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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J
管理番号 1396127
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-10 
確定日 2023-04-11 
事件の表示 特願2018−184546「車載制御装置及び充電システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月 2日出願公開、特開2020− 54206、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)9月28日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 3年12月 9日付け 拒絶理由通知書
令和 4年 1月25日 意見書・手続補正書
3月15日付け 拒絶査定
6月10日 手続補正書・審判請求書
7月22日 前置報告書

第2 本件補正の適法性についての判断
令和4年6月10日の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、請求項の削除を目的としたものであり、適法である。

第3 本願発明
本願の請求項1〜8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明8」といい、これらを総称して「本願発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。

「 【請求項1】
直流電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置であって、
前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記直流電力用充電口に接続されているときに、ユーザからの要求に応じて所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
前記設備情報は、前記給電設備の供給電力の大きさを含み、
前記判断部は、前記給電設備の供給電力の大きさが所定の大きさ以下である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される、車載制御装置。
【請求項2】
前記給電設備から前記直流電力用充電口に供給される電力を用いて前記車両の車載バッテリを充電しているときに、前記車載バッテリのSOCが所定SOC値以上になった場合に、前記給電設備の供給電力の大きさを前記所定の大きさ以下にするように前記給電設備に要求する要求部をさらに備える、請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項3】
直流電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置であって、
前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記直流電力用充電口に接続されているときに、ユーザからの要求に応じて所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
前記設備情報は、前記給電設備が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含み、
前記判断部は、前記給電設備が非公共の設備である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される、車載制御装置。
【請求項4】
前記車両は、所定の情報を報知する第1報知装置をさらに備え、
前記車載制御装置は、前記判断部により前記補機駆動モードを許可しないと判断された場合に、前記補機駆動モードを実行できないことを前記第1報知装置に報知させる報知部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項5】
前記所定の補機類には、空調装置、音響機器、映像機器、ナビゲーションシステム、シートヒータ、及びミラーヒータの少なくとも1つが含まれ、
前記補機駆動モードの実行が要求され、かつ、前記補機駆動モードが許可されると、前記補機駆動モードを実行する実行部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車載制御装置。
【請求項6】
直流電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置を含む充電システムであって、
前記車載制御装置は、
前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記直流電力用充電口に接続されているときに、ユーザからの要求に応じて所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
前記車載制御装置は、所定の送信条件が成立する場合に所定の信号を前記給電設備へ送信するように構成され、
前記充電システムは、前記補機駆動モードに対応している給電設備をさらに含み、
前記補機駆動モードに対応している給電設備は、所定の情報を報知する第2報知装置を備え、前記車載制御装置から前記所定の信号を受信すると、前記補機駆動モードが許可されていることを前記第2報知装置に報知させるように構成される、充電システム。
【請求項7】
前記送信条件は、前記給電設備から前記直流電力用充電口に供給される電力を用いて前記車両の車載バッテリを充電しているときに前記車載バッテリのSOCが所定SOC値以上になったことを含み、
前記補機駆動モードに対応している給電設備は、前記直流電力用充電口へ供給する電力の大きさを変更可能に構成され、前記車載制御装置から前記所定の信号を受信すると、前記直流電力用充電口へ供給する電力を小さくする、請求項6に記載の充電システム。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の車載制御装置と、前記補機駆動モードに対応している給電設備とを含み、
前記補機駆動モードに対応している給電設備は、系統電源と、前記系統電源から出力される交流電力を直流電力に変換して出力する電力変換回路とを含む、充電システム。」

第4 原査定の概要
令和4年3月15日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1、5、6及び9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2017−127062号公報
2.国際公開第2014/045776号
3.特開2018−125933号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2014−230301号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2012−85403号公報
6.特開平7−46701号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

第5 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2017−127062号公報(以下、「引用文献1」という。)によれば、以下の(1)及び(2)が認められる。

(1)引用文献1の記載
引用文献1には、次の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した(以下、同様)。

ア 「【0012】
図1は、本実施の形態に係る電動車両100の構成と充電設備300の構成とを示す概略図である。図1を参照して、電動車両100と充電設備300とは、充電ケーブル400によって接続される。
【0013】
充電設備300は、たとえば、商用電源などの外部電源500からの電力を、充電ケーブル400を介して電動車両100へ供給する。電動車両100は、制御装置102と、充電装置104と、バッテリ106と、通信装置108と、インレット110と、電力変換装置112と、駆動用モータ114と、空調装置116とを含む。
【0014】
制御装置102は、充電装置104の動作と、通信装置108の動作と、電力変換装置112の動作と、空調装置116の動作とを制御する。」

イ 「【0017】
通信装置108は、充電ケーブル400に内蔵される通信線を経由した有線通信によって充電設備300の通信装置308と互いに信号の授受が可能に構成される。通信装置108は、たとえば、充電設備300の通信装置308から充電設備300が有料の充電設備であることを示す情報を受信する。」

