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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G08B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G08B
管理番号 1394736
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-05 
確定日 2023-02-16 
事件の表示 特願2018− 56588「物体検知装置及び物体検知方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月 3日出願公開、特開2019−168950〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 7月13日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 9月29日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和3年10月 5日 :原査定の謄本の送達)
令和4年 1月 5日 :拒絶査定不服審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和4年1月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和4年1月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、令和3年9月16日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

(1) 本件補正前の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
監視エリアの物体を検出する検出手段と、
前記監視エリア内に存在する所定のマスク高さ以上の物体を対象物として認識する物体認識手段と、
前記対象物の高さ情報を継時的に取得する高さ取得手段と、
前記対象物の高さ情報に基づいて、前記対象物の転倒を判定する転倒判定手段とを有し、
前記物体認識手段は、転倒と判定された前記対象物の高さが前記マスク高さ未満となった場合でも、マスク高さ未満の前記対象物の情報を取得し、前記対象物としての認識を継続する
ことを特徴とする物体検知装置。」とあったものを、

(2) 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正後の発明」という。)
「【請求項1】
所定のマスク高さをしきい値とし、当該マスク高さ以上に予め設定された監視エリアの物体を検出する検出手段と、
前記監視エリア内に存在する物体を対象物として認識する物体認識手段と、
前記対象物の高さ情報を継時的に取得する高さ取得手段と、
前記対象物の高さ情報に基づいて、前記対象物の転倒を判定する転倒判定手段とを有し、
前記物体認識手段は、転倒と判定された前記対象物の高さが前記マスク高さ未満となった場合でも、マスク高さ未満の前記対象物の情報を取得し、前記対象物としての認識を継続する
ことを特徴とする物体検知装置。」

へと補正する内容を含むものである(なお、下線部は、本願発明に対する補正箇所であって、請求人が手続補正書において付したものである。)。

2 本件補正の適否についての当審の判断
(1) 新規事項の追加について

ア 本件補正によって加えられた事項
本件補正は、本願発明に対して、
検出手段が物体を検出する監視エリアについて、「所定のマスク高さをしきい値とし、当該マスク高さ以上に予め設定された」ものであることを追加し、本件補正後の発明としているものである。
そこで、本件補正で追加された「所定のマスク高さをしきい値とし、当該マスク高さ以上に予め設定された監視エリアの物体を検出する検出手段」の記載について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の記載を参酌して検討を行う。

イ 当初明細書等に記載された事項
出願の当初明細書等には、本件補正後の発明で前提とされている「検出手段」及び「監視エリア」について、次の記載がある。下線は、当審において付した。

(ア)【発明の概要】の記載
「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための物体検知装置に係る第1の手段として、踏切内に設定された監視領域の物体を検出する検出手段と、監視エリア内に存在する所定のマスク高さ以上の物体を対象物として認識する物体認識手段と、上記対象物の高さ情報を継時的に取得する高さ取得手段と、上記対象物の高さ情報に基づいて、上記対象物の転倒を判定する転倒判定手段とを有し、上記物体認識手段は、転倒と判定された上記対象物の高さが上記マスク高さ未満となった場合でも、マスク高さ未満の上記対象物の情報を取得し、上記対象物としての認識を継続する、という手段を採用する。
【0007】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記転倒判定手段は、上記対象物の高さの変化量が予め定められた閾値を超える場合に転倒と判定する、という手段を採用する。
【0008】
第3の手段として、上記第1または2の手段において、上記高さ情報に基づいて、上記対象物の一部または全体が転倒状態から回復したか否かを判定する回復判定手段を有する、という手段を採用する。
【0009】
第4の手段として、上記第1〜3のいずれかの手段において、上記物体認識手段は、上記対象物の一部分が分離した場合に、上記一部分を新たな対象物として認識する、という手段を採用する。
【0010】
第5の手段として、上記第1〜4のいずれかの手段において、上記検出手段は、レーザ光を検出媒体とする、という手段を採用する。
【0011】
第6の手段として、上記第1〜5のいずれかの手段において、上記監視エリアは踏切内に設定される、という手段を採用する。
【0012】
物体検知方法に係る第1の手段として、監視エリア内に存在する所定のマスク高さ以上の物体を対象物として個別に認識する物体認識工程と、上記対象物の高さ情報を継時的に取得する高さ情報取得工程と、上記対象物の高さ情報に基づいて、上記対象物の転倒を判定する転倒判定工程と、転倒と判定された上記対象物の高さが上記高さ閾値未満となった場合でも、上記対象物としての認識を継続する転倒対象物監視工程とを有する、という手段を採用する。」

