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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1396207
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-09-14 
確定日 2023-04-04 
事件の表示 特願2021− 286「配信装置、配信方法及び配信プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 4月15日出願公開、特開2021− 61045、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月29日に出願した特願2017−105598号の一部を令和3年1月4日に新たな特許出願としたものであって、令和3年2月3日に手続補正がされ、令和3年12月17日付けで拒絶理由通知がされ、令和4年2月17日に意見書が提出されると同時に手続補正がされたが、令和4年6月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和4年9月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(令和4年6月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1−4、11−13
・引用文献等 1、2、5

・請求項 5、6
・引用文献等 1−3、5

・請求項 7−10
・引用文献等 1、2、4、5

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2012−079021号公報
2.特開2016−012276号公報
3.特開2004−297523号公報
4.特表2015−517684号公報
5.特開2010−039095号公報


第3 本願発明
本願請求項1ないし13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、令和4年9月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
音声又は字幕である付加情報が付加された動画コンテンツの配信実績を取得する取得部と、
前記配信実績に基づいて、複数の付加情報のうちから、所定の動画コンテンツに付加する付加情報を決定する決定部と、
を備えることを特徴とする配信装置。
【請求項2】
前記取得部は、
前記付加情報が付加された動画コンテンツの配信実績として、前記複数の付加情報のいずれかと前記動画コンテンツとの組合せ毎に配信実績を取得し、
前記決定部は、
前記配信実績に基づいて、前記複数の付加情報のうちから、前記所定の動画コンテンツに付加する付加情報を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の配信装置。
【請求項3】
前記決定部は、
前記複数の付加情報のいずれかと前記所定の動画コンテンツとの各組合せにおける配信割合を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配信装置。
【請求項4】
前記所定の動画コンテンツと前記複数の付加情報とを前記所定の動画コンテンツの提供主から受け付ける受付部をさらに備え、
前記決定部は、
前記受付部によって受け付けられた複数の付加情報のうちから、前記所定の動画コンテンツに付加する付加情報を決定する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の配信装置。
【請求項5】
前記受付部は、
前記複数の付加情報として、前記所定の動画コンテンツに流れるBGM(Background Music)であって、メロディが異なる複数のBGMを受け付ける、
ことを特徴とする請求項4に記載の配信装置。
【請求項6】
前記受付部は、
前記複数の付加情報として、前記所定の動画コンテンツに流れるBGMであって、テンポが異なる複数のBGMを受け付ける、
ことを特徴とする請求項4に記載の配信装置。
【請求項7】
前記受付部は、
前記複数の付加情報として、前記所定の動画コンテンツに流れるナレーションであって、声質が異なる複数のナレーションを受け付ける、
ことを特徴とする請求項4に記載の配信装置。
【請求項8】
前記受付部は、
前記複数の付加情報として、前記所定の動画コンテンツに流れるナレーションであって、口調、方言及び語尾の少なくとも1つが異なる複数のナレーションを受け付ける、
ことを特徴とする請求項4に記載の配信装置。
【請求項9】
前記受付部は、
前記複数の付加情報として、前記所定の動画コンテンツに流れるナレーションであって、読み上げられる内容が異なる複数のナレーションを受け付ける、
ことを特徴とする請求項4に記載の配信装置。
【請求項10】
前記受付部は、
前記複数の付加情報として、前記複数のナレーションの内容が示す複数の字幕の各々を受け付ける、
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の配信装置。
【請求項11】
前記取得部は、
前記配信実績として、前記動画コンテンツのインプレッション数、CPM(Cost Per Mille)、クリック数、CPC(Cost Per Click)、CPA(Cost Per Action, Cost Per Acquisition)、閲覧時間のいずれか一つを取得する、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の配信装置。
【請求項12】
コンピュータが実行する配信方法であって、
音声又は字幕である付加情報が付加された動画コンテンツの配信実績を取得する取得工程と、
前記配信実績に基づいて、複数の付加情報のうちから、所定の動画コンテンツに付加する付加情報を決定する決定工程と、
を含むことを特徴とする配信方法。
【請求項13】
音声又は字幕である付加情報が付加された動画コンテンツの配信実績を取得する取得手順と、
前記配信実績に基づいて、複数の付加情報のうちから、所定の動画コンテンツに付加する付加情報を決定する決定手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする配信プログラム。」


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同じ。)

