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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1396071
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-11 
確定日 2023-03-09 
事件の表示 特願2017−192801「計測システム、制御システム及び計測方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019− 66347〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年10月2日の出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

令和3年 7月 9日付け:拒絶理由通知書
同年 9月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 2月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月22日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月11日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和4年5月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和4年5月11日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和4年5月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。

(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
所定の高度に設置され、気圧の計測値に計測時点の時刻を示す時刻情報を付加して送信する参照気圧センサと、
移動可能な物体に取り付けられ、気圧の計測値に計測時点の時刻を示す時刻情報を付加して送信する物体気圧センサと、
前記参照気圧センサ及び前記物体気圧センサから送信された気圧の計測値に付加された時刻情報を参照し、前記参照気圧センサと前記物体気圧センサとによって同時に計測された気圧の計測値を対応付け、対応付けた気圧の計測値に基づいて、前記物体気圧センサの高度と前記参照気圧センサの高度との高度差を算出する高度差算出部と、
を備える計測システム。」

(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
所定の高度に設置され、気圧の計測値に計測時点の時刻を示す時刻情報を付加して送信する参照気圧センサと、
移動可能な物体に取り付けられ、気圧の計測値に計測時点の時刻を示す時刻情報を付加して送信する物体気圧センサと、
前記参照気圧センサ及び前記物体気圧センサから送信された気圧の計測値に付加された時刻情報を参照し、前記参照気圧センサと前記物体気圧センサとによって同時に計測された気圧の計測値を対応付け、対応付けた気圧の計測値に基づいて、前記物体気圧センサの高度と前記参照気圧センサの高度との高度差を算出する高度差算出部と、
前記物体が予め設定された基準位置に配置されているとき、前記物体気圧センサと前記参照気圧センサとによって計測された気圧の計測値の差である基準位置差圧を記憶する基準位置差圧記憶部と、
を備え、
前記基準位置は、前記物体の高度の基準とする高さ位置であって、ユーザの操作に応じて操作信号が入力された時点における前記物体の位置であり、
前記基準位置差圧は、前記操作信号が入力されたときに算出され、前記基準位置差圧記憶部に記憶され、
前記高度差算出部は、前記基準位置差圧をさらに用いて前記基準位置と前記物体との高度差を算出する、
計測システム。」

2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「高度差算出部」について、「前記基準位置差圧をさらに用いて前記基準位置と前記物体との高度差を算出する」ものに限定するとともに、
当該限定に伴って、その前提となる構成である、「物体が予め設定された基準位置に配置されているとき、前記物体気圧センサと前記参照気圧センサとによって計測された気圧の計測値の差である基準位置差圧を記憶する基準位置差圧記憶部」であって、「前記基準位置は、前記物体の高度の基準とする高さ位置であって、ユーザの操作に応じて操作信号が入力された時点における前記物体の位置であり」、「前記基準位置差圧は、前記操作信号が入力されたときに算出され、前記基準位置差圧記憶部に記憶され[る]」「基準位置差圧記憶部」を新たに付加したものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。

3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)の本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 引用文献に記載された発明の認定等
ア 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に発行された特開2014−19545号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当審において付したものであり、以下同様である。

a 【0002】〜【0007】
「【背景技術】
【0002】
一般に、建設現場でのクレーン作業においては、例えば、吊荷がマイクロ波の通過経路を遮断することを回避するために、吊荷の高さの絶対値、即ち標高を把握することが要求される場合がある。
【0003】
前記吊荷の標高とは若干異なるが、吊荷の揚程を表示するための揚程計に関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【0004】
特許文献1に開示されたものにおいては、ロープの巻上げ下げを行うドラムからのロープ繰り出し量と、ジブの長さ及び起伏角等の幾何学的寸法から吊荷の揚程を算出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−146385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたものの場合、非常に複雑な計算式に対して、前記ロープ繰り出し量や前記ジブの幾何学的寸法の各データを代入する必要があり、吊荷の揚程を算出する過程で誤差が積算され、精度が低下してしまうという問題を有していた。
【0007】
又、特許文献1に開示されたものでは、前記吊具に吊り下げられた吊荷を着地させた状態で、運転者がドラムに巻回されたロープの巻き層、巻き列を目視で確認し、ダイヤルやスイッチの操作により揚程計に入力する初期設定を行う必要があり、手間が掛かるだけでなく、前記運転者の初期設定次第で、測定される吊荷の揚程が変動し、精度が低下する虞もあった。」

