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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A63B
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  A63B
審判 全部申し立て 2項進歩性  A63B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63B
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  A63B
管理番号 1396258
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2023-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-11 
確定日 2023-01-16 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6859682号発明「マルチピースソリッドゴルフボール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6859682号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、5〕、4、〔7−13〕について、訂正することを認める。 特許第6859682号の請求項1、2及び5に係る特許を取り消す。 特許第6859682号の請求項3及び6に係る特許についての申立ては却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6859682号の請求項1乃至13に係る特許についての出願は、平成28年12月2日に出願され、令和3年3月30日にその特許権の設定登録がされ、同年4月14日に特許掲載公報が発行された。その後、同年10月11日付けで特許異議申立人 平川弘子(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1乃至3、5及び6に対して特許異議の申立てがされ、令和4年1月4日付けで取消理由が通知され、同年3月8日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年5月17日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、同年6月14日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期内である同年7月14日に意見書及び訂正請求書についての手続補正書が提出され、同年8月10日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたものである。
そして、取消理由(決定の予告)に対し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。


第2 訂正の適否について
1 令和4年7月14日に提出された手続補正書による訂正請求書の補正の適否について
(1)要旨変更の有無について
特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項は、訂正請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならないものと規定しているが、同項第1号により、請求の理由についてされるときはこの限りでないと規定されているから、訂正請求書の「請求の趣旨」の補正について、要旨の変更が認められていないといえる。
そして、「請求の趣旨」の要旨を変更する補正とは、「請求の趣旨」の記載を変更することによって、補正前後で請求の基礎である「訂正を申し立てている事項」の同一性や範囲を変更することである。
ここで、「請求の趣旨」は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲を引用することにより、請求の内容を記載しているから、訂正特許請求の範囲の記載は、訂正請求における「請求の趣旨」と一体不可分のものであり、そうすると、訂正特許請求の範囲を補正することも、「請求の趣旨の補正」として扱われることとなる。
また、特許法第131条の2の趣旨は、審理対象の拡張変更による審理遅延を防止することにあると解されるところ、訂正事項の同一性に変更があっても、例えば、ある請求項の訂正事項を当該請求項の削除という訂正事項に変更する補正及びそれに整合させるための訂正明細書等についての訂正事項の補正、並びに請求項の削除という訂正事項を追加する補正及びそれに整合させるための訂正明細書等についての訂正事項の補正は、審理遅延を生じさせるものではないから、訂正請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものとは取り扱わない。
この点を踏まえて、令和4年7月14日に提出された手続補正書による補正について検討する。

(2)令和4年7月14日に提出された手続補正書による補正の内容
令和4年6月14日付けの訂正拒絶理由通知に対し、特許権者は、令和4年7月14日に提出された手続補正書において、訂正請求書を以下のとおり補正することを求める。
ア 訂正事項8において、引用する請求項から請求項2を削除し、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改める訂正とする。
イ 上記アの補正に伴い、訂正事項1、2、3、4、5、6における引用する請求項から請求項4を削除する。
ウ 訂正事項12において、引用する請求項から請求項2、4及び5を削除し、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改める訂正とする。
エ 訂正事項13において、明細書の記載を訂正事項12の補正に対応して補正するとともに、訂正事項1、2、3、4、5、6及び9における引用する請求項から請求項7を削除する。

(3)補正の適否
訂正事項から引用する請求項の削除という訂正事項の補正は、上記(1)に照らせば、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第131条の2第1項に規定される要旨の変更には該当しない。
したがって、令和4年7月14日に提出された手続補正書による手続補正は適法なものであり、令和4年3月8日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、下記訂正事項2(1)乃至(13)からなるものとなった。

2 本件訂正請求の内容について
本件訂正請求は、令和4年3月8日付けで提出された訂正請求書及び同年7月14日付けで提出された手続補正書の記載からみて、その請求の趣旨を「特許第6859682号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜13について訂正することを求める。」とするものであり、その内容はつぎのとおりのものである。(注:下線部分は訂正箇所を示す。)
なお、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(特許掲載公報に記載されたものであって、本件訂正請求による訂正前のもの)について言及する際には、以下において、それぞれ、「本件特許明細書」、「本件特許請求の範囲」、「本件特許図面」という。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「内層コアの直径が35.0mm以下であり、」
と記載されているのを、
「内層コアの直径が23.1〜25mmであり、」
に訂正する(以下「訂正事項1」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、」
と記載されているのを、
「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、」
に訂正する(以下「訂正事項2」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「T1/T2の値が1.5〜3.0であり、」
と記載されているのを、
「T1/T2の値が1.5〜2.5であり、」
に訂正する(以下「訂正事項3」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、
「外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上」
と記載されているのを、
「外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45」
に訂正する(以下「訂正事項4」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に、
「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、」
と記載されているのを、
「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、」
に訂正する(以下「訂正事項5」という。)。
請求項1の記載を引用する請求項2及び5も同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に、
「酸含量が16質量%以上のアイオノマー」
と記載されているのを、
「酸含量が19〜20質量%のアイオノマー」
に訂正する(以下「訂正事項6」という。)。
請求項2の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3を削除する(以下「訂正事項7」という。)。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4に、
「内層コアのゴム組成物には、水が配合される請求項1〜3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」
と記載されているのを、
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には、水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。」
に訂正する(以下「訂正事項8」という。)。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に、
「内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22以上」
と記載されているのを、
「内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22〜29」
に訂正する(以下「訂正事項9」という。)。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項1〜4のいずれか1項記載」
と記載されているのを、
「請求項1又は2記載」
に訂正する(以下「訂正事項10」という。)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項6を削除する(以下「訂正事項11」という。)。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7に、
「上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成される請求項1〜6のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」
と記載されているのを、
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール」
に訂正する(以下「訂正事項12」という。)。
請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8乃至13も同様に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の段落【0009】の「従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。」以降を削除し、
「1.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1〜25mmであり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.中間層の樹脂組成物には、酸含量が19〜20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には、水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
5.内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22〜29である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記(iv)成分は、下記構造式(1)
R1−M1−R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
である上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記(iv)成分は、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛及びモノラウリル酸モノフマル酸亜鉛の群から選ばれる上記7又は8記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記(i)成分である基材ゴム100質量部に対する上記(ii)成分の配合量が10〜60質量部であり、且つ上記(iv)成分の配合量が0.1〜50質量部である上記7〜9のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11.共架橋剤全量〔(ii)成分と(iv)成分との合計量〕に対する特定する上記(iv)成分の質量比率が1〜50質量%である上記10記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
12.ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値が1.7〜4.1である上記7〜11のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
13.〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値が13〜25である上記7〜13のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。」
に訂正する(以下「訂正事項13」という。)。

(14)別の訂正単位とする求め
特許権者は、訂正後の請求項4及び7と、訂正後の請求項7の記載を引用する請求項8乃至13について、当該請求項の訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。

