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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B09C
管理番号 1394569
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-12 
確定日 2023-02-09 
事件の表示 特願2018−199105「浄化装置およびオゾン供給装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月30日出願公開、特開2020− 65966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月23日を出願日とする特許出願であって、令和3年6月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和3年8月25日付けで拒絶査定がされ(謄本の送達は同年9月7日)、これに対し、令和3年10月12日に手続補正書が提出されると同時に拒絶査定不服審判の請求がなされ、令和3年12月7日に上申書が提出されたものである。


第2 令和3年10月12日付けの手続補正についての補正の適否
1 補正の内容
令和3年10月12日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、
本件補正前の特許請求の範囲の
「【請求項1】
土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて前記土壌を浄化する浄化装置において、
前記スパージング井戸に接続され、オゾンを発生させるオゾン発生器と、
前記スパージング井戸に接続され、前記スパージング井戸からオゾンが逆流した場合に逆流した前記オゾンを除去するオゾン除去部とを備える浄化装置。
【請求項2】
前記オゾン除去部は、排ガスを処理する排ガス処理部と、
前記排ガス処理部に送出されるオゾンの流量を調整する調整部と
を備える請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記オゾン除去部は、排ガスを処理する排ガス処理部と、
前記オゾン発生器にて発生したオゾンを前記スパージング井戸に送出するか、または、前記排ガス処理部に送出するかを調整する調整部とを備える請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
分岐部と、
前記オゾン発生器と前記分岐部とを接続する第一配管と、
前記分岐部と前記スパージング井戸とを接続する第二配管と、
前記分岐部と前記排ガス処理部とを接続する分岐配管とを備え、
前記調整部は、前記分岐部と前記分岐配管との間に設けられ、
前記調整部は、前記分岐配管の開閉状態を調整する請求項2に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記オゾン発生器と前記調整部とを接続する第一配管と、
前記調整部と前記スパージング井戸とを接続する第二配管と、
前記調整部と前記排ガス処理部とを接続する分岐配管とを備え、
前記調整部は、前記第二配管を開状態として前記分岐配管を閉状態とする、または、前記分岐配管を開状態として前記第二配管を閉状態として調整を行う請求項3に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記第一配管内の管圧が前記第二配管内の管圧よりも高くなると、前記第二配管を開状態として前記分岐配管を閉状態とし、かつ、前記第一配管内の管圧が前記第二配管内の管圧よりも低くなると、前記分岐配管を開状態として前記第二配管を閉状態として調整する請求項5に記載の浄化装置。
【請求項7】
前記スパージング井戸にオゾンの供給を開始する開始時点では、前記オゾン発生器にオゾンの発生を開始する開始信号を送信し、かつ、前記スパージング井戸にオゾンの供給を停止する停止時点では、前記オゾン発生器にオゾンの発生を停止する停止信号を送信する制御部を備えた請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項8】
前記オゾン発生器は、圧力容器と、前記圧力容器内に配置された放電電極とを備え、
前記圧力容器内に導入された原料ガスを前記放電電極にて放電してオゾンを発生させて前記第一配管から送出する請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項9】
前記土壌中に排ガスを吸引する吸引部を用いて前記土壌中の排ガスを吸引する浄化装置において、
前記排ガス処理部は、前記吸引部に接続され、前記吸引部にて吸引した排ガスを処理する請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項10】
前記スパージング井戸にオゾンと異なる加圧供給体を供給する供給部と、
前記供給部と前記スパージング井戸とを接続する第三配管と、
前記第三配管は、前記第二配管に接続される請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項11】
前記供給部は、加圧空気を供給する請求項10に記載の浄化装置。
【請求項12】
前記オゾン発生器には、オゾンの分解を抑制する持続化体を供給する持続化体部が接続され、前記スパージング井戸にはオゾンとともに持続化体が供給される請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項13】
オゾンを供給する必要がある箇所である被供給部にオゾンを供給するオゾン供給装置において、
前記被供給部へと接続され、前記オゾンを発生させるオゾン発生器と、
前記被供給部へと接続され、前記オゾン発生器へオゾンが逆流した場合に逆流した前記オゾンを除去するオゾン除去部とを備えるオゾン供給装置。」