(イ)【0016】〜【0020】段落及び【図1】、【図2】の記載
「【0016】
本実施形態においては、物体検知装置の一例として監視装置1について説明する。本実施形態における監視装置1は、図1(a)に示すように、検出部2(検出手段)及び信号処理部3を有する。監視装置1は、図2に示すように、例えば踏切に対して設けられ、破線で示す踏切内の監視エリアAについて監視を行う。監視エリアAは、踏切における線路B上かつ歩行可能範囲C内であって、下部マスク領域を除く範囲を示している。例えば、下部マスク領域は、雑草などの誤検知を防ぐため、マスク高さが地面より数十cm程度の範囲に設定されている。
【0017】
検出部2は、測定範囲に対してレーザ光を照射し、該レーザ光の反射光から当該測定範囲内における複数の計測点の三次元座標値を電気信号として取得するレーザレーダとされている。検出部2は、踏切の近傍に設置され、図2に示すように、線路Bと遮断棒Dとを含む範囲にレーザ光を照射し、該範囲の三次元座標値を取得する。すなわち、検出部2は、レーザ光を検出媒体としている。
【0018】
信号処理部3は、演算処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)、データやソフトウェアを記憶するメモリ等を有するコンピュータによって具現化されている。信号処理部3は、図1(a)に示すように、物体認識部3a(物体認識手段)と、高さ情報取得部3b(高さ情報取得手段)と、転倒判定部3c(転倒判定手段)と、回復判定部3d(回復判定手段)と、異常通報部3eとを有している。なお、信号処理部3は、検出部2と別体として、外部施設内に設けられてもよい。
【0019】
物体認識部3aは、図1(b)に示すように、検出部2から取得した三次元座標値より物体を対象物として認識する。物体認識部3aは、グループ化処理部3a1と、輪郭形状抽出部3a2と、分離判定部3a3とを有している。
【0020】
グループ化処理部3a1は、検出部2より取得した計測点から、監視エリアA内に存在する計測点を抽出する。そして、グループ化処理部3a1は、監視エリアA内に存在する複数の計測点のうち、計測点間の距離が互いに近い計測点を同一のグループとしてグループ化する。なお、グループ化を行う際には、マスク高さ以上に存在する計測点を対象としている。具体的には、グループ化処理部3a1は、検出部2が計測した複数の計測点同士の距離を算出し、計測点間の距離が予め定められた距離範囲内である計測点の集合を同一のグループ(対象物)として識別する。また、グループ化処理部3a1は、分離判定部3a3によりグループの一部が分離したと判定された場合に、上述の方法により再度グループ化を実施する。また、グループ化処理部3a1は、転倒したと判定された対象物が存在する範囲について、検出部2よりマスク高さ未満の計測点についても取得し、グループ化を実施する。」
「【図1】


「【図2】



(ウ)【0026】〜【0027】の記載及び【図3】
「【0026】
このような本実施形態における監視装置1における物体検知方法について、図3を参照して説明する。
まず、検出部2は、検出工程を行う(ステップS1)。検出工程において、検出部2がレーザ光を照射し、該レーザ光の反射光から当該測定範囲内における複数の計測点の三次元座標値を電気信号として取得する。
【0027】
そして、信号処理部3の物体認識部3aは、物体識別工程を行う(ステップS2)。物体識別工程では、グループ化処理部3a1が、検出部2より取得した計測点から、監視エリアA内に存在する計測点を抽出する。そして、グループ化処理部3a1は、監視エリアA内に存在する計測点複数の計測点のうち、計測点間の距離が互いに近い計測点を同一のグループとしてマスク高さ以上の計測点をグループ化する。次に、輪郭形状抽出部3a2が、グループ化処理部3a1により生成されたグループについて、鉛直方向及び水平方向から投影した二次元の輪郭形状をグループ毎に抽出する。これにより、物体認識部3aは、踏切内の物体を対象物として認識する。」
「【図3】



