• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1394574
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-13 
確定日 2023-02-03 
事件の表示 特願2018−510066「無線通信の基地局側及びユーザー装置側で用いられる装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月30日国際公開、WO2017/050209、平成30年11月22日国内公表、特表2018−534802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)9月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年9月24日 中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 2年11月13日付け 拒絶理由通知書
令和 3年 1月18日 意見書・手続補正書
7月 6日付け 拒絶査定
10月13日 審判請求書・手続補正書
12月 7日 前置報告書
令和 4年 4月22日付け 拒絶理由通知書
6月27日 意見書・手続補正書

以下では、令和3年7月6日付け拒絶査定を「原査定」といい、令和4年4月22日付け拒絶理由通知書によって通知した拒絶理由を「当審拒絶理由」という。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和4年6月27日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されるとおりのものであると認める。
以下は、後の参照の便宜のために、請求項1の記載に当審でA1〜Eの符号を付して分説したものである。

【請求項1】
A1 参照信号シーケンスを生成するように配置されるシーケンス生成ユニットと、
A2 参照信号を送信するためのアンテナポートの数に応じて、アンテナポートと物理伝送リソースのリソースユニットとのマッピング関係からなる参照信号パターンを確定し、且つ前記参照信号パターンに基づいて前記参照信号シーケンスをリソースユニットにマッピングして伝送に用いるように配置されるリソースマッピングユニットと、
A を含み、
B 前記参照信号パターンは、アンテナポート間の周波数領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化と、前記アンテナポート間の時間領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化とを含み、
C 前記リソースマッピングユニットは、偶数である第1数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第1数と隣接する偶数である第2数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において符号分割多重化し、
D 前記リソースマッピングユニットは、奇数である第3数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第3数と隣接する奇数である第4数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において符号分割多重化し、
E 前記参照信号パターンは、各アンテナポートの電力ゲインが所定の電力増幅器で使用される所定の電力ゲインを超えないように使用される無線通信の基地局側で用いられる装置。

第3 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1〜15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2015−70335号公報
2.特表2013−502139号公報
3.Xinwei,Discussion on Non-precoded CSI-RS enhancement in FD-MIMO[online],3GPP TSG-RAN WG1#82,Internet,2015年 8月14日,R1-154689

第4 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

1.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載について次の点で、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 1〜15
(1)本願発明の実施例を説明するために参照される図面が不鮮明であるため、実施例を理解することができない。

(2)本願の請求項1〜15に係る発明の「符号分割多重化」の実現のしかたが、発明の詳細な説明を参照しても不明である。

(3)発明の詳細な説明に記載された数式に用いられる記号が何を表しているのか不明であり、数式を理解することができない。

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 1〜15
(4)請求項1〜15に係る発明のそれぞれが、発明の詳細な説明(特に、図5〜図20)に記載されたCSI−RSパターンのいずれを含み、いずれを含まないのかが、不明である。

(5)請求項1には「前記リソースマッピングユニットは、偶数である第1数のポート番号を有するアンテナポートと、偶数である第2数のポート番号を有するアンテナポートとに対して配置して、周波数領域において符号分割多重化し、」との記載があるが、「リソースマッピングユニット」が2つのアンテナポートに対して何を「配置」するのかが不明である。

第5 本願発明の明確性についての判断
本願発明は、以下の1〜3に示すように、発明の詳細な説明に記載されたCSI−RSパターンのいずれを含み、いずれを含まないのかが、不明である。

1 請求項1の文言解釈
本願発明の分説Cの文言は、以下に示すように2通りに解釈できる。
本願発明の分説Cは、「前記リソースマッピングユニットは、偶数である第1数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第1数と隣接する偶数である第2数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において符号分割多重化し、」(下線は強調のために当審で付した。以下同様)というものである。
ここで、下線を付した「当該第1数と隣接する」は、文言上、
(i)直後の「偶数」を修飾する、とも解釈できるし、
(ii)「リソースユニット」を修飾する、とも解釈できる。
(その他の修飾関係は、文意が著しく不自然になるため、採用できない。)

なお、前記(ii)の解釈は、修飾語と被修飾語が大きく離れているため、文面だけで見れば、前記(i)の解釈の方が自然である。

2 発明の詳細な説明の記載内容と本願発明との対応関係
以下の(1)〜(3)に示すとおり、発明の詳細な説明に記載された参照信号の配置は、いずれも、前記(i)及び(ii)の解釈それぞれの下での本願発明の参照信号パターンのどちらにも対応するものではない。

(1)前記(i)の解釈に基づく場合
以下のア〜ウに示すように、発明の詳細な説明に記載された参照信号の配置は、いずれも、前記(i)の解釈の下での本願発明の参照信号パターンに対応するものではない。

ア 図5に示されるCSI−RS配置において、符号分割多重化ポートグループのうち、ポート{0,1,8,9}を多重化するもの(【0031】)では、ポート0は、偶数のポートであり、0に隣接する偶数は2であるが、ポート2はポート0とは符号分割多重化されない点で、前記(i)の解釈の下での分説Cと整合しない。
同様に、ポート8についても、8に隣接する偶数は6か10であるが、ポート6もポート10も、ポート8とは符号分割多重化されない点で、前記(i)の解釈の下での分説Cと整合しない。
その他の符号分割多重化ポートグループ({4,5,12,13}、{2,3,10,11}、{6,7,14,15})についても同様である。
したがって、図5に示されるCSI−RS配置は、前記(i)の解釈の下での分説Cに整合しない。

