティ61内に,焼き鈍し処理をして潤滑処理を施した金属素材10を投入する。次いで,図2b,cに示すごとく,該金属素材10を上記カウンタパンチ56とアウタパンチ52とインナパンチ51とにより冷間鍛造する。これにより,上記金属素材10を据え込み加工して上記フランジ3と底部45とを形成すると共に,上記第2キャビティ62と上記カウンタパンチ56とにより押出し加工して上記筒部25を形成する。なお,上記金属素材10は,焼き鈍し,潤滑処理したものを用いたが,焼き鈍しのない素材でも良いし,潤滑処理の代用として油を用いても良い。
・・・
【0027】上記カウンタパンチ56の外径は,上記フランジ付中間材12の筒部25の深穴2の径と同じ寸法に設けられている。上記第2キャビティ62内において,カウンタパンチ56との間に形成された筒状の空間は上記筒部25の厚みと同じ寸法となる。上記インナパンチ51を挿入するアウタパンチ52の内孔520は,フランジ付中間材12の底部45の外径と同一の内径寸法を有する。
・・・
【0029】次に,ハウジング14の冷間鍛造方法においては,図2aに示すごとく,まず,焼き鈍しをして潤滑処理を施した金属素材10を上記第2キャビティ62内の投入保持部58に投入する。このとき,第2キャビティ62内には,カウンタパンチ56が挿入されているため,その上面560に金属素材10の下面101が当接し,保持される。なお,上記金属素材10は焼き鈍し,潤滑処理を施したものを用いたが,焼き鈍しのない素材でも良いし,潤滑処理の代用として油を用いても良い。
【0030】次いで,図2bに示すごとく,アウタパンチ52とインナパンチ51を軸方向にダイス53に向かって平行移動させて,アウタパンチ52をダイス53に当接すると共にインナパンチ51を金属素材10の上面102に当接させる。
【0031】次いで,図2cに示すごとく,金属素材10を圧縮する方向に,カウンタパンチ56を相対的に平行移動させ,冷間鍛造を行う。即ち,上記インナパンチ51,アウタパンチ52を下降させ,カウンタパンチ56は固定したままである。また,ダイス53は,上記ダイクッション54により上方に付勢されているが,アウタパンチ52の押圧力によって下降する。
・・・
【0036】上記のごとく,本例によれば,深穴の形成と同時にフランジを成形することができるフランジ付中空部品の冷間鍛造方法を提供することができる。また,本例においては,ダイス53,カウンタパンチ56,アウタパンチ52,インナパンチ51よりなる,複動機構の冷間鍛造金型を用いるので,加工が容易である。」

イ 図面
図2「



(2)甲2の記載事項の整理
ア 段落【0009】、【0023】、【0027】、【0031】、及び図1〜2の記載からみて、甲2記載の冷間鍛造装置は、アウタパンチ52と、アウタパンチ52の内孔520に挿入されたインナパンチ51を配設している。
イ 段落【0022】、【0029】〜【0031】の記載からみて、インナパンチ51とアウタパンチ52は、ダイス53の軸方向における上方側に配設されている。

(3)甲2記載の技術的事項
上記(1)及び(2)からみて、甲第2号証には、以下の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「ダイス53の軸方向における上方側に、アウタパンチ52と、アウタパンチ52の内孔520に挿入されたインナパンチ51を配設した冷問鍛造装置。」