ウ 「【0024】
充電設備300は、ユーザーインターフェース302と、制御装置304と、充電リレー306と、通信装置308とを含む。」

エ 「【0040】
S118にて、制御装置304は、精算処理を実行する。具体的には、制御装置304は、S114にて算出された料金をユーザーインターフェース302の表示装置等を用いてユーザに通知する。制御装置304は、ユーザーインターフェース302の課金装置に対して金銭の投入やカード情報の読み取り等のユーザによる支払い動作が行なわれるまで待機する。制御装置304は、ユーザによる支払い動作が行なわれると、所定の完了処理が行なわれて精算処理を完了させる。」

オ 「【0048】
そこで、本実施の形態においては、制御装置102は、外部充電が完了するまでに充電設備300から充電設備300の利用が有料であることを示す情報を受信しない場合には、外部充電が完了した後において充電設備の電力を用いて空調装置116を作動させる。また、制御装置102は、外部充電が完了するまでに充電設備300から当該情報を受信する場合には、外部充電が完了した後においてバッテリ106の電力を用いて空調装置116を作動させる。」

カ 図1


(2)文献1発明の認定
前記(1)の記載によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「文献1発明」という。)が記載されていると認められる。

「制御装置102と、充電装置104と、バッテリ106と、通信装置108と、インレット110と、電力変換装置112と、駆動用モータ114と、空調装置116とを含む電動車両100であって(【0013】)、
充電設備300は、商用電源などの外部電源500からの電力を、充電ケーブル400を介して電動車両100へ供給し(【0013】)、
制御装置102は、充電装置104の動作と、通信装置108の動作と、電力変換装置112の動作と、空調装置116の動作とを制御し(【0014】)、
通信装置108は、充電設備300の通信装置308から充電設備300が有料の充電設備であることを示す情報を受信し(【0017】)、
制御装置102は、外部充電が完了するまでに充電設備300から充電設備300の利用が有料であることを示す情報を受信しない場合には、外部充電が完了した後において充電設備の電力を用いて空調装置116を作動させ(【0048】)、
制御装置102は、外部充電が完了するまでに充電設備300から当該情報を受信する場合には、外部充電が完了した後においてバッテリ106の電力を用いて空調装置116を作動させ(【0048】)、
充電設備300は、ユーザーインターフェース302と、制御装置304と、充電リレー306と、通信装置308とを含み(【0024】)、
制御装置304は、料金をユーザーインターフェース302の表示装置等を用いてユーザに通知する(【0040】)、
電動車両100。」

2 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7−46701号公報(以下、「引用文献6」という。)によれば、以下の(1)及び(2)が認められる。

(1)引用文献6の記載
引用文献6には、次の記載がある。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気自動車に搭載される空調装置(エアコンディショナ、以下エアコンと言う)に関する。」

イ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、バッテリの充電状態が悪くてもエアコンの事前運転を行いたい場合や、バッテリの充電状態が良好であっても事前運転を行いたくない場合がある。すなわち、近年では、米国におけるインフラストラクチャの整備がEPRI(Electric Power Research Institute )、SAE(Society of Automotive Engineering)を中心に行われており、現状では、緊急充電用のスロー充電と夜間充電用のノーマル充電の2種類の交流充電が想定されている。緊急充電用のスロー充電は、例えば道路近傍に配設された交流100V、10〜15Aの電源装置を用いて充電を行うことにより、電気自動車が道路上で立往生する等の事態を防止すべく想定されている充電形式であり、夜間充電用のノーマル充電は、家庭等に配設された交流200V、30A程度の電源装置により安価な夜間・深夜電力を用いて充電を行う形式である。従って、ノーマル充電のように比較的大きな充電電流を確保可能な状態では、現時点におけるバッテリの充電状態が良好でなくともエアコンの事前運転を行いつつ、バッテリを充電可能である。従って、このような場合にはエアコンの事前運転を行うことができれば好都合である。また、スロー充電中においては、現在のバッテリの充電状態が良好であっても、エアコンを作動させるとバッテリの放電が進むこととなるから、エアコンの事前運転を行うのは好ましくない。
【0007】本発明は、このような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、外部から供給される電力の仕様に応じてエアコンの事前作動を制御することにより、エアコンの事前運転を好適なタイミングで行い、これによりバッテリ1充電当りの走行可能距離を確保することを目的とする。」

ウ 「【0010】ここに、本発明においては、現在充電手段に供給されている電力の仕様が、空調手段を事前作動させつつバッテリを所定電流値で充電可能な仕様であるか否かが検出判定される。例えば、現在充電手段に供給されている電圧値が検出され、その結果に基づき、空調手段の事前作動可否が判定される。この判定の結果、充電可能な仕様でないとされた場合には、事前作動禁止手段により、空調手段の事前作動が禁止される。従って、本発明においては、外部から充電手段に供給される電力の仕様に応じて空調手段の事前作動可否が制御されるため、バッテリの充電電流を確保しつつ、適切なタイミングで空調手段を事前作動させ1充電当り走行可能距離を延長することが可能となる。」