3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コアの直径」について、「35.0mm以下」から「23.1〜25mm」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「内層コアの直径が23.1〜25mmであり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コアの直径」について、「35.0mm以下」から「23.1〜25mm」に限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項1は、「内層コアの直径」について、「35.0mm以下」から「23.1〜25mm」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項1に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0036】の「内層コアの直径としては、好ましくは15mm以上、より好ましくは17.5mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、上限として、35.0mm以下であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下とすることが推奨される。」及び【0089】の【表3】の実施例1乃至4の「外径(mm) 23.1」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)」について、「5.5〜9.0mm」から「6.5〜8.0mm」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)」について、「5.5〜9.0mm」から「6.5〜8.0mm」に限定するものである。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項2は、「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)」について、「5.5〜9.0mm」から「6.5〜8.0mm」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項2に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0045】の「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの所定荷重変形量、即ち、たわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは4.5〜10.0mm、より好ましくは5.5〜9.0mm、更に好ましくは6.5〜8.0mmである。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「T1/T2の値」について、「1.5〜3.0」から「1.5〜2.5」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「T1/T2の値が1.5〜2.5であり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「T1/T2の値」について、「1.5〜3.0」から「1.5〜2.5」に限定するものである。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項3は、「T1/T2の値」について、「1.5〜3.0」から「1.5〜2.5」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項3に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0068】の「本発明のゴルフボールは、更に、以下の要件を満たすことが好適である。(I)コア、中間層被覆球体及びボールの各球体間のたわみ量の関係 内層コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体、即ち、コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.0〜2.7、更に好ましくは1.5〜2.5である。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「25以上」から「30〜45」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「25以上」から「30〜45」に限定するものである。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項4は、「外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「25以上」から「30〜45」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項4に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0036】の「内層コアの直径としては、好ましくは15mm以上、より好ましくは17.5mm以上 、更に好ましくは20mm以上であり、上限として、35.0mm以下であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下とすることが推奨される。」及び【0089】の【表3】の実施例1乃至4の「外径(mm) 23.1」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項1の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度」について、「65以上」から「66〜70」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2及び5は、訂正後の請求項1の「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、」との記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度」について、「65以上」から「66〜70」に限定するものである。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項5は、「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度」について、「65以上」から「66〜70」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項5に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0050】の「中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは65以上、より好ましくは66以上であり、上限として、好ましくは74以下、より好ましくは72以下、更に好ましくは70以下である。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項2の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「アイオノマー」の「酸含量」について、「16質量%以上」から「19〜20質量%」に限定するものである。
同様に、訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項5は、訂正後の請求項2の「酸含量が19〜20質量%のアイオノマー」との記載を引用することにより、訂正前の請求項5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「アイオノマー」の「酸含量」について、「16質量%以上」から「19〜20質量%」に限定するものである。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項6は、「アイオノマー」の「酸含量」について、「16質量%以上」から「19〜20質量%」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項6に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0081】の「表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
「AM7315」:アイオノマー(酸含量20質量%)、三井・デュポンポリケミカル社製
「AD8546」:アイオノマー(酸含量19質量%)、デュポン社製」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項6は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、請求項3を削除するというものである。
そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項7は、請求項3を削除するというものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項7は、請求項3を削除するというものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項4に「内層コアのゴム組成物には、水が配合される請求項1〜3のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」と記載されているのを、請求項2及び3を引用しないものとし、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものである。
そうすると、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項8は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項8は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項5の「マルチピースソリッドゴルフボール」における「内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「22以上」から「22〜29」に限定するものである。
そうすると、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項9は、「内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値」について、「22以上」から「22〜29」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項9に関する記載として、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の【0039】の「内層コアの表面と中心との硬度差、即ち、(Cs)−(Cc)の値は、好ましくは19以上、より好ましくは21以上、更に好ましくは22以上であり、上限値としては、39以下、より好ましくは34以下、更に好ましくは29以下である。」との記載に基づいて導き出される事項である。
そうすると、訂正事項9は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(10)訂正事項10について
ア 訂正の目的について
訂正事項10は、訂正前の請求項5に「請求項1〜4のいずれか1項記載」と記載されているのを、請求項3及び4を引用しないものとし、「請求項1又は2記載」に限定するものである。
そうすると、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項10は、「請求項1〜4のいずれか1項記載」と記載されているのを、請求項3及び4を引用しないものとし、「請求項1又は2記載」に限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項10は、引用する請求項3及び4を削除するというものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(11)訂正事項11について
ア 訂正の目的について
訂正事項11は、請求項6を削除するというものである。
そうすると、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項11は、請求項6を削除するというものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項11は、請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(12)訂正事項12について
ア 訂正の目的について
訂正事項12は、訂正前の請求項7に「上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成される請求項1〜6のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール」と記載されているのを、請求項2乃至6を引用しないものとし、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものである。
同様に、訂正後の請求項7を引用する訂正後の請求項8乃至13は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めた訂正後の請求項7の記載を引用するものである。
そうすると、訂正事項12は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項12は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項12は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項12は、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

(13)訂正事項13について
ア 訂正の目的について
訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴い、特許請求の範囲における請求項1乃至13の記載と、明細書において請求項1乃至13対応する課題を解決するための手段が記載された段落【0009】の記載との整合を図るための訂正である。
そうすると、訂正事項13は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことについて
上記アのとおり、訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴い、特許請求の範囲における請求項1乃至13の記載と、明細書において請求項1乃至13に対応する課題を解決するための手段が記載された段落【0009】の記載との整合を図るための訂正であるところ、上記訂正事項1乃至12が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないのであることからすれば、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
そうすると、訂正事項13は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
上記アのとおり、訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴い、特許請求の範囲における請求項1乃至13の記載と、明細書において請求項1乃至13に対応する課題を解決するための手段が記載された段落【0009】の記載との整合を図るための訂正であるところ、上記訂正事項1乃至12が願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであることからすれば、訂正事項13は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第5項に適合するものである。

エ 明細書又は図面の訂正と関係する請求項についての説明
訂正事項13は、上記訂正事項1乃至12に係る訂正に伴うものであり、その記載内容と訂正後の請求項1、2、4、5、7乃至13の記載内容との間に実質的な差異はない。
したがって、訂正事項13は、請求項1、2、4、5、7乃至13を含む一群の請求項である請求項1乃至13に関係する訂正である。

(14)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件訂正に係る本件特許の請求項1乃至3、5及び6に係る特許が特許異議の申立ての対象とされているものであるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1乃至3、5及び6に係る発明については課されない。
また、本件訂正に係る本件特許の請求項4、7乃至13に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同ただし書第1号または第2号に掲げる事項を目的とするものではないから、請求項4、7乃至13に係る訂正事項8、12及び13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(15)一群の請求項について
訂正前の請求項1乃至13について、請求項2乃至13は、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1乃至13に対応する訂正後の請求項1乃至13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 小括
上記のとおりであるから、本件訂正は、第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号を目的とするものであり、同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲(令和4年7月14日提出の手続補正書により補正されたもの)のとおり、訂正後の請求項[1−13]について訂正することを認める。


第3 本件訂正特許発明について
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された本件特許異議の申立ての対象である請求項1、2、3、5及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正特許発明1」、「本件訂正特許発明2」、「本件訂正特許発明3」、「本件訂正特許発明5」及び「本件訂正特許発明6」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1〜25mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
中間層の樹脂組成物には、酸含量が19〜20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】(削除)
【請求項5】
内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22〜29である請求項1又は2のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】(削除)


第4 取消理由(決定の予告)の概要
訂正後の本件訂正特許発明1、2及び5に対して、当審が令和4年8月10日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。


第5 当審の判断
1 本件訂正特許発明1、本件訂正特許発明2及び本件訂正特許発明5について
本件特許明細書には以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ドライバーフルショット時の低スピン効果が大きく飛距離増大をもたらすと共に、高いレベルのアプローチスピン性能を与えるマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、中間層及びカバーを具備したゴルフボールにおいて、コアを内層コア及び外層コアの2層に形成し、これらを異なるゴム組成物により形成し、中間層及びカバーを異なる樹脂組成物により形成し、内層コアの直径、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JISC硬度(Cc)を差し引いた値を特定範囲に設定すると共に、中間層の材料硬度を、特定範囲とし、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなるようにゴルフボールを設計することにより、ドライバー(W#1)によるフルショット時の低スピン化の効果が大きくなり、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明のゴルフボールは、特に、中・上級者及びプロが最適に使用できるように、2層コアの周囲に内硬外軟の中間層・カバーの2層の被覆層を形成することにより、フルショットで低スピン化が得られる構造にしており飛距離増大が図られると共に、ゲーム性を高めるためのアプローチした時のスピン性能が高めのレベルを得ることができる。
【0009】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1〜25mmであり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.中間層の樹脂組成物には、酸含量が19〜20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には、水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
5.内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22〜29である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α、β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記(iv)成分は、下記構造式(1)
R1−M1−R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
である上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記(iv)成分は、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛及びモノラウリル酸モノフマル酸亜鉛の群から選ばれる上記7又は8記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記(i)成分である基材ゴム100質量部に対する上記(ii)成分の配合量が10〜60質量部であり、且つ上記(iv)成分の配合量が0.1〜50質量部である上記7〜9のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11.共架橋剤全量〔(ii)成分と(iv)成分との合計量〕に対する特定する上記(iv)成分の質量比率が1〜50質量%である上記10記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
12.ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値が1.7〜4.1である上記7〜11のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
13.〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値が13〜25である上記7〜12のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。」
以上の記載から、本件訂正特許発明が解決しようとする課題は、
「ドライバーフルショット時の低スピン効果が大きく飛距離増大をもたらすと共に、高いレベルのアプローチスピン性能を与えるマルチピースソリッドゴルフボールを提供すること」
であって、その課題を解決するための手段は、上記【0009】の1.、2.、4.、5.、7.乃至13.であると認められる。