3 甲3の記載内容
(1)甲3の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0001】
本発明は、大形のヘリカルギヤの中間体等の鍛造方法に関する。
・・・
【0022】
本実施形態の鍛造装置100は、中央パンチ1とリングパンチ2からなる上型10と、ダイ3とノックアウト4からなる下型20とを備える。中央パンチ1は上型ホルダ11に固定され、上型ホルダ11はスライド201に固定される(図1)。リングパンチ2は圧力制御によりリングパンチ2の上昇及び下降動作を制御する油圧シリンダ5を備える。鍛造装置100の中央上方に位置する中央パンチ1はリングパンチ2に内嵌され、上型スリーブ12によりリングパンチ2の外側部が固定保持される。上型10及び上型スリーブ12を固定する上型ホルダ11はダイセットに内蔵されてプレス機200のスライド201に取り付けられる。下型20は上型10に対向配置され下型ホルダ21に固定されており、下型スリーブ22によりダイ3の外側部が固定保持されている。下型20及び下型スリーブ21を固定する下型ホルダ21はダイセットに内蔵されてプレス機200のボルスタ202に取り付けられる。ノックアウト4はノックアウトピン203の上部に接続する。本実施の形態の鍛造装置100は、円柱形状の素材Wから中間体であるカップ形状の機械部品を成形する。特に後工程で大形のヘリカルギヤを温間鍛造で製造する過程で必要な中間体、すなわち素形材を製造する。
・・・
【0024】
中央パンチ1の先端部は長い円柱形状であって、中央パンチ1はリングパンチ2に内嵌されるとともに、鍛造装置100の中心軸線上に下向きに配されている。リングパンチ2は内周面に中央パンチ1が挿入された構成をとり、中央パンチ1とリングパンチ2とはダイ5の内周面に挿入可能であり摺動自在とされる。また中央パンチ1を不動状態としたまま、リングパンチ2を上型ホルダ11とともに油圧シリンダ5の油圧制御によって上下動させることも可能である。ノックアウト4は鍛造装置100の中心軸線上であってダイ3の内部に上向きに配されている。ノックアウトピン203は素材Wの成形完了した後に、BKO(ベッドノックアウト)を施すために使用される。ノックアウトピン203は中央パンチ1に対向配置されるともに、ノックアウト4の下方に位置してダイ3に内嵌されている。
・・・
【0026】
鍛造装置100のスライド201は上昇及び下降動作可能とされている(図1→図2→図4)。中央パンチ1やリングパンチ2を備える上型10は上型ホルダ11に固定され、上型ホルダ11はスライド201に取り付けられているため、これらはスライド201と一体的に上昇及び下降動作が可能である(図1→図2)。すなわち中央パンチ1やリングパンチ2はスライドの上下動により上昇及び下降動作し、素材Wを上方から押圧可能である(図2)。またリングパンチ2は油圧シリンダ5の油圧制御によって中央パンチ1や上型ホルダ11に対して上下に摺動する(図2、図3)。この時、中央パンチ1の外周部がリングパンチ2の内周部に摺接しながら上昇又は下降動作する。したがって中央パンチ1は素材Wの上面中央部を押圧可能であり、リングパンチ2は素材Wの上面外周部を押圧可能である(図3→図4)。このように中央パンチ1とリングパンチ2は一体的に素材Wを押圧可能であるし(図1→図2)、互いに独立して素材Wを押圧することも可能である(図3→図4)。ノックアウト4の下方には素形材を突き上げるためのノックアウトピン203が配されており(図4)、ノックアウトピン203を上昇させることによってノックアウト4を上昇させてノックアウト4の上部で素形材の下部を押圧し、素形材をノックアウトさせることが可能である(不図示)。したがって鍛造装置100の動作中、ダイ3とノックアウト4とは不動状態で下型ホルダ20及びボルスタ202に保持することもできるし(図1→図2→図3→図4)、ダイ3は不動状態のままとしてノックアウト4とノックアウトピン203とを一体的に上下動作させることもできる(不図示)。
【0027】
(鍛造方法)
図5は、本実施の形態の鍛造加工方法を示すステップ図である。本実施の形態の鍛造方法を説明する。
【0028】
本実施の形態の鍛造方法は、中央パンチ1とリングパンチ2からなる上型10と、ダイ3とノックアウト4からなる下型20とを備え、中央パンチ1はスライド201に固定されて動き、リングパンチ2は圧力制御する油圧シリンダ5を備えた、1000トン〜1200トンクラス程度の温間鍛造装置100が使用される(図1)。ダイ3とノックアウト4によって形成されたキャビティ内に素材Wを配置(S0)した後に(図5)、中央パンチ1の押圧面1aとリングパンチ2の押圧面1aとを同じ高さ位置にして素材を押圧し、コーナー部に欠肉がある状態で据え込み加工を完了させる第1ステップ(S1)と、リングパンチに作用していた油圧を低下させた後に後方押し出しを開始し、押し出された素材Wの上面とリングパンチとの接触により荷重が急激に上昇する直前で後方押し出し加工を完了する第2ステップ(S2)とにより中間体(素形材)を得る(図5)。そしてノックアウト4でノックアウトする第3ステップにより素形材を取り出す(S3)。第1ステップから第3ステップまでの一連のステップは、一工程中の連続する加工動作であり、1つの金型(ダイセット)を用いて行われる。本実施の形態の鍛造方法では950℃以下の温間温度領域に加熱しながら矩形断面の円柱形状素材を一工程で成形加工するものであり、別工程でフランジに穴の打ち抜きをするピアス加工工程(Z1)を含めると、二工程でリング状の中間体の製造が可能である。好ましくはピアス加工工程の後に、温間鍛造による歯形成形工程(Z2)を行う。この鍛造方法により1000トン〜1200トンクラス程度の温間鍛造装置のみを使用して出発素材から最終加工品までを三工程で終えることができる(図5)。」