A「【背景技術】
【0002】
リスティング広告とは、検索サイトにおいて、検索者が入力した一又は複数個の検索キーワードに対して予め登録されたリンク設定付のテキストデータからなる広告文(以下、「クリエイティブ」と称する)を、上記検索キーワードに基づく検索エンジンによる検索結果と共に、検索結果画面に列挙する広告手法である。」

B 「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明による広告文作成支援システムを実施した形態としてのネットワークシステムを、説明する。
<システム構成>
図1は、かかるネットワークシステムのシステム構成を示す概略ブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本ネットワークシステムは、広告業者を兼ねる検索サイト運営者が運営するサーバ装置1,並びに、広告主端末2及び検索者端末3から、構成されている。
【0015】
広告主端末2及び検索者端末3は、何れも、インターネット接続機能を有する通常のパーソナルコンピュータであり、バスBにより相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)22,ハードディスク24,ディスプレイ23,RAM(Random Access Memory)21,キーボード25及び通信装置20を、有している。ハードディスク24には、図示せぬOS(Operating System)及びウェブブラウザプログラムが、インストールされている。CPU22は、ハードディスク24内にインストールされているプログラムを読み出して実行する処理装置である。RAM21は、CPU22が上記プログラムに従った処理を実行するに際して作業領域が展開される主記憶装置である。ディスプレイ23は、CPU22による処理結果たる画面イメージを表示する表示装置である。キーボード25は、CPU22に各種コマンド及びデータを入力するための入力装置である。そして、広告主端末2は、検索サイト運営者に対してリスティング広告の依頼を行う広告主が運営し、検索者端末3は、検索サイト運営者がサーバ装置1によって提供する検索サービスを利用する一般ユーザが運営する。
【0016】
サーバ装置1は、インターネットNを通じて各端末2,3から受信した各種リクエストに応じた処理を行い、処理結果としてのレスポンスを応答するコンピュータである。サーバ装置1は、ハードウェア的には汎用のコンピュータであり、相互にバスBを通じて接続された通信装置11,CPU12,RAM13,及びハードディスク14を含む。通信装置11は、インターネットNを終端するルータ,ネットワークアダプタ等である。CPU12は、ハードディスク14にインストールされているサーバプログラム140を実行する処理装置である。RAM13は、CPU12による作業領域が展開される主記憶装置である。ハードディスク14は、上述したサーバプログラム140の他、各種データを格納した記憶媒体である。
【0017】
ハードディスク14に格納されている各種データは、夫々、データベースのフォーマットにより纏められている。かかるデータベースには、商品データベース147,広告データベース148及び辞書データベース149が、含まれている。
【0018】
商品データベース147には、図2に示すように、各商品の小分類毎の一般名称である「商品名」,及び、その商品小分類を検索するための検索キーワードとして屡々用いられる一個又は一組の「検索キーワード」の組合せに対して、その検索キーワード(の組)による検索が多くなされる期間(「多く検索される期間」),当該期間中その検索キーワード(の組)に対して登録された全クリエイティブの閲覧回数(IMP数)の日平均,当該期間中その検索キーワード(の組)に対して登録された全クリエイティブのクリック単価(CPC)の日平均,当該期間中その検索キーワード(の組)に対して登録された全クリエイティブのクリック率(CTR)の日平均,当該期間中その検索キーワード(の組)に対して登録された全クリエイティブのコンバージョン率(CVR)の日平均,及び、当該期間中その検索キーワード(の組)に対して登録された全クリエイティブのコストの日平均が、公知のリスティング広告の手法によって、集計されて登録されている。更に、当該商品データベース147には、各商品小分類毎に、それが属する中分類・大分類の名称(「商品カテゴリ」),並びに、当該商品小分類に類似する商品小分類の名称(「類似商品」)及び当該類似商品小分類が属する中分類・大分類の名称(「他業種」)が、一覧されている。即ち、商品データベース147は、商品名毎に、検索キーワードが登録されているとともに、各検索キーワードについて、過去に登録された広告の実績値の平均値が登録されている第1データベースに相当する。
【0019】
広告データベース148には、図3に示すように、各キーワード(出稿ワード)毎に、そのキーワードについて過去に登録された個々のクリエイティブの実績値,即ち、クリック単価の順位(「NO.」),タイトル,説明文,広告期間内におけるCTRの日平均,広告期間内におけるクリック数の日平均,広告期間内におけるCPCの日平均,広告期間内におけるCPAの日平均,広告期間内におけるCVRの日平均,広告期間内における順位の平均が、公知のリスティング広告の手法によって、集計されて登録されている。即ち広告データベース148は、各検索キーワードについて、過去に登録された個々の広告文の内容及び実績値が登録されている第2データベースに相当する。」