これに対し、本件特許明細書には、飛び性能及びアプローチスピン性能が判定基準を満たすマルチピースソリッドゴルフボールの実施例として、実施例1乃至4が記載されている。
そして、前記実施例1乃至4のマルチピースソリッドゴルフボールは、以下の諸元からなるものである。
(1)内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボール
(2)内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるもので
(3)内層コアの直径が23.1mmであり、
(4)内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が7.4mmであり、
(5)内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.9〜2.1であり、
(6)外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が36〜39であると共に、
(7)中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66であり、
(8)且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高いマルチピースソリッドゴルフボール

そうすると、本件訂正特許発明1には、実施例1乃至4により本件特許の発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない以下の範囲
(3)内層コアの直径が23.1より大きく25.0mm以下の範囲、
(4)内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜7.4mmより小さく、7.4より大きく8.0mm以下の範囲
(5)内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜1.9より小さく、2.1より大きく2.5以下の範囲
(6)外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30以上36未満、及び39より大きく45以下の範囲
(7)中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66より大きく70以下の範囲を含むものであることから、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決する手段が反映されているとはいえない。
よって、本件訂正特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。

2 本件特許2について
上記1と同様に検討すると、本件訂正特許発明2には、実施例1乃至4により本件特許の発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない以下の範囲
中間層の樹脂組成物には、酸含量が20質量%のアイオノマーが50質量%及び酸含量が19質量%のアイオノマーが50質量%含有されるもの以外のものを含むものであることから、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決する手段が反映されているとはいえない。
よって、本件訂正特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。

3 本件特許5について
上記1と同様に検討すると、本件訂正特許発明5には、実施例1乃至4により本件特許の発明が解決しようとする課題を解決したことが示されていない以下の範囲
内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22以上26未満及び26より大きく29以下の範囲を含むものであることから、本件訂正特許発明が解決しようとする課題を解決する手段が反映されているとはいえない。
よって、本件訂正特許発明5は、発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。

4 まとめ
上記1乃至3で検討したとおり、本件訂正特許発明1、2及び5は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1乃至3、5及び6に係る特許は、同条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきものである。


第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由及び取消理由の概要
取消理由(決定の予告)で採用しなかった、訂正前の請求項1、2、3、5及び6に係る特許に対する特許異議申立理由及び取消理由(決定の予告で採用しなかったもの)の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1(特許法第29条第1項第3号
請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

2 申立理由2(特許法第29条第2項
請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、3、5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

3 取消理由3(特許法第36条第6項第1号
請求項3及び6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第7 当審の判断
1 請求項3及び6に係る特許について
本件訂正により、請求項3及び6に係る特許は削除されたことから、当該請求項3及び6に係る特許に対する上記申立理由1、申立理由2及び取消理由1はその対象が消滅したから、当該請求項3及び6に係る発明に対する上記申立理由1、申立理由2及び取消理由1は解消した。

2 各甲号証
(1)甲第1号証(特開2012−139303号公報)
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第1号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、センター、包囲層、中間層及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールに関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットにおいて、大きな飛距離を望むゴルフプレーヤーは多い。ゴルフボールの飛行性能には、改良の余地がある。本発明の目的は、ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットにおいて大きな飛距離が得られるゴルフボールの提供にある。」
ウ 「【0021】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。コア4は、球状のセンター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。」
エ 「【0033】
ゴルフボール2の耐久性の観点から、センター10の中心硬度Hoは40以上が好ましく、45以上がより好ましく、50以上が特に好ましい。ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットでのスピン抑制の観点から、中心硬度Hoは80以下が好ましく、75以下がより好ましく、70以下が特に好ましい。センター10が切断されて得られる半球の切断面中心点に、JIS−C型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度Hoが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。

【0035】
センター10の圧縮変形量Doは、4.0mm以上7.0mm以下が好ましい。圧縮変形量Doが4.0mm以上であるセンター10により、優れた打球感が達成されうる。このセンター10により、さらに、ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットでのスピンが抑制される。これらの観点から、圧縮変形量Doは4.5mm以上がより好ましく、4.9mm以上が特に好ましい。圧縮変形量Doが7.0mm以下であるセンター10により、優れた反発性能が達成されうる。この観点から、圧縮変形量Doは6.5mm以下が特に好ましい。
【0036】
圧縮変形量の測定では、測定対象である球体(センター10、コア4、ゴルフボール2等)が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって、金属製の円柱が降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量が、測定される。」
オ 「【0047】
この包囲層12では、最内部から表面まで、硬度が徐々に大きくなる。反発性能の観点から、包囲層12の表面(すなわちコア4の表面)の硬度Heは、75以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が特に好ましい。打球感の観点から、硬度Heは95以下が好ましく、93以下がより好ましく、92以下が特に好ましい。コア4の表面にJIS−C型硬度計が押しつけられることにより、硬度Heが測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。」
カ 「【0050】
コア4の圧縮変形量Deは、2.0mm以上3.5mm以下が好ましい。圧縮変形量Deが2.0mm以上であるコア4により、ゴルフボール2の優れた打球感が達成される。この観点から、圧縮変形量Deは2.2mm以上がより好ましく、2.4mm以上が特に好ましい。圧縮変形量Deが3.5mm以下であるコア4により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成される。この観点から、圧縮変形量Deは3.2mm以下がより好ましく、2.9mm以下が特に好ましい。
【0051】
スピンの抑制の観点から、コア4の表面硬度Heとセンター10の中心硬度Hoとの差(He−Ho)は20以上が好ましく、25以上が特に好ましい。製造容易の観点及びコア4の反発性能の観点から、差(He−Ho)は40以下が好ましく、35以下が特に好ましい。
【0052】
センター10の圧縮変形量Doとコア4の圧縮変形量Deとの比(Do/De)は、1.5以上2.5以下が好ましい。この比(Do/De)が1.5以上であるゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されたとき、スピンが抑制されうる。この観点から、比(Do/De)は1.7以上がより好ましく、1.8以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、この比(Do/De)は2.4以下が特に好ましい。
【0053】
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミドエラストマー及びポリオレフィンが例示される。
【0054】
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。アイオノマー樹脂は、高弾性である。後述されるように、このゴルフボール2のカバー8は、薄くかつ軟質である。従って、このゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されると、中間層6が大きく変形する。アイオノマー樹脂を含む中間層6は、ドライバーショット、ロングアイアンショット及びミドルアイアンショットでの反発性能に寄与する。アイオノマー樹脂と他の樹脂とが、併用されてもよい。併用される場合、反発性能の観点から、基材ポリマーの全量に対するアイオノマー樹脂の量の比率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、85質量%以上が特に好ましい。」
キ 「【0057】
アイオノマー樹脂の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランAM7320」、「ハイミランAM7329」及び「ハイミランAM7337」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。」
ク 「【0061】
中間層6の硬度Hmは、90以上が好ましい。硬度Hmが90以上である中間層6により、ゴルフボール2の優れた反発性能が達成される。硬度Hmが90以上である中間層6により、コア4及び中間層6からなる球の外剛内柔構造が達成されうる。外剛内柔構造を有する球は、ゴルフボール2がドライバー、ロングアイアン又はミドルアイアンで打撃されたときのスピンを抑制する。これらの観点から、硬度Hmは92以上が特に好ましい。打球感及び耐久性の観点から、硬度Hmは98以下が好ましく、97以下が特に好ましい。スピン抑制の観点から、中間層6の硬度Hmがコア4の表面硬度Heより大きく、かつ、コア4の表面硬度Heがセンター10の表面硬度より大きいことが好ましい。
【0062】
硬度Hmは、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたJIS−C型のスプリング式硬度計によって測定される。測定には、熱プレスで成形された、厚みが約2mmであるスラブが用いられる。23℃の温度下に2週間保管されたスラブが、測定に用いられる。測定時には、3枚のスラブが重ね合わされる。中間層6の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが、測定に用いられる。」
ケ 「【0065】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンが用いられたカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。ポリウレタンからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。」
コ 「【0103】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物を得た。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型にコアを投入した。樹脂組成物を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。」
サ 「【0106】
[実施例2及び3並びに比較例1から3]
センター、包囲層及びカバーの仕様を下記の表4及び5に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2及び3並びに比較例1から3のゴルフボールを得た。センターのゴム組成物の詳細が、下記の表1に示されている。包囲層のゴム組成物の詳細が、下記の表2に示されている。カバーの樹脂組成物の詳細が、下記の表3に示されている。」
シ 「【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
【表3】


