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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1395099
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-28 
確定日 2023-02-28 
事件の表示 特願2020−553499「早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズ選択」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月10日国際公開、WO2019/193552、令和 3年 8月10日国内公表、特表2021−519553、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)4月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年4月5日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年11月24日付け:拒絶理由通知書
令和4年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月31日付け:拒絶査定
令和4年 7月28日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和4年12月 5日 :上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年3月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性):この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


●理由1(特許法第29条第1項第3号)について
請求項1、5ないし8、10、11、15ないし18、20ないし24に対して、引用文献1
●理由2(特許法第29条第2項)について
請求項1ないし24に対して、引用文献1及び2

引用文献等一覧
1.MediaTek Inc.,Early Data Transmission TBS Determination[online],3GPP TSG RAN WG1 #92b R1-1804143,3GPP,インターネット,2018年04月03日アップロード(以下、「引用文献1」という。)
2.Ericsson,Report on [100#38][MTC/NB-IoT] Padding issue in Msg3[online],3GPP TSG RAN WG2 #101 R2-1803077,インターネット,3GPP,2018年02月15日アップロード(以下、「引用文献2」という。)

第3 本願発明
本願請求項1ないし24に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明24」という。)は、令和4年7月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
早期データ送信のためのワイヤレスデバイスによって実施される方法(500)であって、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を示すブロードキャストをネットワークノードから受信すること(510)と、
早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択すること(520)であって、当該トランスポートブロックサイズが、前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択される、トランスポートブロックサイズを選択すること(520)と、
選択された前記トランスポートブロックサイズをそれぞれ有する1つ又は複数のトランスポートブロックで、アップリンクデータを送信すること(530)と、を含み、
前記表入力が、前記ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す、方法(500)。
【請求項2】
前記選択されたトランスポートブロックサイズに基づいて、送信のためのリソースユニットの数又は繰返しの数を決定すること(540)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択されたトランスポートブロックサイズに基づいて、送信のためのリソースユニットの数及び繰返しの数を決定することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記最大トランスポートブロックサイズと関連付けられた符号化率に基づいて、リソースユニットの数又は繰返しの数を決定することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記トランスポートブロックサイズが選択される前記表入力と関連付けられた各トランスポートブロックサイズに対するランダムアクセス応答を含むメッセージを受信することと、
前記選択されたトランスポートブロックサイズに対応する前記ランダムアクセス応答で受信されたアップリンクグラントに従って、前記ネットワークノードに対する応答を送信することと、をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
受信した前記ブロードキャストがシステム情報(SI)ブロードキャストである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
早期データ送信のためのネットワークノードによって実施される方法(600)であって、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を決定すること(610)と、
決定された前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数をブロードキャストすること(620)と、
1つ又は複数のトランスポートブロックを含む早期データ送信を受信すること(630)であって、当該1つ又は複数のトランスポートブロックがすべて、前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択されるトランスポートブロックサイズを有する、早期データ送信を受信すること(630)と、
前記表入力で示される利用可能なトランスポートブロックサイズに従って、前記1つ又は複数のトランスポートブロックを復号することによって前記早期データ送信を復号すること(640)と、を含み、
前記表入力が、ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す、方法(600)。
【請求項8】
前記表入力で示される前記1つ又は複数の利用可能なトランスポートブロックサイズそれぞれに対するランダムアクセス応答を含むメッセージを送信すること(650)をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最大トランスポートブロックサイズと関連付けられた早期データ送信のための符号化率を示すことをさらに含み、受信した前記早期データ送信のためのリソースユニットの数又は繰返しの数が示された前記符号化率に基づく、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
受信した前記ブロードキャストがシステム情報(SI)ブロードキャストである、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ワイヤレスデバイス(110)であって、