「【請求項1】
土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて前記土壌を浄化する浄化装置において、
前記スパージング井戸に接続してあり、オゾンを発生させるオゾン発生器と、
前記スパージング井戸に接続してあり、前記スパージング井戸に接続してある前記オゾン発生器が発生させた前記オゾンが前記スパージング井戸から逆流した場合に逆流した前記オゾンを除去するオゾン除去部とを備える浄化装置。
【請求項2】
前記オゾン除去部は、排ガスを処理する排ガス処理部と、
前記排ガス処理部に送出されるオゾンの流量を調整する調整部と
を備える請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記オゾン除去部は、排ガスを処理する排ガス処理部と、
前記オゾン発生器にて発生したオゾンを前記スパージング井戸に送出するか、または、前記排ガス処理部に送出するかを調整する調整部とを備える請求項1に記載の浄化装置。
【請求項4】
分岐部と、
前記オゾン発生器と前記分岐部とを接続する第一配管と、
前記分岐部と前記スパージング井戸とを接続する第二配管と、
前記分岐部と前記排ガス処理部とを接続する分岐配管とを備え、
前記調整部は、前記分岐部と前記分岐配管との間に設けられ、
前記調整部は、前記分岐配管の開閉状態を調整する請求項2に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記オゾン発生器と前記調整部とを接続する第一配管と、
前記調整部と前記スパージング井戸とを接続する第二配管と、
前記調整部と前記排ガス処理部とを接続する分岐配管とを備え、
前記調整部は、前記第二配管を開状態として前記分岐配管を閉状態とする、または、前記分岐配管を開状態として前記第二配管を閉状態として調整を行う請求項3に記載の浄化装置。
【請求項6】
前記調整部は、前記第一配管内の管圧が前記第二配管内の管圧よりも高くなると、前記第二配管を開状態として前記分岐配管を閉状態とし、かつ、前記第一配管内の管圧が前記第二配管内の管圧よりも低くなると、前記分岐配管を開状態として前記第二配管を閉状態として調整する請求項5に記載の浄化装置。
【請求項7】
前記スパージング井戸にオゾンの供給を開始する開始時点では、前記オゾン発生器にオゾンの発生を開始する開始信号を送信し、かつ、前記スパージング井戸にオゾンの供給を停止する停止時点では、前記オゾン発生器にオゾンの発生を停止する停止信号を送信する制御部を備えた請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項8】
前記オゾン発生器は、圧力容器と、前記圧力容器内に配置された放電電極とを備え、
前記圧力容器内に導入された原料ガスを前記放電電極にて放電してオゾンを発生させて前記第一配管から送出する請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項9】
前記土壌中に排ガスを吸引する吸引部を用いて前記土壌中の排ガスを吸引する浄化装置において、
前記排ガス処理部は、前記吸引部に接続され、前記吸引部にて吸引した排ガスを処理する請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項10】
前記スパージング井戸にオゾンと異なる加圧供給体を供給する供給部と、
前記供給部と前記スパージング井戸とを接続する第三配管と、
前記第三配管は、前記第二配管に接続される請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項11】
前記供給部は、加圧空気を供給する請求項10に記載の浄化装置。
【請求項12】
前記オゾン発生器には、オゾンの分解を抑制する持続化体を供給する持続化体部が接続され、前記スパージング井戸にはオゾンとともに持続化体が供給される請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の浄化装置。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
本件補正は、請求項1−12について以下の補正1〜補正3を、請求項13について以下の補正4を、その内容とするものである。

(補正1)「オゾン発生器」について、「前記スパージング井戸に接続され、オゾンを発生させる」ものであることを、「前記スパージング井戸に接続してあり、オゾンを発生させる」ものとする補正

(補正2)「オゾン除去部」について、「前記スパージング井戸に接続され、」「前記オゾンを除去する」ものを、「前記スパージング井戸に接続してあり、」「前記オゾンを除去する」ものとする補正