イ その他の図面及び明細書の記載を参照しても、eを偶数として、ポート番号eを有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、ポート番号e±2(すなわちeと隣接する偶数)を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において符号分割多重化を行うような参照信号の配置は記載されていない。

ウ 前記ア及びイによれば、発明の詳細な説明に記載された参照信号の配置は、いずれも、前記(i)の解釈の下での本願発明の参照信号パターンに対応するものではない。

(2)前記(ii)の解釈に基づく場合
以下のア〜オに示すように、発明の詳細な説明に記載された参照信号の配置は、いずれも、前記(ii)の解釈の下での本願発明の参照信号パターンに対応するものではない。

ア 図5に示されるCSI−RS配置において、符号分割多重化ポートグループのうち、ポート{0,1,8,9}について、グレー塗りつぶしで表される配置0では、方式一及び方式二のどちらでも、符号分割多重の対象となるリソースユニットが横一列に並んでいるため、時間領域においての符号分割多重は行われるが、周波数領域においての符号分割多重は行われず、この点において分説Cと整合しない。
図5のCSI−RS配置のポート{0,1,8,9}について、黒ドットで表される配置1では、ポート0のリソースユニット(方式一、方式二ともシンボル9の最上のサブキャリア)に隣接するリソースユニットは、ポート1(右隣)及びポート4(下隣)のリソースユニットであるが、ポート1のリソースユニットは時間領域(図の横方向)においての符号分割多重の対象であって、周波数領域(図の縦方向)においての符号分割多重の対象ではないから、この点において前記(ii)の解釈の下での分説Cと整合しない。また、ポート4はポート0を含む符号分割多重化ポートグループに属していないから、ポート4のリソースユニットはポート0のリソースユニットと符号分割多重されるものではなく、この点において前記(ii)の解釈の下での分説Cと整合しない。
図5のその他の符号分割多重化ポートグループについても同様である。
したがって、図5に示されるCSI−RS配置は、前記(ii)の解釈の下での分説Cに整合しない。

イ 図3(a)には、R1(ポート1)のリソースユニットとR2(ポート2)のリソースユニットとが縦に隣接して並ぶ例が示されており、発明の詳細な説明によれば、「図3の(a)は、第1のアンテナポート1と第2のアンテナポート2が周波数領域においてリソースユニットに対して符号分割多重化する例」(【0023】)であるが、ポート1は、偶数のポート番号ではないから、分説Cに整合しない。

ウ 図3(b)には、R16(ポート16)のリソースユニットとR20(ポート20)のリソースユニットとが縦に隣接して並ぶ例が示されており、「両方とも偶数であるポート16と20が周波数領域において符号分割多重化する」(【0025】)例であり、前記(ii)の解釈の下での分説Cに整合するものである。
しかしながら、本願発明が解決すべき課題は「3D MIMOにおいてサポートできる参照信号を送信するためのアンテナポートの数が増加するため、従来の参照信号のパターンは適用できず、3D MIMOのより多いアンテナポートに適する参照信号パターンを開発する必要がある」(【0005】)点にあり、「既存の1、2、4及び8のアンテナポートから12、16、32及び64のアンテナポートへ拡張する等」(【0020】)の必要があると認められるところ、図3(b)の例は、ポート15、16、19、20の4つのアンテナポートのマッピングのみを示しており、それ以外のアンテナポートのマッピングを示していないから、前記課題を解決できるものとは認められない。
図3(b)に示す例が前記課題を解決できるものでないことは、発明の詳細な説明の「図3の(b)に示すように、アンテナポート15、16、19、及び20が4つの「田」形状のリソースユニットを共通に利用する例が示され、」(【0024】)との記載とも整合する。該記載は、図3(b)が4つのリソースユニットを共通に利用する例であると説明しており、図3(b)が12、16、32及び64のアンテナポートに拡張した参照信号の配置の例であるとは説明していない。
したがって、図3(b)に示される例は、本願発明が解決しようとする課題を解決できるものではないため、本願発明の参照信号パターンに含まれるものとは認められない。

エ その他の図面及び明細書の記載を参照しても、偶数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニット1と、他の偶数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニット2とが隣接しており、これらリソースユニット1及びリソースユニット2に対して周波数領域において符号分割多重化を行う参照信号の配置であって、本願発明の課題を解決できると認められるものは記載されていない。

オ 前記ア〜エによれば、発明の詳細な説明に記載された参照信号の配置は、いずれも、前記(ii)の解釈の下での本願発明の参照信号パターンに対応するものではない。

(3)対応関係のまとめ
前記(1)及び(2)に示すとおり、発明の詳細な説明に記載された参照信号の配置は、いずれも、前記(i)及び(ii)の解釈それぞれの下での本願発明の参照信号パターンのどちらにも対応するものではない。

なお、前記(i)の解釈に合致する参照信号の配置は発明の詳細な説明に皆無であるのに対し、前記(ii)の解釈に合致する参照信号の配置は、課題を解決するものではないものの、図3(b)に見られるから、発明の詳細な説明との整合性だけで見れば、前記(ii)の解釈の方が自然である。