b 【0022】〜【0029】、【図1】
「【0022】
図1は本発明のクレーンの吊荷標高検出装置の第一実施例であって、クレーンとしてクライミングクレーンに適用した例を示し、図1に示すクライミングクレーン1は、基準地表面に設置され且つ上方へマストブロック2aを順次継ぎ足し可能な支持部としてのマスト2の頂部に、該マスト2に沿って昇降可能な昇降ユニット3を介し旋回体4を旋回自在に配置し、該旋回体4上にジブ5を起伏自在に取り付け、前記旋回体4に、後方へ延びるカウンタフレーム6を一体に設け、該カウンタフレーム6上に、前記ジブ5先端から吊荷用の吊具7を吊り下げる吊荷用ワイヤロープ8を巻上げ下げするための巻上装置9と、ジブ5の起伏用ワイヤロープ10を巻上げ下げするための起伏装置11とを設置してなる構成を有している。
【0023】
本第一実施例の場合、前記吊具7に、吊荷の高さ位置での気圧P2[Pa]を検出する吊具気圧計12を設け、該吊具気圧計12で検出される気圧P2[Pa]に基づき演算器13において吊荷の標高h[m]を求めるよう構成してある。
【0024】
尚、前記吊具気圧計12と演算器13との接続は、無線接続或いは有線接続のいずれであっても良い。
【0025】
次に、上記第一実施例の作用を説明する。
【0026】
クライミングクレーン1の運転時には、吊具気圧計12によって吊荷の高さ位置での気圧P2[Pa]が検出され、該吊具気圧計12で検出される気圧P2[Pa]に基づき演算器13において吊荷の標高h[m]が求められる。
【0027】
この結果、本第一実施例では、吊荷の標高h[m]を求める過程で、特許文献1に開示されたもののように、非常に複雑な計算式に対して、ロープ繰り出し量やジブの幾何学的寸法の各データを代入する必要がなく、誤差が積算されて精度が低下してしまう心配もない。
【0028】
又、特許文献1に開示されたものとは異なり、前記吊具7に吊り下げられた吊荷を着地させた状態で、運転者がドラムに巻回されたロープの巻き層、巻き列を目視で確認し、ダイヤルやスイッチの操作により演算器13に入力する初期設定を行う必要がなく、前記運転者の初期設定次第で、測定される吊荷の標高h[m]が変動するようなことがなく、精度が低下する虞もない。
【0029】
こうして、複雑な計算式を用いたり、面倒な初期設定を行ったりすることなく、吊荷の標高h[m]を精度良く検出し得る。」
「【図1】



c 【0030】〜【0041】、【図2】、【図3】
「【0030】
図2及び図3は本発明のクレーンの吊荷標高検出装置の第二実施例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本第二実施例の特徴とするところは、図2及び図3に示す如く、前記支持部としてのマスト2の下端に、基準地表面の高さ位置での気圧P1[Pa]を検出する基準気圧計14を設け、該基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と前記吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]とに基づく演算式
h=0.1×(P1−P2)+h1
(但し、h1:地図データから取得される基準地表面標高)
を用い前記演算器13で吊荷の標高h[m]を求めるよう構成した点にある。
【0031】
因みに、前記演算式においては、
1[Pa]≒10[cm]=0.1[m]
としている。
【0032】
次に、上記第二実施例の作用を説明する。
【0033】
クライミングクレーン1の運転時には、先ず、基準気圧計14によって基準地表面の高さ位置での気圧P1[Pa]が検出される(図3のステップS1参照)。ここで、前記気圧P1[Pa]は、例えば、基準気圧計14で検出される直近10秒間のデータ平均値を採用することができる。
【0034】
続いて、地図データから基準地表面標高h1[m]が取得される(図3のステップS2参照)。
【0035】
更に、吊具気圧計12によって吊荷の高さ位置での気圧P2[Pa]が検出される(図3のステップS3参照)。
【0036】
そして、前記基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と前記吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]とに基づく演算式
h=0.1×(P1−P2)+h1
を用い前記演算器13で吊荷の標高h[m]が求められる(図3のステップS4参照)。
【0037】
この結果、本第二実施例では、吊荷の標高h[m]を求める過程で、特許文献1に開示されたもののように、非常に複雑な計算式に対して、ロープ繰り出し量やジブの幾何学的寸法の各データを代入する必要がなく、誤差が積算されて精度が低下してしまう心配もない。
【0038】
又、特許文献1に開示されたものとは異なり、前記吊具7に吊り下げられた吊荷を着地させた状態で、運転者がドラムに巻回されたロープの巻き層、巻き列を目視で確認し、ダイヤルやスイッチの操作により演算器13に入力する初期設定を行う必要がなく、前記運転者の初期設定次第で、測定される吊荷の標高h[m]が変動するようなことがなく、精度が低下する虞もない。
【0039】
しかも、本第二実施例の場合、地図データから基準地表面標高h1を取得し、前記基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と前記吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]との差を用いているため、仮に台風等の接近により気圧の変化があったとしても、吊荷の標高h[m]を正確に割り出すことが可能となる。
【0040】
尚、本第二実施例の場合、基準気圧計14を複数個設けて、該各基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]の平均値を用いるようにすることもでき、このようにすれば、部分的に吹き付ける風による気圧P1[Pa]の変動を緩和することが可能となり、更に精度を向上させる上で有効となる。
【0041】
こうして、第二実施例においても、第一実施例と同様、複雑な計算式を用いたり、面倒な初期設定を行ったりすることなく、吊荷の標高h[m]を精度良く検出し得、更に、基準気圧計14を設けてその検出値を補正に用いることにより、天候の変化に伴う気圧の変動にも対応できる。」
「【図2】


