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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03F
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G03F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03F
管理番号 1395198
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-01-14 
確定日 2022-12-15 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6904484号発明「フレキソ印刷版」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6904484号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4−6〕について訂正することを認める。 特許第6904484号の請求項1、2、4ないし6に係る特許を維持する。 特許第6904484号の請求項3に係る申立ては却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6904484号の請求項1乃至6に係る特許についての出願は、令和2年7月1日(優先権主張2019年8月23日、日本国)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年6月28日にその特許権の設定登録がされ、同年7月14日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年1月14日付けで特許異議申立人 村野親(以下、「特許異議申立人」という。)より請求項1乃至6に対して特許異議の申立てがされ、同年2月9日付けで取消理由が通知され、同年4月21日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされ、同年6月1日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月26日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求がされた。
なお、特許異議申立人は意見書の提出を希望しており、当審は令和4年7月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求について、同年8月30日付けの通知書によって意見を提出する機会を与えたが、特許異議申立人から期間内に応答はなかった。


2 訂正の適否についての判断(請求項1〜6に係る一群の請求項に係る訂正)
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜9質量%であること、網点の複合弾性率が35〜80MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が5〜15MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。」と記載されているのを、「少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、4〜6も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.20〜0.55の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷版。」と記載されているのを、「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.23〜0.54の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷版。」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項4〜6も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が99:1〜80:20の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキソ印刷版。」と記載されているのを、「(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が15:1〜150:20の範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のフレキソ印刷版。」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5及び6も同様に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1〜4のいずれかに記載のフレキソ印刷版。」と記載されているのを、「請求項1,2,4のいずれかに記載のフレキソ印刷版。」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1〜5のいずれかに記載のフレキソ印刷版」と記載されているのを、「請求項1,2,4,5のいずれかに記載のフレキソ印刷版」に訂正する。

キ 訂正事項7
明細書の段落【0012】に
「 即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜9質量%であること、網点の複合弾性率が35〜80MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が5〜15MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。
(2)感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.20〜0.55の範囲にあることを特徴とする(1)に記載のフレキソ印刷版。
(3)(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が5〜25質量%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のフレキソ印刷版。
(4)(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が99:1〜80:20の範囲にあることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
(5)水系の現像液を使用してフレキソ印刷原版を現像して得られることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のフレキソ印刷版を用いたことを特徴とするフレキソ印刷法。」と記載されているのを、
「 即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。
(2)感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.23〜0.54の範囲にあることを特徴とする(1)に記載のフレキソ印刷版。
(3)(削除)
(4)(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が15:1〜150:20の範囲にあることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
(5)水系の現像液を使用してフレキソ印刷原版を現像して得られることを特徴とする(1),(2),(4)のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
(6)(1),(2),(4),(5)のいずれかに記載のフレキソ印刷版を用いたことを特徴とするフレキソ印刷法。」に訂正する。

ク 訂正事項8
明細書の段落【0056】に
「実施例2〜14、比較例15、比較例1〜6
感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物中の各成分の配合割合を表1及び表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法でフレキソ印刷原版を作製し、その原版から印刷版を得た。なお、レリーフ深度が0.6mmとなるように裏露光時間を調整し、主露光時間は直径16μmの網点が印刷版上に再現する時間とした。」と記載されているのを、
「実施例2〜13、比較例14、比較例15、比較例1〜6
感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物中の各成分の配合割合を表1及び表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法でフレキソ印刷原版を作製し、その原版から印刷版を得た。なお、レリーフ深度が0.6mmとなるように裏露光時間を調整し、主露光時間は直径16μmの網点が印刷版上に再現する時間とした。」に訂正する。

ケ 訂正事項9
明細書の段落【0057】に
「実施例1〜14、比較例15、比較例1〜6の評価結果を表1及び表2に示す。」と記載されているのを、
「実施例1〜13、比較例14、比較例15、比較例1〜6の評価結果を表1及び表2に示す。」に訂正する。

コ 訂正事項10
明細書の段落【0058】に
「【表1】

」と記載されているのを、
「【表1】

」に訂正する。

サ 訂正事項11
明細書の段落【0061】に
「上記の表の評価結果からわかるように、網点の複合弾性率とベタ部分の複合弾性率が本発明の範囲内である実施例1〜14では、微小網点のドットゲイン抑制とベタ部分のインキ乗りが両立できている。このように網点とベタの複合弾性率を本発明の範囲内とする方法としては、従来よりも光重合開始剤量を多量に配合すること、低分子量(メタ)アクリレート化合物を一定量配合すること、及び光重合開始剤と低分子(メタ)アクリレート化合物の配合比率を一定範囲内とすることが重要である。さらに、高分子量の(メタ)アクリレート化合物を配合することで光重合開始剤を多量配合した場合でも独立点の再現性や印刷版の耐久性を損なわない(実施例1〜8,11〜13と実施例9,10,14の対比)。さらに、光重合開始剤にベンゾフェノンを併用することで網点の複合弾性率を選択的に高めることができる(実施例1〜6,9〜14と実施例7,8の対比)。さらに、酸素バリア層を持たせることで微小網点のドットゲインとベタ部分のインキ乗りをさらに高めることができる(実施例1〜14と比較例15の対比)。」と記載されているのを、
「上記の表の評価結果からわかるように、網点の複合弾性率とベタ部分の複合弾性率が本発明の範囲内である実施例1〜13では、微小網点のドットゲイン抑制とベタ部分のインキ乗りが両立できている。このように網点とベタの複合弾性率を本発明の範囲内とする方法としては、従来よりも光重合開始剤量を多量に配合すること、低分子量(メタ)アクリレート化合物を一定量配合すること、及び光重合開始剤と低分子(メタ)アクリレート化合物の配合比率を一定範囲内とすることが重要である。さらに、高分子量の(メタ)アクリレート化合物を配合することで光重合開始剤を多量配合した場合でも独立点の再現性や印刷版の耐久性を損なわない(実施例1〜8,11〜13と実施例9,10の対比)。さらに、光重合開始剤にベンゾフェノンを併用することで網点の複合弾性率を選択的に高めることができる(実施例1〜6,9〜13と実施例7,8の対比)。さらに、酸素バリア層を持たせることで微小網点のドットゲインとベタ部分のインキ乗りをさらに高めることができる(実施例1〜13と比較例15の対比)。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「フレキソ印刷版」の「光重合開始剤の含有量」について、「2.5〜9質量%」から「2.5〜7質量%」と限定するもの(以下「訂正事項1−1」という。)、「(b)エチレン性不飽和化合物」について、「(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、」と更に限定するもの(以下「訂正事項1−2」という。)、「網点の複合弾性率」について、「35〜80MPa」から「35〜70MPa」と限定するもの(以下「訂正事項1−3」という。)、「ベタ部分の複合弾性率」について、「5〜15MPa」から「9〜14MPa」と限定するもの(以下「訂正事項1−4」という。)、である。
そうすると、訂正事項1−1乃至1−4のいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2、4〜6は、訂正後の請求項1を引用することにより、訂正後の請求項1の「フレキソ印刷版」をより具体的に特定し、上記訂正事項1−1乃至1−4のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記アのとおり、訂正事項1−1乃至1−4は、訂正前の請求項1に記載されていた「光重合開始剤の含有量」、「(b)エチレン性不飽和化合物」、「網点の複合弾性率」、「ベタ部分の複合弾性率」について、限定するものであり、いずれの訂正事項も、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
同様に、訂正事項1−1乃至1−4は、訂正前の請求項2〜6が引用する請求項1に記載されていた「光重合開始剤の含有量」、「(b)エチレン性不飽和化合物」、「網点の複合弾性率」、「ベタ部分の複合弾性率」について、限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項1−1乃至1−4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項1−1の「光重合開始剤の含有量」について、「7質量%」という事項は、明細書の【0058】【表1】の実施例3の光重合開始剤ベンジルジメチルケタールの値に基づいて導き出される事項である。
訂正事項1−2の「(b)エチレン性不飽和化合物」について、「数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、」という事項は、明細書の【0058】【表1】の実施例9及び10の高分子量アクリレート(BAC45)の含有量の値に基づいて導き出される事項である。
訂正事項1−3の「網点の複合弾性率」について、「70MPa」という事項は、明細書の【0058】【表1】の実施例3の複合弾性率(MPa)網点の値に基づいて導き出される事項である。
訂正事項1−4の「ベタ部分の複合弾性率」について、「8〜14MPa」という事項は、明細書の【0058】【表1】の実施例3及び実施例14の複合弾性率(MPa)ベタ部分の値に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項1−1乃至1−4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「フレキソ印刷版」の「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率」について、「0.20〜0.55の範囲」から「0.23〜0.54の範囲」と限定するものである。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項3〜6は、訂正後の請求項2を引用することにより、訂正後の請求項2の「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率」をより具体的に特定し、上記訂正事項2のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記アのとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載されていた「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率」の数値範囲について、限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
同様に、訂正事項2は、訂正前の請求項3〜6が引用する請求項2に記載されていた「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率」の数値範囲について、限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項2の「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率」について、「0.23〜0.54の範囲」という事項は、明細書の【0058】【表1】の実施例5及び実施例3の光重合開始剤/低分子量(メタ)アクリレート化合物の比率の値に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項3は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項3は、請求項を削除するものであるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の「フレキソ印刷版」の「ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比」について、「99:1〜80:20の範囲」から「15:1〜150:20の範囲」と限定するもの(以下「訂正事項4−1」という。)、上記訂正事項3に係る訂正に伴い訂正前の請求項4が「請求項1〜3のいずれか」を引用していたところ、「請求項1〜2のいずれか」を引用するもの(以下「訂正事項4−2」という。)、である。
そうすると、訂正事項4−1及び4−2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項5及び6は、訂正後の請求項4を引用することにより、更に訂正後の請求項1〜2のいずれかを引用することにより、訂正後の請求項2の「ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比」をより具体的に特定し、上記訂正事項4−1及び4−2のとおり限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項4−1は、訂正前の請求項4に記載されていた「ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比」の数値範囲について、限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
同様に、訂正事項4−1は、訂正前の請求項5及び6が引用する請求項4に記載されていた「ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比」の数値範囲について、限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
訂正事項4−2は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
同様に、訂正事項4−2は、訂正前の請求項5及び6が引用する請求項4が引用する請求項を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項4−1及び4−2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項4−1の「ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比」について、「15:1〜150:20の範囲」という事項は、明細書の【0058】【表1】の実施例7及び実施例8の感光性樹脂層成分(質量%) 光重合開始剤 ベンジルジメチルケタールとベンゾフェノンの比率の値に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項4−1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
訂正事項4−2は、引用する請求項を削除するものであるから、当該訂正事項4−2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

オ 訂正事項5
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い訂正前の請求項5が「請求項1〜4のいずれか」を引用していたところ、「請求項1,2,4のいずれか」を引用するものである。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項5は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項5は、上記(ア)のとおり、引用する請求項を削除するものであるから、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

カ 訂正事項6
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項3に係る訂正に伴い訂正前の請求項6が「請求項1〜5のいずれか」を引用していたところ、「請求項1,2,4,5のいずれか」を引用するものである。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項6は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項6は、上記(ア)のとおり、引用する請求項を削除するものであるから、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

キ 訂正事項7
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、訂正事項1乃至6に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の【0012】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項7は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記ア乃至カのとおり、訂正事項1乃至6が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、訂正事項7が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項7は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項7は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1乃至6に対応する訂正であるから、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ク 訂正事項8
(ア)訂正の目的について
訂正事項8は、訂正事項1、2及び4に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6から除外された実施例14を比較例14とするものであって、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の【0056】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項8は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記ア乃至カのとおり、訂正事項1乃至6が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、訂正事項8が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項8は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項8は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1乃至6に対応する訂正であるから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ケ 訂正事項9
(ア)訂正の目的について
訂正事項9は、訂正事項1、2及び4に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6から除外された実施例14を比較例14とするものであって、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の【0057】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項9は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記ア乃至カのとおり、訂正事項1乃至6が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、訂正事項9が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項9は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項9は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1乃至6に対応する訂正であるから、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