3 本願発明の明確性について
前記1及び2に基づいて、本願発明の明確性について判断する。
前記1のとおり、本願発明の分説Cには2通りの解釈があるが、前記2のとおり、どちらの解釈を参照しても、発明の詳細な説明に記載された実施形態と整合しないため、分説Cの解釈が定まらない。付け加えれば、自然な解釈という点でも、前記1のなお書きと、前記2(3)のなお書きに示したとおり、どちらがより自然であると判断することもできない。
したがって、本願発明は不明確であり、当審拒絶理由に示したとおり、発明の詳細な説明(特に、図5〜図20)に記載されたCSI−RSパターンのいずれを含み、いずれを含まないのかが、不明である。

4 請求人の主張について
(1)請求人は、令和4年6月27日の意見書にて、請求項1を前記第2に示すとおりに補正し、図5〜20において、どのマス目が「グレー塗りつぶし」であり、どのマス目が「黒ドット塗りつぶし」であり、どのマス目が「斜線塗りつぶし」であるのか判断できるようになり、補正後の請求項3に係る「前記参照信号はチャネル状態情報参照信号であり、前記リソースマッピングユニットは、参照信号を送信するためのアンテナポートの数が8より大きい場合、アンテナポート間の周波数領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化を含む参照信号パターンを確定して、リソースマッピングに用いるように配置される」、補正後の請求項4に係る「前記チャネル状態情報参照信号パターンは、一つの物理リソースブロックに基づくパターンと、隣接する2つまたは複数のサブフレームに基づくパターンと、隣接する2つまたは複数の物理リソースブロックに基づくパターンのうちの少なくとも一つを含む」といった記載から、補正後の各請求項に係る発明が、CSI−RSパターンのいずれを含み、また、CSI−RSパターンのいずれを含まないのかが明確である旨、主張する。
しかしながら、請求項1の記載と発明の詳細な説明との関係を踏まえ、本願発明が実施形態のどのCSI−RSパターンを含み、どれを含まないのかが不明である点は、前記3のとおりであり、これは、図5〜20において、どのマス目が「グレー塗りつぶし」であり、どのマス目が「黒ドット塗りつぶし」であり、どのマス目が「斜線塗りつぶし」であるのかが判断できるようになっても、なお、本願発明の不明確性として存在している。
また、請求項3及び4の記載は、本願発明を規定するものではないので、これらに基づく請求人の主張は前提において失当である。
以上のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(2)請求人は、同意見書にて、補正後の請求項1において、分説C及び分説Dを前記第2に示すとおりに補正したので、これにより、補正後の請求項1に係る発明が明確となった旨、主張するが、前記3のとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

5 小括
前記1〜4のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確とはいえず、特許法36条6項2号の規定を満たさない。

第6 引用文献の記載事項
1 引用文献1の記載事項
(1)引用文献1の記載
原査定で引用された特開2015−70335号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。

ア「【0003】
3GPP標準のリリース12においては、縦方向と横方向等に2次元配置した複数のアンテナ素子を基地局に搭載し、水平方向に加えて垂直方向にビームを形成する3次元MIMO(3D−MIMO:Three Dimensional Multiple Input Multiple Output)が検討されつつある。垂直方向と水平方向にビームを形成することによって、システム特性の改善が期待される。
【0004】
3GPP標準化上は、アンテナポート数が8以下の場合の3D−MIMOを垂直ビームフォーミングと称し、アンテナポート数が8より大きい場合(16、32、64…など)を、FD−MIMO(Full Dimension-MIMO)と称している。FD−MIMOはMassive MIMOと呼ばれることが多い。」

イ「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、3GPP標準のリリース10で規定されているCSI−RSは最大で8アンテナポートまでをサポートしている。しかしながら、FD−MIMOにおけるチャネル品質測定を実現するためには、16、32、64等のような拡張されたアンテナポート数をサポートする必要がある。
【0013】
本発明は、拡張されたアンテナポート数に対応可能なCSI−RSの構成を実現することを目的とする。」

ウ「【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、拡張されたアンテナポート数に対応可能なCSI−RSの構成を実現可能になる。」

エ「【0037】
FD−MIMO局20は、拡張されたアンテナポート数分のCSI−RSのマッピングを生成し、CSI−RSのマッピング情報を移動局30に送信する(S1)。例えば、FD−MIMO局20は、アンテナポート数と、CSI−RSのマッピングを示すインデックス(CSI reference signal configuration)とを移動局30に送信してもよい。このマッピング例については、図5を参照して以下に説明する。また、FD−MIMO局20は、生成されたマッピングに従ってCSI−RSをリソースブロック内のリソースエレメントに多重し、移動局30に送信する(S2)。移動局30は、CSI−RSのマッピング情報に従って、CSI−RSを抽出することができる。移動局30は、CSI−RSを用いてチャネル品質を測定し、CSIを生成し、CSIをFD−MIMO局20に送信する(S3)。
【0038】
図5(A)にアンテナポート数が16の場合のCSI−RSのマッピング例を示す。
【0039】
アンテナポート数が16の場合においても、アンテナポート数が8の場合と同様にCSI−RSのマッピングを生成する。アンテナポート数が8の場合には、図1(C)に示すように、アンテナポート番号(0,1)のCSI−RSが1つのサブキャリアに連続して配置され、アンテナポート番号(4,5)のCSI−RSが次のサブキャリアに連続して配置される。更に、アンテナポート番号(0,1)のCSI−RSと同じシンボル位置に、アンテナポート番号(2,3)のCSI−RSが1つのサブキャリアに連続して配置され、アンテナポート番号(6,7)のCSI−RSが次のサブキャリアに連続して配置される。
【0040】
アンテナポート数が16の場合、例えば、上記のアンテナポート番号(0,1,4,5)及び番号(2,3,6,7)のCSI−RSの配置をアンテナポート番号8〜15のCSI−RSに拡張する。具体的には、アンテナポート番号(8,9)のCSI−RSをアンテナポート番号(0,1)のCSI−RSの次のシンボルに連続して配置する。そして、アンテナポート番号(8,9)のCSI−RSの次のサブキャリアにアンテナポート番号(10,11)のCSI−RSを連続して配置する。更に、アンテナポート番号(12,13)のCSI−RSをアンテナポート番号(2,3)のCSI−RSの次のシンボルに連続して配置する。そして、アンテナポート番号(12,13)のCSI−RSの次のサブキャリアにアンテナポート番号(14,15)のCSI−RSを連続して配置する。」

