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審決分類 審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  G03B
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  G03B
審判 一部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  G03B
審判 一部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  G03B
審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G03B
審判 一部無効 特許請求の範囲の実質的変更  G03B
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G03B
審判 一部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G03B
審判 一部無効 4項(134条6項)独立特許用件  G03B
審判 一部無効 2項進歩性  G03B
管理番号 1395568
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-04-13 
確定日 2021-10-29 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第4141864号発明「自立式手動昇降スクリーン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4141864号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4141864号(以下「本件特許」という。)に係る特許についての出願は、平成15年3月10日(優先権主張 平成14年5月23日)に出願されたものであって、平成20年6月20日に設定登録がされたものであり、特許権の設定の登録時の請求項の数は5である。
これに対して、請求人は、令和2年4月13日に審判請求書を提出し、本件特許の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とすることを求める旨の本件特許無効審判を請求した。以降の主な手続の経緯は、次のとおりである。

令和2年 4月13日 :審判請求書及び甲1〜22号証(請求人)
令和2年 8月24日 :答弁書及び乙1〜2号証(被請求人)
同日 :訂正請求書(被請求人)
令和2年10月14日 :弁駁書及び甲23〜26号証(請求人)
令和2年12月 3日付け:審理事項通知書
令和3年 2月15日 :口頭審理陳述要領書及び甲27〜31号証(請求人)
令和3年 2月17日 :口頭審理陳述要領書及び乙3〜5号証(被請求人)
令和3年 2月26日 :上申書及び甲32〜34号証の3(請求人)
令和3年 3月 3日 :上申書及び乙6〜9号証(被請求人)
令和3年 3月 8日 :上申書及び乙10号証(被請求人)
令和3年 3月 9日 :上申書及び乙11号証(被請求人)
令和3年 3月10日 :口頭審理及び調書
令和3年 3月26日 :上申書及び甲35〜39号証(請求人)
令和3年 4月 9日 :上申書及び甲40〜41号証の3の2(請求人)
同日 :上申書及び乙12〜16号証の4(被請求人)
令和3年 4月26日 :上申書及び甲42〜47号証(請求人)
同日 :上申書(被請求人)
令和3年 5月12日 :上申書及び乙17号証(被請求人)
令和3年 5月24日 :上申書及び甲48〜51号証(請求人)
令和3年 6月23日 :上申書及び乙18〜21号証(被請求人)


第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和2年8月24日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正することを求めるものであり、以下の(1)ア及び(2)アの本件訂正前の特許請求の範囲及び明細書の記載を、それぞれ、以下の(1)イ及び(2)イの本件訂正後の特許請求の範囲及び明細書の記載のとおり訂正するものである(下線は訂正箇所を示す。)。
なお、請求人は、本件訂正に関する訂正要件違反の有無については争っていない(弁駁書4頁1〜3行)。

(1) 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
ア 本件訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、前記下部側アームを上方へ移動付勢するための付勢手段を該下部側アームと前記ベース部材との間に設け、前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方にスライド自在なスライド部材を取り付け、それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結したことを特徴とする自立式手動昇降スクリーン。
【請求項2】
前記左右のアームが水平姿勢に姿勢変更された場合に、該アームに取り付けられた左右のスライド部材がアーム長手方向へ移動することを接当阻止するためのストッパー部材を該アームに備えさせてなる請求項1記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項3】
前記ストッパー部材が、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材でなる請求項2記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項4】
前記スライド部材が2つの分割ケースからなり、前記各分割ケースに、該両分割ケースを相対回転自在に連結するためのピンの両端に備えた頭部を回転自在に保持させるための保持部を備えさせてなる請求項1記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項5】
前記スクリーンの展張時において前記左右のアームに取り付けた2つのスライド部材のうちの少なくとも一方のスライド部材の上端に接当して該スライド部材の上方側への移動を阻止するためのスクリーン用展張位置規制部材を該左右のアームの少なくとも一方に取り付けてなる請求項1〜4のいずれかに記載の自立式手動昇降スクリーン。」

イ 本件訂正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、
前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、
前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、
前記下部側アームを上方へ移動付勢するための付勢手段を該下部側アームと前記ベース部材との間に設け、
前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に、断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される、スライド自在なスライド部材を取り付け、
それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結したことを特徴とする自立式手動昇降スクリーン。
【請求項2】
前記左右のアームが水平姿勢に姿勢変更された場合に、該アームに取り付けられた左右のスライド部材がアーム長手方向へ移動することを接当阻止するためのストッパー部材を該アームに備えさせてなる請求項1記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項3】
前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームの双方に、それぞれ前記スライド部材を取り付けてなり、
前記下部側アームに備えさせる前記ストッパー部材が、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材でなる請求項2記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項4】
前記スライド部材が2つの分割ケースからなり、前記各分割ケースに、該両分割ケースを相対回転自在に連結するためのピンの両端に備えた頭部を回転自在に保持させるための保持部を備えさせてなる請求項1記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項5】
前記スクリーンの展張時において前記左右のアームに取り付けた2つのスライド部材のうちの少なくとも一方のスライド部材の上端に接当して該スライド部材の上方側への移動を阻止するためのスクリーン用展張位置規制部材を該左右のアームの少なくとも一方に取り付けてなる請求項1〜4のいずれかに記載の自立式手動昇降スクリーン。」

(2) 本件訂正前後の明細書の記載
ア 本件訂正前の明細書
「【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の自立式手動昇降スクリーンは、前述の課題解決のために、ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、前記下部側アームを上方へ移動付勢するための付勢手段を該下部側アームと前記ベース部材との間に設け、前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方にスライド自在なスライド部材を取り付け、それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結したことを特徴としている。
スクリーンを引き上げて(立ち上げて)使用姿勢にしたり、スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。又、例えば、展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げようとしても、左右のリンク機構の伸縮量が異なる、換言すれば左右のアームの揺動角度が異なることから、連結されているスライド部材がスライド(移動)することができない。つまり、左右のリンク機構の伸縮量が同一にならなければ、リンク機構の伸縮作動がスライド部材にて強制的に停止される。要するに、スクリーンの上げ下げを行うためには、左右のリンク機構を常に決められた所定の伸縮動作、つまり左右のアームの揺動角度を常に同一にさせることにより行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた同じ動きで安定良く伸縮させることができるのである。又、左右のリンク機構を安定良く伸縮させるために、例えば左右バランス機構等の大掛かりな装置を取り付けることが考えられるが、この場合には装置の大型化やコストアップを招くことになる。そして、本発明のように左右のアームに備えさせた2つのスライド部材を連結するだけで、常に左右のアームの伸縮動作を同じ動きに規制することができるから、スクリーンの上げ下げをスムーズに行うことができる。」

イ 本件訂正後の明細書
「【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の自立式手動昇降スクリーンは、前述の課題解決のために、ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、前記下部側アームを上方へ移動付勢するための付勢手段を該下部側アームと前記ベース部材との間に設け、前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に、断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される、スライド自在なスライド部材を取り付け、それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結したことを特徴としている。
スクリーンを引き上げて(立ち上げて)使用姿勢にしたり、スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。又、例えば、展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げようとしても、左右のリンク機構の伸縮量が異なる、換言すれば左右のアームの揺動角度が異なることから、連結されているスライド部材がスライド(移動)することができない。つまり、左右のリンク機構の伸縮量が同一にならなければ、リンク機構の伸縮作動がスライド部材にて強制的に停止される。要するに、スクリーンの上げ下げを行うためには、左右のリンク機構を常に決められた所定の伸縮動作、つまり左右のアームの揺動角度を常に同一にさせることにより行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた同じ動きで安定良く伸縮させることができるのである。又、左右のリンク機構を安定良く伸縮させるために、例えば左右バランス機構等の大掛かりな装置を取り付けることが考えられるが、この場合には装置の大型化やコストアップを招くことになる。そして、本発明のように左右のアームに備えさせた2つのスライド部材を連結するだけで、常に左右のアームの伸縮動作を同じ動きに規制することができるから、スクリーンの上げ下げをスムーズに行うことができる。」

(3) 本件訂正の内容
前記(1)及び(2)のとおり、本件訂正は、一群の請求項〔1〜5〕に対して請求されたものであるところ、本件訂正は、次のとおり、特許請求の範囲の訂正に係る訂正事項1及び2と明細書の訂正に係る訂正事項3からなる。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「スライド自在なスライド部材を取り付け、」と記載されているのを、「、断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される、スライド自在なスライド部材を取り付け、」に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜5も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記ストッパー部材が、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材でなる」と記載されているのを、「前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームの双方に、それぞれ前記スライド部材を取り付けてなり、前記下部側アームに備えさせる前記ストッパー部材が、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材でなる」に訂正する。
また、請求項3の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
明細書の段落【0006】に、「スライド自在なスライド部材を取り付け、」と記載されているのを、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される、スライド自在なスライド部材を取り付け、」に訂正する。

2 訂正請求の適法性についての判断
(1) 目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「スライド自在なスライド部材」について、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載した事項及び次に示す明細書の段落【0019】、【0021】、【図面の簡単な説明】、【図9】及び【図10】に記載した事項(下線は当審が付した。)に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

「【0019】
(省略)
従って、図10(a),(b)に示すように、ピン22を介して回転自在に枢支連結された分割ケース18,19を下部側アーム13,13にスライド自在に外嵌固定することによって、
(省略)」
「【0021】
(省略)
図13に示すように、断面形状が矩形状の下部側アーム13の4つの側面13A,13B,13C,13Dのうち
(省略)」
「【図面の簡単な説明】
(省略)
【図10】
左右の下部側アームにスライド部材を移動自在に外嵌させた状態を示す断面図を示し、(a)はピンの部分で切った断面図であり、(b)はビスの部分で切った断面図である。」
「【図9】


「【図10】



したがって、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について
(ア) 訂正事項2のうち、「前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームの双方に、それぞれ前記スライド部材を取り付けてなり」という技術事項を付加する訂正事項は、本件訂正前の請求項3が引用する請求項2の「スライド部材」について、左右の上部側アーム及び左右の下部側アームの双方に取り付けられることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項3に記載した事項及び次に示す明細書の段落【0018】に記載した事項(下線は当審が付した。)に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

「【0018】
(省略)
ここでは、下部側アーム13,13にスライド部材20,20を取り付けているが、上部側アーム11,11にスライド部材20,20を取り付けてもよいし、下部側アーム13,13及び上部側アーム11,11の両方にスライド部材20,20、20,20を取り付けて実施することもできる。」

(イ) 訂正事項2のうち、「前記下部側アームに備えさせる前記ストッパー部材が、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材でなる」と訂正する事項は、本件訂正前の請求項3の「ストッパー部材」について、下部側アームに備えさせることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項3に記載した事項及び次に示す明細書の段落【0019】に記載した事項(下線は当審が付した。)に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

「【0019】
(省略)
そして、図4、図7及び図8(c)に示すように、下部側アーム13,13が収納姿勢となる水平姿勢の状態になると、前記スライド部材20,20が水平方向に移動可能なフリー状態になるが、該スライド部材20,20がガススプリング16,16の上端のほぼコの字状のストッパー部材としての取付部材23,23に接当することによりスライド部材20,20の移動が阻止され、その位置(垂線S上)にスライド部材20,20を維持することができるようにしている。
(省略)」

(ウ) 以上検討のとおり、訂正事項2の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1の訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、前記(1)で検討したとおり、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載した事項及び明細書の段落【0019】、【0021】、【図面の簡単な説明】、【図9】及び【図10】に記載した事項に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 独立特許要件
この特許無効審判事件においては、請求項1〜4について特許無効審判が請求されているので、本件訂正後の請求項1〜4に記載されている事項により特定される発明について、特許法134条の2第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
一方、請求項5について特許無効審判は請求されておらず、また、請求項5についての訂正は、上記(1)ア及びイにおいて検討したとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するところ、本件訂正後の請求項5に記載されている事項により特定される発明について、特許法134条の2第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件を満足するか検討すると、次のとおりである。
本件訂正後の請求項1〜4に係る発明の特許は、後記第5〜8のとおり、審判請求書に記載した無効理由により無効とすることができないものであるから、本件訂正後の請求項1〜4に係る発明を引用してさらに限定した本件訂正後の請求項5に係る発明は、独立特許要件を満足すると認められる。

3 訂正請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項並びに同条9項において読み替えて準用する同法126条7項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、令和2年8月24日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜5〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
本件訂正後の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものである(前記第2の1(1)イ参照)。


第4 当事者の主張の概要及び証拠方法
1 請求人の主張する無効理由の概要及び証拠方法
請求人は、「特許第4141864号の請求項1から4に係る発明についての特許を無効とする」、「審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、次の(1)ア〜エに示した無効理由1〜4を主張し、証拠方法として、以下の(2)に示した甲1〜51号証(以下、それぞれ「甲1」〜「甲51」という。)を提出した。

(1) 請求人の主張する無効理由の概要
ア 無効理由1(進歩性欠如)
本件訂正発明1〜4は、甲1に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきである。

イ 無効理由2(明確性要件違反)
本件訂正発明1の発明特定事項である「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」は、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確であるから、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条6項2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。

ウ 無効理由3(サポート要件違反)
本件訂正発明1の発明特定事項である「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」は、出願時の当業者の技術常識を参酌しても、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に記載されていないため、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条6項1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。

エ 無効理由4(実施可能要件違反)
本件訂正発明1の発明特定事項である「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載等から、出願時の当業者の技術常識を参酌しても、当業者が実施できないため、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条4項1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法123条1項4号に該当し、無効とすべきである。

(2) 証拠方法
甲1:韓国特許0167030号公報(抄訳添付)
甲2:実願平1−79769号(実開平3−18529号)のマイクロフィルム
甲3:特開2000−131766号公報
甲4:実用新案登録第3081027号公報
甲5:特開平5−34826号公報
甲6:実願平1−35985号(実開平2−128142号)のマイクロフィルム
甲7:特開平5−27330号公報
甲8:特開平5−224302号公報
甲9:新村出編、広辞苑第6版、株式会社岩波書店、平成20年1月11日(「ストッパー」について)
甲10:工業教育研究会編、図解機械用語辞典第2版、日刊工業新聞社、昭和58年1月30日(「ストッパ」について)
甲11:特開平9−263246号公報
甲12:特開平7−205864号公報
甲13:実願平5−34651号(実開平7−6064号)のCD−ROM
甲14:実願平5−34645号(実開平7−6070号)のCD−ROM
甲15:実願平2−93671号(実開平4−50659号)のマイクロフィルム
甲16:実願昭63−119494号(実開平2−40233号)のマイクロフィルム
甲17:特開2002−142901号公報
甲18:特開平11−155669号公報
甲19:特開平4−174700号公報
甲20:特開昭56−8730号公報
甲21:高行男、機構学入門、東京電機大学出版局、平成20年11月10日、6〜9頁及び144〜151頁
甲22:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲23:新村出編、広辞苑第5版、株式会社岩波書店、平成10年11月11日(「保持」について)
甲24の1:フロアスタンドスクリーンパンタ式 取扱説明書、株式会社オーエスエム
甲24の2:「SMSマスク付きフロアスタンドスクリーン」に関するウェブページ、株式会社オーエスプラスe
甲25:乙1のキャプチャ画面
甲26の1の1:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲26の1の2:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲26の1の3:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲26の2の1:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲26の2の2:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲26の2の3:動画(撮影対象:被請求人販売製品)
甲27:角田成夫弁理士の意見書
甲28:角田成夫弁理士の意見書(2)
甲29:鈴木健司・森田寿郎、基礎から学ぶ機構学、株式会社オーム社、平成22年12月24日、10〜11頁、56〜57頁、72〜73頁及び124〜125頁
甲30:山田学、めっちゃ、メカメカ!リンク機構99→∞、日刊工業新聞社、平成21年1月30日、2〜5頁
甲31:井垣久ほか、機構学、株式会社朝倉書店、平成元年4月10日、54〜55頁
甲32:特許技術用語委員会編、特許技術用語集第3版、日刊工業新聞社、平成18年8月31日(「結合」、「枢支」及び「連結」について)
甲33:角田成夫弁理士の意見書(3)
甲34の1:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
甲34の2:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
甲34の3:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
甲35:角田成夫弁理士の意見書(4)
甲36:特許第3243037号公報
甲37:塚田忠夫ほか、機械設計法第2版、森北出版株式会社、平成14年10月、174〜181頁
甲38:伊藤智博ほか、わかりやすい機構学、共立出版株式会社、平成28年10月25日、9頁
甲39:実公昭63−28922号公報
甲40:動画(撮影対象:本件訂正発明に係る構成の模型)
甲41の1の1:動画(撮影対象:従来技術(特許第3243037号公報)に係る構成の模型)
甲41の1の2:動画(撮影対象:従来技術(特許第3243037号公報)に係る構成の模型)
甲41の2の1:動画(撮影対象:従来技術(特許第3243037号公報)について左右のリンク幅を狭めた構成の模型)
甲41の2の2:動画(撮影対象:従来技術(特許第3243037号公報)について左右のリンク幅を狭めた構成の模型)
甲41の3の1:動画(撮影対象:スライド部材を備えた本件訂正発明の模型)
甲41の3の2:動画(撮影対象:スライド部材を備えた本件訂正発明の模型)
甲42:和田隆宏教授の意見書
甲43:宇津野秀夫教授の意見書
甲44:山田泰之准教授の意見書
甲45:実験報告書
甲46:倉田純一准教授の意見書
甲47:倉田純一准教授の追加意見書
甲48:和田隆宏教授の宣誓書
甲49:宇津野秀夫教授の宣誓書
甲50:山田泰之准教授の宣誓書
甲51:倉田純一准教授の宣誓書

2 被請求人の主張の概要及び証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、本件訂正発明1〜4に係る特許には、上記無効理由1〜4が存在しない旨を主張し、証拠方法として、次の乙1〜21号証(以下、それぞれ「乙1」〜「乙21」という。)を提出した。

