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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H02M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02M
管理番号 1396135
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-15 
確定日 2023-04-11 
事件の表示 特願2017− 63255「電力変換装置及びそれを備えた熱源ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月25日出願公開、特開2018−166374、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年3月28日の出願であって、令和3年2月22日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年4月27日に意見書が提出され、令和3年7月30日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年10月11日に意見書と手続補正書が提出され、令和4年3月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、令和4年12月16日付けで拒絶理由通知(当審拒絶理由通知)がされ、令和5年2月10日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和4年3月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1−2
・引用文献等1、5−7又は1−2、5−7

・請求項3
・引用文献等1、3、5−7又は1−3、5−7

・請求項4
・引用文献等1−2

・請求項5
・引用文献等1、4又は引用文献等1−2、4

・請求項6
・引用文献等1、4又は引用文献等1−2、4

・請求項7
・引用文献等1、3−4又は引用文献等1−4

<引用文献等一覧>
1.引用文献1 特開平11−75363号公報
2.引用文献2 特開2016−38180号公報
3.引用文献3 特開2012−2795号公報
4.引用文献4 特開平5−18561号公報
5.引用文献5 実願昭60−8040号(実開昭61−126792号)のマイクロフィルム
6.引用文献6 特開2005−253282号公報
7.引用文献7 特開平06−315274号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年12月16日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 当審拒絶理由1(進歩性
本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献Aないし引用文献Dに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

A.引用文献A 特開平11−75363号公報(原査定時の引用文献1)
B.引用文献B 特開2016−38180号公報(原査定時の引用文献2)
C.引用文献C 国際公開第2016/006106号
D.引用文献D 特開2012−2795号公報(原査定時の引用文献3)

2 当審拒絶理由2(サポート要件)
請求項1、3、4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、令和5年2月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1ないし本願発明3は以下のとおりの発明である。

(本願発明1)
「筐体(15)と該筐体(15)内に収納されたインバータ装置(20)とを有する電力変換装置(10)を備えた熱源ユニットであって、
前記インバータ装置(20)は、交流電源(11)の交流電力を直流電力に整流するコンバータ回路(21)と、該コンバータ回路(21)の出力電力を所定の周波数の交流電力に変換するインバータ回路(24)とを有し、
前記交流電源(11)と前記コンバータ回路(21)とを繋ぐ電源ライン(12)に接続されたノイズフィルタ回路(30)と、
前記筐体(15)内に収納され、前記電源ライン(12)における前記ノイズフィルタ回路(30)と前記コンバータ回路(21)との間に並列接続されて高調波電流を低減するアクティブフィルタ装置(40)とを備え、
前記筐体(15)の外部には、空冷ファン(55)が配設され、
前記筐体(15)内における前記空冷ファン(55)の下方には、前記インバータ装置(20)が配設され、
前記筐体(15)内における前記インバータ装置(20)の下方には、前記ノイズフィルタ回路(30)と前記アクティブフィルタ装置(40)とが並列に配設されていることを特徴とする熱源ユニット。」

(本願発明2)
「請求項1において、
前記アクティブフィルタ装置(40)は、
複数のスイッチング素子を有するスイッチング回路(41)と、
前記スイッチング回路(41)の出力電力を平滑化するコンデンサ(42)と、
前記スイッチング回路(41)のスイッチングに伴うノイズを除去するキャリアフィルタ(43)と、
前記スイッチング回路(41)と前記電源ライン(12)とを連系するための連系リアクトル(44)と、
前記スイッチング回路(41)のスイッチングを制御する制御回路(45)とを備え、前記スイッチング回路(41)、前記コンデンサ(42)、前記キャリアフィルタ(43)、前記連系リアクトル(44)、及び前記制御回路(45)は、同一の基板上に実装されていることを特徴とする熱源ユニット。」

(本願発明3)
「請求項1又は2において、
前記電源ライン(12)を流れる電流を検出するカレントトランス(35)を備え、
前記カレントトランス(35)は、分割型のコアを有することを特徴とする熱源ユニット。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1には、関連する図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審において付加したものである。以下、同じ。)。