コ 訂正事項10
(ア)訂正の目的について
訂正事項10は、訂正事項1、2及び4に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6から除外された実施例14を比較例14とするものであって、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の【0058】の【表1】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項10は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記ア乃至カのとおり、訂正事項1乃至6が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、訂正事項10が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項10は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項10は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1乃至6に対応する訂正であるから、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

サ 訂正事項11
(ア)訂正の目的について
訂正事項11は、訂正事項1、2及び4に係る訂正に伴い、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6から除外された実施例14を比較例14とするものであって、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の【0061】の記載との整合を図るためのものであるから、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか否か
訂正事項11は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るために訂正するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、上記ア乃至カのとおり、訂正事項1乃至6が、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合するものであって、訂正事項11が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは明らかであるから、訂正事項11は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
上記(ア)のとおり、訂正事項11は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1乃至6の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1乃至6に対応する訂正であるから、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。


シ 一群の請求項について
訂正前の請求項1乃至6について、請求項2乃至6は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1乃至6に対応する訂正後の請求項1乃至6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

ス 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
特許法第120条の5第9項により読み替えて適用される同法126条第7項に規定する要件(所謂独立特許要件)については、本件訂正に係る本件特許の請求項1乃至6に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1乃至6に係る発明については課されない。

(3)まとめ
上記のとおり、令和4年7月26日に特許権者が行った本件訂正における本件訂正前の請求項1乃至6に係る訂正事項1乃至11は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするもの、であり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1乃至6について、訂正を認める。


3 訂正後の本件訂正特許発明
上記2で検討したとおり、請求項1乃至6に係る一群の請求項に係る訂正を認めることができるから、請求項1乃至6に係る特許についての発明は本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」乃至「本件訂正特許発明6」という。)
「【請求項1】
少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。
【請求項2】
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.23〜0.54の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷版。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が15:1〜150:20の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
【請求項5】
水系の現像液を使用してフレキソ印刷原版を現像して得られることを特徴とする請求項1,2,4のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
【請求項6】
請求項1,2,4,5のいずれかに記載のフレキソ印刷版を用いたことを特徴とするフレキソ印刷法。」

4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1)取消理由(決定の予告)の概要
請求項1乃至6に係る特許に対して、上記令和4年6月1日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は以下の理由を含み、その概要は、以下のとおりである。

取消理由(進歩性
請求項1乃至6に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2019/017474号公報(甲第1号証)に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1乃至6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)各甲号証
ア 甲第1号証
(ア)甲第1号証に記載した事項
本願の優先日前の2019年1月24日に利用可能となった国際公開第2019/017474号公報(以下「甲第1号証」という。)には、次の事項が記載されている。
「請求の範囲
[請求項1] 支持体(A)と、
モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンを含む熱可塑性エラストマー(B−1)、エチレン性不飽和化合物(B−2)、及び光重合開始剤(B−3)を含有する感光性樹脂組成物層(B)と、
赤外線によりアブレーション可能な非赤外線遮蔽層(C)と、
を、有する印刷版用感光性樹脂構成体であって、
前記非赤外線遮蔽層(C)が、分子内にカルボン酸基及びエステル結合基を有する重合体(C−2)、及び赤外線吸収剤(C−3)を含有し、
前記重合体(C−2)に含まれる全エステル結合基中、当該エステル結合基に結合している炭素がカルボン酸基に結合している炭素と隣り合っているエステル結合基の割合が、15%以上である、印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項2] 前記重合体(C−2)に含まれるエステル結合基が、飽和炭化水素鎖を有する、請求項1に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項3] 前記重合体(C−2)が、芳香族炭化水素基を含む、請求項1又は2に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項4] 前記重合体(C−2)に含まれる芳香族炭化水素基が、モノビニル置換芳香族炭化水素の重合体からなる、請求項3に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項5] 前記非赤外線遮蔽層(C)が、ポリアミド樹脂(C−1)を、さらに含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項6] 前記ポリアミド樹脂(C−1)と、前記赤外線吸収剤(C−3)との質量比が、
(C−1):(C−3)=1:0.15〜2である、請求項5に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項7] 前記ポリアミド樹脂(C−1)と、前記重合体(C−2)との質量比が、
(C−1):(C−2)=1:0.0001〜3である、請求項5又は6に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項8] 前記ポリアミド樹脂(C−1)と、前記重合体(C−2)との質量比が、
(C−1):(C−2)=1:0.001〜1である、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項9] 前記非赤外線遮蔽層(C)中、前記赤外線吸収剤(C−3)を、10〜80質量%含有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項10] 前記重合体(C−2)の数平均分子量が500以上である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項11] 前記非赤外線遮蔽層(C)と、前記感光性樹脂組成物層(B)との層間に、粒子層(D)を有し、
前記粒子層(D)は、細孔構造を有する粒子を含み、
前記細孔構造を有する粒子の比表面積が、350m2/g以上1000m2/g以下である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。
[請求項12] 前記非赤外線遮蔽層(C)と、前記感光性樹脂組成物層(B)との層間に、中間層(E)を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の印刷版用感光性樹脂構成体。」
「技術分野
[0001] 本発明は、印刷版用感光性樹脂構成体、及びその製造方法に関する。
背景技術
[0002] 印刷方式には、印刷版に三次元形状を施すことで印刷が可能になる方式と、化学的な特徴を付与することで印刷可能な方式が知られており、前者の代表例として凸版印刷、凹版印刷がある。
凸版印刷では印刷版の凸部にインキが付着されることで印刷が可能となり、一方、凹版印刷では印刷版の凹部にインキが付着されることで印刷が可能となる。
凸版印刷に用いられる印刷版、特に、凸版印刷方法の一種であるフレキソ印刷に使用される印刷版は、一般的に支持体としてのポリエステルフィルムの上に感光性樹脂組成物層が積層された感光性樹脂構成体から製版される。
この感光性樹脂構成体を用いて印刷版用感光性樹脂版を製版し、印刷版を得る方法としては、以下の方法が挙げられる。
まず、感光性樹脂構成体の支持体であるポリエステルフィルムを通して全面に紫外線露光を行い(バック露光)、薄い均一な硬化層を設ける。次いで、感光性樹脂組成物層上にネガフィルムを配置し、ネガフィルムを通して感光性樹脂組成物層に画像露光(レリーフ露光)を行い、ネガフィルムのパターンに応じて感光性樹脂組成物層を光硬化させる。その後、感光性樹脂組成物層における露光されていない部分(すなわち、硬化されていない部分)を現像溶液で洗浄し、所望の画像、すなわちレリーフ画像を形成し、印刷版用感光性樹脂版を得、続いて所定の仕上げ処理を行い、印刷版を得る。」
「[0018]〔印刷版用感光性樹脂構成体〕
本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体は、
支持体(A)と、
モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンを含む熱可塑性エラストマー(B−1)、エチレン性不飽和化合物(B−2)、及び光重合開始剤(B−3)を含有する感光性樹脂組成物層(B)と、
赤外線によりアブレーション可能な非赤外線遮蔽層(C)と、
を、有する印刷版用感光性樹脂構成体であって、
前記非赤外線遮蔽層(C)が、分子内にカルボン酸基及びエステル結合基を有する重合体(C−2)、及び赤外線吸収剤(C−3)を含有し、
前記重合体(C−2)に含まれる全エステル結合基中、当該エステル結合基に結合している炭素がカルボン酸基に結合している炭素と隣り合っているエステル結合基の割合が、15%以上である。
全エステル結合基のうち、カルボン酸基に結合している炭素とエステル結合基に結合している炭素とが隣り合っているエステル結合基の割合は、後述するように、13C−NMRを用いて測定することができる。
[0019](支持体(A))
支持体(A)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルフィルムが挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
支持体(A)の厚みについても特に限定されるものではないが、50〜300μmであるフィルムが挙げられる。
また、支持体(A)と後述する感光性樹脂組成物層(B)との間の接着力を高める目的で、支持体(A)上に接着剤層を設けてもよく、当該接着剤層としては、例えば、WO2004/104701号公報に記載の接着剤層が挙げられる。
[0020](感光性樹脂組成物層(B))
感光性樹脂組成物層(B)は、後述する熱可塑性エラストマー(B−1)、エチレン性不飽和化合物(B−2)、光重合開始剤(B−3)を含有し、必要に応じて補助添加成分をさらに含有してもよい。
[0021]<熱可塑性エラストマー(B−1)>
感光性樹脂組成物層(B)は、モノビニル置換芳香族炭化水素と共役ジエンを含む熱可塑性エラストマー(B−1)を含有する。
当該熱可塑性エラストマー(B−1)は、モノビニル置換芳香族炭化水素からなる重合体ブロックと、共役ジエンからなる重合体ブロックと、を有する熱可塑性エラストマー(B−1)であることが好ましい。
当該熱可塑性エラストマー(B−1)を構成するモノビニル置換芳香族炭化水素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1、1−ジフェニルスチレン、N、N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N、N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1、1−ジフェニルエチレン等が挙げられる。
特に感光性樹脂組成物層(B)を比較的低温で平滑に成型できる観点からスチレンが好ましい。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性エラストマー(B−1)を構成する共役ジエンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ブタジエン、イソプレン、2、3−ジメチル−1、3−ブタジエン、2−メチル−1、3−ペンタジエン、1、3−ヘキサジエン、4、5−ジエチル−1、3−オクタジエン、3―ブチル−1、3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体の耐久性の観点から、共役ジエンとしてはブタジエンが好ましい。」
「[0026]<エチレン性不飽和化合物(B−2)>
感光性樹脂組成物層(B)は、エチレン性不飽和化合物(B−2)を含有する。
エチレン性不飽和化合物(B−2)とは、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する化合物を言う。

