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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01J
管理番号 1395177
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-26 
確定日 2022-12-19 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6821304号発明「電子銃、X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6821304号の特許請求の範囲を、令和4年8月29日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。 特許第6821304号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6821304号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成28年1月29日に出願され、令和3年1月8日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月27日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 7月26日 :株式会社レクレアル(以下「申立人」という
。)による請求項1ないし12に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和3年10月25日付け:取消理由通知書(同書により通知された取消
理由を以下「第1次取消理由」という。)
令和3年12月23日 :訂正請求書(以下「第1次訂正請求書」とい
う。)・意見書(特許権者)
令和4年 3月 8日 :意見書(申立人)
令和4年 4月28日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年 5月27日 :意見書・手続補正書(特許権者)
令和4年 6月30日付け:取消理由通知書(同書により通知された取消
理由を以下「第2次取消理由」という。)
令和4年 8月29日 :訂正請求書(以下「第2次訂正請求書」とい
う。)・意見書(特許権者)

第2次訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求によって、第1次訂正請求書(令和4年5月27日付け手続補正書により補正された。)による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。
なお、当審は、申立人に対して本件訂正に係る請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をするとともに期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は意見書を提出しなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容について
本件訂正は、特許請求の範囲を、次のとおり訂正するものである(下線は、訂正箇所を示すものとして当審が付した。)。
(1)訂正事項1
請求項1において、「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有する電子銃と、」であった記載を、「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃と、」に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2〜12も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項1において、「管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管と、を有するX線発生管であって、」であった記載を、「管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管と、を有し、前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生するX線発生管であって、」に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2〜12も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項1において、「前記電子銃は、管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部と、前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部と、を有する」であった記載を、「前記電子銃は、前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部と、前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部と、を有する」に訂正する。
請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2〜12も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
請求項1において、「前記外周管状部は、前記グリッド電極の部分である」とあった記載を、「前記外周管状部は、前記グリッド電極の部分であり、管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材を隠すように前記絶縁支持部材の外側に管状に設けられている」と訂正する。
請求項8を直接的又は間接的に引用する請求項9〜12も同様に訂正する。

なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1ないし12について請求されている。

2 訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「電子銃」が「前記ターゲットより低電位であ」ることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の図4(i)及び(j)によれば、電子銃4b(X座標0〜te)の電位が−Vaであるのに対して、ターゲット5b(X座標ta)の電位が0であることが見てとれるから、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「X線発生管」が「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生」することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件明細書等には、「<<後方散乱電子に係る散乱金属粒子>>」(【0068】)、「ターゲット層5cの表面で弾性散乱した後方散乱電子は、・・・電子放出部40の等電位面上にある領域まで到達しうる。」(【0070】)、及び、「従って、電子銃4bと絶縁管2との間の空間に到達する後方散乱電子は、・・・金属(陽)イオンと再結合し、中性の散乱金属粒子に変化する。即ち、電子銃4bと絶縁管2との間の空間に到達する後方散乱電子は、電子銃4bと絶縁管2との間の空間に散乱金属粒子を発生させ」る(【0075】)と記載されている。
したがって、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載された「電子銃」が有する「管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部」が、「前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために」存在することを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件明細書等には「本実施形態の外周管状部44e(導電部)は、かかる電子銃4bと絶縁管2との間の空間に発生する散乱金属粒子が絶縁支持部材41a〜41dに堆積し絶縁支持部材41を低抵抗化することを抑制するものである。」(【0076】)と記載されているから、訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項8に記載された「前記グリッド電極の部分である」「外周管状部」が「管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材を隠すように前記絶縁支持部材の外側に管状に設けられてい」ることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件明細書等には「本実施形態は・・・絶縁支持部材41の外側から見て絶縁支持部材41a〜41dを隠す外周管状部44eを備えている・・・。」(【0064】)と記載されているから、訂正事項4は、新規事項を追加するものではない。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(5)小括
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、訂正後の請求項1ないし12は、特許異議の申立てがなされた請求項であるから、当該各請求項についての訂正には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 訂正の適否についての判断の小括
以上のとおり、本件訂正は、訂正要件を満たすものである。そして、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1−12〕について請求されたものである。
よって、特許請求の範囲を、第2次訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正後の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、次のとおりのものである。
【本件発明1】
電子の照射によりX線を発生するターゲットと、前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材と、を有する陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する陰極と、
管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管と、を有し、
前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生するX線発生管であって、
前記電子銃は、前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部と、前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部と、を有することを特徴とするX線発生管。
【本件発明2】
前記グリッド電極は、電圧源に電気的に接続され、
前記導電部は、前記グリッド電極の部分であることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。
【本件発明3】
前記グリッド電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり前記電子通過路に沿って延在する管状部と、を有し、
前記導電部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1または2に記載のX線発生管。
【本件発明4】
前記グリッド電極は、前記環状部が前記電子放出部と対向するように配置され、前記管状部が管軸方向において前記電子放出部に重なるように配置された引き出しグリッド電極を含むことを特徴とする請求項3に記載のX線発生管。
【本件発明5】
前記電子銃は、環状部と管状部とを有する他のグリッド電極を有し、
前記他のグリッド電極と前記グリッド電極は、互いの前記環状部が管軸方向に対向し、互いの前記管状部が管径方向に対向する部分を有することを特徴とする請求項3または4に記載のX線発生管。
【本件発明6】
前記他のグリッド電極と前記グリッド電極において、前記環状部が前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部は、前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部より、管径方向において、外側に位置していることを特徴とする請求項5に記載のX線発生管。
【本件発明7】
前記グリッド電極は、前記ターゲットに対向する環状部を有し、前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定する集束グリッド電極を含み、
前記電子通過路は、前記電子放出部から放出された前記電子が前記集束グリッド電極を通過するまでの通過経路に対応することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のX線発生管。
【本件発明8】
前記外周管状部は、前記グリッド電極の部分であり、管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材を隠すように前記絶縁支持部材の外側に管状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。
【本件発明9】
前記導電部は、前記電子通過路の側から運動する散乱金属粒子が、前記絶縁支持部材に堆積するのを抑制するように、前記電子通過路と前記絶縁支持部材との間に位置することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のX線発生管。
【本件発明10】
前記ターゲットは、電子の照射によりX線を発生するターゲット層と、前記ターゲット層を支持するとともに前記X線を透過する支持基板とを有する透過型ターゲットであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のX線発生管。
【本件発明11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。
【本件発明12】
請求項11に記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、
前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、
を備えることを特徴とするX線撮影システム。

第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 第2次取消理由の要旨は、次のとおりである。
第1次取消理由の通知の際に指定された期間内になされた第1次訂正請求書による訂正の請求は、令和4年4月28日付け訂正拒絶理由通知書に記載した理由のとおり、拒絶すべきものであり、しかも、同通知書により指定された期間内になされた令和4年5月27日付けの手続補正は第1次訂正請求書の要旨を変更するものであって、これを認めることはできないから、後記2の第1次取消理由が依然として解消していない。

2 第1次取消理由の要旨は、次のとおりである。
[理由1]甲第3号証に記載された発明に基づく新規性欠如
本件特許の登録時の請求項1〜4及び7〜10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第3号証に記載された発明であるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
[理由2]甲第1号証に記載された発明を主引用発明とする進歩性欠如及び甲第3号証に記載された発明を主引用発明とする進歩性欠如
本件特許の登録時の請求項1〜12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である(i)甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証に記載された技術的事項、甲第3号証に記載された技術的事項及び周知の技術的手段に基づいて、また、(ii)甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証に記載された発明及び周知の技術的手段に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開2011−134498号公報
甲第2号証:実願昭46−30873号(実開昭47−31054号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2008−140687号公報
甲第4号証:特開2012−252831号公報(周知例)
甲第5号証:特開2015−135722号公報(周知例)

