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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1394034
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-11-02 
確定日 2023-01-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第7079988号発明「ドライブレコーダー、ドライブレコーダー用表示装置及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7079988号の請求項1〜3、10に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第7079988号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜10に係る特許についての出願は、平成29年5月19日に出願した特願2017−100423号の一部を令和3年4月12日に新たな特許出願としたものであって、令和4年5月26日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和4年6月3日)がされた。
その後、令和4年11月2日に特許異議申立人宮川貴浩により請求項1〜3、10に対して特許異議の申立てがされた。

2 本件発明
本件特許の請求項1〜3、10に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明3」、「本件発明10」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜3、10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

〔本件発明1〕【請求項1】
水平方向の360度の範囲を2つのカメラで撮影するドライブレコーダーであって、
前記2つのカメラが、それぞれ反対向きを撮影するようにし、
取付手段で車室内に取り付けた状態では、前記2つのカメラがそれぞれ撮影する映像の周縁に、車両のピラーが映るようにしたドライブレコーダー。

〔本件発明2〕【請求項2】
前記2つのカメラは、それぞれで撮影された映像の周縁を繋いで1つの映像を構成するためのものであり、
前記2つのカメラでそれぞれ撮影した周辺領域のつなぎ部分が目立たなくする手段を備えた
請求項1に記載のドライブレコーダー。

〔本件発明3〕【請求項3】
前記2つのカメラで撮影する領域が、周縁部分で重なるように当該2つのカメラを配置する
請求項1または2に記載のドライブレコーダー。

〔本件発明10〕【請求項10】
前記2つのカメラは、それぞれ測光機能を備え、
その2つのカメラのそれぞれの測光機能による測光結果を用いて前記2つのカメラの露出条件を決定する
請求項1から9のいずれかに記載のドライブレコーダー。

3 特許異議申立理由
特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。

本件発明1は、甲第1号証から容易に発明をすることができたものである(相違点は周知技術又は設計的事項にすぎない)。なお、「水平方向の360度の範囲を2つのカメラで撮影する」こと、及び「前記2つのカメラが、それぞれ反対向きを撮影する」ことは、甲第1号証に記載されているほか、甲第2号証及び甲第3号証に示すように、周知技術である。また、「取付手段で車室内に取り付けた状態では、前記2つのカメラがそれぞれ撮影する映像の周縁に、車両のピラーが映るようにした」ことは、甲第4号証及び甲第5号証に示すように、周知技術又は設計的事項にすぎない。
本件発明2及び本件発明3は、甲第1号証に甲第5号証又は甲第6号証を組み合わせることで容易に発明をすることができたものである。
本件発明10は、甲第1号証に甲第7号証を組み合わせることで容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1〜本件発明3、本件発明10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2009−199572号公報
甲第2号証:特開2009−280109号公報
甲第3号証:特開2010−271675号公報
甲第4号証:特表2016−515969号公報
甲第5号証:中国特許出願公開第103770706号明細書
甲第6号証:特開2008−77628号公報
甲第7号証:特開2016−68665号公報

4 甲号証について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には次の記載がある。なお、以降の下線は当審で付したものである。

「【0040】
また、本発明の自動運転装置は、リアルタイム映像の記録、及び当該自動運転装置から得られたCV値の記録を残しておくことで、事故時の自車を含む関連対象物の位置関係解析と力学的解析をする構成とすることができる。
リアルタイム処理は、精度において困難さが有るが、ドライブレコーダーのように記録した映像を用いれば、精度の高い詳細なデータが取得できるので、事故解析には有益である。」

「【0072】
[CV演算部]
CV演算は、上述した三次元機械地図生成装置110のCV演算装置112(図1参照)として機能する、図13に示すCV演算部2で行われる。
CV演算部2は、図13に示すように、全周ビデオ映像部1から入力されるビデオ映像について所定のCV演算処理を行うことでCV値を求めるようになっており、具体的には、特徴点抽出部2-1と、特徴点対応処理部2-2と、カメラベクトル演算部2-3と、誤差最小化部2-4と、三次元情報追跡部2-5と、高精度カメラベクトル演算部2-6とを備えている。」

「【0075】
全周ビデオ映像部1において全周映像を生成するには、まず、図14及び図15に示すように、全周ビデオカメラ1-1を使用して、CV値データを取得する目的で、走行車輌等の移動体1-1aに固定された全周ビデオカメラ1-1で、移動体1-1aの移動とともに移動体周辺を撮影する。
なお、移動体1-1aには、その位置座標を取得する目的で、例えば、絶対座標を取得するGPS機器単独やIMU機器を付加したもの等により構成した位置計測機器等を備えることができる。
また、移動体1-1aに搭載される全周ビデオカメラ1-1としては、広範囲映像を撮影,取得するカメラであればどのような構成であってもよく、例えば、広角レンズや魚眼レンズ付きカメラ、移動カメラ、固定カメラ、複数のカメラを固定したカメラ、360度周囲に回転可能なカメラ等がある。本実施形態では、図14及び図15に示すように、車輌に複数のカメラが一体的に固定され、移動体1-1aの移動に伴って広範囲映像を撮影する全周ビデオカメラ1-1を使用している。
【0076】
そして、以上のような全周ビデオカメラ1-1によれば、図15に示すように、移動体1-1aの天井部に設置されることで、カメラの360度全周囲の映像を複数のカメラで同時に撮影することができ、移動体1-1aが移動することで、広範囲映像を動画データとして取得できる。
ここで、全周ビデオカメラ1-1は、カメラの全周映像を直接取得できるビデオカメラであるが、カメラの全周囲の半分以上を映像として取得できれば全周映像として使用できる。
また、画角が制限された通常のカメラの場合でも、CV演算の精度としては低下するが、全周映像の一部分として取り扱うことが可能である。」