「【0034】
【発明の実施の形態】引続き、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
発明の実施の形態1.図1に請求項1、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、18、19、22、23、24の発明に対応した電源高調波抑制装置の構成図を示す。図において、31は第1の整流回路(例えばダイオード整流回路)、32は直流リアクトル、8は第1の直流平滑用コンデンサ(例えばインバータ用電解コンデンサ)、9はインバータ用トランジスタモジュール、14は第1の制御手段であり、以上でインバータ主機器Aを構成する。このインバータ主機器Aは3相交流電源1と誘導電動機12との間に配線接続され、第1の制御手段14により主に制御される。3は第1の交流リアクトル、7はコンバータ用トランジスタモジュール、33は第2の直流平滑用コンデンサ(例えばコンバータ用電解コンデンサ)、13は第2の制御手段であり、以上で高調波抑制回路Bを構成する。この高調波抑制回路Bは第2の制御手段13により主に制御される。
【0035】
そして、2は高周波雑音減衰手段(例えばノイズフィルタ)、5は主機器入力R相電流センサ、6は主機器入力S相電流センサ、36は抑制機器入力R相電流センサ、37は抑制機器入力S相電流センサ、34は電源開閉手段、35は抵抗器、53は放電用抵抗、54は第2の開閉手段、52はリモコンである。上記の第1の制御手段14には、インバータPWM信号20、指令送信手段44、状態受信手段45、高調波抑制回路異常判定手段46、制御切換手段47、運転手段48、異常表示手段49、高調波抑制回路異常確定手段50、異常リセット手段51などが含まれる。第2の制御手段13には、直流電圧検出手段17、主機器入力電流検出手段16、抑制機器入力電流検出手段38、自己異常判定手段39、異常通報手段40、状態送信手段41、指令受信手段42、応急運転手段43などが含まれる。コンバータ用トランジスタモジュール7には、第1の整流回路31と並列接続される第2の整流回路26、この第2の整流回路26と逆並列に接続される高速開閉手段27、コンバータPWM信号19などが含まれる。
【0036】
すなわち、請求項1対応の電源高調波抑制装置は、第1の整流回路31よりも3相交流電源1側のインバータ主機器Aに、高調波抑制回路Bが並列に分岐接続されている。このように構成されているので、インバータ主機器Aとは並列の機器(高調波抑制回路B)によって電源高調波の抑制対策がなされる。従って、対策機器であるインバータ主機器Aの容量を低減化できる。また、インバータ主機器A側は構成を変更する必要がない。
【0037】
そして、請求項3対応の実施形態装置は、第1の整流回路31と第1の直流平滑用コンデンサ8との間に直流リアクトル32を設けたものである。このように、高調波抑制回路Bを汎用のインバータ主機器Aに並列に接続するにあたりインバータ主機器A側に直流リアクトル32を設けたことにより、元々の電源高調波の発生量を簡易に抑制し、高調波抑制回路Bでの高調波抑制負荷を減ずることができるので、高調波抑制回路Bをさらに小型化できる。
【0038】
請求項4対応の実施形態装置では、電源投入後所定時間経過後に3相交流電源1からの全ての電源線23を同時に開閉する電源開閉手段34と、複数の電源線23について電源開閉手段34と並列に接続される抵抗器35とが、インバータ主機器Aにおける高調波抑制回路Bとの分岐接続部24よりも3相交流電源1側に設けられている。これらの電源開閉手段34と抵抗器35により、第1の直流平滑用コンデンサ8および第2の直流平滑用コンデンサ33の初期充電時の突入電流が同時に抑制されるようになっている。このように、電源投入時の直流平滑用コンデンサに対する突入電流を抑制するという同一の目的を持つ部品を、インバータ主機器Aと高調波対策機器(高調波抑制回路B)の双方に持たすのではなく共通化したことにより、同一機能の部品を複数持つ必要が無くなり、装置全体を小型化することができる。
【0039】
請求項5対応の実施形態装置は、インバータ主機器Aにおける高調波抑制回路Bとの分岐接続部24よりも3相交流電源1側に、高周波雑音減衰手段2(例えばノイズフィルタ)を備えている。このように、機器発生ノイズの減衰という同一の目的を持つ部品を、インバータ主機器Aと高調波抑制回路Bの双方に持たすのではなく共通化したことにより、同一機能の部品を複数持つ必要が無くなり装置全体の小型化を図ることができる。尚、このとき、高調波抑制回路Bに流れる電流がインバータ主機器A側に比して小さいため、高調波抑制回路B側の発生ノイズは低く抑えられており、高周波雑音減衰手段2としては、インバータ主機器A単独時に比して高調波抑制回路Bが追加されても大幅な能力の強化を必要としない。」

「【0053】
発明の実施の形態2.次に、請求項2および請求項6対応の実施形態装置の概略構造を図2に示す。また、空気調和機の冷媒回路は図3を参照する。各図において、Aはインバータ主機器、Bは高調波抑制回路であり、これらのインバータ主機器Aと高調波抑制回路Bとから図1に示した電源高調波抑制装置を構成する。61は圧縮機、62は4方弁、63は凝縮器、64は絞り装置、65は蒸発器、66は室外送風機、67は冷媒配管、68は室外機箱体、69は室外機箱体68内の送風路である。電源高調波抑制装置は、当該装置が適用される例えば空気調和装置の圧縮機61を駆動する誘導電動機12と3相交流電源1との間に接続されている。電源高調波抑制装置は一般に発熱部品を有しているが、ここでは空気調和装置の外郭をなす同一の室外機箱体68内に、発熱する電源高調波抑制装置が収納されている。このように構成したことにより、室外機の据え付けに際し電源高調波抑制装置の存在を過剰に意識する必要がない。従って、空気調和装置などの据付工事を簡易に実施することができる。特に、空気調和装置のように機器内部に送風機能を持ったものの場合、その送風路69上に発熱部品である電源高調波抑制装置を配置すれば、追加部品を用いることなく放熱を効率的に行うことができる。尚、蒸発器65へ送風する冷媒回路の送風路上に、インバータ主機器Aまたは高調波抑制回路Bの発熱部を配置した場合でも相応の効果を奏する。
【0054】
発明の実施の形態3.次に、請求項7対応の実施形態装置の概略冷媒回路を図3に示す。図に示した冷媒回路は実施の形態2で述べた通りであり、詳述は省略する。ここでは、インバータ主機器Aと高調波抑制回路Bからなる電源高調波抑制装置が、常に低温となる圧縮機1入口の冷媒配管67に直接接触させた状態で設けられている。このように構成したことにより、追加部品なしに、電源高調波抑制装置からの発熱を冷媒側に移行させて放熱することができ、電源高調波抑制装置の温度上昇を抑制することができる。殊に、空気調和装置の冷媒回路に適用した場合は、冷媒側に移行した熱量を暖房運転などで有効に活用できる。」

「【0060】
発明の実施の形態7.図7に請求項25、26、27、28、29の発明に対応した電源高調波抑制装置の構成図を示す。図において、1は3相交流電源、31は第1の整流回路、32は直流リアクトル、8は第1の直流平滑用コンデンサ、9はインバータ用トランジスタモジュール、14は第1の制御手段であり、以上でインバータ主機器Aを構成する。このインバータ主機器Aは3相交流電源1と誘導電動機12との間に配線接続されており、第1の制御手段14により主に制御される。3は第1の交流リアクトル、7はコンバータ用トランジスタモジュール、33は第2の直流平滑用コンデンサ、13は第2の制御手段であり、以上で高調波抑制回路Bを構成する。この高調波抑制回路Bは第2の制御手段13により主に制御される。また、5は主機器入力R相電流センサ、6は主機器入力S相電流センサ、36は抑制機器入力R相電流センサ、37は抑制機器入力S相電流センサである。
【0061】
上記の第1の制御手段14には、指令送信手段44、状態受信手段45、動作切換手段47、運転手段48、インバータPWM信号20などが含まれる。上記の第2の制御手段13には、直流電圧検出手段17、主機器入力電流検出手段16、抑制機器入力電流検出手段38、指令受信手段42、演算制御手段104、コンバータPWM信号19などが含まれる。コンバータ用トランジスタモジュール7には、第1の整流回路31と並列接続される第2の整流回路26、この第2の整流回路26と逆並列に接続される高速開閉手段27などが含まれる。また高調波抑制回路Bにおける分岐接続部24と第1の交流リアクトル3との間に第2の交流リアクトル102が設けられ、この第2の交流リアクトル102と第1の交流リアクトル3との間の相間コンデンサ101が設けられ、インバータ主機器Aにおける分岐接続部24よりも3相交流電源1寄りの電源線23に第3の交流リアクトル103が設けられており、これらで高周波フィルタ回路を構成している。ここで、第2の制御手段13は、第1の制御手段14内の指令送信手段44からの運転指令信号を指令受信手段42で受け取って所定の演算処理をした後、コンバータPWM信号19を出力してコンバータ用トランジスタモジュール7を作動させる。」