第5 甲各号証の記載事項
1 甲各号証
申立人が提出した甲各号証は、上記第4の2で示したとおりである。

2 甲各号証の記載事項の認定
(1)甲第1号証
ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証には下記各記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、X線を発生するX線管に関する。」

(イ)「【背景技術】
【0002】
一般的な微小焦点を有するX線管は、マイクロフォーカスX線管として既に製品化がなされている。微小焦点を有するX線管は、検査対象物の微小領域を高分解能で検査する非破壊検査装置などに広く利用されている。微小焦点を有するX線管として、例えば、特許文献1によれば、電子ビームを放出するフィラメント、グリッド電極と、放出された電子ビームを加速するアノードと、電子ビームを集束する磁界レンズと、X線透過窓上に設けられたターゲットと、ターゲットの下部に配置されたアパーチャと、を備え、フィラメント、グリッド電極ならびにアノードが真空容器内に収納され、フィラメント周囲ならびにフィラメントからターゲットに至る電子ビームラインの周囲が高真空状態に保持された構成が開示されている。
【0003】
微小焦点を有するX線管では、微小な陰極から放出された電子ビームを陽極ターゲットに衝突させることによりX線を発生させるため、X線を安定して放出させるためには、陰極の近傍を超高真空状態にすることが要求される。しかしながら、このようなX線管では、陰極から放出された電子ビームを集束させ陽極ターゲットに衝突させるため、陰極から放出された電子ビームが陰極の近傍の電極に衝突することがあり、電極の表面の吸着ガスや電極に内蔵された内蔵ガスなどが放出されてしてしまうことがある。これにより、短時間で陰極の近傍を超高真空状態にすることができないことがある。」

(ウ)「【0011】
図1に示すように、X線管1は、電子銃10と、陽極ターゲット20と、真空外囲器30と、を有している。
【0012】
電子銃10は、陰極11と、抑制電極12と、引出電極13と、加速電極14と、集束電極15と、アパーチャ電極16と、第1支持部41と、第2支持部42と、第3支持部43と、を有している。
【0013】
陰極11は、熱電界放出型電子源である。陰極11には、端子部17が接続されている。陰極11は、端子部17を介して電圧が供給されることによって、電子ビームを放出する。
【0014】
抑制電極12は、電圧が供給されることによって、陰極11から放出された電子ビームの放出方向を一定方向に制御する。
【0015】
引出電極13は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部13Hを有している。引出電極13は、陰極11と対向するように配置されている。引出電極13は、第2支持部42に支持されている。引出電極13は、電圧が供給されることにより、陰極11から放出された電子ビームを引き出す。
【0016】
加速電極14は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部14Hを有している。加速電極14は、引出電極13と対向するように配置されている。つまり、引出電極13は、陰極11と加速電極14との間に配置されている。加速電極14は、第1支持部41に支持されている。加速電極14は、電圧が供給されることにより、引出電極13の穴部13Hを通過した電子ビームを加速させる。
【0017】
集束電極15は、陰極11の先端と同軸的に形成された円筒部15Hを有している。集束電極15は、加速電極14と対向するように配置されている。集束電極15は、電圧が供給されることにより、加速電極14の穴部14Hを通過した電子ビームを集束させる。
【0018】
アパーチャ電極16は、陰極11の先端と同軸的に形成された穴部16Hを有している。アパーチャ電極16は、集束電極15と対向するように配置されている。つまり、集束電極15は、加速電極14とアパーチャ電極16との間に配置されている。アパーチャ電極16は、第3支持部43に支持されている。アパーチャ電極16は、電圧が供給されることにより、集束電極15の円筒部15Hを通過した不要な電子ビームを阻止する。
【0019】
なお、引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16などの中心軸が陰極11の中心軸から10μm以内に納まるように組み立てられている。
【0020】
陽極ターゲット20は、真空外囲器30に保持されている。この陽極ターゲット20は、電子銃10のアパーチャ電極16と対向するように配置されている。つまり、アパーチャ電極16は、陽極ターゲット20と加速電極14との間に配置されている。陽極ターゲット20は、電子銃10から放出された電子が衝突する微小焦点(電子衝突面)を有し、電子の衝突によってX線を発生する。
【0021】
このような構成の電子銃10は、真空外囲器30の内部に収容されている。真空外囲器30の内部には、ゲッタ18が収容されており、ゲッタ18によって真空状態に保持されている。なお、真空状態を保持する手段として、ゲッタ18に限らず、イオンポンプなどの真空ポンプを用いてもよい。
【0022】
真空外囲器30は、陰極11の先端と同軸的に形成されたX線透過窓部Wを有している。X線透過窓部Wは、例えば、ベリリウムによって形成された薄板の窓である。真空外囲器30には、X線透過窓部Wと対向するように陽極ターゲット20の一部が固定されている。
【0023】
真空外囲器30は、電子銃10と陽極ターゲット20とが対向するように、電子銃10と陽極ターゲット20とを支持している。以下に、電子銃10の支持構造について説明する。
【0024】
第1支持部41は、真空外囲器30に固定されている。これにより、電子銃10は、真空外囲器30の内部に固定されている。より詳細には、抑制電極12と第2支持部42とは、第1絶縁筒51を介して接続されている。第1絶縁筒51は、抑制電極12と第2支持部42との間に配置されている。抑制電極12と第1絶縁筒51との間、及び、第2支持部42と第1絶縁筒51との間は、それぞれ封着金属55を介して接続されている。この第1絶縁筒51は、陰極11及び抑制電極12と、引出電極13とを電気的に絶縁している。第1絶縁筒51は、例えば、セラミックによって形成されている。
【0025】
また、第1支持部41と第2支持部42とは、第2絶縁筒52及び第1柱状体61を介して接続されている。第2絶縁筒52は、第1支持部41と第2支持部42との間に配置されている。第2支持部42は、接着金属55を介して第2絶縁筒52と接続されている。第2絶縁筒52は、引出電極13と加速電極14とを電気的に絶縁している。第2絶縁筒52は、例えば、セラミックによって形成されている。
【0026】
また、第1柱状体61は、第1支持部41と、第2支持部42との間に配置されている。第1柱状体61は、第2絶縁筒52と第1支持部41との間にロウ付けされ固定されている。第1柱状体61は、例えば、金属材料によって形成されている。このような第2絶縁筒52及び第1柱状体61は、引出電極13と加速電極14との間の距離を保っている。
【0027】
また、第1支持部41と第3支持部43とは、第2柱状体62を介して接続されている。第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている。第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間にロウ付けされ固定されている。第2柱状体62は、加速電極14とアパーチャ電極16との間の距離を保っている。第2柱状体62は、例えば、金属材料によって形成されている。
【0028】
また、第1支持部41は、第3絶縁筒53を介して集束電極15と接続されている。第1支持部41及び集束電極15は、封着金属55を介して第3絶縁筒53と接続されている。第3絶縁筒53は、第1支持部41と第3支持部43との間に配置された第2柱状体62よりも内側に配置されている。第3絶縁筒53は、加速電極14と集束電極15とを電気的に絶縁している。また、第3絶縁筒53は、加速電極14と集束電極15との間の距離を保っている。
【0029】
なお、加速電極14が第1電極に相当し、第1支持部41が第1電極支持体に相当する。また、引出電極13が第2電極に相当するとき、第2電極支持体は、第2支持部42に相当し、第2電極支持体が柱状体を介して第1電極支持体に固定されるとは、第2支持部42が第1柱状体61を介して第1支持部41に固定されているということに相当する。また、アパーチャ電極16が第2電極に相当するとき、第2電極支持体は、第3支持部43に相当し、第2電極支持体が柱状体を介して第1電極支持体に固定されるとは、第3支持部43が第2柱状体62を介して第1支持部41に固定されているということに相当する。
【0030】
なお、柱状体は、第1支持部41と第2支持部42との間、第1支持部41と第3支持部43との間のいずれか一方に配置されていても良い。柱状体(第1柱状体)61が第1支持部41と第2支持部42との間に配置されている場合、第1支持部41と第3支持部43との間には円筒部品が配置されていても良い。また、柱状体(第2柱状体)62が第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている場合、第1支持部41と第2支持部42との間には円筒部品が配置されていても良い。
【0031】
図2は、図1に示したX線管1の電子銃10の構造を概略的に示す斜視図である。
【0032】
図2に示すように、第1柱状体61は、第1支持部41と第2支持部42との間に少なくとも3本配置されている。ここでは、3本の第1柱状体61が第2絶縁筒52と第2支持部42との間に配置されている。第1柱状体61は、等間隔に配置されている。また、3本の第1柱状体61の長さは略同等である。なお、ここでは、第1支持部41と第2支持部42との間に3本の第1柱状体61を配置した例を示したが、3本以上の第1柱状体61を配置してもよい。
【0033】
また、第2柱状体62は、第1支持部41と第3支持部43との間に少なくとも3本配置されている。ここでは、3本の第2柱状体62が第1支持部41と第3支持部43との間に配置されている。第2柱状体62は、等間隔に配置されている。また、3本の第2柱状体62の長さは略同等である。なお、ここでは、第1支持部41と第3支持部43との間に3本の第2柱状体62を配置した例を示したが、3本以上の第2柱状体62を配置してもよい。
【0034】
また、第1支持部41は、端部から突出部41Pを有している。突出部41Pは、真空外囲器30に固定されている。なお、ここでは、第1支持部41は、3つの突出部41Pを有しているが、この例に限らない。
【0035】
なお、電子銃10は、陽極ターゲット20において、電子ビームの直径が200nmで焦点を結ぶように、電子計算機による電子軌道シミュレーションによって設計される。
【0036】
このようなX線管1の動作時において、電子銃10の陰極11に電圧が供給され、陰極11から電子ビームが放出される。抑制電極12に電圧が供給され、陰極11から放出された電子ビームの放出される方向性が制御される。加速電極14に電圧が供給され、電子ビームは加速される。集束電極15に電圧が供給され、電子ビームが押し込まれ、集束される。集束された電子ビームは、アパーチャ電極16によって不要な電子ビームをカットされ、陽極ターゲット20に衝突する。陽極ターゲット20に電子ビームが衝突し、X線が発生する。X線は、X線透過窓部Wを透過して放出される。
【0037】
ところで、微小焦点を有するX線管1において、陰極11の先端から放出された電子ビームを陽極ターゲット20に衝突させることによりX線が発生するため、X線を安定して放出させるたには、陰極11の近傍、例えば、引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16の近傍を約10-7Paの超高真空状態にする必要がある。
【0038】
しかしながら、微小焦点を有するX線管1において、陰極11から放出された電子ビームを集束させ陽極ターゲット20に衝突させるため、陰極11から放出された電子ビームが引出電極13、加速電極14、集束電極15、アパーチャ電極16に衝突してしまうことがある。これにより、これらの電極の表面の付着ガスや電極に内蔵された内蔵ガスが放出されてしまうことがある。」