乙1:動画(撮影対象:甲22と同種の製品)
乙2:甲22に関する報告書
乙3:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
乙4:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
乙5:立矢宏教授の意見書(特許4141864号「自立式手動昇降スクリーン」についての参考意見)
乙6:甲26に関する報告書
乙7の1の1:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙7の1の2:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙7の1の3:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙7の2の1:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙7の2の2:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙7の2の3:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙8:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
乙9:動画(撮影対象:請求人製品FS−100V)
乙10:小川潔・加藤功、最新機械工学シリーズ1機構学 改訂版第18刷、森北出版株式会社、平成12年9月28日、2〜5頁
乙11:立矢宏教授の意見書(「特許4141864号『自立式手動昇降スクリーン』についての参考意見」の補足)
乙12:被請求人製品の写真(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙13の1の1:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙13の1の2:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙13の1の3:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903)
乙13の2の1:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903から上下のスライド部材を取り外したもの)
乙13の2の2:動画(撮影対象:被請求人販売製品SMS−080HM−P1−WG903から上下のスライド部材を取り外したもの)
乙14の1:実験成績証明書(1)
乙14の2:実験成績証明書(2)
乙14の3:実験成績証明書(3)
乙14の4:実験成績証明書(4)
乙14の5:実験成績証明書(5)
乙15の1の1:金沢大学の研究者情報のホームページ(立矢宏教授の所属学会等について)
乙15の1の2:金沢大学の研究者情報のホームページ(立矢宏教授の専門分野等について)
乙15の2の1:立矢宏、パラレルメカニズム、森北出版株式会社、令和元年5月13日、表紙、奥付及び目次
乙15の2の2:立矢宏ほか、ロボットアームの受動関節を利用した人の位置決め補助に関する研究、日本機械学会論文集 Vol. 80, N0. 820
乙15の2の3:立矢宏ほか、応答曲面法によるパラレルメカニズム型加工機のキャリブレーション、日本機械学会論文集(C編)76巻767号
乙15の3:立矢宏教授の宣誓書
乙16の1:特許第6716354号公報のフロントページ
乙16の2:J-PlatPatの特許第6716354号の経過情報照会の代理人受任届のページ
乙16の3:J-PlatPatの特許第6716354号の経過情報照会の手続補正書のページ
乙16の4:J-PlatPatの特許第6716354号の経過情報照会の意見書のページ
乙17:立矢宏、パラレルメカニズム、森北出版株式会社、令和元年5月13日、全文
乙18:立矢宏教授の意見書(「特許4141864号『自立式手動昇降スクリーン』についての参考意見」の補足(2))
乙19:実験成績証明書(6)
乙20:実験成績証明書(7)
乙21:紙昌弘技術士の意見書(特許4141864号「自立式手動昇降スクリーン」に関する技術的見解書)


第5 無効理由1(進歩性欠如)に関する当審の判断
1 刊行物に記載された事項、甲1発明、周知技術の認定
(1) 甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている。翻訳文は、請求人が添付した抄訳によるものであり、下線は当審が付した。なお、被請求人は、当該抄訳の正確性について争っていない(口頭審理陳述要領書4頁8〜9行)。

ア 2頁24〜28行



(抄訳4頁14〜19行)
「[発明の詳細な説明]
本発明は、直立昇下降式スクリーン装置に関することであり、さらに詳細には、任意の像を投影させるためのスクリーンを有線・無線の遠隔操作によって下部から上部に直立昇下降するようにしたスクリーン装置を舞台や講演場などの床部に設置して必要時にスクリーンが上に直立上昇されて設置されるようにすることによってスクリーンを必要に応じてその都度、場所に捕らわれることなく簡便に使用できるようにしたものである。」

イ 2頁54〜3頁3行




(抄訳5頁24〜29行)
「本発明は、大きく分けて、スクリーン(1)、このスクリーン(1)を支持するスクリーン支持装置(2)、このスクリーン支持装置(2)を昇下降させるスクリーン昇下降装置(3)、スクリーン(1)が広げられたり、巻き取られたりする際にスクリーン(1)に緊張力を付与するスクリーンテンション装置(4)、スクリーン(1)が直立設置された状態から前方への傾き程度を調節するための傾斜調節装置(5)、および上記装置が設置されるベース(6)で構成されている。」

ウ 3頁4〜13行



(抄訳5頁30行〜6頁13行)
「上記スクリーン(1)は、スクリーン支持装置(2)によって支持固定されて昇下降するもので、上記スクリーン支持装置(2)は、一端が上記スクリーン昇下降装置(3)をなす減速機(31)(31)にそれぞれ回動可能に軸結合されて内部に多数の案内ベアリング(23)・・・が設置される二つの本体(22a)(22b)をそれぞれ結合してなる昇降案内具(22)によって誘導可能にx字に結合される昇下降台(21)(21)と、一端が上記昇下降台(21)(21)の他端にそれぞれリンク結合されて、やはりx字に交差されるように設置され、他端はスクリーン(1)上部の固定枠(25)に固定結合される支持台(24)(24)と、一側がベース(6)にターンバックル式でそれぞれ連結固定され、他側は上記支持台(24)(24)の一端に形成される折曲部(24a)(24a)に引張スプリング(27)(27)によって連結されて上記スクリーン支持装置(2)全体の昇下降をより円滑にするテンションバー(26)とで構成される。 このとき、上記引張スプリング(27)(27)は、スクリーン上昇駆動時、すなわちスタート駆動時に支持台(24)(24)の一端を通じて力を分散させることにより昇下降台(21)(21)が一定の速度で上昇するようにすると同時に第1駆動モータ(M1)に無理がいくのを防止する。」

エ 3頁14〜22行



(抄訳6頁14〜26行)
「上記スクリーン昇下降装置(3)は、上記スクリーン支持装置(2)をなす両昇降台(21)(21)の一端が回動可能に軸結合される減速機(31)(31)を両側に設置し、そのうち一側の減速機(31)上には駆動源として第1駆動モータ(M1)を設置して駆動軸(32)によって相対の減速機(31)に駆動力が伝達されるようにする一方、外筒(41)に適当な緊張を維持したまま上記スクリーン(1)が巻き取られたり、送り出されるようにするテンション装置(4)の一側を一方の減速機(31)の一側に回転可能に連結して構成される。
また、スクリーン支持装置(2)の最大上昇および下降範囲を限定するためのリミットスイッチ(33)がスクリーン支持装置(2)の昇降台(21)(21)と接離されるように適当な位置に多数設置される。
上記第1駆動モータ(M1)からの回転力は、多数のギア(8)を介在して減速機(31)(31)に伝えられて最終的にスクリーン(1)を昇下降させ得るようになるものである。」

オ 3頁23〜33行



(抄訳6頁27行〜7頁10行)
「上記スクリーンテンション装置(4)は、ブラケット(45)によって回転可能に支持されて外面にスクリーン(1)が巻き取られる外筒(41)の内部に、この外筒(41)と固定されて中央に中空のスプリング巻取軸(42)が固定設置される固定具(43)と、この固定具(43)に一端が固定され、他端は上記スプリング巻取軸(42)の内部中空部に一定長さ嵌められて設置される減速機(31)の回転軸(31a)に連結されて上記スプリング巻取軸(42)に外嵌されるテンションスプリング(44)とをそれぞれ設置して構成される。
上記傾斜調節装置(5)は、ベース(6)の内部中央に設置される第2駆動モータ(M2)の駆動ギア(52)と歯合する作動ギア(51)の両側に作動棒(53)(53)の一端をそれぞれ対向設置し、上記作動棒(53)(53)の他端には、ベース(6)に回動可能に軸設された支持杆(55)に転がりローラ(54)を間に置いて軸結合される作動部材(56)をそれぞれ設置し、ベース(6)の上記支持杆(55)の対向側には軸(55a)によってそれぞれ上記支持杆(55)の回動により運動する接点具(56)を設置してベース(6)に設置されたリミットスイッチ(57)と接離されるように構成される。」

カ 3頁34〜38行



(抄訳7頁11〜16行)
「上記ベース(6)の下側両端には、別途の支持板(61)を設置するものの、ベース(6)の前面部を支持板(61)とヒンジ(62)で結合して上記傾斜調節装置(5)の作動によるベース(6)の前方への角度変位を可能なようにしている。
上記正逆回転が可能な第1および第2の駆動性モータ(M1)(M2)の駆動動作は、別途のコントロールボックス(図示省略)によって有線・無線で遠隔操作の制御が可能なように構成されている。」

キ 3頁41〜54行



(抄訳7頁19行〜8頁8行)
「まず、第1図および第2図に図示したように外筒(41)に巻き取られている状態でスクリーン(1)を使用するためにスクリーン(1)を上昇させようとする場合、外部操作で第1駆動モータ(M1)を駆動させるようになると、第1駆動モータ(M1)の回転力は、ギア(8)および駆動軸(32)によってベース(6)上に設置された両減速機(31)(31)に伝達されて一定比率に減速された状態でテンション装置(4)と連結される回転軸(31a)を回転させるようになると同時に減速機(31)の内部においてベベルギアによってその回転方向が90°変わるようになってスクリーン支持装置(2)の昇下降台(21)を微細回動させて両昇下降台(21)(21)により徐々に上に立てられるようにしている。このとき、上記テンション装置(4)をなす外筒(41)は、単純にスクリーン(1)を巻き取ったり、送り出したりする役割以外に、第9図に図示したようにその内部に設置されるテンションスプリング(44)によってスクリーン(1)に常に適正な緊張力を付与するようにするものであるところ、これは、減速機(31)からの回転力が回転軸(31a)に伝達され、この回転軸(31a)に一端が固定連結されたテンションスプリング(44)を巻くようになり、結局はテンションスプリング(44)に伝達された回転力によってその力はスプリング(44)の他端が連結固定された固定具(43)に伝達されて外筒(41)がある程度回転するようになる。このとき、テンションスプリング(44)が外面に巻き取られたスプリング巻取軸(42)は、回転軸(31a)とスリップ(slip)状態になっているので、回転軸(31a)からの回転力は、専らテンションスプリング(44)によって外筒(41)に伝達されるに過ぎず、回転軸(31a)による回転力はスプリング巻取軸(42)に直接伝達されないようになっている。」

ク 3頁55〜61行



(抄訳8頁9〜18行)
「このようにテンションスプリング(44)が最大限巻き取られて回転軸(31a)の回転力が外筒に伝達され始めると同時に昇下降台(21)の上昇動作(広げる)が始まるようになるものであるところ、両昇下降台(21)は、減速機(31)の回転力を受けて第3図に図示したとおりx字に交差された状態で徐々に両終端を起こして立てるようになり、それと一端が連結された支持台(24)(24)をやはり上に押すようになり、支持台(24)(24)は、両折曲部(24a)(24a)においてベース(6)と連結されているテンションバー(26)(26)の引張スプリング(27)(27)によって引っ張られながら、両支持台(24)(24)はハサミを扱う形態で窄むようになって、結局は支持台(24)(24)の他端に設置される固定枠(25)を上に押し上げるようになるので、スクリーン(1)は、最終的に広がって直立設置された状態を維持するようになるのである。」

ケ 4頁22〜25行



(抄訳9頁24〜29行)
「この状態で広げられたスクリーン(1)を外筒(41)に再び巻き戻す場合には、やはり外部操作によって第1駆動モータ(M1)を先ほどとは(広げる時とは)反対方向に駆動させるようになると、第1駆動モータ(M1)の回転力は、スクリーン昇下降装置(3)の両減速機(31)(31)に伝達されてスクリーン支持装置(2)を広げる時とは反対方向に作動させてスクリーン(1)を本来の状態、すなわち外筒(41)の外周に巻き取られた状態を維持するようになる。」

コ 4頁26〜32行



(抄訳9頁30行〜10頁8行)
「上記スクリーン支持装置(2)の昇下降台(21)(21)が、それぞれ両減速機(31)(31)を軸にして回動動作するのは、第4図に図示しているように両上下降台(21)(21)を広がらないようにx字に交差された状態で両本体(22a)(22b)で結合させる昇降案内具(22)によって、より円滑になされるのであり、これは、昇下降台(21)(21)の上下面と接触する多数の案内ベアリング(23)・・・を昇降案内具(22)をなす両本体(22a)(22b)の内面に設置して昇下降台(21)(21)の両面と接触するようにすることにより第4図の(b)に図示したように両昇下降台(21)(21)がx字に交差結合された状態でも減速機(31)を軸にして確実で、滑らかなすべり運動効果を得ることができるようになるのである。」

サ 第1図




シ 第2図




ス 第3図




セ 第4a図




ソ 第4b図




タ 第9図




チ 第1図より、昇下降台(21)(21)及び支持台(24)(24)の断面形状が矩形状であることが見てとれる。

ツ 第3図より、左側の昇下降台(21)と左側の支持台(24)は、左側の減速機(31)と固定枠(25)の左側を連結し、右側の昇下降台(21)と右側の支持台(24)は、右側の減速機(31)と固定枠(25)の右側を連結することが見てとれる。

テ 第3図より、左側の昇下降台(21)と左側の支持台(24)の結合部はスクリーン(1)の左右中心部に対して右側に位置し、右側の昇下降台(21)と右側の支持台(24)の結合部はスクリーン(1)の左右中心部に対して左側に位置することが見てとれる。

ト 第3図より、昇降案内具(22)は、スクリーン(1)の左右中心点を通る垂線上に位置することが見てとれる。

(2) 甲1発明の認定
甲1の前記(1)の記載事項をまとめると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

<甲1発明>
「スクリーン(1)、前記スクリーン(1)を支持するスクリーン支持装置(2)、前記スクリーン支持装置(2)を昇下降させるスクリーン昇下降装置(3)、前記スクリーン(1)が広げられたり、巻き取られたりする際に前記スクリーン(1)に緊張力を付与するスクリーンテンション装置(4)及びこれらの装置が設置されるベース(6)を有する直立昇下降式スクリーン装置であって(前記ア及びイ)、
前記スクリーン支持装置(2)は、昇下降台(21)(21)と、支持台(24)(24)と、テンションバー(26)とで構成され(前記ウ)、
前記昇下降台(21)(21)及び前記支持台(24)(24)の断面形状が矩形状であり(前記チ)、
前記昇下降台(21)(21)は、一端が前記スクリーン昇下降装置(3)の減速機(31)(31)にそれぞれ回動可能に軸結合され、かつ、内部に多数の案内ベアリング(23)が設置される二つの本体(22a)(22b)をそれぞれ結合してなる昇降案内具(22)によって誘導可能にx字に結合されたものであり(前記ウ)、
前記支持台(24)(24)は、一端が前記昇下降台(21)(21)の他端にそれぞれリンク結合されてx字に交差されるように設置され、かつ、他端が前記スクリーン(1)上部の固定枠(25)に固定結合されたものであり(前記ウ)、
左側の前記昇下降台(21)と左側の前記支持台(24)は、左側の前記減速機(31)と前記固定枠(25)の左側を連結し、右側の前記昇下降台(21)と右側の前記支持台(24)は、右側の前記減速機(31)と前記固定枠(25)の右側を連結し(前記テ)、
前記テンションバー(26)は、一側がベース(6)にターンバックル式でそれぞれ連結固定され、かつ、他側が前記支持台(24)(24)の一端に形成される折曲部(24a)(24a)に引張スプリング(27)(27)によって連結されたものであり(前記ウ)、
左側の前記昇下降台(21)と左側の前記支持台(24)の結合部は前記スクリーン(1)の左右中心部に対して右側に位置し、右側の前記昇下降台(21)と右側の前記支持台(24)の結合部は前記スクリーン(1)の左右中心部に対して左側に位置し(前記ツ)、
前記スクリーン昇下降装置(3)は、駆動源としての第1駆動モータ(M1)を有し、前記第1駆動モータ(M1)からの回転力は、減速機(31)(31)に伝えられて前記スクリーン(1)を昇下降させ得るものであり(前記エ)、
前記スクリーンテンション装置(4)は、外面に前記スクリーン(1)が巻き取られる外筒(41)と前記外筒(41)の内部のテンションスプリング(44)を有し、前記外筒(41)は、前記テンションスプリング(44)によって前記スクリーン(1)に常に適正な緊張力を付与するものであり(前記オ及びキ)、
前記昇降案内具(22)は、両本体(22a)(22b)の内面に設置した多数の案内ベアリング(23)が前記昇下降台(21)(21)の上下面と接触することで、前記昇下降台(21)(21)がx字に交差結合された状態でも前記減速機(31)(31)を軸にして円滑に回動動作し、滑らかなすべり運動をするものであり(前記コ、セ及びソ)、
前記昇降案内具(22)は、前記スクリーン(1)の左右中心点を通る垂線上に位置する(前記ト)、
直立昇下降式スクリーン装置。」

(3) 周知技術の認定
ア 周知技術1の認定
(ア) 甲2等に記載された事項
a 甲2〜5
甲2〜5には、次のとおり、手動により昇降するスクリーンが記載されている。

(甲2の明細書3頁1〜3行)
「上述した従来のスクリーン収納装置では、スクリーンを収納するには、支持機構に連結された保持パイプを下方に押動することによりなされる」

(甲3の【0021】及び【0027】)
「【0021】
使用する場合には、トップバー3を上方に引っ張ると、スプリングロール2に取り付けられたスプリングの弾性力及び重力に抗してスクリーン4がスプリングロール2より引き出される。」
「【0027】
さらに、収納する際には、トップバー3を下方に押すだけの操作で、伸縮手段5が落下することなく、ゆっくりと下降して折り畳まれるとともに、スクリーン4がスプリングロール2に巻回され、図5に示される状態まで回転させた後、ケーシングに収納される。」

(甲4の【0025】)
「【0025】
スクリーンの使用時には、主枠3の上端部を持って必要な高さ位置まで引き上げればよく、主枠3はこの引き上げによって上方に伸長しながら起立し、主枠3の下位両側の枠材3a、3bが下端枢止点aを支点に内側に向けて起立して行くと、両側保持杆12、12は枠材3a、3bとの枢止点が接近動することによりV字状に起立し、これと同時に図1の場合、両側弾性支持部材4も両側の枠材3a、3bとケース1の間で起立し、起立した主枠3を両側から支持する。」