ス 「【0116】
【表4】



また、上記記載事項から、以下の事項が認められる。
セ 実施例3は、球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えた球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、18質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.7質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、37質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビス(パンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、50質量部のアイオノマー樹脂(「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(「ハイミランAM7329」)からなり、
カバーは、100質量部のポリウレタン#1及び4質量部の二酸化チタンからなり、
センターの直径が18mmであり、
センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmであり、
センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32であり、
包囲層の表面JIS−C硬度(He)からセンターの中心JIS−C硬度(Ho)を差し引いた値が31.7であると共に、
中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS−C硬度が94以上である、マルチピースソリッドゴルフボールであると認められる。

上記ア乃至スの記載事項及び認定事項セによれば、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えた球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、18質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.7質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、37質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビス(パンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、50質量部のアイオノマー樹脂(「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(「ハイミランAM7329」)からなり、
カバーは、100質量部のポリウレタン#1及び4質量部の二酸化チタンからなり、
中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるもの、
センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmであり、
センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32であり、
包囲層の表面JIS−C硬度(He)からセンターの中心JIS−C硬度(Ho)を差し引いた値が31.7であると共に、
中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS−C硬度が94である、
且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなるマルチピースソリッドゴルフボール。」

(2)甲第2号証(特開2010−162323号公報)
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第2号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、センター、包囲層、中間層及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールに関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
中間層に酸の含有量が高いアイオノマー樹脂が用いられたゴルフボールは、耐久性に劣る。中間層に中和度が高いアイオノマー樹脂を含む組成物は、成形性に劣る。
【0009】
ゴルフボールに対するゴルファーの要求は、ますますエスカレートしている。本発明の目的は、諸性能に優れたゴルフボールの提供にある。」
ウ 「【0018】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。コア4は、球状のセンター10と、このセンター10の外側に位置する包囲層12とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル14が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル14以外の部分は、ランド16である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。ゴルフボール2が、包囲層12と中間層6との間に他の層を備えてもよい。ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に他の層を備えてもよい。」
エ 「【0029】
耐久性の観点から、センター10の中心硬度H1は25以上が好ましく、30以上がより好ましく、35以上が特に好ましい。スピン抑制の観点から、中心硬度H1は55以下が好ましく、50以下がより好ましく、45以下が特に好ましい。センター10が切断されて得られる半球の切断面中心点に、ショアD型硬度計が押しつけられることにより、中心硬度H1が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0030】
反発性能の観点から、センター10の表面硬度H2は35以上が好ましく、40以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。打球感の観点から、表面硬度H2は65以下が好ましく、60以下がより好ましく、55以下が特に好ましい。センター10の表面にショアD型硬度計が押しつけられることにより、表面硬度H2が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0031】
スピンの抑制の観点から、表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2−H1)は7以上が好ましく、10以上がより好ましく、13以上が特に好ましい。ゴルフボール2の耐久性の観点から、差(H2−H1)は25以下が好ましく、20以下がより好ましく、16以下が特に好ましい。
【0032】
後述されるように、包囲層12はゴム組成物又は樹脂組成物からなる。包囲層12がゴム組成物からなる場合、センター10の直径は、5mm以上35mm以下が好ましい。直径が5mm以上であるセンター10により、ドライバーショットでのスピンが抑制されうる。この観点から、この直径は10mm以上が特に好ましい。この直径が35mm以下であるゴルフボール2では、十分な厚みを有する包囲層12、中間層6及びカバー8が成形されうる。この観点から、直径は30mm以下が特に好ましい。
【0033】
包囲層12が樹脂組成物からなる場合、センター10の直径は、31mm以上41mm以下が好ましい。直径が31mm以上であるセンター10は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、直径は35mm以上が特に好ましい。この直径が41mm以下であるゴルフボール2では、十分な厚みを有する包囲層12、中間層6及びカバー8が成形されうる。この観点から、直径は40mm以下が特に好ましい。
【0034】
包囲層12がゴム組成物からなる場合、センター10の圧縮変形量は4.0mm以上10.0mm以下が好ましい。圧縮変形量が4.0mm以上であるセンター10は、ゴルフボール2の打球感に寄与する。この観点から、圧縮変形量は4.5mm以上が特に好ましい。圧縮変形量が10.0mm以下であるセンター10は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、圧縮変形量は8.0mm以下が特に好ましい。
【0035】
包囲層12が樹脂組成物からなる場合、センター10の圧縮変形量は2.0mm以上5.0mm以下が好ましい。圧縮変形量が2.0mm以上であるセンター10は、ゴルフボール2の打球感に寄与する。この観点から、圧縮変形量は2.5mm以上が特に好ましい。圧縮変形量が5.0mm以下であるセンター10は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、圧縮変形量は4.0mm以下が特に好ましい。
【0036】
圧縮変形量の測定では、球(センター10、コア4、ゴルフボール2等)が金属製の剛板の上に置かれる。この球に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球は、変形する。球に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量である。」
オ 「【0049】
コア4の表面の硬度H4は、45以上65以下が好ましい。硬度H4が45以上であるコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与する。この観点から、硬度H4は47以上がより好ましく、48以上が特に好ましい。硬度H4が65以下であるコア4により、中間層6を含む球の外剛内柔構造が達成されうる。この観点から、硬度H4は63以下がより好ましく、60以下が特に好ましい。コア4の表面(すなわち包囲層12の表面)にショアD型硬度計が押しつけられることにより、硬度H4が測定される。測定には、この硬度計が装着された自動ゴム硬度測定機(高分子計器社の商品名「P1」)が用いられる。
【0050】
スピン抑制の観点から、コア4の表面硬度H4とセンター10の中心硬度H1との差(H4−H1)は18以上が好ましく、20以上がより好ましく、25以上が特に好ましい。製造容易の観点及び耐久性の観点から、差(H4−H1)は65以下が好ましく、60以下がより好ましく、51以下が特に好ましい。
【0051】
コア4の圧縮変形量は2.0mm以上4.5mm以下が好ましい。圧縮変形量が2.0mm以上であるコア4は、ドライバーショットでのスピンを抑制しうる。この観点から、圧縮変形量は2.2mm以上がより好ましく、2.3mm以上が特に好ましい。圧縮変形量が4.5mm以下であるコア4は、ゴルフボール2の反発性能に寄与しうる。この観点から、圧縮変形量は4.0mm以下がより好ましく、3.5mm以下が特に好ましい。」
カ 「【0063】
この共重合体(B)の、(メタ)アクリル酸成分の量は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が特に好ましい。この量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下が特に好ましい。」
キ 「【0068】
この共重合体(B)の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン1855」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7318」、「ハイミランMK7320」及び「ハイミランMK7329」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6320」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。2種以上の樹脂が併用されてもよい。
【0069】
中間層6の樹脂組成物における共重合体(B)の含有率は、16質量%以上78質量%以下が好ましい。この含有率が16質量%以上である中間層6は、ゴルフボール2の反発性能及び耐久性に寄与しうる。この観点から、含有率は20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。この含有率が78質量%以下である中間層6により、外剛内柔構造が達成されうる。この観点から、含有率は75質量%以下がより好ましく、70質量%以下が特に好ましい。」
ク 「【0081】
中間層6の硬度H5は、65以上75以下が好ましい。硬度H5が65以上である中間層6により、外剛内柔構造が達成される。この観点から、硬度H5は66以上がより好ましく、67以上が特に好ましい。硬度H5が75以下である中間層6は、ゴルフボール2の打球感及び耐久性を阻害しない。この観点から、硬度H5は73以下がより好ましく、71以下が特に好ましい。」
ケ 「【0089】
カバー8は、樹脂組成物からなる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン及びアイオノマー樹脂が例示される。特に、ポリウレタンが好ましい。ポリウレタンは、軟質である。ポリウレタンが用いられたカバー8を備えたゴルフボール2がショートアイアンで打撃されたときのスピン速度は、大きい。ポリウレタンからなるカバー8は、ショートアイアンでのショットにおけるコントロール性能に寄与する。ポリウレタンは、カバー8の耐擦傷性能にも寄与する。」
コ 「【0099】
カバー8の硬度H7は、10以上50以下が好ましい。硬度H7が10以上であるカバー8は、ゴルフボール2の反発性能を阻害しない。この観点から、硬度H7は15以上がより好ましく、25以上が特に好ましい。硬度H7が50以下であるカバー8は、ゴルフボール2のコントロール性能に寄与する。この観点から、硬度H7は45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。硬度H7の測定には、カバー8の樹脂組成物と同一の樹脂組成物からなるスラブが用いられる。測定方法は、中間層6の硬度H5の測定方法と同様である。」
サ 「【0108】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(i)を得た。このゴム組成物(i)を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で30分間加熱して、直径が20.1mmであるセンターを得た。ボール質量が45.4gとなるように、硫酸バリウムの量を調整した。
【0109】
100質量部のハイシスポリブタジエン(前述の「BR−730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドを混練し、ゴム組成物(a)を得た。このゴム組成物(a)から、ハーフシェルを成形した。上記センターを2枚のハーフシェルで被覆した。このセンター及びハーフシェルを、共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃の温度下で30分間加熱して、包囲層を形成した。センター及び包囲層からなるコアの直径は、39.7mmである。
【0110】
20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(前述の「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(前述の「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(前述の「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(前述の「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(d)を得た。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型にコアを投入した。樹脂組成物(d)を射出成形法にてコアの周りに射出し、中間層を成形した。この中間層の厚みは、1.0mmであった。
【0111】
二液硬化型エポキシ樹脂を基材ポリマーとする塗料組成物(神東塗料社の商品名「ポリン750LE)を調製した。この塗料組成物の主剤液は、30質量部のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と、70質量部の溶剤とからなる。この塗料組成物の硬化剤液は、40質量部の変性ポリアミドアミンと、55質量部の溶剤と、5質量部の酸化チタンとからなる。主剤液と硬化剤液との質量比は、1/1である。この塗料組成物を中間層の表面にスプレーガンで塗布し、40℃雰囲気下で24時間保持して、補強層を得た。補強層の厚みは、10μmであった。
【0112】
100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(前述の「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンを二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物(x)を得た。この樹脂組成物(x)から、圧縮成形法にて、ハーフシェルを得た。このハーフシェル2枚で、コア、中間層及び補強層からなる球を被覆した。共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなり、キャビティ面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に、上記球及びハーフシェルを投入した。圧縮成形法にて、カバーを得た。このカバーの厚みは、0.5mmであった。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状を有するディンプルが形成された。このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が42.7mmである実施例1のゴルフボールを得た。」
シ 「【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
【表5】