「【図3】



(イ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「クレーンの吊荷標高検出装置であって(【0030】)、
巻上げ下げされる吊荷用ワイヤロープ8により吊り下げられる吊荷用の吊具7に、吊荷の高さ位置での気圧P2[Pa]を検出する吊具気圧計12を設け(【0022】、【0023】)、
基準地表面の高さ位置での気圧P1[Pa]を検出する基準気圧計14を設け(【0030】)、
基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と前記吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]とに基づく演算式
h=0.1×(P1−P2)+h1
(但し、h1:地図データから取得される基準地表面標高)
を用い演算器13で吊荷の標高h[m]を求めるよう構成し(【0030】)、
吊具気圧計12と演算器13との接続は、無線接続或いは有線接続であり(【0024】)、
基準気圧計14を設けてその検出値を補正に用いることにより、天候の変化に伴う気圧の変動にも対応できる(【0041】)、
クレーンの吊荷標高検出装置。」

イ 引用文献7に記載された事項と周知技術の認定
(ア) 引用文献7に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に発行された特開2014−228329号公報(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0040】
本実施の形態である携帯情報処理装置100は、携帯可能な情報処理装置の存在位置を出力するものであって、図1の例に示すように、気圧検知モジュール110、ユーザ状況検知モジュール115、位置検知モジュール120、リファレンス情報取得モジュール130、建物情報記憶モジュール140、高さ特定モジュール150、出力モジュール160、誤判定監視モジュール170、判定補正モジュール180、補正情報記憶モジュール190を有している。情報処理装置100は、携帯可能であって、通信機能を有している。例えば、携帯電話(スマートフォンを含む)、通信機能を有しているノートPC(タブレット型PCを含む)等である。また、情報処理装置100内には、少なくとも気圧検知モジュール110を有していればよく、一般的には位置検知モジュール120も有しており、図2の例を用いて後述するように、リファレンス情報取得モジュール130、建物情報記憶モジュール140、高さ特定モジュール150、出力モジュール160のいずれか1つ以上は、他の情報処理装置に構築されていてもよい。なお、情報処理装置100の位置を検知するとは、その情報処理装置100を携帯している者の位置を検知することになる。
なお、気圧に関する情報を単に気圧といい、気温に関する情報を単に気圧といい、標高に関する情報を単に標高という。気圧に関する情報としては、少なくとも気圧そのものを示す情報を含み、その気圧に関連するその他の情報として、例えば、その気圧を検知した日時(年、月、日、時、分、秒、秒以下、又はこれらの組み合わせであってもよい。以下、同様)、その気圧を検知した測定器を特定する識別情報等を含んでいてもよい。気温に関する情報としては、少なくとも気温そのものを示す情報を含み、その気温に関連するその他の情報として、例えば、その気温を検知した日時、その気温を検知した測定器を特定する識別情報等を含んでいてもよい。標高に関する情報としては、少なくとも標高そのものを示す情報を含み、その標高に関連するその他の情報として、例えば、その標高を検知した日時、その標高を検知した測定器を特定する識別情報等を含んでいてもよい。
【0041】
気圧検知モジュール110は、高さ特定モジュール150と接続されている。気圧検知モジュール110は、携帯情報処理装置100が存在している位置の気圧を検知する。いわゆる気圧センサーである。
なお、気圧検知モジュール110は、定期的に気圧を検知する。
…(中略)…
【0042】
リファレンス情報取得モジュール130は、高さ特定モジュール150と接続されている。リファレンス情報取得モジュール130は、検知装置が検知した気圧と気温とその検知装置がある標高を受け付ける。検知装置は、リファレンス情報取得モジュール130に内蔵されていてもよいし、他の検知装置でもよい。もちろんのことながら、「内蔵された検知装置」と「他の検知装置」のいずれか一方であってもよいし、両方であってもよい。両方の場合は、例えば、両者の気圧と気温と標高の平均としてもよい。「他の検知装置」とは、例えば、後述する携帯情報処理装置250が該当する。つまり、「他の検知装置」は携帯情報処理装置100以外の装置であり、気圧センサーと気温センサーを有しており、一般的には携帯情報処理装置100とは異なる場所にある。リファレンス情報取得モジュール130は、それらのセンサーの検知した値を取得する。そして、「他の検知装置」が存在している位置の標高も取得する。「他の検知装置が存在している位置の標高」については、図7等を用いて後述する。
リファレンス情報取得モジュール130は、さらに「内蔵された検知装置」又は「他の検知装置」が気圧と気温を検知した時刻を受け付けるようにしてもよい。
…(中略)…
【0044】
高さ特定モジュール150は、気圧検知モジュール110、ユーザ状況検知モジュール115、位置検知モジュール120、リファレンス情報取得モジュール130、建物情報記憶モジュール140、出力モジュール160、誤判定監視モジュール170、判定補正モジュール180、補正情報記憶モジュール190と接続されている。高さ特定モジュール150は、リファレンス情報取得モジュール130によって受け付けられた気圧と気温と標高と気圧検知モジュール110によって検知された気圧に基づいて、気圧検知モジュール110が検知した時点における標高を算出する。そして、階とその階の高さを対応させて記憶している建物情報記憶モジュール140から算出した標高に対応する階を特定する。もちろんのことながら、高さ特定モジュール150が算出する標高は、気圧検知モジュール110を内蔵している携帯情報処理装置100がある位置の標高である。具体的には、リファレンス情報取得モジュール130によって受け付けられた気圧と気温と標高を参照値(参照基準情報)とした予め定められた式を用いて、その式に気圧検知モジュール110によって検知された気圧を代入して標高を算出する。なお、「参照基準情報」には、(1)気圧に関する情報と、(2)気温に関する情報と、(3)標高に関する情報、が含まれる。
高さ特定モジュール150は、気圧検知モジュール110が気圧を検知した時刻から予め定められた範囲内にある時刻に検知されたリファレンス情報取得モジュール130が受け付けた気圧と気温を用いて標高を算出するようにしてもよい。例えば、気圧検知モジュール110が検知したときから30秒以内に検知されたものを利用するようにしてもよい。さらにその範囲内に複数ある場合は、最新のものを利用するようにしてもよい。」
「【図1】