オ「【0042】
図5(C)にアンテナポート数が32の場合のCSI−RSのマッピング例を示す。
【0043】
アンテナポート数が32の場合も同様に、アンテナポート数が8の場合のアンテナポート番号(0,1,4,5)及び(2,3,6,7)のCSI−RSの配置をアンテナポート番号8〜31のCSI−RSに拡張する。
【0044】
具体的には、アンテナポート数が16の場合と同様に、アンテナポート番号0〜15のCSI−RSを配置する。そして、アンテナポート番号(0,1)のCSI−RSと同じシンボル位置に、アンテナポート番号(16,17)のCSI−RSを1つのサブキャリアに連続して配置し、アンテナポート番号(20,21)のCSI−RSを次のサブキャリアに連続して配置する。更に、アンテナポート番号(24,25)のCSI−RSをアンテナポート番号(16,17)のCSI−RSの次のシンボルに連続して配置する。そして、アンテナポート番号(24,25)のCSI−RSの次のサブキャリアにアンテナポート番号(26,27)のCSI−RSを連続して配置する。同様に、アンテナポート番号(0,1)のCSI−RSと同じシンボル位置に、アンテナポート番号(18,19)のCSI−RSを1つのサブキャリアに連続して配置し、アンテナポート番号(22,23)のCSI−RSを次のサブキャリアに連続して配置する。更に、アンテナポート番号(28,29)のCSI−RSをアンテナポート番号(18,19)のCSI−RSの次のシンボルに連続して配置する。そして、アンテナポート番号(28,29)のCSI−RSの次のサブキャリアにアンテナポート番号(30,31)のCSI−RSを連続して配置する。」

カ「【0050】
なお、図5には、周波数多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)及び時間多重(TDM:Time Division Multiplexing)でCSI−RSをリソースエレメントに多重しているが、符号分割多重(CDM:Code Division Multiplexing)と組み合わせて多重してもよい。例えば、あるアンテナポートのCSI−RSが他のアンテナポートのCSI−RSと符号分割多重され、CSI−RSに確保されたリソースエレメントに多重されてもよい。」

キ「【0052】
図6に、本発明の実施例に係る基地局20のブロック図を示す。基地局20は、CSI−RS生成部201と、CSI−RSマッピング情報格納部203と、CSI−RSマッピング情報通知部205と、多重部207と、送信部209と、受信部211と、CSI処理部213とを有する。
【0053】
CSI−RS生成部201は、チャネル状態情報測定用の参照信号(CSI−RS)を生成する。
【0054】
CSI−RSマッピング情報格納部203は、CSI−RSがリソースブロック内のどのリソースエレメントに多重されるかを示すマッピング情報を格納する。CSI−RSマッピング情報格納部203は、例えば、図5(A)〜図5(D)に示すようなマッピング情報を格納する。
【0055】
CSI−RSマッピング情報通知部205は、CSI−RSのマッピングを示す情報を移動局に通知する。例えば、図5(A)のような16アンテナポートの場合の2種類のマッピング情報がシステム上で定義されている場合、CSI−RSマッピング情報通知部205は、アンテナポート数を示す情報と、CSI−RSのマッピングを示すインデックス(CSI reference signal configuration)とが移動局に通知されてもよい。
【0056】
多重部207は、CSI−RSマッピング情報格納部203に格納されたマッピング情報に従って、CSI−RSをリソースブロック内のリソースエレメントに多重する。また、データ及び制御情報等も符号化、レートマッチング及び変調等を施された後、リソースブロック内のリソースエレメントに多重される。
【0057】
なお、拡張されたアンテナポートのCSI−RSにより、PDSCH等に割り当てられていたリソースエレメントがCSI−RSに用いられることになる。例えば、3GPP標準のリリース12に準拠した移動局は、新たに規定されたCSI−RSのマッピングを基地局からのシグナリングにより認識することができる。従って、多重部207は、CSI−RSを避けてPDSCHを多重することが可能である。基地局20のレートマッチング部(図示せず)においてCSI−RSのマッピングに対応してデータ及び制御情報にレートマッチングを適用することで、データ及び制御情報の特性劣化を低減することが可能になる。一方、3GPP標準のリリース8〜11に準拠した移動局は、新たに規定されたC
SI−RSのマッピングを認識することができない。従って、多重部207は、パンクチャリングを適用してもよい。
【0058】
送信部209は、移動局に信号を送信する。特に、送信部209は、CSI−RSのマッピングを示す情報を移動局に送信し、また、データ及び制御情報等と共にリソースブロック内のリソースエレメントに多重されたCSI−RSを移動局に送信する。」