(補正3)逆流する場合について、「前記スパージング井戸からオゾンが逆流した場合」を、「前記スパージング井戸に接続してある前記オゾン発生器が発生させた前記オゾンが前記スパージング井戸から逆流した場合」とする補正

(補正4)請求項13の削除

本件補正が、特許法第17条の2第5項に掲げる事項を目的としたものであるかについて検討する。
補正1〜3は、審判請求書「3.(3)」に、「上記相違をより明確にするため、請求項1に補正を行いました」と審判請求人が説明するように、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りようでない記載の釈明を目的としたものである。
補正4は、審判請求書「3.(1)本願発明の説明」にて同様に審判請求人が説明するとおり、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的としたものである。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定を満たすものである。
以上のとおりであるので、本件補正は適法になされたものである。


第3 本願発明
本件補正は、第2に示したように適法になされたものであるから、この出願の発明は、本件補正後の特許請求の範囲に記載されているとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて前記土壌を浄化する浄化装置において、
前記スパージング井戸に接続してあり、オゾンを発生させるオゾン発生器と、
前記スパージング井戸に接続してあり、前記スパージング井戸に接続してある前記オゾン発生器が発生させた前記オゾンが前記スパージング井戸から逆流した場合に逆流した前記オゾンを除去するオゾン除去部とを備える浄化装置。」


第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、刊行物として以下の引用文献1〜5を引用するものである。

<引用文献>
1.特開2000−325935号公報
2.特開2005−811号公報
3.特開昭56−114809号公報
4.特開2003−89507号公報
5.特開2004−113463号公報


第5 当審の判断
当審は、原査定のとおり、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。

1 刊行物
(1) 特開2000−325935号公報(拒絶査定の文献1に同じ。以下、「刊行物1」という。)
(2) 特開2005−811号公報(拒絶査定の文献2に同じ。以下、「刊行物2」という。)
(3) 特開昭56−114809号公報(拒絶査定の文献3に同じ。以下、「刊行物3」という。)

2 刊行物に記載された事項
(1)刊行物1には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば有機汚染物質含有土壌のような、汚染土壌のオゾン処理方法に関し、さらに詳細には汚染土壌にオゾンを注入して有機汚染物質を分解除去する方法に関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】オゾンは強い酸化特性を有するガスであり、通常は酸素または空気を狭い間隔で配置した高圧電極間に流すことによって製造されている。この方法はコロナ放電法として知られている。オゾンの商業的使用は1890年代後半のヨーロッパにおける飲料水処理が最初であった。以来、今日ではオゾンは飲料水処理と廃水処理の両方に広く使われている。」

ウ 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は有機汚染物質を含む汚染土壌を、少ないオゾン量で効率よく処理して、安価に汚染物質を分解することができる汚染土壌のオゾン処理方法を提供することを目的としている。本発明のこれら以外の目的もまたこの開示によって明かとなるであろう。」

エ「 【0011】本発明の処理方法は、上記のような汚染土壌中に所定時間オゾン注入するオゾン注入工程と、オゾン注入を所定時間停止する休止工程とを繰り返す。オゾン注入は注入井からオゾン含有ガスを注入し、抽出井から吸引することにより汚染土壌の飽和層および/または不飽和層を通過させることによりオゾン処理を行うことができる。オゾン含有ガスはオゾン付加空気またはオゾン付加酸素ガスが用いられる。このような含有ガスはオゾン発生器に空気または酸素付加空気を供給して製造することができる。オゾン濃度は2?15容量%、好ましくは3?7容量%とすることができる。」

オ 【0071】本発明を実施するには多数の処理形態が可能である。その中の一つの形態として、図7に示したように、不飽和層へオゾンを吹き込む方法がある。図7において、1は汚染土壌であって、地下水面2の上側が不飽和層3、下側が飽和層4になっている。不飽和層3には注入井5および抽出井6が設けられている。オゾン処理方法は、注入工程ではオゾン注入装置7から注入井5にオゾン含有ガスを送って、注入孔部8から不飽和層3に注入し、休止工程では酸素含有ガスとして空気を送って注入する。一方、抽出井6では真空ブロア9で吸引することにより、抽出孔部10からオゾン含有ガスまたは空気を吸引して抽出し、オゾン除去装置11でオゾンを除去して排気する。これにより不飽和層3にオゾンおよび空気がそれぞれ間欠的に注入され、オゾン処理およびバイオレメデイエーションが行われる。図7および図8では、注入井一つと抽出井一つしか示されていないが、多数の注入井と多数の抽出井を現地のどこででも容易に使うことができることは理解できよう。パルス添加オゾン処理の、連続オゾン処理法と比較したときの、利点の一つはより少ないオゾン発生器で多数の注入点に役立たせることができることである。