ウ 当初明細書等の関連する記載に基づいた新規事項についての判断
上記「イ 当初明細書等に記載された事項」の中で、(ア)〜(ウ)に摘記した当初明細書等の関連する記載には、「踏切における線路B上かつ歩行可能範囲C内であって、下部マスク領域を除く範囲」かつ、「雑草などの誤検知を防ぐため、マスク高さが地面より数十cm程度の範囲に設定され」ている「監視エリアA」の記載がある。そして、「物体認識部3a(物体認識手段)」が、グループ化処理部3a1を有しており、「グループ化処理部3a1は、検出部2より取得した計測点から、監視エリアA内に存在する計測点を抽出」することは記載されているものの、「検出部2(検出手段)」については、「踏切の近傍に設置され、図2に示すように、線路Bと遮断棒Dとを含む範囲にレーザ光を照射し」、「該レーザ光の反射光から当該測定範囲内における複数の計測点の三次元座標値を電気信号として取得」することのみが記載されているだけであり、本件補正により追加された、当該検出手段が、所定のマスク高さをしきい値とし、当該マスク高さ以上に予め設定された監視エリアの物体を検出することについては、当初明細書等には記載されていない。
換言すれば、当初明細書等に記載された「検出手段」は、検出対象の物体が「マスク高さ」以上にあるか否かにかかわらず、「該レーザ光の反射光から当該測定範囲内における複数の計測点の三次元座標値を電気信号として取得」することにより、物体を検出することが記載されており、本件補正後の発明のような「所定のマスク高さをしきい値とし、当該マスク高さ以上に予め設定された監視エリアの物体を検出する検出手段」については、当初明細書等に記載されていない。

以上のとおり、「所定のマスク高さをしきい値とし、当該マスク高さ以上に予め設定された監視エリアの物体を検出する検出手段」については、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2) 補正の目的について
上記「(1) 新規事項の追加について」において検討したとおり、本件補正後の発明は当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないから、本件補正は特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものであるが、仮に本件補正後の発明が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるとして、以下、その他の補正の要件を充足するか否かについて検討する。

ア 本件補正について
本件補正では、「1 本件補正について」の「(1) 本件補正前の請求項1に係る発明」に示したとおり、本願発明における、「所定のマスク高さ以上の物体を対象物として認識する物体認識手段」という構成に対して、上記1の「(2) 本件補正後の請求項1に係る発明」に示したとおり、「所定のマスク高さ以上の」という構成要件を削除し、本件補正後の発明としているものである。

イ 本件補正の目的についての判断
すると、当該補正は、本願発明における構成要件を削除するものであって、その概念を拡張又は変更するものであるから、本件補正後の発明は、本願発明を特定するために必要な事項を限定して特許請求の範囲の減縮をしたものには該当せず、また、請求項の削除、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げられた事項を目的とするものには該当しない。

3 むすび

以上のとおり、上記「2 本件補正の適否についての当審の判断」の「(1) 新規事項の追加」において検討したように、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、上記「2 本件補正の適否についての当審の判断」の「(2) 補正の目的について」において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げられた事項を目的とするものには該当しない。

したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正(令和4年1月5日にされた手続補正)は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、令和3年9月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1−6の記載により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明である本願発明は、上記第2の1、「(1) 本件補正前の請求項1に係る発明」に記載されたとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016−067641号公報

3 引用文献
(1) 引用文献1
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に発行された特開2016−067641号公報(平成28年5月9日出願公開)には、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。以下、同様。)。

(ア) 「【0009】
[転倒検知システムの全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係る転倒検知システム1について、図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る転倒検知システム1は、高齢者が居住する介護施設Aや在宅介護が必要な高齢者の住宅(在宅介護宅B)などにおいて転倒を検知する対象の高齢者等が出入りする空間に適用される。本実施形態に係る転倒検知システム1において、介護施設Aや在宅介護宅Bには、転倒を検知する対象を撮影するセンサとしてTOF(Time Of Flight)センサ9が使用される。TOFセンサ9は、転倒を検知する対象の空間(例えば高齢者の部屋)の例えば天井部に設置され、その空間の距離画像やIR(Infrared)画像やカラー画像を撮影する。TOFセンサ9は、赤外線を投光するプロジェクタの機能とカメラの機能とを有する。TOFセンサ9のカメラ機能を用いてカラー画像又は白黒画像を撮影できる。
【0010】
また、TOFセンサ9は赤外線を投光する。TOFセンサ9は、出力された赤外光と、その赤外光が対象物を反射して戻ってくる赤外光との時間差から物体の距離を検知する。このようにしてTOFセンサ9は、赤外光が対象まで往復するのにかかる時間から距離を計測することで距離画像を撮ることができる。また、TOFセンサ9は、赤外線を投光してIR画像を撮影できる。
【0011】
TOFセンサ9は、人の転倒が発生し易いバスルームや人が集まりやすい談話室等の転倒検知を行う対象の空間に設置される。TOFセンサ9は、転倒を検知する対象の空間内の天井部や側壁部に設置される。TOFセンサ9は、転倒を検知する対象の空間内のいずれに置いてもよい。ただし、TOFセンサ9を空間内の天井部の中央に置くと、TOFセンサ9により検知できる物体の範囲が広がり好ましい(図7を参照)。TOFセンサ9を空間内の側壁部に置くと、TOFセンサ9により検知できる物体の範囲が狭まり障害物も多くなって、対象物を検知し難くなる。TOFセンサ9は、複数設置されてもよい。
【0012】
TOFセンサ9は、USB(Universal Serial Bus)を介して転倒検知処理装置10と接続されている。転倒検知処理装置10は、TOFセンサ9から取得した距離画像及びIR画像を処理し、これらの画像に基づき対象物が人であるか否かの判定や、対象物が人であると判定された場合にその動きが人の転倒であるか否かの推定を行う。転倒検知処理装置10は、対象物の動きが人の転倒であると推定した場合、所定の機器に通報する。所定の機器は、TOFセンサ9が設置された空間内の機器(転倒検知処理装置10を含む)であってもよいし、通知先としてあらかじめ登録され、ネットワーク30により通信可能な機器であってもよい。図1には、ネットワーク30により通信可能な通報先の機器の一例として、スマートフォン40、固定電話機器41、PC(デスクトップ、ノート、タブレット等)42、携帯電話機器50が示されている。ただし、通知先の機器はこれらの機器に限られず、通信可能な家電機器や自動者に搭載されたナビゲーション機器、その他の電子機器であってもよい。固定電話機器41の場合、転倒通報時には音声データのみが通知されるようにしてもよい。通知先の機器の所持者は、例えば転倒検知の対象となる空間に住む高齢者の家族や親せきや高齢者の介助者であり得る。」

