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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01B
管理番号 1395901
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-09 
確定日 2023-03-09 
事件の表示 特願2018− 15591「絶縁材組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 8月 8日出願公開、特開2019−133851〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年1月31日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 9月21日付け 拒絶理由通知書
令和3年11月18日 意見書、手続補正書の提出
令和3年11月25日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和4年 2月 9日 審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 9月28日付け 拒絶理由通知書
令和4年11月25日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1〜7、11〜14に係る発明は、下記引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。
1.特表2007−525803号公報
2.特開2012−064928号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1〜15に係る発明は、令和4年11月25日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。(下線は、手続補正書の記載のとおり。)
「 【請求項1】
シルセスキオキサン化合物と、窒化物充填材もしくは酸化物充填材とを含み、
前記シルセスキオキサン化合物が、
(i)以下の一般式(I):
【化1】


(式(I)中、
R11は、炭素数1から6のアルキル基、または炭素数6から10の置換もしくは非置換のフェニル基であり、R11は同一であっても異なってもよく、
R12は、CH=CH-(CH2)k-で表されるビニル基を備える化合物であって、kは、0から6から選択される整数であり、R12は同一であっても異なってもよく、
p及びqは、独立して、0、1または2であり、
a、b、c、dは繰り返し単位のモル比率であり、a:b:cが、1:2〜6:0.5〜3である);
(ii)
【化2】


;または
(iii)
【化3】


から選択される1以上を含む、絶縁材組成物。」

第4 当審の判断
1 引用文献1及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
引用文献1には次の記載がある。(下線は、当審において付した。)
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路材料、回路、および多層回路の形成に有益な誘電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用されるように、回路材料は、回路および多層回路を製造する際に使用される物品であり、回路積層板、ボンドプライ(bond ply)、樹脂コート導電層およびカバーフィルムが挙げられる。回路材料は、熱硬化性または熱可塑性ポリマーとすることができる誘電材料から形成される。ポリマーをしばしば、シリカなどのフィラー類と組み合わせ、ポリマーの誘電性または他の特性を調整する。ボンドプライ、樹脂被覆導電層、またはカバーフィルムにおける誘電材料は実質的に流動性を有さず、すなわち、製造中は軟化し、または流動化するが、回路の使用中にはそのようにはならず、一方、回路積層板(すなわち、誘電体基板)における誘電材料は、製造または回路もしくは多層回路の使用中に軟化および流動化しないように設計される。誘電体基板材料は剛性誘電材料とすることができ、繊維状ウエブおよび/または他の形態の強化材、例えば短繊維もしくは長繊維類またはフィラー類を含んでもよい。
【0003】
回路積層板は、誘電体基板層に固定して結合された導電層を有する回路材料の型である。ダブルクラッド積層板は、誘電体基板の各側に1つずつ、2つの導電層を有する。積層板の導電層を、例えばエッチングによりパターニングすると、回路層が得られ、その結果回路が得られる。多層回路は複数の導電層を備え、その少なくとも1つは導電配線パターンを含む。典型的には、多層回路は、ボンドプライ、場合によっては、樹脂コート導電層を用い、適当に整合させ、熱および/または圧力を使用して、1または複数の回路を共に積層することにより形成させる。ボンドプライを使用して、回路間および/または回路と導電層との間、または2つの導電層間の接着を提供する。ボンドプライにより回路に結合された導電層の代わりに、多層回路は、回路の外側層に直接結合された樹脂コート導電層を含んでもよい。そのような多層構造では、積層後、公知の孔形成技術およびメッキ技術を使用して、導電層間に有益な電気経路を作製してもよい。
【0004】 (省略)

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在では、様々なポリマー誘電材料を使用して回路材料が形成されており、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂類、エポキシ樹脂類、ならびにイソプレンおよびブタジエン−系樹脂類が含まれる。現在のポリマー誘電材料はしばしばそれ自体、難燃性ではなく、このため、臭素含有添加剤をさせ、UL94 V−0規格を達成してもよい。新規法律のために、例えば、ヨーロッパおよび日本では、回路材料から臭素含有化合物を取り除くことに大きな関心が寄せられている。残念なことに、臭素含有化合物を他の難燃性添加剤と置き換えるには、しばしば、多量の添加剤を添加する必要があり、これはポリマー材料を用いて作製した積層板の電気特性に悪影響をもたらす場合がある。このように、適した電気特性および熱特性を有する回路材料、回路、および多層回路において使用するための難燃性ポリマー材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記欠点および短所は、共有結合多面体シルセスキノキサン(covalently bound polyhedral silsesquinoxane)を含むポリマーを有する回路材料により軽減される。
【0007】
別の実施形態では、回路材料は誘電層上に配置された導電層を備え、ここで、誘電層は共有結合多面体シルセスキノキサンを含むポリマーを有する。追加の導電層もまた、誘電層の反対側に配置し、ダブルクラッド回路材料を形成してもよい。さらに回路層を追加し、多層回路を作製してもよい。別の実施形態では、誘電層はさらに繊維状マットを含む。
【発明の効果】
【0008】
共有結合された多面体シルセスキノキサンを含むポリマーは本質的に難燃性であり、これを使用すると、優れた電気特性および物理特性を有する難燃性回路材料を形成することができる。本発明の上記ならびに他の特徴および利点は、当業者であれば、下記の詳細な説明および図面により認識され、理解されると思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、例示的な図面について説明する。複数の図面において、同様の要素には同様の符号を付する。
【0010】
回路材料は、本明細書で記述されるように、共有結合された多面体シルセスキノキサン(POSS)を含むポリマーを有する誘電材料から形成される。そのようなポリマー類により良好な電気特性および熱特性を有する難燃性回路材料の作製が可能となる。共有結合POSSという用語は、POSSがペンダント基として、またはポリマー内の繰り返しユニットとしてポリマーに共有結合されていることを意味する。組成物はさらに、分散(dispersed)POSSを含んでもよく、ここで、分散POSSは共有結合POSSと同じ、または異なっている。シリカおよび/またはガラス布と組み合わせると、ハロゲン化難燃剤を添加せずに、適した電気特性およびUL−94 V−0規格を有する剛性回路材料を作製することができる。POSS樹脂類は本質的に熱硬化性であり、低温で硬化するため、共有結合POSS基を含むポリマーを他の積層板、例えば液晶ポリマー類を基本とするもののためのボンドプライ層として使用してもよい。
【0011】
POSS基の共有結合に適したポリマー類としては、例えば、シリコーン樹脂類、