[0027] 本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られる印刷版用感光性樹脂版や印刷版の機械強度の観点から、エチレン性不飽和化合物(B−2)としては、少なくとも1種類以上の(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、少なくとも1種類以上の2官能(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
エチレン性不飽和化合物(B−2)の数平均分子量(Mn)は、不揮発性確保の観点から100以上であることが好ましく、ポリマー等の他成分との相溶性の観点から1000未満であることが好ましく、200以上800以下であることがより好ましい。
[0028] 感光性樹脂組成物層(B)におけるエチレン性不飽和化合物(B−2)の含有量は、本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られる印刷版の耐刷性の観点から、感光性樹脂組成物層(B)の製造工程において、感光性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、2質量%〜30質量%とすることが好ましく、2質量%〜25質量%とすることがより好ましく、2質量%〜20質量%とすることがさらに好ましい。
[0029]<光重合開始剤(B−3)>
感光性樹脂組成物層(B)は、光重合開始剤(B−3)を含有する。
光重合開始剤(B−3)とは、光のエネルギーを吸収し、ラジカルを発生する化合物であり、崩壊型光重合開始剤、水素引抜き型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物等が挙げられる。
光重合開始剤(B−3)としては、各種有機カルボニル化合物や、特に芳香族カルボニル化合物が好適である。
感光性樹脂組成物層(B)における光重合開始剤(B−3)の含有量は、本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体を用いて製造した印刷版の耐刷性の観点から、感光性樹脂組成物層(B)の製造工程において、感光性樹脂組成物全量を100質量%としたとき、0.1〜10質量%の範囲とすることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲とすることがより好ましく、0.5〜5質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
[0030] 光重合開始剤(B−3)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾフェノン、4、4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3、3'、4、4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3、3'、4、4'−テトラメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2、4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ミヒラーケトン;ジエトキシアセトフェノン、2、2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、トリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2、4、6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2、4、4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1、7−ビスアクリジニルヘプタン;9−フェニルアクリジン;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等のアゾ化合物類が挙げられる。
これらは1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。」
「[0040] 感光性樹脂組成物層(B)には、必要に応じて所定の、液状ジエン、補助添加成分が含有されていてもよい。
[0041]<液状ジエン>
液状ジエンとは液状の炭素・炭素二重結合を有する化合物である。
ここで、本明細書中、「液状ジエン」の「液状」とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する性状を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する用語である。
液状ジエンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状ポリイソプレンの変性物、液状アクリルニトリル−ブタジエンの共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。
液状ジエンは、ジエン成分が50質量%以上の共重合体であるものとする。
また、液状ジエンの数平均分子量については、20℃において液状である限り、特に限定されないが、本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体を用いて得られる印刷版用感光性樹脂版や印刷版の機械強度、取扱性の観点から、好ましくは500以上60000以下、より好ましくは500以上50000以下、さらに好ましくは800以上50000以下である。」
「[0067]<赤外線吸収剤(C−3)>
前記非赤外線遮蔽層(C)は、赤外線吸収剤(C−3)を含有する。
赤外線吸収剤としては、通常750〜2000nmの範囲で強い吸収をもつ単体あるいは化合物が使用される。
赤外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、亜クロム酸銅、酸化クロム等の無機顔料や、ポリフタロシアニン化合物、シアニン色素、金属チオレート色素等の色素類等が挙げられる。
特にカーボンブラックは粒径が13〜85nmの広い範囲で使用が可能であり、粒径が小さいほど赤外線レーザーに対する感度も高くなる。
これらの赤外線吸収剤は、使用するレーザー光線で切除可能な感度を付与する範囲で添加される。一般的には、非赤外線遮蔽層(C)中、10〜80質量%の添加が効果的であり、20〜40質量%がより好ましく、25〜35質量%がさらに好ましい。
[0068] 特に非赤外線遮蔽層(C)にポリアミド樹脂(C−1)を含む場合、ポリアミド樹脂(C−1)と赤外線吸収剤(C−3)の質量比は、(C−1):(C−3)=1:0.15〜2であることが好ましく、1:0.3〜2であることがより好ましく、1:0.5〜2であることがさらに好ましい。
なお、ポリアミド樹脂(C−1)、分子内にカルボン酸基及びエステル結合基を有する重合体(C−2)、赤外線吸収剤(C−3)のそれぞれの質量については、硬化する前の印刷版から非赤外線遮断層(C)を剥離したのち、非赤外線遮蔽層(C)をテトラヒドロフラン等の溶剤に溶解させ、赤外線吸収剤(C−3)を濾別後、カラムクロマトグラフィーによってポリアミド樹脂(C−1)、分子内にカルボン酸基及びエステル結合基を有する重合体(C−2)を分離することによって、測定することができる。
[0069]<非赤外線遮蔽物質>
非赤外線遮蔽層(C)は、非赤外線遮蔽物質を含有することが好ましい。
非赤外線遮蔽物質としては、紫外光を反射又は吸収する物質が挙げられる。
紫外線吸収剤やカーボンブラック、グラファイト等はその好例であり、所要の光学濃度が達成できるように添加量を設定する。一般的には2.5以上、好ましくは3.0以上の光学濃度となるように添加することが好ましい。非赤外線遮蔽物質は赤外線吸収剤(C−3)と同一でも異なっていてもよい。」
「[0074](中間層(E))
さらに、本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体は、前記非赤外線遮蔽層(C)と、前記感光性樹脂組成物層(B)との層間に、中間層(E)を有する構成としてもよい。
[0075] 中間層(E)は印刷版の可撓性を損なわないよう、十分な柔軟性を有することが好ましく、中間層(E)に好適に用いられる材料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、シリコンゴム、ブチルゴム、及びイソプレンゴム等が挙げられる。これらのポリマーは、一種のみを単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
[0076] 中間層(E)は、印刷版用感光性樹脂構成体の取扱性の観点から、ポリアミド樹脂を含むことが好ましく、洗浄液への溶解性の観点から、ダイマー酸系熱可塑性ポリアミド又は水溶性ポリアミドであることが好ましい。
「水溶性ポリアミド」とは、水に溶解性を示すポリアミドを意味し、具体的には、水に対する溶解度が25℃で3質量%以上であることを意味する。」
「[0091]〔印刷版用感光性樹脂版、及び印刷版〕
本実施形態の印刷版用感光性樹脂構成体を用いて、印刷版用感光性樹脂版、及び印刷版を製造することができる。
以下に、その製版方法の一例を示す。
先ず、前記支持体(A)を通して露光を行って、感光性樹脂組成物層を光硬化させ、薄い均一な硬化層を設ける(バック露光)。
印刷用感光性樹脂構成体の非赤外線遮蔽層(C)にフィルムが貼り合わされている場合には、まずフィルムを剥離する。
その後、非赤外線遮蔽層(C)に赤外線をパターン照射して、感光性樹脂組成物層上にマスクを形成する。
好適な赤外線レーザーの例としては、ND/YAGレーザー(例えば、1064nm)又はダイオードレーザー(例えば、830nm)が挙げられる。
この赤外線レーザーアブレーション技術においては、適当なレーザーシステムが市販されており、例えば、ダイオードレーザーシステムCDI Spark(ESKO GRAPHICS社)を使用できる。
このレーザーシステムは、印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザーの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザー装置に直接送信される。
非赤外線遮蔽層(C)にパターン描画した後、感光性樹脂組成物層(B)に紫外線を全面照射する。
この照射ユニットは、支持体(A)側からの紫外線照射で用いたものと同様のユニットを使用できる。
感光性樹脂組成物層を光硬化させるため用いられる光源としては、以下に限定されるものではないが、例えば、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、太陽光等が挙げられる。
この全面露光後に、未露光部分を洗い出す現像処理を行う。
現像溶剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1、1、1−トリクロロエタン、テトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤;ヘプチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;さらに、これらにプロパノール、ブタノール、ペンタノールのアルコール類を混合したものが挙げられる。
現像溶液としては、水系現像液も使用することができ、例えば、水をアルコールの混合液、界面活性剤等が挙げられる。
水系洗浄液としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性の界面活性剤を一種又は二種類以上含有する洗浄液が挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、平均炭素数8〜16のアルキルを有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、平均炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が4〜10のジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルホン酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのエチレンオキサイドを附加したアルキルエーテル硫酸塩、及び平均炭素数10〜22の飽和または不飽和脂肪酸塩等が挙げられる。
前記カチオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキルアミンエチレンオキシド付加物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩、あるいはピリジウム塩等が挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール型の高級アルコールアルキレンオキシド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アルキレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキシド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキシド付加物、油脂のアルキレンオキシド付加物、及びポリプロピレングリコールアルキレンオキシド付加物、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールとソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル及びアルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムやラウリルジメチルベタイン等が挙げられる。
現像溶液中の界面活性剤の濃度については、特に限定されるものではないが、通常洗浄液全量に対して0.5〜10質量%の範囲が好ましい。
水性洗浄液には、上述した界面活性剤のほかに、必要に応じて、洗浄促進剤やpH調整剤等の洗浄助剤を配合してもよい。
未露光部の洗い出しは、ノズルからの噴射によって行ってもよく、またはブラシによるブラッシングによって行ってもよい。
現像処理後、リンス洗浄及び乾燥の工程を経て、後露光を行い、印刷版用感光性樹脂版が得られ、これに所定の処理を施し、印刷版が得られる。
実施例
[0092] 以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0093]〔実施例1〜11〕、〔比較例1〜5〕
下記のようにして感光性樹脂組成物を調製し、印刷版用感光性樹脂構成体を製造した。
まず、下記表1に示す材料組成に従い、これらをニーダー(株式会社パウレック、FM−MW−3型)にて140℃で60分間、混練し、感光性樹脂組成物を調製した。
下記表1に示す比率は、全て質量部を示している。
表1の成分は次の通りである。
ポリマーA:スチレン−ブタジエンのブロック共重合体である熱可塑性エラストマー「D−KX405」(クレイトンポリマージャパン、商品名)
液状ポリブタジエンA:数平均分子量6000、重量平均分子量/数平均分子量=1.15、1、2−ビニル結合量55%、38℃における粘度5.3Pa・sである液状ポリブタジエン
液状ポリブタジエンB:数平均分子量3200、重量平均分子量/数平均分子量=1.29、1、2−ビニル結合量90%、45℃における粘度25.0Pa・sの液状ポリブタジエン
液状ポリブタジエンC:数平均分子量4600、重量平均分子量/数平均分子量=3.79、1、2−ビニル結合量1%、40℃における粘度0.70Pa・sの液状ポリブタジエン
1、9−ノナンジオールジアクリレート
2、2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4―モルフォリンイル)−1−プロパノン
フェノール系安定剤:2、6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
[0094]
[表1]