(イ)「【図1】



(ウ) 「【0019】
[転倒検知処理装置の機能構成]
本発明の一実施形態に係る転倒検知処理装置10の機能構成の一例について、図2を参照しながら説明する。本実施形態に係る転倒検知処理装置10は、検知部11、取得部12、記憶部13、判定部14、推定部15、通報部16、通信部17、録音部18及び音声認識部19を有する。
【0020】
検知部11は、TOFセンサ9と接続され、TOFセンサ9を用いて対象物を検知し、対象物の距離画像及びIR画像を得る。検知部11は、TOFセンサ9の代わりに、距離画像を得るためのセンサとIR画像を撮るためのセンサとに別々に接続され、各センサを用いて対象物を検知し、対象物の距離画像及びIR画像を得るようにしてもよい。
【0021】
取得部12は、転倒を検知する対象の空間における距離画像及びIR画像を検知部11から取得する。」

(エ) 「【図2】



(オ) 「【0028】
判定部14は、取得した距離画像及びIR画像に基づき、転倒を検知する空間内に存在する対象物の大きさと、その対象物の所定時間の動きと、その対象物の模様、色又は濃淡とを判定する。以下では、一例として対象物の服(模様、色、濃淡)と画像とを比較するが、対象物の服の模様、色、濃淡だけでなく、靴や帽子やメガネ等の装着品を装着した状態での対象物の(服を含めた)模様、色、濃淡を比較対象とすることができる。
【0029】
判定部14は、距離画像に基づき、何も動きがないときの部屋の状態を示す画像データを予め取得しておく。そして、判定部14は、何も動きがないときの部屋の状態を示す画像データと部屋の内部の状態が変化したことを示す画像データとをいわゆる背景差分方式により解析することで、静止物と動物(人を含む)とを区別する。これにより、判定部14は、対象物の大きさと、その対象物の所定時間の動きを判定することができる。また、判定部14は、IR画像に基づき、対象物の服装の模様、濃淡、色、服装の上下の濃淡差や色差を判定する。
【0030】
推定部15は、判定した対象物の大きさと、その対象物の所定時間の動きと、その対象物の服(模様、色又は濃淡)とに応じてその対象物の動きが人の転倒であるかを推定する。その際、推定部15は、距離画像及びIR画像に基づき、(1)〜(3)の条件がすべて満たされるとき、人が転倒したと推定する。
(1)対象物の大きさが所定以上であること
例えば、推定部15は、動物と判定した対象物の大きさが所定以上(例えば1m以上)である場合、対象物は人の可能性があると推定する。例えば、図7に示す対象物OJ1の大きさは1m以上であるため、対象物OJ1は人の可能性があると推定される。一方、対象物OJ3の大きさは1m未満であるため、対象物OJ3は人でないと判定される。動物と判定した対象物の大きさが人の大きさであることを推定するための閾値は「1m」に限られず、例えば、男性の場合と女性の場合と子供の場合を分けて設定してもよい。
【0031】
TOFセンサ9を天井部に配置した場合、図7に点線にて示すように、視野角により部屋の中央から外れるほどTOFセンサ9が取得する距離画像及びIR画像に写される対象物の上部側が切れて見えない状態となる。例えば、部屋の端にいる対象物OJ2の上半身は、TOFセンサ9から取得される距離画像及びIR画像には写されない。この場合、画像データ上の対象物OJ2の大きさは1m未満となるため、対象物OJ2は人でないと判定されてしまう。以上から、本実施形態では、対象物の大きさが人と判定されるための閾値は、視野角に応じて図7に示すように変化して設定される。これによれば、部屋の端側にいる対象物に対する閾値は、部屋の中心側にいる対象物に対する閾値よりも小さくなる。これにより、推定部15は、対象物OJ2の大きさは閾値と同じ値となるため、対象物OJ2は人の可能性があると推定できる。
ただし、部屋の端側では画像データから人の上半身が切れて見えないため、動物との区別がつきにくい。実際に対象物OJ2が人であるか人以外の動体であるかは、(1)の条件のみでは推定しにくい。また、部屋の中央においても、(1)の条件のみで対象物が人であるかそれ以外の動体であるかを推定すると間違いが生じやすく、人の転倒の検知の精度を高めることは難しい。よって、本実施形態では、推定部15は、(1)の条件を満たすだけでなく、次の(2)の条件も満たす場合に人が転倒したと推定するようになっている。
(2)(1)を満たす所定の高さ以上で動きがある対象物が、低い状態に移行し、所定時間動かない状態又は所定時間動きが少ない状態になったこと
推定部15は、(1)を満たす所定の高さ以上で動きがある対象物が、低い状態に移行し、所定時間動かない状態又は所定時間動きが少ない状態になったとき、対象物は人であり、かつ人が転倒したと推定する。推定部15は、例えば所定の時間以上静止していない1m以上の高さの対象物が、動いている状態から、歩行したり、立ったり、座ったりする日常の動きのときの人の高さよりも低くなった状態(例えば1m以下)で一定時間(例えば、10〜15秒以上)動かない、又は前記低くなった状態に移行して一定時間(例えば、10〜15秒)以上経過した場合、対象物が動いている状態から動かない状態又は動きが少ない状態に変化したと推定する。
【0032】
ただし、動かない状態又は動きが少ない状態に変化した後、再び動きが上記所定の動き所以上に大きくなった場合、推定部15は、人が通常状態に復帰したと推定し、人が転倒したとの推定を撤回する。」