イ 図面
(ア)図1〜4「


(イ)図5「



(2)甲3の記載事項の整理
ア 段落【0022】、【0024】、【0026】、【0028】、【030】、【0031】、図1〜4の記載からみて、甲3記載の鍛造装置100は、中央パンチ1とリングパンチ2、からなる上型10と、ダイ3とノックアウト4からなる下型20を備えるものである。
イ 上記中央パンチ1は、鍛造装置100の中心軸線上に配されてリングパンチ2の内周面に挿入されている。

(3)甲3記載の技術的事項
上記(1)及び(2)からみて、甲第3号証には、以下の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されている。

「リングパンチ2と、中心軸線上に配されてリングパンチ2の内周面に挿入された中央パンチ1とからなる上型10と、ダイ3とノックアウト4からなる下型20を備えた鍛造装置100。」

4 甲4の記載内容
(1)甲4の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はアンダカットを有する部品を鍛造するための鍛造用金型装置に関する。
・・・
【0023】図1において1は上型2と下型3よりなる金型本体で、上型2は鍛造プレスのスライド4下面に、上型取付け板5を介して取付けられ、下型3は鍛造プレスのボルスタ6上面に、下型取付け板7を介して取付けられている。上記上型2は、スライド4の下面に当接する上面板2aと、上型取付け板5の下面に係止部材2b及び固着具7を介して係止された上型ホルダ2cを有しており、この上型ホルダ2cの中心部に設けられた上ダイ2dの上端部は、固定リング2e及び固着具8により上記上面板2aの下面に固着されている。
【0024】上記上ダイ2dは円筒状をなしていて、中心部に上マンドレル2fと、その周囲にノックアウトリング2gが上下摺動自在に収容されており、上マンドレル2fの上端は押圧板2hを介して上面板2aの下面に当接され、上ノックアウトリング2gの上端面はピース2iを介して、スライドノックアウトピン10a下端に当接されている。
・・・
【0027】一方上記下型3は、下型取付け板7の上面に下型ホルダ3bが固定されていて、この下型ホルダ3b内に上リング3cと、下リング3dが上下2段に設けられており、これら上下リング3c,3d内に固定プレート3eが例えば3層に設けられている。上側の2層の固定プレート3eは、上リング3e内に設けられたホルダ部材3f内に収容されていると共に、ホルダ部材3fは、係止リング3g及びナット3hを介して下型ホルダ3bの上部に固定されている。
【0028】また上記ホルダ部材3fの中心部には、筒状の下ダイ3iが設けられている。上記下ダイ3iの中心部には、下マンドレル3jと、その周囲にパンチ3k、下ノックアウトリング3mが設けられていて、下マンドレル3j及びパンチ3kの下端面は、下面板3oを介して固定プレート3eの上面に当接され、下ノックアウトリング3mの下端面は、ピース3nを介してベッドノックアウト12のノックアウトピン12aの上端に当接されている。上記ベッドノックアウト12及び前述したスライドノックアウト10は、それぞれノックアウトバー12b,10bを有していて、鍛造後のノックアウト動作時にそれぞれノックアウトピン12a,10aを突き出すようになっている。」
イ 図面
(ア)図1「


(イ)図3「



(2)甲4の記載事項の整理
ア 段落【0023】の記載からみて、甲4記載の鍛造プレスの金型本体1は、上型2と下型3よりなる。
イ 段落【0024】の記載からみて、上記上型2の上ダイ2dの中心部に上マンドレル2fと、その周囲にノックアウトリング2gが上下摺動自在に収容されており、したがって、甲4記載の鍛造プレスは、上型2に上下摺動自在なノックアウトリング2gと、ノックアウトリング2gの内周で上ダイ2dの中心部に上マンドレル2fを収容している。
ウ 段落【0027】〜【0028】の記載からみて、下型3は、パンチ3kと下マンドレル3jが設けられている。

(3)甲4記載の技術的事項
上記(1)及び(2)からみて、甲第4号証には、以下の技術的事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「ノックアウトリング2gと、ノックアウトリング2gの内周で上ダイ2dの中心部に上マンドレル2fを収容した上型2と、パンチ3kと下マンドレル3jが設けられた下型3からなる金型本体1を備えた鍛造プレス。」