【0124】
【表6】

【0125】
【表7】



また、上記記載事項から、以下の事項が認められる。
ス 実施例1は、球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えている球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(「BR−730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
カバーは、100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
センターの直径が20.1mmであり、
センターに対して、球に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの圧縮変形量(mm)が5.8mmであり、
表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2−H1)は7以上、25以下であり、
コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32であると共に、
中間層の材料硬度(H5)は、そのショアD硬度が67であり、
コアと中間層とからなる球のショアD硬度は69であり、カバーのショアD硬度は32である、
マルチピースソリッドゴルフボール、であると認められる。

上記ア乃至シの記載事項及び認定事項スによれば、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「球状のセンターと、このセンターの外側に位置する包囲層とを備えている球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているゴルフボールであって、
センターは、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
包囲層は、100質量部のハイシスポリブタジエン(「BR−730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、
中間層は、20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
カバーは、100質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、
センターの直径が20.1mmであり、
センターに対して、球に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの圧縮変形量(mm)が5.8mmであり、
表面硬度H2と中心硬度H1の差(H2−H1)は7以上、25以下であり、
コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32であると共に、
中間層の材料硬度(H5)は、そのショアD硬度が67であり、
コアと中間層とからなる球のショアD硬度は69であり、カバーのショアD硬度は32である、
マルチピースソリッドゴルフボール。」

(3)甲第3号証
本件特許に係る出願の出願前の2002年7月22日〜26日に開催された「World Scientific Congress ofGolf」の会報「Science and Golf IV」に掲載された「Compression by Any Other Name」と題する論文には、つぎの事項が記載されている。
ア 「

」(9頁)
(当審訳:Atti法と圧縮変形測定方法との換算は以下のとおりであることが判明した。
Atti法と100kg圧縮の変換 100kg圧縮変形量=−0.0349(Atti)+5.8948
Atti法と130-10kg圧縮の変換 103(当審注:130の誤記と認める)-10kg圧縮変形量=−0.0342(Atti)+5.7294)

(4)甲第4号証
テュポン社から発行されている 「JIS-C and Shore D/ Shore AHardness value s」と題する技術資料で、JIS−C硬度とショアDまたはショアA硬度の換算を示す資料であり、JIS−C硬度とショアDの換算式として、以下の式が開示されている。発行日は不明であるが、米国特許6210293号の再審査請求R E 95/000120において、2007年5月29日に証拠文献として米国特許庁に提出された文献である。本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第4号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「When evaluating golf ball cover materials, it is often desirable to understand how hardness values from one testing protocol correlate with those from another. Specifically, the recent proliferation of Japanese patents has left many U.S. manufacturers and materials suppliers wondering how Japanese hardness values (which are measured as “JIS C”)correspond to Shore D and Shore A values commonly used in the United States (per ASTM D-2240).
With regression analysis, it is possible to “translate”JIS C values into Shore D and Shore A values. Using golf ball cover materials with hardness values ranging from 45 to 91 JIS C, DuPont took corresponding measurements with Shore D and Shore A gauges(Table I and II). The resulting trendline plots (Figures 1 and 2, reverse side) can be used to read the equivalent Shore D or Shore A value for any JIs C value in this range.」(当審訳:ゴルフボールのカバー材料を評価する際に、一つのテストプロトコルから得られた硬度の値が、他のものから得られたものにどのように相関するのかを理解することがしばしば必要になる。特に、最近の日本の特許の急増により、多くの米国の製造業者および材料メーカーは、(JIS−Cで測定された)日本の硬度の値が、米国で慣用的に使用されているショアDおよびショアAの値(ASTM D−2240)にどのように対応するのかどうかを知りたいと思っていた。
回帰分析により、JIS−Cの値をショアDおよびショアAの値に「翻訳」することができる。JIS−C硬度が45〜91の範囲の硬度を有するゴルフボールカバー材料を用いて、デュポンは、ショアDおよびショアAの測定器を用いて、対応する測定を行った。結果として得られたトレンドラインプロット(次ページ、図1および図2 )は、この範囲のJ I S一Cの値から対応するショアDおよびショアA硬度を読み取るのに使うことができる。)

(5)甲第5号証(特開2016−116627号公報)
本件特許に係る出願の出願前に出願公開された甲第5号証には、つぎの事項が記載されている。
ア 「【0100】【表4】



3 申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)甲第1号証に基づく申立理由1について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
a 甲1発明の「センター」、「包囲層」、「『センター』と、『包囲層とを備えた球状のコア』」、「カバー」、「中間層」及び「マルチピースソリッドゴルフボール」は、それぞれ、本件訂正特許発明1の「内層コア」、「外層コア」、「2層のコア」、「カバー」、「中間層」及び「マルチピースソリッドゴルフボール」に相当する。
b 甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」は、コアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールとの概念で一致する。
c 甲1発明の「センター」は100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、18質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.7質量部のジクミルパーオキサイドからなり、「包囲層」は、100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、37質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.3質量部のビス(パンタブロモフェニル)ジスルフィド及び0.9質量部のジクミルパーオキサイドからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成されているものとの概念で一致する。
d 甲1発明の「中間層」は、50質量部のアイオノマー樹脂(「サーリン8945」)及び50質量部の他のアイオノマー樹脂(「ハイミランAM7329」)からなり、「カバー」は、100質量部のポリウレタン#1及び4質量部の二酸化チタンからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものとの概念で一致する。
e 甲1発明の「包囲層の表面JIS−C硬度(He)からセンターの中心JIS−C硬度(Ho)を差し引いた値」が31.7であるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲1発明の「マルチピースソリッドゴルフボール」とは、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が31.7である点で一致する。

そうすると、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が31.7であるマルチピースソリッドゴルフボール。」

[相違点1−1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は「23.1〜25mm以下」であるのに対し、甲1発明は18.0mmである点。

[相違点1−2]
本件訂正特許発明1が、「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mm」であるのに対し、甲1発明は、センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmである点。

[相違点1−3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5」であるのに対し、甲1発明は、センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32である点。

[相違点1−4]
本件訂正特許発明1が、「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70」であるのに対し、甲1発明は、中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS−C硬度が94以上である点。