「【0098】
[自動運転装置]
次に、上述した三次元機械地図及びCV演算を利用した本発明の自動運転装置の一実施形態について、図26を参照しつつ説明する。
同図に示すように、本実施形態に係る自動運転装置130は、上述したナビゲーション装置120と同様、三次元機械地図121(図3、図4参照)と、移動する車両に積載されたカメラからのリアルタイム映像122(図8参照)とを、比較演算する構成となっている。
具体的には、自動運転装置130は、車載カメラ装置131と、アルタイム映像生成装置132と、比較装置133と、三次元機械地図121と、再生探索装置134と、一致出力装置135と、CV値取得装置136と、走行情報取得装置137と、対象物情報取得装置138と、自動走行装置139とを備えている。
【0099】
車載カメラ131は、車両に固定されて設置され、車両周囲の映像を取得する。例えば、車載カメラ131は、図14で示したように、全周ビデオカメラ1-1を移動体(車両)1-1aの屋根の中心に設置して、車両の移動とともに車両周辺の映像を撮影する。また、車載カメラ131は、後述する図31に示すように、複数のカメラを車両の屋根に所定の配置レイアウトで設置することもできる。
リアルタイム映像生成装置132は、車載カメラ131から出力するリアルタイム映像を取得する。
比較装置133は、車両に車載された三次元機械地図121と、車載カメラ131で撮影されたリアルタイム映像を、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等、車両に搭載した情報処理装置で保持・格納し、当該PCのメモリ内で比較する。」

「【0113】
なお、以上説明した本発明に係る自動運転装置においても、上述したナビゲーション装置と同様に、車両に積載したリアルタイム映像の記録、及び/又は当該自動運転装置から得られたCV値の記録を元として、事故等の特殊な時点に於いて、当該車両を含む関連対象物それぞれの、及びそれらの関係について力学的解析を行うことができる。
また、リアルタイム映像を前記三次元機械地図と同様のアルゴリズムで分析及び解析して、単純幾何学図形を抽出し、前記三次元機械地図を更新することもできる。」

「【0123】
また、空間解析装置172は、リアルタイム映像を取得するとともに、リアルタイム映像からCV値を取得し、取得したCV値により、三次元空間の概略と自車位置と姿勢の関係を求める。
このCV値の演算は、上述したCV値取得装置136(図26参照)におけるのと同様に行うことができる(図13〜図25参照)。
ここで、リアルタイム映像を取得するには、例えば、上述した図14に示したような車載カメラにより取得できるが、本実施形態では、図31に示すように、複数のカメラを車両の屋根等に所定の配置レイアウトで設定することでリアルタイム映像を取得するようにしてある。
【0124】
具体的には、図31に示すように、カメラ1とカメラ2の二個対になった複合カメラを用い、それぞれ水平視野角135度を確保し、合成視野角として270度以上の水平視野角を確保する。二個のカメラで合成視野角270度を確保できないときは、三個のカメラとすることで目的の合成視野角を確保すればよい。
このような対のカメラを車両の4カ所(車両前方2カ所、後方2カ所)に取り付けて、水平方向には360度の全周視野を確保し、後述するように、一部重複視野としてその視差も利用する。重複視野については後述する。
これにより、本実施形態では、4カ所計8個のカメラで水平方向全視野を確保していることになる。この計8個のカメラから得られる映像を結合合成して全周映像を生成する。以下これをリアルタイム映像として扱う。
なお、図31に示すように、車両の屋根中央部分(図31のA)の位置に、水平全方向を撮影できる全周カメラを取り付けるようにしても良い。」

「【図14】



「【図15】



「【図31】



イ 甲1発明
上記アから、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を示した。

〔甲1発明〕
ドライブレコーダーのように記録したリアルタイム映像を用いる自動運転装置であって、(【0040】)

車載カメラ装置を備えており、(【0098】)
車載カメラは、車両に固定されて設置され、車両周囲のリアルタイム映像を取得するものであり、例えば、全周ビデオカメラを移動体(車両)の屋根の中心に設置して、車両の移動とともに車両周辺の映像を撮影するものであって、車輌に複数のカメラが一体的に固定され、移動体の移動に伴って広範囲映像を撮影する全周ビデオカメラを使用し、以上のような全周ビデオカメラによれば、移動体の天井部に設置されることで、カメラの360度全周囲の映像を複数のカメラで同時に撮影することができ、(【0099】、【0075】、【0076】、【0124】)
また、複数のカメラを車両の屋根に所定の配置レイアウトで設置することもでき、具体的には、二個対になった複合カメラを用い、それぞれ水平視野角135度を確保し、合成視野角として270度以上の水平視野角を確保し、このような対のカメラを車両の4カ所(車両前方2カ所、後方2カ所)に取り付けて、水平方向には360度の全周視野を確保し、これにより、4カ所計8個のカメラで水平方向全視野を確保していることになり、この計8個のカメラから得られる映像を結合合成して全周映像を生成し、(【0099】、【0124】)

