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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1395073
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-27 
確定日 2023-03-07 
事件の表示 特願2020− 89081「車両コンピュータシステムおよびマイクロフォンコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月 3日出願公開、特開2020−195131、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和2年5月21日(パリ条約による優先権主張2019年5月29日(以下、「優先日」という。)、アメリカ合衆国)の出願であって、令和3年7月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月12日に意見書とともに手続補正書が提出され、令和4年3月28日付けで拒絶査定(謄本送達日同年3月29日。以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して同年6月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年7月28日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告(前置報告)がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和4年3月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1−20
・引用文献等 1−4

<引用文献等一覧>
1.特表2012−500526号公報
2.特開2017−146437号公報
3.国際公開第2017/165807号(周知技術を示す文献)
4.特表2018−517919号公報


第3 審判請求時の補正について

令和4年7月28日になされた前置報告において、審判請求時の補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである旨の報告がなされているので、本件補正が適法であるか否かについて検討する。
なお、本件補正後の請求項1〜20に係る発明は、以下の第4に記載したとおりのものである。
本件補正によって、本件補正前の請求項1に特定された、「前記マイクロフォンコントローラは、鍵ストアに、複数のアプリケーションに対応する複数の鍵を有し、音声データを利用するアプリケーションに応じた鍵を選択する」を、本件補正後に「前記マイクロフォンコントローラは、鍵ストアに、複数の前記アプリケーションに対応する複数の鍵を有し、音声データを利用する複数の前記アプリケーションに応じた複数の前記鍵から、暗号化に用いる鍵を選択する」とする補正(以下、「補正事項1」という。)は、本件補正前の「複数の鍵」につき、限定的に減縮するものである。(なお、下線は本件補正による補正箇所を示す。以下この項において同様。)
本件補正による、請求項12に係る補正(以下、「補正事項2」という。)も同様に、特許請求の範囲を限定的に減縮するものと認められる。
本件補正によって、本件補正前の請求項10に特定された、「前記マイクロフォンコントローラは、同時に2以上のアプリケーションに音声データを提供する場合、一時鍵を用いて受信した音声入力を暗号化する」を、本件補正後に「前記マイクロフォンコントローラは、同時に2以上の前記アプリケーションに同一の音声データを提供する場合、1つの一時鍵のみを用いて、受信した音声入力を暗号化し、前記一時鍵を2以上の前記アプリケーションに送信し、」「前記アプリケーションは、受信した前記一時鍵を用いて音声データを復号する」とする補正(以下、「補正事項3」という。)は、暗号化処理における、鍵について「一時鍵のみ」用いることに限定的に減縮するとともに、本件補正前の「暗号化」について、さらに当該一時鍵を「2以上の前記アプリケーションに送信」すること、及び「前記アプリケーション」が「受信した前記一時鍵を用いて音声データを復号する」ことを限定的に減縮するものであって、特許請求の範囲を限定的に減縮するものである。
本件補正による、請求項19に係る補正(以下、「補正事項4」という。)も同様に、特許請求の範囲を限定的に減縮するものと認められる。
上記補正事項1〜4について、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
よって、上記補正事項1〜4は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
本件補正によってなされた、請求項2、11、20に係る補正(以下、まとめて「補正事項5」という。)は、特許法第17条の2第5項第3号の誤記の訂正を目的とするものと認められる。
よって、上記補正事項1〜5は、特許法第17条の2第5項の規定に適合するものである。
また、上記補正事項1〜5は、出願当初の明細書の【0033】〜【0035】等に記載された事項の範囲内のものと認められるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合し、また、特許法第17条の2第4項(シフト補正)の規定にも適合している。
さらに、補正後の請求項1〜20に係る発明は、以下の第4〜第7に示すように、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1〜4(以下の第5に示す引用例1〜4)に基づいて、容易に発明をすることができたものではなく、また、以下の第8に示すように、他の拒絶の理由も発見しないから、特許法第17条の2第6項に規定する独立特許要件を満たすものである。
したがって、上記補正事項1〜5からなる本件補正は、特許法17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえないから適法なものである。


第4 本願発明

本願請求項1〜20に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明20」といい、これらをまとめて、「本願発明」ということがある。)は、本件補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1〜20に記載された、次のとおりのものと認める。(下線は、補正箇所を示すために審判請求人が付加したものである。)