「【図1】


「【図2】



「【図3】



「【図7】



(2)引用発明
前記(1)の図1より、高調波抑制回路Bは、ノイズフィルタ2と第1の整流回路31との間の分岐接続部24から、インバータ主機器Aと並列に分岐接続されていることが読み取れる。
また、前記(1)の図1から、ノイズフィルタ2は、3相交流電源1と第1の整流回路31とを繋ぐ配線に接続されていることが読み取れる。
また、前記(1)の図2から、室外送風機66の下方には、インバータ主機器Aが配設されていることが読み取れる。
そうすると、前記(1)より、特に下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「空気調和装置の外郭をなす室外機箱体68内に、発熱する電源高調波抑制装置を収納した室外機であって(【0053】、図2)、
前記電源高調波抑制装置は、インバータ主機器Aと高調波抑制回路Bとノイズフィルタ2を備え(【0034】、【0039】、【0053】、図1、図2)、
前記インバータ主機器Aは、第1の整流回路31とインバータ用トランジスタモジュール9とを備え、3相交流電源1と誘導電動機12との間に配線接続され(【0034】、図1)、
前記ノイズフィルタ2は、3相交流電源1と第1の整流回路31とを繋ぐ配線に接続され(【0039】、図1)、
前記高調波抑制回路Bは、第2の制御手段13により制御され、ノイズフィルタ2と第1の整流回路31との間の分岐接続部24から、インバータ主機器Aと並列に分岐接続され(【0034】、【0036】、図1)、
室外送風機66の下方には、インバータ主機器Aが配設される、(【0053】、図2)、室外機。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0005】
しかしながら、従来の室外機では、ファンモータを駆動するファン駆動用インバータ、圧縮機に搭載されたモータに対して所望の電流を送る圧縮機駆動用インバータ、空気調和機のサイクル制御を行うサイクル制御回路などを格納する電気箱と、上述した高調波抑制装置を格納する電気箱とが別々に設けられているため(図6の電気箱81および電気箱82参照)、これらの電気箱81、82が全体として嵩高となってしまい、筐体内における通風経路を十分に確保することができず、結果としてファンモータの熱交換効率(運転効率)が悪くなる傾向にある。」

「【0013】
なお、上記フィルタおよび高調波抑制制御回路を備える装置を「高調波抑制装置」、上記圧縮機駆動用インバータおよび圧縮機駆動用インバータ制御回路を備える装置を「圧縮機駆動用インバータ装置」、上記ファン駆動用インバータおよびファン駆動用インバータ制御回路を備える装置を「ファン駆動用インバータ装置」、サイクル制御回路を備える装置を「サイクル制御装置」とも称する。
【0014】
以下、本発明の室外機の第1〜第3の実施形態について図1〜図4を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。なお、図1は、本発明の第1〜第3の実施形態に係る室外機の概略図であり、後述する筐体2、圧縮機3、熱交換器4およびファン5の構成は、上記各実施形態で同様であるため、第2および第3の実施形態の項での筐体2、圧縮機3、熱交換器4およびファン5の説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の室外機の一実施形態を説明するための概略図であって、(a)は正面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。また、図2は、本発明の第1の実施形態に係る室外機における電気箱を示す模式図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る室外機1は、筐体2と、圧縮機3と、熱交換器4と、ファン5と、電気箱61とを備えている。
【0016】
筐体2は、内部に圧縮機3、熱交換器4、ファン5および電気箱61などを収納する略直方体の箱である。筐体2は、概略的に、底板21と、側板22と、天板23とにより構成され、側板22は、さらに正面板221と、背面板222と、対向する一対の側面板223とにより構成されている。また、筐体2の底板21の角部には取付け足24が取り付けられている。
【0017】
圧縮機3は、冷媒を圧縮するものであり、筐体2の底板21上に配設されている。この圧縮機3は、当該圧縮機3の回転軸の回転速度が可変できるようにインバータ制御される。圧縮機3としては、例えば、レシプロ圧縮機、スクリュー圧縮機、スクロール圧縮機等が挙げられるが、本発明は、かかる例示にのみ限定されるものではない。」

「【0021】
図2に示すように、電気箱61は、モジュールとしてのフィルタ601、高調波抑制制御回路602、圧縮機駆動用インバータ603、圧縮機駆動用インバータ制御回路604、ファン駆動用インバータ605、ファン駆動用インバータ制御回路606、コンバータ607およびサイクル制御回路608を収納する単一の箱である。また、電気箱61には、上記モジュール以外に、ノイズフィルタ609、電流センサ610、平滑回路611等のモジュールが収納されている。この電気箱61は、図1に示すように、筐体2の鉛直方向略中央部であって正面板221の筐体2内側に取り付けられている。さらに、電気箱61の正面板221と反対側の表面には、上記モジュール等からの発熱を逃がす放熱フィン64が取り付けられている。
【0022】
第1の実施形態では、図2に示すように、フィルタ601および高調波抑制制御回路602が単一の基板A1に形成され、コンバータ607、圧縮機駆動用インバータ603、圧縮機駆動用インバータ制御回路604、ファン駆動用インバータ605およびファン駆動用インバータ制御回路606が単一の基板A2に形成されていると共に、サイクル制御回路608は、基板A3に形成されている。これらの基板は、ノイズフィルタ609の後段に基板A1および基板A3が並列に接続され、基板A1の後段に基板A2が接続されている。なお、上述した基板A1、基板A2および基板A3は、互いに異なる基板である。
【0023】
また、圧縮機駆動用インバータ制御回路604およびファン駆動用インバータ制御回路606が単一のマイコンa1で構成されている。
【0024】
フィルタ601は、入力電流(電源7から入力した交流電流)中の高調波を抑制するものである。高調波抑制制御回路602は、後述する電流センサ610により計測された電流を処理しフィルタ601を制御するものである。そのため、これらを備える高調波抑制装置は、圧縮機3等のインバータ制御に伴い発生する入力電流中の高調波を抑制し、電源の電流波形を正弦波に近づける。
【0025】
圧縮機駆動用インバータ603は、圧縮機3を駆動する電力を供給するものである。圧縮機駆動用インバータ制御回路604は、圧縮機駆動用インバータ603の出力を可変可能に制御するものである。そのため、これらを備える圧縮機駆動用インバータ装置は、圧縮機3の回転速度を可変し、圧縮能力を制御する。
【0026】
ファン駆動用インバータ605は、ファン5を駆動する電力を供給するものである。ファン駆動用インバータ制御回路606は、ファン駆動用インバータ605の出力を可変可能に制御するものである。そのため、これらを備えるファン駆動用インバータ制御装置は、ファンモータ51の回転速度を可変し、ファン5の空気供給能力を制御する。
【0027】
コンバータ607は、圧縮機駆動用インバータ603およびファン駆動用インバータ605に対し、フィルタ601の出力を整流した電流として供給するものである。
【0028】
サイクル制御回路608は、冷凍サイクルを制御するものである。
【0029】
また、ノイズフィルタ609は、3相交流商用電源等の電源7に含まれるノイズの抑制、および圧縮機駆動用インバータ603やファン駆動用インバータ605などから発生するノイズの抑制を行うものである。電流センサ610は、フィルタ601へ供給される電流を計測するものである。平滑回路611は、上述したコンバータ607と協働して整流された電流の中に含まれている脈流をより直流に近い状態に平滑化するものである。」