(カ) 「【図7】



(キ) 「【0044】
[転倒検知処理]
次に、以上のように構成される本実施形態の転倒検知処理装置10における制御及び処理について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る転倒検知処理装置10が実行する転倒検知処理のフローチャートを示す。
【0045】
本処理が開始されると、取得部12は、TOFセンサ9を用いて距離画像とIR画像とを取得する(ステップS10)。取得部12は、カラー画像や白黒画像を取得してもよい。次に、判定部14は、距離画像とIR画像とに基づき、対象物の大きさ、対象物の動き及び対象物の模様や色や濃淡を判定する。推定部15は、距離画像から抽出される対象物の大きさから対象物が閾値以上の高さの動体である場合、対象物を人と推定し、閾値未満の高さの動体(例えばペット)と区別して認識する(ステップS12)。推定部15は、人と推定された対象物の高さ方向の変化を検出する(ステップS12)。
【0046】
次に、推定部15は、転倒が生じた時刻の距離画像及びその後に取得した距離画像に基づき、転倒状態のTOFセンサ9と対象物との距離から転倒している人の状態を推定し、対象物の大きさや動作を確認する(ステップS14)。推定部15は、この結果、静止物と推定した対象物や、ペット等の人以外の動体と推定した対象物を人の転倒の検知対象から除外する(ステップS14)。たとえば、推定部15は、上記(1)の条件に従い、対象物が予め定められた閾値(1m等)以上の場合、対象物は人と推定し、対象物が閾値未満の場合、対象物は人以外の動体と推定する。また、推定部15は、上記(2)の条件に従い、対象物の高さ方向の変化を検出し、これにより対象物が人の転倒であるかを推定する。
【0047】
次に、推定部15は、IR画像を確認し、対象物の服装や服の濃淡差や服の上下の濃淡差、服の色差、模様の差異等の対象物の外観上の特徴を確認する(ステップS16)。たとえば、推定部15は、上記(3)の条件に従い、特徴/健康情報テーブル23に記憶されている情報に基づき、IR画像から抽出された対象物の外観上の特徴を確認し、対象物が人であるか、及び人が転倒したか否かを推定する。なお、(1)及び(2)の条件は、人の転倒検知を判定する際に必須の要件であるが、(3)の条件は人の転倒検知を判定する際に必須の要件としなくてもよい。つまり、本実施形態に係る転倒検知処理では、ステップS16は省略できる。
【0048】
次に、推定部15は、人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値よりも少ないかを判定する(ステップS18)。推定部15は、人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値以上であると判定した場合、人の転倒は発生していないと判断し、本処理を終了する。一方、推定部15は、人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値よりも少ないと判定した場合、判定部14は、閾値(例えば1m)以上の高さの動体を検出したかを判定する(ステップS20)。
【0049】
判定部14は、閾値(例えば1m)以上の高さの動体を検出したと判定した場合、転倒した人が復帰したと判断し、本処理を終了する。一方。判定部14は、閾値(例えば1m)以上の高さの動体を検出していないと判定した場合、通報部16は、人の転倒を通報し(ステップS22)、本処理を終了する。」