(イ) 周知技術の認定
引用文献7の上記(ア)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は周知技術であると認める。

<周知技術>
「気圧に関する情報に、その気圧を検知した日時(年、月、日、時、分、秒)が含まれており、気圧検知モジュールが気圧を検知した時刻から予め定められた範囲内にある時刻に検知されたリファレンス情報取得モジュールが受け付けた気圧と、気圧検知モジュールによって検知された気圧を用いて、気圧検知モジュールの標高を算出すること。」

ウ 引用文献8に記載された事項の認定
(ア) 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用され、本願出願前に発行された特開2015−135303号公報(以下「引用文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。

a 【0020】
「【0020】
ここで、上述した“オフセット”とは、気圧の補正量を意味する。一般に、スマートフォンに搭載される気圧センサは、高い分解能を備えており、気圧の変化量を精度良く検出することができるものの、出力される気圧の絶対値は、その機種によって大きく異なることが知られている。この点に鑑みて、本実施形態では、スマートフォン10Aが検出する気圧値をオフセットで補正する。」

b 【0031】〜【0037】、【図4】、【図5】
「【0031】
続いて、具体的なシナリオに基づいて、サーバ40Aの所在階数推定部44が実行する処理の内容を説明する。なお、以下の説明においては、適宜、図2および図3を参照するものとする。
【0032】
本シナリオでは、図4に示すように、エレベータ302を備える12階建てのビル300の1Fに、基準気圧送信用のスマートフォン30が固定的に設置されており、スマートフォン30は、1Fで検出した気圧を定期的にサーバ40に送信している。
【0033】
ビル300に入ったユーザは、1Fにおいて携帯するスマートフォン10を操作してオフセットの取得を指示する所定の操作を行う。その結果、その時点でスマートフォン30が検出している気圧値“1013.05 [hPa]“とスマートフォン10が検出している気圧値“1011.55 [hPa]“の差分“+1.5 [hPa]”がオフセットとしてスマートフォン10に保存される(図3:S1〜S6)。
【0034】
その後、図5に示すように、ユーザはエレベータ302に乗って10Fに上がる。このとき、ユーザが携帯するスマートフォン10が検出する気圧値は“1011.55 [hPa]“から“1008.42 [hPa]“に変化する。この時点で、スマートフォン10は、“1008.42 [hPa]“をオフセット“+1.5 [hPa]”で補正した気圧値“1009.92 [hPa]“を含む所在階数取得要求をサーバ40に送信する(図3:S7〜S8)。
【0035】
サーバ40は、スマートフォン10から所在階数取得要求を受信すると、以下の手順でユーザの所在階数を推定する(図3:S9〜S10)。
【0036】
サーバ40の所在階数推定部44は、まず、基準気圧“1013.05 [hPa]“と、所在階数取得要求に含まれる補正後の気圧値“1009.92 [hPa]“との差分“3.13 [hPa]“を求める。ここで、本実施形態においては、隣接する階床間の気圧差、すなわち、ビル300の1階分の高さ当たり(3.5m)の気圧の変化量“0.35 [hPa]“が予め求められ、記憶部45に格納されている。
【0037】
所在階数推定部44は、1階分の高さ当たりの気圧の変化量“0.35 [hPa]“を記憶部45から読み出した後、先に求めた差分“3.13 [hPa]“を読み出した気圧の変化量“0.35[hPa]“で除算した商「8.94…」の小数点第1位を四捨五入した値「9」に「1」を加算した値「10」を現在の所在階数として推定する。つまり、所在階数推定部44は、先に求めた気圧の差分を1階分の高さ当たりの気圧の変化量で除算した商の小数点第1位を四捨五入した値「X」にスマートフォン30が設置される階床の階数「N」を加算した値「X+N」を現在の所在階数として推定する。」
「【図4】