(エ)図1及び2は次のものである。
【図1】

【図2】


イ 上記アによれば、甲第1号証には、本発明の一態様(【0010】)に係るX線管について、下記発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「X線管1は、電子銃10と、陽極ターゲット20と、真空外囲器30と、を有し(【0011】)、
前記電子銃10は、陰極11と、抑制電極12と、引出電極13と、加速電極14と、集束電極15と、アパーチャ電極16と、第1支持部41と、第2支持部42と、第3支持部43と、を有し(【0012】)、
前記陰極11は、端子部17に接続され、端子部17を介して電圧が供給されることによって、電子ビームを放出し(【0013】)、
前記抑制電極12は、電圧が供給されることによって、前記陰極11から放出された電子ビームの放出方向を一定方向に制御し(【0014】)、
前記引出電極13は、前記陰極11の先端と同軸的に形成された穴部13Hを有し、前記陰極11と対向するように配置され、前記第2支持部42に支持され、電圧が供給されることにより、前記陰極11から放出された電子ビームを引き出し(【0015】)、
前記加速電極14は、前記陰極11の先端と同軸的に形成された穴部14Hを有し、前記引出電極13と対向するように配置され、前記第1支持部41に支持され、電圧が供給されることにより、前記引出電極13の穴部13Hを通過した電子ビームを加速させ(【0016】)、
前記集束電極15は、前記陰極11の先端と同軸的に形成された円筒部15Hを有し、前記加速電極14と対向するように配置され、電圧が供給されることにより、前記加速電極14の穴部14Hを通過した電子ビームを集束させ(【0017】)、
前記アパーチャ電極16は、前記陰極11の先端と同軸的に形成された穴部16Hを有し、前記集束電極15と対向するように配置され、前記第3支持部43に支持され、電圧が供給されることにより、前記集束電極15の円筒部15Hを通過した不要な電子ビームを阻止し(【0018】)、
前記陽極ターゲット20は、真空外囲器30に保持され、前記電子銃10の前記アパーチャ電極16と対向するように配置され、前記電子銃10から放出された電子が衝突する微小焦点(電子衝突面)を有し、電子の衝突によってX線を発生し(【0020】)、
前記電子銃10は、前記真空外囲器30の内部に収容され真空状態に保持され(【0021】)、
前記真空外囲器30は、前記陰極11の先端と同軸的に形成されたX線透過窓部Wを有し、X線透過窓部Wは、ベリリウムによって形成された薄板の窓であり、前記真空外囲器30には、前記X線透過窓部Wと対向するように前記陽極ターゲット20の一部が固定され(【0022】)、
前記真空外囲器30は、前記電子銃10と前記陽極ターゲット20とが対向するように、前記電子銃10と前記陽極ターゲット20とを支持し(【0023】)、
前記第1支持部41が、前記真空外囲器30に固定されていることにより、前記電子銃10は、前記真空外囲器30の内部に固定され、前記抑制電極12と前記第2支持部42とは、前記第1絶縁筒51を介して接続され、前記第1絶縁筒51は、前記陰極11及び前記抑制電極12と、前記引出電極13とを電気的に絶縁し(【0024】)、
前記第1支持部41と前記第2支持部42とは、前記第2絶縁筒52及び前記第1柱状体61を介して接続され、前記第2絶縁筒52は、前記引出電極13と前記加速電極14とを電気的に絶縁し(【0025】)、
前記第1柱状体61は、前記第1支持部41と、前記第2支持部42との間に配置され(【0026】)、
前記第1支持部41と前記第3支持部43とは、前記第2柱状体62を介して接続され(【0027】)、
前記第1支持部41は、前記第3絶縁筒53を介して前記集束電極15と接続され、前記第3絶縁筒53は、前記加速電極14と前記集束電極15とを電気的に絶縁し、前記加速電極14と前記集束電極15との間の距離を保っている(【0028】)、
微小焦点を有する、マイクロフォーカスX線管(【0002】)である、X線を発生するX線管(【0001】)」

(2)甲第2号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第2号証には下記各記載がある。
「・・・ウエーネルト電極3および各加速電極間を夫々電気的に絶縁し、且つ機械的に固定するための円筒状の絶縁体・・・多段加速電子銃においては絶縁体内壁上での放電或いはチャージ等が電子線に悪影響を及ぼすことを防止するために電子線軌道上から前記絶縁体9が直視(矢視aで示す状態)出来ない様にする必要がある。・・・前記ウエーネルト電極3および各加速電極4乃至8の光軸側は屈曲させて光軸と平行に形成したり或いは突出部14a、14b、14c、14dおよび14eを設ける事により電子線軌道上から絶縁体9が直視できない様に構成している。」(第2頁第9行〜第3頁第9行)