(甲5の【0003】)
「【0003】
次に動作について説明する。通常、スクリーンを使用しない場合は、スクリーン膜保持棒5はパンタグラフ状のパイプ1、2をたたみ込んでキャビネット6の上部に接しており、この時、ガススプリング8は収縮した状態にある。次にスクリーンを使用する場合、スクリーン膜保持棒5を持ち上げると、ガススプリング8が働いて上方に押し上げようとする。しかし収納状態でのガススプリング8はスクリーン上方に移動する寸法に比べ動きが少ないため、十分な押し上げ力が働かない。このガススプリング8が実効を示すのは、スクリーン膜保持棒5が上下空間の中間より上方の部分であり、それより上方に位置すると、スクリーン膜9及びスクリーン保持棒5、パイプ1、2等の重量で、キャビネット6の方向へ落下してしまう結果となる。」

b 甲6
甲6には、次のとおり、スクリーンには手動式のものと電動式のものが従来から存在していたことが記載されている。

(明細書1頁最終行〜2頁7行)
「従来、この種プロジェクションテレビ及び液晶プロジェクション等の映像投写用スクリーンとしては、例えば、第5図で示すように天井30から吊下げるタイプのスクリーン31がポピュラーであり、そのスクリーン31を張る作業を手により下方に引っ張る手動式と、上下スイッチ32によって巻き上げたり繰り出したりする電動式のものがある。」

(イ) 周知技術1の認定
前記a及びbより、甲2〜6に記載された次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。

<周知技術1>
「スクリーンを手動で昇降するものとすること。」

イ 周知技術2の認定
(ア) 甲2等に記載された事項
a 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。

(明細書5頁9行〜6頁14行)
「第4図は、上記昇降機構を用いたスクリーン収納装置の実施例を示しており、屈曲可能に連結されたアーム1,3とアーム2,4は、その端部が夫々上下の取付金具6,12に枢軸14,10及び枢軸15,11で回動可能に連結されている。又、該取付金具6,12の長孔6a,12aには、夫々上記アーム3,4を挿通した軸9と、上記アーム1,2の長孔を挿通した軸13が、摺動可能に取り付けられている。又、上記取付金具6にはスクリーンAの端部が固定された保持パイプ5が一体的に連結固定され、下方の取付金具12は筐体B内に設置されている。尚、図中符号7,8は夫々上記アーム1,3と上記アーム2,4を伸展方向に付勢するガススプリングである。
上記構成のスクリーン収納装置では、保持パイプ5の端部に集中的に下向きの力が加わっても、アーム3とアーム4の上端が摺動可能な軸9により連結され、アーム1とアーム2の下端が同じく摺動可能な軸13で連結されているので、該アーム3,4と該アーム1,2は夫々対称に回動されることとなり、該保持パイプ5は傾くことなく円滑に降下する。よって、スクリーンAの下端は筐体B内に設けられたスクリーンローラ(図示せず)に巻き取られることとなり、保持パイプ5により張設されていたスクリーンAは筐体B内に収納されるものである。」

(第4図)




b 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。

「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
〈第1の実施形態〉図1は、本発明の第1の実施形態にかかる可搬式スクリーンSの使用時の状態を示しており、下部ケーシング1と、取り付け部材1bを介して下部ケーシング1に取りつけられたスプリングロール2と、トップバー3とスプリングロール2の間に展張されたスクリーン4と、スクリーン4を伸縮するパンタグラフ式伸縮手段5と、ガススプリングからなる高さ保持手段6とを備えている。」

「【0018】
また、図1に示すように、高さ保持手段6として用いる1対のガススプリングの一方は、その両端を各々第1アーム7及び第3アーム9に連結部分を介して係止され、他方は、その両端を各々第2アーム8及び第4アーム10に連結部分を介して係止され、スプリングロールのスプリングの弾性力及び重力に抗してガス圧力からなる反発力を発生させることができる。」

「【図1】



c 甲4
甲4には、次の事項が記載されている。

「【0014】
図1乃至図3のように、折り畳み式スクリーンは、支持台6の上に上面が開放した断面上向きコ字状となる横長のケース1を水平に配置し、このケース1内に、ロール巻きした状態で上方への引き出しと常時巻き取り弾性が付勢されたスクリーン布2を収納し、上記ケース1内でスクリーン布2の後方位置に、主枠3を折り畳み時にケース1内に納まるように配置し、更にこの主枠3の後方位置に横方向に長いレール7が固定されている。
【0015】
上記主枠3は、等しい長さを有する四本の枠材3a〜3dを枢軸で枢止結合して上下の伸縮と折り畳みが可能となるパンタグラフ機構に形成され、下端枢止点の枢軸をケース1内に固定した軸受8に枢止し、折り畳み時にケース1内に納まるように配置され、この主枠3の両側とケース1の間に、主枠3を所望する伸縮状態に保つための弾性支持部材4が設けられ、上記主枠3の上端枢止点bの枢軸とスクリーン布2の上縁桟5が、スクリーン布2の上方への引き出しと巻き取りに追従して主枠3が上下に伸縮し、引き出したスクリーン布2をこの主枠3で起立状に保持するように枢止結合されている。
【0016】
上記弾性支持部材4は、図4に示すように、長いシリンダパイプ9内にピストン軸10を挿入し、シリンダパイプ9の内部にばね11を収納して常時伸長する弾性が付勢された構造となり、主枠3の両側において、下位に位置する枠材3の途中に弾性支持部材4の上端を枢止結合し、この弾性支持部材4の下端部をケース1側に枢止することでばねの弾性が主枠3の重量と釣り合い、下位に位置する枠材3a、3bに常時起立する方向の弾性を付与することで主枠3を所望する伸縮状態に起立保持することになる。」

「【図1】



d 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】図2は従来のこの種のスクリーン構造を示すもので、1、2は2本のパイプの中間を軸3で枢支した2組のく形をしたパイプで、各々3を軸に回動すると共に、その一方は軸4でスクリーン膜保持棒5に回動可能に保持され、他方はスクリーン膜を巻込んで収納するキャビネット6に各々軸7で回動可能に保持されている。8はスクリーン膜保持棒5を垂直に押し上げる役目をするガススプリングであり、9はスクリーン膜である。」

「【図2】



(イ) 周知技術2の認定
前記a〜dより、甲2〜5に記載された次の事項は周知技術であると認められる(以下「周知技術2」という。)。

<周知技術2>
「上部側アームと下部側アームで構成されるリンク機構を有する昇降スクリーンにおいて、左右の下部側アームを上方へ付勢する付勢手段を設けること。」

2 本件訂正発明1について
(1) 対比並びに一致点及び相違点の認定
ア 対比
本件訂正発明1と甲1発明を対比する。

(ア) 本件訂正発明1は「自立式手動昇降スクリーン」であり、甲1発明は「直立昇下降式スクリーン装置」であるところ、甲1発明の「昇下降式スクリーン装置」は、本件訂正発明1の「昇降スクリーン」に相当する。また、甲1発明は、ほかの支持部材を必要としないことが明らかであり、このことは、本件訂正発明1において「昇降スクリーン」が「自立式」であることに相当する。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「自立式昇降スクリーン」である点で共通する。

(イ) 甲1発明の「ベース(6)」及び「スクリーン(1)」は、本件訂正発明1の「ベース部材」及び「スクリーン」に相当する。
そして、甲1発明において、「ベース(6)」に設置された「スクリーンテンション装置(4)」は、「外面に前記スクリーン(1)が巻き取られる外筒(41)と前記外筒(41)の内部のテンションスプリング(44)を有し、前記外筒(41)は、前記テンションスプリング(44)によって前記スクリーン(1)に常に適正な緊張力を付与するもの」であるところ、「外筒(41)」は、「スクリーン(1)」を巻き取るためにその端部と連結されたものであることは明らかであり、かつ、「スクリーン(1)に常に適正な緊張力を付与する」ために「テンションスプリング(44)」により巻き取り付勢されたものであることも明らかである。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け」た点で一致する。

(ウ) 甲1発明の「固定枠(25)」、「支持台(24)(24)」及び「昇下降台(21)(21)」は、それぞれ、本件訂正発明1の「上端支持部材」、「上部側アーム」及び「下部側アーム」に相当する。また、甲1発明において、「支持台(24)(24)」の一端と「昇下降台(21)(21)」の他端が「リンク結合」されていることは、本件訂正発明1において、「上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構」であることに相当する。
そして、甲1発明は、「左側の前記昇下降台(21)と左側の前記支持台(24)は、左側の前記減速機(31)と前記固定枠(25)の左側を連結し、右側の前記昇下降台(21)と右側の前記支持台(24)は、右側の前記減速機(31)と前記固定枠(25)の右側を連結」したものであるところ、このような配置は、本件訂正発明1において、「上部側アームと下部側アーム」が「スクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態」であることに相当する。また、甲1発明において、左右の「昇下降台(21)(21)」が連結される左右の「減速機(31)(31)」は、「ベース(6)」に設置されたものである。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材又は前記ベース部材に設置された部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し」た点で共通する。

(エ) 甲1発明は、「左側の前記昇下降台(21)と左側の前記支持台(24)の結合部は前記スクリーン(1)の左右中心部に対して右側に位置し、右側の前記昇下降台(21)と右側の前記支持台(24)の結合部は前記スクリーン(1)の左右中心部に対して左側に位置」するものであるところ、甲1発明における「左側の前記昇下降台(21)と左側の前記支持台(24)の結合部」及び「右側の前記昇下降台(21)と右側の前記支持台(24)の結合部」は、それぞれ、本件訂正発明1における「前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部」及び「前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部」に相当する。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し」た点で一致する。

(オ) 甲1発明の「テンションバー(26)」は、「一側がベース(6)」に、「他側が前記支持台(24)(24)」に連結され、「引張スプリング(27)(27)」により下方に付勢されたものである。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記上部側アームと前記下部側アームのうち一方を移動付勢するための付勢手段を該一方と前記ベース部材との間に設け」た点で共通する。

(カ) 甲1発明の「昇降案内具(22)」は、「断面形状が矩形状」である「昇下降台(21)(21)」を「誘導可能にx字に結合」するものであって、「内面に設置した多数の案内ベアリング(23)」によって「円滑に回動動作」するものであるから、本件訂正発明1において、「左右の下部側アーム」に「取り付け」た「スライド自在なスライド部材」に相当する。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に、スライド自在なスライド部材を取り付け」た点で共通する。

(キ) 甲1発明の「昇降案内具(22)」は、「両本体(22a)(22b)の内面に設置した多数の案内ベアリング(23)が前記昇下降台(21)(21)の上下面と接触することで、前記昇下降台(21)(21)がx字に交差結合された状態でも前記減速機(31)(31)を軸にして円滑に回動動作し、滑らかなすべり運動をする」ものであるところ、甲1発明の「昇降案内具(22)」を構成する「両本体(22a)(22b)」は、本件訂正発明1の「左右のスライド部材」に相当し、「相対回転自在に連結」されたものである。
そして、甲1発明の「昇降案内具(22)」は、「前記スクリーン(1)の左右中心点を通る垂線上に位置する」ものである。
よって、本件訂正発明1と甲1発明は、「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」点で一致する。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本件訂正発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(ア) 一致点
「ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、
前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材又は前記ベース部材に設置された部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、
前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、
前記上部側アームと前記下部側アームのうち一方を移動付勢するための付勢手段を該一方と前記ベース部材との間に設け、
前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に、スライド自在なスライド部材を取り付け、
それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した自立式昇降スクリーン。」

(イ) 相違点
<相違点1>
本件訂正発明1は、「自立式手動昇降スクリーン」であって、「上端支持部材」とともに「リンク機構」で枢支連結される部材が、本件訂正発明1では「ベース部材」そのものであるのに対して、甲1発明は、「第1駆動モータ(M1)」により電動で昇降するスクリーンであり、「上端支持部材」とともに「リンク機構」で枢支連結される部材が、「ベース(6)」に設置された「減速機(31)(31)」である点。

<相違点2>
「付勢手段」について、本件訂正発明1は、「下部側アームを上方へ移動付勢する」ものであるのに対して、甲1発明は、上部側アームに相当する「支持台(24)(24)」を「引張スプリング(27)(27)」により下方へ移動付勢するものである点。

<相違点3>
左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に相対回転自在に連結されたそれぞれの「スライド部材」について、本件訂正発明1は、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される」ものであるのに対して、甲1発明は、「多数の案内ベアリング(23)」を備える「昇降案内具(22)」からなり、「断面形状が矩形状」である「昇下降台(21)(21)」が「滑らかなすべり運動」をするものである点。

(2) 相違点についての判断
ア 相違点1について
甲1発明は、「第1駆動モータ(M1)」により電動で昇降するスクリーンであるところ、「スクリーンを電動ではなく手動で昇降するものとすること。」は、周知の構成であって(前記1(3)ア(イ)参照)、当業者には自明の選択肢であるから、電動で昇降するスクリーンである甲1発明において、周知技術1を採用して手動で昇降するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
そして、手動式とする以上、「第1駆動モータ(M1)」及び「減速機(31)(31)」はもはや必要ないから、これを省き、「昇下降台(21)(21)」が「ベース(6)」そのものに枢支連結されるようにすることは、周知技術1の採用に伴って当然行うべき自明な設計変更にすぎない。
したがって、相違点1に係る本件訂正発明1の構成は、格別のものではなく、甲1発明と周知技術1に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

イ 相違点2について
甲1発明は、上部側アームに相当する「支持台(24)(24)」と下部側アームに相当する「昇下降台(21)(21)」で構成されるリンク機構を有する昇降スクリーンであって、左右の「支持台(24)(24)」を「引張スプリング(27)(27)」により下方へ付勢することで昇降動作を補助し、「スクリーン上昇駆動時、すなわちスタート駆動時に支持台(24)(24)の一端を通じて力を分散させることにより昇下降台(21)(21)が一定の速度で上昇するようにすると同時に第1駆動モータ(M1)に無理がいくのを防止する。(前記1(1)ウ参照)」という効果を得たものである。
昇降スクリーンの昇降動作を補助する手段として、「上部側アームと下部側アームで構成されるリンク機構を有する昇降スクリーンにおいて、左右の下部側アームを上方へ付勢する付勢手段を設けること。」は、周知の構成であって(前記1(3)イ(イ)参照)、当業者には自明の選択肢であるから、甲1発明における「支持台(24)(24)」を「引張スプリング(27)(27)」により下方へ移動付勢する構成に代えて周知技術2を採用し、相違点2に係る構成を有するようにすることは、当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎず、自明な設計変更にすぎない。
したがって、相違点2に係る本件訂正発明1の構成は、格別のものではなく、甲1発明と周知技術2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ 相違点3について
(ア) 副引用例に記載された事項
a 甲13〜18
請求人は弁駁書の12頁8〜12行及び17〜22行において、甲13〜18から、外周面上を取り囲む筒状のスライド部材が汎用技術又は周知技術であることを主張しているので、甲13〜18の記載を以下に摘記する。

(a) 甲13、14
甲13には、次の事項が記載されている。甲14にも、甲13とおおむね同様の事項が記載されている。

「【0008】
【実施例】
図1において、本考案の一実施例を採用した自転車1は、折り畳み可能なフレーム体2を備えている。フレーム体2の前部は、ハンドルポスト3及びハンドルポスト3に連結された前ホーク4に回動自在に装着されている。前ホーク4の先端には、前輪5のハブ軸5aが支持されている。フレーム体2の後部には、後輪6のハブ軸6aが支持されている。また、フレーム体2の前部には折り畳み式の前キャリア7が取り付けられている。」

「【0011】
立パイプ13は、ハンドルポスト3と非平行かつ上方にいくにしたがって広がる方向に配置されている。立パイプ13には、第2スライド部材20が摺動自在に配置されている。この第2スライド部材20には、ヒンジ20a(図3参照)が設けられており、ヒンジ20aには、第1クロスフレーム11の後端と後ホーク14の前端とが回動自在に連結されている。立パイプ13の基端にはハンガー部21が形成されている。ハンガー部21は、後輪6との間に掛け渡されたベルト25を駆動するギアクランク22を回転自在に支持する。また、ハンガー部21には、スタンド31が配置されている。」

「【図1】



「【図2】



(b) 甲15
甲15には、次の事項が記載されている。

(明細書2頁12〜14行)
「この考案は、建築用の壁パネルのような比較的大型で重量のある面状物体をまとめて運搬するための運搬具に関するものである。」

(明細書17頁8〜17行)
「第2図に詳しく示すように、ベースフレームAの四隅には、L字形に折曲形成された板材からなるコーナー部材15が、ベースフレームAの角部外周を囲むように取り付けられている。サイドフレームBを構成する支柱30が、コーナー部材15の内側に沿うように配置されており、支柱30のサイドフレームB内側になる側面には、L字形をなす取付ピース16が当てられ、取付ピース16はコーナー部材15に溶接等で固定されている。」

(明細書19頁16行〜20頁1行)
「摺動枠96は、角筒状をなし、枠部材1に嵌合して枠部材1の軸方向に沿って摺動できるようになっている。枠部材1の前方下面には、小さなブロック状のストッパ部材98が取り付けられている。摺動枠96はストッパ部材98に当たると、それ以上先には進めない。」

(第2図)




(c) 甲16
甲16には、次の事項が記載されている。

(明細書2頁1行)
「この考案は折畳み椅子に関するものである。」

(明細書11頁14〜17行)
「後脚(1)(1)の外周面には、ナイロン等の低摩擦性の合成樹脂よりなる筒状のスライダ(27)(27)が摺動自在に嵌合されている。」

(第1図)




(d) 甲17
甲17には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オフィス等で好適に利用される折り畳み椅子に関するものである。」

「【0018】
このような構成のものにおいて、本実施の形態では、前記回転支持体5が、前記前脚フレーム2に対して後脚フレーム3を回転可能に支持するものであるとともに、使用状態Pと折り畳み状態Qの間で前後脚フレーム2、3同士を相対的に回転移動させる場合に、この回転支持部5を前記後脚フレーム3に沿ってスライド移動可能となるように構成している。そして、このスライド移動によって、座4の前端部4a側が後端部4b側を中心として背もたれ21に接近する方向へ回転する際に、前記後脚フレーム3と座4の前端部4a側の回転中心である第二軸1bと、前後脚フレーム2、3の回転中心である第三軸1cとの間で生じる離間距離の変位を吸収するようにしている。」

「【図1】



(e) 甲18
甲18には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的にベビーカーと呼ばれる可動式座席構造に関し、更に詳細には、本発明を米国特許第3,995,882号に開示したような型式の折りたたみ可能なベビーカーに組み込むことに関する。」