「 【請求項1】
音声入力を受け入れるように構成される1つ以上のマイクロフォンと、
音声入力を受信し、開始される音声認識セッションで音声入力を利用するように構成されるマイクロフォンコントローラと、
前記マイクロフォンコントローラは、受信した音声入力を暗号化された音声データへ暗号化するように構成される1つ以上の鍵を含む鍵ストアをさらに含み、
鍵ストア内の1つ以上の鍵に関連付けられた1つ以上の復号鍵をそれぞれ含む1つ以上のアプリケーションコントローラと、を備え、
前記アプリケーションコントローラは、さらに、復号鍵を用いて音声データを復号し、復号された音声データを利用するように構成され、
1つ以上の前記アプリケーションコントローラは、複数のアプリケーションを実行可能であり、
前記マイクロフォンコントローラは、鍵ストアに、複数の前記アプリケーションに対応する複数の鍵を有し、音声データを利用する複数の前記アプリケーションに応じた複数の前記鍵から、暗号化に用いる鍵を選択する車両コンピュータシステム。
【請求項2】
1つ以上の前記アプリケーションコントローラは、第1の復号鍵を備えたナビゲーションアプリケーションと、第2の復号鍵を備えたブルートゥースコントローラとを含む、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項3】
前記マイクロフォンコントローラは、前記1つ以上のマイクロフォンから受信したウェイクワードに応答して音声認識セッションを起動するように構成されたウェイクワード検出エンジンをさらに含む、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項4】
音声入力はアナログであり、暗号化された音声データはデジタルデータである、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項5】
音声入力はアナログであり、復号された音声データはデジタルデータである、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項6】
受信した音声入力を暗号化するように構成された前記1つ以上の鍵は、前記1つ以上の復号鍵と対称である、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項7】
受信した音声入力を暗号化するように構成された前記1つ以上の鍵は、前記1つ以上の復号鍵と非対称である、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項8】
受信した音声入力を暗号化するように構成された前記1つ以上の鍵は、一時鍵である、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項9】
1つ以上の復号鍵は、一時鍵である、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項10】
前記マイクロフォンコントローラは、同時に2以上の前記アプリケーションに同一の音声データを提供する場合、1つの一時鍵のみを用いて、受信した音声入力を暗号化し、前記一時鍵を2以上の前記アプリケーションに送信し、
前記アプリケーションは、受信した前記一時鍵を用いて音声データを復号する、請求項1に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項11】
前記マイクロフォンコントローラは、前記一時鍵を生成又は変更すると、暗号化された音声データと同じチャネル又は補助通信チャネルを介して、音声データを利用する2以上の前記アプリケーションに送信する、請求項10に記載の車両コンピュータシステム。
【請求項12】
マイクロフォンコントローラによって開始される音声認識セッションで利用される、1つ以上のマイクロフォンからの音声入力を受信するようにプログラムされたプロセッサを備えたマイクロフォンコントローラであって、
前記マイクロフォンコントローラは、受信した音声入力を暗号化された音声データへ暗号化するように構成される1つ以上の鍵を含む鍵ストアをさらに含み、
前記マイクロフォンコントローラは、複数のアプリケーションに音声データを提供可能であり、
前記マイクロフォンコントローラは、鍵ストアに、複数の前記アプリケーションに対応する複数の鍵を有し、音声データを利用する複数の前記アプリケーションに応じた複数の前記鍵から、暗号化に用いる鍵を選択する、マイクロフォンコントローラ。
【請求項13】
ウェイクワード入力に応答して音声認識セッションを起動するように構成されたウェイクワード検出エンジンをさらに含む、請求項12に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項14】
前記1つ以上の鍵は、第2の復号鍵に関連付けられる第1の暗号化鍵を含み、前記第2の復号鍵は、前記マイクロフォンコントローラではない車両コントローラに配置される、請求項12に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項15】
前記第1の暗号化鍵は、前記第2の復号鍵と対称である、請求項14に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項16】
前記マイクロフォンコントローラは、前記暗号化された音声データを復号するように構成された1つ以上の復号鍵を含む1つ以上の車両コントローラと通信するようにさらに構成される、請求項12に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項17】
受信した音声入力はアナログであり、暗号化された音声データはデジタルである、請求項12に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項18】
受信した音声入力を暗号化するように構成された前記1つ以上の鍵は、受信した音声入力を復号するように構成された1つ以上の鍵と関連付けられる、請求項12に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項19】
前記マイクロフォンコントローラは、同時に2以上の前記アプリケーションに同一の音声データを提供する場合、1つの一時鍵のみを用いて受信した音声入力を暗号化し、前記一時鍵を2以上の前記アプリケーションに送信し、
前記アプリケーションは、受信した前記一時鍵を用いて音声データを復号する、請求項12に記載のマイクロフォンコントローラ。
【請求項20】
前記マイクロフォンコントローラは、前記一時鍵を生成又は変更すると、暗号化された音声データと同じチャネル又は補助通信チャネルを介して、音声データを利用する2以上の前記アプリケーションに送信する、請求項19に記載のマイクロフォンコントローラ。」


第5 引用例

1 引用例1に記載された事項及び引用発明
(1)引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の第一国出願前に既に公知である、特表2012−500526号公報(平成24年1月5日公表。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

ア 「【0001】
本発明は、装着可能なヘッドセットに関し、詳細には、内蔵音声フィードバック及び音声コマンドを用いる装着可能なステレオヘッドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドセット又はヘッドホンは通常、通信装置及びマルチメディア装置が生成するか又は転送するオーディオ信号を聞くために、これらの装置と関連して使用される。そのような通信装置及びマルチメディア装置の例として、携帯電話、ラジオ受信機、CDプレーヤー及びMP3プレーヤーのようなポータブル音楽プレーヤーが挙げられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、装着可能なワイヤレスヘッドセットに関し、詳細には、該装置を装着しているユーザーに集中した音声フィードバック及び音声コマンドを用いる装着可能なステレオワイヤレスヘッドセットに関する。本発明は、ユーザーの音声周波数スペクトルにマイクを集中させ、リアルタイムの(時間遅延のない)はっきりと聞こえるフィードバックをユーザーに提供するように設計されるため、ユーザーは、それにしたがって特に自身の声の音量、音程、トーン及び周囲環境のノイズを調整することができる。本発明はまた、音声をテキスト認識、音声アプリケーション制御、音声認証するために、音声ストリームデータを捕捉して通信/マルチメディア装置に無線伝達するための音声コマンドボタンを含む。音声ストリームデータは、通信/マルチメディア装置、又は有線接続若しくは無線接続を介して該装置が接続されるリモートサーバーに位置する音声コマンドアプリケーションによって実行される。本発明は、通話及び音楽プレーヤーを制御することを含む種々の携帯機器の機能、並びにBluetooth又はBluetoothへのアダプターを用いる他の装置との相互作用及びこれらの制御に使用することができる。本発明は、役立つユーザーの音声フィードバックを提供し、通話する際に、人と、又はコンピューターの音声認識システムとのより明瞭かつ正確な会話のためにユーザーの経験を充実したものにする。本発明はまた、正確な音声フィードバックを歌い手に提供することによってエンターテインメント若しくは音楽トレーニングのために、又は余暇に歌を聞きながらその歌でカラオケをしたい場合にも使用することができる。本発明はまた、言語学習に関連して使用して、オーディオ教材を用いる練習中に音声フィードバックによって学習者を助けることができる。本発明は、音声のみに集中し、周囲のノイズは切り離すため、他の携帯機器、PC、ビデオゲーム及び他の対話型装置と併せて、より正確な音声ディクテーション及び音声コマンドのために広範に使用することもできる。本発明は、Bluetooth等の同期無線転送を用いる任意の装置に接続することができる。本発明はまた、標準的なステレオジャック又はマイクサポートを有するステレオジャックを介して多くの携帯電話へ直接接続することができる。たいていの用途は、他のBluetooth割り込み可能装置によって、又はBluetooth適合装置を介して接続される。」