ク 図5(A)


図5(A)によれば、アンテナポート番号0、2、8及び12がマッピングされるリソースエレメント(シンボル7のサブキャリア0、3、6及び9並びにシンボル9のサブキャリア0、3、6及び9)と、アンテナポート番号4、6、10及び14がマッピングされるリソースエレメント(シンボル7のサブキャリア1、4、7及び10並びにシンボル9のサブキャリア1、4、7及び10)が、互いにサブキャリアにおいて隣接している。
また、アンテナポート番号1、3、9及び13がマッピングされるリソースエレメント(シンボル8のサブキャリア0、3、6及び9並びにシンボル10のサブキャリア0、3、6及び9)と、アンテナポート番号5、7、11及び15がマッピングされるリソースエレメント(シンボル8のサブキャリア1、4、7及び10並びにシンボル10のサブキャリア1、4、7及び10)が、互いにサブキャリアにおいて隣接している。

ケ 図5(C)


図5(C)によれば、アンテナポート番号0、16、2、18、8、24、12及び28がマッピングされるリソースエレメント(シンボル7のサブキャリア0、3、6及び9並びにシンボル9のサブキャリア0、3、6及び9)と、アンテナポート番号4、20、6、22、10、26、14及び30がマッピングされるリソースエレメント(シンボル7のサブキャリア1、4、7及び10並びにシンボル9のサブキャリア1、4、7及び10)が、互いにサブキャリアにおいて隣接している。
また、アンテナポート番号1、17、3、19、9、25、13及び29がマッピングされるリソースエレメント(シンボル8のサブキャリア0、3、6及び9並びにシンボル10のサブキャリア0、3、6及び9)と、アンテナポート番号5、21、7、23、11、27、15及び31がマッピングされるリソースエレメント(シンボル8のサブキャリア1、4、7及び10並びにシンボル10のサブキャリア1、4、7及び10)が、互いにサブキャリアにおいて隣接している。

(2)引用発明の認定
前記(1)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「CSI−RS生成部201と、CSI−RSマッピング情報格納部203と、多重部207と、送信部209とを有する基地局20であって(【0052】)、
CSI−RS生成部201は、チャネル状態情報測定用の参照信号(CSI−RS)を生成し(【0053】)、
FD−MIMO局20は、拡張されたアンテナポート数分のCSI−RSのマッピングを生成し、CSI−RSのマッピング情報を移動局30に送信し、例えば、FD−MIMO局20は、アンテナポート数と、CSI−RSのマッピングを示すインデックスとを移動局30に送信してもよく(【0037】)、
CSI−RSマッピング情報格納部203は、CSI−RSがリソースブロック内のどのリソースエレメントに多重されるかを示すマッピング情報を格納し(【0054】)、
多重部207は、CSI−RSマッピング情報格納部203に格納されたマッピング情報に従って、CSI−RSをリソースブロック内のリソースエレメントに多重し(【0056】)、
送信部209は、リソースブロック内のリソースエレメントに多重されたCSI−RSを移動局に送信し(【0058】)、
アンテナポート数が16の場合のCSI−RSのマッピング例は、アンテナポート番号0、2、8及び12がマッピングされるリソースエレメントと、アンテナポート番号4、6、10及び14がマッピングされるリソースエレメントが、互いにサブキャリアにおいて隣接し、アンテナポート番号1、3、9及び13がマッピングされるリソースエレメントと、アンテナポート番号5、7、11及び15がマッピングされるリソースエレメントが、互いにサブキャリアにおいて隣接しており(【0038】、図5(A))、
アンテナポート数が32の場合のCSI−RSのマッピング例は、アンテナポート番号0、16、2、18、8、24、12及び28がマッピングされるリソースエレメントと、アンテナポート番号4、20、6、22、10、26、14及び30がマッピングされるリソースエレメントが、互いにサブキャリアにおいて隣接しており、アンテナポート番号1、17、3、19、9、25、13及び29がマッピングされるリソースエレメントと、アンテナポート番号5、21、7、23、11、27、15及び31がマッピングされるリソースエレメントが、互いにサブキャリアにおいて隣接している(【0042】、図5(C))、
基地局20。」

2 引用文献2の記載事項
(1)引用文献2の記載
原査定で周知技術を示すために引用された特表2013−502139号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0130】
図38には、CSI−RSの多重化方式に関する種々の実施例を示す。図38に示すCSI−RSの配置される2 OFDMシンボルの位置は、前述した実施例1及び2で提案した様々なOFDMシンボル位置に対応することができる。説明を明確にするために省略したが、図38を参照して以下に説明する様々な実施例においても、図37(a)のパターン1乃至3で示していると同様に、CSI−RSのマッピングされるREの位置は、周波数上で1REまたは2REだけ周波数シフトできる。」