リアルタイム映像の記録を元として、事故等の特殊な時点に於いて、当該車両を含む関連対象物それぞれの、及びそれらの関係について力学的解析を行うことができる(【0113】)

自動運転装置。

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には次の記載がある。

「【0013】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
図1は、車両1に備えられた車載カメラと超音波センサの位置を示している。図1のAは車両を上側から見た図であり、図1のBは車両の側面図である。車両1には車載カメラと超音波センサを備えている。
【0014】
フロントカメラ2a、2b、2cと、バックカメラ3a、3b、3cと、サイドカメラ4a、4b、4cは、第一の車載カメラとし、車内および車両前方を撮影する車載カメラ5a、5bを第二の車載カメラ(例えばドライブレコーダ5に搭載されている)とする。また、周辺カメラは新規に設けなくてもよく、既存の車載カメラを用いてもよい。フロントカメラ2a、2b、2cの撮影範囲は(1)に示す範囲(車両前方)である。バックカメラ3a、3b、3cの撮影範囲は(3)に示す範囲(車両後方)である。サイドカメラ4a、4b、4cの撮影範囲は(4)に示す範囲(車両側面のドアガラスより下側)である。カメラ5a、5bの撮影範囲は(2)に示す範囲(車内および前方)である。図1のA、Bに示すように複数の車載カメラを使用することによりドライブレコーダに搭載されている第二の車載カメラ5a、5bの死角部分である(1)(3)(4)の撮影が可能になる。」

「【0034】
ステップS42では、ドライブレコーダに搭載されている第二の車載カメラ5a、5bが図1に示した(2)の範囲の撮影をする。第二の車載カメラ5a、5bは魚眼レンズを備えているため360度撮影が可能である。」

「【図1】



イ 甲2技術
上記アから、甲第2号証には次の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されている。

〔甲2技術〕
ドライブレコーダに搭載されている、それぞれ車内および車両前方を撮影する2つの車載カメラにおいて、魚眼レンズを備え、360度撮影が可能な技術。

(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には次の記載がある。

「【0006】
また、本発明に係わる記憶装置は、上記二台の電磁波収集装置と上記二台の電磁波方向変換装置を経由して収集された二種類の情報を同時に一個の動画として記録するものであり、事後の画像処理によってそれら二種類の情報を全天から収集された情報として合体し、さまざまな目的に活用できることを特徴とする。」

「【0014】
車載システムとして形成し、周辺道路の状況を記録し、道路案内、案内地図の作成などの目的に供する。」

「【0016】
電磁波収集装置の実装形態である画角185度以上の可視光対応全周魚眼レンズを第一主点(1)に配置することで第一視野(9)を実現し、電磁波収集装置の実装形態である画角185度以上の可視光対応全周魚眼レンズを第二主点(2)に配置することで第二視野(10)を実現する。第一視野(9)から第一主点(1)を経て収集された可視光は、第一経路変換装置(3)により方向を変え、第一経路(16)を経て動画撮像装置(5)へと入射する。第二視野(10)から第二主点(2)を経て収集された可視光は、第二経路変換装置(4)により方向を変え、第二経路(17)を経て動画撮像装置(5)へと入射する。上記動画撮像装置(5)は、第一経路(16)と第二経路(17)を経て入射した可視光を同時に動画として記録し、記憶装置(6)に保存する。第一経路変換装置(3)と第二経路変換装置(4)は、45度直角プリズムで実現し、動画撮像装置(5)と記憶装置(6)は、市販の一般消費者向け、ないしは業務用デジタル・ビデオカメラで実現する。これにより、システムの中心点(11)を中心する、上記主点間の距離(8)と上記魚眼レンズの画角によって決定される距離(7)を半径とする円、すなわち点(11)を中心として、点(12)、ないしは点(13)を通る円の外側から到来する可視光をすべて記録することが可能となる。」

「【図1】



イ 甲3技術
上記アから、甲第3号証には次の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されている

〔甲3技術〕
車載システムを形成する電磁波収集装置において、画角185度以上の可視光対応全周魚眼レンズを第一主点に配置することで第一視野を実現し、画角185度以上の可視光対応全周魚眼レンズを第二主点に配置することで第二視野を実現し、第一視野から収集された可視光及び第二視野から収集された可視光を同時に動画として記録し、システムの中心点を中心とした円の外側から到来する可視光をすべて記録することが可能な技術。