イ 「【0016】
図1及び図2を参照すると、ワイヤレスヘッドセット100が、ユーザーが首50の後ろの周りに装着するように設計されている。ヘッドセット100は、図2に示すように、ユーザーの首に合うU字形のフレーム104と、デジタル信号処理ユニット180と、音声コマンドスイッチ190と、U字形のフレーム104の一端102aから延びるマイク130とを含む。フレーム104は種々の首のサイズに合わせて屈曲可能であり、可撓性であり、調整可能である。フレーム104は、図2に示すように、2つの位置104a、104bで折り曲げ可能である。U字形のフレーム104の端102a、102bは、2つのイヤホン140a、140bをそれぞれ収容するような形状である。イヤホン140a、140bは、図1に示すようにワイヤ106a、106b(図示せず)を介して端102a、102bからそれぞれ延びるため、ユーザーの耳に到達してユーザーの耳に挿入される。ワイヤ106a、106b(図示せず)は、使用されないときは、それぞれ後退して端102a、102bへ戻り、イヤホンの保管を可能にする。いくつかの実施形態では、フレームの一端102bから延びる1つのみのイヤホンがあり、マイク130がフレームの他端102aから延びる。マイク130は、音声をより良くピックアップするためにユーザーが延ばし、後退させ、位置決めすることもできる。他の実施形態では、マイク130は、2つのイヤホン140a、140bの一方から延びる。オン/オフ音声コマンドスイッチ190は、ヘッドセットの音声コマンドモードを開始するために用いられる。
【0017】
図3を参照すると、信号処理ユニット180は、インターフェース110と、信号プロセッサー120と、バッテリー150と、ミキサー160とを含む。ミキサー160は、信号プロセッサー120とは別個のものであってもよく、又は図3に示すように信号プロセッサー120内に組み込んでもよい。ヘッドセット100は、動作時に、インターフェース110を介して通信/マルチメディア装置90との無線通信リンク80を確立する。ヘッドセット100と通信/マルチメディア装置90との間には、標準的なジャックを使用する有線通信リンク85があってもよい。通信/マルチメディア装置90から伝送されたデータは、インターフェース110によって受信されてプロセッサー120によってさらに処理され、オーディオ出力信号112が生成され、これが次いでイヤホン140a、140bへ伝達される。一例では、インターフェース110はBluetoothインターフェースであり、プロセッサー120はデジタル信号プロセッサー(DSP)である。さらに、マイク130によって得られた音声信号132がオーディオ信号としてプロセッサー120により処理され、次いでインターフェース110へ転送される。プロセッサー120による信号処理は、ユーザーの音声周波数を高めるために特別なフィリタリングを行うことを含む。これらの音声周波数は通常、200Hz〜5KHZの範囲である。この信号の強化によって、ユーザーの声と関連しない風、低周波数及びより高い周波数を含む、声ではない周囲のノイズを劇的に低減する。インターフェース110は、強化されたオーディオ信号132を通信/マルチメディア装置90へ無線伝送する。このように、二方向通信が確立され、すなわち、ヘッドホン110のユーザーは、通信/マルチメディア装置90から受信したオーディオ信号を聞くと共に、オーディオ信号を通信/マルチメディア装置90へ転送することができる。オーディオ信号132は、ミキサー160にも転送され、ミキサー160において、通信/マルチメディア装置90からのオーディオ信号112と混合される。混合された信号165は次いでイヤホン140a、140bへ転送される。このように、ユーザーは、通信装置90からのオーディオ信号112と同時に、マイク130からオーディオフィードバック信号132を直接受信する。これによって、ヘッドセット100が、携帯コンピューティング装置及び通信装置を介する人又は機械とのより正確な通信のための音声フィードバックシステムとして機能することができると共に、カラオケシステムとしても機能することができ、それによって、ユーザーは、歌いながら、通信/マルチメディア装置90からの音楽信号と共に自身の声を聞く。他の例では、ユーザーは、ヘッドセット100を使用して、外国語のトレーニング又は発音の上達のために単語又は文章を発音しながら自身の声を聞く。バッテリー150は、ヘッドセット100の無線動作のために電力を提供する。一例では、バッテリー150は長寿命の充電式バッテリーであり、ヘッドセットは、外部電源をヘッドセットに接続してバッテリーを再充電するために使用される入力部155を含む。
【0018】
図4を参照すると、通信装置90へ音声コマンドを発行するためにヘッドセット100を使用するプロセス300が以下を含む。まず、ユーザーは音声コマンドボタン190を押し、ヘッドセット100の音声コマンドモードを作動させる(301)。同時に、特定音声対応型(specific voice capable)アプリケーション(VCA)200を起動するためにBluetoothインターフェース110を介して信号を通信/マルチメディア装置90へ送信する(302)。アプリケーション200は起動し、音声データを受信する準備が整う。イヤホン140a及び140bにおいて第1のアラート音が鳴り、ユーザーに記録中であるという注意を喚起する(303)。ユーザーがコマンド(又はディクテーション)を話し、コマンド/ディクテーションをマイク130を介して捕捉し、音声データストリームとしてDSP180によって記録する(304)。次に、音声コマンドボタンを解放して記録を停止する。記録が停止されたことを示す第2の(異なる)アラート音がイヤホンにおいて鳴る(305)。記録された音声データストリームを、Bluetoothインターフェース110を介して通信/マルチメディア装置90へ無線送信する(306)。通信/マルチメディア装置90は、音声データストリームを受信し、これを、発行された音声コマンドを遂行することに関与する特定VCA200へ誘導する。アプリケーション200は、この音声データを受け取って処理する(308)。一実施形態では、データを、通信/マルチメディア装置90において、音声をテキスト又はパターンに変換してアプリケーション200へ戻すローカル音声認識アプリケーションによってローカルに処理する(310)。別の実施形態では、図3に示すように、データを、ネットワーク接続60を介してリモートサーバー50へ送信し、サーバーによって遠隔処理する(312)。他の実施形態では、アプリケーション200はヘッドセット100に含まれる。」