イ 「【0137】
図38(g)の実施例では、8個のアンテナポートのうち4個のアンテナポートをCDM−T/F方式で多重化できる。例えば、アンテナポート0、1、2及び3を、直交コード(例えば、ウォルシュコード、DFTコードまたはランダムコードなど)を用いて時間領域及び周波数領域で拡散することができる。すなわち、アンテナポートインデックス0、1、2及び3のそれぞれに対するCSI−RSは、時間領域及び周波数領域でコードリソースによって拡散され、同一RE(第1及び第2のOFDMシンボル上のA、A、A及びA)に配置される。アンテナポート0、1、2及び3を取り上げて説明したが、8個のアンテナポートのうち任意の4個に対してCDM方式の多重化を適用することができる。8個のアンテナポートは、4個のアンテナポートで構成される2個のアンテナグループ(すなわち、A及びB)にグループ化でき、この2個のアンテナグループはFDM方式で区別できる。」

ウ 図38(g)


(2)周知技術の認定
引用文献2の「CDM−F方式」は、「周波数領域で拡散する」(【0133】)との記載及び図38(c)によれば、周波数領域における符号分割多重化方式のことであると解される。
また、引用文献2の「CDM−T/F方式」は、「時間領域及び周波数領域で拡散する」(【0137】)との記載及び図38(g)によれば、時間領域及び周波数領域における符号分割多重化方式のことであると解される。
よって、引用文献2によれば、次の周知技術(以下、単に「周知技術」という。)が認められる。

「CSI−RSの多重化方式において、4個のアンテナポートを時間領域及び周波数領域において符号分割多重化する技術。」

第7 本願発明と引用発明との対比
前記第5のとおり本願発明は不明確であるが、本願発明を前記(i)の解釈に基づいた場合の参照信号パターンは発明の詳細な説明に記載がなく(前記第5、2(1))、前記(ii)の解釈に基づいた場合の参照信号パターンは発明の詳細な説明に一応の記載がある(前記第5、2(2)ウ)ことから、以下では、本願発明を前記(ii)に基づいて解釈し、引用発明と対比する。

1 発明特定事項A1及びAについて
引用発明の「CSI−RS」は、「チャネル状態情報測定用の参照信号」(【0053】)であるから、本願発明の「参照信号」に相当する。
引用発明の「CSI−RS生成部201」は、「CSI−RS」を「生成」するものであり(【0053】)、技術常識によれば「CSI−RS」は系列を成すものであるから、引用発明の「CSI−RS生成部201」は、本願発明の「参照信号シーケンスを生成するように配置されるシーケンス生成ユニット」に相当し、本願発明と引用発明とは「参照信号シーケンスを生成するように配置されるシーケンス生成ユニット」を「含」む点で一致する。

2 発明特定事項A2及びAについて
(1)引用発明の「CSI−RSのマッピング」は、アンテナポート番号とリソースエレメントとの対応を示すものであり(【0038】、図5(A)、【0042】、図5(C))、引用発明の「リソースエレメント」が本願発明の「物理伝送リソースのリソースユニット」に相当することは明らかであるから、引用発明の「CSI−RSのマッピング情報」は、本願発明の「アンテナポートと物理伝送リソースのリソースユニットとのマッピング関係からなる参照信号パターン」に相当する。

(2)引用発明の「FD−MIMO局20」は、「拡張されたアンテナポート数分のCSI−RSのマッピングを生成し、CSI−RSのマッピング情報を移動局30に送信」するものである(【0037】)。
ここで、「生成」された「CSI−RSのマッピング」は、「CSI−RSのマッピング情報」と同一であることが明らかであって、「拡張されたアンテナポート数分の」マッピングを作成するから、「CSI−RSのマッピング情報」は、「アンテナポートの数」に応じて作成される、すなわち、確定されるものである。
また、引用発明の「アンテナポート」がCSI−RSを送信するためのものであることは、明らかである。
そうすると、前記(1)も考慮すると、本願発明の「リソースマッピングユニット」と引用発明の「FD−MIMO局20」とは、「参照信号を送信するためのアンテナポートの数に応じて、アンテナポートと物理伝送リソースのリソースユニットとのマッピング関係からなる参照信号パターンを確定」している点で一致する。

(3)引用発明の「多重部207」は、「CSI−RSマッピング情報格納部203に格納されたマッピング情報に従って、CSI−RSをリソースブロック内のリソースエレメントに多重」するものであり(【0056】)、多重されたCSI−RSは、「送信部209」によって送信される(【0058】)から、本願発明の「リソースマッピングユニット」と引用発明の「多重部207」とは、「前記参照信号パターンに基づいて前記参照信号シーケンスをリソースユニットにマッピングして伝送に用いるように配置される」点で一致する。

(4)引用文献1に明記はないが、「FD−MIMO局20」は、前記(2)のように「CSI−RSのマッピング情報」を「生成」しているから、CSI−RSマッピング情報生成部と呼ぶべき部分を有していることは明らかである。ここで、引用発明の「FD−MIMO局20」と「基地局20」とが同一であることは明らかである。
そうすると、引用発明のCSI−RSマッピング情報生成部と呼ぶべき部分と、「多重部207」とは、本願発明の「リソースマッピングユニット」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは「参照信号を送信するためのアンテナポートの数に応じて、アンテナポートと物理伝送リソースのリソースユニットとのマッピング関係からなる参照信号パターンを確定し、且つ前記参照信号パターンに基づいて前記参照信号シーケンスをリソースユニットにマッピングして伝送に用いるように配置されるリソースマッピングユニット」を「含」む点で一致する。