カ 【0073】図9と図10にパルス添加オゾン処理システムの異なる実施形態が描かれている。図9では複数の注入井5がバルブ12を介してオゾンのマニホールド13および空気/酸素のマニホールド14に連絡している。ここでは制御装置15によりバルブ12を切り換えて、オゾン発生器16からオゾンまたはブロア17から空気/酸素を送り、それぞれマニホールド13または14から注入井5に注入する。このように図9にはオゾンのマニホールド13と空気/酸素のマニホールド14が別々になっている平行システムが描かれており、この場合には注入井5にはオゾンまたは空気/酸素が流れる。オゾンまたは空気/酸素の添加はバルブ12で制御される。このバルブ12はソレノイドバルブまたは手動バルブである。図10にはオゾンの配管18が直接に空気/酸素配管19に接続されている共軸システムが描かれている。オゾンの添加量はバルブ12で制御され、この場合もバルブ12はソレノイドバルブまたは手動バルブである。」

キ 「【図面の簡単な説明】
・・・
【図7】不飽和層処理システムの概要図である。
・・・
【図10】オゾンパルス共軸システムの概要図である。
【符号の説明】
1 汚染土壌
2 地下水面
3 不飽和層
4 飽和層
5 注入井
6 抽出井
7 オゾン注入装置
8 注入孔部
9 真空ブロア
10 抽出孔部
11 オゾン除去装置
12 バルブ
13、14 マニホールド
15 制御装置
・・・
【図7】

・・・
【図10】




(2)刊行物2には、次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
【従来の技術】
食品工場における機械の洗浄殺菌並びに用水の殺菌の用途などでオゾン水が広く用いられており、このようなオゾン水の製造では、オゾンガスを水に吸収・溶解させるために散気管やエゼクタを用いることが一般的であるが、気液接触効率を高めると共に装置構成を簡略化するため、静止型混合器でオゾンガスと水とを攪拌混合してオゾンガスの溶解を促進するように構成したオゾン水製造装置が知られている(特許文献1参照。)」

イ 「【0013】
図1は、本発明によるガス吸収装置の概略構成を示す模式図である。このガス吸収装置は、原料水(純水相当)にオゾンを溶解させてオゾン水を生成するものであり、オゾンガスを生成するオゾン発生器(ガス供給手段)1と、このオゾン発生器1で生成したオゾンガスと水とを攪拌混合する静止型混合器2と、この静止型混合器2を流通した気液混合物を滞留させて液中へのオゾンの溶解を進行させる処理槽3とを有している。
【0014】
処理槽3の上部には、原料水を処理槽3内に導入するための原料水導入部5が設けられ、処理槽3の中間部には、生成したオゾン水を引き抜くためのオゾン水回収部6が設けられている。また処理槽3の上部には、処理槽3の気相中に放散されたオゾンガスを回収するための排ガス回収部7が設けられており、ここから回収された排ガスは、排ガス処理器8を経て大気中に放出される。
【0015】
処理槽3の下部には、処理槽3内の水を引き抜いて静止型混合器2に導くための出口部11と、静止型混合器2を流通した水を処理槽3に戻すための入口部12とが設けられており、処理槽3の出口部11と静止型混合器2とを結ぶ配管途中には、処理槽3と静止型混合器2との間で水を循環圧送するためのポンプ13が設けられている。」