[相違点1−5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲1発明は、その点が定かでない点。

(イ)判断
以上のとおり、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、[相違点1−1]乃至[相違点1−5]において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲1発明とは、少なくとも上記[相違点1−1]乃至[相違点1−5]において相違するものである。
したがって、本件訂正特許発明2及び5は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(2)甲第2号証に基づく申立理由1について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
ア 甲2発明の「センター」、「包囲層」、「『センター』と、『包囲層とを備えた球状のコア』」、「カバー」、「中間層」及び「ゴルフボール」は、それぞれ、本件訂正特許発明1の「内層コア」、「外層コア」、「2層のコア」、「カバー」、「中間層」及び「マルチピースソリッドゴルフボール」に相当する。
イ 甲2発明の「ゴルフボール」は、コアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えているから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールとの概念で一致する。
ウ 甲2発明の「センター」は100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR−730」)、20質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、適量の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなり、「包囲層」は、100質量部のハイシスポリブタジエン(「BR−730」)、38質量部のアクリル酸亜鉛、5質量部の酸化亜鉛、5質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド及び0.8質量部のジクミルパーオキサイドからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成されているものとの概念で一致する。
エ 甲2発明の「中間層」は、20質量部のナトリウムイオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(「サーリン8945」)、20質量部の亜鉛イオンで中和されたエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(「ハイミランAM7329」)、60質量部の高弾性ポリアミド(「ノバミッドST220」)、1質量部の極性官能基を有する樹脂(「ロタダーAX8840」)及び4質量部の二酸化チタンからなり、「カバー」は、00質量部の熱可塑性ポリウレタンエラストマー(「エラストランXNY85A」)及び4質量部の二酸化チタンからなるものであるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものとの概念で一致する。
オ 甲2発明の「中間層」の材料硬度(H5)は、そのショアD硬度が67であるから、本件訂正特許発明1の「マルチピースソリッドゴルフボール」と甲2発明の「ゴルフボール」とは、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が67である点で一致する。

そうすると、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、一応相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が67であり、であるマルチピースソリッドゴルフボール。」

[相違点2−1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は、「23.1〜25mm以下」であるのに対し、甲2発明は、20.1mmである点。

[相違点2−2]
内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が、本件訂正特許発明1が、「6.5〜8.0mm」であるのに対し、甲2発明は、5.8mmである点。

[相違点2−3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5」であるのに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。

[相違点2−4]
本件訂正特許発明1が、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であるのに対し、甲2発明は、コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32である点。

[相違点2−5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。

(イ)判断
以上のとおり、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、[相違点2−1]乃至[相違点2−5]において相違するものであって、本件訂正特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲2発明とは、少なくとも上記[相違点2−1]乃至[相違点2−5]において相違するものである。
したがって、本件訂正特許発明2及び5は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではない。

(3)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1、2及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではないから、上記申立理由1により、本件特許請求の範囲の請求項1、2及び5に係る特許を取り消すことはできない。

4 申立理由2(特許法第29条第2項)について
請求項1、2及び5に係る特許は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証乃至甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(1)甲第1号証に基づく申立理由2について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
上記「3 (1) ア (ア)対比」からすると、本件訂正特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が31.7であるマルチピースソリッドゴルフボール。」

[相違点1−1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は「23.1〜25mm以下」であるのに対し、甲1発明は「内18.0mm」である点。

[相違点1−2]
本件訂正特許発明1が、「内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mm」であるのに対し、甲1発明は、センターに対して、荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)が6.45mmである点。

[相違点1−3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5」であるのに対し、甲1発明は、センターの変形量(mm)をT1、センターに包囲層を被覆したコアの荷重がかかっていない状態から981Nの荷重がかかった状態までの球体の変形量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が2.32である点。

[相違点1−4]
本件訂正特許発明1が、「中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70」であるのに対し、甲1発明は、中間層の材料硬度(Hm)は、そのJIS−C硬度が94以上である点。

[相違点1−5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲1発明は、その点が定かでない点。

(イ)判断
まず、[相違点1−1]について、検討する。
特許異議申立人が提出したいずれの甲号証にも、内層コアの直径が23.1〜25mm以下であることが記載されていないし、示唆もされていない。
また、甲1発明には、段落【0037】に「センター10の直径は、10mm以上20mm以下が好ましい。直径が10mm以上であるセンター10により、優れた打球感が達成されうる。この観点から、直径は12mm以上がより好ましく、13mm以上が特に好ましい。直径が20mm以下であるセンター10により、厚みが十分に大きな包囲層12が形成されうる。この観点から、直径は18mm以下が特に好ましい。」と記載されているように、甲1発明のセンター10の直径は、最大でも20mmであって、20mmを超える直径は何ら想定されていないことが明らかといえることからすると、甲1発明のセンターの直径を20mmより大きくすることは阻害要因があるといえる。
してみると、甲1発明において、相違点1−1に係る本件訂正特許発明1とすることは、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。

イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲1発明とは、少なくとも上記[相違点1−1]乃至[相違点1−5]において相違するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないのであるから、同様の理由により、本件訂正特許発明2及び5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(2)甲第2号証に基づく申立理由2について
ア 本件訂正特許発明1について
(ア)対比
上記「3 (2) ア (ア)対比」からすると、本件訂正特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点で一致し、以下の各相違点で、一応相違するものと認められる。
[一致点]
「内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が67であり、であるマルチピースソリッドゴルフボール。」

[相違点2−1]
内層コアの直径が、本件訂正特許発明1は、「23.1〜25mm以下」であるのに対し、甲2発明は、20.1mmである点。

[相違点2−2]
内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が、本件訂正特許発明1が、「6.5〜8.0mm」であるのに対し、甲2発明は、5.8mmである点。

[相違点2−3]
本件訂正特許発明1が、「内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5」であるのに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。

[相違点2−4]
本件訂正特許発明1が、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であるのに対し、甲2発明は、コアの表面ショアD硬度(H4)62からセンターの中心ショアD硬度(H1)30を差し引いた値が32である点。

[相違点2−5]
本件訂正特許発明1が、「カバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなる」のに対し、甲2発明は、その点が定かでない点。

(イ)判断
上記各相違点について、以下検討する。
a [相違点2−1]について
上記「2 (2) エ 【0032】」のとおり、甲第2号証には、「包囲層12はゴム組成物又は樹脂組成物からなる。包囲層12がゴム組成物からなる場合、センター10の直径は、5mm以上35mm以下が好ましい。直径が5mm以上であるセンター10により、ドライバーショットでのスピンが抑制されうる。この観点から、この直径は10mm以上が特に好ましい。この直径が35mm以下であるゴルフボール2では、十分な厚みを有する包囲層12、中間層6及びカバー8が成形されうる。この観点から、直径は30mm以下が特に好ましい。」と記載されている。
しかし、「2 (2) シ 【0123】乃至【0125】」のとおり、甲第2号証に記載された実施例としては、センターの直径が20.1mmか37.7mmのゴルフボールしか示されていない。
上述のように、センター10の直径は、5mm以上35mm以下が好ましい、と記載されているものの、センターの直径が20.1mmか37.7mmのゴルフボールしか示されていないことからすると、甲2発明のセンターの直径20、1mmを23.1〜25mm以下とすること、すなわち、甲2発明において、相違点2−1に係る本件訂正特許発明1とすることは、当業者が容易に想到し得るものということはできない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件訂正特許発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできない。

イ 本件訂正特許発明2及び5について
本件訂正特許発明2及び5は、本件訂正特許発明1を引用し、さらなる限定を付加したものであるから、本件訂正特許発明2及び5と甲2発明とは、少なくとも上記[相違点2−1]乃至[相違点2−5]において相違するものである。
そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないのであるから、同様の理由により、本件訂正特許発明2及び5は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)申立理由2(特許法第29条第2項)についてのまとめ
上記のとおり、本件訂正特許発明1、2及び5は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものということはできないから、上記申立理由2により、本件特許請求の範囲の請求項1、2及び5に係る特許を取り消すことはできない。

第8 まとめ
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められるから、特許第6859682号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2、5]、4、[7−13]について訂正することを認める。
そして、本件訂正請求により、本件特許請求の範囲の請求項3及び6に係る発明は、削除されたから、本件特許異議申立のうち、本件特許請求の範囲の請求項3及び6に係る特許についての申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
そして、上記第5のとおり、本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