C 「【0021】
上述したサーバプログラム140は、WWW(World Wide Web)サーバプログラム及び幾つかのCGI(Common Gateway Interface)プログラム又はサーブレット及びJava(サンマイクロ社の登録商標)バーチャルマシン等のアプリケーションプログラムを包含する。サーバプログラム141に従ってCPU12が実現する機能には、検索者端末3が送信してきた検索リクエストメッセージに含まれる検索キーワードに基づいて検索エンジンを起動することによって検索されたウェブページへのリンク及びその一部のテキストが列挙された検索結果画面を応答する検索部146の機能の他、広告抽出部141,入札キーワード抽出部142,文章作成部143,及び構文作成部145を含む文章解析部144の各機能を含む。
【0022】
入札キーワード抽出部142は、広告主端末2を操作する広告主(広告担当者)が指定した商品名について商品データベース147に登録されている検索キーワード又はその組合せを抽出する機能である(S101,S102)。
【0023】
広告抽出部141は、入札キーワード抽出部142によって抽出された検索キーワード又はその組合せをタイトルに含むクリエイティブのうち、広告データベース148に登録された実績値が商品データベース147に登録された平均値以上であるものを抽出する機能である(S103)。
【0024】
文章解析部144は、広告抽出部141によって抽出されたクリエイティブ中のタイトルに対するクラスタ分析や、説明文に対する単語分析を行う機能である。
【0025】
文章作成部143は、広告主端末2からの指示に応じてクリエイティブを作成する機能である。」

D 「【図1】



E 「【図2】



F 「【図3】




(2)引用発明
A 上記(1)Bの段落【0014】には、「本ネットワークシステムは、広告業者を兼ねる検索サイト運営者が運営するサーバ装置1,並びに、広告主端末2及び検索者端末3から、構成されている」と、さらに、段落【0015】には、「広告主端末2は、検索サイト運営者に対してリスティング広告の依頼を行う広告主が運営し、検索者端末3は、検索サイト運営者がサーバ装置1によって提供する検索サービスを利用する一般ユーザが運営する」と記載されている。
してみると、引用文献1には、“広告業者を兼ねる検索サイト運営者が運営するサーバ装置1、並びに、検索サイト運営者に対してリスティング広告の依頼を行う広告主が運営する広告主端末2、及び、検索サイト運営者がサーバ装置1によって提供する検索サービスを利用する一般ユーザが運営する検索者端末3から、構成されているネットワークシステムにおけるサーバ装置1”が記載されているといえる。

B 上記(1)Aには、“リスティング広告は、検索サイトにおいて、検索者が入力した一又は複数個の検索キーワードに対して予め登録されたリンク設定付のテキストデータからなる広告文(「クリエイティブ」)を、上記検索キーワードに基づく検索エンジンによる検索結果と共に、検索結果画面に列挙する広告手法であ”ることが記載されている。

C 上記(1)Bの段落【0016】には、“サーバ装置1は、ハードウェア的には汎用のコンピュータであり、相互にバスBを通じて接続された通信装置11、CPU12、RAM13、及びハードディスク14を含”むことが記載されている。

D 上記(1)Bの段落【0017】には、“ハードディスク14には、各種データが商品データベース147、広告データベース14として格納され”ることが記載されている。

E 上記(1)Bの段落【0018】には、“商品データベース147は、商品名毎に、検索キーワードが登録されているとともに、各検索キーワードについて、過去に登録された広告のクリック率(CTR)などの実績値の平均値が登録され”ることが記載されている。

F 上記(1)Bの段落【0019】には、“広告データベース148は、各検索キーワードについて、過去に登録された個々の広告文の内容及びCTRなどの実績値が登録され”ることが記載されている。

G 上記(1)Cの段落【0021】には、“CPU12は、サーバプログラム141に従って、検索者端末3が送信してきた検索リクエストメッセージに含まれる検索キーワードに基づいて検索エンジンを起動することによって検索されたウェブページへのリンク及びその一部のテキストが列挙された検索結果画面を応答する検索部146の機能、広告抽出部141、入札キーワード抽出部142、文章作成部143、及び構文作成部145を含む文章解析部144の各機能を実現するものであ”ることが記載されている。

