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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G10L
管理番号 1395603
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-29 
確定日 2023-03-13 
事件の表示 特願2018−226651「トランスコーディング装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月16日出願公開、特開2019− 74743〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2007年(平成19年)12月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年12月27日(KR)韓国、2007年1月12日(KR)韓国、2007年1月25日(KR)韓国)を国際出願日とする特願2009−543949号の一部を平成24年11月22日に新たな特許出願とした特願2012−256586号の一部をさらに平成25年1月24日に新たな特許出願とした特願2013−11340号の一部をさらに平成28年6月28日に新たな特許出願とした特願2016−127783号の一部をさらに平成30年12月3日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 7月22日付け:拒絶理由通知書
令和元年10月28日 :意見書の提出
令和元年10月28日 :手続補正書の提出
令和2年 3月25日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和2年 6月30日 :意見書の提出
令和2年 6月30日 :手続補正書の提出
令和2年11月18日付け:拒絶査定
令和3年 3月29日 :審判請求書の提出
令和3年 3月29日 :手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)
令和4年 6月13日付け:拒絶理由通知書(当審)

第2 本願の請求項1の記載
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1の記載(以下「本願請求項1記載」という。)は、以下のとおりである。(記号A−Dは分説するために当審にて付した。以下「構成A」−「構成D」という。)

「 【請求項1】
A オーディオ信号符号化装置がオーディオオブジェクト信号をダウンミックスして生成するダウンミックス信号と、前記オーディオオブジェクト信号から空間キューを抽出して生成するレンダリングビットストリームのうち、前記レンダリングビットストリームを変換することにより、オーディオ信号復号化装置が前記変換されたレンダリングビットストリームに基づいて前記ダウンミックス信号から前記オーディオオブジェクト信号を復号化できるようにするトランスコーティング装置であって、
B 前記オーディオオブジェクト信号を符号化する符号化装置以外の外部からトランスコーディング装置に入力される第1制御信号に基づいて前記オーディオオブジェクト信号に対するパワー利得情報と出力位置情報とを含むレンダリング情報を生成して、
C 前記プリセットオーディオシーン情報は、前記オーディオオブジェクト信号に関するレンダリング情報であって、前記レンダリングビットストリームに含まれ、
D 前記空間キューは、前記オーディオオブジェクト信号に関するものであって、前記レンダリングビットストリームに含まれ、
C1 前記プリセットオーディオシーン情報は、前記オーディオオブジェクト信号にする音響情報及び再生情報を含み、前記オーディオ信号符号化装置の外部から入力される第2制御情報に基づいて生成され、
B1 前記レンダリングステップは、前記オーディオ信号符号化装置により符号化されたオーディオオブジェクト信号のうちの所定オーディオオブジェクト信号に対する空間キュー情報を除いた、前記復号化装置から出力されるオーディオオブジェクト信号に対する空間キュー情報を生成し、
A1 前記トランスコーディング装置は、前記符号化されたオーディオオブジェクト信号のうちから前記所定オーディオオブジェクト信号を除去する、
A トランスコーディング装置 。」

第3 当審における拒絶の理由の概要
令和4年6月13日付けで当審が通知した本願の請求項1に対する拒絶理由(明確性)の概要は、以下のとおりのものである。

明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1の「前記プリセットオーディオシーン情報」という記載より前に「プリセットオーディオシーン情報」という記載がないため、「前記プリセットオーディオシーン情報」が指示する対象が不明である。

(2)請求項1の「前記レンダリングステップ」という記載より前に「レンダリングステップ」という記載がないため、「前記レンダリングステップ」が指示する対象が不明である。

なお、本件の分割の基礎出願である特願2016−127783号の特許である、特許6446407号(以下、「原出願特許」という。)の請求項1では、以下のような構成が記載されている。
「前記レンダリング情報と、プリセットオーディオシーン情報とに基づいて、空間キューを変換するレンダリングステップと、」
原出願特許の請求項1における上記記載があれば、上記(1)及び(2)の拒絶理由は解消するため、仮に上記記載と同様の記載を本件の請求項1に追加する補正を行う場合、本件の請求項1に係る発明と原出願特許の請求項1に係る発明とは、カテゴリーが異なるだけで構成が実質的に同一となることから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができなくなる点について留意されたい。

第4 判断
1 構成Cについて
本願請求項1記載の構成Cは、「前記プリセットオーディオシーン情報」が、構成Aの「前記オーディオオブジェクト信号」に関する「レンダリング情報」であって、構成Aの「前記レンダリングビットストリーム」に含まれることを特定する構成である。
しかしながら、「プリセットオーディオシーン情報」については、構成Cより前の構成A及び構成Bに記載がなく、また、記載がなくとも明らかに存在する構成ともいえないため、構成Cにおける「前記プリセットオーディオシーン情報」の前記が指示する対象が明確ではない。
よって、本願請求項1記載は明確でない。

2 構成B1について
本願請求項1記載の構成B1は、「前記レンダリングステップ」が、構成Aの「前記オーディオ信号符号化装置」により「符号化されたオーディオオブジェクト信号のうちの所定オーディオオブジェクト信号に対する空間キュー情報を除いた」、構成Aの「前記復号化装置」から「出力されるオーディオオブジェクト信号に対する空間キュー情報を生成」することを特定する構成である。
しかしながら、「レンダリングステップ」については、構成B1より前の構成A〜D及び構成C1に記載がなく、また、記載がなくとも明らかに存在する構成ともいえないため、構成B1における「前記レンダリングステップ」の前記が指示する対象が明確でない。
よって、本願請求項1記載は明確でない。

