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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G16H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G16H
管理番号 1395245
総通号数 15 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-10-20 
確定日 2023-02-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第7058419号発明「薬局支援システム及び薬局支援方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7058419号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7058419号の請求項1〜6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月11日に出願され、令和4年4月14日にその特許権の設定登録がされ、同年4月22日に特許公報が発行された。その後、本件特許に対し、同年10月20日に特許異議申立人 松本文彦(以下「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第7058419号の請求項1〜6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明6」といい、合わせて「本件発明」ともいう。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
薬局に対応するメッセージサービスで用いられる薬局アカウントと、前記薬局の顧客に対応する前記メッセージサービスで用いられる顧客アカウントを管理するアカウント管理手段と、
前記顧客に調剤した処方箋の内容を管理する処方箋管理手段と、
前記処方箋ごとに、前記処方箋の内容に応じたタイミングで、前記薬局アカウントから前記顧客アカウントに対して、前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信するメッセージ処理手段と、
前記メッセージ処理手段が送受信したメッセージを管理するメッセージ管理手段と、
前記メッセージ管理手段が管理するメッセージを前記薬局に配置された薬局端末に供給する薬局端末処理手段とを有し、
前記メッセージ処理手段は、前記処方箋の内容に基づいて、前記処方箋により調剤される薬剤を前記顧客が服薬する服薬期間の開始日及び最終日を推定し、前記服薬期間内の1又は複数の日を選択し、選択された日に前記質問メッセージを送信する
ことを特徴とする薬局支援システム。
【請求項2】
前記メッセージ処理手段は、前記服薬期間の開始日、前記服薬期間の中日、及び前記服薬期間の最終日から1以上の日を選択し、選択された日に前記質問メッセージを送信することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の薬局支援システム。
【請求項3】
前記メッセージ処理手段は、前記服薬期間の開始日、前記服薬期間の中日、及び前記服薬期間の最終日のそれぞれについて、異なる健康相談シナリオに従った質問メッセージを送信することが可能であること特徴とする請求項1又は2に記載の薬局支援システム。
【請求項4】
前記メッセージ処理手段は、前記顧客アカウントから送信された前記質問メッセージに回答するものでない任意のフリー入力メッセージについても受付可能であり、
前記メッセージ管理手段は、少なくとも前記質問メッセージ、前記回答メッセージ及びフリー入力メッセージについて併せて管理する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬局支援システム。
【請求項5】
前記メッセージ処理手段は、前記薬局端末で入力された前記顧客アカウントを宛先とするメッセージを取得し、前記顧客アカウントを宛先として送信することを特徴とする請求項1に記載の薬局支援システム。
【請求項6】
薬局支援方法において、
アカウント管理手段、処方箋管理手段、メッセージ処理手段、メッセージ管理手段、及び薬局端末処理手段を有し、
前記アカウント管理手段は、薬局に対応するメッセージサービスで用いられる薬局アカウントと、前記薬局の顧客に対応する前記メッセージサービスで用いられる顧客アカウントを管理し、
前記処方箋管理手段は、前記顧客に調剤した処方箋の内容を管理し、
前記メッセージ処理手段は、前記処方箋ごとに、前記処方箋の内容に応じたタイミングで、前記薬局アカウントから前記顧客アカウントに対して、前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信し、
前記メッセージ管理手段は、前記メッセージ処理手段が送受信したメッセージを管理し、
前記薬局端末処理手段は、前記メッセージ管理手段が管理するメッセージを前記薬局に配置された薬局端末に供給し、
前記メッセージ処理手段は、前記処方箋の内容に基づいて、前記処方箋により調剤される薬剤を前記顧客が服薬する服薬期間の開始日及び最終日を推定し、前記服薬期間内の1又は複数の日を選択し、選択された日に前記質問メッセージを送信する
ことを特徴とする薬局支援方法。」

第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証〜甲第6号証を証拠として提出している(以下、それぞれ、「甲1」〜「甲6」という。)。
甲第1号証(甲1):特開2009− 31889号公報
甲第2号証(甲2):特開2018−142955号公報
甲第3号証(甲3):特開2011−188327号公報
甲第4号証(甲4):特開2011− 91820号公報
甲第5号証(甲5):特開2015− 26233号公報
甲第6号証(甲6):特開2017− 45372号公報

2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する本件発明についての具体的な特許異議の申立ての理由は以下のとおりである。
(1) 理由1(新規性欠如)
本件発明1〜4及び6は、甲1に記載された発明であるから、その発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号(以下、単に「29条1項3号」等という。)の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1〜4及び6についての特許は、113条2号の規定により取り消されるべきものである。

(2) 理由2(進歩性欠如)
本件発明1〜6は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、あるいは、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項若しくは甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明についての特許は、29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1〜6についての特許は、113条2号の規定により取り消されるべきものである。