ウ 「【0016】
オゾン発生器1で生成したオゾンガスは、静止型混合器2の上流側で水中に注入され、特にここでは、オゾン発生器1がポンプ13の吐出圧より高い圧力(例えば30Pa)でオゾンガスを発生可能なものであり、オゾンガスがポンプ13の下流側で注入される。なお、オゾン発生器のオゾンガスが比較的低圧の場合には、ポンプの上流側でオゾンガスを水中に注入する構成とし、この場合、気体の吸入量を増大させても吸込不能を起こすことがない特性のポンプを用いると良い。また、気体をケーシング内に直接導入する構成のポンプを用いるようにしても良い。」

エ 「【0018】
オゾン発生器1にて生成したオゾンガスを静止型混合器2の上流側に導く配管途中には、オゾン発生器1へのオゾンガスの逆流を防止するために、アブソーバタンク(緩衝容器)21が設けられている。またこのアブソーバタンク21の上流側配管L1には第1バルブV1が設けられ、下流側配管L2には第2バルブV2が設けられている。さらにこのアブソーバタンク21には、オゾンガスを処理槽3の排ガス回収部7に導く配管L3が接続され、この配管L3に第3バルブV3が設けられている。これら第1・第2・第3の各バルブV1・V2・V3は、電動弁または電磁弁からなり、制御盤18により開閉制御される。」

オ 「【0021】
このように構成されたガス吸収装置においては、オゾン発生器1及びポンプ13を起動させると共に、第1・第2の両バルブV1・V2を開くことで、静止型混合器2及び処理槽3にてガス吸収処理が開始し、処理槽3内のオゾン濃度が所定値に達すると、ガス吸収処理を停止する。」

カ 「【0023】
オゾン濃度が所定値に達してガス吸収処理を停止する際には、配管内の残留ガスの排気処理が以下の手順で行われる。すなわち、ポンプ13と共にオゾン発生器1の主要部が停止した後、オゾン発生器1内のコンプレッサが所定時間(例えば5?10秒間)継続して作動し、この間に、まず第1バルブV1を開いたままで、第2バルブV2を閉じると共に第3バルブV3を開いて、残留ガスを処理槽3の排ガス回収部7に導き、排気が終了すると第1バルブV1を閉じる。
【0024】
他方、オゾン濃度が所定値を下回ってガス吸収処理を開始する際には、ポンプ13並びにオゾン発生器1を起動させ、所定時間(例えば10秒)経過した後、第3バルブV3を閉じると共に第1バルブV1を開き、その後、アブソーバタンク21にオゾンガスを充満させた上で第2バルブV2を開く。」

キ 「【図1】



(3)刊行物3には、次の事項が記載されている。
ア 発明の名称
「オゾン発生装置」

イ 第2頁左下欄第7行〜右下欄第13行
「 ところで、オゾンは人体に有害な気体で0.1ppm以上の濃度で人体に影響があることが知られているので、オゾン発生装置及びオゾン処理装置に何らかの異常が起つてオゾンが洩れた場合や、オゾン発生装置を構成するブロワー等の空気源装置、電源装置、及び冷却装置などの故障の際にはすみやかに運転を停止する必要がある。運転を停止するには通常は順序に従つて先づ放電を止め,オゾン発生器以降のオゾンを完全に追い出してから空気源を止めるのであるが、緊急事態の発生や停電の場合などには順序停止が出来ない。かかる場合にはオゾン発生器及びオゾン発生器以降の配管中のオゾン化空気は停止したブロワー等の空気源装置に向つて逆流して、これらの空気吸込口から外部へ出ることになる。オゾンは人体に有害なばかりでなく、強力な酸化力によって配管材やゴム、パッキング等を酸化する。例えばクロロプレンゴムは配管のパッキングや減圧弁のダイヤフラムなどに広く用いられているがオゾンによって容易に酸化されて老化し、弾力性を急速に失いき裂を生じる。又炭素鋼は配管材料や装置材料に用いられているが、これもオゾンにより容易に酸化される。
したがつて、前述した緊急事態や停電時にオゾンが逆流すると人体に有害なに有害な状態になるばかりでなく配管材料もあらかじめ耐オゾン性にある特殊な材料にしておかなければならないという不具合があった。
本発明はかゝる従来のオゾン発生装置の不具合を改良して停電や非常停止のときでも安全でかつ安価なオゾン発生装置を提供することを目的とする。」