第1図は次のものである。


(3)甲第3号証
ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第3号証には下記各記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、微小焦点で低エネルギのX線を放出するX線源に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な微小焦点を有するX線源は、マイクロフォーカスX線源として既に製品化がなされており、対象物の微小領域を高分解能で検査する非破壊検査装置などに広く利用されている。このX線源は、電子源から放出される電子ビームを電界または磁界レンズなどの電子光学系により収束させ、透過ターゲット表面のμmオーダ、またはそれ以下の狭い領域に焦点を持たせて、そこで放出されるX線を、透過ターゲットを透過させて放出させる構成が採られている(例えば、特許文献1参照)。・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のマイクロフォーカスX線源の構成のまま、低エネルギのX線を放出できるようにした場合に、次のような課題がある。
【0007】
低エネルギの電子ビームを小さな領域に収束しようとしたときに生じる物理的な制約条件として、主に以下の2点の課題がある。1つは、電子光学系内の電子ビームのクロスオーバーで空間電荷効果により発散効果が生じる。もう1つは、低エネルギになるほど電子光学系の磁界あるいは電界レンズの色収差の影響を強く受け、結像面での焦点のぼけ量が大きくなる。
【0008】
低エネルギのX線の放出強度(線量率)を確保するうえでの物理的な制約条件として、主に以下の2点があげられる。1つは、制動X線の放出量は、励起電子のエネルギにほぼ比例関係にあるため、低エネルギの電子ビームを適用するのは線量率増加の観点から不利となる。もう1つは、透過ターゲットでの減弱(吸収)作用により、低エネルギのX線ほど、放出強度の確保が困難となる。
【0009】
したがって、現在の高エネルギ対応のマイクロフォーカスX線源の駆動電圧を低減して動作させるだけでは、当初の微小な焦点サイズは維持しきれず、また、その構成のまま低電圧駆動に対応できるよう設計変更するだけでは、達成しうる焦点サイズの限界点は、満足できる範囲に収めることは困難である。そのため、エネルギを低減させて、高い効率で十分な強度(線量)の軟X線を放出でき、さらに現状の高エネルギ対応のマイクロフォーカスX線源と同等またはそれより優れた微小焦点性能を達成するためには、X線源の構成上の工夫が必要となる。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、低エネルギのX線を放出できるうえに、現状の高エネルギ対応のマイクロファーカスX線源と同等またはより優れた焦点サイズ性能を確保できるX線源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、接地電位の透過ターゲットを備えた真空容器と、この真空容器内に接地電位から絶縁して収納され、電子ビームを発生する電子源と、前記真空容器内に接地電位から絶縁して収納され、電子源が発生した電子ビームを収束させる電子光学系と、この電子光学系で収束される電子ビームが前記透過ターゲットへ入射する直前に減速作用を受けるように電位配分する駆動電源とを具備しているものである。」

(イ)「【0015】
X線源11は、内部が真空保持される真空容器12を有し、この真空容器12の一端にX線を外部に放出するX線放出窓を兼ねた透過ターゲット13が配設されている。
【0016】
真空容器12の他端には絶縁体としての絶縁筒14を介在して支持体15が配設され、この支持体15に、透過ターゲット13へ向けて電子ビーム16を発生する電子源17を有する電子銃18が配設されているとともに、真空容器12内に位置して電子源17から発生した電子ビーム16を収束、偏向、さらに収差補正を加えて透過ターゲット13に入射させる例えば静電レンズ(ガンレンズ)などを有する静電型の電子光学系19が配設されている。支持体15には真空容器12と電子光学系19との間に介在して電子光学系19を覆うとともに透過ターゲット13に離間対向する面が開口された覆い部20が形成されている。支持体15、電子銃18および電子光学系19は、絶縁筒14を介して真空容器12から電気的に絶縁されている。
【0017】
電子銃18には、電子ビーム16を発生させる駆動電源21が接続されている。
【0018】
真空容器12および透過ターゲット13は接地電位とされ、支持体15および電子光学系19は駆動電源21から正電圧が印加され、電子光学系19で収束される電子ビーム16が電子光学系19を通過して透過ターゲット13へ入射する直前に減速作用を受けるように構成されている。」

(ウ)「【0027】
また、X線源11の備える電子光学系19は、電子源17から電子ビームを引き出し、収束する機能を設けるため、少なくとも1つの静電レンズ(ガンレンズ)を有したものとなり、これだけも構成することが可能である。さらに、収束される電子ビームの制御性を高めることを目的とするには、もう1つのレンズを備え、さらに、そこに入射する電子ビーム16をアライメント(軸調整)するための偏向用四極子、さらに電子ビームの非点収差を補正するための八極子を備えることが好ましい。これら付加されたレンズおよび多極子は、図1に示したように複数の電極を、絶縁をとって並べた静電型のものを適用する他にも、磁界型(コイル)のものを適用することも可能である。・・・
【0029】
X線源11は、真空容器12の一端には先端に透過ターゲット13が配設された筒部24が形成され、この筒部24の内側に電子光学形19で収束されて透過ターゲット13に入射する電子ビーム16が通過するスリーブ25が配設されている。スリーブ25は、支持体の覆い部に形成され、真空容器12と電気的に絶縁されるとともに駆動電源21から正電圧が印加される。
【0030】
筒部24の外側には、磁界レンズ(対物レンズ)26および磁界型の多極子27を有する磁界型電子光学系28が配設されている。磁界レンズ26および多極子27は、真空容器12や透過ターゲット13と同じ接地電位とされ、磁界を発生させる制御電源29が接続されている。
【0031】
そして、磁界型電子光学系28は真空容器12の透過ターゲット13と同じ接地電位とし、スリーブ25は前段の電子光学系19と同じく正電位に浮遊させる構成とすることにより、電子ビーム16は、磁界型電子光学系28を通過するまで電子光学系19を通過するときと同じ電位を保ち、透過ターゲット13に入射する直前で減速作用を加えることができる。」

(エ)図1は次のものである。


イ 「覆い部20」は、「スリーブ25は、支持体の覆い部に形成され、真空容器12と電気的に絶縁されるとともに駆動電源21から正電圧が印加される。」(【0029】)、及び、「磁界型電子光学系28は真空容器12の透過ターゲット13と同じ接地電位とし、スリーブ25は前段の電子光学系19と同じく正電位に浮遊させる構成とすることにより、電子ビーム16は、磁界型電子光学系28を通過するまで電子光学系19を通過するときと同じ電位を保ち、透過ターゲット13に入射する直前で減速作用を加えることができる。」(【0031】)との記載に照らして、導電性であると解される。

ウ 上記ア及びイによれば、甲第3号証には下記発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「X線源11は、内部が真空保持される真空容器12を有し、この真空容器12の一端にX線を外部に放出するX線放出窓を兼ねた透過ターゲット13が配設され(【0015】)、
前記真空容器12の他端には絶縁体としての絶縁筒14を介在して支持体15が配設され、この支持体15に、透過ターゲット13へ向けて電子ビーム16を発生する電子源17を有する電子銃18が配設されているとともに、真空容器12内に位置して電子源17から発生した電子ビーム16を収束、偏向、さらに収差補正を加えて透過ターゲット13に入射させる静電レンズ(ガンレンズ)などを有する静電型の電子光学系19が配設され(【0016】)、
前記支持体15には前記真空容器12と前記電子光学系19との間に介在して電子光学系19を覆うとともに透過ターゲット13に離間対向する面が開口された覆い部20が形成され(【0016】)、
前記支持体15、前記電子銃18および前記電子光学系19は、絶縁筒14を介して前記真空容器12から電気的に絶縁され(【0016】)、
前記電子銃18には、電子ビーム16を発生させる駆動電源21が接続され(【0017】)、
前記真空容器12および前記透過ターゲット13は接地電位とされ、前記支持体15および前記電子光学系19は駆動電源21から正電圧が印加され、前記電子光学系19で収束される電子ビーム16が電子光学系19を通過して透過ターゲット13へ入射する直前に減速作用を受けるように構成され(【0018】)、
前記X線源11の備える電子光学系19は、電子源17から電子ビームを引き出し、収束する静電レンズ(ガンレンズ)、収束される電子ビームの制御性を高めるもう1つのレンズ、電子ビーム16をアライメント(軸調整)するための偏向用四極子、及び、電子ビームの非点収差を補正するための八極子を備え、これら付加されたレンズおよび多極子は、複数の電極を、絶縁をとって並べた静電型のものであり(【0027】)、
前記覆い部20は、導電性であり、(上記イ)、
マイクロフォーカスX線源(【0002】)である、微小焦点で低エネルギのX線を放出するX線源(【0001】)。」