第4 異議申立人が提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線加筆、以下同じ。)。
「【請求項1】
患者に対して診察後のケアに関するサービスを提供する医療サービス提供システムであって、
時間を常時計測し、現在の年月日および時刻を表す暦情報を発生する計時手段と、
薬の服用期間が終了することを通知する電子メールの文面を示した文字列情報を記憶する通知メール記憶手段と、
前記複数の患者の各々に付与された固有の患者識別情報と、少なくとも該患者識別情報に対応する患者の電子メール送信先を表す送信先情報とを記憶する患者情報記憶手段と、
前記患者を診察した診察日および該診察日に処方した薬の名称、用量、用法、分量などに関する情報を含む処方箋情報を、該患者に付与された患者識別情報に対応付けて記憶する処方箋情報記憶手段と、
前記通知メール記憶手段に記憶されている文字列情報に、前記処方箋情報記憶手段に記憶されている該患者に固有の処方箋情報を組み込んで、服用終了通知メールを生成する通知メール生成手段と、
前記処方箋情報記憶手段に記憶された前記処方箋情報に基づいて、該処方箋情報に対応付けられた患者識別情報によって特定される患者に処方された薬の服用期間終了日を算出する終了日算出手段と、
前記計時手段が発生する暦情報と、前記終了日算出手段によって算出された服用期間終了日とに基づいて、前記通知メール生成手段によって生成された服用終了通知メールを送信するか否かを決定する通知メール送信決定手段と、
前記通知メール送信決定手段が、前記服用終了通知メールを送信すると決定した場合、該服用終了通知メールを、前記患者情報記憶手段に記憶された該患者の送信先情報に従って送信するメール送信手段と
を具備することを特徴とする医療サービス提供システム。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、診察後における患者のケアに関するサービスの提供を可能とする医療サービス提供システムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の各種システムでは、診察後の患者に対するケアについて、十分なサービスを提供することは困難である。すなわち、特許文献1に開示されているシステムでは、患者の利便性は向上するが、処方された薬を購入してから次の診察予約を行うまでの間は、患者に対して何らサービスを提供することがない。また、特許文献2に開示されているシステムでは、患者の帰宅後、自宅の端末から薬局や病院のサーバへアクセスして、薬の効能・用法や、症状変化に対する対応方法などについて問合せることはできるが、患者自らが行動を起こさなければならないため、たとえばパソコンの操作が苦手な患者は、上述した折角のサービスを利用しないおそれがある。また、核家族化および高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増えつつある昨今、医療を提供する側から患者に対して、積極的にサービスを提供することができるシステムの必要性が高まることが予想される。
【0007】
そこで、本発明は、診察後における患者のケアに関するサービスを、医療機関側から患者に対して提供することができる医療サービス提供システムを提供することを目的としている。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る医療サービス提供システムの全体的な構成を示す図であり、本実施の形態における医療サービス提供システムが設置される医療機関としての病院1と、上記医療サービス提供システムからサービスを受ける患者の携帯電話2と、薬局3とが図示されている。患者が所持する携帯電話2は、基地局4と無線で通信を行い、他の電話機と電話回線(図示略)を介して会話をすることができるとともに、インターネット5を介して他の情報端末とのデータ通信が可能となっている。また、薬局3には本実施の形態における医療サービス提供システムからサービスを受けるパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)30が設置されており、同じく薬局3内に設置されているルータ31を介して、インターネット5に接続されている他の情報端末と、データ通信が可能となっている。
【0022】
病院1内にはLAN(Local Area Network)10が構築されており、LAN10には、院内サーバ11、病院1に勤務する各医師に割り当てられているパソコン12a,12b、および、ルータ13が接続されている。院内サーバ11は、たとえば、医療事務などを行う部署に設置され、ルータ13およびインターネット5を介して、携帯電話2および薬局3に設置されたパソコン30と、各種情報の通信を行う。また、詳しくは後述するが、院内サーバ11は、各種データベース(以下、「データベース」をDBと記す)を構築しており、院内サーバ11が備えているキーボード(後述する)から入力されるデータ、および、病院1において各医師が診察を行う診察室に設置されたパソコン12a,12bからLAN10を介して送信されてくるデータにより、各DB内のデータを更新する。さらに、院内サーバ11は、患者および薬局3に対して各種サービスを提供するため、各DBに格納されたデータに基づき、ルータ13およびインターネット5を介して、前述した携帯電話2および薬局3内のパソコン30へ情報を提供する。」
「【0027】
データベース記憶装置117およびメール情報記憶装置118は、たとえばハードディスクドライブなどの補助記憶装置であり、データベース記憶装置117は、患者DB、予約DB、カルテ/処方箋DB、薬剤DBといった各種DBを構成するデータを記憶している。また、メール情報記憶装置118には、メール送信スケジュール記憶領域、メール文面記憶領域、および、メールデータ記憶領域が設けられている。メール送信スケジュール記憶領域には、携帯電話2へ送信する電子メールの送信スケジュールを管理するためのメール送信スケジュール情報(詳しくは後述する)が格納される。また、メール文面記憶領域には、患者が所持する携帯電話2へ送信する電子メールのフォーマットを成す文字列情報(以下、メール文面情報という)が格納される。さらに、メールデータ記憶領域には、上述した電子メールのフォーマットに基づいて生成された各患者へ送信する電子メールと、各患者から受信した電子メールとが格納される。