エ 「【0013】この図に示される電気自動車は、図示しないモータの駆動源としてバッテリ10を備えている。バッテリ10は、ジャンクションボックス12を介して車載充電器14に接続されている。車載充電器14は、充電コネクタ16を接続することによって図示しない車両外部の電源と接続される。この図の場合、外部から交流100V又は200Vの交流電力が、充電コネクタ16を介して車載充電器14に供給される。車載充電器14は、充電コネクタ16を介して供給される交流電力を所定値の直流電流に変換し、これをジャンクションボックス12を介してバッテリ10に供給する。ジャンクションボックス12においてエアコン18に対する電源供給回路が形成されておらず又はエアコン18が作動していない場合には、バッテリ10に対し車載充電器14の出力電流がそのまま供給されることとなるため、バッテリ10の充電は好適に実行される。なお、ジャンクションボックス12は、車両に搭載される各種電気機器間の接続を切り換えるための装置であり、通常は複数のリレー及びその制御手段等によって構成される。この図では、本実施例の説明に必要な部分、すなわちバッテリ10、車載充電器14及びエアコン18の接続に関連する部分についてのみ図示されている。
【0014】車載充電器14は、電力変換部20及び充電制御部22を有している。電力変換部20は、充電コネクタ16を介して外部から供給される交流電力をバッテリ10の充電電流に変換する回路である。充電制御部22は、電力変換部20への入力電圧を電圧センサ24によって検出し、また、図示しないセンサによってバッテリ10の電圧等も監視しながら、電力変換部20の動作を制御する手段である。この充電制御部22により、バッテリ10への充電電流が所定値に制御される。また、充電制御部22は、本実施例の特徴に係る作動許可/禁止指令をエアコン18に対して与える。」

オ 「【0016】図2には、この実施例における充電制御部22の動作の流れが示されている。充電制御部22は、充電コネクタ16が接続され外部から交流200V又は100Vの電力が供給されるまで待つ(100,102)。充電コネクタ16が接続され夜間充電用の交流200Vが電力変換部20に入力された場合(100)、充電制御部22は、エアコン18に対してエアコン作動許可指令を発するとともに(104)、後述する200V入力時充電制御を実行する(106)。また、充電制御部22は、充電コネクタ16を介し緊急充電用の交流100Vが入力された場合(102)、エアコン18に対しエアコン作動禁止指令を発し(108)、後述する100V入力時充電制御を実行する(110)。」

カ 図1

図1及び【0014】の記載によれば、電気自動車は、バッテリ10、車載充電器14、車両側の充電コネクタ16及びエアコン18を備えると認められる。

(2)文献6発明の認定
前記(1)の記載によれば、引用文献6には、次の発明(以下、「文献6発明」という。)が記載されていると認められる。

「電気自動車に備わる車載充電器14であって(前記(1)カ)、
電気自動車は、バッテリ10、車両側の充電コネクタ16及びエアコン18を備え(前記(1)カ)、
車載充電器14は、充電制御部22を有し(【0014】)、
充電制御部22により、バッテリ10への充電電流が所定値に制御され(【0014】)、
充電制御部22は、作動許可/禁止指令をエアコン18に対して与え(【0014】)、
充電制御部22は、充電コネクタ16が接続され外部から交流200V又は100Vの電力が供給されるまで待ち、充電コネクタ16が接続され夜間充電用の交流200Vが電力変換部20に入力された場合、充電制御部22は、エアコン18に対してエアコン作動許可指令を発し、充電制御部22は、充電コネクタ16を介し緊急充電用の交流100Vが入力された場合、エアコン18に対しエアコン作動禁止指令を発し(【0016】)、
交流200Vによる充電は、家庭等に配設された交流200V、30A程度の電源装置により安価な夜間・深夜電力を用いて充電を行う夜間充電用のノーマル充電であり(【0006】)、
交流100Vによる充電は、例えば道路近傍に配設された交流100V、10〜15Aの電源装置を用いて充電を行うことにより、電気自動車が道路上で立往生する等の事態を防止すべく想定されている緊急充電用のスロー充電である(【0006】)、
車載充電器14。」

第6 対比・判断
令和4年7月22日の前置報告書にて、本件補正後の出願について拒絶査定の理由は解消された旨、及び、文献6発明に基づく進歩性欠如の拒絶理由が新たに発見された旨が報告されたので、これに鑑み、先ず、文献6発明に基づく本願発明の進歩性について判断し(以下の2)、次いで、拒絶査定の理由となった文献1発明に基づく本願発明の進歩性について判断する(以下の3)。

1 前提
本件補正後において独立請求項として記載された請求項1、3及び6を、後の参照の便宜のため、以下のように分説する。

【請求項1】
1A 直流電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置であって、
1B1 前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記直流電力用充電口に接続されているときに、ユーザからの要求に応じて所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
1B2 前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
1C 前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
1D 前記設備情報は、前記給電設備の供給電力の大きさを含み、
1E 前記判断部は、前記給電設備の供給電力の大きさが所定の大きさ以下である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される、
1F 車載制御装置。