よって、上記のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】マルチピースソリッドゴルフボール
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製の内層コア及び外層コアからなる2層のコアと樹脂製のカバーとの間に、少なくとも1層の樹脂製の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コア及びカバーを備えたツーピース以上のゴルフボールやコア、中間層及びカバーを備えたスリーピース以上のマルチピースソリッドゴルフボールにおいては、コアの直径、硬度分布や中間層及びカバーの厚さ、硬度等を特定範囲に調整することにより、飛距離増大や打感及び耐久性等を改良させた特許文献が多数存在している。例えば、米国特許第5782707号明細書や米国特許第6679791号明細書には、コアの周囲に外側が硬く内側が軟らかい2層のカバーを被覆してドライバー(W#1)でのフルショット時の低スピン化効果による飛距離増大を図るゴルフボールが提案されている。また、米国特許第7115049号明細書、同第7267621号明細書及び同第7503855号明細書には、内層及び外層の2層のコアを構成し、該内層コアの直径を所定以上に大きく設計するゴルフボールが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記提案されたいずれのゴルフボールについては、ドライバー(W#1)でのフルショット時の低スピン効果は発揮されるものの、その効果は十分に大きなものとは言い難く、なお、低スピン効果の改良の余地があった。
【0004】
また、ヘッドスピード(HS)が中から高レベルのゴルフユーザー、特に、中・上級者やプロにとっては、ドライバーショット時の飛距離を伸ばすことだけではなく、ゲーム性を高めゴルフ競技を有利に進めるためにも、アプローチショット時のスピン性能のレベルが高いゴルフボールを使用することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5782707号明細書
【特許文献2】米国特許第6679791号明細書
【特許文献3】米国特許第7115049号明細書
【特許文献4】米国特許第7267621号明細書
【特許文献5】米国特許第7503855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ドライバーフルショット時の低スピン効果が大きく飛距離増大をもたらすと共に、高いレベルのアプローチスピン性能を与えるマルチピースソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、中間層及びカバーを具備したゴルフボールにおいて、コアを内層コア及び外層コアの2層に形成し、これらを異なるゴム組成物により形成し、中間層及びカバーを異なる樹脂組成物により形成し、内層コアの直径、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値を特定範囲に設定すると共に、中間層の材料硬度を、特定範囲とし、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなるようにゴルフボールを設計することにより、ドライバー(W#1)によるフルショット時の低スピン化の効果が大きくなり、本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明のゴルフボールは、特に、中・上級者及びプロが最適に使用できるように、2層コアの周囲に内硬外軟の中間層・カバーの2層の被覆層を形成することにより、フルショットで低スピン化が得られる構造にしており飛距離増大が図られると共に、ゲーム性を高めるためのアプローチした時のスピン性能が高めのレベルを得ることができる。
【0009】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1〜25mmであり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.中間層の樹脂組成物には、酸含量が19〜20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
5.内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22〜29である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤、及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
8.上記(iv)成分は、下記構造式(1)
R1−M1−R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
である上記7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.上記(iv)成分は、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛及びモノラウリル酸モノフマル酸亜鉛の群から選ばれる上記7又は8記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
10.上記(i)成分である基材ゴム100質量部に対する上記(ii)成分の配合量が10〜60質量部であり、且つ上記(iv)成分の配合量が0.1〜50質量部である上記7〜9のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
11.共架橋剤全量〔(ii)成分と(iv)成分との合計量〕に対する特定する上記(iv)成分の質量比率が1〜50質量%である上記10記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
12.ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値が1.7〜4.1である上記7〜11のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
13.〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値が13〜25である上記7〜12のいずれかに記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールによれば、ドライバー(W#1)によるフルショットで低スピン化の効果が大きく飛距離増大が図られると共に、アプローチした時のスピン性能が高めのレベルであり、競技上有利なゲーム性の高いゴルフボールである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】
本発明の一実施例を示したゴルフボールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、内側から内層コア、外層コア、中間層及びカバーを有するものである。例えば、図1に示すように、内層コア1aと、該内層コアを被覆する外層コア1bと、これら内層及び外層からなるコア1を被覆する中間層2と、該中間層を被覆するカバー3を有するゴルフボールGが例示される。また、上記カバー3の外表面には、通常、空力特性の向上のためにディンプルDが多数形成される。以下、上記の各層について詳述する。
【0013】
本発明で用いるコアは、上記のとおり、内層コア及び外層コアの少なくとも2層からなり、内層コアはゴルフボールの最内芯に相当する。内層コアの材料としては、ゴム材を主材として用い、具体的には、主材である(A)基材ゴム、(B)有機過酸化物のほか、共架橋剤、不活性充填剤、必要により有機硫黄化合物等を配合するゴム組成物を採用し得る。
【0014】
(A)基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好適である。ポリブタジエンについては、そのポリマー鎖中に、シス−1,4−結合を60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上有することが好適である。分子中の結合に占めるシス−1,4−結合が少なすぎると、反発性が低下する場合がある。
【0015】
なお、(A)基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0016】
(B)有機過酸化物としては、特に制限されるものではないが、1分間半減期温度が110〜185℃である有機過酸化物を用いることが好適であり、1種又は2種以上の有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物の配合量としては、基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限値としては、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記の有機過酸化物は、市販品を用いることができ、具体的には、商品名「パークミルD」、「パーヘキサC−40」、「ナイパーBW」、「パーロイルL」等(いずれも日油社製)、又は、Luperco 231XL(アトケム社製)などを例示することができる。
【0017】
共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸として具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0018】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常10質量部以上、好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、上限として通常60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下、最も好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0019】
また、上記内層コアは、下記(A)〜(C)成分
(A)基材ゴム
(B)有機過酸化物
(C)水
を必須成分として配合するゴム組成物の加熱成形物により形成されることが好適である。
【0020】
即ち、コア材料に直接的に水(水を含む材料)を配合することにより、コア配合中の有機過酸化物の分解を促進することができる。また、コア用ゴム組成物中の有機過酸化物は、温度によって分解効率が変化することが知られており、ある温度よりも高温になるほど分解効率が上がる。温度が高すぎると、分解したラジカル量が多くなりすぎてしまい、ラジカル同士で再結合や不活性化してしまうことになる。その結果、架橋に有効に働くラジカルが減ることになる。ここで、コア加硫の際に有機過酸化物が分解することで分解熱が発生するとき、コア表面付近は加硫モールドの温度とほぼ同程度を維持しているが、コア中心付近は外側から分解していった有機過酸化物の分解熱が蓄積されるため、モールド温度よりもかなり高温になる。コアに直接的に水(水を含む材料)を配合した場合、水は有機過酸化物の分解を助長する働きがあるため、上述したようなラジカル反応をコア中心とコア表面において変化させることができる。即ち、コア中心付近では有機過酸化物の分解が更に助長され、ラジカルの不活性化がより促されることで有効ラジカル量が更に減少するため、コア中心とコア表面との架橋密度が大きく異なるコアを得ることができ、且つ、コア中心部の動的粘弾性特性の異なるコアを得ることができる。そして、このようなコアを有するゴルフボールは、低スピン化を実現すると共に、耐久性に優れ、反発性の経時変化を少なくすることができる。
【0021】
上記(A)成分及び(B)成分については上述したとおりである。
上記(C)成分の水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限としては、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下である。
【0022】
また、上記の水を適量配合することにより、加硫前のゴム組成物における水分含有率が1,000ppm以上となることが好ましく、より好ましくは1,500ppm以上である。上限としては、好ましくは8,500ppm以下であり、より好ましくは8,000ppm以下である。上記ゴム組成物の水分含有率が小さすぎると、適切な架橋密度・Tan δを得ることが困難となり、エネルギーロスが少なく低スピン化を図ったゴルフボールを成形することが困難となる場合がある。上記ゴム組成物の水分含有率が大きすぎると、コアが軟らかくなりすぎてしまい、適切なコア初速を得ることが困難となる場合がある。