(4)甲第4号証について
ア 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には次の記載がある。

「【請求項27】
車両とその周辺の間の衝突を防止する方法であって、前記方法は、
ドライバー視認位置の前方の車両の一部に表示デバイスを取り付け、前記表示デバイスが、前記車両のフロントガラスの高さ未満の高さと、幅とを有することと、
前記ドライバー視認位置から前記表示デバイスの実質的に後方の環境の少なくとも180度の実質的に後方の視界を生成するために前記表示デバイスの方向を合わせることを備え、前記表示デバイスの後方の前記環境の前記少なくとも180度の実質的後方視界と、視認ポイントの前方の前記ドライバー視認位置からの少なくとも180度の実質的前方視界は、共に360度の運転視界を形成する方法。」

「【0003】
本発明のデバイス及びシステムは、望ましいことに、180度の後方視界を提供することが出来る。幾つかの実施形態では、本発明のデバイス及びシステムは、シームレスな180度の後方視界を提供する。前記180度の後方視界は、車両のドライバーのために360度の視野を形成するために180度の前方視界と結合されることが出来る。本発明のデバイス及びシステムは、車両のドライバーに、自身の車両の周囲の全景を提供することが出来、ドライバーの視界から死角をなくすことが出来る。」

「【0028】
本実施形態のこれらの特徴及びその他の特徴は、以下の詳細な説明を読み、本実施形態の添付の図面の参照により、より明らかになるだろう。
【図1】方向を伴う視覚的測位方位ナビゲーションシステムの一実施形態の斜視図である。
【図1A】方向を伴う視覚的測位方位ナビゲーションシステムの他の実施形態の斜視図である。
【図2】180度の完全な後方視界がドライバーのシームレスな180度の完全な前方視界と混ざり合う時のドライバーに対する360度の完全認識運転視界を示す。
【図3】図2の360度の完全認識運転視界に関する車道のマップを示し、360度の完全認識運転視界の重複視界部分に現れる走行車両を示す。
【図4】図3に示す重複視界部分における走行車両に関するドライバーのシームレスな180度の完全な前方視界を示す。
【図5】図3に示す重複視界部分における走行車両に関するドライバーの180度の完全な後方視界を示す。
【図6】360度の完全認識運転視界に関する車道の他のマップを示し、ドライバー車両を囲む一台又は走行車両に関するドライバーの目線からの方向を伴う測位によるドライバーの車両の方位、場所、及び方向を伴う位置を示し、ドライバーの目線からの車道の方向を伴う視覚的測位方位ナビゲーションマップを示す。
【図7】図6におけるドライバーの車両を囲む走行車両に関するドライバーのシームレスな180度の完全な前方視界を示す。
【図8】図6におけるドライバーの車両を囲む走行車両に関するドライバーの180度の完全な後方視界を示す。
【図9】シームレスな360度の完全認識運転視界に関する車道の他別のマップを示し、車線変更を行おうとするドライバーの車両を示す。
【図10】図9における重複視界部分における走行車両に関するドライバーのシームレスな180度の完全な前方視界を示す。
【図11】図9における重複視界部分における走行車両に関するドライバーの180度の完全な後方視界を示す。
【図12】180度の完全な後方視界がドライバーのシームレスな180度の完全な前方視界と合体する時のピックアップトラック又はコンバーチブルカーのドライバーに対する他の360度の完全認識運転視界を示す。」

「【0036】
図2、図3及び図6は、ディスプレイ10を使用したドライバーの目線からの車道の視覚化マップを示す。ディスプレイ10の180度の後方視界RVは、車両100の周辺の360度の視界を生成するためにドライバーの180度の前方視界FVと結合されることが出来る。180度の前方視界に対して、ドライバー周辺視界線Aが画定され、ドライバーから無限に且つ側方に(例えば、車両100に対して左右の方向に)延びている。」

「【0040】
180度の完全な後方視界をシームレスな180度の完全な前方視界と合体すると、重複視界部分24が形成される可能性がある。例えば、ディスプレイ10がドライバーの前方に(例えば、ドライバーに対して車両の前方に向かって)配置される時は、重複視界部分24が形成されることができる。重複視界部分24は、図2、図3、及び図6に示すように、ドライバーの周辺視界線Aとディスプレイ視認角度側線Bとの間に画定された二重視野である。重複視界部分24は、少なくとも2インチ(約5.08センチメートル)の奥行き(例えば、側線Aと側線Bとの間の距離)、少なくとも4インチ(約10.16センチメートル)の奥行き、少なくとも8インチ(約20.32センチメートル)の奥行き、少なくとも1フィート(約30.48センチメートル)の奥行き、及び/又は少なくとも1ヤード(約91.44センチメートル)の奥行きを有することが出来る。幾つかの実施形態では、重複部分24は、3インチ(約7.62センチメートル)未満の奥行き、6インチ(約15.24センチメートル)未満の奥行き、1フィート(約30.48センチメートル)未満の奥行き、2フィート(約60.96センチメートル)未満の奥行き、及び/又は5フィート(約152.40センチメートル)未満の奥行きを有することが出来る。重複部分24の奥行きは、1インチ(約2.54センチメートル)と6インチ(約15.24センチメートル)との間、2インチ(約5.08センチメートル)と8インチ(約20.32センチメートル)との間、3インチ(約7.62センチメートル)と1フィート(約30.48センチメートル)との間、4インチ(約10.16センチメートル)と20インチ(約50.80センチメートル)との間、1フィート(約30.48センチメートル)と3フィート(約91.44センチメートル)との間、及び/又は6インチ(約15.24センチメートル)と4フィート(約121.92センチメートル)との間とすることが出来る。重複部分24の奥行きについては多くのバリエーションが可能である。
【0041】
360度の完全認識運転視界における重複視界部分24では、ドライバーは、180度の後方視界及びシームレスな180度の前方視界からの二重視野において車両100を見ることが出来る。特に、図3乃至図5に示すように、走行車両210、220、240、250が重複視界部分24に出現すると、走行車両210、220、240、250は、180度の後方視界RV及びシームレスな180度の前方視界FVの両方において見ることが出来る。」