[0095] 次に、下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を、下記のようにして製造した。
エチレングリコール93g、ネオペンチルグリコール374g、及びフタル酸382gを、空気雰囲気中、反応温度180℃、1.33×103Paの減圧下で6時間縮合反応させ、その後、4、4−ジフェニレンジイソシアネート125gを加え、更に80℃で5時間反応させ、樹脂を得た。
当該樹脂を10%水溶液とし、溶融押し出したポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、塗布後、二軸延伸することで、下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
得られた下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体に相当)の厚みは100μmであり、下引き層の厚みは0.05μmであった。
[0096] 次に、下記表2、表3に示す材料組成に従い、非赤外線遮蔽層を製造した。
表2、表3の成分は以下の通りである。
((C−1)ポリアミド樹脂)
ポリアミド樹脂A:熱可塑性ポリアミド樹脂である、「テクノメルト6900」(ヘンケルジャパン株式会社、商品名)
ポリアミド樹脂B:熱可塑性ポリアミド樹脂である、「テクノメルト6212」(ヘンケルジャパン株式会社、商品名)」
「[0102]((C−3)赤外線吸収剤)
カーボンブラック:粒子径30nmであるカーボンブラック「三菱カーボンブラック #30」(三菱ケミカル株式会社、商品名)
[0103] 表2、表3に示した質量部の各組成を全体で100gとし、トルエン560g、n−ブタノール140gの混合溶剤に超音波を利用して溶解させ、実施例1〜11、及び比較例1〜5の、非赤外線遮蔽層形成用の塗工液を作製した。
この塗工液を、100μmの厚みのカバーシートとなるポリエステルフィルム上に、乾燥後の塗布量が2.5g/m2となるようにナイフコーターを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥して、非赤外線遮蔽層を具備するフィルムを得た。
[0104] 次に、上述のようにして製造した感光性樹脂組成物、下引き層を有するポリエステルフィルム、及び非赤外線遮蔽層を有するフィルムを用いて、印刷版用感光性樹脂構成体を製造した。
前記支持体の下引き層側を、上述のようにして調製した感光性樹脂組成物に合わせ、また、非紫外線遮蔽層を具備するフィルムを非赤外線遮蔽層側が感光性樹脂組成物に面するようにし、前記感光性樹脂組成物層を、前記下引き層を有するポリエステルフィルムと、前記非赤外線遮蔽層を具備するフィルムとで挟み込み、全体の厚さが1.5mmになるように、加熱及び圧縮成型し、印刷版用感光性樹脂構成体を得た。
このときの熱プレスは130℃の条件で1.96×107Paの圧力をかけた。
1枚の印刷版用感光性樹脂構成体のサイズは10cm×15cmとした。
[0105]〔実施例12〕
〔実施例1〕で作製した非赤外線遮蔽層上に、以下の粒子層を形成した。
バインダーとしてTR2787(JSR株式会社製、商品名)を75質量部、細孔構造を持つ粒子としてシリカであるサイリシア430(富士シリシア社製、平均粒子径4.1μm、比表面積350g/m2)25質量部をトルエンに超音波を利用して溶解し、固形分濃度25%の均一な塗工液を調製した。
〔実施例1〕の非赤外線線遮蔽層上に乾燥後の厚さが50μmとなるようにナイフコーターを用いて前記塗工液を塗布し、80℃で4分間乾燥して、非赤外線遮断層上に粒子層を有する具備するフィルムを得た。
このフィルムを用い、粒子層が感光性樹脂組成物層と接するように、加熱成型した以外は、上述した〔実施例1〜11〕と同様にして、実施例12の印刷版用感光性樹脂構成体を作製した。 この実施例12の印刷版用感光性樹脂構成体に対して、〔実施例1〜11〕と同様に評価を行い、表2に示す結果を得た。
[0106]〔実施例13、14〕
〔実施例1〕で作製した非赤外線遮蔽層上に、以下の中間層を形成した。
表4に示した質量部の各組成を全体で100gとし、トルエン350g、n−ブタノール350gの混合溶剤に超音波を利用して溶解させ、実施例13及び14の中間層用の塗工液を作製した。
なお、ポリアミド樹脂Cとしては、以下のものを使用した。
ポリアミド樹脂C:熱可塑性ポリアミド樹脂である、「テクノメルト6812」(ヘンケルジャパン株式会社、商品名)
[0107] 〔実施例1〕の非赤外線遮蔽層上に乾燥後の厚さが5μmとなるようにナイフコーターを用いて前記中間層用塗工液を塗布し、90℃で2分間乾燥して、非赤外線遮蔽層上に中間層を有する具備するフィルムを得た。
このフィルムを用い、中間層が感光性樹脂組成物層と接するように、加熱成型した以外は、上述した〔実施例1〕と同様にして、実施例13、14の印刷版用感光性樹脂構成体を作製した。
この実施例13、14の印刷版用感光性樹脂構成体に対して、後述する(印刷版用感光性樹脂版の作製、及び評価)に示した方法で印刷版を得たのち、得られた印刷版に対して下記<微小ドットの形成性>に示す方法により評価を行った。
[0108]〔実施例15〜18〕
前記〔実施例1〕で作製した非赤外線遮蔽層上に、以下の中間層を形成した。
表4に示した質量部の各組成を全体で100gとし、水450g、エタノール450gの混合溶剤に超音波を利用して溶解させ、実施例15〜18の中間層用の塗工液を作製した。
なお、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性ポリウレタンとして、下記のものを使用した。
水溶性ポリアミド樹脂A:水溶性ポリアミド樹脂である、「AQナイロンP−70」(東レ株式会社、商品名)
水溶性ポリアミド樹脂B:水溶性ポリアミド樹脂である、「ファインレックス FR−700E」(鉛市社製、商品名)
水溶性ポリアミド樹脂C:水溶性ポリアミド樹脂である、「AQナイロンA−90」(東レ株式会社、商品名)
水溶性ポリウレタン樹脂A:水溶性ポリウレタン樹脂である、「ユリアーノW321」(荒川化学株式会社、商品名)
[0109] 前記〔実施例1〕の非赤外線遮蔽層上に乾燥後の厚さが3μmとなるようにナイフコーターを用いて前記中間層用の塗工液を塗布し、90℃で2分間乾燥して、非赤外線遮断層上に中間層を有する具備するフィルムを得た。
このフィルムを用い、中間層が感光性樹脂組成物層と接するように、加熱成型した以外は、上述した〔実施例1〕と同様にして、実施例15〜18の印刷版用感光性樹脂構成体を作製した。
この実施例15〜18の印刷版用感光性樹脂構成体に対して、〔実施例13、14〕と同様に評価を行い、表4に結果示した。
[0110]〔印刷版用感光性樹脂版の製造〕
上述した〔実施例1〜18〕、〔比較例1〜5〕の印刷版用感光性樹脂構成体において、非赤外線遮蔽層が感光性樹脂組成物層に転写するようにポリエステルフィルムのみを剥ぎ取り、非性外線遮蔽層を外側にして、「CDI−Spark」(Esko−Graphics社製、商品名、1064nmのYAGレーザー)上のドラムに装填した。
レーザーパワーを20Wとし、ドラム回転スピードを600rpmとし、印刷版用感光性樹脂構成体上の非赤外線遮蔽層にレーザー描画を行い、非赤外線遮蔽層の一部を切除し、150線(1インチあたりの網点が何個配置されるかを示す値)、1%〜5%(印刷の濃淡を表現するために使用する網点の面積率を表す値)のハイライトがあるテストパターンのレーザー描画を行った。
「AFP−1216E」露光機(旭化成社製、商品名)上で、下側紫外線ランプ(PHILIPS社製UVランプTL80W/10R、商品名)を用いて、まず下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム側から100mJ/cm2のバック露光を行った。
続いて、上側ランプ(PHILIPS社製UVランプTL80W/10R、商品名)にて非赤外線遮蔽層側から8000mJ/cm2の紫外線を照射した。
なお、露光強度はオーク製作所製のUVメーター「UV−MO2」機を用いて「UV−35−APRフィルター」にて測定した。
次いで、3−メトキシブチルアセテートを現像液として、「AFP−1500」現像機(旭化成社製、商品名)の回転するドラムに、上述したバック露光を行った側に両面テープを貼り付けて固定を行い、液温25℃で5分間現像を行い、60℃で2時間乾燥させた。
その後、後露光処理として、ALF−200UP(旭化成社製、商品名)を用いて254nmを中心波長に持つ殺菌灯(東芝社製、GL−30、商品名)を用いて、乾燥後の印刷版用感光性樹脂構成体の表面全体に2000mJ/cm2の露光を行い、印刷版用感光性樹脂版を得た。
ここでの殺菌灯による後露光量は「UV−MO2」機のUV−25フィルターを用いて測定した照度から算出した。」
「[0118]
[表2]

[0119]
[表3]

[0120]
[表4]



上記[0104]のとおりであるから、印刷版用感光性樹脂構成体は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)、感光性樹脂組成物、熱可塑性ポリアミド樹脂もしくは水溶性ポリアミド樹脂からなる中間層、非赤外線遮蔽層が順次積層されたものといえる。

(イ)甲1発明
そうすると、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が示されているものと認められる。
「ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)、感光性樹脂組成物、非赤外線遮蔽層、からなる印刷版用感光性樹脂構成体を露光、水系現像液で現像、乾燥して得た印刷版用感光性樹脂版であって、
感光性樹脂組成物は、ポリマーA:スチレン−ブタジエンのブロック共重合体である熱可塑性エラストマー「D−KX405」(クレイトンポリマージャパン、商品名)、1、9−ノナンジオールジアクリレート(分子量:296.4):7質量部、光重合開始剤(B−3)として2、2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン:2質量部及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4―モルフォリンイル)−1−プロパノン:1質量部からなり、
印刷版用感光性樹脂構成体は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)、感光性樹脂組成物、熱可塑性ポリアミド樹脂もしくは水溶性ポリアミド樹脂からなる中間層、非赤外線遮蔽層が順次積層されたものである、
フレキソ印刷に用いる印刷版用感光性樹脂版。」

イ−1 甲第2−1号証
本願の優先日前の2020年1月7日に頒布された「A Global Leader in Photopolymer Printing Plates & Equipment」MacDermid GRAPHICS SOLUTIONS『LUX ITPTM 60』(以下「甲第2−1号証」という。)には、次の事項が記載されている。


」(ShoreA硬度78,71)

イ−2 甲第2−2号証
本願の優先日前の2019年4月に頒布された『DuPontTM CyrelR EASY ESX』(以下「甲第2−2号証」という。)(上付きRは〇囲いRを意味する。以下同じ。)には、次の事項が記載されている。


」(ShoreA硬度74−76)

イ−3 甲第2−3号証
本願の優先日前の2019年4月に頒布された『DuPontTM CyrelR EASY ESE』(以下「甲第2−3号証」という。)には、次の事項が記載されている。


」(ShoreA硬度74−76)

イ−4 甲第2−4号証
本願の優先日前の2019年4月に頒布された『DuPontTM CyrelR EASY FAST EFE』(以下「甲第2−4号証」という。)には、次の事項が記載されている。


」(ShoreA硬度74−76)

イ−5 甲第2−5号証
本願の優先日前の2019年4月に頒布された『DuPontTM CyrelR EASY FAST EFX』(以下「甲第2−5号証」という。)には、次の事項が記載されている。


」(ShoreA硬度74−76)

ウ 甲第3号証
本願の優先日前の平成11年12月21日に頒布された特開平11−349628号公報(以下「甲第3号証」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0090】実施例1
水酸基を末端に有する液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製:Poly−bd R−45HT、数平均分子量2800)900部、アクリル酸74部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.3部および無水マレイン酸0.09部をn−ヘプタン900部に溶解した溶液を攪拌機付きフラスコに入れ、80℃まで昇温し還流を行った。酸価が14以下になった時点で反応を終了し、冷却後、n−ヘプタン346部にて希釈、加圧濾過器にて濾過後、酸価を10以下に保ちながら濃縮、濃度調製を行い、エチレン性不飽和化合物Iを得た。このエチレン性不飽和化合物Iは、数平均分子量7100、Mw/Mnが3.8、20℃における粘度が7500mPa/sであった。
【0091】実施例2
実施例1と同様の方法により、水酸基を末端に有する液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製:Poly−bd R45HT、数平均分子量2800)とアクリル酸を混合して、脱水化反応を行い、数平均分子量8000、Mw/Mnが4.3、20℃における粘度が9500mPa/sであるエチレン性不飽和化合物IIを得た。
【0092】実施例3
実施例1と同様の方法により、水酸基を末端に有する液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製:Poly−bd R−45HT、数平均分子量2800)とアクリル酸メチルを混合して、エステル交換反応を行い、数平均分子量(Mn)5700、Mw/Mn3.1、20℃における粘度が4100mPa/sであるエチレン性不飽和化合物IIIを得た。」
「【0101】<感光性樹脂組成物の調製>実施例1で得られたエチレン性不飽和化合物I27部、上記親水性ポリマーI10部、塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:エラスレン:301MA;ガラス転移温度:−30℃〜−25℃)46部、ポリブタジエン(日本合成ゴム(株)製:BRO2LL,ガラス転移温度:−102℃〜−75℃)14部、ベンジルジメチルケタール1部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール0.2部、メチルナフトキノン0.05部、2−エチルアントラキノン0.5部、グリセロールトリステアレート3部、(融点71℃)、トルエン100部、および水10部を、75℃にて加圧ニーダーで混練し、溶剤を除去して感光性樹脂組成物を得た。
【0102】実施例8
実施例7において、エチレン性不飽和化合物I27部のかわりにエチレン性不飽和化合物IIを27部用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。

【0104】実施例10
実施例7において、塩素化ポリエチレン46部、ポリブタジエン14部、エチレン性不飽和化合物I27部のかわりに、実施例1と同様の塩素化ポリエチレンを36部、ポリイソプレンゴム(クラレ製:IR−10)を14部、エチレン性不飽和化合物Iを21部、ステアリルメタアクリレートを6部、ジオクチルフタレートを10部用いたこと以外は、実施例7と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。
【0105】実施例11
実施例8において、エチレン性不飽和化合物II27部のかわりに、エチレン性不飽和化合物IIを21部、1,9−ノナンジオールメタアクリレートを6部用いたこと以外は、実施例8と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。

【0107】<感光性樹脂組成物の調製>実施例11において、親水性ポリマーI10部、エチレン性不飽和化合物II21部のかわりに、親水性ポリマーIIを10部、エチレン性不飽和化合物IIIを21部用いたこと以外は、実施例11と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。」

エ 甲第4号証
本願の優先日前の平成11年12月24日に頒布された特開平11−352687号公報(以下「甲第4号証」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0090】<感光性樹脂組成物の調製>上記親水性ポリマーIを10部、塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:エラスレン:301MA;ガラス転移温度:−30℃〜−25℃)46部、ポリブタジエン(日本合成ゴム(株)製:BRO2LL,ガラス転移温度:−102℃〜−75℃)14部、エチレン性不飽和化合物Iを27部、ベンジルジメチルケタール1部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール0.2部、メチルナフトキノン0.05部、2−エチルアントラキノン0.5部、トルエン100部、および水10部を、75℃にて加圧ニーダーで混練し、溶剤を除去して感光性樹脂組成物を得た。」
「【0097】実施例5
実施例1において、塩素化ポリエチレン46部の代わりに、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(日本合成ゴム(株)製:JSR N230SH)46部、エチレン性不飽和化合物I27部の代わりに、エチレン性不飽和化合物I22部と1,9−ノナンジオールジメタクリレート5部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。」