3 発明特定事項Cについて
引用発明のCSI−RSのマッピングは、16ポートのものにおいて、「アンテナポート番号0、2、8及び12がマッピングされるリソースエレメントと、アンテナポート番号4、6、10及び14がマッピングされるリソースエレメントが、互いにサブキャリアにおいて隣接」(【0038】、図5(A))するから、アンテナポート番号0、2、8及び12(本願発明の「偶数である第1数」に相当)に対応するリソースエレメントと、該リソースエレメントに隣接するアンテナポート番号4、6、10及び14(本願発明の「偶数である第2数」に相当)に対応するリソースエレメントとが、周波数分割多重化されている。
また、引用発明の32ポートのCSI−RSマッピング(【0042】、図5(C))についても、アンテナポート番号0、16、2、18、8、24、12及び28(本願発明の「偶数である第1数」に相当)に対応するリソースエレメントと、該リソースエレメントに隣接するアンテナポート番号4、20、6、22、10、26、14及び30(本願発明の「偶数である第2数」に相当)に対応するリソースエレメントとが、周波数分割多重化されている。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記リソースマッピングユニットは、偶数である第1数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第1数と隣接する偶数である第2数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において多重化」する点で共通する。

4 発明特定事項Dについて
前記3と同様に、引用発明の16ポートのマッピング(【0038】、図5(A))及び32ポートのマッピング(【0042】、図5(C))によれば、本願発明と引用発明とは、「前記リソースマッピングユニットは、奇数である第3数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第3数と隣接する奇数である第4数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において多重化」する点で共通する。

5 発明特定事項Eについて
無線通信の技術分野において、送信すべき信号の電力が電力増幅器で使用される所定の電力ゲインを超えないようにすることは当然であるから、引用発明の「CSI−RSのマッピング情報」は、当然、各アンテナポートの電力ゲインが所定の電力増幅器で使用される所定の電力ゲインを超えないように使用される。
また、引用発明の「基地局20」は、基地局側で用いられる装置に他ならない。
よって、本願発明と引用発明とは「前記参照信号パターンは、各アンテナポートの電力ゲインが所定の電力増幅器で使用される所定の電力ゲインを超えないように使用される無線通信の基地局側で用いられる装置」である点で一致する。

6 請求人の主張について
請求人は、「引用文献1には、本願発明に記載される「参照信号パターンは、各アンテナポートの電力ゲインが所定の電力増幅器で使用される所定の電力ゲインを超えないように使用される」点について明記されていません。この点で、本願発明と、引用文献1に記載の技術とは相違します。」と主張し、この相違点について「本願発明は、電力の無駄を最小限に抑えつつ、後方互換性を確保することができるという効果を奏します。」と主張する(審判請求書4頁)。
しかしながら、前記5のとおり、送信する信号の電力が電力増幅器の電力ゲインを超えないようにすることは当然であって、引用文献1に格別に記載がなくとも、そのように構成されていることは明らかである。むしろ、電力増幅器のゲインを超えて使用した場合には、増幅特性の線形性の悪化や不要放射の増加など、様々な悪影響があることは広く知られている。
そして、請求人は後方互換性の確保を効果として主張しているが、本願発明は「電力増幅器で使用される所定の電力ゲイン」と限定しているのみであって、その電力ゲインが具体的にどのような値であるかは限定していないから、後方互換性の確保という効果は、本願発明の構成からは得られないものである。
なお、本願明細書に記載されている「6dB」(【0028】)という電力ゲインについても、前置報告書で挙げられた文献(3GPP TSG-RAN WG1 #82 R1-154551、3GPP TSG-RAN WG1 #81 R1-153167、3GPP TST-RAN WG1 #92 R1-153792)にも示されるように、一般的に用いられている限定に過ぎず、基地局で使用する装置として当然に守られるべきものに過ぎない。
よって、請求人の主張は採用できない。

7 一致点及び相違点
前記1〜6によれば、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

〈一致点〉
「参照信号シーケンスを生成するように配置されるシーケンス生成ユニットと、
参照信号を送信するためのアンテナポートの数に応じて、アンテナポートと物理伝送リソースのリソースユニットとのマッピング関係からなる参照信号パターンを確定し、且つ前記参照信号パターンに基づいて前記参照信号シーケンスをリソースユニットにマッピングして伝送に用いるように配置されるリソースマッピングユニットと、
を含み、
前記リソースマッピングユニットは、偶数である第1数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第1数と隣接する偶数である第2数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において多重化し、
前記リソースマッピングユニットは、奇数である第3数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットと、当該第3数と隣接する奇数である第4数のポート番号を有するアンテナポートに対応するリソースユニットとに対して周波数領域において多重化し、
前記参照信号パターンは、各アンテナポートの電力ゲインが所定の電力増幅器で使用される所定の電力ゲインを超えないように使用される無線通信の基地局側で用いられる装置。」である点。