ウ 「【0021】
前述したように、音声コマンドボタン190を押すことによって信号が携帯電話90へ送信されてアプリケーション200が作動し、それによって音声コマンドを受信する準備が整う。信号は、「聞く準備が整っている」という注意を喚起するためにヘッドセット装置100へ送信し戻される。ユーザーが話すと音声コマンドがオーディオファイルに捕捉され、これが次いでアプリケーション200へ送信される。アプリケーション200は次いで、オーディオファイルを、音声認識のためにサーバー50へ送信する。認識されたコマンドはアプリケーション200へ戻され、ここで解釈される。その後、アプリケーションによる動作が行われる。音声コマンド及びフォローアップ動作の例として以下のものが挙げられる:
1)「ジョン・スミスへ電話」アプリケーションは、電話連絡先リスト内のジョン・スミスの番号をダイアルする。
2)「明日のミーティングの件についてジョン・スミスへEメール又はテキストを作成する」アプリケーションはEメールアプリケーションを開始し、連絡先Eメールアドレス及び件名を書き込み、次いで、Eメールの残りの部分に関してテキストにする音声を待つ。
3)「ボストンのダウンタウンの寿司レストランを検索」アプリケーションは、Yahoo One Search又は他のブラウザーを開始して結果を検索する。
【0022】
ユーザーは、装置90に位置するさらなる制御ボタン93を介して、又は図1に示すようにヘッドセット100に一体化されている制御ボタン170を介して携帯機器を制御することができる。制御170は、特に、音量、音声フィードバックのオンオフ、ヘッドセットのオンオフ、携帯機器のオンオフ、装置のペアリング(Bluetooth)、音楽プレーヤーの曲の再生、一時停止、停止、曲送り、早送り及び曲戻し、トラック検索、スキップ、電話の応答、電話の終了を含む。制御信号は信号プロセッサー120へ送信され、次いで172を介してインターフェース110へ送信され、そこから有線リンク85又は無線リンク80を介して携帯機器90へ送信される。装置は、電源及び動作指示ライト174も含むことができる。
【0023】
ヘッドセットの他の実施形態は、以下のうちの1つ又は複数を含む。U字形のフレーム104は、2つ以外の1つ又は複数の位置において折り曲げ可能であり得る。フレームは、種々のサイズ調整を可能にする電子回路も含むことができる。フレーム104は、人間工学的設計を有することができ、ユーザーの頭50の頂部において、ユーザーの頭の後ろに回して、耳の上部に回して及び/又は耳の上部において支持してもよい。ヘッドセットは、音楽又は他の情報を記憶するメモリーを含むことができる。信号ミキサー160は、DSP120の一部であってもよい。通信/マルチメディア装置90は、MP3プレーヤー、iphone、ipod、PDA、携帯電話、パーソナルコンピューター、テレビ受像機、又は任意の他の無線若しくは有線マルチメディア装置であり得る。マイク130は高音質マイクとすることができ、ヘッドセットはステレオヘッドセット又はモノヘッドセットであり得る。一例では、マイクは前置増幅器を有する4mmマイクである。無線インターフェースは、Bluetoothハンズフリー、Bluetooth A2DP(ステレオ音楽)、Bluetooth AVRCP(ステレオゲーム)、赤外線又は任意の他の無線フォーマットであり得る。一例では、無線インターフェースは、Cambridge Silicon Radio社(CSR)(Cambridge, UK)が提供するBlueCore7である。ヘッドセットは、安全な会話のためにデジタル暗号化することを含んでもよい。通信/マルチメディア装置はヘッドセットに組み込んでもよい。マイクは、伸縮式、回転可能及び/又は取り外し可能であり得る。」

エ 「図1



オ 「図2



カ 「図3



(2)引用発明
上記(1)の記載事項ア〜カより、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「内蔵音声フィードバック及び音声コマンドを用いる装着可能なヘッドセット100であって(【0001】、【0016】)、
音声のみに集中し、周囲のノイズは切り離して、より正確な音声コマンドのために広範に使用する、他の携帯機器、PC、ビデオゲーム及び他の対話型装置のようなBluetooth等を用いる任意の装置に接続することができ(【0003】)、
ヘッドセット100はデジタル信号処理ユニット180と、音声コマンドスイッチ190と、マイク130とを含み、マイク130は、音声をピックアップし、オン/オフ音声コマンドスイッチ190は、ヘッドセットの音声コマンドモードを開始するために用いられ(【0016】、図1、図2)、
信号処理ユニット180は、インターフェース110と、信号プロセッサー120とを含み、ヘッドセット100は、動作時に、インターフェース110を介して通信/マルチメディア装置90との無線通信リンク80を確立し、通信/マルチメディア装置90から伝送されたデータは、インターフェース110によって受信されてプロセッサー120によってさらに処理され、インターフェース110はBluetoothインターフェースであり、マイク130によって得られた音声信号132がオーディオ信号としてプロセッサー120により処理され、次いでインターフェース110へ転送され、インターフェース110は、強化されたオーディオ信号132を通信/マルチメディア装置90へ無線伝送し、ユーザーは、オーディオ信号を通信/マルチメディア装置90へ転送し(【0017】、図3)、
通信装置90へ音声コマンドを発行するためにヘッドセット100を使用するプロセス300は、ユーザーが音声コマンドボタン190を押し、ヘッドセット100の音声コマンドモードを作動させると同時に、特定音声対応型(specific voice capable)アプリケーション200を起動するためにBluetoothインターフェース110を介して信号を通信/マルチメディア装置90へ送信し、ユーザーがコマンドを話し、コマンドをマイク130を介して捕捉し、音声データストリームとしてDSP180によって記録し、音声コマンドボタンを解放して記録を停止し、記録された音声データストリームを、Bluetoothインターフェース110を介して通信/マルチメディア装置90へ無線送信し、通信/マルチメディア装置90は、音声データストリームを受信し、これを、発行された音声コマンドを遂行することに関与する特定音声対応型アプリケーション200へ誘導し、アプリケーション200は、この音声データを受け取って処理し、音声データを、通信/マルチメディア装置90において、テキスト又はパターンに変換してアプリケーション200へ戻し、ローカル音声認識アプリケーションによってローカルに処理し(【0018】)、
ユーザーが話すと音声コマンドがオーディオファイルに捕捉され、これが次いでアプリケーション200へ送信され、アプリケーション200は次いで、オーディオファイルを、音声認識のためにサーバー50へ送信し、認識されたコマンドはアプリケーション200へ戻され、ここで解釈され、その後、アプリケーションによる動作が行われ(【0021】)、
ヘッドセット100は、安全な会話のためにデジタル暗号化することを含んでもよい(【0023】)
ヘッドセット100。」