「【0013】
図3は、座席背もたれ部分22が直立位置にある、図1に示す構成の左方からの立面図である。この位置では、座席部材26及び背もたれ部材24は、本質的には、互いに直角である。この状態では、脚部材76に沿って軸線方向に摺動するようになっている摺動コネクターブラケット13(摺動コネクターブラケットだけを図3乃至図11に示す)が脚部材76のほぼ中央に示される。また、移動式座席構成のこの状態では、座席背もたれ部分22は直立位置にあり、ベビーカーに乗る人を標準的な直立位置に置くべきことが望まれるとき、装置の折りたたみ骨組は機能的なベビーカーとして使用するために完全に広げられる。また、溝付き棒23が細長い溝47を有し、細長い溝47をベース部材56の短いスタブ49に取り付けられた溝ピン41に係合させる。溝付き棒の反対側の端は、図2(そして後に説明する図9及び図11)に最も良く見られるように、溝付き棒枢着ピン51によって脚部材76に取り付けられる。」

「【図3】



b 甲29、31、37及び39
請求人は令和3年3月26日付け上申書の20頁22行〜21頁9行において、甲29、31、37から、スライド部材同士が連結している技術が周知技術であることを主張し、同上申書の21頁10〜20行において、甲39に本件訂正発明1の「アーム」及び「スライド部材」と同等の構成が開示されていることを主張しているので、甲29、31、37及び39の記載を以下に摘記する。

(a) 甲29
甲29には、次の事項が記載されている。

(125頁)
「問題1 船の舵
図1は,スライダ・てこ連鎖を利用した船の舵(かじ)取り機構の一部である.リンクaには船の舵が取りつけられており,船の向きと直角方向に溝を固定したスライダcを滑らせると,点を中心にして舵が回転する.この機構によって,舵の角度θが大きくなったときは水の抵抗も大きくなるが,水の抵抗に舵が対向する力のモーメントMも大きくなる.」

(図1 船の舵取り機構)




(b) 甲31
甲31には、次の事項が記載されている。

(54頁)
「(iv)交差スライダてこ機構
図3.20(b)のように,回り対偶とすべり対偶を交互に連結した連鎖ではどのリンクも同じ条件なので,どのリンクを静止節としても同じ機構が得られる.この機構を交差スライダてこ機構(crossed slider lever mechanism)という.この応用例としては図3.24に示すラプソンのかじ取り機構(Rapson's rudder steering mechanism)がある.」

(図3.24 交差スライダてこ機構(ラプソンのかじ取り機構))




(c) 甲37
甲37には、次の事項が記載されている。

(180頁)
「(4)クロススライダ機構(crossed slider mechanism):4個のリンクが1つの回り対偶と1つのすべり対偶を持つ図10・12をクロススライダ機構という.」

(図10・12 クロススライダ機構)




(d) 甲39
甲39には、次の事項が記載されている。

(1欄15〜16行)
「本考案は高さ調整及び角度調整が単一のロツク部材で可能となつた椅子に関する。」

(2欄13〜28行)
「以下、本考案の一実施例を添付の図面を参照して具体的に説明する。第1図は本考案の一実施例の全体の斜視図、第2図はその側面図であり、パイプ材が矩形状に折曲されて形成された上部フレーム1上に座部となるクツシヨン体2が取り付けられると共に、同様に形成された下部フレーム3には適宜キヤスタ4,4…が取り付けられて床上を移動するようになつている。そして、これらの間には2本の脚杆5及び6が取り付けられるが、一方の脚杆5は単一のパイプ材で形成され、他方の脚杆6は二重パイプで形成されて伸縮可能なスライド杆となつており、さらに、これらの杆5及び6の両端部は夫々、前記上部フレーム1及び下部フレーム3に枢着されると共に、脚杆5とスライド杆6は中間部が交差するように配設せしめられている。」

(3欄11〜21行)
「このように配設せしめられた脚杆5とスライド杆6の交差部分にはロツク部材10が取り付けられている。このロツク部材10は脚杆5とスライド杆6とを交差せしめると共に、この交差状態を維持した状態で脚杆5及びスライド杆6上を摺動可能及び停止可能となるように形成されている。第4図及び第5図は、このロツク部材10を図示するものであり、該ロツク部材10はストツパ11,11と、このストツパ11,11を締め付けるカム12及びストツパ11,11を解放するばね13,13を有して形成されている。」

(4欄2〜31行)
「次に、以上のように構成された本実施例によつて、椅子の高さを調整する場合を、第2図を参照して説明する。同図、二点鎖線の状態ではロツク部材の摺動が停止せしめられているが、この状態でロツク部材10の操作レバー16を第4図の矢印B方向に回動して同図のようにカム12を引き起こすと、コイルばね13,13の附勢力でストツパ11,11が解放せしめられる。従つて、上部フレーム1を引き上げると、脚杆5とスライド杆6は徐々に起立せしめられると共に、ロツク部材10も脚杆5とスライド杆6上を摺動する。この摺動にあつては、ストツパ11,11内に脚杆5及びスライド杆6が挿通せしめられており、脚杆5とスライド杆6は交差状態を維持しながら、すなわち、ロツク部材を頂点として上下に三角形が形成された状態で起立せしめられる。従つて、操作レバー16を第4図の矢印A方向に回動してカム14によつてストツパを締め付け、ロツク部材10を停止せしめると、ロツク部材を頂点とした三角形は固定されるから、その位置でロツクが行なわれ第2図実線のように椅子の高さが変化せしめられる。
一方、座部2の角度を変化せしめる場合には、第6図に示すように、ロツク部材10のロツクを解除して、所望の方向に上部フレーム1を傾倒せしめればよく、これにより、スライド杆6が伸長あるいは短縮すると共に、ロツク部材10も交差状態を維持しながら摺動するから、任意の位置で再度ロツクし、同図の二点鎖線で示すように座部2が傾いた状態となる。」

(第1〜2図)




(第4図)




(第5図)




(第6図)




c 副引用例に記載の技術について
前記a(a)〜(e)より、2つの機械要素が直線状にすべるようにした、いわゆる「すべり対偶」が汎用技術又は周知技術であることは認められる。しかしながら、相違点3に係る本件訂正発明1の構成のように、交差する2つのアームに設けられる「スライド部材」として、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される」ものは、甲13〜18のいずれにも記載も示唆もされていない。
前記b(a)〜(c)より、1つのアームに外嵌されるスライダと1つの溝に内嵌されるスライダを組み合わせた「交差スライダてこ機構」をその構成に含むかじ取り機構が汎用技術又は周知技術であることは認められる。しかしながら、前記b(a)〜(c)における当該機構を構成する部材は、交差する2つの断面矩形状の棒状の部材にスライド自在に設けられ、断面矩形状の棒状の部材が互いから離れる方向の変形を防止する補強部材であることを目的とする、相対回転自在かつ連結された「断面形状が矩形状で軸方向に長い二つの筒状部からなり、断面形状が矩形状の棒状部材の外周面上にそれぞれスライド自在に外嵌されるスライド部材」ではない。したがって、相違点3に係る構成は、甲29、31及び37のいずれにも記載も示唆もされていない。
前記b(d)より、甲39には、交差する2つのアームである「脚杆5」及び「スライド杆6」に設けられる「ストツパ11,11」からなる「ロツク部材10」を含む椅子が記載されている。しかしながら、当該「ストツパ11,11」は、「操作レバー16」を回動することにより、「脚杆5」及び「スライド杆6」に対して摺動可能な状態と停止可能な状態を切り換えることができるものであるところ、停止可能な状態とすることで「ロツク部材10」を固定する役割を果たすものであり、また、このため断面は略円形状となっているから、甲1発明のスライド部材(昇降案内具22)と均等な技術的構成としての、交差する2つの断面矩形状の棒状の部材にスライド自在に設けられ、断面矩形状の棒状の部材が互いから離れる方向の変形を防止する補強部材であることを目的とする、相対回転自在かつ連結された「互いに断面形状が矩形状で軸方向に長い二つの筒状部からなり、断面形状が矩形状の棒状部材の外周面上にそれぞれスライド自在に外嵌されるスライド部材」ではない。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、副引用例のいずれにも記載も示唆もされておらず、甲1発明のスライド部材(昇降案内具22)と均等な技術的構成としての、交差する2つの断面矩形状の棒状の部材にスライド自在に設けられ、断面矩形状の棒状の部材が互いから離れる方向の変形を防止することを目的とする、相対回転自在かつ連結された「断面形状が矩形状で軸方向に長い二つの筒状部からなり、断面形状が矩形状の棒状部材の外周面上にそれぞれスライド自在に外嵌されるスライド部材」は、甲13〜18、29、31、37及び39のいずれにも記載も示唆もされていない。

(イ) 設計変更の自明性、動機付けについて
上記(ア)において検討したとおり、甲1発明のスライド部材(昇降案内具22)と均等な技術的構成としての、交差する2つの断面矩形状の棒状の部材にスライド自在に設けられ、断面矩形状の棒状の部材が互いから離れる方向の変形を防止する補強部材であることを目的とする、相対回転自在かつ連結された「互いに断面形状が矩形状で軸方向に長い二つの筒状部からなり、断面形状が矩形状の棒状部材の外周面上にそれぞれスライド自在に外嵌されるスライド部材」は、甲13〜18、29、31、37及び39のいずれにも記載も示唆もされていない。したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明の選択肢であるとはいえない。
これに対し、請求人は、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状の棒状部材の外周面上にスライド自在に外嵌されるスライド部材」で構成される「すべり対偶」は汎用技術であるところ、相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、移動式スクリーンの小型化というありふれた課題を解決するための設計事項にすぎない旨主張する(弁駁書の11頁26行〜12頁7行参照)。
確かに、小型化、軽量化、機構の簡略化や部品点数の削減などの要請は一般的な要請であり、また、甲1発明のスライド部材(昇降案内具22)は、回転対偶と二つのすべり対偶に抽象的には分解でき、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状の棒状部材の外周面上にスライド自在に外嵌されるスライド部材」で構成される「すべり対偶」は汎用技術であるから、甲1発明のすべり対偶をこのようなものに変更することに、一定の動機があるといえなくもない。
しかし、甲1発明の「昇降案内具(22)」は、「多数の案内ベアリング(23)」を備えるものであるから、「昇下降台(21)(21)」との間の摩擦を可能な限り低減しようとする設計指針が認められる。一方、本件訂正発明1の「スライド部材」は、「断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される」ものであり、筒状部の内面とアーム外周面が面接触するものであるから、ベアリングを用いた場合に比べて摩擦が大きくなることは明らかである。
さらに、請求人が提出した和田隆宏教授の意見書(甲42)の11頁において、「摩擦力はできるだけ弱い方が、スクリーンの動きが滑らかとなり、スクリーン昇降機としての性能に寄与すると考える。」としている。
したがって、甲1発明において、スライド部材として面接触するすべり対偶の構成を採用することには、甲1発明の設計思想に反するという消極的になる事情がある。
以上検討のとおり、甲1発明において相違点3に係る本件訂正発明1の構成を備えるようにすることには、消極的になる事情があり、強い積極的な動機が存在するとは認められない。

(3) 有利な効果の有無についての判断
ア 有利な効果についての明細書の記載及び被請求人の主張
本件特許明細書の【0022】には、「発明の効果」として、次の記載がある。
「請求項1の発明によれば、スクリーンを引き上げて(立ち上げて)使用姿勢にしたり、スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。又、例えば、展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げることを、スライド部材にて阻止することができるから、従来のように一方のリンク機構のみが大きく伸縮作動されて変形や損傷等のトラブル発生を招くことがなく長期間に渡って良好に使用することができる自立式手動昇降スクリーンを提供することができる。又、連結されたスライド部材にて左右のアームを同一揺動角度にて揺動させることができるから、左右のリンク機構を常に決められた所定の動作にて行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた状態でスムーズかつ安定良く伸縮させることができる。しかも、左右のリンク機構を安定良く伸縮させるために、例えば左右バランス機構等の大掛かりな装置を取り付ける場合に比べて本発明では構成の簡素化を図ることができるから、装置の大型化やコストアップを抑制することができる利点がある。」

また、被請求人は、本件訂正発明1の有利な効果として、答弁書(24頁31〜34行、26頁17〜20行及び27頁19〜22行)等において、「左右のアームに伸縮動作が異なるような力がかかると、スライド部材にアームから押し付け力を受けて抵抗が生じ、これにより左右のアームの異なるような伸縮動作が規制される」という効果があることを主張している。
当該説明だけでは、「スライド部材」による効果を直感的に理解することができるほどの明確な説明がされたとはいえないところ、被請求人は実証実験及び専門家の意見書等による理論的・演繹的説明により立証を試みており、請求人も実証実験及び専門家による意見書等によりその反証を試みている。
そこで、以下では、本件訂正発明1の有利な効果について、当審の見解を示したうえで、当事者が提出した証拠について、順に検討する。

イ 有利な効果についての当審の見解
(ア) 本件スクリーンの動作に関わる「力(ちから)」について
本件「自立式手動昇降スクリーン」の動作に関わる「力」について、まず検討する。
はじめに、摩擦力以外の力について検討する。
第一に「自立式手動昇降スクリーン」に働く力としては、「スクリーン」や「上端支持部材」等の自重による「重力」が挙げられる(以下「自重による重力」という。)。「上端支持部材」の自重は一定であり、「スクリーン」の自重はスクリーンを引き上げるほど大きくなるから、「自重による重力」は、スクリーンを引き上げるほど線形(定数+比例項)の依存性で大きくなる。
第二に、「巻き取り部材」の巻き取り付勢による力が挙げられる(以下「スクリーン巻き取り付勢力」という。)。スクリーン巻き取り付勢力の方向は、自重による重力の方向と同じである。そして、巻き取り付勢力は、完全に巻き取られた状態では最も小さく、最も引き出された状態では最も大きくなり、引き出し量に対して線形(比例)の依存性で大きくなるから、「スクリーン巻き取り付勢力」は、スクリーンを引き上げるほど線形に大きくなる。
第三に、「下部側アーム」を上方へ移動付勢するための付勢手段(以下「上方付勢手段」という。)による力が挙げられる(以下「上方付勢力」という。)。実施例によると上方付勢手段はガススプリングであり、ガススプリングの付勢力は伸び縮みによらずほぼ一定であることが技術常識であるところ、「上方付勢力」はガススプリングの付勢力の上下方向成分であるから、上方付勢手段の水平方向からの傾きの角度をφとすると、「上方付勢力」はガススプリングの付勢力とsinφの積で表される。スクリーンを引き上げるほどφは増大するから、スクリーンを引き上げるほど、「上方付勢力」は大きくなる。ここで、アームの水平方向からの傾き角をθと置くと、スクリーンの引き上げ量はsinθに比例するところ、θとφは同じ大きさではないから、「上方付勢力」はスクリーンの引き上げ量に対して線形の依存性にはない。
ここで、「自重による重力」と「スクリーン巻き取り付勢力」の合力を「下方付勢力」ということとすると、「上方付勢力」と「下方付勢力」は、ともにスクリーンを引き上げるほど大きくなるという傾向を示すものであるが、引き上げ量に対する依存性は異なるから、これらの力は釣合いが取れないことは明らかである。
次に、摩擦力を含めた力について検討する。
「上端支持部材」と「上部側アーム」、「上部側アーム」と「下部側アーム」及び「下部側アーム」と「ベース部材」は、それぞれ「枢支連結」されているところ、本件訂正発明は自立式スクリーンであり、スクリーンは静止できなければならないから、これらの部材に摩擦力が働いていることは明らかであり、当該摩擦力が「上方付勢力」と「下方付勢力」の差を埋め合わせることによって、「自立式手動昇降スクリーン」は自立して静止することができる。
さらには、「手動」であるのであるから、当該摩擦力は、手により動かすことができる程度に小さいことも技術常識である。
以上検討のとおり、「自立式手動昇降スクリーン」には「上方付勢力」及び「下方付勢力」が作用し、「枢支連結」による摩擦力が両者の差を埋め合わせることで自立するものであるところ、当該摩擦力は小さなものではあるが、スクリーンの動作を理解するうえで無視できないものである。
なお、ここまでの説明は、紙技術士の意見書(乙21)の6〜7頁における説明と矛盾しない。

(イ) スライド部材がない場合の本件訂正発明1の動き
展張状態の本件訂正発明1からスライド部材だけを外して、上端支持部材の右端部に下方の外力を加えて引き下げる場合、スクリーンの右側が弛んで左側にスクリーン巻き取り付勢力が集中することで、外力が十分に小さくゆっくり引き下げるのであれば、上端支持部材の左側が右側に追従して左右のアームがバランス良く折り畳まれ適切に収納状態になるが、過度の大きな外力を加えたり、過度に素早く引き下げると、上端支持部材の左側が右側に追いつくことなく右側アームだけが先に折れ曲がって、適切に収納状態とすることができないことが理解できる。すなわち、外力には上限となる大きさや速さの値があって、それを超えなければ適切に収納状態とすることができ、それを超えれば適切に収納状態とすることができない。
このことは、被請求人の令和3年4月9日付け上申書の8頁3行〜10頁6行における説明のとおりである。

(ウ) スライド部材がある場合の本件訂正発明1の動き
展張状態の本件訂正発明1において、上端支持部材の右端部に下方の外力を加えて引き下げる場合、スクリーンの右側が弛んで左側にスクリーン巻き取り付勢力が集中して左側のアームに下方の力が働くことは、上記(イ)の場合と変わりないが、加えて、右側アームのスライド部材は、右側のアームに押しつけられて垂直抗力を受け、右側アームに対してアームの右端方向にスライド移動しようとして摩擦力を受けることとなるから、上記(イ)の場合に比較して、右側アームの動きを抑制するように力が働く。
ここで、上記(ア)で検討したとおり、摩擦力はスクリーンの動作において重要な役割を果たしているから、スライド部材の摩擦力も、それがたとえ小さなものであったとしても、本件訂正発明1の有利な効果を理解するうえで無視できないものである。
したがって、摩擦のあるスライド部材が存在すると、右側アームだけが先に折れ曲がるという動きが抑制されることは明らかであり、スクリーンの右側が弛んで左側にスクリーン巻き取り付勢力が集中することで、上端支持部材の左側が右側に追従して左右のアームがバランス良く折り畳まれることに対して、補助的に有利に働くと認められるから、本件訂正発明1には、摩擦のあるスライド部材が存在することで、左右のアームがバランス良く折り畳まれ適切に収納状態とすることができる外力の上限値が高くなったり、素早く引き下げても右側アームだけが先に折れ曲がりにくくなったりするという有利な効果が存在すると、当審は考える。
なお、摩擦のあるスライド部材が存在する場合であったとしても、上端支持部材の左側が右側に追いつくことができないほど外力が大きい場合は、適切に収納状態とすることができないことになる。