「【0032】
このように、第1の実施形態では、フィルタ601、高調波抑制制御回路602、圧縮機駆動用インバータ603、圧縮機駆動用インバータ制御回路604、ファン駆動用インバータ605、ファン駆動用インバータ制御回路606、コンバータ607およびサイクル制御回路608が単一の電気箱61に収納され、電気箱61が筐体2内に取り付けられているので、複数の電気箱を取り付ける場合に比べ、電気箱の共用化および電気箱間の配線の不要化に伴う部品点数の削減により電気箱61の容積を小さくすることができ、その結果、筐体2内における空気の通風経路を十分に確保し、熱交換器4での熱交換や放熱フィン64等による放熱を促進することができる。また、単一の電気箱61で構成されているので、電気箱間の配線が不要となった分、防水性に優れる。
【0033】
また、ファン5が底板21に対向する筐体2の上部に配設されているので、ファン5の駆動により室外機1の側方から取り込まれて熱交換器4等で熱交換した空気を、通風経路に沿って略鉛直方向に上昇させることができ、開口部23aから効率よく排出させて熱交換効率(運転効率)を向上させることができる。
【0034】
また、フィルタ601および高調波抑制制御回路602が単一の基板A1に形成されているので、電気箱61の厚さを薄くすることができ、通風経路をより確保することができると共に、コンバータ607、圧縮機駆動用インバータ603、圧縮機駆動用インバータ制御回路604、ファン駆動用インバータ605およびファン駆動用インバータ制御回路606が単一の基板A2に形成されているので、電気箱61の厚さをより薄くすることができ、通風経路をさらに十分に確保することができる。
【0035】
また、ノイズフィルタ609の後段側に高調波抑制装置、圧縮機駆動用インバータ装置、ファン駆動用インバータ装置等が接続されているので、ノイズフィルタ609を共用することができ、部品点数の削減等を図ることができる。」

「【0038】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る室外機11における電気箱62を示す模式図である。図3に示すように、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態とは基板の構成が異なっている。なお、第2の実施形態の電気箱62に収納されているフィルタ601、高調波抑制制御回路602、圧縮機駆動用インバータ603、圧縮機駆動用インバータ制御回路604、ファン駆動用インバータ605、ファン駆動用インバータ制御回路606、コンバータ607およびサイクル制御回路608については、これらを形成する基板の構成が第1の実施形態と異なっていること以外は第1の実施形態と同様であるため、同一部分については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。」

「【0043】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係る室外機111における電気箱63を示す模式図である。図4に示すように、第3の実施形態では、上述した第1および第2の実施形態とは基板の構成が異なっている。なお、第3の実施形態に係る電気箱63の収納されているフィルタ601、高調波抑制制御回路602、圧縮機駆動用インバータ603、圧縮機駆動用インバータ制御回路604、ファン駆動用インバータ605、ファン駆動用インバータ制御回路606、コンバータ607およびサイクル制御回路608については、これらを形成する基板の構成が第1および第2の実施形態と異なっていること以外は第1および第2の実施形態と同様であるため、同一部分については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】


「【図4】



3 引用文献3について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0030】
電流検出器40は、図4ないし図6に示すように、カレントトランス(第1カレントトランス)41と、後述するコイル42の両端に接続された抵抗R1とを有している。この抵抗R1の両端にはコイル42に流れる電流に応じた電圧が生じるようになっている。すなわち、電流検出器40は、カレントトランス41が主幹20aに流れる電流を検出し、この検出した電流に応じた電圧を交流電流検出信号として出力することになる。
【0031】
カレントトランス41は、2分割された環状鉄心41A,41Bと、この環状鉄心41A,41Bに巻回されたコイル42と、環状鉄心41Aおよびコイル42を覆ったカバーケース43Aと、環状鉄心41Bおよびコイル42を覆ったカバーケース43Bとを有している。環状鉄心41Aのコイル42と環状鉄心41Bのコイル42とは直列接続され、その巻線方向は同一となっている。なお、図4においてカバーケース43A,43Bは省略してある。
【0032】
カバーケース43A,43Bの一端は、湾曲した可撓性の連結部47により連結されており、この連結部47を中心にしてカバーケース43A,43Bの他端側が開閉可能となっている。そして、図5に示すように、カバーケース43A,43Bを開成することにより、環状鉄心41A,41Bの輪の中に、分電盤20から主幹20aの一方の電線(図5において20aで示す)を取り外さなくても配置させることができる。すなわち、電流検出器40はクランプ式の電流検出器である。」