3 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「汚染土壌にオゾンを注入して有機汚染物質を分解除去する方法」が記載されている(前記2(1)ア)
その方法を実施する「一つの形態として、図7」が示されており(前記2(1)オ、キ)、その「オゾン処理方法は、注入工程ではオゾン注入装置7から注入井5にオゾン含有ガスを送って、注入孔部8から不飽和層3に注入」するものであることが示される(前記2(1)オ)。
また、オゾン注入のためのオゾン含有ガスは、「オゾン発生器に空気または酸素付加空気を供給して製造する」ものであり(前記2(1)エ)、そのオゾン注入装置7は、図10に示されるようなオゾン発生器16を備え、配管18を通じて、発生させたオゾンを注入井5に送るものである(前記2(1)キ)。
してみると、刊行物1には、
「注入井を用いて汚染土壌にオゾンを注入することにより該汚染土壌に含まれる有機汚染物質を分解除去する装置において、オゾン発生器からのオゾンを含むオゾン含有ガスを、配管を通じて前記注入井に送る、装置」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明の「浄化」は、「有機物による土壌汚染」の「浄化」(段落0009)を意味するから、引用発明の「汚染土壌に含まれる有機汚染物質」の「分解除去」は、本願発明の「土壌を浄化」することに相当する。
引用発明の「注入井」は、汚染土壌に対して、図7(前記2(1)キ)のように挿入されるものであるから、本願発明の「土壌中に挿入されるスパージング井戸」に相当する。
これらを踏まえると、引用発明の「注入井を用いて汚染土壌」「に含まれる有機汚染物質を分解除去する装置」は、本願発明の「土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて前記土壌を浄化する浄化装置」に相当する。
また、引用発明の「オゾン発生器」は、「オゾン」を「発生」させるものであり、その「オゾン発生器」は、「配管」を通じて「注入井」に結合しているから、本願発明の「前記スパージング井戸に接続してあり、オゾンを発生させる前記オゾン発生器」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて前記土壌を浄化する浄化装置において、前記スパージング井戸に接続してあり、オゾンを発生させるオゾン発生器を備える浄化装置」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)浄化装置について、本願発明は、「前記スパージング井戸に接続してあり、前記スパージング井戸に接続してある前記オゾン発生器が発生させた前記オゾンが前記スパージング井戸から逆流した場合に逆流した前記オゾンを除去するオゾン除去部」をさらに備えるのに対し、引用発明では、スパージング井戸に接続したオゾン除去部を備えていない点