【請求項3】
3A 直流電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置であって、
3B1 前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記直流電力用充電口に接続されているときに、ユーザからの要求に応じて所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
3B2 前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
3C 前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
3D 前記設備情報は、前記給電設備が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含み、
3E 前記判断部は、前記給電設備が非公共の設備である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される、
3F 車載制御装置。

【請求項6】
6A 直流電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置を含む充電システムであって、
6B 前記車載制御装置は、
6B1 前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記直流電力用充電口に接続されているときに、ユーザからの要求に応じて所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
6B2 前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
6C 前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
6D 前記車載制御装置は、所定の送信条件が成立する場合に所定の信号を前記給電設備へ送信するように構成され、
6E 前記充電システムは、前記補機駆動モードに対応している給電設備をさらに含み、
6F 前記補機駆動モードに対応している給電設備は、所定の情報を報知する第2報知装置を備え、前記車載制御装置から前記所定の信号を受信すると、前記補機駆動モードが許可されていることを前記第2報知装置に報知させるように構成される、
6G 充電システム。

2 文献6発明に基づく本願発明の進歩性の有無
文献6発明に基づく本願発明の進歩性の有無を判断するにあたり、まず、独立請求項に係る本願発明1、3及び6について判断し(以下の(1)〜(6))、次いで、本願発明2、4、5、7及び8について判断する(以下の(7))。

(1)本願発明1と文献6発明との対比
本願発明1と文献6発明とを対比すると、以下のア〜クのとおりである。

ア 発明特定事項1Aについて
(ア)文献6発明の「電気自動車」は、本願発明1の「車両」に相当する。

(イ)文献6発明の「車両側の充電コネクタ16」は、明らかに電力用充電口であるが、「外部から交流200V又は100Vの電力が供給される」ものであるから、交流電力用のものである。
したがって、本願発明1の「直流電力用充電口」と文献6発明の「車両側の充電コネクタ16」とは、「電力用充電口」である点で共通し、電力用充電口が直流用であるか交流用であるかの点で相違する。

(ウ)本願明細書には「補機類には、空調装置…(中略)…が含まれてもよい。」(【0018】)と記載されているから、空調装置すなわちエアコンは補機類の一種である。よって、文献6発明の「エアコン18」は、本願発明1の「補機類」に相当する。
そして、文献6発明の「電気自動車」は「車両側の充電コネクタ16」及び「エアコン18」を備えるから、文献6発明の「電気自動車」と本願発明1の「車両」とは、「電力用充電口及び補機類を備える車両」である点で共通する。

(エ)文献6発明の「車載充電器14」内の「充電制御部22」は、「バッテリ10への充電電流が所定値に」なるように制御するものであり、かつ、「作動許可/禁止指令をエアコン18に対して与え」るものであって、「バッテリ10」及び「エアコン18」は「電気自動車」の一部をなすから、「充電制御部22」を有する「車載充電器14」は、車両の制御を行う装置といえる。

(オ)前記(ア)〜(エ)によれば、本願発明1の「車載制御装置」と文献6発明の「車載充電器14」とは、「電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置」である点で共通する。

イ 発明特定事項1B1について
(ア)文献6発明の、交流200Vの電力を供給するための「ノーマル充電」用の「電源装置」、及び、交流100Vの電力を供給するための「スロー充電」用の「電源装置」は、本願発明1の「給電設備」に相当する。
そして、文献6発明の両電源装置は、外部側(図1の左側)の充電コネクタ16と接続する充電ケーブルを当然に備えると解される。
文献6発明において「充電コネクタ16が接続」された状態は、外部側(図1の左側)の充電コネクタ16と車両側の充電コネクタ16が接続された状態であると認められる。
そうすると、文献6発明において「充電コネクタ16が接続され外部から交流200V又は100Vの電力が供給される」状態は、前記電源装置が充電ケーブルを介して車両側の充電コネクタ16と接続された状態であるといえる。
以上によれば、本願発明1と文献6発明とは、「前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記電力用充電口に接続されているとき」の動作を有する点で共通する。

(イ)文献6発明の「充電制御部22」は、「充電コネクタ16が接続され夜間充電用の交流200Vが電力変換部20に入力された場合、充電制御部22は、エアコン18に対してエアコン作動許可指令を発し、充電制御部22は、充電コネクタ16を介し緊急充電用の交流100Vが入力された場合、エアコン18に対しエアコン作動禁止指令を発する」ものであるから、前記(ア)の状態のときに、「エアコン作動許可指令を発」するか「エアコン作動禁止指令を発する」かを判断しているといえるので、本願発明1の「判断部」に対応する。
文献6発明で「エアコン作動許可指令を発」した状態は、エアコン18を駆動するモードを許可した状態といえ、「エアコン作動禁止指令を発し」た状態は、エアコン18を駆動するモードを許可しない状態といえる。
そうすると、本願発明1と文献6発明とは、「前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記電力用充電口に接続されているときに、所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部」を備える点で共通するが、所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードが、ユーザからの要求に応じたものであるか否かにおいて、相違する。