H 上記(1)Cの段落【0023】には、「広告抽出部141は、入札キーワード抽出部142によって抽出された検索キーワード又はその組合せをタイトルに含むクリエイティブのうち、広告データベース148に登録された実績値が商品データベース147に登録された平均値以上であるものを抽出する」ことが記載されている。

I 上記(1)Cの段落【0024】には、「文章解析部144は、広告抽出部141によって抽出されたクリエイティブ中のタイトルに対するクラスタ分析や、説明文に対する単語分析を行う」ことが記載されている。

J 上記AないしIの記載内容からすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「広告業者を兼ねる検索サイト運営者が運営するサーバ装置1、並びに、検索サイト運営者に対してリスティング広告の依頼を行う広告主が運営する広告主端末2、及び、検索サイト運営者がサーバ装置1によって提供する検索サービスを利用する一般ユーザが運営する検索者端末3から、構成されているネットワークシステムにおけるサーバ装置1において、
リスティング広告は、検索サイトにおいて、検索者が入力した一又は複数個の検索キーワードに対して予め登録されたリンク設定付のテキストデータからなる広告文(「クリエイティブ」)を、上記検索キーワードに基づく検索エンジンによる検索結果と共に、検索結果画面に列挙する広告手法であって、
サーバ装置1は、ハードウェア的には汎用のコンピュータであり、相互にバスBを通じて接続された通信装置11、CPU12、RAM13、及びハードディスク14を含み、
ハードディスク14には、各種データが商品データベース147、広告データベース14として格納されており、
商品データベース147は、商品名毎に、検索キーワードが登録されているとともに、各検索キーワードについて、過去に登録された広告のクリック率(CTR)などの実績値の平均値が登録されており、
広告データベース148は、各検索キーワードについて、過去に登録された個々の広告文の内容及びCTRなどの実績値が登録されており、
CPU12は、サーバプログラム141に従って、検索者端末3が送信してきた検索リクエストメッセージに含まれる検索キーワードに基づいて検索エンジンを起動することによって検索されたウェブページへのリンク及びその一部のテキストが列挙された検索結果画面を応答する検索部146の機能、広告抽出部141、入札キーワード抽出部142、文章作成部143、及び構文作成部145を含む文章解析部144の各機能を実現するものであって、
広告抽出部141は、入札キーワード抽出部142によって抽出された検索キーワード又はその組合せをタイトルに含むクリエイティブのうち、広告データベース148に登録された実績値が商品データベース147に登録された平均値以上であるものを抽出し、
文章解析部144は、広告抽出部141によって抽出されたクリエイティブ中のタイトルに対するクラスタ分析や、説明文に対する単語分析を行う、
サーバ装置1。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。

A 「【0048】
[変形例1]
上記実施形態では、広告LPにレイアウトを指定するメタタグが含まれない場合、広告生成手段352は、予め設定されたレイアウトでの広告データを生成する例を示したが、これに限定されない。
例えば、広告生成手段352は、広告内容のレイアウトがそれぞれ異なる複数の広告データを生成してもよい。
この場合、配信サーバ35の演算回路は、記憶装置に記憶されたプログラムを読み込むことで、本発明における実績取得手段として機能し、ユーザ端末40において広告データが選択されて広告LPが参照された頻度である実績値(例えば、CTR:Click Through Rate等)を取得する。そして、配信手段353は、実績値に基づいた割合で広告データを配信する構成とする。
例えば、広告生成手段352により広告データA,広告データB,広告データCが生成され、その実績値の比率が1:2:3であった場合、配信手段353は、広告データAの配信頻度:広告データBの配信頻度:広告データCの配信頻度を1:2:3として、各広告データを配信する。このような広告データの配信により、広告対象の広告効果をより高めることができる。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。

A 「【0070】
また、地域に対応させることにより、地域における視聴者の楽曲の嗜好を把握し、該地域の前記番組中に放送するCMのBGMを変更し、CMを放送することができる。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。

A 「【0008】
ナレーションパラメータは、話者の声のピッチ、高音、低音、コントラスト、および速度などの、ナレーションの種々の定量的側面を含み得る。ナレーションパラメータは、話者の訛り、話者の言語または方言、話者の気分、話者の性別、話者の韻律などのナレーションの種々の定性的側面をも含み得る。」