第5 当審の判断
1 本件発明と甲1発明
(1)対比
ア 甲1発明の「円筒部の形状を有する」は本件発明の「所定の形状を含む」に、同様に「第三中間素材23を造る」は「第1ピースを用意する」に、「第一工程〜第三工程」は「第1工程」に、「第三工程後の大径円筒部47」は「第1リング部」に、「第三工程後の小径円筒部46」は「第2リング部」に、それぞれ相当する。
イ 甲1発明の「第四中間素材24とする」は「第2ピースを得る」に、同様に「第四工程」は「第2工程」に、「第四工程後の大径円筒部47」は「第3リング部」に、「第四工程後の小径円筒部46」は「第4リング部」に、それぞれ相当する。
ウ 甲1発明の「分離された」は本件発明の「互いに分かれた」に、同様に「大径円筒状リング部材20」は「第1リング要素」に、「小径円筒状リング部材18」は「第2リング要素」に、「小径及び大径両円筒部46及び47を分離する工程」は「第3工程」に、それぞれ相当する。
エ 甲1発明の「金型装置50の上側の金型を設け」ることは「第1セットを用意する」ことに相当する。そして、甲1発明の「パンチ部材28bを含む」と本件発明の「第1部材と、前記第1部材の内側に配された第2部材と、を含む」を対比すると、両者は「部材を含む」という点に限り一致する。
オ 甲1発明の「スリーブ51」は本件発明の「第3部材」に、同様に「ダイスピン27a」は「第4部材」に、「金型装置50の下側の金型を設け」ることは「第2セットを用意する」ことに相当する。
カ 甲1発明の「ダイス26a」は本件発明の「ダイス」に、同様に「上方」は「第1側」に相当する。
そして、甲1発明の「ダイス26aの内側かつ前記ダイス26aの軸方向における上方に前記パンチ28bを配置する」ことと、本件発明の「ダイスの内側かつ前記ダイスの軸方向における第1側に前記第1部材及び前記第2部材を配置する」ことを対比すると、両者は「ダイスの内側かつ前記ダイスの軸方向における第1側に部材を配置する」ことに限り一致する。
キ 甲1発明の「下方」は本件発明の「第2側」に、相当する。

(2)一致点及び相違点
上記(1)より、本件発明と甲1発明は、以下の点でアの点で一致し、イの点で相違する。
ア 一致点
所定形状を含む第1ピースを用意する第1工程であり、前記所定形状は軸方向に並んで配される第1リング部と第2リング部とを含み、前記第1リング部の内径及び外径は前記第2リング部の内径及び外径に比べてそれぞれ大きい、前記第1工程と、
前記第1ピースを加工して第2ピースを得る第2工程であり、前記第2ピースは、前記第1リング部に対応する第3リング部と前記第2リング部に対応する第4リング部とを含む、前記第2工程と、
互いに分かれた第1リング要素と第2リング要素とを得る第3工程であり、前記第1リング要素は前記第3リング部に対応し、前記第2リング要素は前記第4リング部に対応する、前記第3工程と、
を備え、
前記第2工程は、
部材を含む第1セットを用意することと、
第3部材と、前記第3部材の内側に配された第4部材と、を含む第2セットを用意することと、
ダイスの内側かつ前記ダイスの軸方向における第1側に部材を配置することと、
前記ダイスの内側かつ前記ダイスの前記軸方向における第2側に前記第3部材及び前記第4部材を配置することと、
を有する、
軸受要素の製造方法。」

イ 相違点
本件発明の第2工程において用意される「第1セット」が、「第1部材と、前記第1部材の内側に配された第2部材」を含むのに対して、甲1発明の第四工程において設けられる「金型装置50の上側の金型」は、単に「パンチ28b」を「部材」として含むのみであることに起因して、甲1発明は、本件発明の以下の(ア)〜(ウ)の技術的事項を備えない点。
(ア)(第1セットが)「第1部材」と「第1部材の内側に配された第2部材」の両方を含むこと。(特許異議申立書記載の構成要素D)
(イ)ダイスの軸方向における第1側(上側)に「第1部材及び第2部材を配置する」こと。(特許異議申立書記載の構成要素F)
(ウ)軸方向における第1セットと第2セットとの間に第1ピースが配置された状態で、第2セットに対して相対的に第1セットを前記軸方向に相対的に移動させるとともに、(i)第1部材における第2側を向く面と、(ii)第2部材における第2側を向く面と、(iii)第3部材における第1側を向く面と、(iv)第4部材における第1側を向く面と、(v)ダイスにおける第1側を向く面とを、第1ピースに接触させ、第1ピースを変形させること。(特許異議申立書記載の構成要素H)