【0028】
次に、図3〜図6を参照してデータベース記憶装置117に記憶されている患者DB、予約DB、カルテ/処方箋DB、薬剤DBの内容について説明する。図3は、患者DBに記憶されているデータの内容を示したものであり、たとえば初診時などに各患者に固有に付与された文字、数字、記号からなる患者ID(患者識別情報)と、患者の氏名と、患者が所有する診察券に付与された固有の番号(以下、診察券No.という)と、患者によって指定されたメールアドレス(送信先情報)とが相互に関連付けられて格納されている。これら患者に関するデータは、初診の際に患者が記入した問診票などに基づいて院内サーバ11のキーボード114から患者DBに登録される。この患者DB110は、患者情報記憶手段に相当する。図4は予約DBに記憶されているデータの内容を示したものであり、上述した患者ID、患者が診察の予約をしたときに付与される予約No.、診察予約日、予約時間帯、診察を希望する医科、担当医の氏名が相互に関連付けられて格納されている。これらのデータは、患者が診察予約をした時に院内サーバ11のキーボード114から予約DBに登録される。この予約DBは、予約情報記憶手段に相当する。
【0029】
図5は、カルテ/処方箋DBに記憶されているデータの内容を示したものであり、カルテ/処方箋DBには、各医師ごとに、担当した患者の診察内容などが記憶される。具体的には図5に示すとおり、医師の氏名および当該医師が属する医科を示すデータに対して、診察した患者の患者ID、当該患者の診察日、各診察日に行った診察における問診の内容および所見、各診察の際に医師が処方した薬の種類を示す薬剤IDおよび分量が、相互に関連付けられて格納されている。ここで、薬剤IDは病院1で処方し得る薬の各々に、固有に付与された識別情報(後述する)である。また、上述した薬の分量は、投薬期間(すなわち服用期間でもある)の日数によって表される。図5においては、処方箋DBには3種類までの薬が登録可能になっているが、薬の種類を登録できる数はこれ以上であってもよい。このカルテ/処方箋DBは、処方箋情報記憶手段に相当する。」
「【0032】
図8は、メール情報記憶領域に格納されているメール文面情報の内容の一例を説明するための説明図であり、図8(a)は服用終了通知メール、図8(b)は服用時間報知メールの文面情報の内容を示している。これらの文面は、テキストデータとしてメール情報記憶装置118に記憶されており、各メールの文面において、「&」で挟まれた変数名の位置には、各メールを送信する患者に特有の情報がCPU110によって置換・挿入されて各患者宛てのメールが生成される。すなわち、図8(a)に示す服用終了通知メールでは、メールの文面に「&Name&」、「&Date&」、「&mdep&」、「&term&」という変数名が含まれており、CPU110がある患者宛の服用終了通知メールを作成する際に、「&Name&」という変数名の位置に、メールを送信する患者の氏名が患者DBから読み出されて置換・代入される。また、「&Date&」、「&mdep&」、「&term&」という変数名の位置には、それぞれ、メールを送信する患者の、診察日、診察を受けた医科、処方された薬の分量がカルテ/処方箋DBから読み出されて置換・代入される。」
「【0034】
次に、図9〜図14を参照して、上述した構成からなる本実施の形態における動作について説明する。図9は、LAN10を介してパソコン12aまたは12bから送信されてきたカルテ/処方箋データを、院内サーバ11が、図5に示したカルテ/処方箋DBに登録する際に実行する、カルテ/処方箋データ登録処理の流れを示すフローチャートである。」
「【0068】
以上説明した医療サービス提供システムによれば、病院1内の各診察室に設置されたパソコン12a,12bから、患者のカルテ/処方箋データがLAN10を介して院内サーバ11へ送信されると、院内サーバ11のCPU110は、図9に示したカルテ/処方箋データ登録処理を実行し、受信したカルテ/処方箋データを、院内サーバ11のデータベース情報記憶装置117に格納されているカルテ/処方箋DBに登録する(ステップS3)。また、このとき、CPU110は、受信したカルテ/処方箋データに基づいて、当該患者に処方した薬の服用終了日を算出し(ステップS5)、当該患者に服用終了日が近づいてきたことを知らせるための服用終了通知メールを生成する(ステップS6)。この服用終了通知メールは、メール情報記憶装置118のメールデータ記憶領域に保存され(ステップS7)、午前0時になると、CPU110は、図11に示した服用終了通知メール送信処理を実行し、診察した患者のうち、服用終了日の2日前になっている患者(ステップS42,YES)の服用終了通知メールを、メール情報記憶装置118から読み出し(ステップS44)、当該患者に宛てて送信する(ステップS45)。
【0069】
これにより、上述した服用終了通知メールを携帯電話2で受信した患者は、薬の服用期間の終了が間近になったことを知ることができ、また、そのときの体調に応じて、次回の診察を予約するか否かを判断する契機とすることができる。よって、本実施形態における医療サービス提供システムにより、患者に対して診察後のケアに関するサービスを提供することができる。
【0070】
また、院内サーバ11のCPU110は、予め定められた周期ごとに、図13に示した返信メールチェック処理を実行して、各患者へ送信した服用終了通知メールに対する返信メールを受信したか否かをチェックする。そして、病院の事務業務の開始時刻になると、CPU110は、図14に示す警報処理を実行し、服用終了通知メールを送信した患者からの返信メールを受信していない場合(ステップS73,NO)、ディスプレイ115に、当該患者のID、氏名、および、返信メールを受信していない旨のメッセージを表示する(ステップS74)。これにより、患者へ送信した服用終了通知メールに対する応答がないことを、病院1に勤務する担当者などが、いち早く察知することができ、当該患者の容態を確認するなどの措置を迅速に取ることができる。」
「【図8】