B 「【0073】
言語メニュー612Aは、ユーザがナレーションについてどの言語を好むかを選択することを可能にする。例えば、ユーザは、言語メニュー612Aを用いて、英語、フランス語、スペイン語、または他の言語から選択し得る。言語メニュー612Aは、明確な言語選択として同一の言語の1つ以上の方言を含み得る。例えば、言語メニュー612Aは、アメリカで話されている英語(アメリカ英語)とイギリスで話されている英語との間、またはスペインで話されているスペイン語とラテンアメリカで話されているスペイン語との間の選択を用意し得る。いくつかの実施形態において、言語メニュー612Aからの言語の選択は、他のユーザインターフェース要素がレンダリングされる言語をも決定し得る。例えば、ユーザが言語メニュー612Aからフランス語を選択すると、題名インジケータ602が英語ではなくフランス語でレンダリングされる場合がある。題名インジケータ602は、アレクサンドル・デュマの小説「The Count of Monte Cristo(モンテ・クリスト伯)」の英語の題名の表示をそのフランス語の題名の表示「Le Comte de Monte Cristo」に変更する場合がある。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。

A 「【0032】
記憶部30は、磁気的、光学的記録媒体或いは半導体記憶素子を用いた記憶装置を備え、各種のプログラムやデータ等を不揮発的に記憶する。また、記憶部30は、広告画像データ31、広告音声データ32、音声選択用テーブル33、及び個人識別情報34の各情報を記憶する。
広告画像データ31は、表示装置60によって表示される画像のデータであり、商品やサービス等の広告用の静止画像または動画像のデータである。広告画像データ31は、複数の画像のデータを含んでいる。
広告音声データ32は、超指向性スピーカ40から出力される音声のデータであり、広告画像データ31に含まれる各画像データの種類、及び、音声を聴かせる対象者の属性等に対応して、複数の音声データが広告音声データ32に含まれる。
音声選択用テーブル33は、広告音声データ32の中から、超指向性スピーカ40が出力する音声を選択するためのテーブルであり、一つの音声データを決定するための条件等が設定されている。
個人識別情報34は、カメラ50の撮影画像に写っている人について、人毎に異同を識別するための情報であり、例えば、属性判別部22が属性を判別する際に検出した撮影画像の特徴に関する情報を含んでいる。
【0033】
図5は、音声選択用テーブル33の構成例を模式的に示す図である。
この図5に示す例の音声選択用テーブル33によれば、表示装置60に表示される広告画像の種類と、対象者がカメラ50撮影画像において検出された回数と、対象者の属性と、をもとに音声データが決定される。
すなわち、音声選択用テーブル33には、表示装置60に表示される広告画像の種類と広告音声の主音声とが対応づけられ、さらに、広告画像の種類、対象者がカメラ50撮影画像において検出された回数、対象者の属性(年代、性別)毎に、対応する音声データが設定されている。
例えば、表示装置60に表示される広告画像Aに対応する主音声として、音声データMが対応づけられている。また、広告画像Aの出力中であって、音声出力制御部23が検出した対象者がカメラ50の撮影画像から検出されたのが最初(1回目)であり、対象者の属性が20−30代の男性である場合に対応する音声データとしては、音声データA1が設定されている。
音声出力制御部23は、制御部20の制御によって表示装置60に表示させている広告画像の種類、属性判別部22によって対象者がカメラ50撮影画像から検出された回数、及び、属性判別部22が判別した対象者の属性(年代、性別)に基づいて、広告音声データ32に含まれる複数の音声データから、メインスピーカ45によって出力する主音声の音声データ、及び、超指向性スピーカ40によって出力する副音声の音声データとして、適切な音声データを選択できる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について対比
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「広告文(「クリエイティブ」)」が、コンテンツであることは明らかであって、また、「検索キーワードに対して予め登録され」るものであり、「広告文(「クリエイティブ」)」に「検索キーワード」が付加されているともいえる。
してみると、引用発明の「検索キーワード」と、本願発明1の「音声又は字幕である付加情報」とは、後記の点で相違するものの“付加情報”の点では共通する。
そして、引用発明の「広告文(「クリエイティブ」)」と、本願発明1の「付加情報が付加された動画コンテンツ」とは、後記の点で相違するものの“付加情報が付加されたコンテンツ”の点では共通する。
また、引用発明の「実績値」は、「クリック率(CTR)」であり、本願の請求項11、本願明細書の【0016】等の記載を参酌すれば、本願発明1の「配信実績」には「CTR」が含まれることから、本願発明1の「配信実績」に相当する。
さらに、引用発明の「広告抽出部141」は、「広告データベース148」の「クリエイティブ」のうち「実績値が商品データベース147に登録された平均値以上であるものを抽出」するものであり、そのためには、「広告抽出部141」は、「広告データベース148」から「クリエイティブ」(広告文)の「実績値」を取得していると認められる。
したがって、引用発明の「広告抽出部141」と、本願発明1の「音声又は字幕である付加情報が付加された動画コンテンツの配信実績を取得する取得部」とは、後記の点で相違するものの“付加情報が付加されたコンテンツの配信実績を取得する取得部”の点で共通するものといえる。