2 引用例2
(1)引用例2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の第一国出願前に既に公知である、特開2017−146437号公報(平成29年8月24日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
以下に示す第1及び第2の実施形態に係る音声入力処理装置は、例えば車両に搭載される音響映像装置(例えば、ディスプレイ・オーディオ(DA)装置)として実現され得るが、本発明は、これに限らす、複数の一般機器の動作を音声コマンドにより制御する音声入力処理装置に広く適用することができる。」

イ 「【0022】
音声入力処理装置10は、さらに、車載のマイクロフォン170、スピーカ172、ディスプレイ174、操作スイッチ176などのヒューマンインタフェースデバイスと通信するためのHMIインタフェース(HMI−INF)106も有している。」

ウ 「【0027】
図2は、本実施形態に係る音声入力処理装置10の構成を示す図である。本音声入力処理装置10の処理装置100は、例えば、CPU等のプロセッサ、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有するコンピュータであり、全体制御ユニット200と、オーディオユニット202と、ナビゲーションユニット204と、第1外部機器制御ユニット206と、第2外部機器制御ユニット208と、を有している。処理装置100が有する上記各ユニットは、例えばコンピュータである処理装置100がコンピュータ・プログラムを実行されることにより実現される。」

エ 「【0034】
ナビゲーションユニット204は、処理装置100がアプリケーションプログラムを実行することにより実現され、音声認識ユニット222と経路探索ユニット224と、を備える。音声認識ユニット222は、HMF−INF106を介してマイクロフォン170から入力される入力音声、又は全体制御ユニット200のコマンド処理ユニット212から与えられる入力音声に対し音声認識処理を行い、当該入力音声に含まれる動作指示を抽出する。」

オ 「【0037】
第1外部機器制御ユニット206、及び第2外部機器制御ユニット208は、音声入力処理装置10に接続される外部機器の動作を制御するプラットフォームであり、処理装置100がアプリケーションプログラムを実行することにより実現される。」

カ 「【0041】
第2外部機器制御ユニット208は、例えば多機能携帯端末Nexus(登録商標)の動作を制御するAdroid Auto(登録商標)システムのプラットフォームであり、音声認識ユニット234と、機器通信処理ユニット236と、を備える。音声認識ユニット234は、HMF−INF106を介してマイクロフォン170から入力される入力音声、又は全体制御ユニット200のコマンド処理ユニット212から与えられる入力音声に対し音声認識処理を行い、当該入力音声に含まれる動作指示を抽出する。
【0042】
機器通信処理ユニット236は、音声認識ユニット234が抽出した動作指示、及び又は操作スイッチ176若しくはディスプレイ174のタッチパネルから入力される動作指示情報、及び又は全体制御ユニット200のコマンド処理ユニット212から与えられる動作信号に基づいて、上記動作指示、操作指示情報、及び又は動作信号が示す動作を、例えばUSB通信インタフェースである第4通信INF246(後述)、又は例えばBluetooth(登録商標)通信インタフェースである第2通信INF242(後述)を介して、例えば多機能携帯端末Nexus(登録商標)である第2外部機器112に指示する。」

3 引用例3
(1)引用例3に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の第一国出願前に既に公知である、国際公開第2017/165807号(2017年9月28日公開。以下、これを「引用例3」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(なお、各記載事項の訳文は、引用例3のファミリー文献である、特表2019−514314号公報のものである。)

ア 「 [0002] The disclosed subject matter relates to methods, systems, and media for using dynamic public key infrastructure to send and receive encrypted messages.
当審訳:
【0001】
開示の主題は、暗号化メッセージを送受信するために動的公開鍵インフラストラクチャを用いる方法、システム、及び媒体に関する。」

イ 「[0007] A method is disclosed for transmitting encrypted messages. The method may comprise generating, using a hardware processor by a first application, a first public key and a first private key corresponding to a first application. The method may comprise transmitting the first public key to a second application. The method may comprise receiving, from the second application, a second public key. The method may comprise encrypting a first message using the second public key corresponding to the second application. The method may comprise generating, by the first application, a third public key and a second private key. The method may comprise transmitting the encrypted message and third public key to the second application. The method may comprise receiving, from the second application, a second message and a fourth public key corresponding to the second application. The method may comprise decrypting the second message using the second private key.
当審訳:
【0007】
暗号化メッセージを送信する方法が開示されている。方法は、ハードウェアプロセッサを用いて第1のアプリケーションによって第1のアプリケーションに対応する第1の公開鍵と第1の秘密鍵とを生成するステップを含むことができる。方法は、第1の公開鍵を第2のアプリケーションへと送信するステップを含むことができる。方法は、第2のアプリケーションから第2の公開鍵を受信するステップを含むことができる。方法は、第2のアプリケーションに対応する第2の公開鍵を用いて第1のメッセージを暗号化するステップを含むことができる。方法は、第1のアプリケーションによって第3の公開鍵と第2の秘密鍵とを生成するステップを含むことができる。方法は、暗号化されたメッセージと第3の公開鍵とを第2のアプリケーションへと送信するステップを含むことができる。方法は、第2のアプリケーションから第2のアプリケーションに対応する第2のメッセージと第4の公開鍵とを受信するステップを含むことができる。方法は、第2の秘密鍵を用いて第2のメッセージを復号化するステップを含むことができる。」