ア 上記【0021】によれば、医療サービス提供システムは、医療機関としての病院1に設置されており、患者の携帯電話2と、薬局3にサービスを提供するものである。また、薬局3には、医療サービス提供システムからサービスを受けるパソコン30が設置されている。

イ 上記【0022】によれば、病院1内にはLAN10が構築され、LAN10には、院内サーバ11が接続されている。また、院内サーバ11は、携帯電話2および薬局3に設置されたパソコン30と、各種情報の通信を行うものであり、データを入力するキーボードを備えるものである。

ウ 上記【0027】によれば、院内サーバ11は、データベース記憶装置117及びメール情報記憶装置118を備え、データベース記憶装置117は、患者DBやカルテ/処方箋DBといった各種DBを構成するデータを記憶しており、メール情報記憶装置118は、メール送信スケジュール記憶領域、メール文面記憶領域及びメールデータ記憶領域が設けられている。

エ そして、同じく上記【0027】によれば、メール送信スケジュール記憶領域には、携帯電話2へ送信する電子メールの送信スケジュールを管理するためのメール送信スケジュール情報が格納され、メール文面記憶領域には、患者が所持する携帯電話2へ送信する電子メールのフォーマットを成す文字列情報(メール文面情報)が格納され、メールデータ記憶領域には、電子メールのフォーマットに基づいて生成された各患者へ送信する電子メールと、各患者から受信した電子メールとが格納される。

オ 上記【0028】によれば、患者DBには、院内サーバ11のキーボード114から登録された、患者によって指定されたメールアドレス(送信先情報)が格納されている。

カ 上記【0029】によれば、カルテ/処方箋DBには、患者の診察日、医師が処方した薬の種類を示す薬剤ID及び投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量が格納されている。

キ 上記【0032】によれば、メール情報記憶領域には、服用終了通知メールが格納されており、各メールの文面において、「&」で挟まれた変数名の位置に、各メールを送信する患者に特有の情報が置換・挿入されて各患者宛てのメールが生成される。

ク 上記【0068】によれば、医療サービス提供システムは、病院1内の各診察室に設置されたパソコン12a,12bから、患者のカルテ/処方箋データが院内サーバ11へ送信されると、院内サーバ11は、カルテ/処方箋データ登録処理を実行し、受信したカルテ/処方箋データを院内サーバ11のデータベース情報記憶装置117に格納されているカルテ/処方箋DBに登録するとともに、受信したカルテ/処方箋データに基づいて、当該患者に処方した薬の服用終了日を算出し、当該患者に服用終了日が近づいてきたことを知らせるための服用終了通知メールを生成して、当該服用終了通知メールをメール情報記憶装置118のメールデータ記憶領域に保存し、午前0時になると、服用終了通知メール送信処理を実行し、診察した患者のうち、服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メールをメール情報記憶装置118から読み出して、当該患者に宛てて送信するものである。

ケ 上記【図8】によれば、「服用終了通知メール」のメール文面情報は、「そろそろお薬がなくなる頃ですが、お加減は如何でしょうか?」という内容を含むものである。

(2) 甲1発明
上記(1)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

[甲1発明]
医療機関としての病院1に設置されており、患者の携帯電話2と、医療サービス提供システムからサービスを受けるパソコン30が設置されている薬局3にサービスを提供する医療サービス提供システムにおいて、
病院1内にはLAN10が構築され、LAN10には、データを入力するキーボードを備えた院内サーバ11が接続されており、当該院内サーバ11は、携帯電話2および薬局3に設置されたパソコン30と、各種情報の通信を行うものであり、
さらに、上記院内サーバ11は、データベース記憶装置117及びメール情報記憶装置118を備え、データベース記憶装置117は、患者DBやカルテ/処方箋DBといった各種DBを構成するデータを記憶しており、メール情報記憶装置118は、メール送信スケジュール記憶領域、メール文面記憶領域及びメールデータ記憶領域が設けられているものであり、
メール送信スケジュール記憶領域には、携帯電話2へ送信する電子メールの送信スケジュールを管理するためのメール送信スケジュール情報が格納され、メール文面記憶領域には、患者が所持する携帯電話2へ送信する電子メールのフォーマットを成す文字列情報(メール文面情報)が格納され、メールデータ記憶領域には、電子メールのフォーマットに基づいて生成された各患者へ送信する電子メールと、各患者から受信した電子メールとが格納され、
患者DBには、院内サーバ11のキーボード114から登録された、患者によって指定されたメールアドレス(送信先情報)が格納され、
カルテ/処方箋DBには、患者の診察日、医師が処方した薬の種類を示す薬剤ID及び投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量が格納され、
メール情報記憶領域には、服用終了通知メールが格納されており、各メールの文面において、「&」で挟まれた変数名の位置に、各メールを送信する患者に特有の情報が置換・挿入されて各患者宛てのメールが生成されるものであり、「そろそろお薬がなくなる頃ですが、お加減は如何でしょうか?」という内容を含むものであって、
当該医療サービス提供システムは、病院1内の各診察室に設置されたパソコン12a,12bから、患者のカルテ/処方箋データが院内サーバ11へ送信されると、院内サーバ11は、カルテ/処方箋データ登録処理を実行し、受信したカルテ/処方箋データを院内サーバ11のデータベース情報記憶装置117に格納されているカルテ/処方箋DBに登録するとともに、受信したカルテ/処方箋データに基づいて、当該患者に処方した薬の服用終了日を算出し、当該患者に服用終了日が近づいてきたことを知らせるための服用終了通知メールを生成して、当該服用終了通知メールをメール情報記憶装置118のメールデータ記憶領域に保存し、午前0時になると、服用終了通知メール送信処理を実行し、診察した患者のうち、服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メールをメール情報記憶装置118から読み出して、当該患者に宛てて送信する、
医療サービス提供システム。