「【0044】
走行車両210の頭(例えば前端)が重複視界部分24に進入する前は、ドライバーは、シームレスな180度の後方視界の左後方視野LRにおいて走行車両210が見えるだけである。図3に示すように、走行車両210の頭が重複視界部分24に位置されると、ドライバーは、図4及び図5に示すように、シームレスな180度の前方視界において走行車両210の頭が、シームレスな180度の後方視界において走行車両210の後端が見えるようになる。走行車両210が、走行車両210の後端が重複視界部分24を通過する点に移動すると、ドライバーは、シームレスな180度の前方視界において走行車両210が見えるだけになる。幾つかの実施形態では、重複視界部分24によって、ドライバーは、運転時にドライバーの目線から裸眼によって且つディスプレイ10を介して同時に同じ走行車両210が見えるようになり、ドライバーに対して車道のシームレスな360度の視野を作り出す。幾つかの実施形態では、重複視界部分24は、特に走行車両がドライバーの車両100を通り過ぎる時、ドライバーが、自身の車の周囲の運転環境において迷う可能性を低減することを支援することが出来る。」

「【0077】
図1Aは、ディスプレイ10’の一実施形態を示し、ディスプレイ10’は、180度の後方視界を生で取得する室内像取得デバイス101’を含む。ディスプレイ10’は、室内像取得デバイス101’から180度の後方視界を表示するためのディスプレイ102’を含むことが出来る。像取得デバイス101’は、車両の室内に設置され、180度の後方視界を生で取得するように構成されたカメラを含むことが出来る。幾つかの実施形態では、像取得デバイス101’は、車両のドライバーの後方又は一直線上に配置される。幾つかの実施形態では、像取得デバイス101’は、ドライバーの前方に配置される。表示手段102’は、室内像取デバイス101’によって取得された180°の後方視界
を表示するためのLED,LCD、又はその他の画面を含むことが出来る。ディスプレイ102’は、室内像取得デバイス101’からの180度の後方視界を車両のフロントガラス上に投影するためのプロジェクタとすることもできる。」

「【図3】



「【図4】



「【図5】


イ 図面に記載された技術的事項
上記アの【0028】、図4及び図5によれば、ドライバーの180度の前方視界及びドライバーの180度の後方視界における周縁に車両のピラーが存在することが記載されている。

ウ 甲4技術
上記ア、イから、甲第4号証には次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されている。なお、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を示した。

〔甲4技術〕
車両のドライバーのために360度の視野を形成するために180度の前方視界と結合されることが出来るシームレスな180度の後方視界を提供するものであって、(【0003】)
走行車両の頭が重複視界部分に位置されると、ドライバーは、運転時にドライバーの目線から裸眼によって、且つ、「車両の室内に設置され、180度の後方視界を生で取得するように構成されたカメラからの180度の後方視界を表示するためのディスプレイ」を介して、同時に同じ走行車両が見えるようになり、ドライバーに対して車道のシームレスな360度の視野を作り出すものであり、(【0044】、【0077】)
ドライバーの180度の前方視界及びドライバーの180度の後方視界における周縁に車両のピラーが存在する(イ)技術。

(5)甲第5号証について
ア 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には次の記載がある。なお、各記載事項の末尾に仮訳を付した。




(仮訳:本明細書で説明する本発明の利点は、カメラを用いて1台以上のカメラで撮影した画像に基づいて画像を合成することができることである。カメラビュー合成では、複数の画像効果を使用する。撮像効果には、複数のカメラによる異なる画像の撮像が含まれ、各カメラは車両の周囲の異なる景色を撮像する。それぞれのカメラは、車両の周囲を異なる視点で捉えている。異なる画像をつなぎ合わせて、シームレスなパノラマ画像を作成することができる。隣接する画像ビューについて、撮影された画像の重複する領域で点のペアを形成するために、共通の注目点が特定される。)





(仮訳:「画像オーバーレイでミラー表示オン」とは、キャプチャ撮像装置で撮像した画像をモデル化して処理し、変形画像として投影したものを、シーンの広角FOVを示す撮像装置24に表示することである。さらに、画像オーバーレイ92(図17に示す)は、バックミラー24の画像表示部に投影される。反射が通常の反射特性を有するバックミラーを通して見られるとき、画像オーバーレイ92は、運転者によって通常見られるであろう車両の部分(例えば、ヘッドレスト、後部窓ガラストリム、Cピラー)を複製する。画像オーバーレイ92は、道路や自車両を取り巻く他の対象との関係における自車両の相対的な位置関係を運転者が認識するのに役立つ。画像オーバーレイ92は、運転者が視界の内容全体を遮られることなく見ることができるように、好ましくは透明である。)