(ク) 「【図8】



イ 引用文献1に記載された発明(引用発明1)
したがって、上記ア(ア)〜(ク)より、下線を付加した記載に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「転倒検知システム1において、転倒を検知する対象を撮影するセンサとしてTOF(Time Of Flight)センサ9が使用され、(【0009】)
TOFセンサ9は赤外線を投光し、出力された赤外光と、その赤外光が対象物を反射して戻ってくる赤外光との時間差から物体の距離を検知するものであり、このようにしてTOFセンサ9は、赤外光が対象まで往復するのにかかる時間から距離を計測することで距離画像を撮ることができ、(【0010】)
TOFセンサ9は、人の転倒が発生し易いバスルームや人が集まりやすい談話室等の転倒検知を行う対象の空間に設置され、転倒を検知する対象の空間内の天井部や側壁部に設置され、(【0011】)
TOFセンサ9と接続され、TOFセンサ9を用いて対象物を検知し、対象物の距離画像及びIR画像を得る検知部11と、(【0020】)
転倒を検知する対象の空間における距離画像及びIR画像を検知部11から取得する取得部12と、(【0021】)
取得した距離画像及びIR画像に基づき、転倒を検知する空間内に存在する対象物の大きさと、その対象物の所定時間の動きを判定する判定部14と、(【0028】)
判定した対象物の大きさと、その対象物の所定時間の動きとに応じてその対象物の動きが人の転倒であるかを推定する推定部15と、を備え、(【0030】)
推定部15は、動物と判定した対象物の大きさが所定以上(例えば1m以上)である場合、対象物は人の可能性があると推定するものであり、(【0030】)
推定部15は、所定の高さ以上で動きがある対象物が、低い状態に移行し、所定時間動かない状態又は所定時間動きが少ない状態になったとき、対象物は人であり、かつ人が転倒したと推定するものであって、推定部15は、例えば所定の時間以上静止していない1m以上の高さの対象物が、動いている状態から、歩行したり、立ったり、座ったりする日常の動きのときの人の高さよりも低くなった状態(例えば1m以下)で一定時間(例えば、10〜15秒以上)動かない、又は前記低くなった状態に移行して一定時間(例えば、10〜15秒)以上経過した場合、対象物が動いている状態から動かない状態又は動きが少ない状態に変化したと推定し、(【0031】)
動かない状態又は動きが少ない状態に変化した後、再び動きが上記所定の動き所以上に大きくなった場合、推定部15は、人が通常状態に復帰したと推定し、人が転倒したとの推定を撤回するものであり、(【0032】)
転倒検知処理装置10が実行する転倒検知処理が開始されると、取得部12は、TOFセンサ9を用いて距離画像とIR画像とを取得し、(【0045】)
判定部14は、距離画像とIR画像とに基づき、対象物の大きさ、対象物の動きを判定し、(【0045】)
推定部15は、距離画像から抽出される対象物の大きさから対象物が閾値以上の高さの動体である場合、対象物を人と推定し、閾値未満の高さの動体(例えばペット)と区別して認識し、(【0045】)
推定部15は、人と推定された対象物の高さ方向の変化を検出し、(【0045】)
推定部15は、転倒が生じた時刻の距離画像及びその後に取得した距離画像に基づき、転倒状態のTOFセンサ9と対象物との距離から転倒している人の状態を推定し、対象物の大きさや動作を確認し、この結果、静止物と推定した対象物や、ペット等の人以外の動体と推定した対象物を人の転倒の検知対象から除外し、(【0046】)
推定部15は、対象物の高さ方向の変化を検出し、これにより対象物が人の転倒であるかを推定し、(【0046】)
推定部15は、人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値よりも少ないかを判定し、推定部15は、人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値以上であると判定した場合、人の転倒は発生していないと判断する、(【0048】)
転倒検知処理が行われるTOFセンサ9及び転倒検知処理装置10」

4 対比・判断
(1) 本願発明と、引用発明1とを対比する。(下線は、当審において付した。)