2 甲2について
甲2には、以下の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「【0024】
本明細書において、メッセージサービスとは、ユーザ間でテキスト、映像、音声などのような多様な形式のメッセージをやり取りするサービスであり、インスタントメッセンジャ(instant messenger)、SNS(social network service)、電子メール(E−mail)、SMS(short message service)、MMS(multi−media message service)などを含む。ここで、企業用メッセージサービスとは、社内メッセンジャのように企業に特化されたメッセージサービスを意味するものであるが、一例として、企業と関連するインターネットアカウントに基づいて該当の企業に属するユーザがメッセージをやり取りするサービスである。」

3 甲3について
甲3には、以下の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のメッセージ収集システムにおいて、
前記第1のメッセージサービスは電子メールサービスであることを特徴とするメッセージ収集システム。」

4 甲4について
甲4には、以下の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「【0002】
電気通信産業は、広くバラエティに富んだ情報や通信サービス、またはメッセージサービスを様々な通信ネットワークを通して、種々のアナログおよびディジタル通信装置を有する遠隔地の加入者に供給する傾向に向かっている。これらのメッセージサービスには、音声メッセージ、ファクシミリメッセージ、電子メール、電子書類交換、対話型音声応答、オーディオ・テキスト、音声合成、音声認識、ビデオメッセージ、ビデオメールなどが含まれる。」

5 甲5について
甲5には、以下の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「【請求項1】
ユーザによる服薬の遵守を通信回線を介して支援するサーバ装置であって、
複数のユーザの各々について該ユーザの服薬の遵守に関するステージを記憶する記憶手段と、
前記複数のユーザの各々との間において通信回線を介して情報を送受信する通信手段と、
前記通信回線を介して各ユーザの服薬の遵守を支援する複数の機能を、該ユーザの前記服薬の遵守に関するステージに応じて実行する実行手段と、
を具備することを特徴とするサーバ装置。」
「【0064】
図17は、本発明の一実施形態に係る服薬支援システムにおける端末装置30に表示されるアドバイス機能に関する画面の具体例を示す図である。図17に示すように、端末装置30の画面には、対象となるユーザ(太郎)を含む全ユーザに対して共通に作成され送信された以前のアンケート137が表示されている。図17に示す例では、ユーザは、このアンケートに対して「出張」を回答として送信したために、「出張」に対応するラジオボックスにチェックが付されている。アンケート137の右側には、「出張」を回答として送信したユーザに一律に送信されるコメント138が表示されている。なお、「平日」及び「休日」のそれぞれを回答として送信したユーザに対しては、それぞれの回答に固有に作成されたコメントが送信されることはいうまでもない。」
「【図17】



6 甲6について
甲6には、以下の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されている。
「【0046】
<残薬管理データに基づく残薬通知>
図4Fは、処方期間の終了前に患者に対して通知されるメッセージの例を示す図である。
薬袋2の発行時に設定された処方期間(患者が薬剤を服用する期間)の終了前に、電子機器3(残薬管理部308)は、処方期間の終了を知らせるメッセージとともに、残薬の種類及び量を知らせるメッセージを表示する。具体的には、残薬管理部308は、服用状況データが入力される毎に、薬剤服用管理データが示す処方された各薬剤の量から、現在までに服用された各薬剤の量を差し引いて残薬の量を算出し、記憶部31に残薬管理データ313として記憶する。そして、残薬管理部308は、処方期間の終了前の所定のタイミング(例えば、2日前の服用タイミング等)に、患者に対して、図4Fに示すように、処方期間が終了する旨及び症状が改善したか否かの確認メッセージと、残薬の種類及び量と、薬局を訪問する際に残薬を持参すると差し引かれる薬代の目安とを表示する。
これにより、処方されたものの服用されなかった残薬をより適切に管理することができるとともに、患者において、処方された薬剤をより適切に服用するための意識を向上させることができる。また、患者が残薬を薬局に持参することが促される。
なお、図4Aから図4Fに示す各表示例において、表示内容には、テキストのみならず、カラー表示された静止画及び動画を含むことができる。」
「【図4F】



第5 当審の判断
1 理由1(新規性欠如)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「医療機関としての病院1」と、本件発明1の「薬局」は「医療機関」である点で共通する。また、甲1発明の「患者」は「医療機関としての病院1」からみれば「顧客」ということができる。