オ 甲第5号証
本願の優先日前の平成10年10月23日に頒布された特開平10−282661号公報(以下「甲第5号証」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0076】<エチレン性不飽和化合物Iの調製>水酸基を末端に有する液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製:Poly−bd R−45HT、数平均分子量2800)とアクリル酸を混合して、脱水化反応を行い、数平均分子量7100、Mw/Mnが3.8、20℃における粘度が7500センチポイズであるエチレン性不飽和化合物Iを得た。
【0077】<感光性樹脂組成物の調製>上記親水性ポリマーIを10部、塩素化ポリエチレン(昭和電工(株)製:エラスレン:301MA;ガラス転移温度:−30℃〜−25℃)46部、ポリブタジエン(日本合成ゴム(株)製:BRO2LL,ガラス転移温度:−102℃〜−75℃)14部、エチレン性不飽和化合物Iを27部、ベンジルジメチルケタール1部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール0.2部、メチルナフトキノン0.05部、2−エチルアントラキノン0.5部、トルエン100部、および水10部を、75℃にて加圧ニーダーで混練し、溶剤を除去して感光性樹脂組成物を得た。
実施例2
<エチレン性不飽和化合物IIの調製>水酸基末端液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製:Poly−bd R45HT、数平均分子量2800)とアクリル酸を混合して、脱水化反応を行い、数平均分子量8000、Mw/Mnが4.3、20℃における粘度が9500センチポイズであるエチレン性不飽和化合物IIを得た。

【0079】実施例3
実施例1において、塩素化ポリエチレンのかわりに、ニトリルブタジエンゴム(日本合成ゴム(株)製:JSR222SH)46部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。
【0080】実施例4
実施例1において、塩素化ポリエチレン、ポリブタジエン、エチレン性不飽和化合物Iのかわりに、実施例1と同様の塩素化ポリエチレン36部、ポリイソプレンゴム(クラレ製:IR−10)14部、エチレン性不飽和化合物Iを21部、ステアリルメタアクリレート6部、ジオクチルフタレート10部を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂組成物を得た。」
「【0083】<エチレン性不飽和化合物IIIの調製>水酸基を末端に有する液状ポリブタジエン(出光石油化学(株)製:Poly−bd R−45HT、数平均分子量2800)とアクリル酸メチルを混合して、エステル交換反応を行い、数平均分子量(Mn)5700、Mw/Mn3.1、20℃における粘度が4100センチポイズであるエチレン性不飽和化合物IIIを得た。」

カ 甲第6号証
本願の優先日前の平成30年5月10日に頒布された特開2018−72456号公報(以下「甲第6号証」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0053】
(感光性樹脂組成物の作製)
引き続いて、イソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物を付加させたポリアミド55質量部にトリメチロールプロパントリグリシジルエステルのアクリル酸付加物40.0質量部、乳酸4質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.1質量部、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン0.02質量部およびベンジルメチルケタール1.0質量部を添加して30分間攪拌した。次いで、徐々に昇温してメタノールを留出させ、釜内の温度が110℃となるまで濃縮し、流動性のある粘稠なアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドを含有する感光性樹脂組成物を得た。」

(3)当審の判断
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
そこで、本件訂正特許発明1と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)」、「感光性樹脂組成物」、「非赤外線遮蔽層」、「印刷版用感光性樹脂構成体」、「印刷版用感光性樹脂版」、「ポリマーA:スチレン−ブタジエンのブロック共重合体である熱可塑性エラストマー「D−KX405」(クレイトンポリマージャパン、商品名)」、「分子量:296.4の1、9−ノナンジオールジアクリレート:7質量部」、「光重合開始剤(B−3)として2、2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン:2質量部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4―モルフォリンイル)−1−プロパノン:1質量部」及び「熱可塑性ポリアミド樹脂もしくは水溶性ポリアミド樹脂からなる中間層」は、それぞれ、本件訂正特許発明1の「支持体(A)」、「感光性樹脂層(B)」、「感熱マスク層(C)」、「フレキソ印刷原版」、「フレキソ印刷版」、「(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー」、「『数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%』である『(b)エチレン性不飽和化合物』」、「(c)光重合開始剤が2.5〜7質量%」及び「酸素バリヤ層(D)」に相当する。
甲1発明の「印刷版用感光性樹脂構成体」は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)、感光性樹脂組成物、熱可塑性ポリアミド樹脂もしくは水溶性ポリアミド樹脂からなる中間層、非赤外線遮蔽層が順次積層されたものであるから、本件訂正特許発明1の「フレキソ印刷原版」と甲1発明の「印刷版用感光性樹脂構成体」とは、「支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版」である点で一致する。

そうすると、本件訂正特許発明1と、甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、網点の複合弾性率が35〜80MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が5〜15MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。」

[相違点1]
「(b)エチレン性不飽和化合物」が、本件訂正特許発明1は、「数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%」であるのに対し、甲1発明は、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)を含まない点。

[相違点2]
本件訂正特許発明1は、「網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaである」のに対し、甲1発明は、網点及びベタ部分の複合弾性率が不明な点。

(イ)判断
a 相違点1についての判断
そこで、上記相違点1について検討する。
甲1発明は、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)のみを含むものであるから、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)を併用することは記載も示唆もされていない。
また、特許異議申立人が提示した他の甲号証を見ても、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)と共に、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)を併用することは記載も示唆もされてない。
してみると、相違点1に係る本件訂正特許発明1は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

b 相違点2についての判断
特許異議申立人が提示した他の甲号証を見ても、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaであるフレキソ印刷版は記載も示唆もされてない。
してみると、相違点2に係る本件訂正特許発明1は、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、上記相違点1及び相違点2において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明から、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件訂正特許発明2、4、5及び6について
本件訂正特許発明2、4、5及び6は、本件訂正特許発明1を引用し、さらに、限定を付加したものであるから、上記アの検討のとおり、甲第1号証に記載された発明から、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由及び令和4年2月8日付けの取消理由通知の取消理由について
(1)特許異議申立理由(特許法第29条第1項第3号)(以下「申立理由」という。)の概要
請求項1、2及び6に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)令和4年2月8日付けの取消理由通知の取消理由
ア 取消理由1(特許法第29条第1項第3号
請求項5に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

イ 取消理由3(特許法第36条第6項第1号
請求項1乃至6に係る特許は、下記理由で、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(理由)本件特許明細書等には、
「支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が8〜14MPaであり、
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.23〜0.54の範囲にあり、
(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20、000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であり、
(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が15:1〜150:20の範囲にある、
フレキソ印刷版。」
なる実施例のみが記載されている。
しかし、本件特許明細書等には、
請求項1に係る発明の発明特定事項である「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が7〜9質量%であること、網点の複合弾性率が70〜80MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が5〜8もしくは14〜15MPaである」こと、
請求項1を引用する請求項2に係る発明の発明特定事項である「感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.20〜0.23、もしくは0.54〜0.55の範囲にあ」ること、
請求項1又は2を引用する請求項3に係る発明の発明特定事項である「(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が5〜10もしくは20〜25質量%であ」ること、
請求項1〜3を引用する請求項4に係る発明の発明特定事項である「(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が99:1〜15:1もしくは80:20〜150:20の範囲にある」フレキソ印刷板が、上記本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決することは記載されていない。
そうすると、本件訂正特許発明1乃至4及び本件訂正特許発明1乃至4を直接的又は間接的に引用する本件訂正特許発明5及び6は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(3)当審の判断
ア 申立理由及び取消理由1について
上記「4 (3)」のとおり、本件訂正特許発明1、2、5及び6は、甲第1号証に記載された発明から、当業者が容易に発明できたものとはいえないのであるから、本件訂正特許発明1、2、5及び6は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。
そうすると、本件訂正特許発明1、2、5及び6は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、申立理由及び取消理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1、2、5及び6に係る特許を取り消すことはできない。

イ 取消理由2について
(ア)令和4年7月26日に提出された訂正請求により訂正された請求項3に係る発明は削除されたことから、当該請求項3に係る発明に対する取消理由2はその対象が消滅したから、当該請求項3に係る発明に対する取消理由2は解消した。