「【図5】



(イ) 引用文献8に記載された事項の認定
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献8には、次の事項が記載されているものと認められる(以下「引用文献8記載事項」という。)。

<引用文献8記載事項>
「ビル300の1Fに、基準気圧送信用のスマートフォン30が固定的に設置されており、スマートフォン30は、1Fで検出した気圧を定期的にサーバ40に送信しており(【0032】)、
ユーザは、1Fにおいて携帯するスマートフォン10を操作してオフセットの取得を指示する所定の操作を行い、その時点でスマートフォン30が検出している気圧値とスマートフォン10が検出している気圧値の差分がオフセットとしてスマートフォン10に保存され(【0033】)、
その後、ユーザは10Fに上がり、このときユーザが携帯するスマートフォン10が検出する気圧値は変化し、この時点で、スマートフォン10は、検出した気圧値をオフセットで補正した気圧値を含む所在階数取得要求をサーバ40に送信し(【0034】)、
サーバ40の所在階数推定部44は、基準気圧と、所在階数取得要求に含まれる補正後の気圧値との差分を求め(【0036】)、
所在階数推定部44は、先に求めた気圧の差分を1階分の高さ当たりの気圧の変化量で除算した商の小数点第1位を四捨五入した値「X」にスマートフォン30が設置される階床の階数「N」を加算した値「X+N」を現在の所在階数として推定すること(【0037】)。」

(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 引用発明の「基準気圧計14」は、基準地表面の高さ位置での気圧P1[Pa]を検出するものであるから、基準値表面の高さ位置に設置されていることは明らかであり、この「基準地表面の高さ位置」は、本件補正発明の「所定の高度」に相当する。
また、基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]は、演算器13による演算に用いられているから、前記気圧P1[Pa]が、基準気圧計14から演算器13に送信されていることは明らかであり、この「基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]」は、本件補正発明の「参照気圧センサ」から送信される「気圧の計測値」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「所定の高度に設置され、気圧の計測値を送信する参照気圧センサ」を備える点で共通する。

(イ) 引用発明の「巻上げ下げされる吊荷用ワイヤロープ8により吊り下げられる吊荷用の吊具」と本件補正発明の「移動可能な物体」は、「物体」である点で共通する。
また、吊具気圧計12で検出された吊荷の高さ位置での気圧P2[Pa]は、演算器13による演算に用いられているから、前記気圧P2[Pa]は、吊具気圧計12から演算器13に送信されていることは明らかであり、この「吊具気圧計12で検出された吊荷の高さ位置での気圧P2[Pa]」は、本件補正発明の「物体気圧センサ」から送信される「気圧の計測値」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明は、「物体に取り付けられ、気圧の計測値を送信する物体気圧センサ」を備える点で共通する。

(ウ)a 引用発明において、演算器13は、基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]とに基づく演算式
h=0.1×(P1−P2)+h1
(但し、h1:地図データから取得される基準地表面標高)
を用いて吊荷の標高hを求めている。

b そして、前記演算式から、
h−h1=0.1×(P1−P2)
の関係が導かれるところ、この「h−h1」は、吊荷の標高hと基準地表面標高h1との高度差であるから、引用発明において、基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]から、「0.1×(P1−P2)」を演算することは、本件補正発明の「前記物体気圧センサの高度と前記参照気圧センサの高度との高度差」を算出することに相当する。

c そうすると、引用発明では、演算器13は、基準気圧計14で検出された気圧P1[Pa]と吊具気圧計12で検出された気圧P2[Pa]から、吊荷の標高hと基準地表面標高h1との高度差をまず演算し、その演算された高度差と基準地表面標高h1の和を演算することで、吊荷の標高hを求めていることになる。
そして、引用発明において、吊荷の標高hを求めることと、本件補正発明において、「前記物体気圧センサの高度と前記参照気圧センサの高度との高度差を算出する」ことは、「前記物体気圧センサの高度に関する値を算出する」点で共通する。

d また、引用発明の「演算器13」は、吊荷の標高hを演算するものであるから、前記cを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記物体気圧センサの高度に関する値を算出する」ための「算出部」を備える点で共通する。

e よって、前記a〜dを踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記参照気圧センサ及び前記物体気圧センサから送信された気圧の計測値に基づいて、前記物体気圧センサの高度に関する値を算出する算出部」を備える点で共通する。