命令を記憶するように設定されたメモリ(130)と、
前記命令を実行するように設定された処理回路(120)とを備え、当該ワイヤレスデバイスが、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を示すブロードキャストをネットワークノード(160)から受信し、
前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて、早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択し、
選択された前記トランスポートブロックサイズをそれぞれ有する1つ又は複数のトランスポートブロックで、アップリンクデータを送信するように設定されていて、
前記表入力が、前記ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す、ワイヤレスデバイス(110)。
【請求項12】
前記ワイヤレスデバイスが、前記選択されたトランスポートブロックサイズに基づいて、送信のためのリソースユニットの数又は繰返しの数を決定するようにさらに設定されている、請求項11に記載のワイヤレスデバイス。
【請求項13】
前記ワイヤレスデバイスが、前記選択されたトランスポートブロックサイズに基づいて、送信のためのリソースユニットの数及び繰返しの数を決定するようにさらに設定されている、請求項11又は12に記載のワイヤレスデバイス。
【請求項14】
前記ワイヤレスデバイスが、前記最大トランスポートブロックサイズと関連付けられた符号化率に基づいて、リソースユニットの数又は繰返しの数を決定するようにさらに設定されている、請求項11から13のいずれか一項に記載のワイヤレスデバイス。
【請求項15】
前記ワイヤレスデバイスが、
前記トランスポートブロックサイズが選択される前記表入力と関連付けられた各トランスポートブロックサイズに対するランダムアクセス応答を含むメッセージを受信し、
前記選択されたトランスポートブロックサイズに対応する前記ランダムアクセス応答で受信されたアップリンクグラントに従って、前記ネットワークノードに対する応答を送信するようにさらに設定されている、請求項11から14のいずれか一項に記載のワイヤレスデバイス。
【請求項16】
受信した前記ブロードキャストがシステム情報(SI)ブロードキャストである、請求項11から15のいずれか一項に記載のワイヤレスデバイス。
【請求項17】
ネットワークノード(160)であって、
命令を記憶するように設定されたメモリ(180)と、
前記命令を実行するように設定された処理回路(170)とを備え、前記ネットワークノードが、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を決定し、
決定された前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数をブロードキャストし、
前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択されるトランスポートブロックサイズを1つ又は複数のトランスポートブロックがすべて有する、前記1つ又は複数のトランスポートブロックを含む早期データ送信を受信し、
前記表入力で示される利用可能なトランスポートブロックサイズに従って、前記1つ又は複数のトランスポートブロックを復号することによって前記早期データ送信を復号するように設定されていて、
前記表入力が、ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す、ネットワークノード(160)。
【請求項18】
前記ネットワークノードが、前記表入力で示される前記1つ又は複数の利用可能なトランスポートブロックサイズそれぞれに対するランダムアクセス応答を含むメッセージを送信するようにさらに設定されている、請求項17に記載のネットワークノード。
【請求項19】
前記ネットワークノードが、前記最大トランスポートブロックサイズと関連付けられた早期データ送信のための符号化率を示すようにさらに設定され、受信した前記早期データ送信のためのリソースユニットの数又は繰返しの数が前記示された符号化率に基づく、請求項17又は18に記載のネットワークノード。
【請求項20】
受信した前記ブロードキャストがシステム情報(SI)ブロードキャストである、請求項17から19のいずれか一項に記載のネットワークノード。
【請求項21】
コンピュータ可読プログラムコードを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体(180)であって、前記コンピュータ可読プログラムコードが、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を示すブロードキャストをネットワークノードから受信するプログラムコードと、
早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択するプログラムコードであって、前記トランスポートブロックサイズが、前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択される、プログラムコードと、
選択された前記トランスポートブロックサイズをそれぞれ有する1つ又は複数のトランスポートブロックで、アップリンクデータを送信するプログラムコードと
を含み、
前記表入力が、ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す、非一時的コンピュータ可読媒体(180)。
【請求項22】
前記コンピュータ可読プログラムコードが、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法に従って動作するためのコンピュータ可読プログラムコードをさらに含む、請求項21に記載の非一時的コンピュータ可読媒体(180)。
【請求項23】
コンピュータ可読プログラムコードを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体(180)であって、前記コンピュータ可読プログラムコードが、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を決定するプログラムコードと、
決定された前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数をブロードキャストするプログラムコードと、
1つ又は複数のトランスポートブロックを含む早期データ送信を受信するプログラムコードであって、前記1つ又は複数のトランスポートブロックがすべて、前記最大トランスポートブロックサイズ及び前記トランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択されるトランスポートブロックサイズを有する、プログラムコードと、
前記表入力で示される利用可能なトランスポートブロックサイズに従って、前記1つ又は複数のトランスポートブロックを復号することによって前記早期データ送信を復号するプログラムコードと、を含み、
前記表入力が、ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す、非一時的コンピュータ可読媒体(180)。
【請求項24】
前記コンピュータ可読プログラムコードが、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法に従って動作するためのコンピュータ可読プログラムコードをさらに含む、請求項23に記載の非一時的コンピュータ可読媒体(180)。」