ウ 当審の見解を裏付ける証拠
(ア) 立矢宏教授の意見書(乙5、11及び18)
立矢教授は、ロボットの専門家であり、多数の論文及び著書(乙15の1の1〜15の2の3及び乙17)に裏付けられているように機構学に関して高度の専門性を有しており、被請求人との間に利害関係・経済的関係はなく、中立性(乙15の3)を有している。
そして、乙5の「第2.意見の内容」「2.(2)項について」及び「3.(3)項について」の説明は、スクリーン装置のモデルとして、付勢手段による上方への付勢力、スクリーン巻き取り力による下方への付勢力、スライド部材の摩擦、自重を考慮した適切なモデル(必要な考慮要素を捨象しすぎていないモデル)を想定して検討している。その上で、上端支持部材の右端部を持って押し下げる場合のリンク機構の運動について、スクリーン巻き取り力が左端へ集中し、スライド部材とアームの間での摩擦力が発生するという一連のメカニズムを、直感的に理解可能な形で説明するものである。
乙5の8頁1〜4行の「さらに上端支持部材の右端に力を加えると、左側に集中した巻き取り力に加え、動きが悪く固まったアームR2およびスライド部材を通じて左側のアームL1、L2にも下方への力が及び、摩擦力を越えると、力が釣り合うようにして左右のアームがほぼ同時に下り始める。」という説明は、理解が困難な面もあるものの、「左側に集中した巻き取り力」に注目している点を考慮すれば、前記イ(ウ)で示した当審が認定した有利な効果の存在を支持していると認められる。
また、同教授の参考意見の補足である乙18の3頁8〜10行の「言い換えると、スライド部材がない場合と比べればスライド部材がある場合の方が、正常に使用できる力の範囲が広くなるとも言えます」という説明は、スライド部材に摩擦がない場合よりも、摩擦がある場合のほうが、左右のアームがバランス良く折り畳まれ適切に収納状態とすることができる外力の上限値が高くなるという、前記イ(ウ)で認定した有利な効果の存在を支持していると認められる。

(イ) 実験成績証明書(乙14の5)
乙14の5は、被請求人販売製品のスクリーンについて、上部支持部材の右端部に錘をつるす実験結果を示す実験成績証明書であって、「スライド部材」がある場合とない場合、そして甲1発明の「昇降案内具(22)」を模して作成した「甲1サンプル」を「スライド部材」の代わりに取り付けた場合について、上部支持部材が下がり始める荷重が異なることが示されている。
この実験結果は、「スライド部材」に静止摩擦力が作用すると上部支持部材が下がらないことを示しており、当審の見解のうち、「右側アームのスライド部材は、右側のアームに押しつけられて垂直抗力を受け、右側アームに対してアームの右端方向にスライド移動しようとして摩擦力を受けることとなるから、・・・右側アームの動きを抑制するように力が働く」こと(上記イ(ウ))を実証的に裏付けるものである。

エ その他の証拠
(ア) 動画について
a 動画の内容
甲22、26の1の1〜26の2の3、乙1、7の1の1〜7の2の3、13の1の1〜13の1の3は、「スライド部材」に相当する部材を有する被請求人販売製品のスクリーンを上げ下げする動画である。
乙13の2の1〜13の2の2は、「スライド部材」に相当する部材を外した被請求人販売製品のスクリーンを上げ下げする動画である。
乙8〜9は、「スライド部材」に相当する部材を有する請求人製品のスクリーンを上げ下げする動画である。
乙3〜4は、「スライド部材」に相当する部材を外した請求人製品のスクリーンを上げ下げする動画である。
甲34の1〜34の3は、請求人製品の「スライド部材」に相当する部材を拡大した動画である。
甲40、41の1の1〜41の3の2は、従来技術と本件訂正発明の模型の動きを示す動画である。

b 検討
本件訂正発明1が有利な効果を有するか否かの、人の操作による実証実験においては、手が下に下げる力だけでなく、水平方向の力を加えるなど上端支持部材を介して引っ張る力を作用させることができ、さらには、手首のスナップの動きなどによりトルクを掛けることも可能であり、その力のかけ方具合によってスクリーンの動きは影響を受けることが予測される。したがって、手の微妙で複雑な力の入れ具合を、再現性・客観性をもって特定し、第三者が客観的に把握可能なように表示しつつ実験をすることは、非常に困難であるという事情がある。
そして、請求人・被請求人がそれぞれ実験をした動画は、客観的な第三者による実験ではなく、スライド部材があるものとないものとで、下げ方が公平であるのか、その他の細工をしていないのか、たまたま成功したり失敗したりした結果を選択して編集しただけではないのか、等々の疑念を払拭することができないから、当審としては、動画からは、有利な効果の有無について、存在するとも、存在しないとも、確信を抱けるほどの心証を形成することができない。
また、個別の動画について検討すると、例えば、甲22、26の1の1〜26の2の3において、操作者はスクリーンを外側横方向に引っ張っているように見受けられるなど、請求人の動画は、適切な実験とはいえない。
甲34の1〜34の3は、スクリーン全体の動きを示すものではなく、甲40、41の1の1〜41の3の2は、実際の自立式手動昇降スクリーンとは大きく異なる模型を撮影したものであるから、これらの動画に基づいて、「スライド部材」の効果を検証することは不可能である。
被請求人の動画についても、適切な実験であるとの確信を得られるようなものではない。例えば、乙1、7の1の1〜7の2の3において、操作者がスクリーンを内側横方向に押してバランスを取っていないと断定することができる情報は認められないから、前記の疑念を払拭することができるほどの立証がされているとはいえない。また、摩擦の作用の有無により効果の違いが生じるのであれば、例えばスライド部材に潤滑油を十分に塗ったものと、塗らなかったものとの対比実験などが考えられるが、このような実験は行われておらず、摩擦の作用を客観的に断定することができる動画は、存在しない。
乙3〜4及び乙13の2の1〜13の2の2から、スライド部材を外すと、スクリーン引き出し量が小さく両アームのなす角度が90°より大きいときに、動きの安定性が大きく損なわれることが見てとれる。これは、請求人が提出した和田隆宏教授の意見書(甲42)の8頁において、「∠Aが90度より大きいのは、リンク機構が折り畳まれたときであり、このとき、スライド部材はリンク機構の上下方向の動きを補助する役目を果たすことがわかる。」と説明された効果をスライド部材が奏することを示しているのかも知れない。しかし、このような効果は、摩擦の作用とは無関係であり、本件訂正発明1の「スライド部材」と甲1発明の「昇降案内具(22)」が等しく奏するものであるから、甲1発明の「昇降案内具(22)」に換えて本件訂正発明1の「スライド部材」を採用したときに得られる有利な効果であるとはいえない。

c 小括
以上検討のとおり、動画の証拠から有利な効果の有無を判断することはできず、当該証拠は、当審の見解を裏付けるものでも否定するものでもない。

(イ) 定量的実験について
a 実験の内容
乙14の1は、被請求人販売製品のスクリーンについて、スクリーン右側がゆるむと、巻取り付勢力がゆるみのないスクリーン左側に集中することを示す実験成績証明書である。
乙14の2〜14の4及び乙20は、被請求人販売製品から作成した実験サンプルに対して行った実験結果を示す実験成績証明書である。
甲45及び乙19は、請求人製品のスクリーンについて、引き下げ荷重をデジタルフォースゲージで測定した実験結果を示す実験成績証明書である。

b 検討
乙14の1は、立矢宏教授の意見書(乙5)における説明を補足するためのものであり、「スライド部材」の効果を立証するものではない。
乙14の2〜14の4及び乙20は、実際の自立式手動昇降スクリーンとは大きく異なる実験サンプルを対象としたものであるから、これらの実験に基づいて、「スライド部材」の効果を検証することは不可能である。
甲45及び乙19は、同様の実験であるにもかかわらず請求人側と被請求人側で結果が異なり、人手による実験の限界を示すものであるから、これらの実験に基づいて、「スライド部材」の効果を検証することは不可能である。

c 小括
手動で操作する装置における摩擦現象を利用した効果は、そもそも定量的な測定が困難であると考えられるところ、以上検討のとおりであるから、定量的実験の結果を示す証拠から有利な効果の有無を判断することはできず、当該証拠は、当審の見解を裏付けるものでも否定するものでもない。

(ウ) 理論的考察について
a 紙昌弘技術士の意見書(乙21)
紙技術士は、被請求人との間に利害関係・経済的関係がなく中立性があることが主張立証されていない。
意見の内容について検討すると、前記イ(ア)で示したとおり、スクリーンに働く力と自立のメカニズムについての説明は、当審の見解を支持するものであるが、次の点は、当審とは異なる見解である。
乙21の15頁の表において、「慣性モーメントによる慣性力(回るまいとする力)が作用し、上部支持部材の揺れを抑制する効果がある。」と説明しているが、スライド部材の質量は上部支持部材やアームの質量に比べて極めて小さく、長さも桁違いに相違するから、その慣性モーメントは、摩擦力以上に無視できるほど小さいと考えられる。また、このような作用は、紙技術士の意見書が提出されるまで全く主張立証されていなかったことであり、ほかのどの専門家も議論の対象にしていないものである。
以上を考慮すると、当審は、紙技術士の見解については、本件訂正発明1の有利な効果を肯定するものとして全面的には採用することができない。

b 角田成夫弁理士の意見書(甲27、28、33及び35)
角田弁理士は、本件特許無効審判の口頭審理に請求人代理人として出頭した当事者であり(口頭審理調書)、過去に請求人の出願代理をしているから(乙16の1〜16の4)、請求人との直接の利害関係・経済的関係があった者であり、中立性は認められない。また、略歴書は示されているものの(甲28最終頁)、機構学や機械設計に関する研究業績は不明である。
意見の内容について検討すると、甲35において、自由度が2以上のリンク機構が「不限定連鎖」であり、本件訂正発明1が常に一定の動きに限定されないことを説明したうえで、8頁6〜10行において、「他に具体例を示すとすれば、鉄道車両のパンタグラフも架線に押し付けるための「付勢力」がスプリングによって付与されるが、この「付勢力」はリンク機構であるパンタグラフのアームに決まった角度を与えるものではなく、架線との相対位置の変動に応じてパンタグラフの変位を吸収するために一方向に弾性力を加えているものである。」と述べている。
鉄道車両のパンタグラフは、通常の運行時において常に架線に押し付けられる動きをする装置として現実に役立てられていることが明らかであるところ、「押しつける力である付勢力の入力を無視して、パンタグラフは自由度が2の機構であるから、力を加えることにより、先端の水平方向の位置が一意には定まらない」ということをいくら主張したとしても、このことが、「パンタグラフが通常の運行時において常に架線に押し付けられるか否か」という命題の証明又は否定には全く役に立たない。
角田弁理士の説明は、このようなことをしているのと同様であって、部分的には正しい主張だとしても、全体としては、本件訂正発明1に有利な効果が存在するかという命題に対して機構学を適切に適用した議論とは評価し難いといわざるを得ない。
したがって、本件訂正発明1の有利な効果の存在を否定するものとして、当審は、角田弁理士の意見書を採用しない。

c 和田隆宏教授の意見書(甲42)
和田教授は、請求人との間に利害関係・経済的関係はなく中立性を有することを宣誓しているものの(甲48)、専門は原子核理論や放射線生物学で(甲42添付の略歴書及び業績リスト)、本件訂正発明1と専門性が共通しているとは認められない。
意見の内容について検討すると、本件訂正発明1の有利な効果の考察においては、巻き取り付勢力についての検討が必須であるのが当審の見解であるところ、和田教授の検討においては、巻き取り付勢力が検討されておらず、採用したモデルは、捨象しすぎており、適切でないと当審は考える。
また、甲42の10〜11頁では、上部支持部材の中央を押し下げるときも摩擦力が働くから、「上部支持部材の一端を押し下げた場合のみに摩擦力が強くはたらいて、一方のリンク機構のみが大きく伸縮作動しようとする動きをスライド部材によって阻止することができるとする主張は認められない。」としているが、上部支持部材の中央を押し下げるときは当然スクリーンが左右対称に上下動するから、端部を押し下げるときと中央を押し下げるときを比較することに意味はない。
したがって、和田教授の意見書の見解については、当審の見解を否定できるものと評価することはできない。

d 宇津野秀夫教授の意見書(甲43)
宇津野教授は、請求人との間に利害関係・経済的関係はなく中立性を有することを宣誓しているものの(甲49)、専門は振動の伝搬・吸収に関するものであり(甲43添付の略歴書及び業績リスト)、本件訂正発明1と専門性が共通しているとは認められない。
意見の内容について検討すると、甲43の説明は、全体として不明な点が多いが、16〜18頁によると、結論として、スライド部材がある場合の臨界荷重L′が、スライド部材がない場合の臨界荷重Lよりも大きい(17頁の数式でL′/Lが1より大きい)ことは認めている。宇津野教授は、L′とLの差が微少であることを説明するが、立矢教授が乙18で説明するとおり、その差は程度問題であって、スライド部材の摩擦力による効果が否定されることはない。また、宇津野教授は、付勢部材の押し上げる力を考慮しておらず、これが、加重と巻き取り力の合力と釣り合ってはいないかも知れないがほぼ匹敵する大きさであることを無視しており、「スライダ無し状態に対して、スライダを追加すれば当然ではあるが摩擦は増大する。しかし概算ではその増大量は微小でスクリーンの運動には影響を及ぼさない。」との結論は採用することができない。
したがって、宇津野教授の意見書は、当審の見解を否定できるものと評価することはできない。

e 山田泰之准教授の意見書(甲44)
山田准教授は、請求人との間に利害関係・経済的関係はなく中立性を有することを宣誓しているものの(甲50)、専門は「ロボット研究」、「自動車サスペンション」というだけで具体的な業績は示されておらず、本件訂正発明1と専門性を共通する分野において学術的研究業績があるとは認められない。
意見の内容について検討すると、甲44の2頁において、「オーエス側が提出した参考意見書が工学的に必ずしも間違いであるとは言えない」とし、甲44の19頁では「そのような実用上の効果を奏することはない」としており、スライド部材を設けたことによる有利な効果が定性的に存在するかも知れないことは否定しておらず、その効果が実用的といえるほど大きくないと結論づけている(なお、立矢教授も乙18において、山田准教授の意見がスライド部材の摩擦力に起因する有利な効果が定性的に存在することを否定するものではない点を指摘している。)。
すなわち、甲44の8頁23〜25行において、「本係争は,特許発明の効果の実用上の有効性を議論している.特許記載の機能が効果的に発生するか否かを議論するには,定量的な議論が必要不可欠と考える.」と述べており、3頁の無効論への言及を考慮すると、その要旨とするところは、実用上の効果を奏する程度の数値限定等をしなければ、特許は無効とされるべきとの主張をしていると理解される。
しかしながら、当審は、山田准教授の考え方には賛同することはできない。その理由は、次のとおりである。数値限定により従来の発明を改善することを目的とする発明ではない、新たな構成によって新たな効果を奏する発明に関し、その効果が実用上意味がある程度の大きさを有するための数値限定等までを明らかにして特許請求の範囲の各請求項で特定しなければならないとすると、そもそも全ての場合を想定して予め数値限定をすることなど不可能であるから、画期的なパイオニア発明の保護ができなくなってしまい、特許制度の趣旨に反する結果を招来し、特許制度の存在意義を消失させるものとなってしまう。したがって、数値限定により従来の発明を改善することを目的とする発明ではない、新たな構成によって新たな効果を奏する発明に関しては、その効果が実用上意味がある程度の大きさを有するための数値限定等までを要求すべきではない。
以上のとおり、山田准教授の意見は、相違点3に係る本件訂正発明1の構成が、定性的に有利な効果を奏することを否定するものではないから、当審の見解を否定するものではない。また、本件訂正発明1に係る特許を無効とすべきとの主張はとても採用できるものではないから、山田准教授の見解の結論を採用することはできない。

f 倉田純一准教授の意見書(甲46〜47)
倉田准教授は、請求人との間に利害関係・経済的関係はなく中立性を有することを宣誓しているものの(甲51)、甲46添付の業績リストのうち、「新技術により高まる法整備の必要性,倉田純一,松木俊明,中原明子,第23回関西大学先端科学技術シンポジウム講演集,国内共著,pp. 21-26,2019」は、本件特許無効審判の請求人代理人である中原明子弁護士との共著論文であることが認められ、請求人代理人との関係がうかがえる。
業績は、医工学、工学教育など多岐にわたっており(甲46添付の略歴書及び業績リスト)、本件訂正発明1と専門性が共通しているとは認められない。なお、甲46添付の業績リストには、甲43の執筆者である宇津野秀夫教授との共著論文が複数含まれている。
意見の内容について検討すると、甲46は、「5.スライド部材に摩擦力が発生した場合の自由度」において、静止摩擦力によりリンク機構の自由度が減少するとの前提に立った説明がされているが、本件訂正発明1について検討すべきは、スクリーンが昇降運動をしてスライド部材が動いている最中に、動摩擦力の働きにより動きの安定性が向上するかどうかであるから、前提の設定が適切でない。
また、甲47は、「4.まとめと結論」において、摩擦力によりアームとスライド部材が「固着」するにもかかわらず押し下げ、引き上げが可能となることが理解できないことが述べられているが、ここでいう「固着」は、アームを押し下げた瞬間ブレーキ力が作用することを示しているにすぎず、ブレーキ力を超える力が作用すると、スクリーン巻き取り付勢力が加わりスクリーンが再び動き始めることは自明であるから、スクリーンの運動について十分な考察がされているとはいえない。
したがって、本件訂正発明1の有利な効果を否定するものとして、倉田准教授の意見書は採用することができない。