(エ) 引用発明は「クレーンの吊荷標高検出装置」であるが、この装置は「演算器13」と「無線接続或いは有線接続」される「吊具気圧計12」を含むものであるから、「クレーンの吊荷標高検出システム」の発明であるともいえる。したがって、本件補正発明と引用発明は、「計測システム」の発明である点で共通する。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。

(ア) 一致点
所定の高度に設置され、気圧の計測値を送信する参照気圧センサと、
物体に取り付けられ、気圧の計測値を送信する物体気圧センサと、
前記参照気圧センサ及び前記物体気圧センサから送信された気圧の計測値に基づいて、前記物体気圧センサの高度に関する値を算出する算出部と、
を備える、
計測システム、である点。

(イ) 相違点
a 相違点1
物体気圧センサが取り付けられる物体が、
本件補正発明においては、「移動可能な物体」であるのに対して、
引用発明においては、吊荷用の吊具である点。

b 相違点2
本件補正発明においては、「参照気圧センサ」及び「物体気圧センサ」は、「気圧の計測値に計測時点の時刻を示す時刻情報を付加して送信[しており]」、「高度差算出部」は、「前記参照気圧センサ及び前記物体気圧センサから送信された気圧の計測値に付加された時刻情報を参照し、前記参照気圧センサと前記物体気圧センサとによって同時に計測された気圧の計測値を対応付け、対応付けた気圧の計測値に基づいて、前記物体気圧センサの高度と前記参照気圧センサの高度との高度差を算出[している]」のに対して、
引用発明においては、基準気圧計14及び吊具気圧計12のいずれも、演算器13に送信する気圧P1及びP2に、計測時点の時刻を示す時刻情報を付加しておらず、演算器13は、気圧の計測値に付加された時刻情報を参照して、同時に計測された気圧の計測値を対応付けていない点。

c 相違点3
本件補正発明においては、「前記物体気圧センサの高度と前記参照気圧センサの高度との高度差を算出する高度差算出部」を備えているのに対して、
引用発明においては、吊荷の標高hと基準地表面標高h1との高度差を演算しているものの、その演算された高度差と基準地表面標高h1の和を演算することで、吊荷の標高hを求めている点。

d 相違点4
本件補正発明においては、「前記物体が予め設定された基準位置に配置されているとき、前記物体気圧センサと前記参照気圧センサとによって計測された気圧の計測値の差である基準位置差圧を記憶する基準位置差圧記憶部」を備え、
「前記基準位置は、前記物体の高度の基準とする高さ位置であって、ユーザの操作に応じて操作信号が入力された時点における前記物体の位置であり、
前記基準位置差圧は、前記操作信号が入力されたときに算出され、前記基準位置差圧記憶部に記憶され、
前記高度差算出部は、前記基準位置差圧をさらに用いて前記基準位置と前記物体との高度差を算出する」ものであるのに対して、
引用発明においては、そのような構成を備えていない点。

(4) 当審の判断
ア 相違点1について
前記相違点1について検討する。
引用発明は、吊荷の標高hを検出する装置であるから、物体気圧センサを、吊荷用の吊具でなく、吊荷すなわち移動可能な物体に、直接取り付けるようにすることに格別の困難性は認められない。

イ 相違点2について
前記相違点2について検討する。
(ア) 前記(2)イ(イ)に示したとおり、気圧に関する情報に、その気圧を検知した日時(年、月、日、時、分、秒)が含まれており、気圧検知モジュールが気圧を検知した時刻から予め定められた範囲内にある時刻に検知されたリファレンス情報取得モジュールが受け付けた気圧と、気圧検知モジュールによって検知された気圧を用いて、気圧検知モジュールの標高を算出することは、本願出願前において周知技術である。
そして、引用発明においても「天候の変化に伴う気圧の変動」に対応することがうたわれているように、時刻による気圧の変化が技術常識であることを踏まえると、前記周知技術は、気圧検知モジュールによる気圧の検知と、リファレンス情報取得モジュールの受け付けた気圧との間に、時刻による気圧の変化の影響が生じないようにするためのものであることが分かる。
そうすると、前記周知技術の「気圧検知モジュールが気圧を検知した時刻から予め定められた範囲内にある時刻」とは、時刻による気圧の変化の影響が容認できる範囲内に適宜選択されるべき設計事項であり、またこれを同時刻とすれば確実に時刻による気圧の変化の影響を排除できることも明らかである。