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1(MediaTek Inc.,Early Data Transmission TBS Determination(当審訳:早期データ送信TBS判定)[online],3GPP TSG RAN WG1 #92b R1-1804143,3GPP,インターネット,2018年04月03日アップロード)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「2 Solution to avoid excessive padding
(中略)
Proposal 2: The UE selects the maximum TBS value TBSmax, k and corresponding subset [TBSMsg3]k = [TBS1, TBS2, TBS3, TBS4] that best fit its UL transmission.
(中略)
TBSmax, k, and [TBSmsg3]k, need not be the same for all coverage class levels. For example, UEs in deep or extreme coverage may typically be smart meters in the basement that transmit UL packet of 100 bytes. Whereas UEs in normal coverage may typically be bikes that are outdoors and transmit smaller packets than 100 byes. Assuming dedicated NPRACH resources for EDT not linked to the TBS size, the eNB cannot know a priory the values of TBSmax, k that best fit its UL packet transmission. The eNB can broadcast supported values of TBSmax, k and corresponding [TBSMsg3] per coverage class on system information that best serve IoT devices likely to transmit UL packets.
(中略)
3 Other aspects of EDT
Blind decoding in the eNB will be required as eNB must determine which one of the 4 possible TBS value in the TBS subset [TBSMsg3] was chosen by the UE for its UL packet transmission. On average, the eNB may only need to perform two blind decoding of small UL packets, and 4 blind decodings at most. This seems reasonable complexity.」(1ページ下から4行目〜3ページ4行目)