イ さらに、上記アの点を踏まえると、引用発明の「広告抽出部141」は、「実績値」に基づいて、抽出する「クリエイティブ」(広告文)を決定しているといえる。
また、引用発明の「クリエイティブ」(広告文)と本願発明1の「付加情報」とは“情報”である点で共通する。
してみると、引用発明の「告抽出部141」と、本願発明1の「前記配信実績に基づいて、複数の付加情報のうちから、所定の動画コンテンツに付加する付加情報を決定する決定部」とは、後記の点で相違するものの“前記配信実績に基づいて、情報を決定する決定部”の点では共通する。

ウ 引用発明の「サーバ装置1」は、「検索者」に対して「検索結果と共に」「リスティング広告」を配信するものであるから、後記の点で相違するものの本願発明1の「配信装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

〈一致点〉
「付加情報が付加されたコンテンツの配信実績を取得する取得部と、
前記配信実績に基づいて、情報を決定する決定部と、
を備える配信装置。」

〈相違点1〉
「付加情報」が、本願発明1では、「音声又は字幕である」のに対して、引用発明では、「検索キーワード」にその旨の特定がされていない点。

〈相違点2〉
「コンテンツ」が、本願発明1では、「動画コンテンツ」であるのに対して、引用発明では、「クリエイティブ」(広告文)にその旨の特定がされていない点。

〈相違点3〉
「決定部」が決定する「情報」が、本願発明1では、「複数の付加情報のうちから、所定の動画コンテンツに付加する付加情報」であるのに対して、引用発明では、「検索キーワード」(付加情報)ではなく、抽出される「クリエイティブ」(広告文)である点。


(2)相違点についての判断
相違点1ないし相違点3は、「音声又は字幕である付加情報」、「動画コンテンツ」、「付加情報」の決定が連関するのでまとめて判断する。
引用文献2ないし5には、「動画コンテンツ」の配信実績に基づいて、当該「動画コンテンツ」に付加される「音声又は字幕である付加情報」のうちから、「所定の動画コンテンツ」に付加する付加情報を決定することは記載されておらず、また、そのことが本願の優先日前に周知の技術であったとも認められない。
なお、引用文献5に記載されているように、動画を含む広告画像に付加する音声データを、広告画像の種類や音声を聴かせる対象者の属性等に応じて選択することは本願出願時における周知技術と認められるが、引用発明と当該周知技術とは、広告及び付加情報の種類や抽出(決定)の対象が異なるため、当業者といえども引用発明に当該周知技術を適用する動機を見いだすことはできないし、仮に、適用したとしても、当該周知技術は、配信実績に基づいて音声データを選択するものではないため、本願発明1の構成には到達しない。
また、引用発明は、異なる「クリエイティブ(広告文)」毎の配信実績に基づいて、特定の「クリエイティブ」(広告文)を抽出(決定)する広告文作成支援システム(引用文献1の【0013】)に係るものであるため、「クリエイティブ」(広告文)に代えて、又は、これに加えて、「検索キーワード」(付加情報)を抽出(決定)の対象とする理由が存在しない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし11について
本願発明2ないし11は、本願発明1を更に限定したものであるので、同様に、当業者であっても引用発明、及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明12、13について
本願発明12は、本願発明1の「配信装置」を、「方法」の観点から記載したものに過ぎず、また、本願発明13は、本願発明1の「配信装置」を、「配信プログラム」の観点から記載したものに過ぎないことから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は上記第3に示したとおりのものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明(上記「第4 1」の引用文献1に記載された発明)、及び引用文献2ないし5に記載された技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2023-03-23 
出願番号 P2021-000286
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 林 毅
特許庁審判官 山澤 宏
児玉 崇晶
発明の名称 配信装置、配信方法及び配信プログラム  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

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