(4)甲第4号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第4号証には下記各記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置に適用できる、透過型ターゲットを用いたX線管に関するものである。」
「【0011】
図1を参照して、本発明の一実施形態にかかる透過型のX線管の構成を説明する。図1は、X線管の中心軸を通る平面でX線管を切断した場合の軸方向断面図である。
X線管1は、陰極2、陽極3、および、中空の絶縁性の管(以下絶縁管)4を有している。陰極2および陽極3が絶縁管4の軸方向の両端縁にそれぞれ接合されることで、真空管が形成されている。
真空管の内部には、陰極2から陽極3の側に軸方向に突出するように電子銃構造体5が設けられている。電子銃構造体5は主に電子源6、グリッド電極7、集束電極8からなる。」
「【0015】
陰極2は絶縁部材9を有する。絶縁部材9には電子源駆動用端子10とグリッド電極用端子11が、陰極2とは電気的に絶縁されるように固定されている。両端子10、11はX線管1内の電子源6やグリッド電極7からX線管1の外部へと引き出されている。一方、集束電極8は直接陰極2に固定され、陰極2と同電位に規定されている。ただし、集束電極8が陰極2と絶縁され、陰極2とは別の電位を与えられるようにしても構わない。電子源6から放出された電子が効率よくターゲット12に照射されるような電圧を適宜選ぶとよい。
【0016】
陽極3は、所定のエネルギーを有する電子線が衝突することにより、X線を発生させるターゲット12を有する。この陽極3には数十k〜百kV程度の電圧が印加される。電子源6により発生し、グリッド電極7により引き出された電子線は、集束電極8により陽極3上のターゲット12へと向けられ、陽極3に印加された電圧により加速されて、ターゲット12との衝突によりX線を発生する。X線は、ターゲット12の電子線衝突面の反対側の面方向にも放出され、X線管1の外部に取り出される。
【0017】
ターゲット12は、X線を透過する基板の電子線照射面に、電子衝突によってX線を発生する金属膜が付された構造を有する。金属膜には、通常、原子番号26以上の材料を用いることができる。具体的には、タングステン、モリブデン、クロム、銅、コバルト、鉄、ロジウム、レニウム等、あるいはこれらの合金材料を用いた薄膜を好適に用いることができ、スパッタリング等の物理性膜によって緻密な膜構造を取るように形成される。金属膜の膜厚は、加速電圧によって電子線浸入深さすなわちX線発生領域が異なるため、最適な値が異なるが、百kV程度の加速電圧を用いる場合は通常、数μm〜十μm程度の厚さである。一方、基板は、放射線の透過性が高く、熱伝導が良く、真空封止に耐える必要があり、ダイヤモンド、窒素ケイ素、炭化ケイ素、炭化アルミ、窒化アルミ、グラファイト、ベリリウム、などを好ましく用いることができる。より好ましくは、放射線の透過率が高く、熱伝導率がタングステンよりも大きい、ダイヤモンド、窒化アルミ、窒化ケイ素が望ましい。基板の厚さは、上記の機能を満足すればよく、材料によって異なるが、0.1mm以上2mm以下が好ましい。特に、ダイヤモンドは、他の材料に比べて、熱伝導性が極めて大きく、放射線の透過性も高く、真空を保持しやすいため、より優れている。
ターゲット12と陽極3の接合は、熱的接合の他、真空の維持を考慮し、ろう付や溶接が好適である。」

第1図は次のものである。
【図1】


(5)甲第5号証
本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第5号証には下記各記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の絶縁管の一端に陰極を、他端に陽極を備えた放射線発生管であって、
前記放射線発生管の内部に、前記放射線発生管の内部空間に露出する開口を少なくとも一つ有する導電性容器を備え、
前記導電性容器の内部に誘電体を備えたことを特徴とする放射線発生管。」
「【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の放射線発生管と、
前記放射線発生管を収容し、前記放射線発生管から生じる放射線を取り出すための放射線放出窓を有する収納容器と、を備え、
前記収納容器の内部の余剰空間が絶縁性流体で満たされていることを特徴とする放射線発生装置。
【請求項12】
請求項11に記載の放射線発生装置と、
前記放射線発生管から放出され、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出装置と
前記放射線発生装置と前記放射線検出装置とを連携制御する制御装置とを備えたことを特徴とする放射線撮影システム。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療機器、非破壊検査装置等に適用できる放射線発生管及びそれを備えた放射線発生装置、放射線撮影システムに関する。」
「【0014】
図1(a)は、本発明の放射線発生管の一実施形態の構成を説明する図である。図中、1は放射線発生管、2は陽極、3は絶縁管、4は陰極、5は導電性容器、6は配線引き出し用絶縁部材、7は誘電体、8は電子銃、9はターゲットである。
【0015】
本発明の放射線発生管1は、基本的に、管状の絶縁管3の一端に陽極2を、他端に陰極4を備えている。また、本例の電子銃8は、電子放出源11を備え、該電子放出源11には配線16によって電圧が供給される。また、本例の電子銃8は電子放出源11から放出される電子線15を引き出すための引き出し電極12と、電子線15を集束させるレンズ電極13を備えている。引き出し電極12とレンズ電極13はそれぞれ、配線17,18によって電位を制御される。配線16,17,18は陰極4の厚さ方向に貫通して配置された絶縁部材6を貫通して放射線発生管1の外に引き出されている。
【0016】
電子銃8から放出された電子線15は、不図示の高圧電源より陰極4及び陽極2との間に印加された電圧によって加速され、陽極2に取り付けられたターゲット9に衝突する。ターゲット9は放射線透過材料からなる支持基板9aの内側に電子線の照射によって放射線を放出する材料からなるターゲット層9bを備えており、電子線15は該ターゲット層9bに入射して放射線が放出される。本例では、ターゲット9は遮蔽部材10に取り付けられている。」
「【0020】
遮蔽部材10は、ターゲット9の支持基板9aの外周を取り囲み、放射線放出側(放射線発生管1の外側)に突出する部材である。即ち、遮蔽部材9は両端が開口した通路を有しており、該通路の電子銃8側の端部もしくは途中にターゲット9を設置する。遮蔽部材10の通路は、ターゲット9よりも電子銃8側においては、電子線15をターゲット層9bの電子線照射領域に導くための通路となり、反対側は放射線を放射線発生管1の外部に導くための通路となる。
【0021】
遮蔽部材10は、放射線を遮蔽する部材であり、ターゲット層9bから放出される放射線のうち不要な放射線は遮蔽部材10により遮蔽され、必要な放射線のみが先述した通路を通って、放射線発生管1の外部に放出されることになる。遮蔽部材10は、また、放熱体としての機能を有する。電子線15がターゲット9に照射されることで発生した熱は遮蔽部材10を通じて外部へ放熱される。遮蔽部材10を構成する材料は、放射線の遮蔽部材としての観点からは放射線の吸収率が高いものが好ましく、放熱体としての観点からは熱伝導率の高いものが好ましい。例えば、タンタル、モリブデン等の金属材料を用いることができる。また、これらの放射線吸収率の高い材料と更に熱伝導率の高い材料(例えば銅やアルミ)との組み合わせで構成することも可能である。」
「【0033】
尚、図2(a)において、電子銃8を構成する電子放出源11、引き出し電極12、レンズ電極13はそれぞれ不図示の絶縁性支持部材により導電性容器5或いは配線用絶縁部材6等に固定されている。よって、係る絶縁性支持部材を異物を捕獲するための誘電体として用いることも可能である。」
「【0036】
次に、本発明の放射線発生装置について説明する。図3は本発明の放射線発生管1を備える放射線発生装置30の構成の一例を示す断面模式図である。本発明の放射線発生装置30は、図3に示すように、本発明の放射線発生管1と、これを収容する収納容器32とを備え、収納容器32の余剰空間には冷却媒体として絶縁性流体33が満たされている。
【0037】
収納容器32の内部には、不図示の回路基板及び絶縁トランス等から構成される駆動回路31を設けても良い。駆動回路31を設けた場合、例えば放射線発生管1に駆動回路31から所定の電圧信号が印加され、放射線の発生を制御することができる。」
「【0042】
システム制御装置42は、放射線発生装置30と放射線検出装置41とを連携制御する。駆動回路31は、システム制御装置42の制御の下に、放射線発生管1に各種の制御信号を出力する。この制御信号により、放射線発生装置30から放出された放射線36は、被検体44を透過して検出器46で検出される。検出器46は、検出した放射線を画像信号に変換して信号処理部45に出力する。信号処理部45は、システム制御装置42による制御の下に、画像信号に所定の信号処理を施し、処理された画像信号をシステム制御装置42に出力する。システム制御装置42は、処理された画像信号に基づいて、表示装置43に画像を表示させるための表示信号を表示装置43に出力する。表示装置43は、表示信号に基づく画像を、被検体44の撮影画像としてディスプレイに表示する。放射線の代表例はX線であり、本発明の放射線発生管1、放射線発生装置30及び放射線撮影システムは、X線発生管、X線発生装置及びX線撮影システムとして利用することができる。X線撮影システムは、工業製品の非破壊検査や人体や動物の病理診断に用いることができる。」