(イ) 甲1発明の「医療サービス提供システム」は「患者DBには、院内サーバ11のキーボード114から登録された、患者によって指定されたメールアドレス(送信先情報)が格納され」ており、「電子メールのフォーマットに基づいて生成された各患者へ送信する電子メール」を「当該患者に宛てて送信する」ものであって、「各患者から受信した電子メール」を格納するものである。
そうすると、甲1発明の「医療サービス提供システム」では、電子メールによる「メッセージサービス」が行われているということができる。
そして、「患者によって指定されたメールアドレス」(患者メールアドレス)は、「メッセージサービス」のアカウントとして用いられているといえるから、「患者アカウント」ということができる。また、「医療サービス提供システム」は「医療機関としての病院1」が「各患者から受信した電子メール」を格納するのであるから、「医療機関としての病院1」もメールアドレスを有し、アカウントとして用いられているところ、「医療機関としての病院1のメールアドレス」は、「医療機関アカウント」ということができる。なお、甲1発明の「院内サーバ11」が「患者アカウント」及び「医療機関アカウント」を管理する手段を有していることは明らかである。
したがって、甲1発明において、「「医療機関としての病院1」に対応する「メッセージサービス」で用いられる「医療機関アカウント」と、「医療機関としての病院1」の「患者(顧客)」に対応する「メッセージサービス」で用いられる「患者アカウント」を管理する手段」と、本件発明1の「薬局に対応するメッセージサービスで用いられる薬局アカウントと、前記薬局の顧客に対応する前記メッセージサービスで用いられる顧客アカウントを管理するアカウント管理手段」とは、「医療機関に対応するメッセージサービスで用いられる医療機関アカウントと、前記医療機関の顧客に対応する前記メッセージサービスで用いられる顧客アカウントを管理するアカウント管理手段」で共通する。

(ウ) 甲1発明の「カルテ/処方箋DB」は、「患者の診察日、医師が処方した薬の種類を示す薬剤ID及び投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量が格納され」ているから、患者(顧客)に処方した処方箋の内容を管理する処方箋管理手段ということができる。
そうすると、甲1発明の「患者の診察日、医師が処方した薬の種類を示す薬剤ID及び投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量が格納され」ている「カルテ/処方箋DB」と、本件発明1の「前記顧客に調剤した処方箋の内容を管理する処方箋管理手段」とは、「前記顧客に処方した処方箋の内容を管理する処方箋管理手段」で共通する。

(エ) 甲1発明は「受信したカルテ/処方箋データに基づいて、当該患者に処方した薬の服用終了日を算出し、当該患者に服用終了日が近づいてきたことを知らせるための服用終了通知メールを生成して」、「服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メールをメール情報記憶装置118から読み出して、当該患者に宛てて送信する」ところ、「カルテ/処方箋データに基づいて」、「服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メール」を「送信する」ことは、「処方箋の内容に応じたタイミング」で「処方箋の内容に従って」送信することであるといえる。また、上記(イ)によれば、「メッセージサービス」の「メッセージ」は、「前記医療機関アカウントから前記顧客アカウントに対して」送信するものである。そして、甲1発明で送信する「メッセージ」は、「「そろそろお薬がなくなる頃ですが、お加減は如何でしょうか?」という内容を含むもの」であるから、「医療サービス提供システム」は「前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージ」を送信するものであるといえ、それに対し「各患者」から「電子メール」を受信するから、「前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信する」ものであるといえる。
そうすると、甲1発明の「カルテ/処方箋データに基づいて」、「服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メール」を「送信」し、それに対し「各患者」から「電子メール」を受信する手段と、本件発明1の「前記処方箋ごとに、前記処方箋の内容に応じたタイミングで、前記薬局アカウントから前記顧客アカウントに対して、前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信するメッセージ処理手段」とは、「前記処方箋ごとに、前記処方箋の内容に応じたタイミングで、前記医療機関アカウントから前記顧客アカウントに対して、前記処方箋の内容に従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信するメッセージ処理手段」で共通する。

(オ) 甲1発明では、「メールデータ記憶領域には、電子メールのフォーマットに基づいて生成された各患者へ送信する電子メールと、各患者から受信した電子メールとが格納され」るから、「前記メッセージ処理手段」が「送受信したメッセージを管理する」ものであるということができる。
そうすると、甲1発明の「メールデータ記憶領域には、電子メールのフォーマットに基づいて生成された各患者へ送信する電子メールと、各患者から受信した電子メールとが格納され」る手段は、本件発明1の「前記メッセージ処理手段が送受信したメッセージを管理するメッセージ管理手段」に相当する。

(カ) 甲1発明の「カルテ/処方箋DBには、患者の診察日、医師が処方した薬の種類を示す薬剤ID及び投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量が格納され」、「メッセージ処理手段」は「カルテ/処方箋データに基づいて、当該患者に処方した薬の服用終了日を算出し」、「服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メール」を「当該患者に宛てて送信する」ものであるところ、「患者に処方した薬の服用終了日」(服薬期間の最終日)を算出(推定)するためには「カルテ/処方箋DB」に格納された処方箋の内容である「患者の診察日」あるいは翌日を「服薬期間の開始日」として推定する必要がある。そして、「メッセージ処理手段」は、推定された「服薬期間の開始日」と「投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量」によって「服薬期間の最終日」を推定するものであると認められる。なお、上記「服用終了日の2日前」にメッセージを送信することは、「服薬期間内の1の日を選択し、選択された日に」メッセージを送信することであるといえる。
そうすると、甲1発明において、「カルテ/処方箋DBには、患者の診察日、医師が処方した薬の種類を示す薬剤ID及び投薬期間(服用期間)の日数によって表される分量が格納され」、「メッセージ処理手段」が「カルテ/処方箋データに基づいて、当該患者に処方した薬の服用終了日を算出し」、「服用終了日の2日前になっている患者の服用終了通知メール」を「当該患者に宛てて送信する」ことは、本件発明1の「前記メッセージ処理手段は、前記処方箋の内容に基づいて、前記処方箋により調剤される薬剤を前記顧客が服薬する服薬期間の開始日及び最終日を推定し、前記服薬期間内の1又は複数の日を選択し、選択された日に前記質問メッセージを送信する」ことに相当する。