(イ)本件訂正により、「光重合開始剤の含有量」について、「2.5〜7質量%」と限定され、「(b)エチレン性不飽和化合物」について、「(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、」と限定され、「網点の複合弾性率」について、「35〜70MPa」と限定され、「ベタ部分の複合弾性率」について、「9〜14MPa」と限定された。
そうすると、本件訂正特許発明1、2、4乃至6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないとはいえないから、取消理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1、2、4乃至6に係る特許を取り消すことはできない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4乃至6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4乃至6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3は、本件訂正請求により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しなくなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】フレキソ印刷版
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りを両立させることができるフレキソ印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、版材の凸部にインキを乗せ、版材を基材へ押し当てることでインキを版材から基材へ転写させる印刷方式である。フレキソ印刷に用いる版材は比較的柔軟であり、種々の形状に追従可能であることから、幅広い基材への印刷が可能である。基材としては、包装フィルムやラベル紙、飲料用カートン、紙器、封筒、ダンボール等が挙げられ、なかでも表面の粗い基材には専らフレキソ印刷が用いられている。また、フレキソ印刷は、VOC排出量が少ない水性やアルコール性インキを用いることができ、環境適応性が高い印刷方式である。これらの基材適応性や環境適応性といった利点により、グラビア印刷やオフセット印刷からフレキソ印刷への移行が進んでいる。
【0003】
しかし、フレキソ印刷は比較的柔軟な版材を基材へ押し当てて印刷するため、押し当てた際に版材が変形を起こし、版材のドットサイズよりも印刷されるドットが太る現象(ドットゲイン)が起きる。このドットゲインは、網点が微小になるほど、押し圧による版ドットの変形が大きくなり、顕著に発生する。版材が硬質であるグラビア印刷やオフセット印刷に比べ、フレキソ印刷では明らかに大きなドットゲインが起きる。押し圧を下げることで微小網点のドットゲインを低減させることができるが、この場合、ベタ部分のインク転写が不十分となり、ベタ部分にカスレなどの著しい品質不良が発生する。
【0004】
従来、ドットゲインを低減させる方法として、網点のダイナミック硬さを高める方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1は、感光性樹脂層に多官能架橋モノマーを配合し、架橋密度を高めることで網点のダイナミック硬さを向上させている。しかし、このようにして架橋密度を高めた場合、版材全体が硬質化し、ベタ部分のインク乗りが不十分となる問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、網点のダイナミック硬さとベタ部分のダイナミック硬さの両立を図った方法が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2では、感光性樹脂層に用いる架橋剤の化学構造に着眼し、2個以上のメタクリレート基もしくはアクリレート基を持ちメタクリレート基が50%以上である架橋剤を用いることが提案されている。しかし、この方法では、網点/ベタ部分のダイナミック硬度比は0.6〜1.0の範囲であり、つまりベタ部分は網点部分よりも硬くなっており、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りの両方を達成できるものにはなっていない。
【0006】
この他に、網点表面と内部のダイナミック硬度の両立を図った方法が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3は、感光性樹脂層に1,2−ブタジエン骨格を有する架橋基を持たない共役ジエンオリゴマーを配合することを特徴とし、架橋基を持たない材料を使うことで内部のダイナミック硬さを低下させ、版材の装着性を改善させている。しかし、この方法では、内部のダイナミック硬さは低下できてもベタ部分のダイナミック硬さを低下させることはできず、ベタ部分のインク乗りが不十分であり、また架橋基を持たない材料を配合することで微小網点の硬さが低下し、微小網点のドットゲインが起きる問題がある。
【0007】
一方、一般的なフレキソ印刷版の例示として、特許文献4が挙げられる。特許文献4のフレキソ印刷版の感光性樹脂層は、(A)水分散ラテックスから得られる疎水性重合体、(B)親水性重合体、(C)光重合性不飽和化合物、(D)光重合開始剤からなり、(C)光重合性不飽和化合物に(C−1)水酸基非含有光重合性オリゴマー、(C−2)水酸基含有光重合性モノマー、(C−3)水酸基非含有光重合性モノマーを用いることを特徴とする。特許文献4の実施例のフレキソ印刷版は、印刷カスレや耐刷性に改善があるものの、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りを両立させることはできていない。
【0008】
従って、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りを両立させることができるフレキソ印刷版が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−80743号公報
【特許文献2】特開2000−221663号公報
【特許文献3】特開2002−62639号公報
【特許文献4】特許第607962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りの両方を達成することができるフレキソ印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、印刷時に版にかかる圧力は、ベタ部分より網点の方が大きくなるため、網点の方がベタ部分より硬いことが望ましいことを見出した。また、硬さを評価するための具体的なパラメータについても検討を進め、従来技術で採用されているダイナミック硬さでは、測定精度が一般的に低く、弾性変形も考慮することができないこと、一方、複合弾性率を採用すると、これらの問題は生じないことを見出した。そして、網点の複合弾性率を特定の値になるように高くし、且つベタ部分の複合弾性率を特定の値になるよう低くすることが、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りの両方を達成するために必要であることを見出した。さらに、そのためには(a)感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物中の光重合開始剤を従来実施されていたより多量に配合し、感光性樹脂組成物中のエチレン性不飽和化合物として、低分子量のエチレン性不飽和化合物を一定量含有させ、且つ光重合開始剤と低分子量のエチレン性不飽和化合物の質量比率を従来より高くすること、(b)感光性樹脂組成物中のエチレン性不飽和化合物として、低分子量のものに加えて高分子量のものも配合すること、(c)光重合性開始剤を特定の2種類を含めて用いること、(d)感光性樹脂層とマスク層の間に酸素バリヤ層を設けることなどの手段により本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)の構成を有するものである。
(1)少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。
(2)感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.23〜0.54の範囲にあることを特徴とする(1)に記載のフレキソ印刷版。
(3)(削除)
(4)(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が15:1〜150:20の範囲にあることを特徴とする(1)〜(2)のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
(5)水系の現像液を使用してフレキソ印刷原版を現像して得られることを特徴とする(1),(2),(4)のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
(6)(1),(2),(4),(5)のいずれかに記載のフレキソ印刷版を用いたことを特徴とするフレキソ印刷法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキソ印刷版は、網点の複合弾性率を特定の値になるように高くしているため、微小網点のドットゲインを低減することができ、しかもベタ部分の複合弾性率を特定の値になるように低くしているため、ベタ部分のインク乗りに優れる効果を有しており、結果として、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフレキソ印刷版は、少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られる印刷版であり、具体的には、かかるフレキソ印刷原版を露光して現像することによって得られる印刷版であり、網点の複合弾性率を特定の値になるように高くし、且つベタ部分の複合弾性率を特定の値になるように低くしたことを特徴とする。このように網点とベタ部分の複合弾性率を構成することにより、微小網点のドットゲインの防止とベタ部分における十分なインク乗りの両方を達成することができる。
【0015】
フレキソ印刷原版に使用される支持体(A)は、可撓性であるが、寸法安定性に優れた材料が好ましく、例えばスチール、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属製支持体、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、またはポリカーボネートフィルムなどの熱可塑性樹脂製支持体を使用することができる。これらの中でも、寸法安定性に優れ、充分に高い粘弾性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から、50〜350μm、好ましくは100〜250μmが望ましい。また、必要により、支持体(A)と感光性樹脂層(B)との接着性を向上させるために、それらの間に接着剤を設けても良い。
【0016】
フレキソ印刷原版に使用される感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物は、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、さらに必要により可塑剤、親水性化合物、紫外線吸収剤、表面張力調整剤、熱重合防止剤、染料、顔料、香料、又は酸化防止剤などの添加剤を含むものである。特に、本発明では、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物において(b)エチレン性不飽和化合物の組成を工夫したこと、そして(c)光重合開始剤を従来の実際の使用量より多い質量割合で使用することを特徴とする。
【0017】
(a)共役ジエンを重合して得られるポリマーとしては、印刷原版に使用される従来公知の合成高分子化合物を使用することができる。具体的には、共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体、又は共役ジエン系炭化水素とモノオレフィン系不飽和化合物とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。例えば、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン−スチレン共重合体等が挙げられる。これらの中でもフレキソ印刷版としての特性、すなわち版面の反発弾性、強伸度物性、樹脂版硬度、及び未露光時の形態安定性、または入手性等の観点から、ブタジエン重合体が好ましく用いられる。これらのポリマーは1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物中の(a)成分の割合は、40〜70質量%の範囲であることが好ましい。
【0018】
(b)エチレン性不飽和化合物としては、印刷原版に使用される従来公知のものを使用することができるが、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(以下、単に低分子量の(メタ)アクリレート化合物とも言う)(i)を含むことが好ましく、さらに、それに加えて数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(以下、単に高分子量の(メタ)アクリレート化合物とも言う)(ii)を含むことが好ましい。ここで、低分子量の(メタ)アクリレート化合物は光重合開始剤により架橋硬化して密な架橋ネットワークを形成するものであり、高分子量の(メタ)アクリレート化合物は光重合開始剤により架橋硬化してゆるやかな架橋ネットワークを形成するものである。前者は、数平均分子量200以上500以下がさらに好ましく、後者は、数平均分子量2000以上10000以下がさらに好ましい。上記のように低分子量の(メタ)アクリレート化合物だけでなく、高分子量の(メタ)アクリレート化合物を配合させることで、(c)光重合開始剤を従来より多量に配合した場合でも独立点の再現性や、印刷時の耐久性が損なわれない効果を有する。これは、高分子量(メタ)アクリレート化合物の一定割合の含有により版の強靭性が高まるためと考えられる。感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物中の(b)成分の割合は、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
感光性樹脂組成物中の上記の高分子量の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、5〜25質量%が好ましく、更に好ましくは8〜20質量%である。この含有量が上記範囲未満では、(c)光重合開始剤を多量に配合したときに耐久性が低下しやすく、上記範囲を越えると、ベタ部分の複合弾性率が高くなりやすい。また、感光性樹脂組成物中の上記の低分子量の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、5〜16質量%が好ましく、更に好ましくは7〜13質量%である。低分子量(メタ)アクリレート化合物を上記の範囲で含有させることで、網点の複合弾性率の選択的な向上効果が大きくなるが、含有量が上記範囲未満では、網点の複合弾性率の選択的な向上効果が不十分であり、上記範囲を越えると、ベタ部分の複合弾性率が高くなりやすい。
【0020】
低分子量の(メタ)アクリレート化合物としては、数平均分子量が100以上600以下の範囲内であれば特に制限されるものでなく、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、ノナン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチル,2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ECH変性アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の単官能モノマーが挙げられる。また、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチルプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の多官能モノマー等も挙げられる。これらの化合物は1種のみを単独で使用してもよく、目的とする樹脂物性を持たせるために2種以上併用してもよい。
【0021】