「【図4】


「【図5】


「【図6】



4 引用文献4について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0013】図1は室外ユニットを一部分解して示す斜視図、図2はその側面図、図3は主要部の回路図である。
【0014】室外ユニット10はキャビネット11内に熱交換器を収納して構成される。キャビネット11は例えば天板12、側板13、14および底板15を締付具16で固定してなる。側板13の一部には対室内ユニット接続ケーブル取出口17を穿設し、図示しない室内ユニットとの接続ケーブル18取付け用の端子板19が露出している。そして、この取出口17に蓋体20を締付ねじ21を介して着脱可能に取付けている。キャビネット11内に収納する構造部品としてはコンプレッサ22、インバータ23および図示しない室外熱交換器、ファンなどがある。コンプレッサ22は底板15に立設固定し、インバータ23はインバータ収納ボックス24に収納した状態でキャビネット11の上部に配置している。
【0015】そして、インバータ23とコンプレッサ22とを接続するリード線26をその途中部分で長さ方向に二分し、その分離端部26aを互いにコネクタ27で着脱可能に接続している。このコネクタ27部分を接続ケーブル18の取出口17に配置させ、前述した蓋体20で被覆している。なお、リード線26には一定長さの余裕を設け、取出口17からコネクタ27部分を外方に引出せるようにしている。この引出し長さは、点検等を行うのに必要な適宜長さに設定している。またコネクタ27の材質は難燃性で、絶縁被膜している。
【0016】なお、図1および図2中、28は室内外ユニット接続配管で、コンプレッサ22と図示しない室内熱交換器とを接続している。また、図3中、29は交流電源、30はダイオードブリッジなどの整流回路、31は平滑コンデンサである。交流電源29からの交流電流を整流回路30で直流電流に変換し、インバータ23で所要周波数の交流電流に変換した後、リード線26を介してコンプレッサ22のモータに電流を供給し、可変速運転を行うものである。
【0017】このような構成において、例えばコンプレッサ22の回転状態を点検したり、或いは回転異常、停止などの故障時にその原因を調べる場合は、蓋体20を外して取出口17を開放する。そして、リード線26を外部に引出し、コネクタ27による接続部分を互いに分離する。これにより、リード線26はコンプレッサ側とインバータ側とに分かれるので、電気系統チェックをコンプレッサ側とインバータ側とに分けて行なえる。したがって、故障等の判別が容易かつ迅速に行なえる。
【0018】なお、コネクタ27は難燃性であるから高温化に対しても十分に耐え得るので故障時の火災発生のおそれはない。また、絶縁被覆が施してあるので、仮に通電状態でチェックする必要がある場合でも感電のおそれがなく、作業の安全性も確保できる。
【0019】しかも、上記構成によれば、蓋体20を取外すだけでコンプレッサ22およびインバータ23の電気系統チェックが行なえるので、従来のようにキャビネットを分解する必要がない。したがって、余計な付帯作業が省略できるので時間的、労力的無駄が減少し、作業能率の向上が図れる。また、据付け状態により、キャビネット分解が困難な場合でも、実施例の構成では側面一部の蓋体20取外しスペースさえあればよく、室外ユニット移動等の必要性も減少する。
【0020】さらに、コネクタ27を室外ユニット10の外方に引出すための窓孔は、通常キャビネットに穿設される室内外接続ケーブルの取出口17を利用したもので、コネクタ引出し口として特別に形成する必要がない、したがって、キャビネット成形工程を増加することもなく、簡易な構成で実施できるという経済的な利点も得られる。」
「【図1】




「【図2】




5 引用文献5について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
(第2頁第11−第17行)
「第2図は従来のインバータ装置を示すもので、整流回路1の出力は平滑コンデンサ2により平滑されてインバータ主回路4に供給される。2−1及び2−2はインバータ回路4への直流ラインであり、この両直流ライン間に制御回路電源3が構成され、その出力電圧Vccは例えばマイクロコンピュータなどから成る制御回路5に供給される。」

(第4頁第4行−第12行)
「第1図はインバータ装置の構成図であり、インバータ主回路へ供給される主直流電圧Edの平滑用コンデンサ省略時の場合を示しており、第2図で示した従来のインバータ装置と異なる点は、ダイオードDlとコンデンサC1の直列接続体をインバータ主回路への直流ライン2−1と2−2間に接続し、このコンデンサC1の両端の電圧である補助直流電圧Edaを制御回路電源3への入力電圧とした点である。」

(第5頁第13行−第17行)
「第6図は本考案の他の実施例であり、主要部分のみ示している。第1図と異なる点は、整流回路1の交流入力端子1−1と1−2よりダイオードD3、D4を介してコンデンサC1を接続した点である。」

「第1図




「第2図




「第6図




6 引用文献6について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
図4は、前記非特許文献1に記載された従来の制御電源とゲート駆動回路の構成を示すブロック図である。図4に示すように、交流電源を入力とし、ダイオードブリッジ6で構成される整流回路と、整流回路の出力である直流電力から交流電力に変換するインバータ10を備えている。インバータ10の直流母線間には、平滑回路としてのDCリンクコンデンサ21が接続されている。このDCリンクコンデンサ21が入力側に接続されたスイッチング制御電源部14は、トランス23およびトランジスタ22などのスイッチング素子で構成され、インバータ10の駆動電源24およびマイコン26などの制御手段を動作させるための制御電源25を供給するものである。上記構成において、一般的にスイッチング制御電源部14の入力側のDCリンクコンデンサ21は大容量であるので、スイッチング制御電源部14の入力電圧は一定であるので、スイッチング制御電源部14は安定した動作を行うことができ、一定の制御電源25および駆動電源24を供給することができる。」