オ 有利な効果の有無の検討の必要性について
(ア) 被請求人の主張
被請求人は、令和3年6月23日付け上申書の9頁21行〜10頁6行において、本件訂正発明1において「スライド部材」を設けたことによる効果は、動画の証拠である乙3、4、8、9及び13から確認可能であることを述べた上で、それを前提として、同上申書の10頁17〜28行において、次のとおり主張する。
「機械・装置を開発する者にとって、ある構成を採用すると、より良い製品ができたという段階で特許出願を行うのが一般的であり、その効果が生じる力学的・機構学的な説明や、定量的な説明等は求められない。特許法の定める要件にも審査基準にも、明細書にそのような記載を行うように求められていない。
しかるに、本件審判事件においては、本件訂正発明の効果の力学的な説明を求められ、それが学者の意見書の応酬によって議論されるという不可思議な経緯を辿っている(その上で、何故か、本件争点が「最も大きな」ものとされている)。仮に、このような議論が、特許要件の充足性を見当する上で必要と真に考えられているとすれば、およそ、被請求人のような中小企業が新しい発明を行ったとしても、これを特許出願することなどできないことになってしまう。」

(イ) 当審の立場
a 有利な効果の検討の必要性についての一般論
一般に、ある構成を備えるように変更を加えた場合に、予測可能な望ましくない効果を奏するだけである場合、そのような変更を加えることに積極的な動機付けはないとしても、自明であるとして、進歩性は否定される(参考裁判例として、東京高等裁判所平成15年3月27日判決(平成13年(行ケ)第364号)参照)。
上記の考え方は、進歩性の判断の結果の国際調和の観点からも肯定されるものであり、例えば欧州の審査ガイドライン(Guidelines for Examination in the EPO Part G - Chapter VII-10.1参照)には、次のように規定されている。翻訳は、JETROによるものであり(URL: https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/europe/ip/pdf/guidelines_part_g.pdf)、括弧書きに記した。
「10.1 Predictable disadvantage; non-functional modification; arbitrary choice
If an invention is the result of a foreseeable disadvantageous modification of the closest prior art, which the skilled person could clearly predict and correctly assess, and if this predictable disadvantage is not accompanied by an unexpected technical advantage, then the claimed invention does not involve an inventive step (see T 119/82 and T 155/85). In other words, a mere foreseeable worsening of the prior art does not involve an inventive step. However, if this worsening is accompanied by an unexpected technical advantage, an inventive step might be present. Similar considerations apply to the case where an invention is merely the result of an arbitrary non-functional modification of a prior-art device or of a mere arbitrary choice from a host of possible solutions (see T 72/95 and T 939/92).」
(「10.1 予見可能な不利;非機能的な変更;恣意的な選択
発明が,最も近接する先行技術を予見可能な不利となるように変更した結果であって,当該技術の熟練者であれば明らかに予測して正確に評価することができ,この予見可能な不利が予想外の技術的利点を伴っていなければ,クレームされた発明には進歩性が含まれていないことに留意すべきである(T 119/82及びT 155/85参照)。換言すれば,先行技術を単に予見可能に悪化させることは進歩性を含んでいない。ただし,この悪化が予想外の技術的利点を伴っていれば,進歩性が存在しているかもしれない。ある発明が先行技術装置の単なる恣意的かつ非機能的な変更の結果である場合,又は多数の可能な解決からの単なる恣意的な選択である場合にも,これと同様の考え方が適用される(T 72/95及びT 939/92参照)。」)

b 本件訂正発明1の有利な効果の検討の必要性について
以上の点を踏まえて、本件訂正発明1の進歩性について考察するに、もし「多数の案内ベアリング(23)」を備える甲1発明の「昇降案内具(22)」と比較して、本件訂正発明1の「スライド部材」を採用することで、摩擦が大きくなったことによる不都合だけが生じるのであれば、相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、予想されたどおりの不都合な結果を許容するという、単なる設計事項にすぎないと評価せざるを得ない。
しかし、当業者が予測できない効果であって、技術上の意義を有する効果を奏するとなれば、そのような技術思想には当業者は到達できておらず、本件訂正発明1の構成を備えるようにすることに強い積極的な動機付けがないのであれば、本件訂正発明1は進歩性を有すると評価すべきである。

c 有利な効果の立証の必要性について
動画の証拠である乙3、4、8、9及び13からでは、本件訂正発明1が有利な効果を奏することの立証として不十分であることは、前記エ(ア)のとおりである。なお、当審は、本件訂正発明1について、定量的説明が明細書に書いてなければならないという立場は取っていない。むしろ、後述するように、実施可能要件、サポート要件の違反はないと判断している。
しかしながら、本件特許無効審判においては、請求人から甲1を提示され、相違点3に起因して予想される不都合だけが生じ、有利な効果を奏することが定性的に認められなければ、相違点3に係る本件訂正発明1の構成は設計事項にすぎないと評価せざるを得ないことは、前記bに説示したとおりである。
したがって、有利な効果の存在が重要な検討事項であるところ、効果については、実際に製作することにより確認できることは被請求人の主張のとおりであり、通常はそれで十分であることもあるが、本件無効審判においては、有利な効果の有無について争われ、本件訂正発明1について検討すると、本件特許明細書の【0006】、【0019】及び【0022】の説明や、答弁書(24頁31〜34行、26頁17〜20行及び27頁19〜22行)に繰り返し記載された「左右のアームに伸縮動作が異なるような力がかかると、スライド部材にアームから押し付け力を受けて抵抗が生じ、これにより左右のアームの異なるような伸縮動作が規制されることが理解でき」という説明だけでは、「スライド部材」による効果を直感的に理解することができるほどの理論説明がされたとはいえず、当審は本件訂正発明1の自立式手動昇降スクリーンを実際に製作して実験して確かめることはできないから、有利な効果を奏することは、客観的な証明を要するものである。
なお、証明については、実証実験と演繹の二種類が考えられるところ、実験によることが難しいことは前記エ(イ)に説示したとおりである。そこで、当審は、審理事項通知書において、演繹の一手段として、鑑定書の存在の有無について確認したものである。

カ 有利な効果の有無についての小括
以上検討のとおり、本件訂正発明1には当審の見解のとおりの有利な効果があり(前記イ)、当事者が提出した証拠の一部は当審の見解を裏付けるものであり(前記ウ)、その他の証拠は当審の見解を否定するものではない(前記エ)。
したがって、本件訂正発明1には、展張状態において上端支持部材の右端部に下方の外力を加えて引き下げる場合、スライド部材とアームの間の摩擦により、摩擦がない場合よりも、左右のアームがバランス良く折り畳まれ適切に収納状態とすることができる外力の上限値が高くなったり、素早く引き下げても右側アームだけが先に折れ曲がりにくくなったりするという有利な効果があることが認められる。

キ 有利な効果の予測困難性・格別顕著性について
本件訂正発明1の有利な効果は、立矢教授等の理論的な考察により、演繹的に説明できるものであるが、だからといって、進歩性の評価における、「当該構成のものとして当業者が予測できる効果」ではない。有利な効果については、本件特許明細書にその開示があるからこそ、その効果の有無について検証してみようとするものであるが、本件特許明細書の情報がなければ、当該効果を奏することの検証をしてみようという動機は生じないのであって、本件特許明細書の記載に触れた多数の専門家がその存在を否定的に論じていることからも、当該効果に当業者が気づくことができないことは明らかであるから、本件訂正発明1の有利な効果は、当業者にとって予測困難な効果である。
なお、明細書には当該効果の開示があり、当該効果は、当業者が技術常識に基づいて推論できるものであるから、当該効果を主張することは許容される。さらには、当業者が主観的には、当該効果を奏することを試作により実験的に容易に確かめることができるものでもあるから、当該効果を主張することは許容される。
加えて、本件訂正発明1の有利な効果は、手動式スクリーンにおいて、重要な効果であるから、格別顕著性を認めることができる。

(4) 本件訂正発明1についての小括
前記(2)で説示したとおり、相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、副引用例のいずれにも記載も示唆もされておらず、甲1発明において、相違点3に係る本件訂正発明1の構成を採用することに、強い積極的な動機は認められない。
そして、前記(3)で説示したとおり、相違点3に係る「スライド部材」の構成により、本件訂正発明1は当業者にとって予測困難で格別顕著な効果を奏するものと認められる。したがって、相違点3に係る本件訂正発明1の構成は、単なる設計事項にすぎないと評価することはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本件訂正発明2〜4について
本件訂正発明2〜4は、本件訂正発明1が備える構成を全て備えるものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 まとめ
以上検討のとおり、本件訂正発明1〜4は、甲1発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたされたものではない。


第6 無効理由2(明確性要件違反)に関する当審の判断
1 請求人の主張
審判請求書の「(5)本件特許を無効にすべき理由(無効理由2:明確性要件違反)」における請求人の主張を要約すると、次のとおりである。

本件訂正発明1の「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」という構成について、本件特許明細書の【0006】、【0022】等を参酌して解釈すると、「左右のスライド部材」が中央垂線上で常に上下するという作用を奏することが記載されていることとなる。しかしながら、本件のリンク機構は「不限定連鎖」であるから、スライド部材が常に中央垂線上に存在するように動きが規制されることはなく、このことは甲22の動画でも確認されているから、なぜ常にそのような作用効果が生じるのか不明確である。

また、審理事項通知書において、無効理由2が、特許・実用新案審査基準に示された「明確性要件違反の類型」のうち、どれに該当するのか説明を求めたところ、請求人は口頭審理陳述要領書の別紙17頁及び令和3年3月26日付け上申書19頁において、「発明特定事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確となる場合」の「(b)発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確となる場合」に該当すると主張している。

2 無効理由2についての当審の判断
(1) 請求人の主張の前提の誤りについて
明細書に「常に」と記載されているからといって、特許請求の範囲に記載されていない「常に」という文言を追加して本件訂正発明1を限定解釈すべきではない。したがって、特許請求の範囲に記載されていない「常に」という文言を追加して本件訂正発明1を限定解釈すべきとする請求人の主張は、採用できない。
また、どのような力を加えても、スライド部材が厳密な意味で常に中央垂線上にあるはずがないことは、請求人が主張するように技術常識であるから、本件特許明細書における対応箇所の意味は、手動昇降スクリーンとして通常想定される大きさ及び方向の力が作用した場合において、スライド部材がスクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在であるという意味であって、どんな大きさの力がどんな方向に作用したとしても必ずスライド部材が中央垂線上に位置するという意味ではないことは、明らかである。
請求人の主張は、明細書の「常に」との記載を、「どのような場合であっても厳密な意味での常に」と解釈することを前提とし、「左右のスライド部材が中央垂線上で常に上下するという作用を奏する」ためには発明特定事項が不足しているとするものであるところ、その前提に誤りがあるから、発明特定事項が不足しているとの請求人の主張は採用できない。
そして、「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」という発明特定事項は、その記載のとおり、「左右のスライド部材」が「前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上」で「相対回転」することができるように「連結」されていることを意味するものであることは明確であり、また、そのように構成されていなければスクリーンを上下移動させることはできなくなるから、その技術的意味は明確である。
したがって、請求項1の記載は、「発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確となる場合」には該当せず、発明は明確である。
よって、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条6項2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

(2) 「限定連鎖」と「不限定連鎖」について
本件訂正発明1を厳密な意味で「常に・・・」と限定解釈する必要がない以上、本件訂正発明1が「限定連鎖」か「不限定連鎖」かを論じる必要はないが、この点について請求人は主張を繰り返しているので、以下検討する。
請求人は、自由度が1で一定の運動だけが可能であるリンク機構のみを「限定連鎖」とし、本件訂正発明1は自由度が3のリンク機構であるから「不限定連鎖」であると主張する(令和3年3月26日付け上申書7〜9頁)。
他方、被請求人は、本件訂正発明1は自由度が3のリンク機構に対して3つの入力を与えることで全体として動きの限定された「限定連鎖」の機構であると説明する(令和3年4月9日付け上申書7頁7〜12行、令和3年4月26日付け上申書2頁11〜16行)。
本件訂正発明1が限定連鎖か不限定連鎖かの結論が、両者で異なっているように見えるが、この違いは、立矢教授が乙18の18頁10〜16行で説明するとおり、「限定連鎖」及び「不限定連鎖」の定義の相違に起因している。
請求人の限定連鎖の定義(狭義の「限定連鎖」)では、アクチュエータなどによる位置の入力は自由度の限定要素として考慮されるが、力の入力は自由度の限定要素としては考慮されない。したがって、当該定義により不限定連鎖とされたものについては、安定状態を議論することには使用することができない考え方である。
他方、被請求人の限定連鎖の定義(広義の「限定連鎖」)では、位置の入力だけでなく、外力も自由度を限定する入力と考え、安定な状態が決定できるものは、限定連鎖として議論することができる。もちろん他の力が加われば、安定な点は変化するが、安定な状態は決定できる。
手動昇降スクリーンとして通常想定される大きさ及び方向の力が作用した場合における安定性を議論する場合には、被請求人による広義の「限定連鎖」であれば議論できるが、請求人の狭義の「限定連鎖」の定義では「不限定連鎖」となって、動きが予測できないという結論しか生まず、何ら生産的な議論はできないのであり、このような狭義の限定連鎖の定義によらねばならないとする請求人の主張が不適切であることは、例えば鉄道車両のパンタグラフは、請求人の主張によれば自由度が2の不限定連鎖であるが、架線に安定的に接触する機構として現実に役立っていることからも明らかである。
立矢教授の限定連鎖及び不限定連鎖の定義を攻撃する請求人の主張は全く採用できないものであり、この点を攻撃する主張は、論難しているだけであり、請求人の主張の信頼性・信憑性を損なうことに役立つものとしてしか評価できない。

(3) まとめ
以上検討のとおり、本件訂正発明1の「それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結した」という構成は明確であるから、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条6項2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。


第7 無効理由3(サポート要件違反)に関する当審の判断
1 請求人の主張
審判請求書の「(6)本件特許を無効にすべき理由(無効理由3:サポート要件違反)」における請求人の主張を要約すると、次のとおりである。

発明の課題は、スクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げる場合でも、常に左右のスライド部材が垂線上で上下するというものである(スクリーンの上端支持部材の中央部を押し下げたり引き上げたりする場合には、当然にスライド部材が垂線上で上下するので、なんの技術的意義もない。)(審判請求書60頁19〜25行)。
しかしながら、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】や図面から、なぜ「当該発明の課題を解決できる」のか、なぜ常にそのような作用効果が生じるのか、具体的な技術は何ら開示されていない(審判請求書61頁1〜3行)。

2 無効理由3についての当審の判断
(1) サポート要件の充足性の判断基準について
「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」であるところ、明細書に記載された全ての課題を解決できるように特許請求の範囲が記載されていなければならないというものではなく、明細書に記載された課題の一部でも解決できることが認識できるように特許請求の範囲が記載されていればよいことは、明らかである。
さらには、明細書に明示的に記載されていなくとも、技術常識から何らかの効果を奏することが明らかであるような場合には、当該効果を奏することが課題として認識できるから、自明な効果・課題については、明細書に明示の記載がなくとも、発明が記載されているといえるから、そのような発明を特許請求の範囲において特定した場合もサポート要件を満たすということができる。
以上の考え方を踏まえつつ、本件訂正発明1〜4のサポート要件の充足性について、以下検討する。

(2) 明細書に記載された、発明が解決しようとする課題及び発明の効果
本件特許明細書に記載された発明の課題は、【0005】より、「スクリーンの上げ下げを長期間に渡って変形や損傷等のトラブル発生のない状態で行うことができると共に、そのための構成を簡素にすることができる自立式手動昇降スクリーンを提供する」ことであると認められる。
また、本件特許明細書の【0022】には、「発明の効果」として、次の記載がある。
「請求項1の発明によれば、スクリーンを引き上げて(立ち上げて)使用姿勢にしたり、スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。又、例えば、展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げることを、スライド部材にて阻止することができるから、従来のように一方のリンク機構のみが大きく伸縮作動されて変形や損傷等のトラブル発生を招くことがなく長期間に渡って良好に使用することができる自立式手動昇降スクリーンを提供することができる。又、連結されたスライド部材にて左右のアームを同一揺動角度にて揺動させることができるから、左右のリンク機構を常に決められた所定の動作にて行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた状態でスムーズかつ安定良く伸縮させることができる。しかも、左右のリンク機構を安定良く伸縮させるために、例えば左右バランス機構等の大掛かりな装置を取り付ける場合に比べて本発明では構成の簡素化を図ることができるから、装置の大型化やコストアップを抑制することができる利点がある。」

(3) サポート要件の充足性についての判断
ア スライド部材の摩擦による効果
前記第5の2(3)で検討したとおり、本件訂正発明1〜4には、展張状態において上端支持部材の右端部に下方の外力を加えて引き下げる場合、スライド部材とアームの間の摩擦により、摩擦がない場合よりも、左右のアームがバランス良く折り畳まれ適切に収納状態とすることができる外力の上限となる大きさや速さの値が高くなるという有利な効果があることが認められる。
この効果は、本件特許明細書の【0022】の「展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、・・・ことを、スライド部材にて阻止することができる」、「又、連結されたスライド部材にて左右のアームを同一揺動角度にて揺動させることができるから、左右のリンク機構を常に決められた所定の動作にて行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた状態でスムーズかつ安定良く伸縮させることができる。」という記載と技術常識を考慮することにより、当業者が本件特許明細書に従って実際に製作して確かめることができるものであり、また、当業者が理論的に演繹することができるものであるから、当業者にとって認識可能である。