イ 図面に記載された技術的事項
上記アの【0103】、図17によれば、バックミラー24の画像表示部おける中央部の画像には、周縁における画像オーバーレイ92の部分に車両のCピラーが存在することが記載されている。

ウ 甲5技術
上記ア、イから、甲第5号証には次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されている

〔甲5技術〕
複数のカメラのそれぞれが車両の周囲を異なる視点で捉え、異なる画像をつなぎ合わせて、シームレスなパノラマ画像を作成するカメラビュー合成において、
バックミラー24の画像表示部おける中央部の画像には、周縁における画像オーバーレイ92の部分に車両のCピラーが存在する技術。

(6)甲第6号証について
ア 甲第6号証の記載事項
甲第6号証には次の記載がある。

「【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る車両周辺視界支援装置(以下、「視界支援装置」と略記する)1の全体構成ブロック図である。視界支援装置1は、カメラ2L及び2R、パノラマ画像生成部3L及び3R、画像合成部4、映像信号出力部5、並びに、表示装置6を備えている。
【0028】
カメラ2L及び2Rの夫々は、所謂パノラマカメラであり、例えば、図2に示す如く200°以上の視野角を有する。カメラカメラ2L及び2Rの夫々は、例えば、一般に普及している、100°〜140°の画角を有する広角カメラを、複数台、組み合わせることによって形成される。
【0029】
図3に、カメラ2Lの構成例を示す。カメラ2Lは、100°〜140°の画角を有する広角カメラ11及び12を用いて形成される。広角カメラ11及び12は個別に撮影を行い、広角カメラ11及び12の夫々の撮影によって得られた画像を表す撮像信号は、図1のパノラマ画像生成部3Lに送られる。広角カメラ11及び12は、水平方向に異なる視野を有するように配置され、各広角カメラの視野の一部同士は重複している。
【0030】
パノラマ画像生成部3Lは、広角カメラ11及び12から得た各画像を合成することにより、パノラマ画像を生成する。パノラマ画像を生成するに当たっての画像の合成方法としては、上記特許文献5又は6に記載されているような公知の技術を用いればよい。図3に示す如く、カメラ2Lを形成する各広角カメラ(今の場合、広角カメラ11及び12)の光軸が1点で交わるように各広角カメラを水平に並べて配置することにより、パノラマ画像の合成が容易となり、また、カメラ2Lの水平方向の視野角を200°以上とすることができる。尚、図3では、2個の広角カメラを用いてカメラ2Lを構成する例を示しているが、3個以上のカメラを用いてカメラ2Lを構成してもよい。
【0031】
カメラ2R及びパノラマ画像生成部3Rの構成及び機能は、カメラ2L及びパノラマ画像生成部3Lのそれらと同様である。即ち、カメラ2Rは、例えば、広角カメラ11及び12のような複数のカメラから構成され、その複数のカメラの夫々の撮影によって得られた画像を表す撮像信号は、パノラマ画像生成部3Rに送られる。パノラマ画像生成部3Rは、その複数のカメラから得た各画像を合成することにより、パノラマ画像を生成する。
【0032】
尚、レンズ設計や構造が複雑になってしまうが、カメラ2L及び2Rの夫々を、1つのカメラにて構成するようにしても構わない。但し、カメラ2L及び2Rの夫々を1つのカメラにて構成する場合、現状、200°以上の視野角を確保するのが困難であるため、その場合は、適宜、視野角を200°未満とする。
【0033】
以下、パノラマ画像生成部3Lにて生成されたパノラマ画像を左パノラマ画像と呼び、パノラマ画像生成部3Rにて生成されたパノラマ画像を右パノラマ画像と呼ぶ。図1において、画像合成部4は、左パノラマ画像と右パノラマ画像とを合成する。この合成によって得られた画像をワイドパノラマ画像という。このワイドパノラマ画像の合成手法については後述する。ワイドパノラマ画像を表す信号は、映像信号出力部5に送られる。映像信号出力部5は、画像合成部4からの該信号に基づき、ワイドパノラマ画像に基づく表示画像が表示装置6の表示画面上に表示されるように、映像信号を生成して該映像信号を表示装置6に送る。」

「【0072】
例えば、図19(a)に示す右パノラマ画像においては、登録画像パターンRP1と一部画像71との相関が最大となり、右パノラマ画像内における該一部画像71の位置が特定される。そして、右パノラマ画像において、左右のタイヤ24を二分する一部画像71の中心線を合成境界72とする。同様に、図19(b)に示す左パノラマ画像においては、登録画像パターンRP1と一部画像73との相関が最大となり、左パノラマ画像内における該一部画像73の位置が特定される。そして、左パノラマ画像において、左右のタイヤ24を二分する一部画像73の中心線を合成境界74とする。
【0073】
そして、画像合成部4は、図19(a)の右パノラマ画像と図19(b)の左パノラマ画像を、合成境界72及び74にて結合する(即ち、繋ぎ合わせる)ことにより、ワイドパノラマ画像を生成する。つまり、ワイドパノラマ画像は、右パノラマ画像における合成境界72より紙面左側の一部画像75と、左パノラマ画像における合成境界74より紙面右側の一部画像76と、を結合することによって形成される。これによって、図9に示すようなワイドパノラマ画像が得られる。」