第1及び第3図は次のものである。




第6 第1次取消理由についての当審の判断
事案に鑑み、第1次取消理由についての判断を先に行う。
1 甲1発明を主引用発明とする進歩性欠如
(1)本件発明1について
ア 対比並びに一致点及び相違点の認定
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)本件発明1の「前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材と、を有する陽極」との特定事項について
甲1発明の「陽極ターゲット20」は、「電子の衝突によってX線を発生」するものであるから、本件発明1の「電子の照射によりX線を発生するターゲット」に相当する。
甲1発明は、「陽極ターゲット20」を備える以上、本件発明1の「陽極」を備えるといえる。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、「電子の照射によりX線を発生するターゲット」「を有する陽極」を備える点で一致するが、甲1発明は、本件発明1でいう「前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材」を備えない。

(イ)本件発明1の「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する陰極と、」との特定事項について
甲1発明の「陰極11」は、「電子ビームを放出」するから、本件発明1の「電子を放出する電子放出部」に相当する。
甲1発明の「引出電極13」及び「集束電極15」の双方は、本件発明1の「前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極」に相当し、このことは、本件訂正後の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件訂正明細書等」という。)の【0029】の「引き出しグリッド電極43および、集束グリッド電極44のいずれも、電子通過路7を通過する電子の運動を規制し、電子ビームのビーム径を規定するという点において共通するため、本願発明においては、グリッド電極42と、まとめて称する。」の記載からみても首肯できる。
甲1発明の「第3絶縁筒53」及び「加速電極14」は、それぞれ、本件発明1の「絶縁支持部材」及び「他の電極」に相当する。そして、当該「第3絶縁筒53」は、「前記加速電極14と前記集束電極15とを電気的に絶縁し、前記加速電極14と前記集束電極15との間の距離を保っている」から、「加速電極14」(本件発明1の「他の電極」に相当。)に対して「集束電極15」(本件発明1の「グリッド電極」に相当。)を電気的に絶縁しつつ当該「集束電極15」を支持するものといえる。
甲1発明の「電子銃10」は、本件発明1の「電子銃」に相当する。そして、当該「電子銃10」は、「陰極11と、抑制電極12と、引出電極13と、加速電極14と、集束電極15と、アパーチャ電極16と、第1支持部41と、第2支持部42と、第3支持部43と、を有し」ており、「前記第1支持部41は、前記第3絶縁筒53を介して前記集束電極15と接続され」ているから、当該「電子銃10」は、「陰極11」(本件発明1の「電子放出部」に相当。)と、「引出電極13」及び「集束電極15」の双方(本件発明1の「グリッド電極」に相当。)と、「第3絶縁筒53」(本件発明1の「絶縁支持部材」に相当。)とを有しているといえる。また、当該「陰極11」を有する「電子銃10」の電位が、「陽極ターゲット20」(本件発明1の「ターゲット」に相当。)の電位より低いことは、明らかである。
甲1発明が、本件発明1でいう「陰極」を備えることは明らかである。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃」「を有する陰極」を備える点で一致するが、甲1発明は、本件発明1でいう「前記電子銃と接続された陰極部材」を備えない。

(ウ)甲1発明の「X線を発生するX線管」は、本件発明1の「X線発生管」に相当する。

(エ)以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「電子の照射によりX線を発生するターゲットを有する陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃を有する陰極と、
を有するX線発生管。」
である点で一致するとともに、下記各点で相違する。

a 相違点1
本件発明1は、「陽極」が「前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材」を有するとともに、「陰極」が「前記電子銃と接続された陰極部材」を有し、さらに、「管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管」を有するのに対して、甲1発明は、「真空外囲器30」を有するが、「絶縁管」といえるものではなく、しかも、当該「真空外囲器30」の「一端」及び「他端」にそれぞれ接続された「陽極部材」及び「陰極部材」も備えない点。

b 相違点2
「X線発生管」が、本件発明1は「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生する」ものであるのに対して、甲1発明は、そうではない点。

c 相違点3
「電子銃」が、本件発明1は「前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部」を有するのに対して、甲1発明は、そうではない点。

d 相違点4
「電子銃」が、本件発明1は「前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部」を有するに対して、甲1発明はそうではない点。

相違点の判断
事案に鑑み、相違点3から検討し、引き続き相違点2を検討する。
(ア)甲1発明において相違点3に係る本件発明1の構成に至るためには、(i)甲1発明の「電子銃10」と「真空外囲器30」との間に「導電性の外周管状部」を備えるようにすること、(ii)「陰極部材」を備えるようにして、当該「陰極部材」を甲1発明の「電子銃10」と接続させること、(iii)当該「導電性の外周管状部」を当該「陰極部材」と接続するようにすること、を少なくとも要するといえる。
そこで検討すると、甲1発明に、(i)の「導電性の外周管状部」に係る構成を開示する証拠である甲第3号証に記載された技術的事項を採用すると、以下のとおり、相違点2に係る本件発明1の構成に至るとはいえなくなる。
すなわち、上記第5の2(3)ウで認定された甲3発明によれば、甲第3号証には、電子ビーム16が電子光学系19を通過して透過ターゲット13へ入射する直前に減速作用を受けるようにするために、電子光学系19を覆うとともに透過ターゲット13に離間対向する面が開口された導電性の覆い部20を形成し、覆い部20に正電圧を印加する一方、透過ターゲット13を接地電位とすることが記載されている。そして、「導電性の覆い部20」は、その文言上、本件発明1の「導電性の外周管状部」に相当する構成である。
しかしながら、甲第3号証に記載された「導電性の覆い部20」は、透過ターゲット13に対して正電圧をもつところ、この電圧関係は上記減速作用を生じさせるために必要とされるものであるから、当業者が、甲1発明に甲第3号証に記載された「導電性の覆い部20」を採用することがあるとしても、当該「導電性の覆い部20」を甲1発明の「陽極ターゲット20」に対して正電圧をもつように構成するのが自然である。そうすると、甲1発明の「陽極ターゲット20」から後方散乱した電子が生じるとしても、その電子は、当該「導電性の覆い部20」のうち透過ターゲット20に近い部分、つまり、「透過ターゲット13に離間対向する面」に捕捉されてしまうと解される。
そして、甲1発明に当該「導電性の覆い部20」を採用した上記構成が相違点2に係る本件発明1の「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生する」という構成に至るためには、少なくとも、上記の電子が「真空外囲器30」と「電子銃10」との間の領域に到達することを要するといえる。しかるところ、当該電子は、上記のとおり、「導電性の覆い部20」の「透過ターゲット13に離間対向する面」に捕捉されてしまうと解されることから、そのような領域に到達するとはいえないのであり、よって、上記構成は、相違点2に係る本件発明1の構成に至るともいえない。この認定判断を左右するに足る甲第1号証及び甲第3号証のその余の記載並びに他の証拠の記載も見当たらない。