高分子量の(メタ)アクリレート化合物としては、数平均分子量が600超20000以下の範囲内であれば特に制限されるものでなく、例えば、ブタジエンオリゴマーやイソプレンオリゴマーに(メタ)アクリレート基を付与したものや、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの化合物は1種のみを単独で使用してもよく、目的とする樹脂物性を持たせるために2種以上併用してもよい。
【0022】
(c)光重合開始剤の質量と低分子量の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率[(光重合開始剤の質量)/(低分子量の(メタ)アクリレート化合物の質量)]は、0.20〜0.55であることが好ましい。より好ましくは0.22〜0.50、更に好ましくは0.25〜0.45である。このような比率とすることにより、網点の複合弾性率を十分に満足することができる。この比率が上記範囲未満では、光重合開始剤が少なすぎて、網点の複合弾性率の選択的な向上効果が小さくなり、上記範囲を越えると、(メタ)アクリレートに対して光重合開始剤が多すぎて、架橋反応する(メタ)アクリレート量が不十分となるおそれがあり、この場合も網点の複合弾性率の選択的な向上効果が小さくなりやすい。
【0023】
(c)光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジイソプロピルケタール、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−アリルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0024】
(c)光重合開始剤は、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類からなる化合物を含むことが好ましく、さらにベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が99:1〜80:20、さらには97:3〜85:15の範囲にあることが好ましい。光重合開始剤は固有の光吸収スペクトルを持つことから、2種類の光重合開始剤を併用することで、後述する後露光、及び殺菌灯による露光の光エネルギーを無駄なく使用できる。特に、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の光重合開始剤を併用することにより、網点の複合弾性率をさらに選択的に向上させることができる。ベンジルアルキルケタール系としては、ベンジルジメチルケタールが好ましく、ベンゾフェノン系としては、ベンゾフェノンが好ましい。特にベンゾフェノンは、主露光で用いるランプ(ピーク波長370nm)に対しては光吸収をもたず、殺菌灯のランプ(ピーク波長250nm)に対して光吸収を持つため、主露光でベタ部分の複合弾性率を高めることなく、殺菌灯による露光でのみ網点の複合弾性率を選択的に高めることができる。
【0025】
本発明では、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量は、好ましくは2〜9質量%、より好ましくは2.5〜7.5質量%、さらに好ましくは3〜7質量%である。このように光重合開始剤の含有量を従来の使用量より多量に配合することにより、ベタ部分の複合弾性率を変えずに、網点の複合弾性率を選択的に高めることに寄与することができる。従来は、光重合開始剤の含有量を多くすると、反応後の光重合開始剤の光吸収により版の厚み方向の光到達が遮られ、独立点の再現性が低下する問題や、印刷時の耐久性が低下する問題が起きると考えられていた。そのため、従来は、感光性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量としては、通常、最大でも1質量%程度しか実使用では採用されていなかった。これに対して、本発明では、高分子量の(メタ)アクリレート化合物を感光性樹脂組成物中に一定割合で含有させることによって、版の強靱性を高めることができ、光重合開始剤を多量に配合した場合の上述の従来の欠点(独立点の再現性の低下や、印刷時の耐久性の低下)を克服したうえで、光重合開始剤の含有量の増加による利点(網点の複合弾性率の選択的な向上)を享受することが可能となった。
【0026】
フレキソ印刷原版に使用される感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物は、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤の他に、必要により可塑剤、親水性化合物、紫外線吸収剤、表面張力調整剤、熱重合防止剤、染料、顔料、香料、又は酸化防止剤などの添加剤を含むものである。
【0027】
可塑剤は、感光性樹脂層(B)に柔軟性を付与するものであり、可塑剤としては、液状ゴム、オイル、ポリエステル、リン酸系化合物などを挙げることができる。液状ゴムとしては、例えば液状のポリブタジエン、液状のポリイソプレン、あるいは、これらに水酸基やカルボキシル基を付与したものなどを挙げることができる。オイルとしては、パラフィン、ナフテン、アロマなどを挙げることができる。ポリエステルとしては、アジピン酸系ポリエステルなどを挙げることができる。リン酸系化合物としては、リン酸エステルなどを挙げることができる。この中でも、共役ジエンを重合して得られるポリマーとの相溶性の観点より液状のポリブタジエン、水酸基やカルボキシル基を付与した液状ポリブタジエンが好ましい。水系の現像液で現像する場合は、水酸基やカルボキシル基を付与した液状ポリブタジエンが特に好ましい。感光性樹脂組成物中の可塑剤の含有量は5〜15質量%であることが好ましい。
【0028】
親水性化合物は、感光性樹脂層(B)の水系現像液での現像性を高めるものである。親水性化合物としては、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸、スルホン酸塩、水酸基、アミノ基、リン酸基、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの親水基を有するアクリル重合体、ウレタン重合体、ポリアミド重合体、ポリエステル重合体が挙げられる。また、公知の界面活性剤も使用することができる。この中でも、水系現像液での現像性の観点よりカルボン酸塩を有するウレタン重合体が好ましい。感光性樹脂組成物中の親水性化合物の含有量は1〜15質量%であることが好ましい。
【0029】
表面張力調整剤は、印刷版の表面張力を調整するものであり、印刷版の表面張力を調整することで、インク転移性や印刷版へのインク詰まりを調整することができる。表面張力調整剤としては、パラフィンオイル、長鎖アルキル化合物、界面活性剤、脂肪酸アミド、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、フッ素化合物、変性フッ素化合物などが挙げられる。感光性樹脂組成物中の表面張力調整剤の含有量は0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0030】
紫外線吸収剤は、感光性樹脂層(B)の露光ラチチュードを高めるものであり、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系、金属錯塩系、ヒンダートアミン系、アントラキノン系、アゾ系、クマリン系、フラン系の化合物が挙げられる。この中でも、入手性や露光ラチチュードの観点よりベンゾトリアゾール系が好ましい。感光性樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は0.005〜0.1質量%であることが好ましい。
【0031】
通常、フレキソ印刷原版からフレキソ印刷版を製造する際には、裏露光、主露光、後露光、及び殺菌灯での露光という四種類の露光が行なわれる。裏露光は、支持体側から全面に光照射し、印刷版にフロア部分を形成させるためのものである。主露光は、マスクを介してフレキソ印刷原版を像様に光照射し、光照射された部分の感光性樹脂層中の不飽和化合物を架橋硬化させて像となる部分を形成させるためのものである。後露光は、主露光後の版を現像して網点部分の凸やベタ部分が形成された後の版を全面光照射するものであり、主露光での架橋硬化を補完するとともに、網点部分の凸の側面を架橋硬化させるためのものである。殺菌灯による露光は、版の表面粘着性を除去するために行われるものであるが、後露光と同様に網点の側面を架橋硬化させる役割も一部有する。なお、通常、主露光及び後露光はUVAを使用して行なわれるのに対して、殺菌灯による露光はUVCを使用して行なわれる。
【0032】
このような後露光及び殺菌灯での露光による網点の側面の硬化は、従来のものでもある程度は生じている。ただし、後露光及び殺菌灯での露光は通常、大気下で行なうため、大気中の酸素による重合阻害が起きる。このため、従来は、後露光及び殺菌灯での露光による網点の側面の硬化の程度は、あまり大きくなかった。これに対して、本発明では、従来より多量の光重合開始剤を配合することによって、酸素による重合阻害の影響を十分抑制して、網点の側面を十分に硬化させることができ、網点の複合弾性率を有意に向上させることができる。なお、ベタ部分には側面がないため、ベタ部分の複合弾性率は後露光及び殺菌灯による露光の前後で大きく変化しない。本発明では、網点がベタ部分よりも複合弾性率が高くなっているが、その理由は、網点の側面の硬化を十分なものにしたため、側面により網点の変形が抑えられて網点がベタ部分よりも複合弾性率が高くなったものと推測される。
【0033】
光重合開始剤の含有量が上記の好ましい範囲未満では、後露光及び殺菌灯による露光での網点の複合弾性率向上効果が少なく、網点複合弾性率が本発明で規定する範囲より低く、微小網点でのドットゲインが起きる傾向がある。一方、光重合開始剤の含有量が上記の好ましい範囲を越えると、主露光時の硬化が進んでベタ部分の複合弾性率が高くなりすぎ、ベタ部分のインク乗りが劣る傾向がある。
【0034】
フレキソ印刷原版に使用される感熱マスク層(C)は、印刷原版に使用されるものを使用することができるが、例えば赤外線レーザーを吸収して熱に変換する機能と紫外光を遮断する機能を有する材料であるカーボンブラックと、その分散バインダーと、被膜形成可能なバインダーポリマーとから構成されるものであることが好ましい。分散バインダーと被膜形成可能なバインダーポリマーとは、兼用することもできる。また、これら以外の任意成分として、顔料分散剤、フィラー、界面活性剤又は塗布助剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0035】
本発明のフレキソ印刷原版に使用される感熱マスク層(C)は、水現像性であることが好ましい。具体的な感熱マスク層(C)としては、極性基含有ポリアミドとブチラール樹脂とを組合せた感熱マスク層(特許第4200510号)、感光性樹脂層中のポリマーと同じ構造を持つポリマーとアクリル樹脂とを含有する感熱マスク層(特許第5710961号)、アニオン性ポリマーと側鎖にエステル結合を有するケン化度が0%以上90%以下のポリマーとを含有する感熱マスク層(特許第5525074号)などが挙げられる。
【0036】
本発明のフレキソ印刷原版は、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)との間に酸素バリヤ層(D)を設けることが好ましい。酸素バリヤ層(D)を設けることにより、主露光時の酸素重合阻害が抑制され、網点部、ベタ部分とも十分な硬化反応が起こる。これにより、網点部は印刷に適したフラットトップが形成される。フラットトップとなることで微小網点の印刷ドットゲインが改善される。また、ベタ部分は表面が平滑になり、ベタ部分のインク乗りが改善する。バリヤ層中のバインダーポリマーとしては、ポリビニルアルコール、部分鹸化酢酸ビニル、アルキルセルロース、セルロース系ポリマー、ポリアミドが挙げられる。これらのポリマーは、一種類の使用に限定されず、二種類以上のポリマーを組み合わせて使用することもできる。酸素バリヤ性の点で好ましいバインダーポリマーとしては、ポリビニルアルコール、部分鹸化酢酸ビニル、ポリアミドである。酸素バリヤ性が好ましい範囲にあるバインダーポリマーを選択することで画像再現性を好適に制御することができる。
【0037】
バリヤ層の層厚としては、0.2μm〜3.0μmが好ましく、さらに好ましくは0.2μm〜1.5μmの範囲である。層厚が上記範囲未満になると、酸素バリヤ性が不十分であり、レリーフの版面に荒れが生じるおそれがある。上記範囲を越えると、細線再現不良が起こるおそれがある。
【0038】
本発明のフレキソ印刷原版を製造する方法は特に限定されないが、一般的には以下のようにして製造される。 まず、感熱マスク層(C)のカーボンブラック以外のバインダー等の成分を適当な溶媒に溶解させ、そこにカーボンブラックを分散させて分散液を作製する。次に、このような分散液を感熱マスク層用支持体(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布して、溶媒を蒸発させる。その後、酸素バリヤ層(D)成分を上塗りし、一方の積層体を作成する。さらに、これとは別に、支持体(A)上に塗工により感光性樹脂層(B)を形成し、他方の積層体を作成する。このようにして得られた二つの積層体を、圧力及び/又は加熱下に、感光性樹脂層(B)が酸素バリヤ層(D)に隣接するように積層する。なお、感熱マスク層用支持体は、印刷原版の完成後はその表面の保護フィルムとして機能する。
【0039】
上記のように製造したフレキソ印刷原版からフレキソ印刷版を製造する方法としては、保護フィルムが存在する場合には、まず保護フィルムをフレキソ印刷原版から除去する。その後、感熱マスク層(C)をIRレーザにより画像様に照射して、感光性樹脂層(B)上にマスクを形成する。好適なIRレーザの例としては、ND/YAGレーザ(1064nm)又はダイオードレーザ(例、830nm)を挙げることができる。コンピュータ製版技術に好適なレーザシステムは、市販されており、例えばCDI(エスコ・グラフィックス社)を使用することができる。このレーザシステムは、印刷原版を保持する回転円筒ドラム、IRレーザの照射装置、及びレイアウトコンピュータを含み、画像情報は、レイアウトコンピュータからレーザ装置に直接移される。
【0040】
画像情報を感熱マスク層(C)に書き込んだ後、フレキソ印刷原版に像様のマスクを介して活性光線を全面照射する(主露光)。これは版をレーザシリンダに取り付けた状態で行うことも可能であるが、版をレーザ装置から除去し、慣用の平板な照射ユニットで照射する方が規格外の版サイズに対応可能な点で有利であり、一般的である。活性光線としては、330〜380nmの波長に発光ピークを有する紫外線を使用することができる。その光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、カーボンアーク灯、紫外線用蛍光灯等を使用することができる。その後、照射された版は現像され、後露光され、さらに殺菌灯により露光されて、フレキソ印刷版を得る。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができる。
【0041】
上記のようにして得られたフレキソ印刷版は、網点の複合弾性率が30〜80MPa、さらには35〜75MPa、さらには40〜70MPaであり、ベタ部分の複合弾性率が5〜15MPa、さらには6〜14MPa、さらには7〜13MPaであることができる。これらの網点、ベタ部分の複合弾性率により、本発明のフレキソ印刷版は、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りの両方を達成することができる。
【0042】
本発明における複合弾性率はBruker社製のナノインデンテーション装置Hysitron TI Premierを用いて、下記測定条件に従って測定した。装置の校正は石英にて行い、69.6±5%GPaの値になるような条件下で測定した。
圧子:バーコビッチ型ダイヤモンド圧子先端開き角142.3°
最大押し込み深さ:4500nm
負荷速度、除荷速度:4500nm/sec
保持時間:0sec
Feedback Mode:Displ.Control
なお、特許文献1〜3で使用されているダイナミック硬度測定器DUH−201の最小試験力は100μNであるが、TI Premierの最小試験力は75nNであり、TI Premierは高精度な測定が可能である。かかる応力感知精度の相違のため、TI Premierは、特許文献1〜3で使用されている測定器よりも高精度な測定が可能である。
【0043】