・・・(中略)・・・

およびポリジフェニルシロキサン類が挙げられる。
【0012】
多面体シルセスキノキサン類は一般式(RSiO1.5)nを有し、ここで、Rは有機部分であり、nは6、8、10、12またはそれ以上である。これらの分子は剛性の、熱的に安定な、酸素対珪素比が1.5である珪素−酸素フレームワーク、および例えば、炭化水素類(例えば、ビニル、フェニル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、イソブチル、または他の炭化水素類)を含む有機外側層を提供する共有結合された有機基、ならびにエステル、エポキシ、アクリレート、または他の官能基などの官能基を有する。特定のPOSSはビニルPOSSである。POSSは400平方メートル/グラム(m2/gm)を超える表面積を有してもよい。Si8POSS構造を下記に示す。

・・・(中略)・・・

【0030】
必要に応じて用いる分散POSSの他に、またはその代わりに、誘電材料は1または複数の他の誘電性粒状フィラー類を含んでもよい。有益な粒状フィラー類としては、二酸化チタン(ルチルおよびアナターゼ)、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、溶融アモルファスシリカおよびフュームドシリカを含むシリカ(粒子および中空球)、他の中空セラミック球、コランダム、ウォラストナイト、アラミド繊維(例えば、デュポン(DuPont)からのケブラール(KEVLAR))、ガラス繊維、Ba2Ti9O20、ガラス球、石英、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナおよびマグネシアが挙げられるが、それらに限定されない。粒状フィラー類は単独で、または組み合わせて使用してもよい。特に有益な粒状フィラー類はルチル型二酸化チタンおよびアモルファスシリカである。これらのフィラー類は、それぞれ、高いおよび低い誘電定数を有し、このため、組成物中の2つのフィラー類の個々の量を調節することにより、最終製品において低い散逸率を有するブロードな範囲の誘電定数を達成することができるからである。フィラー類とポリマーとの間の接着を向上させるために、フィラーは1または複数のカップリング剤、例えばシラン類、ジルコン酸塩類、またはチタン酸塩類で処理してもよい。」

(2) 引用発明
上記(1)によると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「回路材料を形成する、共有結合された多面体シルセスキノキサン(POSS)を含むポリマーを有する誘電材料(段落0010)であって、
多面体シルセスキノキサン類は一般式(RSiO1.5)nを有し、ここで、Rは有機部分であり、nは6、8、10、12またはそれ以上であり、炭化水素類(例えば、フェニル)を含む有機外側層を提供する共有結合された有機基を有し(段落0012)、
誘電材料は1または複数の他の、二酸化チタン、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ等の、誘電性粒状フィラー類を含んでもよい(段落0030)、
誘電材料。」

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1) 引用文献1に「ダブルクラッド積層板は、誘電体基板の各側に1つずつ、2つの導電層を有する。積層板の導電層を、例えばエッチングによりパターニングすると、回路層が得られ、その結果回路が得られる。多層回路は複数の導電層を備え、その少なくとも1つは導電配線パターンを含む。」(段落0003、上記1(1))と記載されるように、引用発明の誘電材料から形成される回路材料は、導電層を絶縁する「絶縁材」として機能するから、引用発明の誘電材料は「絶縁材組成物」といえる。
(2) 「二酸化チタン、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ等の、誘電性粒状フィラー類を含んでもよい」引用発明は、「窒化物充填材もしくは酸化物充填材とを含み」といえる点で本願発明と一致する。
(3) 引用発明の、有機基がフェニルである一般式(RSiO1.5)nで表される多面体シルセスキノキサンは、本願発明の下記のシルセスキオキサン化合物に相当する。
(ii)
【化2】



(4) 以上を踏まえると、本願発明と引用発明とは次の点で一致し、相違点はない。
<一致点>
「シルセスキオキサン化合物と、窒化物充填材もしくは酸化物充填材とを含み、
前記シルセスキオキサン化合物が、
(ii)
【化2】


を含む、絶縁材組成物。」

(5) 小括
以上によると、本願発明は引用発明であり、引用発明でないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-01-11 
結審通知日 2023-01-13 
審決日 2023-01-25 
出願番号 P2018-015591
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 松永 稔
鈴木 聡一郎
発明の名称 絶縁材組成物  
代理人 中村 綾子  
代理人 田中 祐  
代理人 森本 聡二  
代理人 森本 聡二  
代理人 有原 幸一  
代理人 中村 綾子  
代理人 奥山 尚一  
代理人 田中 祐  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  

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