(当審訳:
2 過剰なパディングを避けるための解決策
(中略)
提案2:UEは、そのUL送信に最も適合する最大TBS値TBSmax,k及び対応するサブセット[TBSMsg3]k=[TBS1,TBS2,TBS3,TBS4]を選択する。
(中略)
TBSmax、k、及び[TBSmsg3]kは、すべてのカバレッジクラスレベルについて同じである必要はない。例えば、深いまたは極端なカバレッジにあるUEは、典型的には、100バイトのULパケットを送信する地下のスマートメータであってよい。一方、通常のカバレッジのUEは、典型的には、屋外にあり、100バイトよりも小さいパケットを送信するバイクである可能性がある。TBSサイズに関連しないEDT用の専用NPRACHリソースを仮定すると、eNBは、そのULパケット送信に最も適合するTBSmax、kの値を事前に知ることはできない。eNBは、ULパケットを送信する可能性が高いIoTデバイスに最適な、カバレッジクラスごとのTBSmax、k及び対応する[TBSMsg3]のサポート値をシステム情報に基づいてブロードキャストすることができる。
(中略)
3 EDTのその他の側面
eNBは、TBSサブセット[TBSMsg3]の4つのTBS値のうち、ULパケット送信のためにUEが選択したものを判断しなければならないため、eNBでのブラインド・デコードが必要となる。平均して、eNBは小さなULパケットのブラインド復号を2回だけ実行する必要があり、最大で4回のブラインド復号が必要になる場合がある。これは合理的な複雑さと思われる。)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記「2 過剰なパディングを避けるための解決策」には、「UEは、そのUL送信に最も適合する最大TBS値TBSmax,k及び対応するサブセット[TBSMsg3]k=[TBS1,TBS2,TBS3,TBS4]を選択する。」と記載されている。また、上記「3 EDTのその他の側面」には、「eNBは、TBSサブセット[TBSMsg3]の4つのTBS値のうち、ULパケット送信のためにUEが選択したものを判断しなければならないため、eNBでのブラインド・デコードが必要となる。」と記載されており、eNBは、UEから送信されたULパケット送信のためにUEが選択したTBS値をTBSサブセット[TBSMsg3]の4つのTBS値から、UEが選択したTBS値を判断するものであるから、UEにおいて最も適合する最大TBS値TBSmax,k及び対応するサブセット[TBSMsg3]k=[TBS1,TBS2,TBS3,TBS4]を選択することとは、UEにおいてUL送信に最も適合するTBSを選択することであるといえる。そうすると、引用文献1には、「UEは、UL送信に最も適合するTBSを選択する」ことが記載されているといえる。

イ 上記「2 過剰なパディングを避けるための解決策」には、「eNBは、ULパケットを送信する可能性が高いIoTデバイスに最適な、カバレッジクラスごとのTBSmax、k及び対応する[TBSMsg3]のサポート値をシステム情報に基づいてブロードキャストすることができる。」と記載されており、上記「ア」に摘記したとおりTBSmax,kは、最大TBS値を表すものであるから、引用文献1には、「eNBは、IoTデバイスに最大TBS値TBSmax、k及び対応する[TBSMsg3]のサポート値をブロードキャストする」ことが記載されているといえる。

ウ 上記「3 EDTのその他の側面」には、「eNBは、TBSサブセット[TBSMsg3]の4つのTBS値のうち、ULパケット送信のためにUEが選択したものを判断しなければならないため、eNBでのブラインド・デコードが必要となる。」と記載されているから、引用文献1には、「eNBは、ブラインド・デコードを行うことによって、TBSサブセット[TBSMsg3]の4つのTBS値のうち、ULパケット送信のためにUEが選択したものを判断する」ことが記載されているといえる。

エ 上記「ア」ないし「ウ」の動作は、上記「ア」に摘記したとおり「過剰なパディングを避けるための解決策」のためのものであって、寄書のタイトルにもあるように、「早期データ送信」に関するものであり、ULパケットは、UEが送信を実施するものであることは明らかであるから、該動作は、早期データ送信のためのeNB及びUEによって実施される方法であるといえる。そうすると、引用文献1には、「早期データ送信のためのeNB及びUEによって実施される方法」が記載されているといえる。

以上を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「 早期データ送信のためのeNB及びUEによって実施される方法であって、
eNBは、IoTデバイスに最大TBS値TBSmax、k及び対応する[TBSMsg3]のサポート値をブロードキャストし、
UEは、UL送信に最も適合するTBSを選択し、
eNBは、ブラインド・デコードを行うことによって、TBSサブセット[TBSMsg3]の4つのTBS値のうち、ULパケット送信のためにUEが選択したものを判断する、方法。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由で引用された、引用文献2(Ericsson,Report on [100#38][MTC/NB-IoT] Padding issue in Msg3[online],3GPP TSG RAN WG2 #101 R2-1803077,インターネット,3GPP,2018年02月15日アップロード)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「3.3 Second phase
1. The following solutions for the padding issue were presented above:
(N)PRACH partitioning where UE indicates the intended data size / TBS for EDT Msg3 using Msg1.
2. The network provides multiple transport block sizes along with a combination of UL grant information, e.g. RUs, PRBs, number of repetitions, in RAR message for the UE to select from considering the intended data transmission in Msg3
」(13ページ1行目〜6行目)