ウ 「 [0011] At least one of the first, second and third key pairs may be different to at least one other of the first, second and third and key pairs. At least one of the public and private key pairs may be generated using an asymmetric encryption algorithm.
当審訳:
【0011】
第1、第2、及び第3の鍵ペアの少なくとも1つは、第1、第2、及び第3の鍵ペアの別の少なくとも1つと異なっていることができる。公開鍵―秘密鍵ペアの少なくとも1つは、非対称暗号化アルゴリズムを用いて生成されることができる。」

エ 「 [0028] In accordance with various arrangements, mechanisms (which can include methods, systems, and media) for using dynamic public key infrastructure to send and receive encrypted messages are provided.
[0029] In particular, a method is provided that makes the exchange of public and private keys between software applications dynamic. In short, new public and private keys are generated by an application each time it transmits a message such that the application's keys change unpredictably with time. Usefully, this makes it very challenging and energy intensive for an unauthorized application to snoop on data communications because it must keep up with the dynamically changing public and private key pairs. As a result, security levels are increased.
[0030] In some arrangements, the mechanisms described herein can encrypt messages and transmit the messages between two applications (e.g., two applications executing on mobile devices, and/or any other suitable types of applications). In some arrangements, the mechanisms can validate transmitted messages, for example, by determining if a command included in a received message is valid. In some such arrangements, the mechanisms can transmit fraud alerts in response to determining that a received message is invalid. For example, in some arrangements, the fraud alerts can be transmitted to user devices and/or user accounts indicated by an application that determines that a received message is invalid. The fraud alerts can also be transmitted to other software applications warning them to be cautious of messages received from the same source. Advantageously, by determining that a received message is invalid, the application can protect itself and/or the hardware it is running on and thus ultimately the user of the application and/or hardware. For example, the application may avoid executing any instructions in the received message, such as requests for data, requests to share encryption keys and/or requests for access to a memory of the hardware on which the application is running. Alternatively or additionally, the application may also transmit an alert to security software, such as antivirus and/or anti hacking software.
当審訳:
【0026】
様々な構成例によれば、暗号化メッセージを送受信するために動的公開鍵インフラストラクチャを用いるための機構(含む、方法、システム、及び媒体)が提供される。
【0027】
特に、ソフトウェアアプリケーション間での公開鍵及び秘密鍵の交換を動的なものとする方法が、提供される。端的に述べれば、アプリケーションがメッセージを送る度にアプリケーションによって新たな公開鍵及び秘密鍵が生成されるのであり、アプリケーションの鍵が時間の経過によって予測不能に変化する。有用なことに、当該仕組みにより、不正アプリケーションがデータ通信に関してスヌーピングを行うことがとても困難でエネルギー集約的な作業となる。なぜならば、アプリケーションは、動的に変化する公開鍵−秘密鍵ペアを追跡していくことを余儀なくされるからである。結果、セキュリティレベルが向上する。
【0028】
一部の構成例では、開示する機構は、メッセージを暗号化して、2つのアプリケーション間(例えば、携帯型機器で実行されている2つのアプリケーション及び/又は他の任意の適切なタイプのアプリケーション)でメッセージを送信することができる。一部の構成例では、機構は、例えば、受信メッセージ内に含まれるコマンドが有効(valid)であるか否かを決定することによって、送信されたメッセージを認証(validate)することができる。一部のそのような構成例では、機構は、受信メッセージが無効であるとの決定に応答して、不正アラートを送信することができる。例えば、一部の構成例では、受信メッセージが無効であると決定したアプリケーションによって指示されたユーザ装置及び/又はユーザアカウントへと、不正アラートを、送信することができる。不正アラートは、他のソフトウェアアプリケーションにも送信されることができ、それらに対して、同じソースから受信されたメッセージに対して警戒するように警告することができる。利点としては、受信メッセージが無効であると決定することによって、アプリケーションは自己及び/又は自己が実行されているハードウェアを保護することができ、故に終局的にはアプリケーション及び/又はハードウェアのユーザを保護することができる。例えば、アプリケーションは、受信メッセージ内の任意の命令(例えば、データについての要求、暗号鍵の共有についての要求、及び/又はアプリケーションが実行されているハードウェアのメモリへのアクセスについての要求等)の実行を回避することができる。代替的に又は追加的には、アプリケーションは、アラートを、アンチウイルス及び/又はアンチハッキングソフトウェア等のセキュリティソフトウェアへと伝達することもできる。」

オ 「[0033] Process 100 can begin at 102. Process 100 can then continue to block 104, where Application A and Application B can generate Public Key Infrastructure (PKI) public and private key pairs. Application A and Application B can generate PKI public and private key pairs using any suitable PKI cryptosystem. Instructions for the PKI cryptosystem may be stored in a memory, such as memory 304, which is local to Application A and/or B and the instructions may be executable by a processor, such as processor 302, which is communicably coupled with the memory to generate the PKI public and private key pairs. By way of example, Application A and Application B can use the Rivest-Shamir-Adleman (RSA) cryptosystem. Note that, in some arrangements, Application A and Application B can be any suitable types of applications (e.g., applications executing on mobile devices, applications executing on non-mobile devices, and/or any other suitable types of applications). For example, Application A and B can be applications on a computer. Additionally, in some arrangements, Application A and Application B can be applications on the same device (e.g., the same user device) and/or on different devices.
当審訳:
【0031】
プロセス100は、102にて開始されることができる。そして、プロセス100は、ブロック104へと続くのであり、該ブロックにてアプリケーションA及びアプリケーションBが公開鍵インフラストラクチャ(PKI)公開鍵―秘密鍵ペアを生成することができる。アプリケーションA及びアプリケーションBは、任意の適切なPKIクリプトシステムを用いてPKI公開鍵―秘密鍵ペアを生成することができる。PKIクリプトシステムのための命令はアプリケーションA及び/又はBにとってローカルなメモリ304等のメモリ内に格納されていることができ、命令はプロセッサ302等のプロセッサによって実行可能なものとされていることができるのであり、プロセッサはメモリと通信可能に接続されてPKI公開鍵―秘密鍵ペアを生成できるようにされている。例を挙げるに、アプリケーションA及びアプリケーションBは、Rivest-Shamir-Adleman(RSA)クリプトシステムを用いることができる。一部の構成例では、アプリケーションA及びアプリケーションBは、任意の適切なタイプのアプリケーションとされることができるということに留意されたい(例えば、携帯型機器で実行されているアプリケーション、非携帯型機器で実行されているアプリケーション、及び/又は任意の他の適切なタイプのアプリケーション)。例えば、アプリケーションA及びBは、コンピュータ上のアプリケーションとされ得る。追加的には、一部の構成例では、アプリケーションA及びアプリケーションBは、同じ装置上のアプリケーション及び/又は異なる装置上のアプリケーションとされ得る。」