ウ 発明特定事項1B2について
文献6発明の「充電制御部22」は、「夜間充電用の交流200Vが電力変換部20に入力された場合」か「緊急充電用の交流100Vが入力された場合」かによって動作を変えているから、入力された電力が交流200Vであるか、交流100Vであるかという情報を取得しており、該情報を取得する情報取得部を当然に備えていると認められる。ここで、前記情報は、電源装置すなわち給電設備に関する設備情報に他ならない。
よって、本願発明1と文献6発明とは、「前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、を備え」る点で一致する。

エ 発明特定事項1Cについて
前記イのとおり、文献6発明の「充電制御部22」は、「充電コネクタ16が接続され夜間充電用の交流200Vが電力変換部20に入力された場合」に「エアコン作動許可指令を発」してエアコン18を駆動するモードを許可し、「充電コネクタ16を介し緊急充電用の交流100Vが入力された場合」に「エアコン作動禁止指令を発し」てエアコン18を駆動するモードを許可しないものである。
そして、前記ウも考慮すると、文献6発明の「充電制御部22」は、入力された電力が交流200Vであるか交流100Vであるかを示す設備情報を用いて、外部の給電設備がエアコン18を駆動するモードに対応しているか否かを判断し、該モードを許可するか許可しないかを決定していると認められる。
よって、本願発明1と文献6発明とは、「前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず」という動作をする点で一致する。

オ 発明特定事項1Dについて
文献6発明において、入力された電力が交流200Vであるか交流100Vであるかという情報は、「交流200V、30A程度の電源装置」による「ノーマル充電」であるか、「交流100V、10〜15Aの電源装置」による「スロー充電」であるかを判別するための情報であり、ノーマル充電の電力がスロー充電の電力よりも大きいことは明らかである。
そうすると、文献6発明において、入力された電力が交流200Vであるか交流100Vであるかという情報は、電源装置の供給電力の大きさを示すものである。
よって、本願発明1と文献6発明とは、「前記設備情報は、前記給電設備の供給電力の大きさを含」む点で一致する。

カ 発明特定事項1Eについて
文献6発明は、「夜間充電用の交流200Vが電力変換部20に入力された場合」にエアコン18を駆動するモードを許可し、「緊急充電用の交流100Vが入力された場合」にエアコン18を駆動するモードを許可しないのであるから、交流200V、30A、すなわち、6kWの電力と、交流100V、10〜15A、すなわち、1kW〜1.5kWの電力との間の任意の閾値を用いて、電源装置の供給電力の大きさが該閾値以上である場合に、該電源装置がエアコン18を駆動するモードに対応していると判断するように構成されていると認められる。
よって、本願発明1と文献6発明とは、「前記判断部は、前記給電設備の供給電力の大きさと所定の大きさとの比較によって、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される」点で共通する。

キ 発明特定事項1Fについて
前記ア(エ)のとおり、文献6発明の「車載充電器14」は、車両の制御を行う装置であるから、「車載制御装置」であるといえる。

ク 一致点及び相違点
前記ア〜キによれば、本願発明1と文献6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。

〈一致点〉
「電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置であって、
前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記電力用充電口に接続されているときに、所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と
前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え
前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
前記設備情報は、前記給電設備の供給電力の大きさを含み、
前記判断部は、前記給電設備の供給電力の大きさと所定の大きさとの比較によって、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される、車載制御装置。」である点。

〈相違点1〉
本願発明1の電力用充電口は「直流」用であるのに対し、文献6発明の充電コネクタ16は、「交流」用である点。

〈相違点2〉
本願発明1の「補機駆動モード」は「ユーザからの要求に応じて」のものであるのに対し、文献6発明のエアコン18を駆動するモードは、ユーザからの要求に応じたものであるか否かが不明な点。

〈相違点3〉
本願発明1の「判断部」は供給電力の大きさが所定の大きさ「以下である場合に」給電設備が補機駆動モードに対応していると判断するのに対し、文献6発明の「充電制御部22」は供給電力の大きさが閾値「以上である場合に」電源装置がエアコン18を駆動するモードに対応していると判断する点。