〈相違点〉
本願発明の「参照信号パターン」は、「アンテナポート間の周波数領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化と、前記アンテナポート間の時間領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化とを含」むものであるのに対し、引用発明の「CSI−RSのマッピング」は符号分割多重化を含まない点。
これに付随して、本願発明の「リソースマッピングユニット」の多重化は、偶数ポート同士のリソースユニット及び奇数ポート同士のリソースユニットをそれぞれ、周波数領域における「符号分割多重化」を行うのに対し、引用発明の「多重部207」は、偶数ポート同士のリソースエレメント及び奇数ポート同士のリソースエレメントをそれぞれ周波数分割多重化する点。

第8 容易想到性についての判断
1 相違点について
引用文献1には、「アンテナポート番号(0,1,4,5)及び番号(2,3,6,7)のCSI−RSの配置」(【0040】)との記載及び「アンテナポート番号(0,1,4,5)及び(2,3,6,7)のCSI−RSの配置」(【0043】)との記載があるように、アンテナポート(0,1,4,5)を一組のアンテナポートとして扱うことが示唆されている。
また、引用文献1には、「図5には、周波数多重…及び時間多重…でCSI−RSをリソースエレメントに多重しているが、符号分割多重…と組み合わせて多重してもよい。例えば、あるアンテナポートのCSI−RSが他のアンテナポートのCSI−RSと符号分割多重され、CSI−RSに確保されたリソースエレメントに多重されてもよい。」(【0050】)との記載があるように、複数のアンテナポートのCSI−RSに対応するリソースエレメントを符号分割多重化することが示唆されている。
そして、CSI−RSの多重化において、4個のアンテナポートを時間領域及び周波数領域において符号分割多重化する技術は周知技術(前記第6、2(2))である。
そうすると、引用発明の(0,1,4,5)の4個のアンテナポートに対し、CSI−RSの符号分割多重化に係る周知技術を適用することで、引用発明の「CSI−RSのマッピング」に前記4個のアンテナポート間のリソースエレメントに対して、周波数領域及び時間領域における符号分割多重化を導入し、ポート番号0のリソースエレメントと、該リソースエレメントに隣接するポート番号4のリソースエレメントとに対して周波数領域において符号分割多重化し、ポート番号1のリソースエレメントと、該リソースエレメントに隣接するポート番号5のリソースエレメントに対して周波数領域において符号分割多重化するよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。

2 効果について
本願発明の効果は、引用発明に周知技術を組み合わせた構成から自明のものであり、格別のものではない。

3 請求人の主張について
請求人は、本願発明は、「参照信号シーケンスを生成するように配置されるシーケンス生成ユニットと、参照信号を送信するためのアンテナポートの数に応じて、アンテナポートと物理伝送リソースのリソースユニットとのマッピング関係からなる参照信号パターンを確定し、且つ前記参照信号パターンに基づいて前記参照信号シーケンスをリソースユニットにマッピングして伝送に用いるように配置されるリソースマッピングユニットと、を含み、前記参照信号パターンは、アンテナポート間の周波数領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化と、前記アンテナポート間の時間領域におけるリソースユニットに対する符号分割多重化とを含み、前記リソースマッピングユニットは、偶数である第1数のポート番号を有するアンテナポートと、偶数である第2数のポート番号を有するアンテナポートとに対して配置して、周波数領域において符号分割多重化し、前記リソースマッピングユニットは、奇数である第3数のポート番号を有するアンテナポートと、奇数である第4数のポート番号を有するアンテナポートとに対して配置して、周波数領域において符号分割多重化し、前記リソースマッピングユニットは、前記第1数のポート番号を有するアンテナポートと、前記第3数のポート番号を有するアンテナポートとに対して配置して、時間領域において符号分割多重化し、前記リソースマッピングユニットは、前記第2数のポート番号を有するアンテナポートと、前記第4数のポート番号を有するアンテナポートとに対して配置して、時間領域において符号分割多重化する無線通信の基地局側で用いられる装置」(下線は請求人が付したとおり)であり、これにより、本願発明は、適切な参照信号パターンを確定することができるという効果を奏するが、一方、引用文献1〜3には、上述した本願発明の構成については記載も示唆もされていない旨、主張する(令和3年1月18日の意見書)。
しかしながら、前記1のとおりであり、引用発明に周知技術を組み合わせることは容易であり、その結果、アンテナポート番号(0,1,4,5)の4つのポートに対応するリソースエレメントに周波数領域及び時間領域において符号分割多重化を行い、アンテナポート番号0及び4に対応する互いに隣接するリソースエレメントを周波数領域において符号分割多重化し、アンテナポート番号1及び5に対応する互いに隣接するリソースエレメントを周波数領域において符号分割多重化するように構成されるから、請求人の主張は採用できない。
また、請求人の本願発明に係る偶数と奇数のポート番号のリソースユニットの時間領域における符号分割多重化についての主張は、令和4年6月27日の手続補正書による補正で削除された発明特定事項に係る主張であるから、採用できない。

4 小括
前記1〜3のとおりであるから、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第9 むすび
前記第5のとおり、本願の特許請求の範囲の記載は特許法36条6項2号の規定を満たしておらず、また、前記第8のとおり、本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-11-25 
結審通知日 2022-11-29 
審決日 2022-12-14 
出願番号 P2018-510066
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
P 1 8・ 537- WZ (H04L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 丸山 高政
衣鳩 文彦
発明の名称 無線通信の基地局側及びユーザー装置側で用いられる装置及び方法  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