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審決分類 |
審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 H01Q 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01Q 審判 全部申し立て 発明同一 H01Q 審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更 H01Q 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01Q 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01Q 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01Q |
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管理番号 | 1395199 |
総通号数 | 15 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-09 |
確定日 | 2023-01-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6917419号発明「積層型パッチアンテナ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6917419号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜11〕について訂正することを認める。 特許第6917419号の請求項1〜11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6917419号の請求項1〜11に係る特許についての出願は、令和元年8月2日に出願され、令和3年7月21日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和4年2月9日に特許異議申立人 青木 幾雄(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年6月16日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和4年8月19日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、異議申立人は、令和4年10月5日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年8月19日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項 特許請求の範囲の請求項1に 「 前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さい第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、」 と記載されているのを、 「 前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜11も同様に訂正する)。 (2)訂正前の請求項2〜11は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正の目的の適否について 訂正事項による請求項1についての訂正は、第1パッチアンテナが「第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有」するとの記載により、第1放射素子に第1給電線が接続されることを特定することにより限定し、第2パッチアンテナが「第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有」するとの記載により、第2放射素子に第2給電線が接続されることを特定することにより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該訂正事項による、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜11についての訂正についても同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の追加の有無について 願書に添付した明細書の【0025】には、第1パッチアンテナについて、「第1給電線21は、四角形状の板状エレメントの放射面の一部を折り曲げ加工して形成される例を示した」と記載され、図2には、第1給電線21が第1放射素子22の一部を折り曲げ加工したものが示されており、第1給電線21が第1放射素子22に接続されていることが開示されている。 また、図1には、第2パッチアンテナについて、第2給電線31が第2放射素子32に接続される例が開示されている。 したがって、当該訂正事項による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新規事項を追加するものではない。 また、当該訂正事項による請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜11についての訂正についても同様に、新規事項を追加するものではない。 (3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について 訂正事項による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、当該訂正事項による請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜11についての訂正についても同様に、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)独立特許要件について 本件特許異議申立事件には、特許異議の申立てがされていない請求項は存在しないから、本件訂正請求による訂正には独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜11〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1〜11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナは、 第1給電部と第2給電部を有する回路基板と、 前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、 前記第2パッチアンテナの上方に配置され、第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子と、 を具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項2】 請求項1に記載の積層型パッチアンテナにおいて、 前記第1パッチアンテナは、第1放射素子が板状エレメントからなる板状エアパッチアンテナであり、 前記回路基板は、地導体パターンを有する、 ことを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項3】 請求項2に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第1放射素子は、回路基板に所定の間隔を設けて対向配置される四角形状の板状エレメントと、板状エレメントを支えるための複数の脚部とを有することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項4】 請求項3に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記脚部の少なくとも1つが板状エアパッチアンテナの第1給電線であることを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項5】 請求項3に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第1パッチアンテナの第1給電線は、板状エレメントの放射面の一部を切り曲げ加工して形成されることを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項6】 請求項5に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第2パッチアンテナの第2給電線は、第1給電線を形成する切り曲げ加工により開けられるスリットを貫通することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項7】 請求項2乃至請求項6の何れかに記載の積層型パッチアンテナであって、さらに、回路基板、第1パッチアンテナ、及び無給電素子を支えるための一体型樹脂ホルダを具備し、 前記第2パッチアンテナは、第1放射素子に固定される、 ことを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項8】 請求項7に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記一体型樹脂ホルダは、板状エアパッチアンテナと回路基板との間に配置され板状エアパッチアンテナを支持する板支持部と、板支持部から回路基板側に延在し回路基板を保持する回路基板係止爪と、板支持部から無給電素子側に延在し無給電素子を保持する無給電素子係止爪と、を具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項9】 請求項1乃至請求項8の何れかに記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第2パッチアンテナは、誘電体としてセラミック、合成樹脂、多層基板の何れかを用いることを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項10】 請求項1乃至請求項9の何れかに記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記無給電素子は、対向する平行な2辺の側辺とこれらに直角な下辺を有すると共に下辺よりも短く下辺に平行な上辺を有する六角形状からなり、上面視で上辺から下辺までの長さが第2パッチアンテナの上辺から下辺までの長さよりも長く幅よりも狭いことを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項11】 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の積層型パッチアンテナであって、さらに、前記第2パッチアンテナと無給電素子との間に配置され無給電素子を支えるための、絶縁性スペーサを具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。」 