「【図4】



7 引用文献7について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】
【実施例】以下、本発明の第1実施例を図1に基づいて説明する。なお、従来例と基本的機能が同様な部材には同じ符号を付している。
【0015】1 は入力端子で、三相交流電源 (図示せず) を接続するものである。2 は出力端子で、三相誘導電動機等の電動機 (図示せず) を接続するものである。
【0016】3 は整流手段で、入力端子1 に接続された三相交流電源の三相交流電圧を整流するものであり、複数のダイオード5 を接続したダイオードブリッジ4 により構成され、三相交流電源の交流電圧を整流して脈流を出力する。
【0017】6 は平滑手段で、平滑コンデンサ7 及びこれに直列に接続され突入電流を防止する限流抵抗8 で構成され、整流手段3 の出力電圧である脈流を平滑して直流電圧とするものである。また、この平滑手段6 には、平滑コンデンサ7 にある程度電流が充電されたときに、後述する制御手段で送信される駆動信号によって限流抵抗8 をカットするための限流抵抗カットリレー9 が限流抵抗8 と並列に接続されている。
【0018】10は駆動手段で、運転信号を受信したときに平滑された直流電圧を交流電圧に変換して出力端子2 に接続された電動機を駆動するものである。この駆動手段10は、トランジスタ11を一対直列接続するとともに各トランジスタ11のコレクタ−エミッタ間と並列となる位置にダイオード12を接続してアームと成しこのアームを3組並列接続して構成し、平滑コンデンサ7 の出力電圧を各アームに入力し各アームのトランジスタ11を夫々120 度の位相をずらしてスイッチング動作させて不等パルス幅の電圧でなる3相交流電圧を発生させる。
【0019】13は制御手段で、整流手段3 及び駆動手段10間に接続され運転操作があると予め記憶されたプログラム内容に基づいて駆動手段10に運転信号を送信するものである。この制御手段13は、先ず、整流手段3 及び駆動手段10間に接続され整流手段3 によって整流された脈流を直流電圧に変換する制御用電源14からコンバータ等によって制御回路15やドライバ16に直流電圧を印加する。次に、制御回路15によって平滑コンデンサ7 にある程度電流が充電されたときに限流抵抗カットリレー9 をオンさせる駆動信号を送信するとともに、運転操作があるとフォトカプラ17に信号を送信する。次に、制御用電源14の直流電圧及びフォトカプラ17の信号を入力するドライバ16により、駆動手段10にドライブ信号 (運転信号) を送信する。なお、図において18は欠相防止コンデンサで、三相回路に欠相が生じた場合、整流される波形を整えるものである。」
「【図1】




8 引用文献Cについて
当審拒絶理由で引用された引用文献Cには、図面とともに次の事項が記載されている。
「[0010]
本発明の目的は、インバータ基板に接続される配線の数を低減して配線から発生するノイズを低減すると共に、インバータ回路を制御する演算装置の数も少なくすることのできる空気調和機の室外機を得ることにある。」

「[0016]
前記室外機2は、その筐体内に、圧縮機8、室外側熱交換器9、アキュームレータ10、四方弁11などの冷凍サイクル構成部品を備えている。また、前記圧縮機8にはその圧縮機構部(図示せず)を駆動するための圧縮機用モータ12が設けられている。13は前記室外側熱交換器9に室外空気を通風させるための室外ファンであり、この室外ファン13の羽根部13´はファン用モータ14により駆動されるように構成されている。15は、冷凍サイクル全体を制御するための制御基板や、前記圧縮機用モータ12及び前記ファン用モータ14を制御するためのインバータ基板などを収納した電気箱である。
[0017]
なお、図1には、前記室外ファン13を1台のみ図示しているが、本実施例においては、前記室外ファン13は、後述する図3などに示すように、13aと13bの2台の室外ファンが備えられている。
[0018]
前記室内機3には、室内側熱交換器16、膨張弁17、前記室内側熱交換器16に通風するための室内ファン18などが設けられている。」

「[0021]
図2は本発明の空気調和機の室外機の実施例1における電気箱内の構成を説明するブロック図であり、図1に示す電気箱15内の構成を示す図である。
この図2に示すように、本実施例1においては、電気箱15は金属製の箱で構成され、電気箱15内の素子などが万一発火しても外部に延焼しないようにしている。前記電気箱15内には、図1に示した冷凍サイクル全体の制御を行うための制御部が搭載された制御基板20と、前記室外ファン13のファンモータ14や前記圧縮機8の圧縮機用モータ12を制御するインバータ基板21が備えられている。
[0022]
即ち、本実施例においては、前記制御基板20と前記インバータ基板21とは別々の基板で構成され、これらは1つの前記電気箱15内に収納された構成となっている。
前記制御基板20には、前述した冷凍サイクルの制御を行う制御部(図示せず)と、この制御部を動作させるための電源回路23が搭載されており、前記制御部は、冷凍サイクルを構成している前記四方弁11や前記膨張弁17などの各種機器を制御すると共に、前記インバータ基板21にも接続されていて、前記圧縮機12や前記室外ファン13の回転数指令なども制御するように構成されている。
[0023]
前記インバータ基板21には、前記圧縮機8の圧縮機用モータ12に対して所望の電流を送ってこれを駆動するための圧縮機用インバータ回路24と、前記複数台の室外ファン13(13a,13b)(図3参照)のファンモータ14a,14bに対して所望の電流を送ってそれぞれを駆動するための複数のファン用インバータ回路25a,25bと、前記制御基板20からの指令に基づいて前記圧縮機用インバータ回路24と前記複数台のファン用インバータ回路25a,25bを制御するマイコン(マイクロコンピュータ;演算装置)26とを備えている。
[0024]
また、前記インバータ基板21には、商用電源27と前記各インバータ回路24,25a,25bとの間に設けられたコンバータ回路(整流器)28と、前記商用電源27と前記コンバータ回路28との間に設けられ前記コンバータ回路28に流れる入力電流に含まれるノイズを除去するノイズフィルタ29を備えている。」