(イ) 引用発明は、基準気圧計14を設けてその検出値を補正に用いることにより、天候の変化に伴う気圧の変動にも対応できるものであるとされているところ、これは天候の変化により気圧P2が[Pa]が変化したとしても、気圧P1[Pa]も同じように変化するから、これらの差を用いることにより、天候の変化に伴う気圧の変動が相殺されることによるものであると理解される。
そうすると、引用発明においても時刻による気圧の変化の影響があることは明らかであるから、これを防ぐために、前記周知技術を適用して、計測された気圧P1[Pa]及び気圧P2[Pa]に時刻情報を付加して演算器13に送信し、演算器13において、付加された時刻情報に基づいて、計測された気圧P1[Pa]と気圧P2[Pa]を対応付けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。そしてその際に、時刻の「予め定められた範囲内」をどの程度とするかは、これをゼロ(同時刻)とすることも含め、設計事項の範囲内のものである。

ウ 相違点3について
前記相違点3について検討する。
引用文献1の【0003】〜【0007】には、従来技術においては、吊荷の揚程を算出する際、その算出精度が低下するという問題を有していたことが記載されている。
よって、当該記載から、引用発明は、吊荷の標高を検出するだけでなく、吊荷の揚程の算出にも用いることが、当然想定されているものと認められる。
そうすると、吊荷の揚程とは、吊荷の吊り上げ可能な高さを意味するから、吊荷を一番高く吊り上げた時の標高hと基準地表面標高h1との高度差から求められることは明らかである。
そして、引用発明は、吊荷の標高hと基準地表面標高h1の高度差を求めてから、標高を算出しているものであるから、引用発明において、吊荷の揚程を求める場合は、吊荷の標高hと基準地表面標高h1の高度差をそのまま用いるようにすることに、格別の困難性があるものではない。

エ 相違点4について
前記相違点4について検討する。
(ア) 前記(2)ウ(イ)に示したとおり、引用文献8には、
ビル300の1Fに、基準気圧送信用のスマートフォン30が固定的に設置されており、スマートフォン30は、1Fで検出した気圧を定期的にサーバ40に送信しており、
ユーザは、1Fにおいて携帯するスマートフォン10を操作してオフセットの取得を指示する所定の操作を行い、その時点でスマートフォン30が検出している気圧値とスマートフォン10が検出している気圧値の差分がオフセットとしてスマートフォン10に保存され、
その後、ユーザは10Fに上がり、このときユーザが携帯するスマートフォン10が検出する気圧値は変化し、この時点で、スマートフォン10は、検出した気圧値をオフセットで補正した気圧値を含む所在階数取得要求をサーバ40に送信し、
サーバ40の所在階数推定部44は、基準気圧と、所在階数取得要求に含まれる補正後の気圧値との差分を求め、
所在階数推定部44は、先に求めた気圧の差分を1階分の高さ当たりの気圧の変化量で除算した商の小数点第1位を四捨五入した値「X」にスマートフォン30が設置される階床の階数「N」を加算した値「X+N」を現在の所在階数として推定することが記載されている。

(イ)a ここで、引用文献8記載事項における、「基準気圧送信用のスマートフォン30が固定的に設置されて[いる]」「1Fにおいて携帯するスマートフォン10」の位置が、本件補正発明の「予め設定された基準位置」及び「物体の高度の基準とする高さ位置」に相当する。
また、引用文献8記載事項における、「スマートフォン10」及び「スマートフォン30」は、それぞれ本件補正発明の「物体気圧センサ」及び「参照気圧センサ」に相当する。
そして、引用文献8記載事項における、1Fにおいてスマートフォン30が検出している気圧値とスマートフォン10が検出している気圧値の差分が、本件補正発明の「基準位置差圧」に相当する。
引用文献8記載事項において、前記気圧値の差分が、オフセットとしてスマートフォン10に保存されているから、スマートフォン10に記憶部があることは明らかであり、この記憶部が、本件補正発明の「基準位置差圧記憶部」に相当する。

b 引用文献8記載事項における、本件補正発明の「基準位置」及び「物体の高度の基準とする高さ位置」に相当する「基準気圧送信用のスマートフォン30が固定的に設置されて[いる]」「1Fにおいて携帯するスマートフォン10」の位置は、「スマートフォン10を操作してオフセットの取得を指示する所定の操作を行[う]」時点の位置でもあるから、本件補正発明の「ユーザの操作に応じて操作信号が入力された時点における前記物体の位置」に相当する。

c 引用文献8記載事項において、オフセットの取得を指示する所定の操作を行い、その時点でスマートフォン10及び30が検出している気圧値の差分をオフセットとして保存することは、本件補正発明の「前記基準位置差圧は、操作信号が入力されたときに算出され、前記基準位置差圧記憶部に記憶され」ることに相当する。

d 引用文献8記載事項における、「基準気圧送信用のスマートフォン30が固定的に設置されて[いる]」「1Fにおいて携帯するスマートフォン10」の位置は、前記aに示したとおり、本件補正発明の「基準位置」に相当する。
そして、引用文献8記載事項における、「1Fにおいて携帯するスマートフォン10」の位置と、「ユーザは10Fに上がり、このときユーザが携帯するスマートフォン10」の位置の高度差が、本件補正発明の「前記基準位置と前記物体との高度差」に相当する。
引用文献8記載事項において、ユーザが10Fに上がったときのスマートフォン10が検出する気圧値を前記オフセットで補正した気圧値をサーバ40に送信し、サーバ40の所在階数推定部44は、基準気圧と、スマートフォン10から送信された気圧値との差分を求めて、1階分の高さ当たりの気圧の変化量で除算した商の小数点第1位を四捨五入した値「X」を求めることは、本件補正発明の「前記高度差算出部は、前記基準位置差圧をさらに用いて前記基準位置と前記物体との高度差を算出する」ことに相当する。