3 審判請求人の主張について
上記「第1 手続の経緯」に記載したように、当審は、令和4年6月13日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する記載を与えたが、審判請求人からは何らの応答もなかった。
そのため、審判請求人が令和3年3月29日に提出した本件審判の審判請求書における主張について検討すると、当該審判請求書の「(3)(c)理由(明確性)について」において、「この補正により、「…しながら、」という記載を削除し、また「トランスコーディング装置」が「前記符号化されたオーディオオブジェクト信号のうちから前記所定オーディオオブジェクト信号を除去する」ことを行うことが明確になった。これにより、当該拒絶理由は解消したものと思料する。」と主張しているが、上記1及び2で判断した点について何ら主張しておらず、上記主張を考慮したとしても上記1及び2の判断は何ら左右されない。
したがって、審判請求人の審判請求書による上記主張を採用することはできない。

なお、補足として、本件の分割の基礎出願である特願2016−127783号の特許である、特許6446407号(以下、「原出願特許」という。)の請求項1に係る発明と本願の請求項1に係る発明との関係について以下で検討する。
原出願特許の請求項1は、以下のとおりである。(記号a−eは分説するために当審にて付した。以下「構成a」−「構成e」という。)

「 【請求項1】
a オーディオ信号符号化装置がオーディオオブジェクト信号をダウンミックスして生成するダウンミックス信号と、前記オーディオオブジェクト信号から空間キューを抽出して生成するレンダリングビットストリームのうち、前記レンダリングビットストリームを変換することにより、オーディオ信号復号化装置が前記変換されたレンダリングビットストリームに基づいて前記ダウンミックス信号から前記オーディオオブジェクト信号を復号化できるようにするトランスコーディング方法であって、
b 前記オーディオオブジェクト信号を符号化する符号化装置以外の外部からトランスコーディング装置に入力される第1制御信号に基づいて前記オーディオオブジェクト信号に対するパワー利得情報と出力位置情報とを含むレンダリング情報を生成するレンダリング情報生成ステップと、
e 前記レンダリング情報と、プリセットオーディオシーン情報とに基づいて、空間キューを変換するレンダリングステップと、
を備え、
c 前記プリセットオーディオシーン情報は、前記オーディオオブジェクト信号に関するレンダリング情報であって、前記レンダリングビットストリームに含まれ、
d 前記空間キューは、前記オーディオオブジェクト信号に関するものであって、前記レンダリングビットストリームに含まれ、
c1 前記プリセットオーディオシーン情報は、前記オーディオオブジェクト信号に対する音響情報及び再生情報を含み、前記オーディオ信号符号化装置の外部から入力される第2制御情報に基づいて生成され、
b1 前記レンダリングステップは、前記オーディオ信号符号化装置により符号化されたオーディオオブジェクト信号のうちの所定オーディオオブジェクト信号に対する空間キュー情報を除いた、前記復号化装置から出力されるオーディオオブジェクト信号に対する空間キュー情報を生成し、
a1 前記トランスコーディング装置は、前記符号化されたオーディオオブジェクト信号のうちから前記所定オーディオオブジェクト信号を除去する、
a トランスコーディング方法。」

上記、原出願特許の請求項1の記載と本願請求項1記載とを対比すると、両者は、以下の3点で相違し、その余の点で一致している。

<相違点1>
原出願特許の構成bにおいて「レンダリング情報を生成するレンダリング情報生成ステップと、」との構成があるのに対し、本願請求項1記載の構成Bでは「レンダリング情報を生成して、」との構成としている点。

<相違点2>
原出願特許では、構成eとして「前記レンダリング情報と、プリセットオーディオシーン情報とに基づいて、空間キューを変換するレンダリングステップと、」との構成があるのに対し、本願請求項1記載では、そのような構成がない点。

<相違点3>
原出願特許では、構成aのように「トランスコーディング方法」であって、構成bの「レンダリング情報生成ステップ」と構成eの「レンダリングステップ」とを「備え」ているのに対し、本願請求項1記載では、構成Aのように「トランスコーディング装置」であるが、その構成として「備え」たものを特定していない点。

ここで、上記1における構成Cについての「前記プリセットオーディオシーン情報」の前記が指示する対象が明確ではない点及び上記2における構成B1についての「前記レンダリングステップ」の前記が指示する対象が明確でない点は、それぞれ原出願特許の構成eを本願請求項1記載の構成Bと構成Cとの間に追記すること及び原出願特許の構成bのように本願請求項1記載の構成Bの末尾を「レンダリング情報を生成するレンダリング情報生成ステップと、」とすることによって明確となるが、そのようにした場合、原出願特許の請求項1の記載と本願請求項1記載との相違点は、上記相違点3のみとなる。
そして、上記相違点3は、単なるカテゴリー表現上の差異(例えば、表現形式上、「物」の発明であるか、「方法」の発明であるかの差異)であるから、原出願特許の請求項1に係る発明と本願の請求項1に係る発明とは、実質同一となる。
してみると、上記のようにして明確とした場合、本願の請求項1に係る発明は、同日出願された原出願特許の請求項1に係る発明と同一と認められ、かつ、原出願特許の請求項1に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものとなる。

第5 まとめ
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 千葉 輝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-10-17 
結審通知日 2022-10-18 
審決日 2022-10-31 
出願番号 P2018-226651
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G10L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 田中 啓介
畑中 高行
発明の名称 トランスコーディング装置  
代理人 吉元 弘  
代理人 中村 行孝  
代理人 関根 毅  
代理人 宮嶋 学  

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