(キ) 甲1発明は「診察後における患者のケアに関するサービスの提供を可能とする医療サービス提供システムに関する」システムであるところ(第4の1(1)の【技術分野】【0001】参照)、同【0070】の記載によれば、「医療サービス提供システム」を実現する「院内サーバ11」は「予め定められた周期ごとに」、「返信メールチェック処理を実行して、各患者へ送信した服用終了通知メールに対する返信メールを受信したか否かをチェックし」、「服用終了通知メールを送信した患者からの返信メールを受信していない場合」、「ディスプレイ115に、当該患者のID、氏名、および、返信メールを受信していない旨のメッセージを表示する」ことによって、「患者へ送信した服用終了通知メールに対する応答がないことを、病院1に勤務する担当者などが、いち早く察知することができ、当該患者の容態を確認するなどの措置を迅速に取ることができる」という効果を奏することができるものである。
そうすると、甲1発明の「医療サービス提供システム」は「病院1に勤務する担当者など」を支援するものであるといえるから「医療機関としての病院1」を支援するシステムでもある。
したがって、甲1発明の「医療サービス提供システム」と、本件発明1の「薬局支援システム」は「医療機関支援システム」で共通する。

以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。

[一致点]
医療機関に対応するメッセージサービスで用いられる医療機関アカウントと、前記医療機関の顧客に対応する前記メッセージサービスで用いられる顧客アカウントを管理するアカウント管理手段と、
前記顧客に処方した処方箋の内容を管理する処方箋管理手段と、
前記処方箋ごとに、前記処方箋の内容に応じたタイミングで、前記医療機関アカウントから前記顧客アカウントに対して、前記処方箋の内容に従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信するメッセージ処理手段と、
前記メッセージ処理手段が送受信したメッセージを管理するメッセージ管理手段と、を有し、
前記メッセージ処理手段は、前記処方箋の内容に基づいて、前記処方箋により調剤される薬剤を前記顧客が服薬する服薬期間の開始日及び最終日を推定し、前記服薬期間内の1又は複数の日を選択し、選択された日に前記質問メッセージを送信する
医療機関支援システム。

[相違点]
[相違点1]
医療機関について、本件発明1は「薬局」であるのに対し、甲1発明は「医療機関としての病院1」であり、それに伴い、医療機関アカウントについて、本件発明1は「薬局アカウント」であるのに対し、甲1発明は「医療機関としての病院1のメールアドレス」であり、さらに、医療機関支援システムについて、本件発明1は「薬局支援システム」であるのに対し、甲1発明は「医療サービス提供システム」である点。

[相違点2]
処方箋管理手段が管理する処方箋の内容について、上記相違点1に起因し、本件発明1は(薬局で)「調剤した」処方箋の内容であるのに対し、甲1発明は(病院1で)「処方した」処方箋の内容である点。

[相違点3]
メッセージ処理手段について、本件発明1は「前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信する」のに対し、甲1発明は「各メールの文面において、「&」で挟まれた変数名の位置に、各メールを送信する患者に特有の情報が置換・挿入されて各患者宛てのメールが生成されるものであり、「そろそろお薬がなくなる頃ですが、お加減は如何でしょうか?」という内容を含む」電子メールを送信し、各患者から電子メールを受信するものであるが、「前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って」送信したり、受信したりするものではない点。

[相違点4]
本件発明1は「前記メッセージ管理手段が管理するメッセージを前記薬局に配置された薬局端末に供給する薬局端末処理手段」を有するのに対し、甲1発明は「メッセージ」を「メッセージ管理手段が管理する」ものの「薬局に配置された薬局端末に供給する薬局端末処理手段」を有していない点。

イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲1発明は上記[相違点]を有する。
そして、異議申立人が提出した甲2〜4をみても、甲2〜4には、上記第4の2の[甲2記載事項]、同3の[甲3記載事項]及び同4の[甲4記載事項]が記載されていることが認められるだけで、いずれも上記[相違点]に係る構成が実質的な相違点ではないことを示すものではない。
したがって、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。

(2) 本件発明2〜4について
本件発明2〜4は、本件発明1を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)アの[相違点]を有する。
したがって、本件発明2〜4は甲1発明であるとはいえない。

(3) 本件発明6について
本件発明6は、「薬局支援方法」の発明であるところ、本件発明1の「薬局支援システム」を方法の発明で特定したものであり、カテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件発明6は、甲1から認定される方法の発明と対比すると、上記(1)アの[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、本件発明6は、甲1から認定される方法の発明であるとはいえない。