カ 「[0039] At block 116, Application B can receive the message transmitted from Application A. Application B can then decrypt the encrypted message using Application B's private key. In some arrangements, the decryption can be performed using an asymmetric decryption algorithm.
[0040] At block 118, Application B can determine whether a command included in the decrypted message is a valid command. For example, in some arrangements, Application B can determine if the command represents a command known to Application B. For example, Application B can determine if the command represents a command stored in a memory of the device on which Application B is running. The command may be stored in the memory of a device on which Application B is running with an instruction and/or tag that such a command is valid, acceptable and/or trustworthy. Alternatively, the command may be stored alongside an instruction and/or tag that the command is an invalid, unacceptable and/or untrustworthy command which should not be executed by the application. In some arrangements, Application B can determine that the decrypted message is authentic and/or has not been compromised in response to determining that the command included in the message is a valid command. In some arrangements, the decrypted message comprises an indication of the device or application ID and/or the device address - such as the IP address - from which the message has been received and Application B determines whether the ID and/or address corresponds to a trusted device and/or address. To do this, Application B may look up the ID and/or address in a list of IDs and/or addresses corresponding to trusted applications and/or devices in a memory of the device on which Application B is running.
当審訳:
【0037】
ブロック116では、アプリケーションBが、アプリケーションAから送信されたメッセージを受信することができる。そして、アプリケーションBは、アプリケーションBの秘密鍵を用いて暗号化メッセージを復号化することができる。一部の構成例では、復号化は、非対称復号化アルゴリズム(asymmetric decryption algorithm)を用いて行われ得る。
【0038】
ブロック118では、アプリケーションBは、復号化されたメッセージ内のコマンドが有効なコマンドであるか否かを決定することができる。例えば、一部の構成例では、アプリケーションBは、コマンドがアプリケーションBにとって既知のコマンドを表しているのかを決定することができる。例えば、アプリケーションBは、コマンドが、アプリケーションBを実行している装置のメモリ内に格納されているコマンドを表しているかを、決定することができる。コマンドは、命令及び/又はタグと共にアプリケーションBを実行している装置のメモリ内格納されていることができ、それは当該コマンドが有効、許容可能、及び/又は信頼可能であるかを指示する。代替的には、コマンドは命令及び/又はタグと一緒に格納されていることができ、それは当該コマンドが無効、許容不可能、及び/又は信頼できないコマンドでありアプリケーションによって実行されるべきものではないことを示す。一部の構成例では、アプリケーションBは、メッセージ内のコマンドが有効なコマンドであると決定されたことに応答して、復号化されたメッセージが真正なものである及び/又は損なわれたものではないと決定することができる。一部の構成例では、復号化メッセージは、メッセージが受信された際の発信元を表す装置若しくはアプリケーションのID並びに/又は(IPアドレス等の)装置アドレスについての表示を含むのであり、アプリケーションBは、ID又はアドレスが信頼された装置及び/又はアドレスに対応するかを決定する。これをなすためには、アプリケーションBは、ID及び/又はアドレスに関して探索(look up)を行うのであり、信頼済みアプリケーション及び/又は装置に対応するID及び/又はアドレスに関してのリストであってアプリケーションBが実行されている装置のメモリ内に配置されたリストに基づいて探索を行う。」

4 引用例4
(1)引用例4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の第一国出願前に既に公知である、特表2018−517919号公報(平成30年7月5日公表。以下、これを「引用例4」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

ア 「【0034】
音声ウェイクアップ装置101は、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、略してDSP)を用いることによって実施され得る。音声認識装置102は、アプリケーションプロセッサ(Application Processor、略してAP)を用いることによって実施され得る。音声認識装置102はさらに、中央処理装置(Central Process Unit、略してCPU)を用いることによって実施され得る。
【0035】
音声ウェイクアップ装置101は、周囲環境における音声情報を聴取し、聴取することによって取得された音声情報が音声ウェイクアップモデルと一致すると決定したとき、第1のプリセットされた持続時間内で聴取することによって取得される第1の音声情報をバッファし、音声認識装置のイネーブル化をトリガするためのトリガ信号を送るように構成される。」


第6 対比・判断

1 本願発明12について
事案に鑑みて先に本願発明12について検討する。

(1)対比
本願発明12と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「マイク130」は、本願発明12の「マイクロフォン」に相当する。
引用発明の「マイク130は、音声をピックアップし、…中略…マイク130によって得られた音声信号132がオーディオ信号としてプロセッサー120により処理され」ることから、引用発明は、本願発明12の「1つ以上のマイクロフォンからの音声入力を受信するようにプログラムされたプロセッサ」を有するといえる。
そして、引用発明の「ヘッドセット100」は、「デジタル信号処理ユニット180と、音声コマンドスイッチ190と、マイク130とを含み」、「内蔵音声フィードバック及び音声コマンドを用いる装着可能な」装置であるといえるから、引用発明と本願発明12とは、下記の点(相違点1及び2)で相違するものの、“1つ以上のマイクロフォンからの音声入力を受信するようにプログラムされたプロセッサを備えた装置”の点で一致する。

イ 引用発明の「ヘッドセット100」は、「安全な会話のためにデジタル暗号化することを含んでもよい」ものであることから、「デジタル暗号化」のための暗号鍵を保有することは自明であって、当該暗号鍵を保管される“鍵ストア”に相当する構成を有するといえるから、上記アを踏まえ、引用発明と本願発明12とは、下記の点(相違点3)で相違するものの、“前記装置は、受信した音声入力を暗号化された音声データへ暗号化するように構成される鍵を含む鍵ストア”を含む点で一致する。