第4 特許異議の申立理由について 1 申立理由の概要 異議申立人は、下記2に示す甲第1号証〜甲第12号証(以下、それぞれ、「甲1」〜「甲12」といい、これらをまとめて「甲号証」ということがある。)及び参考資料1〜4(令和4年10月5日の意見書に添付。これらをまとめて「参考資料」ということがある。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1〜11に係る特許は、取り消すべきものである旨、主張している。 申立理由1 (新規性)訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 申立理由2 (拡大先願)訂正前の請求項1に係る発明は、甲2に記載された発明と実質同一であるから、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものである。 申立理由3 (進歩性)訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、容易に想到し得るものであり、その特許は、第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 申立理由4 (進歩性)訂正前の請求項1、2に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1記載事項、甲4記載事項、及び甲5記載事項〜甲8記載事項の周知技術に基いて、 訂正前の請求項3〜6、11に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1記載事項、甲4記載事項、甲5記載事項〜甲8記載事項の周知技術、甲9記載事項に基いて、 訂正前の請求項7、8に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1記載事項、甲4記載事項、甲5記載事項〜甲8記載事項の周知技術、甲7記載事項、及び甲9記載事項に基いて、 訂正前の請求項9、10に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1記載事項、甲4記載事項、甲5記載事項〜甲8記載事項の周知技術、甲7記載事項、甲9記載事項、及び甲10記載事項〜甲12記載事項に基いて、 それぞれ容易に想到し得るものであり、その特許は、第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 2 証拠方法 甲第1号証:中国特許出願公開第104836019号明細書 甲第2号証:特開2020−68527号公報 甲第2号証の2:韓国公開特許第10−2020−0046482号公報 甲第3号証:特開2017−98679号公報 甲第4号証:特開2003−309424号公報 甲第5号証:特開2006−237813号公報 甲第6号証:特開2011−216939号公報 甲第7号証:国際公開2018/105235号 甲第8号証:特開平6−69718号公報 甲第9号証:特開2018−191111号公報 甲第10号証:特開2004−23698号公報 甲第11号証:特開2004−356880号公報 甲第12号証:国際公開2011/111509号 参考資料1:特開平8−139522号公報 参考資料2:特開2005−27134号公報 参考資料3:特開2007−243448号公報 参考資料4:特開2016−46729号公報 第5 取消理由の概要 訂正前の請求項1、2〜5、9、11に係る特許に対して、当審が令和4年6月16日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 1(新規性)請求項1、11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2(進歩性)請求項1、9、11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2〜5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲9に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5、9、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 なお、取消理由で引用した甲1、甲9は、異議申立書の証拠方法(上記第4 2)における対応する証拠である。 第6 取消理由についての当審の判断 1 甲1(中国特許出願公開第104836019号明細書)の記載事項及び甲1発明 甲1には、図面とともに次の事項が記載されている。また、当審訳は異議申立人が提出したものに従い、下線は当審にて強調のため付したものである。 「 」 (当審訳) 「[0001] 本発明はアンテナ技術分野に属し、トリプルバンド共通開口アクティブアンテナに関し、衛星ナビゲーションシステムの信号受信に用いることができる。」 「 」 (当審訳) 「[0004] 近年、人々の衛星ナビゲーションサービスに対する要求がますます高くなることに伴い、マルチモードナビゲーションアンテナの研究が幅広く注目されている。様々な形態のマルチモードナビゲーションアンテナが開発されているが、主に1給電構造、2給電構造及び4給電構造に分類される。一般的な1給電構造は多層パッチを用いたマイクロストリップライン構造であり、パッチの層数は通常動作周波数ビンに対応し、異なるパッチ層は異なる動作帯域に対応し、アンテナの円偏波はパッチのコーナカットによって実現される。このようなアンテナは構造が簡単でコンパクトであり、断面が低く、製造加工しやすいが、動作の周波数ビンが狭く、外部からの物理的な外乱に弱い。2給電構造は一般的に2つの給電点によって等振幅で、位相が90°異なる信号を提供して2つの直交する直線偏波モードを励起させ、これにより円偏波動作を実現する。該構造においては、一般的にプローブによって信号を放射パッチに結合させて比較的広い動作帯域幅を生成する。しかしながら、汎用のプローブ給電方式は広帯域アンテナと複数の他の周波数帯域のアンテナの共通開口による強い相互結合が生じるため、アンテナにおける電流分布が他の放射素子の影響を受けて変化し、これによりその入カインピーダンス及び放射特性が変化し、広帯域バンド範囲全体におけるアンテナの良好で安定した放射性能を保証することができない。中国特許番号CN203481381Uはナビゲーションアンテナを開示し、その構造は図1に示すように、該ナビゲーションアンテナは放射装置及び給電回路を含み、放射装置は上層パッチ、中層パッチ、下層パッチ及び地板を含む。上層パッチと給電回路との間は2つの給電プローブによって接続され、積層結合を用いてマルチ周波数ビンの動作を実現し、上、中、下三層のパッチの寸法及び相互間の結合関係を調整することにより、三層のパッチをそれぞれ衛星ナビゲーションが動作する帯域で動作させ、3つのシステム帯域のアンテナ多重化を実現する。該発明には以下の欠点が存在する。その1、該発明によるプローブ給電方式は、プローブによりアンテナ放射ユニットの入力端にインダクタンスが導入されるため、アンテナ放射ユニットの入力端のインピーダンス不整合が発生し、アンテナ動作帯域が狭くなる。その2、該発明におけるプローブは上層パッチに直接給電し、且つ信号を中層及び下層パッチに結合させ、これによりアンテナの各帯域の放射性能間の相互影響が発生し、アンテナの各帯域の放射特性を同時に確保することができず、また相互結合が大きすぎてアンテナの放射効率が低下する。その3、同プローブが長すぎると上層放射ユニットの指向性パターンの歪みが発生し、また下方パッチが上方パッチによって遮られて、下層放射ユニットの指向性パターンが悪くなる。 【発明の概要】 [0005] 本発明の目的は、上記従来のナビゲーションアンテナに存在する欠点を克服し、従来のナビゲーションアンテナの動作帯域幅が不十分で、放射効率が低く、指向性パターンの低仰角利得が低いという問題を解決するためのトリプルバンド共通開口アクティブナビゲーションアンテナを提供することである。」 「 」 (当審訳) 「[0025] 図2を参照すると、本発明は共通開口アンテナユニット1、フィルタ2、低雑音増幅器3及びバックキャビティ4を含む。前記共通開口アンテナユニット1は放射体、金属反射板及び給電ネットワークを含み、そのうち放射体は高周波寄生ユニットと高周波放射ユニットとからなる高周波放射体、中間周波放射体、及び低周波寄生ユニットと低周波放射ユニットとからなる低周波放射体を含む。前記高周波寄生ユニット、高周波放射ユニット、中間周波放射体及び低周波寄生ユニットは上から下へ順に同軸積層構造を形成し、該同軸積層構造は第1誘電体スタッドによって低周波放射ユニットの上方に支持され、アンテナのトリプルバンド共通開口を実現する。前記給電ネットワークは高周波給電ネットワーク、中間周波給電ネットワーク及び低周波給電ネットワークからなり、そのうち、高周波給電ネットワークは2次ブランチラインカプラからなり、中間周波給電ネットワークは1次Wilkinsonパワースプリッタ及び90度移相器からなり、低周波帯域給電ネットワークは2次Wilkinsonパワースプリッタ及び新型広帯域90度移相器からなる。前記フィルタ2は高周波フィルタ、中間周波フィルタ及び低周波フィルタからなる。前記低雑音増幅器3は高周波低雑音増幅器、中間周波低雑音増幅器及び低周波低雑音増幅器からなる。第7誘電体板の上方には第2誘電体スタッドによって放射体が支持され、その下方には上から下へ順にフィルタ2及び低雑音増幅器3が取り付けられている。