(2)本願発明1と文献6発明との相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
引用文献6には、発明が解決しようとする課題に関して、「ノーマル充電のように比較的大きな充電電流を確保可能な状態では、現時点におけるバッテリの充電状態が良好でなくともエアコンの事前運転を行いつつ、バッテリを充電可能である。従って、このような場合にはエアコンの事前運転を行うことができれば好都合である。また、スロー充電中においては、現在のバッテリの充電状態が良好であっても、エアコンを作動させるとバッテリの放電が進むこととなるから、エアコンの事前運転を行うのは好ましくない。」(【0006】)との記載がある。
前記記載によれば、文献6発明において、比較的小さな充電電流しか確保できないような交流100Vのスロー充電用の電源設備からの給電を受けているときに、エアコンの事前運転を行えるように、エアコン18を駆動するモードを許可することには、阻害要因が存在する。
加えて、本願発明1の発明特定事項1Eのように、「前記給電設備の供給電力の大きさが所定の大きさ以下である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断する」ことを記載又は示唆する文献は存在しない。
以上によれば、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は文献6発明から容易に想到し得るものではない。

(3)本願発明3と文献6発明との対比
本願発明3と文献6発明とを対比すると、以下のア〜エのとおりである。

ア 発明特定事項3A〜3C及び3Fについて
本願発明3の発明特定事項3A〜3C及び3Fは、それぞれ本願発明1の発明特定事項1A〜1C及び1Fと同一であるので、発明特定事項3A〜3C及び3Fについての対比は、前記(1)ア〜(1)エ及び(1)キのとおりである。

イ 発明特定事項3Dについて
文献6発明において、交流200Vのノーマル充電用の電源装置は「家庭等に配設された」ものであり、交流100Vのスロー充電用の電源装置は「例えば道路近傍に配設された」ものであるが、これらは例示でしかなく、交流200Vの電源装置が必ず家庭に配設されるものではなく、交流100Vの電源装置が必ず道路近傍に配設されるものでもない。
さらに、文献6発明は、エアコンを作動させても充電できるか、エアコンを作動させたらバッテリの放電が進むかを、エアコンの作動許可の判断基準としているのであって(【0006】)、電源装置が公共に属するもの(道路近傍)か、公共に属しないもの(家庭)かを判断基準とするものではない。
以上によれば、文献6発明において、入力された電力が交流200Vであるか交流100Vであるかという情報は、電圧ひいては電力又は電流を示す情報でしかなく、電源装置が公共/非公共のいずれの設備であるかを示すものではない。
よって、本願発明3と文献6発明とは、「前記設備情報は、前記給電設備が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含」むか否かの点で相違する。

ウ 発明特定事項3Eについて
前記イのとおり、文献6発明には給電設備が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報が存在しないから、発明特定事項3Eに対応する構成も持ち得ない。

エ 一致点及び相違点
前記ア〜ウによれば、本願発明3と文献6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。

〈一致点〉
「電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置であって、
前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記電力用充電口に接続されているときに、所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と
前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え
前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可しない、
車載制御装置。」である点。

〈相違点1〉
本願発明3の電力用充電口は「直流」用であるのに対し、文献6発明の充電コネクタ16は、「交流」用である点。

〈相違点2〉
本願発明3の「補機駆動モード」は「ユーザからの要求に応じて」のものであるのに対し、文献6発明のエアコン18を駆動するモードは、ユーザからの要求に応じたものであるか否かが不明な点。

〈相違点4〉
本願発明3の「設備情報」は、「前記給電設備が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含」むのに対し、文献6発明の入力された電力が交流200Vか交流100Vかを示す情報は、公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含むものではない点。
これに付随して、本願発明3では、「前記判断部は、前記給電設備が非公共の設備である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される」のに対し、文献6発明の「充電制御部22」は、そのように構成されていない点。

(4)本願発明3と文献6発明との相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
文献6発明は、エアコンを作動させても充電できるか、エアコンを作動させたらバッテリの放電が進むかを、エアコンの作動許可の判断基準としているのである(【0006】)から、エアコンの作動許可を与えるか否かを電源装置の供給電力によって決める必要があるのに対し、電源装置が公共に属するものか否かを前記許可を与えるか否かの判断基準として採用することは不合理である。
そして、本願発明3の発明特定事項3Eのように、「前記給電設備が非公共の設備である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断する」ことを記載又は示唆する文献は存在しない。
以上によれば、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明3は文献6発明から容易に想到し得るものではない。

(5)本願発明6と文献6発明との対比
本願発明6と文献6発明とを対比すると、以下のア〜キのとおりである。

ア 発明特定事項6Aについて
文献6発明の「車載充電器14」は、ノーマル充電用の「電源装置」及びスロー充電用の「電源装置」と共に用いられてバッテリ10を充電するシステムを成す。
発明特定事項6Aの「車載制御装置」については、前記(1)アと同様である。
よって、本願発明6と文献6発明とは、「電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置を含む充電システム」である点で共通する。

イ 発明特定事項6Bについて
「車載制御装置」(分説B)について特定する発明特定事項6B1及び6B2は、それぞれ、発明特定事項1B1及び1B2と同一であるから、前記(1)イ及び(1)ウのとおりである。
よって、本願発明6と文献6発明とは、「前記車載制御装置は、前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記電力用充電口に接続されているときに、所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、を備え」る点で共通する。

ウ 発明特定事項6Cについて
発明特定事項6Cは発明特定事項1Cと同一であるから、前記(1)エのとおりである。
よって、本願発明6と文献6発明とは、「前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず」という動作をする点で一致する。