「[0028]
次に、図3〜図5を用いて本実施例1における室外機の構成について説明する。図3は本実施例1における室外機の概略構成を説明する図で、正面側のパネルを取り外して示す正面図、図4は図3の室外機を、上面パネルを取り外して上方から見た平面図、図5は図3の室外機を、側面パネルを取り外して側方から見た側面図である。また、上記図3においては、室外ファン13a,14bの羽根部の図示を省略して、インバータ基板21からファンモータ14a,14bへの配線がわかるように図示している。また、これら図3〜図5は、電気箱15からファンモータ14a,14bへの接続配線、及び電気箱15から圧縮機8への接続配線の配置構成がわかるように図示している。
[0029]
本実施例の室外機2においては、該室外機2を構成する筐体内の側方上部に前記電気箱15が設けられている。この電気箱15内には、前記制御基板20及び前記インバータ基板21などが収納されている。
[0030]
一方、前記室外側熱交換器9は、図4,図5に示すように、L字形の熱交換器が室外機2の背面側に縦長に配置されており、また、図3に示すように、この室外側熱交換器9の前部に沿って上下方向に延びるフレーム30が設けられている。このフレーム30は前記室外ファン13a,13bのファンモータ14a,14bを取り付けるためのもので、2本のアングル材で構成され、この2本のアングル材の上方には前記ファンモータ14aが、下方には前記ファンモータ14bが取り付けられている。前記室外ファン13a,13bの羽根部13´は前記ファンモータ14a,14bのモータ軸14´に取り付けられている。
[0031]
このように、複数台(本実施例では2台)の室内ファン13a,13bは、後側から室外空気を吸い込んで前方に吹き出す横吹き構造に構成されており、上下方向に2台設置された構成となっている。
[0032]
前記電気箱15は、図3に示すように、上部に設置された室外ファン13aの側方に設置されている。また、この電気箱15下方の室外機2内の底板上には前記圧縮機8が設置されている。
[0033]
前記電気箱15内に設けられている前記制御基板20は、前記電気箱15内の前部に設置され、前記インバータ基板21は、前記制御基板20の背面側で且つ該インバータ基板21の背面が前記室外ファン13a側に向くように設置され、前記制御基板20と前記インバータ基板21とは別々に設置されている。また、前記インバータ基板21の背面側には放熱フィン22が設けられており、この放熱フィン22が前記室外ファン13aにより通風される外気によって冷却され、インバータ回路24,25a,25bを構成する半導体素子などが発熱した熱で半導体が熱破壊となるのを防止している。
[0034]
ここで、前記インバータ基板21におけるインバータ回路24,25a,25b及びマイコン26の配置構成について、図6により説明する。この図6は図2〜図5に示したインバータ基板21におけるインバータ回路24,25a,25b及びマイコン26の配置図である。
[0035]
本実施例では、この図6に示すように、前記室外ファン13a,13bをそれぞれ駆動する前記ファン用インバータ回路25a,25bは、前記インバータ基板21の上部に配設され、前記圧縮機8を駆動する前記圧縮機用インバータ回路24は前記インバータ基板21の下部に配設されている。また、前記ファン用インバータ回路25a,25bと前記圧縮機用インバータ回路24との間には前記マイコン(演算装置)26が配設され、前記3つのインバータ回路24,25a,25bを1つのマイコン26で制御するように構成している。
なお、この図6においては、図2に示すコンバータ回路28やノイズフィルタ29については図示を省略している。
[0036]
前記インバータ基板21を図6に示すような配置構成とすることにより、前記インバータ基板21から前記室外ファン13a,14bへの配線31は、図3に示すように、前記電気箱15の上部から取り出されて、室外側熱交換器9上部のスペース、即ち室外機2の筐体上部のフレームに沿って配設され、ここから更に前記フレーム30に沿って配設されて、前記複数台の室外ファン13a,13bの各ファンモータ14a,14bにそれぞれ接続される構成としている。
[0037]
また、前記インバータ基板21から前記圧縮機8への配線32は、前記電気箱15の下部から取り出され、圧縮機8などが設置された機械室と前記室外側熱交換器9や前記室外ファン13a,13bが設置された熱交換器室とを仕切る仕切り板(図示せず)に沿って前記圧縮機8に接続される構成としている。
なお、図6に示す33は前記商用電源27などからの入力配線である。
[0038]
このように、本実施例によれば、インバータ基板21から室外ファン13a,13bへの配線31は、フレーム30などに沿って配設するので、室外ファン13a,13bなどの回転部品と接触することなく、信頼性を確保した状態で最短で接続することができる。また、インバータ基板21から圧縮機8への配線32も、電気箱15のほぼ真下に設置された圧縮機に略直線状に接続できるので、前記配線31と交差することもなく、最短で接続できる。」

「[0045]
更に、上述した実施例では、インバータ基板から複数台の室外ファンへの配線は、前記フレームに沿って配線するので、室外ファンなどの回転部品と接触するのを確実に回避して、最短で接続することができる。また、インバータ基板から圧縮機への配線もより短くすることができ、この点からもノイズの発生を抑制して周辺機器へのノイズの影響を低減できる。」

「[図1]



「[図2]



「[図3]



「[図4]



「[図5]



「[図6]



第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「3相交流電源1」は、本願発明1の「交流電源(11)」に相当し、引用発明の「第1の整流回路31」は、「3相交流電源1」の交流電力を直流電力に整流するものであるから、本願発明1の「交流電源(11)の交流電力を直流電力に整流するコンバータ回路(21)」に相当し、引用発明の「インバータ用トランジスタモジュール9」は、第1の整流回路31の出力電力を所定の周波数の交流電力に変換する回路であるから、本願発明1の「コンバータ回路(21)の出力電力を所定の周波数の交流電力に変換するインバータ回路(24)」に相当する。
したがって、引用発明の「第1の整流回路31」と「インバータ用トランスモジュール9」とで備える「インバータ主機器A」は、本願発明1の「交流電源(11)の交流電力を直流電力に整流するコンバータ回路(21)」と「該コンバータ回路(21)の出力電力を所定の周波数交流電力に変換するインバータ回路(24)」とを有する「インバータ装置(20)」に相当する。

イ 引用発明の「電源高調波抑制装置」は「インバータ主機器A」を備え、交流電力を直流電力に変換する機能を有する装置であるから、上記アの検討も踏まえれば、本願発明1の「インバータ装置(20)を有する電力変換装置(10)」に相当する。

ウ 引用発明の「電源高調波抑制装置」は発熱するものであるから、引用発明の「発熱する電源高調波抑制装置を収納した室外機」は、本願発明1の「電力変換装置(10)を備えた熱源ユニット」に相当する。

エ 引用発明の「3相交流電源1と第1の整流回路31とを繋ぐ配線に接続され」る「ノイズフィルタ2」は、本願発明1の「交流電源(11)と前記コンバータ回路(21)とを繋ぐ電源ライン(12)に接続されたノイズフィルタ回路(30)」に相当する。

オ 引用発明の「高調波抑制回路B」は、第2の制御手段13によって制御されて、高調波を抑制する装置であるから、本願発明1の「高調波電流を低減するアクティブフィルタ装置(40)」に相当する。
そうすると、引用発明の「高調波抑制回路B」が「ノイズフィルタ2と第1の整流回路31との間の分岐接続部24から、インバータ主機器Aと並列に分岐接続され」ることは、本願発明1の「高調波電流を低減するアクティブフィルタ(40)」が「電源ライン(12)における前記ノイズフィルタ回路(30)と前記コンバータ回路(21)との間に並列接続」されることに相当する。