(当審訳:
3.3 第2フェーズ
パディングの問題については、上記で以下の解決策が提示されている。
1.(N)PRACHパーティショニングでは、UEはMsg1を使用してEDT Msg3の意図するデータサイズ/TBSを指示する。
2.ネットワークは、Msg3のデータ送信を考慮し、ULグラント情報(RU、PRB、繰り返し回数など)の組み合わせとともに、複数のトランスポートブロックサイズをRARメッセージで提供し、UEがそこから選択できるようにする。)

上記「3.3 第2フェーズ」には、「ネットワークは、Msg3のデータ送信を考慮し、ULグラント情報(RU、PRB、繰り返し回数など)の組み合わせとともに、複数のトランスポートブロックサイズをRARメッセージで提供し、UEがそこから選択できるようにする。」と記載されている。
そうすると、引用文献2には、「ネットワークは、ULグラント情報(RU、PRB、繰り返し回数など)の組み合わせとともに、複数のトランスポートブロックサイズをRARメッセージで提供し、UEはトランスポートブロックサイズをそこから選択する」という技術事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

ア 引用発明の「eNB」、「UE」は、本願発明1の「ネットワークノード」、「ワイヤレスデバイス」に含まれる。
そうすると、引用発明は、早期データ送信のためのワイヤレスデバイスによって実施される方法を含むものであるといえるから、本願発明1と引用発明は、「早期データ送信のためのワイヤレスデバイスによって実施される方法」である点で共通する。

イ 引用発明の「IoTデバイス」は、「UE」に含まれるものである。また、TBSはトランスポートブロックサイズを表す略語であることは当該技術分野において技術常識である。そして、引用発明のeNB、すなわちネットワークデバイスは、IoTデバイス、すなわちUEに対して、最大TBS値TBSmax、k、すなわち最大トランスポートブロックサイズをブロードキャストするするものであるから、引用発明のUEは、早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズを示すブロードキャストをネットワークノードから受信するものが記載されているといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明は、「早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズを含むブロードキャストをネットワークノードから受信する」点で共通する。

ウ 引用発明のUEは、UL送信に最も適合するTBSを選択するものである。
そうすると、引用発明のUEは、早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択するものであるといえるから、本願発明1と引用発明は、「早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択する」点で共通する。

エ 引用発明では「UEは、UL送信に最も適合するTBSを選択」していることから、選択したTBSでUL送信することは明らかである。
そうすると、本願発明1と引用発明は、「選択されたトランスポートブロックサイズを有するトランスポートブロックで、アップリンクデータを送信する」点で共通する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 早期データ送信のためのワイヤレスデバイスによって実施される方法であって、
早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズを含むブロードキャストをネットワークノードから受信することと、
早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択することと、
選択されたトランスポートブロックサイズを有するトランスポートブロックで、アップリンクデータを送信することと、を含む、方法。」

(相違点1)
ネットワークノードから受信されるブロードキャストが、本願発明1では、「早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を示す」ものであるのに対し、引用発明では、「最大TBS値TBSmax、k及び対応する[TBSMsg3]のサポート値」であって、トランスポートブロックサイズ候補の数を示すものであることが特定されていない点。

(相違点2)
早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズを選択し、アップリンクデータを送信することが、本願発明1では、「最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択される」ものであって、「トランスポートブロックサイズをそれぞれ有する1つ又は複数のトランスポートブロック」でアップリンクデータを送信し、「表入力が、ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示す」のに対し、引用発明では、「対応する[TBSMsg3]のサポート値」から選択するものであって、「[TBSMsg3]の4つのTBS値のうち、UEが選択したもの」でアップリンクデータを送信するものとは言えても、最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数に対応する表入力に基づいて選択されること、アップリンクデータ送信に用いられる1つ又は複数のトランスポートブロックがトランスポートブロックサイズをそれぞれ有すること、及び、表入力が、ワイヤレスデバイスが利用可能な1つ又は複数のトランスポートブロックサイズを示すこと、がそれぞれ特定されていない点。(下線は当審で付与。)