エ 発明特定事項6D及び6Fについて
文献6発明の「車載充電器14」は、電源装置に対して何ら信号を送信していない。
したがって、文献6発明の電源装置は、所定の信号を受信することを前提とした発明特定事項6Fに対応する構成も備えていない。
よって、本願発明6と文献6発明とは、発明特定事項6D及び6Fを備えるか否かの点で相違する。

オ 発明特定事項6Eについて
文献6発明のノーマル充電用の電源装置は、エアコン18を駆動するモードに対応した給電設備である。
よって、本願発明6と文献6発明とは、「前記充電システムは、前記補機駆動モードに対応している給電設備をさらに含」む点で一致する。

カ 発明特定事項6Gについて
前記アのとおりであるから、文献6発明の「車載充電器14」及び電源装置は、「充電システム」であるといえる。

キ 一致点及び相違点
前記ア〜カによれば、本願発明6と文献6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。

〈一致点〉
「電力用充電口及び補機類を備える車両を制御する車載制御装置を含む充電システムであって、
前記車載制御装置は、
前記車両外部の給電設備が充電ケーブルを介して前記電力用充電口に接続されているときに、所定の補機類を駆動可能な状態にする補機駆動モードを許可するか否かを判断する判断部と、
前記給電設備に関する所定の設備情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記判断部は、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断される場合には前記補機駆動モードを許可し、前記設備情報を用いて前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していないと判断される場合には前記補機駆動モードを許可せず、
前記充電システムは、前記補機駆動モードに対応している給電設備をさらに含む、
充電システム。」である点。

〈相違点1〉
本願発明6の電力用充電口は「直流」用であるのに対し、文献6発明の充電コネクタ16は、「交流」用である点。

〈相違点2〉
本願発明6の「補機駆動モード」は「ユーザからの要求に応じて」のものであるのに対し、文献6発明のエアコン18を駆動するモードは、ユーザからの要求に応じたものであるか否かが不明な点。

〈相違点5〉
本願発明6の「車載制御装置」は「所定の送信条件が成立する場合に所定の信号を前記給電設備へ送信するように構成され、」ており、本願発明6の「補機駆動モードに対応している給電設備」は「所定の情報を報知する第2報知装置を備え、前記車載制御装置から前記所定の信号を受信すると、前記補機駆動モードが許可されていることを前記第2報知装置に報知させるように構成される」のに対し、
文献6発明の「車載充電器14」は電源装置に対して信号を送信せず、文献6発明のノーマル充電用の電源装置は、所定の情報を報知する第2報知装置を備えず、車載充電器14から所定の信号を受信せず、補機駆動モードが許可されていることを第2報知装置に報知させるよう構成されていない点。

(6)本願発明6と文献6発明との相違点についての判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
発明特定事項6D及び6Fのように、所定の送信条件が成立する場合に車載制御装置から所定の信号を給電設備へ送信し、給電設備が前記所定の信号を受信すると補機駆動モードが許可されていることを給電設備に備わる報知装置に報知させることを記載又は示唆する文献は存在しない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本願発明6は文献6発明から容易に想到し得るものではない。

(7)本願発明2、4、5、7及び8について
本願の請求項2は請求項1を引用し、請求項4は請求項1〜3のいずれかを引用し、請求項5は請求項1〜4のいずれかを引用し、請求項7は請求項6を引用し、請求項8は請求項1〜5のいずれかを引用している。
そして、請求項2、4、5、7及び8は、発明特定事項1A〜1F、3A〜3F及び6A〜6Gに、さらに別の発明特定事項を付加するように記載されている。
したがって、本願発明2、4、5、7及び8と文献6発明とを対比すると、少なくとも、前記の相違点3、相違点4又は相違点5のいずれかが相違点となる。
そうすると、前記(2)、(4)及び(6)と同様の理由により、本願発明2、4、5、7及び8は、文献6発明から容易に想到し得るものではない。

(8)小括
前記(1)〜(7)によれば、本願発明はいずれも、当業者が文献6発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。

3 文献1発明に基づく本願発明の進歩性の有無
文献1発明に基づく本願発明の進歩性の有無を判断するにあたり、まず、独立請求項に係る本願発明1、3及び6について判断し(以下の(1)〜(3))、次いで、本願発明2、4、5、7及び8について判断する(以下の(4))。