5 判断
(1) 相違点1についての検討
ア 刊行物2に記載された技術事項
刊行物2には、「用水の殺菌の用途などでオゾン水が広く用いられており、このようなオゾン水の製造ではオゾンガスを水に吸収・溶解させ」ていること(前記2(2)ア)、そのためのガス吸収装置として、「オゾン発生器1で生成したオゾンガス」を、ポンプ13で循環圧送された水の配管に「注入」するに際して、「オゾン発生器1がポンプ13の吐出圧より高い圧力」「でオゾンガスを発生させ」ることにより「オゾンガスがポンプ13の下流側で注入され」、その結果、オゾン水が製造されること(前記2(2)イ)が記載されている。
このオゾンガス吸収装置には、オゾン発生器から注入箇所に至るオゾン流通配管の途中に、「オゾン発生器1へのオゾンガスの逆流を防止する」ための「アブソーバタンク」が設けられている。このアブソーバタンクには、オゾン発生器側に第1バルブV1を備えた配管L1、注入箇所側に第2バルブV2を備えた配管L2が、そして排ガス回収部7につながる側に第3バルブを備えた配管L3が接続している(前記2(2)エ、キ)。
また「排ガス回収部7」は、「オゾンガスを回収するため」のものであり、「回収された排ガスは、排ガス処理器8を経て大気中に放出」するものである(前記2(2)イ)。
ここで、アブソーバタンクに関する刊行物2の記載をさらに参照する。
刊行物2には、ガス吸収処理を停止する際には、配管内の残留ガスの排気処理が行われることが記載される(前記2(2)カ)。その動作としては、ポンプ13と共にオゾン発生器1の主要部が停止した後、オゾン発生器1内のコンプレッサが所定時間(例えば5〜10秒間)継続して作動し、この間に、まず第1バルブV1を開いたままで、第2バルブV2を閉じると共に第3バルブV3を開いて、残留ガスを処理槽3の排ガス回収部に導き、排気が終了すると、第1バルブを閉じる、というものである(前記2(2)カ)。この動作は、オゾン発生器へのオゾンガスの逆流をさせることなく(前記2(2)エ)、オゾン発生器1の主要部が停止した後に装置内部のオゾンガスを排出するためのものであり、具体的には、オゾン発生器1の主要部が停止した後も第1バルブ及び第2バルブを開のまま継続してコンプレッサから気体を流し、第2バルブを閉めるまでの間に配管L2側より逆流するオゾンはアブソーバタンク止まりとして配管L1でつながるオゾン発生器へのオゾンの逆流を防止しつつ、オゾン発生器における主要部停止動作後5〜10秒と短時間で第2バルブを閉じると同時に排気側の第3バルブをあけることで、配管L2側からアブソーバタンクへと逆流したものを含むアブソーバタンク及び配管部に残留したオゾンガスを、オゾン発生器側に残留したオゾンガスとともに、配管L3を通じて処理槽の排ガス回収部に導いて排出させ、それが終了すると、オゾン発生器側の第1バルブを閉じて、ガス吸収処理の停止を完了するというものである。
そうすると、刊行物2には、
「オゾン水を製造するためのオゾンガス吸収装置であって、オゾン注入箇所に接続したオゾン発生器と、オゾン発生器とオゾン注入箇所との間に存在し、排ガス回収部にも接続された、オゾン発生器へのオゾンガスの逆流を防止するためのアブソーバタンクを有するとともに、オゾン注入箇所側から逆流したオゾンガスを含むアブソーバタンクの残留オゾンガスは、オゾン発生部に残留していたオゾンガスとともに、配管L3より排ガス回収部へと導かれて排気が完了することのできる、オゾンガス吸収装置」
が記載されているといえる。