したがって,本願発明1と引用発明は,上記相違点1及び2で相違するから,本願発明1は引用発明であるとはいえない。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討するにあたり、まず、上記相違点1について検討する。

相違点1に係るネットワークから受信されるブロードキャストが、少なくとも「早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズ候補の数を示す」ものであるという発明特定事項は、引用文献1及び引用文献2には記載も示唆もされていない。さらに、当該無線通信の技術分野において周知技術であるともいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明において、上記相違点1に係るネットワークから受信されるブロードキャストが、「早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を示す」ものとすることは、容易に想到し得たとはいえない。
よって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、少なくとも本願発明1に記載の発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし6は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明7について
本願発明7は、本願発明1の早期データ送信のためのワイヤレスデバイスによって実施される方法に対応するネッワークノードによって実施される方法を記載したものであって、少なくとも上記相違点1に係る本願発明1に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を含むから、本願発明1と同様の理由により、本願発明7は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び並び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明8ないし10について
本願発明8ないし10は、少なくとも本願発明7に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明7と同じ理由により、本願発明8ないし10は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明11について
本願発明11は、本願発明1のワイヤレスデバイスによって実施される方法を、ワイヤレスデバイスとしたものであって、少なくとも本願発明1に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、本願発明11は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6 本願発明12ないし16について
本願発明12ないし16は、少なくとも本願発明11に記載の発明特定事項を全て含むから、本願発明11と同じ理由により、本願発明12ないし16は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

7 本願発明17について
本願発明17は、本願発明7のネットワークノードによって実施される方法を、ネットワークノードとしたものであって、少なくとも本願発明7に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明7と同じ理由により、本願発明17は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

8 本願発明18ないし20について
本願発明18ないし20は、少なくとも本願発明17に記載の発明特定事項を全て含むから、本願発明17と同じ理由により、本願発明18ないし20は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

9 本願発明21について
本願発明21は、本願発明1のワイヤレスデバイスによって実施される方法を、コンピュータ可読プログラムコードを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体としたものであって、少なくとも本願発明1に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明1と同じ理由により、本願発明21は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

10 本願発明22について
本願発明22は、少なくとも本願発明21に記載の発明特定事項を全て含むから、本願発明21と同じ理由により、本願発明22は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

11 本願発明23について
本願発明23は、本願発明7のネットワークノードによって実施される方法を、コンピュータ可読プログラムコードを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体としたものであって、少なくとも本願発明7に記載の発明特定事項に対応する発明特定事項を全て含むから、本願発明7と同じ理由により、本願発明23は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

12 本願発明24について
本願発明24は、少なくとも本願発明23に記載の発明特定事項を全て含むから、本願発明23と同じ理由により、本願発明24は、引用発明であるとはいえないし、また、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
令和4年7月28日にされた手続補正により、本願発明1ないし24に係る発明は、ネットワークから受信されるブロードキャストが、「早期データ送信のための最大トランスポートブロックサイズ及びトランスポートブロックサイズ候補の数を示す」という発明特定事項、又はそれに対応する発明特定事項を備えているから、上記「第5」のとおり、本願発明1、5ないし8、10、11、15ないし18、20ないし24は引用発明ではなく、また、本願発明1ないし24は、拒絶査定において引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-02-14 
出願番号 P2020-553499
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
齋藤 哲
発明の名称 早期データ送信のためのトランスポートブロックサイズ選択  
代理人 藤井 亮  
代理人 小梶 晴美  
代理人 石岡 利康  
代理人 冨樫 義孝  
代理人 園田 吉隆  

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