ア 「監視エリアの物体を検出する検出手段」について

引用発明1の「転倒検知を行う対象の空間」は、「転倒を検知する対象を撮影するセンサ」である「TOFセンサ9」が「対象物を検知」する空間のことであるから(【0009】、【0011】、【0020】)、本願発明の「監視エリア」に相当する。

そして、引用発明1の「TOFセンサ9」は、「転倒検知を行う対象の空間」内に設置され、「出力された赤外光と、その赤外光が対象物を反射して戻ってくる赤外光との時間差から物体の距離を検知する」ものであって(【0010】)、「検知部11」とともに、「転倒を検知する対象の空間」の「対象物を検知」しているから(【0020】)、引用発明1の「対象物」は、本願発明の「物体」に相当し、引用発明1の「TOFセンサ9」及び「検知部11」は、本願発明の「検出手段」に相当する。

したがって、引用発明1の「転倒を検知する対象の空間」の「対象物を検知」する「TOFセンサ9」及び「検知部11」は、本願発明の「監視エリアの物体を検出する検出手段」に相当する。

イ 「前記監視エリア内に存在する所定のマスク高さ以上の物体を対象物として認識する物体認識手段」について

引用発明1では、「判定部14」により判定された「対象物の大きさ」と「動き」から、「推定部15」が「対象物が閾値以上の高さの動体である場合、対象物を人と推定し、閾値未満の高さの動体(例えばペット)と区別して認識」するものである(【0045】)。
ここで、引用発明1においては、対象物が所定以上(例えば1m以上)のような「閾値以上の高さ」であると、「対象物を人と推定」するのであるから(【0030】、【0045】)、引用発明1の「所定以上(例えば1m以上)」と、本願発明の「所定のマスク高さ以上」とは、「所定の高さ以上」である点で共通する。

また、引用発明1において、「推定部15」は、「対象物が閾値以上の高さの動体である場合」に、「対象物を人と推定し、閾値未満の高さの動体(例えばペット)と区別して認識」するというのであるから(【0045】)、引用発明1において「対象物を人と推定」することは、本願発明において「物体を対象物として認識」することに包含されるものといえ、引用発明1の「対象物」は、本願発明の「物体」に相当し、引用発明1の「人と推定」することは、本願発明の「対象物として認識」することに含まれる。

そして、上記アのとおり、引用発明1の「転倒検知を行う対象の空間」は、本願発明の「監視エリア」に相当するから、
引用発明1における「転倒を検知する対象の空間に存在する対象物」について「動物と判定した対象物の大きさが所定以上(例えば1m以上)である場合、対象物は人の可能性があると推定」する「推定部15」と、本願発明における「監視エリア内に存在する所定のマスク高さ以上の物体を対象物として認識する認識手段」とは、「監視エリア内に存在する所定の高さ以上の物体を対象物として認識する認識手段」である点で共通している。

ウ 「前記対象物の高さ情報に基づいて、前記対象物の転倒を判定する転倒判定手段」について

引用発明1では、「推定部15は、所定の高さ以上で動きがある対象物が、低い状態に移行し、所定時間動かない状態又は所定時間動きが少ない状態になったとき、対象物は人であり、かつ人が転倒したと推定する」処理を行っており(【0031】)、「高さ」に基づいて「人が転倒した」ことを推定しているのであるから、本願発明の「対象物の高さ情報に基づいて、前記対象物の転倒を判定する転倒判定手段」とは、「対象物の高さ情報に基づいて、前記対象物の転倒を判定する転倒判定手段」である点で一致している。

エ 「前記物体認識手段は、転倒と判定された前記対象物の高さが前記マスク高さ未満となった場合でも、マスク高さ未満の前記対象物の情報を取得し、前記対象物としての認識を継続する」点について

引用発明1において「推定部15」が「転倒したと推定する」こととは、「静止していない1m以上の高さの対象物」が「日常の動きのときの人の高さよりも低くなった状態(例えば1m以下)」で「一定時間(例えば、10〜15秒以上)動かない、又は前記低くなった状態に移行して一定時間(例えば、10〜15秒)以上経過した場合」であって(【0031】)、これによって「対象物が人の転倒であるかを推定」している(【0046】)。
そして、「推定部15」は、「人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値よりも少ないかを判定」していることから(【0048】)、「人」の「転倒を推定」した後において、「静止していない1m以上の高さの対象物」が「日常の動きのときの人の高さよりも低くなった状態(例えば1m以下)」でも「一定時間の動きが所定の閾値よりも少ないかを判定」する処理が継続的に行われているということであるから(【0031】、【0048】)、「人」の「転倒を推定」した後において、「静止していない1m以上の高さの対象物」が「人の高さよりも低くなった状態(例えば1m以下)」でも「対象物」を「人と推定」する処理が継続して行われていることは明らかであるといえる。