カ 引用発明の「室外送風機66」は、本願発明1の「空冷ファン(55)」に相当し、引用発明の「室外送風機66の下方に、インバータ主機器Aが配設される」ことは、本願発明1の「空冷ファン(55)の下方には、前記インバータ装置(20)が配設され」ることに相当する。

(2)一致点、相違点
上記(1)の検討結果を踏まえると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

・一致点
「インバータ装置(20)を有する電力変換装置(10)を備えた熱源ユニットであって、
前記インバータ装置(20)は、交流電源(11)の交流電力を直流電力に整流するコンバータ回路(21)と、該コンバータ回路(21)の出力電力を所定の周波数の交流電力に変換するインバータ回路(24)とを有し、
前記交流電源(11)と前記コンバータ回路(21)とを繋ぐ電源ライン(12)に接続されたノイズフィルタ回路(30)と、
前記電源ライン(12)における前記ノイズフィルタ回路(30)と前記コンバータ回路(21)との間に並列接続されて高調波電流を低減するアクティブフィルタ装置(40)とを備え、
空冷ファン(55)の下方に、前記インバータ装置(20)が配設される、熱源ユニット。」

・相違点
(相違点1)
本願発明1は、電力変換装置(10)が、筐体(15)と筐体(15)内に収納されたインバータ装置(20)とを有し、筐体(15)内にアクティブフィルタ装置(40)とノイズフィルタ回路(30)が収納され、かつ、前記筐体(15)の外部に空冷ファン(55)が配設されているのに対して、引用発明の室外機は、室外送風機66と電源高調波抑制装置を備え、電源高調波抑制装置が、インバータ主機器Aと高調波抑制回路Bを有しているものの、筐体についての記載がなく、インバータ主機器A、高調波抑制回路B及びノイズフィルタ2が筐体内に収納され、室外送風機66が、当該筐体の外部に配設されることは明記されていない点。

(相違点2)
本願発明1は、前記筐体(15)内における前記インバータ装置(20)の下方には、前記ノイズフィルタ回路(30)と前記アクティブフィルタ装置(40)とが並列に配設されているのに対し、引用発明は、高調波抑制回路Bとノイズフィルタ2は並列接続されているものの、並列に配設されていることまで特定されておらず、かつ、引用発明はインバータ主機器Aの上方に高調波抑制回路Bが配設されており、本願発明1のようにインバータ主機器Aの下方に配設されていない点。

(3)相違点の判断
事案に鑑みて、相違点1、2についてまとめて検討する。
引用文献2には、単一の箱である電気箱61(本願発明1の「筐体(15)」に対応する。)に、圧縮機駆動用インバータ装置、高調波抑制装置、ノイズフィルタ609を収納し、前記電気箱61の外部にファン5を設けることが記載されている。
引用発明及び引用文献2はいずれもノイズフィルタをインバータ装置と高調波抑制装置で共用する空気調和機の室外機である点で共通するから、引用発明のインバータ主機器Aと高調波抑制回路B及びノイズフィルタ2を、引用文献2に基づいて単一の箱である電気箱に収納し、電気箱の外部に室外送風機を配設することまでは想定されるとしても、引用発明のインバータ主機器Aと高調波抑制回路B及びノイズフィルタ2を単一の箱である電気箱に収納する際、効率よく冷却するという一般的な事項だけでは、電気箱内において、高調波抑制回路Bとノイズフィルタ2を並列に配設した上で、更に、インバータ主機器Aの上方に配設されている高調波抑制回路Bを、インバータ主機器Aの下方に配設するように入れ替えることまで動機付けるものではないから、上記相違点に係る構成は、当業者であっても、容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、上記相違点1、2に係る構成については、上記第5の3〜8に記載した引用文献3ないし引用文献7及び引用文献Cにも記載も示唆もなく、また、上記相違点1、2に係る構成が、当該技術分野における技術常識であるともいえない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし引用文献7並びに引用文献Cに記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明3について
本願発明2ないし本願発明3は、本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし引用文献7並びに引用文献Cに記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
原査定は、上記第2のとおり、本願請求項4、6、7に係る発明は、引用文献1ないし引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたというものである。
ここで、拒絶査定時の本願請求項4、6、7は、上記第4に記載した本願発明1ないし本願発明3に対応するものであるところ、上記第6で判断したとおり、本願発明1ないし本願発明3は、引用発明及び引用文献2ないし引用文献7並びに引用文献Cに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1について
当審では、請求項2及びこれを引用する請求項3、4に係る発明は、引用文献Aないし引用文献Dに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの拒絶理由を通知しているが、令和5年2月10日の手続補正書において請求項2が削除された結果、この拒絶理由は解消した。

2 当審拒絶理由2について
当審では、請求項1及びこれを引用する請求項3、4に係る発明について、請求項1にはノイズフィルタ回路とアクティブフィルタ装置とを並列に配設することと配線との関係について何ら記載されていないから、課題解決をするための手段が反映されていない、との拒絶理由を通知しているが、令和5年2月10日の意見書において、本願の請求項1では、「筐体(15)内に収納され、電源ライン(12)におけるノイズフィルタ回路(30)とコンバータ回路(21)との間に並列接続されて高調波電流を低減するアクティブフィルタ装置(40)」を備えた構成を採用することにより、「アクティブフィルタ装置(40)を収納するための専用の筐体(15)を別途設ける必要が無」く、「筐体(15)の部材コストを抑えるとともに、筐体(15)の設計費、加工費、管理費なども削減することができ」、また、「アクティブフィルタ装置(40)を、電源ライン(12)におけるノイズフィルタ回路(30)とコンバータ回路(21)との間に並列接続させたことで、インバータ装置(20)のノイズフィルタ回路(30)をアクティブフィルタ装置(40)にも共通して使用するようにし」、「これにより、アクティブフィルタ装置(40)専用のノイズフィルタ回路(30)や端子台等を別途設ける必要が無く、装置全体の小型化や大幅なコストダウンを図ることができる」という格別の効果を奏する、との釈明がなされた結果、本拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明3は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2ないし引用文献7並びに引用文献Cに記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2023-03-24 
出願番号 P2017-063255
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02M)
P 1 8・ 537- WY (H02M)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 須田 勝巳
特許庁審判官 中村 信也
山澤 宏
発明の名称 電力変換装置及びそれを備えた熱源ユニット  
代理人 弁理士法人前田特許事務所  

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