(イ)この点、申立人は、甲1発明の「第3絶縁筒53」が本件発明1の「絶縁支持部材」に相当することを前提にした上で、「第2柱状体62」を(相違点3に係る本件発明1の構成のうち)「前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部」にすることは当業者にとって容易である旨主張し、その根拠として、当該「第2柱状体62」が金属材料であってよく(甲第1号証の【0027】)、これを円筒形状の部品とすることも示唆がある(同【0030】)旨、さらに、当該「第2柱状体62」を本件発明1の「陰極部材」に相当する部品に固定する構造とするのは単なる設計事項であって、このことは、甲第3号証において、覆い部20が支持体15(電子源17が取り付けられている部材)に取り付けられていることに照らしても首肯できる旨主張する。
しかしながら、甲1発明は、陰極の近傍の電極表面から放出されたガスによって短時間で陰極近傍を超高真空状態にできないことがある(同【0003】)という課題を解決するために、第1電極支持体(第1〜第3支持部のいずれか)と第2電極支持体(第1〜第3支持部の他のいずれか)とを少なくとも3本の柱状体を介して固定し(同請求項1)、これにより、当該柱状体間からガスを外側に容易に排除することができるようにしたものである(同【0039】)から、柱状体を完全になくすような変更はもとより想定されていない。よって、当該「第2柱状体62」を円筒形状の部品とするとしても、それとは別の「第1柱状体61」は柱状体のまま維持されるはずである。
そして、甲1発明に「陰極部材」に相当する構造を採用するとしても、当該構造は絶縁管の端に存在する(本件発明1の「他端が前記陰極部材に接続された絶縁管」との特定事項)ことが前提とされるから、「第2柱状体62」を円筒形状の部品としたものを当該「陰極部材」に相当する構造に固定すると、当該部品が「第1柱状体61」を覆うことになると考えられる。そうだとすれば、当該「第1柱状体61」を柱状体のまま維持したことの意味がなくなってしまう。
よって、当業者が申立人が主張するような変更を行うことはないというべきである。

(ウ)このように、甲1発明において相違点3に係る本件発明1の構成に至るようにすると、相違点2に係る本件発明1の構成に至らなくなるから、相違点3及び2に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲第1号証〜甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし12について
本件発明2ないし12は、甲1発明との間に相違点2及び3を含むから、上記(1)イと同様の理由で、甲1発明及び甲第1号証〜甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲1発明を主引用発明とする進歩性欠如の取消理由についての小括
以上のとおりであるから、甲1発明を主引用発明とする進歩性欠如の取消理由は理由がない。

2 甲3発明を主引用発明とする新規性欠如・進歩性欠如
(1)本件発明1について
ア 対比並びに一致点及び相違点の認定
本件発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)本件発明1の「電子の照射によりX線を発生するターゲットと、前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材と、を有する陽極と、」との特定事項について
甲3発明の「透過ターゲット13」は、本件発明1の「ターゲット」に相当し、これが本件発明1でいう「電子の照射によりX線を発生する」ものであることは明らかである。
甲3発明の「真空容器12」は、「前記真空容器12および前記透過ターゲット13は接地電位とされ」ているから、本件発明1の「前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材」に相当する。そして、甲3発明の当該「真空容器12」及び「透過ターゲット13」をあわせた構造は、本件発明1の「陽極」に相当するといえる。
よって、甲3発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。

(イ)本件発明1の「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する陰極と、」との特定事項について
甲3発明の「電子銃18」及び「電子光学系19」に含まれる電極をあわせた構造は、本件発明1の「電子銃」に相当する。
甲3発明の「透過ターゲット13へ向けて電子ビーム16を発生する電子源17」は、本件発明1の「電子を放出する電子放出部」に相当し、上記構造に有されているから、本件発明1でいう「電子銃」に有されている。
甲3発明の「電子源17から電子ビームを引き出し、収束する静電レンズ(ガンレンズ)」は、本件発明1の「前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極」に相当し、このことは、本件訂正明細書等の【0029】の「引き出しグリッド電極43および、集束グリッド電極44のいずれも、電子通過路7を通過する電子の運動を規制し、電子ビームのビーム径を規定するという点において共通するため、本願発明においては、グリッド電極42と、まとめて称する。」の記載からみても首肯できる。そして、当該「静電レンズ(ガンレンズ)」は、上記構造に有されているから、本件発明1でいう「電子銃」に有されている。
甲3発明の「支持体15」は、「この支持体15に、」「電子銃18が配設されている」から、本件発明1の「陰極部材」に相当し、本件発明1でいう「前記電子銃と接続された」ものといえる。
甲3発明が、本件発明1でいう「陰極」を備えることは明らかであり、本件発明1でいう「電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する」といえる。
よって、本件発明1と甲3発明とは、「電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、」「を有し」「電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する陰極」を備える点で一致するが、甲3発明は、「前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材」を備えるとはいえず、また、「電子ビーム16が電子光学系19を通過して透過ターゲット13へ入射する直前に減速作用を受けるように構成され」ているから、「電子銃」が「前記ターゲットより低電位である」ともいえない。

(ウ)本件発明1の「管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管と、を有し、」との特定事項について
甲3発明の「絶縁筒14」は、本件発明1の「絶縁管」に相当する。そして、甲3発明は、「前記真空容器12の他端には絶縁体としての絶縁筒14を介在して支持体15が配設され」るから、「絶縁筒14」の一端に「真空容器12」(本件発明1の「陽極部材」に相当。)が接続され、他端に「支持体15」(本件発明1の「陰極部材」に相当。)が接続されているということができ、よって、当該「絶縁筒14」は、本件発明1でいう「管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された」ものといえる。
したがって、甲3発明は、本件発明1の上記特定事項を満たしている。

(エ)本件発明1の「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生するX線発生管であって、」との特定事項について
甲3発明の「X線を放出するX線源」は、本件発明1の「X線発生管」に相当する。
しかし、甲3発明は、本件発明1でいう「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生する」とはいえない。

(オ)本件発明1の「前記電子銃は、前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部と、前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部と、を有する」との特定事項について
甲3発明の「覆い部20」は、「電子光学系19を覆う」とともに、導電性であるから、本件発明1の「導電性の外周管状部」に相当する。そして、当該「覆い部20」は、「支持体15」(本件発明1の「陰極部材」に相当。)に形成されているから、本件発明1でいう「前記陰極部材に固定された」ものといえる。
また、甲3発明の当該「覆い部20」は、「支持体15」に形成されており、当該「支持体15」に「電子銃18」が配設されているから、本件発明1でいう「電子銃」に有されているといえる。
よって、本件発明1と甲3発明とは、「前記電子銃は、」「前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部」を有する点で一致するが、甲3発明の「覆い部20」は、「前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において」存在するものではなく、さらに、甲3発明は、「前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部」を備えない。