前記高周波給電ネットワーク、中間周波給電ネットワーク及び低周波給電ネットワークはそれぞれ対応する高周波フィルタ、中間周波フィルタと低周波フィルタ、及び高周波低雑音増幅器、中間周波低雑音増幅器と低周波低雑音増幅器に順次接続されている。前記共通開口アンテナユニット1と低雑音増幅器3の組み合わせ設計は、帯域内利得を向上させることができ、またフィルタ2を導入してフィルタリング処理を行うことで帯域外干渉を除去することができる。前記低周波放射ユニット、第7誘電体板、フィルタ2及び低雑音増幅器3はバックキャビティ4のキャビティ内に位置し、中間周波帯域及び高周波帯域のアンテナ性能に影響を与えることなく低周波帯域アンテナの低仰角利得を好適に改善することができると同時に外部環境によるフィルタ2及び低雑音増幅器3に対する干渉を遮蔽することができる。」 「 」 (当審訳) 「[0027] 図4を参照すると、高周波寄生ユニットは第1誘電体板101及びその上面の幾何学的中心に印刷された高周波寄生パッチ100からなり、該第1誘電体板101は比誘電率が4.4である正方形誘電体材料を用い、その辺長が20mmで、厚さが4mmであり、前記高周波寄生パッチ100は外形が円形である金属パッチを用い、その半径が8.9mmであり、高周波寄生ユニットの導入により、アンテナの高周波帯域の動作帯域幅を効果的に広げることができる。高周波放射ユニットは高周波放射パッチ102、第2誘電体板103及び第3誘電体板105を含み、そのうち第2誘電体板103は比誘電率が4.4である正方形誘電体材料を用い、辺長が30mmで、厚さが0.5mmであり、該第2誘電体板103の上面の幾何学的中心に高周波放射パッチ102が印刷され、該高周波放射パッチ102は外形が円形である金属パッチを用い、その半径が9mmであり、前記第3誘電体板105は比誘電率が4.4である正方形誘電体材料を用い、辺長が30mmで、厚さが3mmであり、該第3誘電体板105の幾何学的中心から6mm離れた位置において2つの半径が2mmである円形高周波容量結合パッチ104がそれぞれ直交方向に印刷され、前記3つの誘電体板101、103及び105は上から下へ順に重ね合わせられて高周波放射体を形成する。中間周波放射体は第4誘電体板107及びその上面の幾何学的中心に印刷された中間周波放射パッチ106からなり、該第4誘電体板107は比誘電率が2.55である正方形誘電体材料を用い、辺長が48mmで、厚さが3mmであり、前記中間周波放射パッチ106は外形が正方形である金属パッチを用い、その辺長が39mmであり、中間周波放射パッチ106を高周波放射ユニットの反射板とし、同時に中間周波放射体を低周波放射体の上方に位置させているため低周波放射体が遮られるので、比較的低い誘電率の中間周波誘電体を選択し、中間周波放射パッチ106の寸法を合理的に設定することにより、高周波帯域と低周波帯域の放射特性を良好に両立させることができる。低周波寄生ユニットは第5誘電体板109及びその上面の幾何学的中心に印刷された低周波寄生パッチ108からなり、前記第5誘電体板109は比誘電率が4.4である円形誘電体材料を用い、半径が70mmで、厚さが1mmであり、前記低周波寄生パッチ108は半径が38.9mmである円形金属パッチを用い、該低周波寄生ユニットは比誘電率が2.55で、高さが16mmである4つの第1誘電体スタッド110によって低周波放射ユニットの上方に支持され、低周波寄生ユニットと低周波放射ユニットとの間に厚さが16mmである空気層が導入されたことに相当し、該懸架型寄生パッチを用いることで、アンテナ低周波の動作帯域幅を著しく広げることができる。低周波放射ユニットは第6誘電体板114及びその上面に印刷された低周波放射パッチ113を含み、前記第6誘電体板114は比誘電率が4.4である円形誘電体材料を用い、半径が70mmで、厚さが2mmであり、前記低周波放射パッチ113は半径が45.8mmである円形金属パッチを用い、該低周波放射パッチ113の中心位置から20mm離れた位置において2つの環状スリット111が直交してエッチングされ、該環状スリット111の外半径が6.1mmで、内半径が4.1mmであり、2つの低周波容量結合パッチ112を形成する。第7誘電体板117の上下面にはそれぞれ金属反射板116及び給電ネットワーク121が印刷され、該第7誘電体板117は比誘電率が4.4である円形誘電体材料を用い、半径が70mmで、厚さが2mmであり、前記第7誘電体板117の上方には4つの第2誘電体スタッド115によって放射体が支持され、該第2誘電体スタッド115は比誘電率が2.25である誘電体材料を用い、高さが16mmである。2本の高周波給電同軸線118の下端はそれぞれ高周波給電ネットワークの2つの出カポートに溶接されるとともに低周波放射体及び第4誘電体板107を順次貫通し、外壁は中間周波放射パッチ106に溶接され、内側の芯は第3誘電体板105を貫通してそれぞれ2つの円形高周波容量結合パッチ104に溶接される。中間周波給電同軸線119の下端はそれぞれ中間周波給電ネットワークの2つの出カポートに溶接されるとともに低周波放射体を貫通し、外壁は低周波寄生パッチ108に溶接され、内側の芯は第4誘電体板107を貫通して中間周波放射パッチ106に溶接される。低周波給電プローブ120の下端は低周波給電ネットワークの2つの出カポートに溶接され、上端はそれぞれ2つの低周波容量結合パッチ112に溶接される。前記高周波放射体、中間周波放射体及び低周波放射体は単独に給電され、アンテナの各帯域間の相互結合を減少し、アンテナの各帯域の放射特性を好適に改善し、放射効率を向上させることができる。前記高周波放射体及び低周波放射体はそれぞれ同軸線結合給電及びプローブ結合給電を用いるため、給電位置において容量結合効果を高めることでそれぞれ同軸線及びプローブにより導入されたインダクタンスを相殺し、入力インピーダンス整合の役割を果たし、アンテナの高周波帯域及び低周波帯域の動作帯域を効果的に広げることができる。」 「図4 」 図4より、「高周波給電同軸線118」は、「中間周波給電同軸線119」よりも長いことが見てとれる。 上記記載事項より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「放射体、金属反射板及び給電ネットワークを含む共通開口アンテナユニット1であって、 放射体は高周波寄生ユニットと高周波放射ユニットとからなる高周波放射体、中間周波放射体、及び低周波寄生ユニットと低周波放射ユニットとからなる低周波放射体を含み、前記高周波寄生ユニット、高周波放射ユニット、中間周波放射体及び低周波寄生ユニットは上から下へ順に同軸積層構造を形成し、該同軸積層構造は第1誘電体スタッドによって低周波放射ユニットの上方に支持され、 前記給電ネットワークは高周波給電ネットワーク、中間周波給電ネットワーク及び低周波給電ネットワークからなり、そのうち、高周波給電ネットワークは2次ブランチラインカプラからなり、中間周波給電ネットワークは1次Wilkinsonパワースプリッタ及び90度移相器からなり、低周波帯域給電ネットワークは2次Wilkinsonパワースプリッタ及び新型広帯域90度移相器からなり、([0025]) 高周波寄生ユニットは第1誘電体板101及びその上面の幾何学的中心に印刷された高周波寄生パッチ100からなり、 高周波放射ユニットは高周波放射パッチ102、第2誘電体板103及び第3誘電体板105を含み、該高周波放射パッチ102は外形が円形である金属パッチを用い、その半径が9mmであり、該第3誘電体板105の幾何学的中心から6mm離れた位置において2つの半径が2mmである円形高周波容量結合パッチ104がそれぞれ直交方向に印刷され、 中間周波放射体は第4誘電体板107及びその上面の幾何学的中心に印刷された中間周波放射パッチ106からなり、前記中間周波放射パッチ106は外形が正方形である金属パッチを用い、その辺長が39mmであり、 低周波寄生ユニットは第5誘電体板109及びその上面の幾何学的中心に印刷された低周波寄生パッチ108からなり、4つの第1誘電体スタッド110によって低周波放射ユニットの上方に支持され、 低周波放射ユニットは第6誘電体板114及びその上面に印刷された低周波放射パッチ113を含み、前記低周波放射パッチ113は半径が45.8mmである円形金属パッチを用い、 第7誘電体板117の上下面にはそれぞれ金属反射板116及び給電ネットワーク121が印刷され、前記第7誘電体板117の上方には4つの第2誘電体スタッド115によって放射体が支持され、 2本の高周波給電同軸線118の下端はそれぞれ高周波給電ネットワークの2つの出カポートに溶接されるとともに低周波放射体及び第4誘電体板107を順次貫通し、外壁は中間周波放射パッチ106に溶接され、内側の芯は第3誘電体板105を貫通してそれぞれ2つの円形高周波容量結合パッチ104に溶接され、中間周波給電同軸線119の下端はそれぞれ中間周波給電ネットワークの2つの出カポートに溶接されるとともに低周波放射体を貫通し、外壁は低周波寄生パッチ108に溶接され、内側の芯は第4誘電体板107を貫通して中間周波放射パッチ106に溶接され、低周波給電プローブ120の下端は低周波給電ネットワークの2つの出カポートに溶接されており、前記高周波放射体は同軸線結合給電を用いるため、給電位置において容量結合効果を高めることで同軸線により導入されたインダクタンスを相殺し、入力インピーダンス整合の役割を果たし、アンテナの高周波帯域の動作帯域を効果的に広げることができるものであり、([0027]) 高周波給電同軸線118は、中間周波給電同軸線119よりも長い、(図4) 衛星ナビゲーションシステムの信号受信に用いることができる共通開口アンテナユニット1([0001])」 2 対比・判断 (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」について 甲1発明の「給電ネットワーク」は「高周波給電ネットワーク、中間周波給電ネットワーク及び低周波給電ネットワーク」からなり、「高周波給電ネットワークは2次ブランチラインカプラからなり、中間周波給電ネットワークは1次Wilkinsonパワースプリッタ及び90度移相器からなり、低周波帯域給電ネットワークは2次Wilkinsonパワースプリッタ及び新型広帯域90度移相器から」なるものであり、「2次ブランチラインカプラ」、「1次Wilkinsonパワースプリッタ」、「90度移相器」、「2次Wilkinsonパワースプリッタ」及び「新型広帯域90度移相器」は、いずれも回路であるから、「給電ネットワーク」は全体として回路を含むものである。 