イ 引用発明に刊行物2に記載の技術事項を組みあわせることについて
引用発明を記載する刊行物1には、従来の技術として、強い酸化特性を有するオゾンがコロナ放電法で製造されること、及びそのようなオゾンは商業的に飲料水処理と廃水処理の両方に広く使われてきていることが記載されていることから(前記2(1)ア)、引用発明に記載される汚染土壌のオゾンによる処理技術とは、そのような従来の技術に関連したものであるといえる。そして、引用発明は、オゾン発生器で製造したオゾンガスの圧力により、汚染土壌中にオゾンを注入する装置に関するものである。
これに対して、刊行物2に記載の技術とは、用水の殺菌の用途などで広く用いられるオゾン水を製造するための技術であって、オゾン発生器で製造したオゾンガスの圧力により、水にオゾンを注入する装置に関連したものである(前記2(2)ア、5(1)ア)。
そうすると、引用発明と刊行物2に記載された技術事項とは、いずれも、オゾンの酸化特性を利用した技術であり、しかも、オゾン発生器で製造したオゾンガスの圧力により、対象にオゾンを注入する装置に関する技術である点で、両者は共通した技術分野にあるものである。
そして、引用発明には、その装置として、オゾン注入に必要な構成が示されるのみであるが、刊行物1及び2に示されるようにオゾンガスは強い酸化特性を有するものであるから、引用発明の装置においても、刊行物2の装置と同様に、オゾンガスがオゾン発生器に逆流することを防止することが望ましいといえる。
そうすると、引用発明の装置においても、刊行物2に記載されるように、その浄化装置において、オゾン発生器と、オゾン注入部である注入井とを結ぶ接続経路中に、オゾン発生器へのオゾンガスの逆流を防止するとともに排ガス回収部へと排気することのできるアブソーバタンクを設けることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(2) 本願発明の効果について
本願明細書の段落0007には「発明の効果」が「本願に開示される浄化装置およびオゾン供給装置によれば、オゾンの逆流を防止し、装置の品質の低下を防止できる」こととして記載されている。そして、段落0004には「オゾンがオゾン発生装置に逆流し、オゾン発生装置およびオゾン発生装置への原料ガス供給部の品質が低下するという問題点があった。また、オゾンの逆流に備えてオゾン発生装置および原料ガス供給部にオゾン耐性を持たせた場合、浄化装置の装置コストが増加するという問題点があった」ことが記載されている。そうすると、本願発明の「装置の品質の低下を防止できる」効果とは、逆流したオゾンによりオゾン発生装置及びオゾン発生装置への原料ガス供給部の品質が低下することを防止できる効果であるといえる。
これに対して、刊行物2には、「オゾン発生器1へのオゾンガスの逆流を防止」するための装置構成とすることが記載されている(0018)。刊行物2には、オゾンガスの逆流を防止できなかったときの問題点について明記されていないので、それは、オゾンガスがオゾン発生器に逆流したときに生じる問題として、当業者に知られた問題であると考えられる。
ここで、オゾン発生装置について記載する刊行物3(2(3)ア)には、「従来のオゾン発生装置の不具合」として、「オゾン発生器及びオゾン発生器以降の配管中のオゾン化空気」が「停止したブロワー等の空気源装置に向つて逆流」してしまうと、「人体に有害な気体」であるオゾンが「これらの空気吸込口から外部へ出」てしまうという問題に加え、「オゾンは人体に有害なばかりでなく、強力な酸化力」によって配管材やゴム、パッキング等を酸化する」問題があることが示される(2(3)イ)。さらに、「オゾンが逆流する」という前提に立つと「配管材料もあらかじめ耐オゾン性にある特殊な材料にしておかなければならない」ため「安価なオゾン発生装置」とできない不具合があったことも示される(2(3)イ)。
そうすると、オゾン発生器にオゾンガスが逆流することの問題とは、刊行物3に従来の技術の問題として示されるように、空気中に放出されてしまうと人体に悪影響を及ぼすことと、オゾン発生器を構成する材料の酸化劣化をもたらすこと、また、耐オゾン性の特殊な材料を採用すると安価なオゾン発生装置とできないことがあることが、当業者に知られているといえる。
よって、刊行物2に記載の、オゾン発生器1へのオゾンガスの逆流を防止するための装置構成とは、これらの問題を発生させないためのものといえるから、本願発明の「オゾン発生装置及びオゾン発生装置への原料ガス供給部の品質の低下」を防止する効果とは、刊行物2の記載より当業者が予期できる範囲内の事項であって、格別であるとはいえない。

(3) 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書(3.(3))において、文献1は「土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて前記土壌を浄化する浄化装置」を前提とする発明であるのに対し、文献2は「土壌中に挿入されるスパージング井戸を用いて善意土壌を浄化する浄化装置」を前提とする発明ではなくオゾン水製造装置に関する発明であり、発明の分野が請求項1および文献1とは異なるため、両者を組み合わせる動機付けはないと主張する。
しかしながら、上の5(1)イに示したとおり、引用発明は、オゾンの強い酸化特性が水処理において有用とされてきたことを従来の技術として認識したうえでなされた発明であることに加え、引用発明と刊行物2に記載された技術事項とは、いずれも、オゾンの強い酸化特性を利用した技術であり、しかも、オゾン発生器で製造したオゾンガスの圧力により、対象にオゾンを注入する装置に関する技術であることから、両者は共通した技術分野に属するものであり、刊行物2に記載の技術事項を、引用発明に適用することは容易になし得たことであることに変わりはない。

(4) まとめ
したがって、本願発明は、その特許出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び刊行物2〜3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-11-30 
結審通知日 2022-12-06 
審決日 2022-12-21 
出願番号 P2018-199105
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B09C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 蔵野 雅昭
東 裕子
発明の名称 浄化装置およびオゾン供給装置  
代理人 弁理士法人ぱるも特許事務所  

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