(カ)以上によれば、本件発明1と甲3発明とは、
「電子の照射によりX線を発生するターゲットと、前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材と、を有する陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、を有する電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する陰極と、
管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管と、を有するX線発生管であって、
前記電子銃は、前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部と、を有するX線発生管。」
である点で一致するとともに、下記各点で相違する。

a 相違点5
「陰極」が、本件発明1は、「前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材」を備えるのに対し、甲3発明は、そうとはいえない点。

b 相違点6
「前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部」が、本件発明1は、「管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において」存在するのに対し、甲3発明は、そうではない点。

c 相違点7
「電子銃」が、本件発明1は「ターゲットより低電位である」のに対して、甲3発明は「電子ビーム16が電子光学系19を通過して透過ターゲット13へ入射する直前に減速作用を受けるように構成され」ている点。

d 相違点8
「X線発生管」が、本件発明1は「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生する」のに対して、甲3発明は、そうであるか明らかではない点。

e 相違点9
「前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部」が、本件発明1は、「前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において」存在するのに対し、甲3発明は、そうではない点。

f 相違点10
「電子銃」が、本件発明1は「前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部」を有するのに対して、甲3発明はそうではない点。

イ 判断
事案に鑑みて、相違点8から検討する。
甲3発明において相違点8に係る本件発明1の構成に至るためには、透過ターゲット13から後方散乱した電子が、「絶縁筒14」と「覆い部20」との間に到達する必要が少なくともあると解される。
しかしながら、甲3発明においては、上記1(1)イで説示したとおり、「透過ターゲット13」から後方散乱した電子が生じるとしても、その電子は、当該「導電性の覆い部20」のうち透過ターゲット20に近い部分、つまり、「透過ターゲット13に離間対向する面」に捕捉されてしまうと解されるため、上記の電子が、「絶縁筒14」と「覆い部20」との間に到達するとはいえない。
そして、このような帰結は、甲3発明が前提とする「電子ビーム16が電子光学系19を通過して透過ターゲット13へ入射する直前に減速作用を受けるように構成され」ていることに由来するものであるから、甲3発明に接した当業者が相違点8に係る構成に至ることはない。この認定判断を左右するに足る甲第3号証のその余の記載及び他の証拠の記載も見当たらない。
したがって、相違点8に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

ウ 小括
よって、本件発明1は、甲3発明ではなく、また、甲3発明及び甲第1号証〜甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2ないし12について
本件発明2ないし12は、甲3発明との間に相違点8を含むから、上記(1)イと同様の理由で、甲3発明及び甲第1号証〜甲第5号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲3発明を主引用発明とする新規性欠如・進歩性欠如についての小括
以上のとおりであるから、甲3発明を主引用発明とする新規性欠如・進歩性欠如に係る取消理由は理由がない。

3 小括
よって、第1次取消理由は理由がない。

第7 第2次取消理由についての当審の判断
第2次取消理由は、第1次訂正請求書による訂正の請求が拒絶すべきものであることを前提とするところ、当該訂正の請求は、本件訂正の請求によって取り下げられたものとみなされたため、第2次取消理由は解消した。

第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由について
申立人は、本件発明1の「前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に中性の散乱金属粒子が発生する」の記載における「後方散乱した電子」が、本件訂正明細書等に唯一開示された「弾性散乱した」もの以外に、どこまでのものが含まれるのかが不明確である旨主張するが、当該記載は「X線管」の構造を特定するためのものであるから、「後方散乱した電子」としては、弾性散乱した電子が含まれると解すれば足りる。
よって、申立人が主張する理由は成り立たない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、第1次取消理由及び第2次取消理由並びに特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子の照射によりX線を発生するターゲットと、前記ターゲットと電気的に接続された陽極部材と、を有する陽極と、
電子を放出する電子放出部と、前記電子放出部から放出された前記電子が通過する電子通過路を規定するグリッド電極と、前記電子放出部または他の電極に対して前記グリッド電極を電気的に絶縁しつつ前記グリッド電極を支持する絶縁支持部材と、を有し前記ターゲットより低電位である電子銃と、前記電子銃と接続された陰極部材と、を有する陰極と、
管軸方向において一端が前記陽極部材に他端が前記陰極部材に接続された絶縁管と、を有し、
前記ターゲットから後方散乱した電子によって前記絶縁管と前記電子銃との問の領域に中性の散乱金属粒子が発生するX線発生管であって、
前記電子銃は、前記絶縁管と前記電子銃との間の領域に存在する中性の散乱金属粒子が前記絶縁支持部材上に堆積することを抑制するために管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材が直視されないように前記絶縁支持部材の管径方向における外側において前記陰極部材に固定された導電性の外周管状部と、前記電子通過路から管径方向の外側に向かってみて前記絶縁支持部材が直視されないように遮る導電部と、を有することを特徴とするX線発生管。
【請求項2】
前記グリッド電極は、電圧源に電気的に接続され、
前記導電部は、前記グリッド電極の部分であることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。
【請求項3】
前記グリッド電極は、前記電子通過路を規定する電子通過孔が設けられ、管径方向に延在する環状部と、前記環状部に連なり前記電子通過路に沿って延在する管状部と、を有し、
前記導電部は、前記管状部の少なくとも一部であることを特徴とする請求項1または2に記載のX線発生管。
【請求項4】
前記グリッド電極は、前記環状部が前記電子放出部と対向するように配置され、前記管状部が管軸方向において前記電子放出部に重なるように配置された引き出しグリッド電極を含むことを特徴とする請求項3に記載のX線発生管。
【請求項5】
前記電子銃は、環状部と管状部とを有する他のグリッド電極を有し、
前記他のグリッド電極と前記グリッド電極は、互いの前記環状部が管軸方向に対向し、互いの前記管状部が管径方向に対向する部分を有することを特徴とする請求項3または4に記載のX線発生管。
【請求項6】
前記他のグリッド電極と前記グリッド電極において、前記環状部が前記電子放出部に近い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部は、前記環状部が前記電子放出部から遠い側に位置する前記グリッド電極の前記管状部より、管径方向において、外側に位置していることを特徴とする請求項5に記載のX線発生管。
【請求項7】
前記グリッド電極は、前記ターゲットに対向する環状部を有し、前記ターゲット上に形成する焦点の大きさを規定する集束グリッド電極を含み、
前記電子通過路は、前記電子放出部から放出された前記電子が前記集束グリッド電極を通過するまでの通過経路に対応することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項8】
前記外周管状部は、前記グリッド電極の部分であり、管径方向の外側から見て前記絶縁支持部材を隠すように前記絶縁支持部材の外側に管状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のX線発生管。
【請求項9】
前記導電部は、前記電子通過路の側から運動する散乱金属粒子が、前記絶縁支持部材に堆積するのを抑制するように、前記電子通過路と前記絶縁支持部材との問に位置することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項10】
前記ターゲットは、電子の照射によりX線を発生するターゲット層と、前記ターゲット層を支持するとともに前記X線を透過する支持基板とを有する透過型ターゲットであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のX線発生管。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のX線発生管と、前記ターゲットと前記電子放出部とのそれぞれに電気的に接続され、前記ターゲットと前記電子放出部との間に印加される管電圧を出力する駆動回路と、を備えることを特徴とするX線発生装置。
【請求項12】
請求項11に記載のX線発生装置と、
前記X線発生装置から放出され被検体を透過したX線を検出するX線検出装置と、
前記X線発生装置と前記X線検出装置とを連携して制御するシステム制御装置と、
を備えることを特徴とするX線撮影システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-12-08 
出願番号 P2016-016375
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01J)
P 1 651・ 121- YAA (H01J)
P 1 651・ 537- YAA (H01J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 山村 浩
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
登録日 2021-01-08 
登録番号 6821304
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 電子銃、X線発生管、X線発生装置およびX線撮影システム  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 松浦 孝  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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