「【0080】
また、タイヤ24以外のものを登録画像パターンとして用いて画像合成を行うようにしてもよい。例えば、トレーラ22の底面27又は後端25の予め定められた位置(例えば、図7の中心線36上の位置)にマーカ(目印)を設けておく。このマーカは、図7の共通視野39内に収まるように設置される。そして、右パノラマ画像及び左パノラマ画像上において、そのマーカの位置を特定し、その特定された位置を基準にして合成境界を求めて、右パノラマ画像と左パノラマ画像を合成するようにしてもよい。
【0081】
第2合成手法を用いることによっても、ワイドパノラマ画像上で像が二重に表れたりする不具合の発生が回避でき、適切なワイドパノラマ画像を生成することが可能となる。」

「【図19】



「【図9】



イ 甲6技術
上記アから、甲第6号証には次の技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されている

〔甲6技術〕
複数の広角カメラから得た各画像を合成することにより、パノラマ画像を生成し、
右パノラマ画像と左パノラマ画像を合成境界にて結合する(即ち、繋ぎ合わせる)ことにより、ワイドパノラマ画像を生成する技術であって、
右パノラマ画像及び左パノラマ画像の各々において、左右のタイヤを二分する一部画像の中心線を合成境界とする技術。

(7)甲第7号証について
ア 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には次の記載がある。

「【0042】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
図1及び図2に例示する車両用ルームミラー1は、図3に示すように車両に装備されたルームミラーに被せて装着する後付のルームミラーである。この車両用ルームミラー1は、進行方向前方を撮影する前方カメラ25(図8を参照して後述する。)、後方側を撮影する後方撮像手段の一例である後方カメラ21(図9)、画像表示手段の一例である液晶ディスプレイ30(図4)等を備える電子機器であり、画像の記録機能(録画機能)や表示機能等を有している。なお、以下の説明では、本願発明の車両用ルームミラーを単にルームミラー1といい、車両に元々装備されたルームミラーについては既存ミラーという。」

「【0064】
ドライブレコーダ機能を備えるルームミラー1は、例えば図13のようにシガープラグコード4等の電源コードを介して車両側から電源供給を受けて動作する。シガープラグコード4は、車両のイグニッションスイッチがオンになったときなどに電力供給が開始される車両側のシガーソケット83に接続するためのシガープラグ40を有する電源コードである。シガープラグコード4のプラグ45が電源プラグ37に接続された状態であれば、イグニッションスイッチがオンに切り換えられたときにルームミラー1への電力供給が開始され、ルームミラー1の動作が開始される。」

「【0080】
ルームミラー1は、後方カメラ21のみならず、前方カメラ25を備えている。そのため、ルームミラー1とは別に前方用のカメラ等をフロントガラス等に設置することなく、前方側の撮影画像を取得できる。ルームミラー1を利用すれば、煩雑な設置状況を招来することなく、後方側の撮影画像と前方側の撮影画像との両方を取得できる。
【0081】
なお、ハーフミラーを介して撮影する後方カメラ21と、外部に露出する前方カメラ25とでは、撮影画像の明るさに差が生じる可能性が高いので、明るさの差を抑制するための明るさ調整手段を設けると良い。各カメラ21、25の撮影画像の明るさの差を抑制できれば、例えば、液晶ディスプレイ30に並べて表示したり時間的に切り換えて表示等する際の違和感を少なくできる。調整手段としては、例えば、絞りや露光時間(シャッタースピード)など光学的な調整により画像輝度を調整する手段や、画像輝度をソフトウェア的に調整する手段等を採用すると良い。ソフトウェア的な調整手段としては、例えば、取り付け後の最初の電源投入時に、液晶ディスプレイ30の表示画面に両者の画像を並べて表示し、両画像にそれぞれ対応する明るさ調整スイッチの上下操作で両者の明暗を変化させた状態を表示し、確定スイッチがおされたときにその調整状態を記憶しておいて、その記憶された調整状態に基づいてその後の両者の明るさを調整するものや、例えば、両者の画像輝度をマイコン32のCPUが比較して、例えば随時、自動的に両者の差が小さくなるように調整するもの等が考えられる。ソフトウェア的な画像輝度の調整では、前方カメラ25の撮影画像の明るさを抑え、後方カメラ21の撮影画像の明るさを高めるように制御すると良い。」

イ 甲7技術
上記アから、甲第7号証には次の技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されている

〔甲7技術〕
ハーフミラーを介して撮影する後方カメラと、外部に露出する前方カメラを備え、後方側の撮影画像と前方側の撮影画像との両方を取得できる、ドライブレコーダ機能を備えるルームミラーにおいて、撮影画像の明るさの差を抑制するために、絞りや露光時間(シャッタースピード)など光学的な調整により画像輝度を調整する明るさ調整手段を設ける技術。