そうすると、「給電ネットワーク」が印刷されている「第7誘電体板117」は「回路基板」といえる。 そして、「高周波給電同軸線118」に溶接される「高周波給電ネットワークの2つの出力ポート」、「中間周波給電同軸線119」に溶接される「中間周波給電ネットワークの2つの出力ポート」は、いずれも「給電部」ということができ、前者を「第2給電部」、後者を「第1給電部」と称することができる。 よって、本件発明1と甲1発明とは、「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」を具備する点で一致する。 (イ)「前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナ」について A 甲1発明の中間周波放射体の「中間周波放射パッチ106」は「放射素子」であるから、中間周波放射体は、中間周波放射パッチ106を放射素子とするパッチアンテナといえ、また、「中間周波給電同軸線119」は、中間周波放射体の「給電線」といえる。 B 甲1発明において、「中間周波放射体」は、中間周波のための放射体であるから中間周波の信号受信に用いられるものである。そして、「中間周波」は、本件発明1の「第1周波数帯」に対応する。 C 上記A、B、及び(ア)より、甲1発明の「中間周波放射体」、「中間周波放射パッチ106」、「中間周波給電同軸線119」は、それぞれ、本件発明1の「第1パッチアンテナ」、「第1放射素子」、「第1給電線」に対応する。 D そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナ」を具備する点で共通する。 (ウ)「前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナ」について A 甲1発明の「高周波放射ユニット」の「高周波放射パッチ102」は「放射素子」であるから、高周波放射ユニットは、高周波放射パッチ102を放射素子とするパッチアンテナといえ、「高周波給電同軸線118」の内側の芯が「円形高周波容量結合パッチ104に溶接され」、同軸線結合給電を行うから、「高周波給電同軸線118」は高周波放射ユニットの「給電線」といえる。 B 甲1発明の「高周波放射ユニット」は、高周波のための放射ユニットであるから、高周波の信号受信のために用いられるものであり、「高周波の信号」は、「中間周波の信号」よりも高い周波数の信号であることは明らかであるから、本件発明1の「第1周波数帯の信号よりも高い第2周波数帯の信号」に対応する。 C 上記A、B、及び(ア)、(イ)より、甲1発明の「高周波放射ユニット」、「高周波放射パッチ102」、「高周波給電同軸線118」は、それぞれ、本件発明1の「第2パッチアンテナ」、「第2放射素子」、「第2給電線」に対応する。 D 甲1発明において、高周波放射ユニット及び中間周波放射体は、上から下へ順に同軸積層構造を形成しているから、高周波放射ユニットは、中間周波放射体上に積層されているといえる。 また、高周波給電同軸線118は、「外壁は中間周波放射パッチ106に溶接され、内側の芯は第3誘電体板105を貫通」するから、高周波給電同軸線118は、高周波放射ユニットの第3誘電体板105が積層されている中間周波放射体の中間周波放射パッチ106を貫通しているといえる。 さらに、高周波放射パッチ102は半径が9mmの円形であり、中間周波放射パッチ106は辺長が39mmの正方形であるから、高周波放射パッチ102は、中間周波放射パッチ106よりも小さい。 また、甲1発明の高周波給電同軸線118は、中間周波給電同軸線119よりも長い(図4)。 E 上記A〜D、及び(イ)より、本件発明1と甲1発明とは、「前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さい、第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナ」を具備する点で共通する。 (エ)「前記第2パッチアンテナの上方に配置され、第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子」について 甲1発明の「高周波寄生ユニット」が含む「高周波寄生パッチ100」は、第1誘電体板101に印刷されるものであるから、板状といえる。 そして、「高周波寄生パッチ100」には給電線が接続されていないから、「高周波寄生パッチ100」は無給電素子であるといえる。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記第2パッチアンテナの上方に配置される板状の無給電素子」を具備する点で共通する。 (オ)「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナ」について 甲1発明の「共通開口アンテナユニット」は、高周波放射ユニットと中間周波放射体とが積層されるものであり、上記(イ)及び(ウ)のように、それぞれがパッチアンテナである。 そうすると、甲1発明の「共通開口アンテナユニット」は、本件発明1の「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナ」に対応する。 (ア)〜(オ)をまとめると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナは、 第1給電部と第2給電部を有する回路基板と、 第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さい第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、 前記第2パッチアンテナの上方に配置される板状の無給電素子と、 を具備する積層型パッチアンテナ。」 [相違点] 相違点1:本件発明1は「第1パッチアンテナ」が「前記回路基板上に積層され」ているのに対して、甲1発明は当該特定がない点。 相違点2:「第2パッチアンテナ」について、本件発明1は「第2給電線が接続される第2の放射素子」であるのに対して、甲1発明は高周波給電同軸線118の「外壁は中間周波放射パッチ106に溶接され、内側の芯は第3誘電体板105を貫通してそれぞれ2つの円形高周波容量結合パッチ104に溶接され」るものであり、高周波給電同軸線118は高周波放射パッチ102に接続されていない点。 相違点3:「無給電素子」について、本件発明1は「第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための」と特定されているのに対して、甲1発明の「高周波寄生パッチ100」は仰角受信特性を改善しているのかが不明である点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点2について、検討する。 甲1発明の高周波放射体が用いる同軸線結合給電は、同軸線により導入されたインダクタンスを相殺し、入力インピーダンス整合の役割を果たし、アンテナの高周波帯域の動作帯域を効果的に広げるために、給電位置において容量結合効果を高めるものであり、同軸線結合給電を用いる甲1発明において、高周波給電同軸線118の内側の芯を高周波放射ユニットの高周波放射パッチ102に接続することは、想定されていない。 そして、高周波給電同軸線118の内側の芯を高周波放射ユニットの高周波放射パッチ102に接続すると、同軸線により導入されたインダクタンスを相殺するという効果を奏さなくなるから、甲1発明において、高周波給電同軸線118の内側の芯を高周波放射ユニットの高周波放射パッチ102に接続することには、阻害要因があるといえる。 さらに、他の甲号証及び参考資料をみても、甲1発明において、高周波給電同軸線118の内側の芯を高周波放射ユニットの高周波放射パッチ102に接続することの、動機付けとなる記載はされていない。 したがって、相違点2は、当業者が容易になし得ることとはいえない。 ウ 異議申立人の主張 異議申立人は、令和4年10月5日の意見書において、「本件明細書においては、給電線としても用いることができる部材(例えば、脚部23)を他の部材(例えば、地導体パターン13)に「接続」する際には、コンデンサを介して「接続」しても良い旨が記載されて」(3頁)おり、「本件特許発明1の「接続」には、異なる2つの構成が直接接続されている状態のみならず、例えばコンデンサを介して接続されている状態、つまり「容量結合」により2つの構成が電気的に接続されている状態も含むと解される」(4頁)旨、主張する。 しかしながら、異議申立人が主張する本件明細書の記載(【0025】)は、「脚部23は、例えばコンデンサを介して地導体パターン13に接続されている。」と記載されており、脚部23を地導体パターン13に接続するときの記載であって、脚部23を第1給電線21として用いて、回路基板10の第1給電部11あるいは第1放射素子22と接続するときの記載ではないから、本件発明1で特定される「第1給電線が接続される第1放射素子」の「接続」が、コンデンサを介して接続されている状態を含むものとは解することはできない。 また、異議申立人は、「甲第1号証に従来技術として記載されたプローブ給電方式を用いて、高周波給電同軸線118と、高周波放射パッチ102とを直接接続することは、一定の課題を解決するための技術の具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用に過ぎない。」(4頁)旨主張する。 しかしながら、上記イで相違点2について検討したように、甲1発明において、高周波給電同軸線118と、高周波放射パッチ102とを直接接続することの動機付けはなく、阻害要因があるから、具体的適用に伴う設計変更や設計的事項の採用ということはできない。 したがって、異議申立人の主張は採用できない。 エ 小括 上記イ、ウのとおり、相違点2は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明11 本件発明11は、本件発明1の特定事項を全て含むから、(1)の相違点2を有するものであり、本件発明1と同様の理由により、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2〜5、9 本件発明2〜5、9は、本件発明1の特定事項を全て含むから、(1)の相違点2を有するものであり、本件発明1と同様の理由により、甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。 