e よって、前記a〜dの検討を総合すると、引用文献8には、前記相違点4に係る構成が記載されていると認められる。

(ウ) 引用文献8記載事項の構成は、要するに、スマートフォン10及び30が、同じ1Fにあるときに検出した気圧値の気圧差であるオフセット(機種の違いや、ユーザが携帯するスマートフォン10の高さと、固定的に設置されるスマートフォン30の高さの違いに起因する出力差が考えられる)を予め求めておき、そのオフセットを用いて、スマートフォン10が、1Fにあるときに検出されるであろう気圧値と、10Fにあるときに検出した気圧値の気圧差から高度差を求めて、より精度の高い算出を行うものであるところ、引用発明においても、吊具気圧計12と基準気圧計14に、オフセットが含まれる可能性があることは明らかであるから、当該オフセットを考慮して、より精度の高い算出を行うために、引用文献8に記載された前記相違点4に係る構成を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ 総合検討
前記ア〜エにおいて検討したとおり、引用発明において前記相違点1から相違点4に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1から相違点4を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、周知技術及び引用文献8記載事項から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び引用文献8記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、おおむね下記a〜cの主張をしている。

a 本願の新たな請求項1,6に係る発明は、端的にいうと、以下の2つの特徴点を有するものである。
(特徴点1)ユーザの操作に応じて操作信号が入力されたときに、物体気圧センサと参照気圧センサとによって計測された気圧の計測値の差である基準位置差圧が算出され、記憶される。
(特徴点2)基準位置差圧を用いて、ユーザの操作に応じて操作信号が入力された時点における物体の高さ位置を基準位置として、物体の高度が算出される(即ち、基準位置と物体との高度差が算出される)。

b これに対し、引用文献1には、第30〜36段落等を参照すると、基準気圧計14によって検出された気圧P1[Pa]と、吊具気圧計12によって検出された気圧P2[Pa]とに基づいて、吊荷の標高hを求めることが記載されていると考えられるものの、引用文献1は、少なくとも、本願の新たな請求項1,6に係る発明の上記特徴点1,2を何ら開示しておらず、示唆すらしていない。

c 本願の新たな請求項1,6に係る発明は、元の請求項4の内容を含むものであるところ、審査官は、元の請求項4に係る発明については、引用文献1(引用文献2,7)に引用文献5を組み合わせることにより、当業者にとって容易に想到し得ることであると判断している。
しかしながら、引用文献1のみならず、引用文献5にも、本願の新たな請求項1,6に係る発明の上述した特徴点1,2が何ら開示されておらず、示唆すらされていない。

(イ) 請求人の主張について
前記(2)ウ及び前記エにおいて説示したとおり、請求人が前記(ア)aで主張する特徴点1、2は、引用文献8に記載されている。
そして、前記エにおいて説示したとおり、引用発明において、引用文献8に記載された前記相違点4に係る構成、すなわち、前記特徴点1、2の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の主張は、前記オの結論を左右するものではない。

(5) 独立特許要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、周知技術及び引用文献8記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年9月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

本願発明は、下記引用文献1に記載された発明及び下記引用文献7に示された周知技術に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1 特開2014−19545号公報
引用文献7 特開2014−228329号公報(周知技術を示す文献)

3 引用文献1、7に記載された事項、引用発明及び周知技術の認定
引用文献1、7に記載された事項、引用発明及び周知技術の認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、「基準位置差圧記憶部」の構成を省くとともに、それに伴い、「高度差算出部」について、「基準位置差圧記憶部」が記憶する「基準位置差圧をさらに用いて前記基準位置と前記物体との高度差を算出する」という限定を省いたものである。
したがって、前記第2の3(3)アの検討事項及び前記第2の3(3)イ(ア)に示した一致点を踏まえると、本願発明と引用発明は、前記第2の3(3)イ(イ)に示した相違点1から相違点3において相違し、その他の点において一致するところ、引用発明において、前記相違点1から相違点3に係る構成を備えるようにすることは、前記第2の3(4)において説示したとおり、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1から相違点3を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-01-05 
結審通知日 2023-01-10 
審決日 2023-01-23 
出願番号 P2017-192801
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
P 1 8・ 575- Z (G01C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱本 禎広
後藤 慎平
発明の名称 計測システム、制御システム及び計測方法  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 高橋 久典  
代理人 片岡 央  
代理人 沖田 壮男  

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