2 相違点の検討
(1)パンチ構成に関する周知技術について
上記第4の2(3)、3(3)、及び4(3)で認定した甲2〜甲4記載の技術的事項は、いずれも、金型装置50の上側の金型(パンチ)が、外側の部材と.外側の部材の内側に配された内側の部材を含むものを例示している。すなわち、甲2記載の技術的事項においては、アウタパンチ52及びインナパンチ51、甲3記載の技術的事項においては、リングパンチ2及び中央パンチ1、甲4記載の技術的事項においては、ノックアウトリング2g及び上マンドレル2fを、それぞれ外側の部材及び内側の部材として例示している。
そして、これらの例示からみて、上記相違点の(ア)の技術的事項に関する(第1セットが)「第1部材」と「第1部材の内側に配された第2部材」の両方を含むことの構成自体、及び相違点の(イ)の技術的事項に関するダイスの軸方向における第1側(上側)に「第1部材及び第2部材を配置すること」の構成自体、換言すれば、「ダイスの軸方向における上側のパンチ部材の構造として、第1部材と、当該第1部材の内側に配された第2部材とを含むように構成すること」は周知技術(以下「上側パンチ部材の構造の周知技術」という。)であると一応認められる。

(2)甲1発明への上側パンチ部材の構造の周知技術の適用について
ア 本件発明の「第2工程」(本件特許明細書における、第1実施例の図6に示される「第4工程」、第2実施例及び第3実施例の図14に示される「第5工程」)は、「第1セット」及び「第2セット」の両方のそれぞれに2つの部材を用意して第1ピースを変形するものであって、1つの工程で、第4リング部(小径円筒部16b、27b)の軸方向寸法を所定の寸法(Ls)に規制し、かつ内径側に面取り部(3b1及び3b2)を形成する(段落【0075】,【0147】,【0173】、及び図6,14を参照)という技術的意義が認められる。
イ これに対して、甲1発明は、「第2セット」に相当する「金型装置50の下側の金型」には、2つの部材(スリーブ51及びダイスピン27a)が設けられるものの、「第1セット」に相当する「金型装置50の上側の金型」には、1つの部材(パンチ28b)が設けられるものである。
そして、甲1発明の「金型装置50の下側の金型」の構成は、甲1の段落【0038】記載のように、パンチ28bの段部58と、スリーブ51の抑え面52及びダイスピン27aの第一正規R面取り加工面55との間で、第三中間素材23の小径円筒部46を軸方向に圧縮することにより、小径円筒部46の軸方向寸法を、所定の長さになるまで縮めると同時に、第二正規R面取り部62及び第一正規R面取り部61を形成するものであるから、金型装置50の上側の金型のパンチ28bのみで、小径円筒部46の軸方向寸法を所定の寸法に規制しつつ、内径側面取り部を形成することができ、本件発明と同様に、上記アの技術的意義を有するものである。
ウ そうすると、(1)で検討したとおり相違点の(ア)及び(イ)に関する技術的事項が、甲2〜甲4記載の技術的事項にも例示される上側パンチ部材の構造の周知技術であるとしても、甲1発明には、上記アの技術的意義を、パンチ28bという1部材のみで本件発明と同様に実現する構成が示されているところ、パンチ28bに係る構成を、殊更に2部材にして複雑化する必要性を認めるに足る証拠はないから、上側のパンチ部材の構造に関する周知技術を適用して、上記相違点の(ア)及び(イ)の技術的事項を備えるように改変する動機があるとはいえず、したがって、甲1発明と当該周知技術に基づいて、本件発明を当業者が容易に想到し得たものということはできない。

3 小括
以上より、本件発明は、甲1発明、及び甲2〜甲4記載の技術的事項に例示される上側パンチ部材の構造の周知技術によっては、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2023-01-25 
出願番号 P2021-568754
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B21K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 鈴木 貴雄
特許庁審判官 刈間 宏信
田々井 正吾
登録日 2022-04-18 
登録番号 7060176
権利者 日本精工株式会社
発明の名称 軸受要素の製造方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、車両の製造方法、軸受要素、軸受、機械、及び車両  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 清水 雄一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