イ スクリーン引き出し量が小さいときの安定性に対する効果
スライド部材がない場合の動画である乙3〜4及び乙13の2の1〜13の2の2をスライド部材がある場合の動画と対比すると、スクリーン引き出し量が小さく両アームのなす角度が90°より大きいときに、動きの安定性が大きく損なわれることが見てとれる。これは、和田教授の意見書(甲42の8頁)において、「∠Aが90度より大きいのは、リンク機構が折り畳まれたときであり、このとき、スライド部材はリンク機構の上下方向の動きを補助する役目を果たすことがわかる。」と説明された効果をスライド部材が奏することを示していると認められる。 このような、スクリーン引き出し量が小さいときの安定性を増加させる効果は、スライド部材の摩擦の有無とは無関係であるが、スライド部材が奏する効果であることには変わりなく、本件特許明細書の【0022】の「スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。」という記載と技術常識を考慮することにより、当業者が本件特許明細書に従って実際に製作して確かめることができるものであり、また、和田教授の意見書のように、当業者が理論的に演繹することができるものであるから、本件訂正発明1〜4が奏する効果として、当業者にとって認識可能である。

ウ 左右のアームが前後に広がることを規制する効果
本件訂正発明1〜4は、スライド部材を設けたことにより、少なくとも、甲1に開示されているのと同様の効果(前記第5の1(1)コ参照)である、左右のアームが前後に広がることが規制される効果、すなわち、頑丈にするという効果があると認められる。当該効果は、明細書には具体的な記述はないものの、当業者ならずとも、一般人でさえ容易に認識できる効果であるから、この意味においても、スライド部材を設けたことを技術手段とする発明は、明細書に記載されたものであるということができる。

(4) サポート要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件訂正発明1〜4は、スライド部材を設けたことにより、前記(3)ア〜ウに示した効果を奏することが当業者にとって認識可能であり、当該効果を奏することによって、「スクリーンの上げ下げを長期間に渡って変形や損傷等のトラブル発生のない状態で行うことができる」という課題を解決できることも、当業者にとって認識可能である。
したがって、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条6項1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。


第8 無効理由4(実施可能要件違反)に関する当審の判断
1 請求人の主張
審判請求書の「(7)本件特許を無効にすべき理由(無効理由4:実施可能要件違反)」における請求人の主張を要約すると、次のとおりである。

発明の課題は、スクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げる場合でも、常に左右のスライド部材が垂線上で上下するというものである(スクリーンの上端支持部材の中央部を押し下げたり引き上げたりする場合には、当然にスライド部材が垂線上で上下するので、なんの技術的意義もない。)(審判請求書64頁12〜18行)。
しかしながら、本件特許明細書の【発明の詳細な説明】や図面から、なぜ「当該発明の課題を解決できる」のか、なぜ常にそのような作用効果が生じるのか、具体的な技術は何ら開示されていない(審判請求書64頁19〜21行)。したがって、当業者として,本件特許明細書で開示されている実施例等(図面を含む。)から、本件特許発明1を実施しようとの試行錯誤を繰り返しても、本件発明1を実施することはできない(審判請求書65頁4〜6行)。

2 無効理由4についての当審の判断
本件特許明細書は、本件訂正発明1〜4に係る自立式手動昇降スクリーンの構成が、スライド部材の形状及び構造も含めて、詳細に記載されたものであるから、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなく、本件訂正発明1〜4に係る自立式手動昇降スクリーンを作ることができ、使うことができるものと認められる。なお、本件訂正発明1〜4に係る発明が技術効果を奏することを本件特許の明細書の記載等から当業者が理解すること又は試作等で確認することができることは、前記第7の2(3)で説示したとおりである。
したがって、本件特許明細書は、本件訂正発明1〜4を実施することができるように記載されたものであるから、本件訂正発明1〜4に係る特許は、特許法36条4項1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。