(1)本願発明1の文献1発明に基づく進歩性の判断
本願発明1と文献1発明とを対比すると、
文献1発明の「電動車両100」、「制御装置102」、「空調装置116」、「充電設備300」及び「充電ケーブル400」は、それぞれ、
本願発明1の「車両」、「車載制御装置」、「補機類」、「給電設備」及び「充電ケーブル」に相当する。
また、本願発明1の「直流電力用充電口」と文献1発明の「インレット110」とは、「電力用充電口」である点で共通する。
そして、本願発明1の「設備情報」と文献1発明の「有料の充電設備であることを示す情報」とは、「給電設備に関する所定の設備情報」である点で共通する。
そうすると、本願発明1と文献1発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明1は、「設備情報」が「給電設備の供給電力の大きさを含み」、「判断部」が「前記給電設備の供給電力の大きさが所定の大きさ以下である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される」のに対し、
文献1発明は、「有料の充電設備であることを示す情報」が充電設備300の供給電力の大きさを含むものではなく、「制御装置102」が外部充電中の空調装置116の作動を許可するか否かを判断する基準が、充電設備300の利用が無料であるか否かである点。

前記相違点について検討すると、給電設備の供給電力の大きさが所定の大きさ以下である場合に、給電設備が補機駆動モードに対応していると判断することは、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。
よって、その他の相違点の有無に関わらず、本願発明1は文献1発明から容易に想到し得るものではない。

(2)本願発明3の文献1発明に基づく進歩性の判断
本願発明3と文献1発明とを対比すると、
文献1発明の「電動車両100」、「制御装置102」、「空調装置116」、「充電設備300」及び「充電ケーブル400」は、それぞれ、
本願発明3の「車両」、「車載制御装置」、「補機類」、「給電設備」及び「充電ケーブル」に相当する。
また、本願発明3の「直流電力用充電口」と文献1発明の「インレット110」とは、「電力用充電口」である点で共通する。
そして、本願発明3の「設備情報」と文献1発明の「有料の充電設備であることを示す情報」とは、「給電設備に関する所定の設備情報」である点で共通する。
そうすると、本願発明3と文献1発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明3は、「設備情報」が「給電設備が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含み」、「判断部」が「前記給電設備が非公共の設備である場合に、前記給電設備が前記補機駆動モードに対応していると判断するように構成される」のに対し、
文献1発明は、「有料の充電設備であることを示す情報」が充電設備300が公共/非公共のいずれの設備であるかを示す情報を含むものではなく、「制御装置102」が外部充電中の空調装置116の作動を許可するか否かを判断する基準が、充電設備300の利用が無料であるか否かである点。

前記相違点について検討すると、給電設備が非公共の設備である場合に、給電設備が補機駆動モードに対応していると判断することは、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。
よって、その他の相違点の有無に関わらず、本願発明3は文献1発明から容易に想到し得るものではない。

(3)本願発明6の文献1発明に基づく進歩性の判断
本願発明6と文献1発明とを対比すると、
文献1発明の「電動車両100」、「制御装置102」、「空調装置116」、「充電設備300」及び「充電ケーブル400」は、それぞれ、
本願発明6の「車両」、「車載制御装置」、「補機類」、「給電設備」及び「充電ケーブル」に相当する。
文献1発明の「制御装置102」及び「充電設備300」からなるシステムは、本願発明6の「充電システム」に相当する。
また、本願発明6の「設備情報」と文献1発明の「有料の充電設備であることを示す情報」とは、「給電設備に関する所定の設備情報」である点で一致する。
そして、本願発明6の「直流電力用充電口」と文献1発明の「インレット110」とは、「電力用充電口」である点で共通する。
加えて、本願発明6の「第2報知装置」と文献1発明の「ユーザインターフェース302の表示装置等」とは、「所定の情報を報知する第2報知装置」である点で共通する。
そうすると、本願発明6と文献1発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明6の「給電設備」は「前記所定の信号を受信すると、前記補機駆動モードが許可されていることを前記第2報知装置に報知させるように構成される」のに対し、文献1発明の「充電設備300」は、料金をユーザーインターフェース302の表示装置等を用いて通知する点。

前記相違点について検討すると、補機駆動モードが許可されていることを給電設備の報知装置に報知させることは、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。
よって、その他の相違点の有無に関わらず、本願発明6は文献1発明から容易に想到し得るものではない。

(4)本願発明2、4、5、7及び8について
本願発明2、4、5、7及び8は、本願発明1、3及び6のいずれかに対してさらに別の発明特定事項を付加したものであるから、本願発明2、4、5、7及び8と文献1発明とを対比すると、少なくとも、前記(1)〜(3)に示した相違点のいずれかが相違点となる。
そうすると、前記(1)〜(3)と同様の理由により、本願発明2、4、5、7及び8は、文献1発明から容易に想到し得るものではない。

(5)小括
前記(1)〜(4)によれば、本願発明はいずれも、当業者が文献1発明に基づいて容易に発明をすることができたものとは認められない。

第7 むすび
前記第6、3のとおり、本願発明1〜8は、当業者が文献1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
そして、前記第6、2のとおり、本願発明1〜8は、当業者が文献6発明に基づいて容易に発明をすることができたものではなく、また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-03-30 
出願番号 P2018-184546
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02J)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 猪瀬 隆広
特許庁審判官 衣鳩 文彦
丸山 高政
発明の名称 車載制御装置及び充電システム  
代理人 弁理士法人深見特許事務所  

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