複合弾性率の測定に用いる印刷版は以下の条件で製版した。裏露光、主露光、後露光はPhilips社のTL−K40W/10Rランプ(ピーク波長370nm、350nmの照度が10mW/cm2)を使用した。殺菌灯はパナソニック社製殺菌ランプGL−40(ピーク波長250nm、250nmの照度が4.5mW/cm2)を使用した。感熱マスク層のイメージングにはエスコグラフィック社製CDI 4850を用いて4000dpiの解像度で行った。評価画像は少なくとも175線で0%〜10%網点で0.3%刻みの網点と、ベタ画像を持つ画像とした。裏露光量はレリーフ深度が0.6mmとなる時間に調整し、主露光量は印刷版上で1%網点(直径16μm)が再現する時間に調整した。現像、乾燥工程を経たのち、後露光を7分、最後に殺菌灯を5分照射し、印刷版を得た。
【0044】
上記製版条件で製版した印刷版から、網点直径が25μmである箇所を切り出し、網点の複合弾性率を測定した。切り出した印刷版は25℃、65%RHの環境下に24時間保存し、その後で複合弾性率の測定を行った。まず、網点の中央に圧子が降下するように位置を調整し、圧子を試料に押し込み、荷重一変位曲線を測定した。得られた荷重一変位曲線から、以下の式より網点の複合弾性率を算出した。ここでErは複合弾性率、Sは接触剛性、Acは接触面積である。フィッティングカーブのLower Fitは20%に設定し、Upper Fitは95%に設定した。測定は50回行ない、平均値を求めた。ベタの複合弾性率は、上記製版条件で製版した印刷版からベタ箇所を切り出し、網点の複合弾性率と同じ測定条件で測定した。
複合弾性率Er=S√π/2√Ac
【0045】
上記の式からわかるように、複合弾性率は、弾性変形も考慮したパラメータである。これに対して、従来技術で硬さの評価パラメータとして採用されているダイナミック硬度は、弾性変形を考慮していないパラメータである。
【0046】
また、測定精度の点から見ると、複合弾性率は、上述のように、ダイナミック硬度と比べて高精度の測定が可能であるという利点を有する。これは、それぞれのパラメータの測定に使用する装置の応力感知精度の相違に起因する。
【実施例】
【0047】
本発明の印刷原版の効果を以下の実施例によって示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例中の部は質量部を意味し、表中の組成割合を示す数値も質量部を意味する。
【0048】
実施例中の評価は以下の方法で行なった。
(1)複合弾性率
実施例1で作製したフレキソ印刷版について、Bruker社製のHysitron TI Premierを用いて、上述の方法で網点及びベタ部分の複合弾性率を算出した。
【0049】
(2)微小網点のドットゲイン
実施例1で作製したフレキソ印刷版について、フレキソ印刷機FPR302(エム・シーケー社製)を用い、900LPIのアニロックスを用いて、微小網点のドットゲインを評価した。インキは、UVインキ(商品名:FLEXOCURE CYAN(Flint社製))を用いて行った。被印刷体にはコート紙(商品名:パールコート王子製紙製)を用いた。印刷速度は50m/分で行った。印刷での押し込み量は、版が被印刷体に接触した箇所をゼロとし、そこから90μm押し込んだ箇所とした。印刷版上でのドットサイズが直径16μmの網点に着眼し、印刷での太り(ドットゲイン)量を測定した。印刷での太り(ドットゲイン)量が5μm以下を◎、5μmより大きく10μm未満を○、10μm以上15μm未満を△、15μm以上を×で判定した。印刷での太り(ドットゲイン)量の数値が低いほど、印刷での太りが少なく良好であることを意味する。
【0050】
(3)ベタ部分のインキ乗り
微小網点のドットゲイン評価で得られた印刷物のベタ部分の光学濃度を測定した。光学濃度の測定は大日本スクリーン製DM−800を用いて行った。光学濃度が1.7より上を◎、1.7以下で1.6より上を○、1.6以下で1.5より上を△、1.5以下を×で判定した。光学濃度が高いほど、ベタ部分のインキ乗りに優れることを意味する。
【0051】
(4)独立点の再現性
印刷版上での最小独立点の再現性を測定した。最小独立点が50μm以下であれば◎、50μmより大きく100μm以下であれば○、100μmより大きく200μm以下であれば△、200μmより上であれば×で判定した。再現する最小独立点が小さいほど、独立点の再現性に優れることを意味する。
【0052】
(5)印刷版の耐久性
実施例1で得られたフレキソ印刷版を、押し込み量を150μmにする以外は微小網点のドットゲイン評価と同じ印刷方法で5、000mの印刷を行った。印刷後の版の直径16μm網点を顕微鏡で観察した。印刷前後で変化がない場合は◎、端部のみに軽微な磨耗がある場合は○、部分的に欠けや磨耗がみられる場合は△、全体に欠けや磨耗がみられる場合を×で判定した。
【0053】
実施例1
感光性樹脂組成物の作成
共役ジエンを重合して得られるポリマーとしてブタジエンラテックス(Nipol LX111NF、不揮発分55%、日本ゼオン(株)製)86質量部、及びアクリロニトリル−ブタジエンラテックス(Nipol SX1503、不揮発分42%、日本ゼオン(株)製)24質量部、エチレン性不飽和化合物として数平均分子量が10000であるポリブタジエン末端アクリレート(BAC45、大阪有機化学工業(株)製)15質量部、及び数平均分子量が338であるトリメチロールプロパントリメタクリレート(ライトエステルTMP、共栄社化学(株)製)10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール3質量部、その他成分として親水性重合体(PFT−4、不揮発分25%、共栄社化学(株)製)20質量部、ブタジエンオリゴマー(日本曹達(株)製B2000)9.9質量部、熱安定剤(4−メトキシフェノール)0.1質量部、紫外線吸収剤(チヌビン326)0.01質量部を容器中で混合し、ドープを作成した。ドープを加圧ニーダーに投入して、80℃で溶剤を減圧除去し、感光性樹脂組成物を得た。
【0054】
フレキソ印刷原版の作成
カーボンブラック分散液(オリエント化学工業(株)製、AMBK−8)、共重合ポリアミド(PA223、東洋紡績(株)製)、プロピレングリコール、メタノールを45/5/5/45の質量割合で混合し、感熱マスク層塗工液を得た。PETフィルム(東洋紡績(株)、E5000、厚さ100μm)の両面に離型処理を施した後、乾燥後の塗膜の厚みが2μmとなるようにバーコーターで感熱マスク層塗工液を塗工し、120℃×5分乾燥してフィルム積層体(I)を得た。光学濃度は2.3であった。光学濃度は白黒透過濃度計DM−520(大日本スクリーン製造(株))によって測定した。鹸化度80%のポリ酢酸ビニル(KH20、日本合成(株)製)と可塑剤(グリセリン)を、70/30の質量割合で混合し、酸素バリヤ層塗工液を得た。フィルム積層体(I)上に、乾燥後の塗膜の厚みが2.0μmとなるようにバーコーターで酸素バリヤ層塗工液を塗工し、120℃×5分乾燥してフィルム積層体(II)を得た。共重合ポリエステル系接着剤を塗工したPETフィルム支持体(東洋紡績(株)、E5000、厚さ125μm)上に上記感光性樹脂組成物を配置し、その上からフィルム積層体(II)を重ね合わせた。ヒートプレス機を用いて100℃でラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、酸素バリヤ層、感熱マスク層およびカバーフィルムからなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.14mmであった。
【0055】
フレキソ印刷原版からの印刷版の作成
印刷原版のPET支持体側から裏露光を10秒行った。続いて、カバーフィルムを剥離した。この版を、エスコグラフィック社製CDI4530に巻き付け、175線で0〜10%間で0.3%刻みの網点と、0〜300μm間で50μm刻みの独立点、及びベタを持つテスト画像で、解像度4000dpiでアブレーションを行った。アブレーション後、版を取り出して平面に戻し、主露光を7分行った。その後、A&V(株)製現像機(Stuck System、1%洗濯石鹸水溶液、40℃)で8分現像し、版面の水滴を水きり棒で除去した。その後、60℃の乾燥機で10分乾燥した。続いて、後露光を7分間行い、最後に殺菌灯を5分間照射し、フレキソ印刷版を得た。裏露光、主露光、後露光はPhilips社のTL−K40W/10Rランプ(ピーク波長370nm、350nmの照度が10mW/cm2)を、殺菌灯はパナソニック社製殺菌ランプGL−40(ピーク波長250nm、250nmの照度が4.5mW/cm2)を用いて行った。得られた印刷版のレリーフ深度は0.6mmであり、印刷版上に直径16μmの網点が再現していることを確認した。
【0056】
実施例2〜13、比較例14、比較例15、比較例1〜6
感光性樹脂層を構成する感光性樹脂組成物中の各成分の配合割合を表1及び表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法でフレキソ印刷原版を作製し、その原版から印刷版を得た。なお、レリーフ深度が0.6mmとなるように裏露光時間を調整し、主露光時間は直径16μmの網点が印刷版上に再現する時間とした。
【0057】
実施例1〜13、比較例14、比較例15、比較例1〜6の評価結果を表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
なお、上記の表中のエチレン性不飽和化合物の詳細は以下の通りである。
ライトエステルTMP:トリメチロールプロパントリメタクリレート、数平均分子量338、共栄社化学(株)製。
ライトエステル1.6HX:1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、数平均分子量254、共栄社化学(株)製。
ライトエステル19ND:1,9ノナンジオールジメタクリレート、数平均分子量298、共栄社化学(株)製。
BAC45:ポリブタジエン末端アクリレート、数平均分子量10000、大阪有機化学工業(株)製。
TE2000:末端メタクリル基導入ポリブタジエン、ウレタン結合型、数平均分子量3.000、日本曹達(株)製。
【0061】
上記の表の評価結果からわかるように、網点の複合弾性率とベタ部分の複合弾性率が本発明の範囲内である実施例1〜13では、微小網点のドットゲイン抑制とベタ部分のインキ乗りが両立できている。このように網点とベタの複合弾性率を本発明の範囲内とする方法としては、従来よりも光重合開始剤量を多量に配合すること、低分子量(メタ)アクリレート化合物を一定量配合すること、及び光重合開始剤と低分子(メタ)アクリレート化合物の配合比率を一定範囲内とすることが重要である。さらに、高分子量の(メタ)アクリレート化合物を配合することで光重合開始剤を多量配合した場合でも独立点の再現性や印刷版の耐久性を損なわない(実施例1〜8,11〜13と実施例9,10の対比)。さらに、光重合開始剤にベンゾフェノンを併用することで網点の複合弾性率を選択的に高めることができる(実施例1〜6,9〜13と実施例7,8の対比)。さらに、酸素バリア層を持たせることで微小網点のドットゲインとベタ部分のインキ乗りをさらに高めることができる(実施例1〜13と比較例15の対比)。
【0062】
これに対して、比較例1では、光重合開始剤の配合量が少なく、従来と同程度の量であるため、網点の複合弾性率が低くなり、微小網点のドットゲインが抑制できていない。比較例2では、光重合開始剤の配合量が多いため、網点及びベタ部分の複合弾性率が高くなり、ベタ部分のインキ乗りに劣り、独立点の再現性及び印刷版の耐久性にも劣る。比較例3では、光重合開始剤の配合量が少ないため、光重合開始剤と低分子量の(メタ)アクリレート化合物の配合比率が適切であっても、網点の複合弾性率が低くなり、微小網点のドットゲインが抑制できていない。比較例4では、低分子量の(メタ)アクリレート化合物の配合量が少ないため、網点の複合弾性率が低くなり、微小網点のドットゲインが抑制できていない。比較例5では、低分子量の(メタ)アクリレート化合物の配合量が多いため、網点及びベタ部分の複合弾性率が高くなり、ベタ部分のインキ乗りに劣る。比較例6では、低分子量の(メタ)アクリレート化合物の配合量が多いため、光重合開始剤と低分子量の(メタ)アクリレート化合物の配合比率が適切であっても、網点及びベタ部分の複合弾性率が高くなり、ベタ部分のインキ乗りに劣る。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフレキソ印刷版は、網点の複合弾性率を特定の値になるように高くしているため、微小網点のドットゲインを低減することができ、しかもベタ部分の複合弾性率を特定の値になるように低くしているため、ベタ部分のインク乗りに優れる効果を有しており、結果として、微小網点のドットゲインの低減とベタ部分の十分なインク乗りを両立することができる。従って、本発明のフレキソ印刷版は、当業界において極めて有用である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体(A)と感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)が順次積層されてなるフレキソ印刷原版より得られるフレキソ印刷版であって、感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物が、(a)共役ジエンを重合して得られるポリマー、(b)エチレン性不飽和化合物、及び(c)光重合開始剤を含み、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)を含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の含有量が7〜13質量%であり、感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量が2.5〜7質量%であること、(b)エチレン性不飽和化合物が、数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)をさらに含み、感光性樹脂組成物中の数平均分子量600超20,000以下の(メタ)アクリレート化合物(ii)の含有量が10〜20質量%であること、網点の複合弾性率が35〜70MPaであり、かつベタ部分の複合弾性率が9〜14MPaであること、及びフレキソ印刷原版が、感光性樹脂層(B)と感熱マスク層(C)の間に、酸素バリヤ層(D)を有することを特徴とするフレキソ印刷版。
【請求項2】
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の質量と数平均分子量100以上600以下の(メタ)アクリレート化合物(i)の質量との比率が0.23〜0.54の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷版。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(c)光重合開始剤が、ベンジルアルキルケタール系とベンゾフェノン系の2種類の化合物を含み、ベンジルアルキルケタール系化合物とベンゾフェノン系化合物の質量比が15:1〜150:20の範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
【請求項5】
水系の現像液を使用してフレキソ印刷原版を現像して得られることを特徴とする請求項1,2,4のいずれかに記載のフレキソ印刷版。
【請求項6】
請求項1,2,4,5のいずれかに記載のフレキソ印刷版を用いたことを特徴とするフレキソ印刷法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-12-05 
出願番号 P2020-537783
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G03F)
P 1 651・ 851- YAA (G03F)
P 1 651・ 113- YAA (G03F)
P 1 651・ 537- YAA (G03F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
比嘉 翔一
登録日 2021-06-28 
登録番号 6904484
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 フレキソ印刷版  
代理人 風早 信昭  
代理人 浅野 典子  
代理人 風早 信昭  
代理人 浅野 典子  

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