第7 異議申立人の主張する申立理由1及び3について 異議申立人の主張する申立理由1及び3は、本件発明1について通知した取消理由と同旨であるから、上記第6 2(1)で判断したとおり、申立理由1及び3には理由がない。 第8 取消理由で採用しなかった申立理由2及び4について 1 申立理由2(甲2に基づく拡大先願)について (1)甲2(特開2020−68527号公報)の記載事項 「【0015】 図1に示すように、通信機器10は、アンテナ100、RFIC(radio frequency integrated circuit)200、及び信号プロセッサ300を含み、アンテナ100及びRFIC200は、給電(feed)ライン15を介して連結される。本明細書において、アンテナ100はアンテナモジュールとも称され、アンテナ100及び給電ライン15を含む構成は、アンテナモジュールとして、総括的に称される。また、アンテナ100、給電ライン15、及びRFIC200は、総括的にRFシステム又はRF装置(apparatus)とも称される。」 「【0019】 本発明の一実施形態により、アンテナ100は、少なくとも2つのアンテナパッチ(patch)を含む。アンテナパッチは、互いに平行に積層された構成を有し、それぞれのアンテナパッチは、互いに異なる周波数帯域での信号を送受信するように構成される。アンテナパッチは、それぞれ電磁波を放射するために、給電ラインから信号が供給される少なくとも1つの給電地点を含む。アンテナパッチのうちの第1アンテナパッチは少なくとも1つの貫通地点を更に含み、第1アンテナパッチの上側に配置された第2アンテナパッチの給電地点に連結された給電ラインは貫通地点を通過する。第1アンテナパッチの貫通地点は、第1アンテナパッチの給電地点を介して生成される電場に対する影響を最小化させる領域内に形成される。アンテナ100の具体的な構成の実施形態は、後述する。」 「【0024】 RFシステム20aは、アンテナモジュール100a及びRFICチップ200aを含む。アンテナモジュール100aは、アンテナパッケージとも称され、図2Aに示すように、基板(substrate)120a、及び基板120aに形成された導電体110aを含む。」 「【0033】 図3Aを参照すると、アンテナモジュール30は、相互に平行にZ軸方向に離隔されて配置された第1アンテナパッチ31、第2アンテナパッチ32a、及び第3アンテナパッチ32bを含む。第1アンテナパッチ31は第1周波数帯域のRF信号を送受信するように構成され、第2アンテナパッチ32a及び第3アンテナパッチ32bは第2周波数帯域のRF信号を送受信するように構成される。例えば、第1周波数帯域は低周波数帯域であり、第2周波数帯域は高周波数帯域である。アンテナパッチ(31、32)は、金属のような伝導性物質で構成され、それぞれが円形の形状を有する。」 「【0035】 一実施形態において、5G(又は、NR(new radio))の標準を定義する3GPP(3rd Generation Partnership Project)で指定されたミリメートル波(mmW)のデータ通信のための複数の周波数帯域のうち、2つの周波数帯域でのRF信号の送受信を支援するように、アンテナモジュール30が具現される。このとき、アンテナパッチ(31、32)のそれぞれの半径は異なり、例えば、第1アンテナパッチ31、第2アンテナパッチ32a、第3アンテナパッチ32bの順序で半径が小さくなる。また、アンテナパッチ(31、32)のそれぞれの誘電率は同一(例えば、第1アンテナパッチ31と第2アンテナパッチ32aとの誘電率と、第2アンテナパッチ32aと第3アンテナパッチ32bとの誘電率は、同一である)であり、アンテナパッチ(31、32)のそれぞれの間隔は同一である。但し、それは例示的な実施形態に過ぎず、それに限定されるものではなく、アンテナパッチ(31、32)の構成は、アンテナモジュール30が支援する複数の周波数帯域により多様に具現される。また、実施形態により第3アンテナパッチ32bは、省略され、それに関する実施形態は、図10などで後述する。 【0036】 アンテナモジュール30は、第1アンテナパッチ31に連結された第1ポートPT1、及び第2アンテナパッチ32aに連結された第2ポートPT2を含む。第1ポートPT1及び第2ポートPT2は、第1アンテナパッチ31及び第2アンテナパッチ32aにそれぞれ信号を供給するための給電ラインを含む。一実施形態において、第1アンテナパッチ31は、第1ポートPT1を介して第1アンテナパッチ31の給電地点から信号が供給され、信号により、第1アンテナパッチ31は、励起(excitation)されて第1周波数帯域に対応する電磁波を放射する。第2アンテナパッチ32aは、第2ポートPT2を介して第2アンテナパッチ32aの給電地点から信号が供給され、信号により、第2アンテナパッチ32aは、励起されて第2周波数帯域に対応する電磁波を放射する。また、第3アンテナパッチ32bは、励起された第2アンテナパッチ32aにカップリングされて第2周波数帯域に対応する電磁波を放射する。」 「【0041】 図3A及び図4を参照すると、アンテナモジュール30の下面に、RFICチップ200’が実装される。第1ポートPT1は第1給電ライン34を含み、第2ポートPT2は第2給電ライン35(35a、35b、35c)を含む。RFICチップ200’は、第1ポートPT1の第1給電ライン34を介して第1アンテナパッチ31の第1給電地点FP1に信号を提供し、第2ポートPT2の第2給電ライン35を介して第2アンテナパッチ32aの第2給電地点FP2に信号を提供する。第1アンテナパッチ31の第1給電地点FP1の位置及び第2アンテナパッチ32aの第2給電地点FP2の位置は、インピーダンス整合(impedance matching)によって決定される。」 「【0046】 図4に示すように、一実施形態において、第1アンテナパッチ31、第2アンテナパッチ32a、第3アンテナパッチ32bの順序で、半径が小さくなる。また、アンテナパッチ(31、32a)のそれぞれの間の第1基板の誘電率と第2基板の誘電率とは同一であり、アンテナパッチ(31、32a、32b)のそれぞれの間隔(D1、D2)はそれぞれ同一である。但し、それは例示的な実施形態に過ぎず、それらに限定されるものではなく、アンテナパッチ(31、32a、32b)の構成は、アンテナモジュール30が支援する複数の周波数帯域により多様に具現される。また、アンテナモジュール30は、第1アンテナパッチ31の下に接地板33を更に含む。」 「【図3A】 」 「【図4】 」 図4より、第2アンテナパッチ32aは、第1アンテナパッチ31の上に配置され、第3アンテナパッチ32bは第2アンテナパッチ32aの上に配置されていることが見てとれる。 また、第3アンテナパッチ32bには、何ら給電ラインが接続されてないことが見てとれる。 さらに、第2給電ライン35は、第1給電ライン34より長いことが見てとれる。 (2)拡大先願について 甲2は、令和元年10月17日の出願(特願2019−190560号)であり、パリ条約による優先権の主張(優先権主張国 韓国、優先権主張番号10−2018−0127691号(優先日 平成30年10月24日))を伴う出願である。 そして、甲2の優先権主張番号の出願の公開公報である甲2の2には、甲2と同様の内容が記載されていると認められるから、甲2に記載されている発明に関し、甲2の第一国出願日である平成30年10月24日に我が国へ出願されたものとして扱う。 (3)上記(1)の甲2の記載事項より、甲2発明として、次の発明を認定することができる。 甲2発明 「アンテナモジュールであって、 アンテナ100及び給電ライン15を含む構成は、アンテナモジュールとして、総括的に称され、(【0015】) アンテナ100は、少なくとも2つのアンテナパッチを含み、アンテナパッチは、互いに平行に積層された構成を有し、それぞれのアンテナパッチは、互いに異なる周波数帯域での信号を送受信するように構成され、アンテナパッチは、それぞれ電磁波を放射するために、給電ラインから信号が供給される少なくとも1つの給電地点を含み、アンテナパッチのうちの第1アンテナパッチは少なくとも1つの貫通地点を更に含み、第1アンテナパッチの上側に配置された第2アンテナパッチの給電地点に連結された給電ラインは貫通地点を通過し、(【0019】) アンテナモジュール30は、相互に平行にZ軸方向に離隔されて配置された第1アンテナパッチ31、第2アンテナパッチ32a、及び第3アンテナパッチ32bを含み、(【0033】) 第1アンテナパッチ31は第1周波数帯域のRF信号を送受信するように構成され、第2アンテナパッチ32a及び第3アンテナパッチ32bは第2周波数帯域のRF信号を送受信するように構成され、第1周波数帯域は低周波数帯域であり、第2周波数帯域は高周波数帯域であり、アンテナパッチ(31、32)は、それぞれが円形の形状を有し、(【0033】) 第3アンテナパッチ32bは、励起された第2アンテナパッチ32aにカップリングされて第2周波数帯域に対応する電磁波を放射するものであり、(【0036】) アンテナモジュール30の下面に、RFICチップ200’が実装され、RFICチップ200’は、第1ポートPT1の第1給電ライン34を介して第1アンテナパッチ31の第1給電地点FP1に信号を提供し、第2ポートPT2の第2給電ライン35を介して第2アンテナパッチ32aの第2給電地点FP2に信号を提供し、(【0041】) 第1アンテナパッチ31、第2アンテナパッチ32a、第3アンテナパッチ32bの順序で、半径が小さくなり、(【0046】) 第2アンテナパッチ32aは、第1アンテナパッチ31の上に配置され、第3アンテナパッチ32bは第2アンテナパッチ32aの上に配置され、第3アンテナパッチ32bには、何ら給電ラインが接続されてなく、第2給電ライン35は、第1給電ライン34より長い、(図4) アンテナモジュール30」 (4)対比・判断 ア 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」について 甲2発明のアンテナモジュール30は、「第1ポートPT1」、「第2ポートPT2」を有するものであるが、回路基板については特定されていない。 よって、本件発明1と甲2発明とは、「第1給電部と第2給電部を有する」点で共通する。 (イ)「前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナ」について 甲2発明の「アンテナパッチ」は、電磁波を放射するものである。そして、「第1ポートPT1の第1給電ライン34を介して第1アンテナパッチ31の第1給電地点FP1に信号」が提供されることから、第1給電ライン34は第1アンテナパッチ31に接続されているといえる。 また、第1アンテナパッチ31は、低周波数帯域の第1周波数帯域のRF信号を送受信するように構成されている。 そうすると、甲2発明の「第1アンテナパッチ31」、「第1ポートPT1」、「第1給電ライン34」、「第1周波数帯域のRF信号」は、それぞれ、本件発明1の「第1放射素子」、「第1給電部」、「第1給電線」、「第1周波数帯の信号」に相当する。 よって、本件発明1と甲2発明とは、「第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナ」を具備する点で共通する。 (ウ)「前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナ」について 甲2発明において、「パッチアンテナは、互いに平行に積層された構成」を有し、第2アンテナパッチ32aは第1アンテナパッチ31の上に配置され、「第1アンテナパッチ31、第2アンテナパッチ32a、第3アンテナパッチ32bの順序で、半径が小さくな」る。 また、「第2ポートPT2の第2給電ライン35を介して第2アンテナパッチ32aの第2給電地点FP2に信号」が提供されることから、第2給電ライン35は、第2アンテナパッチ32aに接続されているといえる。 さらに、第2アンテナパッチ32aは、高周波数帯域である第2周波数帯域のRF信号を送受信するように構成されている。 そうすると、甲2発明の「第2ポートPT2」、「第2給電ライン35」、「第2アンテナパッチ32a」、「高周波数帯域である第2周波数帯域のRF信号」は、それぞれ、本件発明1の「第2給電部」、「第2給電線」、「第2放射素子」、「第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号」に相当する。 よって、上記(イ)を踏まえれば、本件発明1と甲2発明とは、「前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナ」を具備する点で一致する。 (エ)「前記第2パッチアンテナの上方に配置され、第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子」について 甲2発明の「第3アンテナパッチ32b」は、第2アンテナパッチ32aの上に配置されるものであり、第2アンテナパッチ32aにカップリングされるものであり、何ら給電ラインが接続されてないから、「無給電素子」である。 また、「アンテナパッチ(31、32)は、それぞれが円形の形状を有」することから、第3アンテナパッチ32bは、板状であるといえる。 よって、本件発明1と甲2発明とは、「前記第2パッチアンテナの上方に配置され、板状の無給電素子」を具備する点で共通する。 (オ)「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナ」について アンテナモジュール30は、互いに平行に積層されたアンテナパッチを含むから、「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナ」に対応する。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナは、 第1給電部と第2給電部を有し、 第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、 前記第2パッチアンテナの上方に配置され、板状の無給電素子と、 を具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:本件発明1は、「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」を具備し、第1パッチアンテナは、「前記回路基板上に積層され」ているのに対して、甲2発明は、アンテナモジュール30は、第1ポートPTlと第2ポートPT2を有しているが、「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」を具備することについて特定されておらず、第1パッチアンテナ31が「回路基板上に積層されていない点。 相違点2:無給電素子について、本件発明1は、「第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための」ものであるのに対して、甲2発明は、当該特定がされていない点。 イ 相違点についての判断 相違点1について検討する。 甲2発明のアンテナモジュールは、回路基板を具備するものではない。 また、甲2発明のRFICチップ200’は、アンテナモジュール30を実装するものであるから、第1アンテナパッチ31が積層される回路基板に対応するとはいえない。 そして、アンテナモジュールにおいて、「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」を具備し、第1パッチアンテナを回路基板上に積層することが、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえない。 そうすると、相違点1は、実質的な相違点であるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1と甲2発明とは、実質的に同一であるとはいえない。 (5)申立理由2のまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 2 申立理由4(甲3に基づく進歩性)について (1)甲3(特開2017−98679号公報)の記載事項及び甲3発明 甲3には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて強調のために付与したものである。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、従来のスタックアンテナは、何れもダッシュボード内に設置するために設計されたものであり、これまでのETC用のパッチアンテナのように、誘電体型パッチアンテナを用いていると、例えば車両のフロントガラス等に貼付した場合、誘電体であるガラスの影響を受けて十分な利得、軸比の帯域幅を確保できなかった。また、セラミック等の誘電体を用いたETC用のパッチアンテナは、帯域が狭いため積層して用いるのにも向かなかった。 【0006】 本発明は、斯かる実情に鑑み、小型化が可能で帯域が広く、ダッシュボード内蔵にもガラス貼付にも用いることが可能な複合パッチアンテナ装置を提供しようとするものである。」 「【0014】 以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、複数の周波数帯の信号を受信可能な本発明の複合パッチアンテナ装置を説明するための概略分解斜視図である。また、図2は、本発明の複合パッチアンテナ装置を説明するための中心付近の概略横断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。また、図2ではケースを省略している。図示の通り、本発明の複合パッチアンテナ装置は、回路基板10と、ギャップ型パッチアンテナ20と、誘電体型パッチアンテナ30とから主に構成されている。そして、これらが積層されてケース1,2内に収容されている。また、ケーブル5は、DSRC送受信機等の外部機器(図示せず)に接続されている。 【0015】 回路基板10は、外部機器からのケーブル5が接続され、図2に示されるように、アンプ回路11が載置されている。回路基板10は、第1周波数帯用の第1給電部12と、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2給電部13とを有する。具体的には、第1周波数帯は、例えばETC/DSRC用の5.8GHz帯である。また、第2周波数帯は、例えばGPS用の1.5GHz帯である。また、回路基板10は、一方の面にベタアース14が配置されている。図2に示されるように、アンプ回路11が裏面に載置され、アンプ回路11が載置される面と反対側の面にベタアース14が配置されている。なお、アンプ回路11はICチップによるものであってもディスクリート部品等により組まれたものであっても良い。ベタアース14は、アンプ回路11等の回路基板10に載置される電気回路のグラウンドとなるものである。また、ベタアース14は、後述のギャップ型パッチアンテナ20の地板としての機能も有するものである。第1給電部12や第2給電部13は、ベタアース14とは電気的に絶縁された状態でスルーホール等で設けられれば良い。 【0016】 ギャップ型パッチアンテナ20は、第1周波数帯に対応するアンテナである。例えば、ギャップ型パッチアンテナ20は、ETC/DSRC用のアンテナである。ギャップ型パッチアンテナ20は、放射エレメント21と、第1給電線22とを有している。放射エレメント21は、回路基板10に対して所定のエアギャップGを介して平行に配置されている。このように配置されることで、放射エレメント21は、回路基板10のベタアース14と共にマイクロストリップアンテナを構成する。第1給電線22は、放射エレメント21に接続され回路基板10の第1給電部12に接続される。 【0017】 ここで、放射エレメント21は、具体的には主要部が一辺λ/2長の略方形状であり、1点給電型の円偏波パッチアンテナとするために、縮退分離素子部23がその対角の角部領域に装荷されている。縮退分離素子部23は、放射エレメント21で発生する直交する2つの偏波のバランスをずらすためのものであるため、切り欠きや突出部等であれば良い。さらに、放射エレメント21は、放射エレメント21の略中央を貫通する孔部25を有している。孔部25は、後述するが、第2給電線33が電気的に絶縁された状態で貫通するものである。放射エレメント21は、例えば銅板を切り出す等する板金加工により形成されれば良い。 【0018】 また、第1給電線22は、回路基板10の第1給電部12に接続される。