すると、引用発明1において「推定部15」が「人の転倒を推定してから一定時間の動きが所定の閾値よりも少ないかを判定」することと、本願発明における「物体認識手段」が「転倒と判定された前記対象物の高さが前記マスク高さ未満となった場合でも、マスク高さ未満の前記対象物の情報を取得し、前記対象物としての認識を継続する」こととは、「物体認識手段」が「転倒と判定された前記対象物の高さが所定の高さ未満となった場合でも、所定の高さ未満の対象物の情報を取得し、対象物としての認識を継続する」点で共通している。

オ 「物体検知装置」について

引用発明1では、「TOFセンサ9」及び「転倒検知処理装置10」が、当該一連の転倒検知処理を行っているものであるから、本願発明の「物体検知装置」に相当する。

(2) よって、上記(1)ア〜オの検討結果をまとめると、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致し、また相違している。

(一致点)
「監視エリアの物体を検出する検出手段と、
前記監視エリア内に存在する所定の高さ以上の物体を対象物として認識する物体認識手段と、
前記対象物の高さ情報に基づいて、前記対象物の転倒を判定する転倒判定手段とを有し、
前記物体認識手段は、転倒と判定された前記対象物の高さが所定の高さ未満となった場合でも、所定の高さ未満の前記対象物の情報を取得し、前記対象物としての認識を継続する
物体検知装置。」

(相違点1)
本願発明では、対象物の高さ情報を継時的に取得する高さ取得手段を有しているのに対して、引用発明1では、転倒を検知する空間内に存在する対象物の大きさと、その対象物の所定時間の動きを判定する判定部14、人と推定された対象物の高さ方向の変化を検出する推定部15を有しているものの、対象物の高さ情報を継時的に取得する高さ取得手段が特定されていない点。

(相違点2)
「所定の高さ」について、本願発明では、「マスク高さ」と記載されているのに対し、引用発明1では、「マスク」という形容がされていない点。

(3) 当審の判断
ア 相違点1について検討する。
引用発明1においては、「判定部14」が、距離画像とIR画像とに基づき、「対象物の大きさ」を判定しており、その判定結果を受けて、「推定部15は、人と推定された対象物の高さ方向の変化を検出」しているが、ここで「対象物の高さ方向の変化を検出」するためには、前提として対象物の「高さ」を継時的に取得していることは、その計算手順から、当然に想定され得ることである。
すると、判定部の判定結果を受けて、対象物の高さを継時的に取得する高さ取得手段を設けることは、当該事項からみて、当業者であれば当然に想定し得るようなことであるから、当業者であれば容易に想到し得ることである。

イ 相違点2について検討する。
本願明細書の【0016】段落に記載されるように「例えば、下部マスク領域は、雑草などの誤検知を防ぐため、マスク高さが地面より数十cm程度の範囲に設定されている」ものであり、これにより、本願明細書の【0004】段落に記載されるように「地面から高さ数十cm程度までの領域を監視エリアから除外する処理を行」っているものである。
一方、引用発明1には、「動物と判定した対象物の大きさが所定以上(例えば1m以上)である場合、対象物は人の可能性があると推定するものであり」(【0030】)、「対象物が閾値以上の高さの動体である場合、対象物を人と推定し、閾値未満の高さの動体(例えばペット)と区別して認識し」(【0045】)、「静止物と推定した対象物や、ペット等の人以外の動体と推定した対象物を人の転倒の検知対象から除外」する処理を行っている(【0046】)ことが特定されている。すると、引用発明1においても、「対象物」が「閾値未満の高さの動体」であれば、「人」としての検知対象から除外する処理が行われているのであるから、結果として「閾値未満の高さの動体」を「転倒検知を行う対象の空間」から除外する処理が行われているものである。
すると、対象物が所定の高さ未満のものを、領域監視エリアの検知対象から除外することは、引用発明1にも開示されていることであるから、当該相違点2は、本願発明と引用発明1との表現上の違いであって、実質的な相違点ではない。

ウ 以上より、上記ア〜イから、本願発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
また、本願発明が奏する効果についても、引用発明1から当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものではない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-12-15 
結審通知日 2022-12-20 
審決日 2023-01-05 
出願番号 P2018-056588
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G08B)
P 1 8・ 121- Z (G08B)
P 1 8・ 572- Z (G08B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 衣鳩 文彦
猪瀬 隆広
発明の名称 物体検知装置及び物体検知方法  
代理人 高橋 久典  
代理人 高橋 久典  
代理人 寺本 光生  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 清水 雄一郎  
代理人 西澤 和純  
代理人 西澤 和純  
代理人 寺本 光生  

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