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の自動運転装置は、記録したリアルタイム映像をドライブレコーダーのように用いることもできるものであり、事故等の特殊な時点のリアルタイム映像の記録が用いられるから、ドライブレコーダーともいえるものである。

甲1発明の自動運転装置(ドライブレコーダー)が備える、車両周囲のリアルタイム映像を取得する車載カメラである全周ビデオカメラは、カメラの360度全周囲の映像を複数のカメラで同時に撮影することができるものであるから、本件発明1と甲1発明は「水平方向の360度の範囲を複数のカメラで撮影するドライブレコーダー」である点で共通する。
また、甲1発明の、二個対になった複合カメラを用い、それぞれ水平視野角135度を確保し、合成視野角として270度以上の水平視野角を確保し、このような対のカメラを車両の4カ所(車両前方2カ所、後方2カ所)に取り付けて、水平方向には360度の全周視野を確保した構成を備えた自動運転装置(ドライブレコーダー)も、「水平方向の360度の範囲を複数のカメラで撮影するドライブレコーダー」である点で、本件発明1と共通する。

しかしながら、前記複数のカメラが、本件発明1では「それぞれ反対向きを撮影するようにし」た「2つのカメラ」であるのに対し、甲1発明では、360度全周囲の映像を撮影する複数のカメラ、又は、それぞれ水平視野角135度を確保し、合成視野角として270度以上の水平視野角を確保した二個対の複合カメラであって車両の4カ所(車両前方2カ所、後方2カ所)に取り付けられたもの、である点で、両者は相違する。

また、本件発明1では「取付手段で車室内に取り付けた状態では、前記2つのカメラがそれぞれ撮影する映像の周縁に、車両のピラーが映るようにした」構成を備えるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点で、両者は相違する。

以上から、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。

〔一致点〕
水平方向の360度の範囲を複数のカメラで撮影するドライブレコーダー。

〔相違点1〕
前記複数のカメラが、本件発明1では「それぞれ反対向きを撮影するようにし」た「2つのカメラ」であるのに対し、甲1発明では、360度全周囲の映像を撮影する複数のカメラ、又は、それぞれ水平視野角135度を確保し、合成視野角として270度以上の水平視野角を確保した二個対の複合カメラであって車両の4カ所(車両前方2カ所、後方2カ所)に取り付けられたもの、である点。

〔相違点2〕
本件発明1では「取付手段で車室内に取り付けた状態では、前記2つのカメラがそれぞれ撮影する映像の周縁に、車両のピラーが映るようにした」構成を備えるのに対し、甲1発明では当該構成を備えていない点。

(イ)判断
上記相違点のうち、まず相違点2について検討する。

本件発明1は、カメラを車室内に取り付けた状態とするものである。
これに対し、甲1発明のカメラは、「移動体の天井部に設置されることで、カメラの360度全周囲の映像を複数のカメラで同時に撮影することができる全周ビデオカメラ」又は「複数のカメラを車両の屋根に所定の配置レイアウトで設置したもの、具体的には、二個対になった複合カメラを用い、それぞれ水平視野角135度を確保し、合成視野角として270度以上の水平視野角を確保し、このような対のカメラを車両の4カ所(車両前方2カ所、後方2カ所)に取り付けて、水平方向には360度の全周視野を確保したもの」とされており、これらはいずれも車室外(上部)に取り付けられて、360度全周囲の視野を確保するものである。
車室内からはピラー等の車外の視界を妨げる構造物により360度全周囲の視野を確保することができないから、上記甲1発明において全周囲カメラを車室内に取り付けようとする動機は存在しない。
また、「甲1発明におけるカメラを車室内に取り付けた状態とすること」を動機付ける記載は、特許異議申立人が提出した甲号証のいずれにも存在しないし、当該事項が周知技術であるとも認められない。
以上から、甲1発明においてカメラを車室内に取り付けることは、当業者であっても容易に想到しうることではない。

なお、当該相違点2に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書の20〜28頁において、構成要件(c)(取付手段で車室内に取り付けた状態では、前記2つのカメラがそれぞれ撮影する映像の周縁に、車両のピラーが映るようにした)が甲第4号証及び甲第5号証に開示されているように周知技術(あるいは設計的事項といってもよい)にすぎないと主張している。
しかしながら、先に示したとおり、甲1発明におけるカメラを「車室内に取り付けた状態」とすることは、周知技術とは認められないし、車室内に取り付けようとする動機が存在しないカメラである以上設計的事項といえないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。

したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者であっても甲1発明に基づいて容易に発明をすることができた(相違点は周知技術又は設計的事項にすぎない)ものとはいえない。

(2)本件発明2、本件発明3、本件発明10について
本件発明2、本件発明3、本件発明10も、上記相違点に係る構成と同等の構成を備えるものであるから、上記(1)と同じ理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1〜本件発明3、本件発明10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜本件発明3、本件発明10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-01-16 
出願番号 P2021-067215
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H04N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 樫本 剛
渡辺 努
登録日 2022-05-26 
登録番号 7079988
権利者 株式会社ユピテル
発明の名称 ドライブレコーダー、ドライブレコーダー用表示装置及びプログラム  
代理人 松井 伸一  

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