ここで、図示例では、第1給電線22は、放射エレメント21の周縁部から延在する例を示した。具体的には、回路基板10に接続されるケーブル5の長手方向に対して放射エレメント21の中心から見て平行とならない周縁部から延在している。具体的には、ケーブル5側の辺とは異なる横側の辺から延在している。これにより、ケーブル5との干渉を避けている。本発明では、第1給電線22はケーブル5との相互影響を受けない程度に構成されていれば良いため、ケーブル5の真上等を避けて配置されていれば良い。 【0019】 第1給電線22は、例えば放射エレメント21と同一部材で構成されれば良い。即ち、例えば銅板を切り出した後、折り曲げる等する板金加工により放射エレメント21と第1給電線22とを一体形成することが可能である。これにより、ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21を有効活用できると共に、第1給電線22の給電位置による導体損失も最小限に抑えられる。 【0020】 誘電体型パッチアンテナ30は、ギャップ型パッチアンテナ20上に電気的に絶縁された状態で積層されるものである。図示例では、ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21上に積層されている。例えば、両面テープ等の粘着剤7で電気的に絶縁された状態で載置されれば良い。そして、誘電体型パッチアンテナ30は、第2周波数帯に対応するものである。例えば、誘電体型パッチアンテナ30は、GPS用のアンテナである。誘電体型パッチアンテナ30は、誘電体層31と、放射電極32と、第2給電線33とを有する。誘電体層31は、貫通孔34を有している。貫通孔34には、第2給電部33が貫通するように構成されている。誘電体層31は、例えばセラミック板からなるものであれば良い。 【0021】 ここで、放射電極32は、誘電体層31の一方の面に配置されている。具体的には、ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21側に対向する誘電体層31の面に配置されている。具体的には、放射電極32は一辺が約11mmの正方形である。放射電極32についても、1点給電型の円偏波パッチアンテナとするために、縮退分離素子部がその対角の角部領域に装荷されている。また、図示例では、誘電体層31の他方の面には、グラウンド電極35が配置されている。グラウンド電極35は、誘電体層31の貫通孔34に対応する孔部36を有している。ここで、放射電極32は、グラウンド電極35と共にマイクロストリップアンテナを構成する。なお、本発明の複合パッチアンテナ装置は、これに限定されず、誘電体型パッチアンテナ30の放射電極32は、回路基板10のベタアース14と共にマイクロストリップアンテナを構成するようにしても良い。 【0022】 また、第2給電線33は、放射電極32に接続されている。具体的には、第2給電線33は、放射電極32の略中央に接続されているが、より具体的には中心からは少しずらして接続されている。これは右旋円偏波を受信するためである。そして、第2給電線33は、誘電体層31の貫通孔34とギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21の孔部25とを貫通して回路基板10の第2給電部13に接続されている。より具体的には、放射電極32の略中央に接続される第2給電線33は、真下、即ち回路基板10側に向かって誘電体層31の貫通孔34を通り、グラウンド電極35の孔部36を通ると共に、さらにギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21の孔部25を貫通して回路基板10の第2給電部13に接続されている。このように、第2給電線33は、グラウンド電極35の孔部36だけでなく、ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21の孔部25に対しても、電気的に結合せず絶縁された状態で放射電極32から直線的に第2給電部13に接続されている。ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21の孔部25は、グラウンド電極35の孔部36よりも大きいものである。孔部25の大きさを、第2給電線33に影響を及ぼさない程度に大きくすることで、ギャップ型パッチアンテナ20のアンテナ性能を向上させることが可能である。」 「【図1】 」 「【図2】 」 図1、図2より、誘電体型パッチアンテナ30の放射電極32は、ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21より小さいことが見てとれる。 また、図1、図2より、誘電体型パッチアンテナ30の第2給電線33は、ギャップ型パッチアンテナ20の第1給電線22より長いことが見てとれる。 上記記載事項より、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「回路基板10と、ギャップ型パッチアンテナ20と、誘電体型パッチアンテナ30とから構成される複合パッチアンテナ装置であって、(【0014】) 回路基板10は、第1周波数帯用の第1給電部12と、第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2給電部13とを有し、第1周波数帯は、例えばETC/DSRC用の5.8GHz帯であり、第2周波数帯は、例えばGPS用の1.5GHz帯であり、回路基板10は、一方の面にベタアース14が配置され、アンプ回路11が裏面に載置され、アンプ回路11が載置される面と反対側の面にベタアース14が配置され、(【0015】) ギャップ型パッチアンテナ20は、第1周波数帯に対応するETC/DSRC用のアンテナであり、放射エレメント21と、第1給電線22とを有し、放射エレメント21は、回路基板10に対して所定のエアギャップGを介して平行に配置され、第1給電線22は、放射エレメント21に接続され回路基板10の第1給電部12に接続され、(【0016】) 放射エレメント21は、具体的には主要部が一辺λ/2長の略方形状であり、(【0017】) 誘電体型パッチアンテナ30は、ギャップ型パッチアンテナ20上に電気的に絶縁された状態で積層され、第2周波数帯に対応するGPS用のアンテナであり、誘電体層31と、放射電極32と、第2給電線33とを有し、(【0020】) 放射電極32は、放射エレメント21より小さく、第2給電線33は、第1給電線22より長いものであり、(図1、図2) 放射エレメント21は、放射エレメント21の略中央を貫通する孔部25を有しており、孔部25は、第2給電線33が電気的に絶縁された状態で貫通するものであり、(【0017】) 第2給電線33は、放射電極32に接続され、回路基板10の第2給電部13に接続される、(【0022】) 複合パッチアンテナ装置」 (2)対比・判断 ア 本件発明1について (ア)本件発明1と甲3発明とを対比する。 A 「第1給電部と第2給電部を有する回路基板」について 甲3発明の「回路基板10」は、本件発明1の「回路基板」に相当し、回路基板10が有する「第1給電部12」及び「第2給電部13」は、それぞれ、本件発明1の「第1給電部」及び「第2給電部」に相当する。 B 「前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナ」について 甲3発明のギャップ型パッチアンテナの「放射エレメント」はパッチアンテナの「放射素子」といえる。 また、甲3発明のギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21は、「回路基板10に対して所定のエアギャップGを介して平行に配置され」るものであるから、甲3発明の「ギャップ型パッチアンテナ20」は、回路基板10上に積層されているといえる。 また、甲3発明の「ギャップ型パッチアンテナ20」が有する「第1給電線22」は、「放射エレメント21に接続され回路基板10の第1給電部12に接続され」ている。 そして、甲3発明の「ギャップ型パッチアンテナ20」は、「第1周波数帯に対応するETC/DSRC用のアンテナ」である。 そうすると、甲3発明の「ギャップ型パッチアンテナ20」、「第1給電線22」、「放射エレメント21」は、それぞれ本件発明1の「第1パッチアンテナ」、「第1給電線」、「第1放射素子」に対応する。 よって、本件発明1と甲3発明とは、「前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナ」を具備する点で一致する。 C 「前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナ」について 甲3発明の誘電体型パッチアンテナの「放射電極」はパッチアンテナの「放射素子」といえる。 また、甲3発明の「誘電体型パッチアンテナ30」が有する「第2給電線33」は、「放射電極32に接続され、回路基板10の第2給電部13に接続され」ている。 そして、甲3発明において、「誘電体型パッチアンテナ30」は、ギャップ型パッチアンテナ20上に積層され、「第2周波数帯に対応するGPS用のアンテナ」であり、また、「第2給電線33」は、「第1給電22より長」く、「放射エレメント21」を貫通するものであり、さらに、「放射電極32」は、「放射エレメント21より小さ」いものである。 そうすると、甲3発明の「誘電体型パッチアンテナ30」、「第2給電線33」、「放射電極32」は、それぞれ本件発明1の「第2パッチアンテナ」、「第2給電線」、「第2放射素子」に対応する。 よって、本件発明1と甲3発明とは、「前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナ」を具備する点で共通する。 D 「前記第2パッチアンテナの上方に配置され、第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子」について 甲3発明は、「無給電素子」を具備することについて特定されていない。 E 「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナ」について 上記A〜Dより、甲3発明の「複合パッチアンテナ装置」は、本件発明1の「複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナ」に対応する。 