ウ 引用発明の「ヘッドセット100」は、「デジタル信号処理ユニット180」を含み、「音声データストリームを、Bluetoothインターフェース110を介して通信/マルチメディア装置90へ無線送信し、通信/マルチメディア装置90は、音声データストリームを受信し、これを、発行された音声コマンドを遂行することに関与する特定音声対応型アプリケーション200へ誘導し、アプリケーション200は、この音声データを受け取って処理し、音声データを、通信/マルチメディア装置90において、テキスト又はパターンに変換してアプリケーション200へ戻し、ローカル音声認識アプリケーションによってローカルに処理」するものであるところ、当該「アプリケーション200」は、本願発明12の本願発明12の「音声データを利用する」「アプリケーション」に相当する。
そして、上記イの認定を踏まえれば、引用発明と本願発明12とは、下記の点(相違点3)の点で相違するものの、“前記装置は、音声データを利用する前記アプリケーションのために前記鍵を使用する”点で一致する。

エ 以上、ア〜ウの検討から、引用発明と本願発明12とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
1つ以上のマイクロフォンからの音声入力を受信するようにプログラムされたプロセッサを備えた装置であって、
前記装置は、受信した音声入力を暗号化された音声データへ暗号化するように構成される鍵を含む鍵ストアをさらに含み、
前記装置は、音声データを利用する前記アプリケーションのために前記鍵を使用する、装置。

〈相違点1〉
本願発明12の装置が、「マイクロフォンコントローラ」であるのに対し、引用発明は「ヘッドセット100」である点。

〈相違点2〉
本願発明12が、「マイクロフォンコントローラによって開始される音声認識セッションで利用される」ものであるのに対し、引用発明は、「音声データ」を「ローカル音声認識アプリケーション」によってローカルに処理したり、又は、「音声データ」を捕捉した「オーディオファイル」を「音声認識」のために「サーバー50」に送信する処理を行うものの、これら「音声認識」に関する処理が、「マイクロフォンコントローラ」によって開始される「音声認識セッション」であると具体的に特定がなされていない点。

〈相違点3〉
本願発明12の「マイクロフォンコントローラ」が、「複数のアプリケーションに音声データを提供可能であ」ると共に、「鍵ストア」に、「複数の前記アプリケーションに対応する複数の鍵を有し、音声データを利用する複数の前記アプリケーションに応じた複数の前記鍵から、暗号化に用いる鍵を選択する」のに対し、引用発明の「ヘッドセット100」は、複数のアプリケーションに音声データが提供可能であることが特定されず、また、複数のアプリケーションに対応する複数の鍵を有することが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点3について検討する。
本願発明は、車両乗員の音声データのプライバシーを強化するための車両コンピュータシステムおよびそれに用いられるマイクロフォンコントローラに関するものであって(本件明細書段落【0001】)、車両には、音声データを収集するための1つ以上のマイクロフォンが装備され(同【0002】)、捕捉された音声データは、テレマティクスモジュールを使用した通話、ペアの携帯電話を利用した通話、ナビゲーションシステムの音声コマンド、仮想アシスタントの音声コマンドなど、多くのアプリケーションで利用することができるが、使用者は、そのような音声データのプライバシーについて心配することを解決しようとする課題としてなされたものである(同【0003】)。
そして、本願発明12の「マイクロフォンコントローラ」は、「複数のアプリケーションに音声データを提供可能であ」ると共に、当該「複数のアプリケーション」に対応する「複数の鍵」を用いて「受信した音声入力を暗号化」することによって、当該課題を解決するものである。
他方、引用発明は、「ヘッドセット100」に係り、「音声のみに集中し、周囲のノイズは切り離して、より正確な音声コマンドのために広範に使用する、他の携帯機器、PC、ビデオゲーム及び他の対話型装置のようなBluetooth等を用いる任意の装置に接続することができ」るものであって、「安全な会話のためにデジタル暗号化することを含んでもよい」ものではあるものの、「音声データ」を利用する「通信/マルチメディア装置90」内の「アプリケ−ション200」が複数存在することを想定しておらず、また、そのことが「通信/マルチメディア装置90」に関する本願優先日前の技術常識であるとも認められない。よって、仮に、複数のアプリケーションを備えた装置、及び、アプリケーションに応じた暗号鍵を使用することのそれぞれが本願優先日前における周知技術であるとしても、引用発明に上記複数の周知技術を段階的に適用することにより、「通信/マルチメディア装置90」が複数のアプリケーションを備えるようにすることを想起し、その上で、「ヘッドセット100」が、複数のアプリケーションに音声データを安全に提供可能にすべく、当該複数のアプリケーションに対応して、複数の鍵を記憶し、選択するよう構成することは当業者であっても容易に想到し得るものではなく、またそのことは、上記第5 2〜4に示した引用例2〜4にも記載されておらず、本願優先日前に周知な技術であったともいえない。
したがって、引用発明からは、当業者といえども相違点3に係る構成を導き出すことは容易とはいえず、上記その余の相違点について判断するまでもなく、本願発明12は、当業者であっても、引用発明及び引用例2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明1について
本願発明1も、概ね上記相違点3に係る構成、すなわち、「マイクロフォンコントローラ」が、「鍵ストアに、複数の前記アプリケーションに対応する複数の鍵を有し、音声データを利用する複数の前記アプリケーションに応じた複数の前記鍵から、暗号化に用いる鍵を選択する」構成を備えるものであるから、本願発明12と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明2〜11、13〜20について
本願発明2〜11は本願発明1を、本願発明13〜20は本願発明12を、直接又は間接的に引用するものであるから、本願発明1及び12と同様、引用発明及び引用例2〜4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明1〜20は、上記第4に示すとおりとなり、上記第6において検討したとおり、当業者であっても、原査定において引用された引用文献1〜4(上記第5の引用例1〜4)に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-02-20 
出願番号 P2020-089081
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 林 毅
特許庁審判官 児玉 崇晶
山崎 慎一
発明の名称 車両コンピュータシステムおよびマイクロフォンコントローラ  
代理人 野々部 泰平  
代理人 久保 貴則  
代理人 矢作 和行  

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