第9 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は認容する。
本件訂正発明1〜4に係る特許は、請求人が主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項において準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】自立式手動昇降スクリーン
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上端支持部材を手で持ち上げることにより、スクリーンを上方に向けて展張させたり、上端支持部材を下方へ押し下げることにより展張させたスクリーンをケーシング内に巻き取り収納させて持ち運ぶことができるように構成した自立式手動昇降スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
上記自立式手動昇降スクリーンにおいては、各種のものが提案され、例えばスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向ほぼ中央にパンタグラフ式のリンク機構の上端を枢支連結してスクリーンを展張させた姿勢で保持させることが行われている。
しかしながら、前記のようにスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向ほぼ中央にのみリンク機構の上端を枢支連結しているものでは、リンク機構のスムーズな伸縮動作を安定良く行わせることやスクリーンを安定良く自立させるためには左右のバランス調節等を精度良く行わなければならないだけでなく、上端支持部材の左右方向中央を持ってスクリーンの上げ下げを行わなければスムーズな上げ下げを行うことができず、操作性が低下することもあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記不都合を解消するものとしては、例えば、上端支持部材の左右両端と支持フレームの左右両端とを上端側アームと支持フレーム側アームとからなる左右のリンク機構にて連結支持させて、リンク機構のスムーズな伸縮動作を安定良く行わせることやスクリーンを安定良く自立させることができるように構成されたものが既に提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許番号第3243037号公報(図1参照)
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1のものは、左右のリンク機構がそれぞれ単独で自由に伸縮できる構成であり、上端支持部材に一端がそれぞれ連結されてなる左右のリンク機構を連動している構成であるため、展張状態のスクリーンの上端支持部材の左右一端部を持ってスクリーンを押し下げると、上端支持部材が押される側が先に大きく下降した傾斜姿勢になってしまい、その下降した側のリンク機構が大きく短縮作動される。このため、短縮される側のリンク機構のみに大きな負荷が加わり、リンク機構の変形や損傷を招いてしまうことがあった。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、スクリーンの上げ下げを長期間に渡って変形や損傷等のトラブル発生のない状態で行うことができると共に、そのための構成を簡素にすることができる自立式手動昇降スクリーンを提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の自立式手動昇降スクリーンは、前述の課題解決のために、ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、前記下部側アームを上方へ移動付勢するための付勢手段を該下部側アームと前記ベース部材との間に設け、前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に、断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される、スライド自在なスライド部材を取り付け、それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結したことを特徴としている。
スクリーンを引き上げて(立ち上げて)使用姿勢にしたり、スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。又、例えば、展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げようとしても、左右のリンク機構の伸縮量が異なる、換言すれば左右のアームの揺動角度が異なることから、連結されているスライド部材がスライド(移動)することができない。つまり、左右のリンク機構の伸縮量が同一にならなければ、リンク機構の伸縮作動がスライド部材にて強制的に停止される。要するに、スクリーンの上げ下げを行うためには、左右のリンク機構を常に決められた所定の伸縮動作、つまり左右のアームの揺動角度を常に同一にさせることにより行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた同じ動きで安定良く伸縮させることができるのである。又、左右のリンク機構を安定良く伸縮させるために、例えば左右バランス機構等の大掛かりな装置を取り付けることが考えられるが、この場合には装置の大型化やコストアップを招くことになる。そして、本発明のように左右のアームに備えさせた2つのスライド部材を連結するだけで、常に左右のアームの伸縮動作を同じ動きに規制することができるから、スクリーンの上げ下げをスムーズに行うことができる。
【0007】
前記左右のアームが水平姿勢に姿勢変更された場合に、該アームに取り付けられた左右のスライド部材がアーム長手方向へ移動することを接当阻止するためのストッパー部材を該アームに備えさせている。
従って、スクリーンの使用姿勢から収納姿勢に切り換えることによって、左右のアーム、つまり左右の上部側アーム又は左右の下部側アーム又はそれら左右のアームの2組が水平姿勢になることで、アームに対して移動自在となった左右のスライド部材がストッパー部材に接当して、スライド部材を所定位置に維持させることができる。この結果、収納姿勢から使用姿勢にスクリーンを切り換える場合に、スライド部材を所定位置、つまりスライド部材の連結位置がスクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上にある状態に一々スライド部材を位置調節することを不要にすることができる。
【0008】
前記ストッパー部材を、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材で兼用構成してもよい。
【0009】
前記スライド部材が2つの分割ケースからなり、前記各分割ケースに、該両分割ケースを相対回転自在に連結するためのピンの両端に備えた頭部を回転自在に保持させるための保持部を備えさせることによって、組み立てられたリンク機構のアームに対して分割ケースを容易に装着させることができるだけでなく、ピンにて両分割ケースを摩擦抵抗の少ない状態で相対回転自在に連結することができる。
【0010】
前記スクリーンの展張時において前記左右のアームに取り付けた2つのスライド部材のうちの少なくとも一方のスライド部材の上端に接当して該スライド部材の上方側への移動を阻止するためのスクリーン用展張位置規制部材を該左右のアームの少なくとも一方に取り付けている。
例えば、大きさの異なるスクリーンを組み立てる場合には、スクリーンを最大展張させた時のスクリーンの上端位置を変更する必要があり、この場合には下部側アームを上方側へ付勢するためのガススプリングを容量(付勢力)の異なる別のガススプリングを用意しなければならない。又、スクリーンを最大展張させる時にスクリーンの上端位置を最大展張位置よりも低くして映像を見ることができない。このような場合に、上記のようにスクリーンの最大展張位置をスクリーン用展張位置規制部材にて変更することによって、同一部品にて大きさの異なるスクリーンを組み立てることが可能になったり、スクリーンを最大展張位置から下げた位置に保持して映像を見ることができる。前記スクリーン用展張位置規制部材をアームに対して任意の位置で固定できる固定解除自在なものから構成しておくことによって、スクリーンの最大展張位置を広い範囲で調節することができる利点がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1〜5に、スクリーン(サイズ(大きさ)は図に示すもの以外でもよい)1を収納した持ち運び可能な軽量で小型(ハンディ型)の自立式収納昇降スクリーン(以下、昇降スクリーンと称する)2を示している。尚、以下において、図1に示した昇降スクリーン2を収納するためのケーシング3の長手方向(スクリーン左右幅方向)を左右方向とし、前記ケーシング3の長手方向(スクリーン左右幅方向)と直交する方向を前後方向として説明する。前記昇降スクリーン2は、前記スクリーン1を巻き取り収納するための前記ケーシング3と、前記スクリーン1の背(後)面側に配置され、かつ、該スクリーン1の上端が連結された上端支持部材4の左右両端に上端が枢支連結された左右のリンク機構5,5(図5参照)とを備えている。図5に示す6は、前記ケーシング3の上方開口部3Kを閉じるための開閉自在なカバー部材であり、又、図1及び図5に示す7は、昇降スクリーン2を持ち運ぶ時に使用する前後一対の取っ手であり、前記ケーシング3にビス止めされた支持部材8,8に水平軸芯周りで揺動自在に取り付けられ、図5において実線で示す格納姿勢とケーシング3の上方に位置した2点鎖線で示す使用姿勢とに揺動自在に構成されているが、場合によっては無くてもよい。前記昇降スクリーン2は、図に示される構成に限定されるものではなく、形状や大きさ等は自由に変更することができる。
【0012】
図1及び図5に示すように、前記ケーシング3は、前述した上方開口部3Kが形成された断面形状がほぼコの字状で筒状のケース本体3Aと、このケース本体3Aの左右両端の開口部を閉じるための端部キャップ3B,3Bと、前記ケース本体3Aの下面のうちの左右の特定2箇所に回転自在に取り付けられた平面視においてほぼ長方形状の脚部3C,3Cとからなり、脚部3C,3Cをそれの長手方向がケーシング3の長手方向に沿った格納(非使用)姿勢(図5参照)とケーシング3の長手方向と直交する使用姿勢(図4参照)とに切り換え自在に構成しているが、脚部3C,3Cは着脱式に構成してもよいし、又、使用姿勢で固定された固定式であってもよいし、又、ケーシング3の底面で安定良く昇降スクリーン2を支持することができるのであれば、脚部3C,3Cを省略して実施することもできる。
【0013】
前記ケース本体3Aの底部には、図5に示すように、少し上部に位置させた水平板部3Dを備えており、その水平板部3Dが、前記リンク機構5,5等を固定するためのベース部材に兼用構成しているが、別のベース部材をケース本体3Aに取り付けて実施することもできる。
【0014】
前記スクリーン1は、図5に示すように、前記ケーシング3内に支持された巻き取り部材としての円筒状の巻き取りパイプ9に巻き取られており、その巻き取りパイプ9は、図示していないスプリング等の付勢手段により巻き取り付勢(一方向に回転付勢)されている。そして、前記スクリーン1の上端に取り付けた係止片10を、該スクリーン1の左右幅とほぼ同一の左右寸法を有する前記上端支持部材4に係止することにより、スクリーン1の上端を上端支持部材4に連結できるようにしているが、他の方法にて連結するようにしてもよい。前記上端支持部材4の左右方向ほぼ中央部にスクリーン1を持ち上げるための取っ手4Aをビス止めしているが、無くてもよい。
【0015】
前記リンク機構5,5について説明すれば、図2〜図4に示すように、前記上端支持部材4の左右両端部(それら周辺であれば両端部から少し中央側の部位でもよい)に左右の角筒状(円筒状等でもよい)で金属製(金属とほぼ同等の強度を有するものであれば他の材料であってもよい)の上部側アーム11,11の上端をブラケット12を介してそれぞれ枢支連結し、前記ベース部材3Dの左右両端部(それら周辺であれば両端部から少し中央側の部位でもよい)に固定された支持板14,14に、左右の角筒状(円筒状等でもよい)で金属製(金属とほぼ同等の強度を有するものであれば他の材料であってもよい)の下部側アーム13,13の下端をそれぞれ枢支連結し、前記左右の上部側アーム11,11の下端と前記左右の下部側アーム13,13の上端を同一側同士でそれぞれ枢支連結することにより伸縮自在な左右のリンク機構5,5を構成している。前記のように上端支持部材4の左右両端に近い位置に上部側アーム11,11の上端を枢支連結することによって、スクリーン1の上げ下げをより一層安定よく行うことができる利点があるが、場合によっては左右方向中央に近い位置に上部側アーム11,11の上端を枢支連結してもよい。
【0016】
詳述すれば、前記左右の上部側アーム11,11の上端を前記上端支持部材4の左右両端部(それら周辺であれば両端部から少し中央側の部位でもよい)に左右方向で重複することがないように前後に位置をずらせた状態で枢支連結し、前記左右の下部側アーム13,13の下端を前記ベース部材3Dの左右両端部(それら周辺であれば両端部から少し中央側の部位でもよい)に左右方向で重複することがないように前後に位置をずらせた状態で枢支連結し、前記左右の上部側アーム11,11の下端と前記左右の下部側アーム13,13の上端を外嵌可能な補強用の連結部材15,15を介して同一側同士で枢支連結することにより伸縮自在な前記左右のリンク機構5,5を構成している。そして、前記上部側アーム11,11と下部側アーム13,13とを枢支連結する2つの連結部材15,15のうち、左側のリンク機構5の連結部材15の枢支連結部を構成する後述のピン体15Cが常に右側に位置し、かつ、残りの右側のリンク機構5の連結部材15の枢支連結部を構成する後述のピン体15Cが常に左側に位置することによって、リンク機構5の最大伸長状態において上部側アーム11,11の下端部同士及び下部側アーム13,13の上端部同士が交差した状態を維持すると共に、2つの連結部材15,15が前後方向で重複することがないように、左右のリンク機構5,5の短縮収納状態から最大伸長状態を設定(制限)している。従って、アーム11,11、13,13に外嵌される該アームよりも大きな直径を有する連結部材15,15が交差しないことから、左右のリンク機構5,5のアーム11,11、13,13を前後方向でより接近位置させることができるだけでなく、リンク機構5,5の伸縮範囲を小さく抑えて耐久性においても有利になるようにしている。又、図7にも示すように、前記左右のリンク機構5,5の短縮状態において、伸長状態で左側に位置する上部側アーム11と伸長状態で左側に位置する下部側アーム13とを枢支連結する連結部材15が右端部に位置すると共に、伸長状態で右側に位置する上部側アーム11と伸長状態で右側に位置する下部側アーム13とを枢支連結する連結部材15が左端部に位置するアーム11,11、13,13の長さを設定することによって、リンク機構5,5がそれの伸長動作時においてスクリーン2から左右方向にはみ出すことがないだけでなく、スクリーン2の上下方向の移動ストロークを大きくとることができる利点があるが、アーム11,11、13,13の長さを短くしたり、ケーシング3が長手方向において大きくなるが、連結部材15,15をスクリーン2の左右両側にはみ出した状態で配置して実施することもできる。
前記各連結部材15は、図2、図3及び図8(a)に示すように、前記上部側アーム11の下端に外嵌固定される角形の上側嵌合部材15Aと、前記下部側アーム13の上端に外嵌固定される角形の下側嵌合部材15Bと、これら上側嵌合部材15Aと下側嵌合部材15Bとを回転自在に連結する枢支連結部を構成するピン体15Cとからなっているが、他の構成であってもよい。
【0017】
図2及び図3に示すように、前記下部側アーム13,13を上方へ移動付勢するための付勢手段としてのガススプリング(他の構成のものであってもよい)16,16を、下部側アーム13,13の長手方向ほぼ中央箇所とベース部材3Dの前記支持板14,14よりも左右方向中央側に寄った位置に固定されたブラケット17,17の間に取り付けて、スクリーン1の下降がゆっくり行われるようにすることができると共に、任意の高さ位置でスクリーン1を位置保持させることができる。尚、実際には、前記ガススプリング16,16の付勢力、前記連結部材15,15の枢支連結部における摩擦抵抗、下部側アーム13,13に加わるスクリーン1等の重量、スクリーン1の巻き取り付勢力等が全てバランスすることによって、スクリーン1を任意の高さ位置で保持させることができる。
【0018】
図2〜図4及び図8(a),(b),(c)〜図10に示すように、前記左右の下部側アーム13,13それぞれに、2つの分割ケース18,19からなるスライド部材20を取り付け、それら左右のスライド部材20,20を前後方向で、かつ、左右方向ほぼ中央部に位置する上下の垂線Sで相対回転自在に連結してあり、左右のリンク機構5,5をスムーズかつ安定良く伸縮作動させることができるようにしている。ここでは、下部側アーム13,13にスライド部材20,20を取り付けているが、上部側アーム11,11にスライド部材20,20を取り付けてもよいし、下部側アーム13,13及び上部側アーム11,11の両方にスライド部材20,20、20,20を取り付けて実施することもできる。
【0019】
図9及び図10(a),(b)に示すように、前記一方の分割ケース18は、前記下部側アーム13の外周のほぼ半分を覆うコの字状のケース本体18Aと、このケース本体18Aの下端部から下方に延出された連結板部18Bとからなり、又残りの分割ケース19は、前記下部側アーム13の残りの外周のほぼ半分を覆うコの字状のケース本体19Aと、このケース本体19Aの下端部から下方に延出された連結板部19Bとからなり、2つのケース本体18A,19Aの上端合わせ面にそれぞれ形成された凹部18Cと凸部19Cを係止させることにより両者を係止固定すると共に、一方の分割ケース18の連結板部18Bに備えさせた左右一対の貫通孔18D,18Dを介して貫通させたビス21,21を他方の分割ケース19の連結板部19Bに備えさせた螺子部19D,19Dにねじ込むことにより、両分割ケース18,19を一体化することができるようにしているが、係止機構や接着剤等により一体化することもできる。又、前記一方の分割ケース18の連結板部18Bの左右方向ほぼ中央部に、両分割ケース18,19を相対回転自在に枢支連結するためのピン22の円形の頭部22Aを収納可能な円形の凹部18Eを備えさせ、前記他方の分割ケース19の連結板部19Bが前記収納されたピン22の頭部22Aの軸方向への移動を接当阻止すると共にピン22の軸部22Bを挿通可能でかつ回転自在に支持するためのアーチ型の壁部19Eを備えさせている。ここでは、ピン22を用いることによって、分割ケース18,19の相対回転を摩擦の少ない状態で行うことができるが、ピン22以外のものであってもよい。従って、図10(a),(b)に示すように、ピン22を介して回転自在に枢支連結された分割ケース18,19を下部側アーム13,13にスライド自在に外嵌固定することによって、スクリーン1を使用姿勢から収納姿勢に切り換える際に、下部側アーム13,13が任意の高さ位置で常に左右対称となる状態でスライド部材20,20にて連結されている状態であるから、左右のリンク機構5,5を常にスムーズかつ安定良く作動させることができる。そして、図4、図7及び図8(c)に示すように、下部側アーム13,13が収納姿勢となる水平姿勢の状態になると、前記スライド部材20,20が水平方向に移動可能なフリー状態になるが、該スライド部材20,20がガススプリング16,16の上端のほぼコの字状のストッパー部材としての取付部材23,23に接当することによりスライド部材20,20の移動が阻止され、その位置(垂線S上)にスライド部材20,20を維持することができるようにしている。このように取付部材23,23にてスライド部材20,20の位置を規制することによって、収納姿勢から使用姿勢にスクリーン1を切り換える場合に、スライド部材20,20を所定位置(垂線S上)に移動させることなく、直ちに姿勢変更することができる利点があるが、取付部材23,23を省略して実施することもできる。又、取付部材23,23にてスライド部材20,20のストッパー部材(位置規制部材)を兼用構成することにより部材点数の削減化を図ることができる利点があるが、他の部材で構成してもよい。
【0020】
前記昇降スクリーン2を立ち上げて展張させる場合には、まず昇降スクリーン2を所定位置に移動させてから、前記脚部3C,3Cを図1〜図4に示すようにケーシング3の長手方向と直交する使用姿勢に切り換える。この状態から、図5で示したカバー部材6を矢印の方向に移動させることにより、上方開口部3Kを開ける。次に、取っ手4Aを所定高さまで持ち上げることにより、図1〜図3に示すように展張させることができる。前記昇降スクリーン2の立ち上げに伴って、リンク機構5,5が伸長作動する場合に、図6及び図8(b)に示すように、スライド部材20,20が左右の下部側アーム13,13の揺動に追従して互いに反対方向に回転しながら下部側アーム13,13上をスライド(移動)することで結果として垂線Sを上方へ移動して、下部側アーム13,13がスライド部材20,20にて同一角度に揺動されることにより、安定良く昇降スクリーン2の立ち上げを行うことができる。尚、図6及び図8(b)では、昇降スクリーン2がほぼ半分立ち上がった状態を示している。
前記展張させた昇降スクリーン2を収納状態にする場合には、前記取っ手4Aを持って押し下げることによって、リンク機構5,5を短縮作動させて、ケーシング3内にスクリーン1を巻き取り収納させるのである。前記昇降スクリーン2の押し下げに伴って、リンク機構5,5が短縮作動する場合に、図6及び図8(b)に示すように、スライド部材20,20が下部側アーム13,13の揺動に追従して互いに反対方向に回転しながら下部側アーム13,13上をスライド(移動)することで結果として垂線Sを上方へ移動して、下部側アーム13,13がスライド部材20,20にて同一角度に揺動されることにより、安定良く昇降スクリーン2の押し下げを行うことができる。尚、図6及び図8(b)では、昇降スクリーン2がほぼ半分押し下がった状態を示している。前記リンク機構5,5の短縮作動が完了したときに、図7及び図8(c)に示すように、スライド部材20,20が取付部材23,23に接当してその位置(垂線S上の位置)が維持されることになる。前記リンク機構5,5の短縮作動が完了すると、カバー部材6を閉じることになる。そして、昇降スクリーン2を他の場所へ移動させる場合には、脚部3C,3Cをケーシング3の長手方向に切り換えることによって、移動時において脚部3C,3Cが他物と接当することを回避することができる。
【0021】
図11〜図13に示すように、前記スクリーン1の展張時において前記左右の下部側アーム13,13に取り付けた2つのスライド部材20,20のうちの一方のスライド部材(図11のスクリーン1の裏面側から見て手前側に位置するスライド部材)20の上端に接当してスライド部材20の上方側への移動を阻止するためのスクリーン用展張位置規制部材24を図11において右側の下部側アーム13に取り付けて、実施することもできる。
前記スクリーン用展張位置規制部材24は、合成樹脂又は金属あるいは木などで形成することができ、図13に示すように、断面形状が矩形状の下部側アーム13の4つの側面13A,13B,13C,13Dのうちの図11において正面に位置する第1側面13Aに接当し、かつ、ほぼ中心部にねじ25のねじ部25Bが挿通可能な貫通孔24Kが形成されると共にその貫通孔24Kのねじ挿入側端にねじ25の頭部25Aを完全に入り込ませるための凹部24S(無くてもよい)が形成された板状の本体部24Aと、この本体部24Aの両端それぞれから直交する方向で同一方向に延びると共に前記第1側面13Aの両側に隣り合う第2側面13B及び第3側面13Cに接当する(接当しない場合でもよい)一対の板状の延出部24C,24Bとからなるほぼコの字状に形成されているが、強度的に小さく(弱く)なるが、延出部24C,24Bを省略して本体部24Aのみで構成された平面で板状のものから構成することもできる。このように平板状又はコの字状に形成することによって、スクリーンを組み立てた後でもスクリーン用展張位置規制部材24を装着することができる利点があるが、円筒状又は角筒状に形成してもよく、スクリーン用展張位置規制部材24の形状はどのようなものであってもよい。そして、前記スクリーン用展張位置規制部材24をそれの貫通孔24Kが下部側アーム13に所定間隔置きに形成された複数(図12(b)では4個)のねじ孔13Kのうちの特定(図12(b)では下から2番目)のねじ孔13Kに一致させた状態で下部側アーム13に当て付けてから、ねじ25を用いてスクリーン用展張位置規制部材24を下部側アーム13に固定するのである。ここでは、下部側アーム13に形成された4個のねじ孔13Kのうちの任意のねじ孔13Kを利用してスクリーン用展張位置規制部材24を固定することにより、スクリーン1の最大上端位置を4つの位置に変更することができると共に、スクリーン用展張位置規制部材24を外すことで前記4つの位置のうちの最も高い位置よりも更に高くなる位置の5つの位置に変更することができるように構成しているが、ねじ孔13Kを1つ形成してスクリーン用展張位置規制部材24を取り付けるか取り外すことによりスクリーンの最大上端位置を2つの位置に変更するようにしてもよく、ねじ孔13Kの個数はどのような個数に設定してもよい。又、ねじ孔13Kを下部側アーム13の長手方向に沿って長い長孔に形成して長孔内であればどの位置においてもスクリーン用展張位置規制部材24を固定することができるように構成して実施することもできる。また、ねじ25を用いてスクリーン用展張位置規制部材24を下部側アーム13に固定するようにしているが、例えば下部側アーム13に単又は複数の係止孔を形成し、前記係止孔に入り込む係止部をスクリーン用展張位置規制部材24に備えさせて、スクリーン用展張位置規制部材24を下部側アーム13に対して係脱自在に構成してもよいし、他の別の手段によりスクリーン用展張位置規制部材24を下部側アーム13に対して着脱自在に構成してもよい。又、場合によっては、スクリーン用展張位置規制部材24を溶接や接着剤などにより取り外し不能に下部側アーム13に取り付けて実施してもよい。
従って、前述したように取っ手4Aを持ち上げていくと、リンク機構5,5が伸長作動して図12(b)の状態から更に伸長作動して、図12(a)に示すように、スクリーン用展張位置規制部材24の下端にスライド部材20の上端が接当してリンク機構5,5の伸長作動が阻止され、スクリーン1の上端位置をその位置で規制することができるようになっている。
【0022】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、スクリーンを引き上げて(立ち上げて)使用姿勢にしたり、スクリーンを押し下げて収納姿勢にする場合には、左右に配置されたリンク機構が伸縮することによりスクリーンをスムーズかつ安定良く支持することができる。又、例えば、展張状態(使用状態)のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を押し下げる、又は収納状態のスクリーンの上端支持部材のスクリーン左右幅方向右端側(又は左端側)を引き上げることを、スライド部材にて阻止することができるから、従来のように一方のリンク機構のみが大きく伸縮作動されて変形や損傷等のトラブル発生を招くことがなく長期間に渡って良好に使用することができる自立式手動昇降スクリーンを提供することができる。又、連結されたスライド部材にて左右のアームを同一揺動角度にて揺動させることができるから、左右のリンク機構を常に決められた所定の動作にて行わせることができ、左右のリンク機構を一体的に連動させた状態でスムーズかつ安定良く伸縮させることができる。しかも、左右のリンク機構を安定良く伸縮させるために、例えば左右バランス機構等の大掛かりな装置を取り付ける場合に比べて本発明では構成の簡素化を図ることができるから、装置の大型化やコストアップを抑制することができる利点がある。
【0023】
請求項2の発明によれば、スクリーンの使用姿勢から収納姿勢に切り換えることによって、フリー状態となるスライド部材をストッパー部材にて所定位置に維持させることができるから、収納姿勢から使用姿勢にスクリーンを切り換える場合に、スライド部材を所定位置、つまりスライド部材の連結位置がスクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上にある状態に一々スライド部材を位置調節することを不要にすることができ、使用面において有利になる。
【0024】
請求項3の発明によれば、ストッパー部材を、付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材で兼用構成することによって、部材点数の削減化を図ることができ、コスト面及び組付面において有利になる。
【0025】
請求項4の発明によれば、スライド部材が2つの分割ケースからなり、各分割ケースに、両分割ケースを相対回転自在に連結するためのピンの両端に備えた頭部を回転自在に保持させるための保持部を備えさせることによって、組み立てられたリンク機構のアームに対して後から分割ケースを容易に装着させることができるだけでなく、ピンにて両分割ケースを摩擦抵抗の少ない状態で相対回転自在に連結することができ、組付面において有利になるだけでなく、スクリーンを上げ下げするための操作力の軽減を図ることができる利点がある。
【0026】
請求項5の発明によれば、スクリーンの展張時において左右のアームに取り付けた2つのスライド部材のうちの少なくとも一方のスライド部材の上端に接当してスライド部材の上方側への移動を阻止するためのスクリーンの展張位置規制部材を左右のアームの少なくとも一方に取り付けることによって、スクリーンの最大展張位置を変更することができるから、同一部品にて大きさの異なるスクリーンを組み立てることができ、部品点数を増大させることのない状態で異なる大きさのスクリーンを製造することができる製造面及び部品管理面において有利になるだけでなく、スクリーンを低くした状態で見るなどの使用形態を変更することができる商品価値の高いものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】使用姿勢の昇降スクリーンの正面図である。
【図2】使用姿勢の昇降スクリーンの一部断面にした背面図である。
【図3】使用姿勢のスクリーンの一部切欠き側面図である。
【図4】収納姿勢の昇降スクリーンの一部省略した平面図である。
【図5】収納姿勢の昇降スクリーンの縦断側面図である。
【図6】使用姿勢と収納姿勢の中間の姿勢を示す昇降スクリーンの一部省略した背面図である。
【図7】収納姿勢の昇降スクリーンの縦断背面図である。
【図8】(a)は最大伸長状態(使用姿勢)の昇降スクリーンに取り付けた連結部材の取付部を示す要部の拡大図であり、(b)は使用姿勢と収納姿勢の中間の姿勢を示す昇降スクリーンのスライド部材の取付部を示す要部の拡大図であり、(c)は収納姿勢の昇降スクリーンのスライド部材の取付部を示す要部の拡大図である。
【図9】スライド部材の分解斜視図である。
【図10】左右の下部側アームにスライド部材を移動自在に外嵌させた状態を示す断面図を示し、(a)はピンの部分で切った断面図であり、(b)はビスの部分で切った断面図である。
【図11】図2で示した最大上端位置よりも少し下がった使用姿勢の昇降スクリーンの一部断面にした背面図である。
【図12】(a)はリンク機構の伸長作動によりスクリーン用展張位置規制部材の下端にスライド部材の上端が接当してスクリーンの最大上端位置が規制されている状態を示す要部の説明図であり、(b)はリンク機構の伸長作動によりスクリーン用展張位置規制部材の下端にスライド部材の上端が接当する直前の状態を示す要部の説明図である。
【図13】下部側アームにスクリーン用展張位置規制部材を取り付ける直前の状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 スクリーン 2 昇降スクリーン
3 ケーシング 3A ケース本体
3B 端部キャップ 3C 脚部
3D 水平板部(ベース部材)
3K 上方開口部 4 上端支持部材
4A 取っ手 5 リンク機構
6 カバー部材 7 取っ手
8 支持部材 9 巻き取りパイプ
10 係止片 11 上部側アーム
12 ブラケット 13 下部側アーム
13A,13B,13C,13D 側面
13K ねじ孔
14 支持板 15 連結部材
15C ピン体(枢支連結部)
15B 下側嵌合部材
15A 上側嵌合部材 13S 枢支部
16 ガススプリング(付勢手段)
17 ブラケット 18,19 分割ケース
18A,19A ケース本体
18B,19B 連結板部
18C 凹部 19C 凸部
18D 貫通孔 19D 螺子部
20 スライド部材 21 ビス
22 ピン 22A 頭部
22B 軸部
23 取付部材(ストッパー部材)
24 スクリーン用展張位置規制部材
24A 本体部 24K 貫通孔
24S 凹部 25 ねじ
25A 頭部 25B ねじ部
S 垂線
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材に、スクリーンを巻き取るために一端が連結された巻き取り部材を巻き取り付勢した状態で取り付け、
前記スクリーンの他端が連結された上端支持部材と前記ベース部材とを、上部側アームと下部側アームとが枢支連結されてなるリンク機構にてスクリーン左右幅方向ほぼ中央を挟んで左右両側に振り分けた状態でそれぞれ枢支連結し、
前記スクリーン左右幅方向左側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して右側に配置し、かつ、前記スクリーン左右幅方向右側に配置された上部側アームと同一側に配置された下部側アームの枢支連結部を前記上端支持部材の左右中心部に対して左側に配置し、
前記下部側アームを上方へ移動付勢するための付勢手段を該下部側アームと前記ベース部材との間に設け、
前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームのうちの少なくとも一方に、断面形状が矩形状で軸方向に長い筒状部からなり、断面形状が矩形状のアーム外周面上にスライド自在に外嵌される、スライド自在なスライド部材を取り付け、
それら左右のスライド部材を前記スクリーンの前記スクリーン左右幅方向ほぼ中央に位置する上下の垂線上で相対回転自在に連結したことを特徴とする自立式手動昇降スクリーン。
【請求項2】
前記左右のアームが水平姿勢に姿勢変更された場合に、該アームに取り付けられた左右のスライド部材がアーム長手方向へ移動することを接当阻止するためのストッパー部材を該アームに備えさせてなる請求項1記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項3】
前記左右の上部側アーム及び前記左右の下部側アームの双方に、それぞれ前記スライド部材を取り付けてなり、
前記下部側アームに備えさせる前記ストッパー部材が、前記付勢手段の一端をアームに取り付けるための取付部材でなる請求項2記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項4】
前記スライド部材が2つの分割ケースからなり、前記各分割ケースに、該両分割ケースを相対回転自在に連結するためのピンの両端に備えた頭部を回転自在に保持させるための保持部を備えさせてなる請求項1記載の自立式手動昇降スクリーン。
【請求項5】
前記スクリーンの展張時において前記左右のアームに取り付けた2つのスライド部材のうちの少なくとも一方のスライド部材の上端に接当して該スライド部材の上方側への移動を阻止するためのスクリーン用展張位置規制部材を該左右のアームの少なくとも一方に取り付けてなる請求項1〜4のいずれかに記載の自立式手動昇降スクリーン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-08-26 
結審通知日 2021-08-31 
審決日 2021-09-16 
出願番号 P2003-062676
審決分類 P 1 123・ 121- YAA (G03B)
P 1 123・ 853- YAA (G03B)
P 1 123・ 536- YAA (G03B)
P 1 123・ 856- YAA (G03B)
P 1 123・ 832- YAA (G03B)
P 1 123・ 854- YAA (G03B)
P 1 123・ 841- YAA (G03B)
P 1 123・ 537- YAA (G03B)
P 1 123・ 855- YAA (G03B)
P 1 123・ 851- YAA (G03B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 岸 智史
中塚 直樹
登録日 2008-06-20 
登録番号 4141864
発明の名称 自立式手動昇降スクリーン  
代理人 千葉 あすか  
代理人 溝内 伸治郎  
代理人 柳野 嘉秀  
代理人 速見 禎祥  
代理人 岩坪 哲  
代理人 中原 明子  
代理人 森岡 則夫  
代理人 森岡 則夫  
代理人 波床 有希子  
代理人 溝内 伸治郎  
代理人 柳野 隆生  
代理人 江森 史麻子  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 柳野 嘉秀  
代理人 速見 禎祥  
代理人 岩坪 哲  
代理人 柳野 隆生  

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