以上A〜Eをまとめると、本件発明1と甲3発明とは、次の点で一致し、また相違する。 [一致点] 複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナは、 第1給電部と第2給電部を有する回路基板と、 前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、 を具備する積層型パッチアンテナ。」 [相違点] 相違点1:本件発明1は、第2周波数帯が第1周波数帯よりも高いことを特定しているのに対して、甲3発明は、第2周波数帯は、第1周波数帯よりも低い点。 相違点2:本件発明1は、「前記第2パッチアンテナの上方に配置され、第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子」を具備するのに対して、甲3発明は、当該事項が特定されていない点。 (イ)相違点についての判断 相違点1について 甲1([0027])、甲4(【0012】、【0015】)には、積層されるパッチアンテナにおいて、低周波の信号を受信するパッチアンテナ上に高周波の信号を受信するパッチアンテナを積層することが記載されていると認められる。 しかしながら、甲3発明は、「誘電体型パッチアンテナを用いていると、例えば車両のフロントガラス等に貼付した場合、誘電体であるガラスの影響を受けて十分な利得、軸比の帯域幅を確保できなかった」(【0005】)ことを従来の課題の一つとし、「小型化が可能で帯域が広く、ダッシュボード内蔵にもガラス貼付にも用いることが可能な複合パッチアンテナ装置を提供」するもの(【0006】)であり、第1周波数帯に対応するETC/DSRC用の「ギャップ型パッチアンテナ20」を回路基板10上に積層し、「ギャップ型パッチアンテナ20」上に第1周波数帯より低い第2周波数帯に対応するGPS用の「誘電体型パッチアンテナ30」を積層するものである。 そして、甲3発明において「ギャップ型パッチアンテナ20」の「放射エレメント21は、具体的には主要部が一辺λ/2長の略方形状」であるから、甲3発明において、回路基板10に積層されるギャップ型パッチアンテナ20を低い周波数帯である第2周波数帯に対応するGPS用のアンテナとした場合、ギャップ型パッチアンテナ20の放射エレメント21が大型化することにより、複合パッチアンテナ装置の小型化を図ることの妨げとなることは、当業者にとって明らかである。 そうすると、小型化が可能な複合パッチアンテナ装置を提供することを目的とする甲3発明において、上記甲1、甲4に記載される技術を適用することには阻害要因があり、適用する動機付けがあるとはいえない。 また、他の甲号証及び参考資料を見ても、当該動機付けとなる記載はされていない。 したがって、甲3発明において、回路基板10に積層される「ギャップ型パッチアンテナ20」を低い周波数帯である第2の周波数帯に対応する「GPS用」のアンテナとすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 相違点2について 甲3発明は、回路基板10上に、高い周波数帯である第1周波数帯に対応するETC/DSRC用のギャップ型パッチアンテナ20を配置するものであるから、本件発明が課題とするような、第1周波数帯より高い第2周波数帯の信号の給電線が長くなることによる仰角受信特性が劣化することについて、想定されるものではない。 したがって、甲3発明において、高い周波数帯用のギャップ型パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子を配置することが、容易であるとはいえない。 (ウ)小括 上記(イ)のとおり、相違点1、2は、当業者が容易になし得たものとはいえない。 したがって、本件発明1は、甲3発明、甲1、甲4に記載された事項及び甲5〜甲8に記載の周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2〜11について 本件発明2〜11は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明1の特定事項を全て含むから、上記ア(ア)の相違点1、2を有するものであり、本件発明1と同様の理由により、甲3発明及び甲1、甲4に記載された事項、甲5〜甲8に記載の周知技術、及び甲7、甲9、甲10〜甲12に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由4のまとめ 以上のとおりであるから、申立理由4には理由がない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数のパッチアンテナを用いる積層構造の積層型パッチアンテナであって、該積層型パッチアンテナは、 第1給電部と第2給電部を有する回路基板と、 前記回路基板上に積層され、第1給電部に接続される第1給電線と、第1給電線が接続される第1放射素子とを有し、第1周波数帯の信号を受信可能な第1パッチアンテナと、 前記第1パッチアンテナ上に積層され、第1給電線よりも長く第1放射素子を貫通して第2給電部に接続される第2給電線と、第1放射素子よりも小さく、第2給電線が接続される第2放射素子とを有し、第1周波数帯よりも高い第2周波数帯の信号を受信可能な第2パッチアンテナと、 前記第2パッチアンテナの上方に配置され、第2パッチアンテナの仰角受信特性を改善するための板状の無給電素子と、 を具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項2】 請求項1に記載の積層型パッチアンテナにおいて、 前記第1パッチアンテナは、第1放射素子が板状エレメントからなる板状エアパッチアンテナであり、 前記回路基板は、地導体パターンを有する、 ことを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項3】 請求項2に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第1放射素子は、回路基板に所定の間隔を設けて対向配置される四角形状の板状エレメントと、板状エレメントを支えるための複数の脚部とを有することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項4】 請求項3に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記脚部の少なくとも1つが板状エアパッチアンテナの第1給電線であることを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項5】 請求項3に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第1パッチアンテナの第1給電線は、板状エレメントの放射面の一部を切り曲げ加工して形成されることを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項6】 請求項5に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第2パッチアンテナの第2給電線は、第1給電線を形成する切り曲げ加工により開けられるスリットを貫通することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項7】 請求項2乃至請求項6の何れかに記載の積層型パッチアンテナであって、さらに、回路基板、第1パッチアンテナ、及び無給電素子を支えるための一体型樹脂ホルダを具備し、 前記第2パッチアンテナは、第1放射素子に固定される、 ことを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項8】 請求項7に記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記一体型樹脂ホルダは、板状エアパッチアンテナと回路基板との間に配置され板状エアパッチアンテナを支持する板支持部と、板支持部から回路基板側に延在し回路基板を保持する回路基板係止爪と、板支持部から無給電素子側に延在し無給電素子を保持する無給電素子係止爪と、を具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項9】 請求項1乃至請求項8の何れかに記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記第2パッチアンテナは、誘電体としてセラミック、合成樹脂、多層基板の何れかを用いることを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項10】 請求項1乃至請求項9の何れかに記載の積層型パッチアンテナにおいて、前記無給電素子は、対向する平行な2辺の側辺とこれらに直角な下辺を有すると共に下辺よりも短く下辺に平行な上辺を有する六角形状からなり、上面視で上辺から下辺までの長さが第2パッチアンテナの上辺から下辺までの長さよりも長く幅よりも狭いことを特徴とする積層型パッチアンテナ。 【請求項11】 請求項1乃至請求項6の何れかに記載の積層型パッチアンテナであって、さらに、前記第2パッチアンテナと無給電素子との間に配置され無給電素子を支えるための、絶縁性スペーサを具備することを特徴とする積層型パッチアンテナ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-12-28 |
出願番号 | P2019-143359 |
審決分類 |
P
1
651・
855-
YAA
(H01Q)
P 1 651・ 161- YAA (H01Q) P 1 651・ 851- YAA (H01Q) P 1 651・ 854- YAA (H01Q) P 1 651・ 113- YAA (H01Q) P 1 651・ 841- YAA (H01Q) P 1 651・ 121- YAA (H01Q) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
角田 慎治 |
特許庁審判官 |
衣鳩 文彦 丸山 高政 |
登録日 | 2021-07-21 |
登録番号 | 6917419 |
権利者 | 原田工業株式会社 |
発明の名称 | 積層型パッチアンテナ |
代理人 | 生井 和平 |
代理人 | 生井 和平 |