(4) 小括
以上によれば、本件発明1〜4及び6についての特許は、29条1項3号の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件発明1〜4及び6についての特許は、113条2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 理由2(進歩性欠如)について
(1) 本件発明1について
事案に鑑みて、上記1(1)アの[相違点3]について先に判断する。
ア 判断
本件発明1の「メッセージ処理手段」は「前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って」、「質問メッセージ」の送信や「回答メッセージ」の受信を行うところ、「処方箋の内容に応じたシナリオに従って」メッセージの送信や受信を行うことについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0131】〜【0146】には、「シナリオ」についての記載があるところ、例えば、「服薬状況に関してヒアリングするためのシナリオ(以下、「健康相談シナリオ」と呼ぶ)は、図20、図21の例に限定されないものであり、種々のシナリオを適用することができる。」(【0131】)、「健康相談処理部14は、まず、図20(b)に示すように顧客に服薬状況に関して選択入力を要求するメッセージと共に、「飲めている」又は「飲めていない」のいずれかを選択するためのボタンを提示する処理を行う。ここでは、顧客により「飲めていない」のボタンが押下され、顧客端末40(メッセージサービスAP44)から「飲めていない」というメッセージが送信されたものとする。」(【0132】)、「次に健康相談処理部14は、図20(c)に示すように顧客に服薬について困っている点についてフリー入力を要求するメッセージを提示する処理を行う。ここでは、顧客により「飲み忘れることが多い」というメッセージが入力され、顧客のMSアカウントID(taro_ms)から当該メッセージが送信されたものとする。」(【0133】)等の記載がある。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明では、「薬局アカウント」から、まずどのような「質問メッセージ」を送信するか、「顧客アカウント」からの「回答メッセージ」に対して、次にどのような「質問メッセージ」を送信するか等の「シナリオ」が「処方箋の内容」に応じて定められているといえるから、本件発明1の「メッセージ処理手段」も、そのような「シナリオ」に従って、メッセージの送信や受信を行うものであると解釈される。
一方、甲1発明は、各患者に電子メール(服用終了通知メール)を送信し、それに対して、各患者から電子メール(返信メール)を受信するものであるが、それにとどまり、上述の「処方箋の内容」に応じて定められている「シナリオ」に従って、電子メールの送信や受信を行うものではない。
そして、甲1発明は、上記第1の1(1)の【0070】のとおり、「院内サーバ11」が「各患者へ送信した服用終了通知メールに対する返信メールを受信したか否かをチェック」し、「返信メールを受信していない場合」、「ディスプレイ115に、当該患者のID、氏名、および、返信メールを受信していない旨のメッセージを表示する」ことにより、「患者へ送信した服用終了通知メールに対する応答がないことを、病院1に勤務する担当者などが、いち早く察知することができ、当該患者の容態を確認するなどの措置を迅速に取ることができる」という処理に用いられるものであるから、甲1発明の「服用終了通知メール」及び「電子メール(返信メール)」を上述の「処方箋の内容」に応じて定められている「シナリオ」に従って、送受信するように構成することの必要性や動機付けもない。
そうすると、甲1発明のメッセージ処理手段について、「前記処方箋の内容に応じたシナリオに従って、前記処方箋により調剤される薬剤を服用した後の状況に関して質問する質問メッセージの送信、及び、前記メッセージサービスを介して前記顧客アカウントから前記質問に対する回答メッセージを受信する」ように構成することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。
また、上記第1の5の[甲5記載事項]、同6の[甲6記載事項]をみても、相違点3に係る構成を示すものではないから、甲1発明に組み合わせたとしても、相違点3に係る本件発明1の構成にはならない。

イ 小括
以上によれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲5記載事項若しくは甲6記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2) 本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1を限定した発明であるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)アの[相違点]を有するところ、本件発明1が上記(1)のとおり、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲5記載事項若しくは甲6記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件発明2〜5も甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲5記載事項若しくは甲6記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3) 本件発明6について
本件発明6は、「薬局支援方法」の発明であるところ、本件発明1の「薬局支援システム」を方法の発明で特定したものであり、カテゴリーが相違するのみで実質的な相違はない。
そうすると、本件発明6は、甲1から認定される方法の発明と対比すると、上記(1)アの[相違点]と同様の相違点を有することになる。
したがって、本件発明6は、上記(1)と同様、甲1から認定される方法の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1から認定される方法の発明及び甲5記載事項若しくは甲6記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4) 小括
以上によれば、本件発明1〜6についての特許は、29条2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、本件発明1〜6についての特許は、113条2号の規定により取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、特許第7058419号の請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に特許第7058419号の請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2023-01-30 
出願番号 P2019-043751
審決分類 P 1 651・ 113- Y (G16H)
P 1 651・ 121- Y (G16H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 中野 浩昌
梶尾 誠哉
登録日 2022-04-14 
登録番号 7058419
権利者 株式会社スカイリンクス 健康サロン株式会社
発明の名称 薬局支援システム及び薬局支援方法  
代理人 若林 裕介  
代理人 長谷部 優一  
代理人 若林 裕介  
代理人 長谷部 優一  
代理人 吉田 倫太郎  
代理人 吉田 倫太郎  

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