【0023】
上記ゴム組成物に水を直接配合することも可能ではあるが、下記の(i)〜(iii)の方法を採用することができる。
(i)スチームや超音波によりミスト状の水をゴム組成物(配合材料)の全部又は一部にあてる方法
(ii)ゴム組成物の全部又は一部を水に浸漬させる方法
(iii)ゴム組成物の全部又は一部を恒湿槽等の湿度管理可能な場所において高湿度環境下に一定時間放置する方法
なお、高湿度環境とはゴム組成物等を湿らせることができる環境であれば特に制限されるものではないが湿度40〜100%であることが好ましい。
【0024】
また、水をゼリー状に加工して上記ゴム組成物に配合することができる。或いは、予め水を、充填剤,未加硫ゴム,ゴム粉等に担持した材料を用い、これを上記ゴム組成物に配合することができる。このような態様は、直接水を配合するよりも作業性に優れるため、ゴルフボールの生産効率を向上させることができる。水を所定量含有させた材料の種類については特に制限はないが、十分に水を含有させた充填剤、未加硫ゴム、ゴム粉等が挙げられ、特に、耐久性や反発性を損なうことがない材料を使用することが好適である。上記の材料の水分含有率としては、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、上限として、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0025】
更に、上記ゴム組成物には、金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有させることができる。このカルボン酸金属塩(以下、「特定するカルボン酸金属塩」と言う。)については、下記のとおりである。
【0026】
特定するカルボン酸金属塩
特定するカルボン酸金属塩は、金属と結合しているカルボン酸が異なる2種以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上である化合物である。ここで言う結合とは、金属とカルボン酸との結合であり、結合数は金属種によって異なる。具体的には、ナトリウムやカリウムは1個、亜鉛やカルシウムは2個、鉄やアルミニウムは3個の結合部位を有するが、上記の特定するカルボン酸金属塩となりうるには結合部位数が2個以上必要であるため、金属種はこれに限定される。例えば、亜鉛塩の場合、亜鉛の結合部位2箇所のうち、一方が炭素数8個以上のカルボン酸Aとするならば、もう一方のカルボン酸はカルボン酸A以外である必要がある。その際、ステアリン酸亜鉛のような金属と結合しているカルボン酸が同一である二結合金属塩(ジ塩)と区別するため、モノという接頭語を用いて物質名を表す。特定するカルボン酸金属塩は具体的には、下記構造式(1)又は構造式(2)で表される化合物である。
【0027】
R1−M1−R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
【0028】
【化1】
R3−M2−R4
| ・・・ (2)
R5
[式(2)中、R3〜R5は異なる2種以上のカルボン酸を表し、R3〜R5のうち少なくとも1種が炭素数8個以上である。M2は3価の金属原子を表す。]
【0029】
特定するカルボン酸金属塩は、金属と結合しているカルボン酸が異なる2種以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であることにより、加工性を改善でき、且つ、添加によるコアの初速を最小限に抑制することができる。
【0030】
特定するカルボン酸金属塩については、金属と結合するカルボン酸のうち少なくとも1種が不飽和カルボン酸であることが好適であり、更に、不飽和カルボン酸が炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸であることが好適である。また、特定するカルボン酸金属塩の金属種としては、特に、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅、アルミニウム、鉄及びジルコニウムの群から選ばれるものであることが好適である。
【0031】
特定するカルボン酸金属塩として具体的には、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛、モノラウリル酸モノフマル酸亜鉛等が挙げられ、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛が好ましい。なお、ステアリン酸亜鉛のように金属と結合しているカルボン酸が同一の場合には本発明の範囲には含まれない。
【0032】
上記特定するカルボン酸金属塩のゴム組成物中の形態については、特に制限はなく、例えば、上記の共架橋剤と共に、ゴム組成物中に混合分散する形態で存在させることができる。その他の形態として、上記特定するカルボン酸金属塩により、アクリル酸亜鉛等の共架橋剤の表面をコーティングする形態、即ち、上記特定するカルボン酸金属塩をコーティング層としてゴム組成物中に配合することもできる。
【0033】
特定するカルボン酸金属塩は、複数のカルボン酸共存下で金属化合物と反応させることで容易に得ることができる。具体的には、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛の場合、反応溶液中にステアリン酸とアクリル酸とを溶解させ、そこへ溶媒に懸濁させた酸化亜鉛を混合して反応させることによって得ることができる。或いは、酸化亜鉛を溶媒へ懸濁させた溶液中へ、ステアリン酸とアクリル酸とを添加することによって得ることができる。
【0034】
特定するカルボン酸金属塩の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜25質量部である。また、共架橋剤全量に対する特定するカルボン酸金属塩の質量比率は、好ましくは1〜99質量%であり、より好ましくは4〜50質量%である。特定するカルボン酸金属塩の配合量が上記範囲よりも少ないと、十分な加工性改善の効果が得られないおそれがあり、逆に、上記範囲よりも多いと、コアの初速が必要以上に低下してしまう場合がある。
【0035】
内層コアの製造方法としては、常法に従って、140℃以上180℃以下、10分以上60分以下の加硫条件で加熱圧縮し、球状成形物(内層コア)を成形することができる。
【0036】
内層コアの直径としては、好ましくは15mm以上、より好ましくは17.5mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、上限として、35.0mm以下であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下とすることが推奨される。上記の直径よりも小さすぎると、ドライバー(W#1)打撃時に実打初速が低くなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が大き過ぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、或いは、フルショットした時の低スピン効果が足りずに狙いの飛距離が得られなくなる場合がある。
【0037】
内層コアの中心硬度(Cc)は、JIS−C硬度で、好ましくは39〜61、より好ましくは42〜58、更に好ましくは45〜55である。この値が大きすぎると、スピンが増え過ぎて飛ばなくなることがあり、或いは、打感が硬く感じられることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることや、打感が軟らかくなりすぎる場合がある。
【0038】
内層コアの表面硬度(Cs)は、JIS−C硬度で、好ましくは64〜86、より好ましくは67〜83、更に好ましくは70〜80である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。上記の値が小さすぎると、フルショット時のスピンが増えて狙いの飛距離が得られなくなる場合がある。
【0039】
内層コアの表面と中心との硬度差、即ち、(Cs)−(Cc)の値は、好ましくは19以上、より好ましくは21以上、更に好ましくは22以上であり、上限値としては、39以下、より好ましくは34以下、更に好ましくは29以下である。上記の値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなり狙いの飛距離が得られなくなり、或いは、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。逆に、上記の値が小さすぎると、フルショットした時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0040】
本発明の外層コアのゴム組成物については、上述した内層コアのゴム組成物の各成分と同様のものを使用することができる。但し、外層コアのゴム組成物は、内層コアのゴム組成物とは異なる配合内容(各成分及びその配合量)で、加硫・硬化させて製造するものである。この外層コアの製造方法としては、例えば、外層コア成形用金型に外層コア材を入れ、一次加硫(半加硫)して一対の半球カップ体を製造した後、次いで、予め製作した内層コアを一方の半球カップ体に載せ、更に他方の半球カップ体をこれに被せた状態で二次加硫(全加硫)を行う加硫工程を2段階に分けた方法を好適に採用することができる。また、外層コアの形成と同時にコア全体の製造を行う方法を好適に採用することができる。外層コアを形成する際の加硫条件等は、内層コアで説明した内容と同様である。
【0041】
外層コアの厚さは、好ましくは2.0〜14.0mmであり、より好ましくは4.0〜12.0mm、更に好ましくは6.0〜10.0mmである。上記の厚さが厚すぎると、フルショットした時の実打初速が低くなり狙いの飛距離が出なくなることがある。また、上記厚さが薄過ぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、或いは、フルショットした時の低スピン効果が足りずに狙いの飛距離が得られなくなる場合がある。
【0042】
外層コアの表面硬度(Css)は、JIS−C硬度で、好ましくは80以上、より好ましくは81〜95、更に好ましくは82〜93である。上記の値が大きすぎると、打感が硬くなり、又は、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。逆に、上記の値が小さすぎると、スピンが増えすぎたり、反発が低くなり飛ばなくなる場合がある。
【0043】
外層コアの表面と内層コアの中心との硬度差、即ち、(Css)−(Cc)の値は25以上であり、好ましくは28以上、より好ましくは30以上である。一方、この硬度差の上限値としては、好ましくは50以下、より好ましく45以下である。上記の値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、スピンが増えすぎて飛距離が出なくなることがある。
【0044】
なお、上述した内層コアの中心硬度(Cs)とは、内層コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心において測定される硬度を意味し、内層コアの表面硬度(Cs)及び外層コアの表面硬度(Css)とは、それぞれ内層コア又は外層コアの表面(球面)において測定される硬度を意味する。
【0045】
内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでの所定荷重変形量、即ち、たわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは4.5〜10.0mm、より好ましくは5.5〜9.0mm、更に好ましくは6.5〜8.0mmである。また、内層コアに外層コアを被覆した球体、即ちコア全体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.1〜4.3mm、より好ましくは3.3〜4.1mm、更に好ましくは3.5〜3.9mmである。上記の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、又は繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなり、或いは、フルショット時の実打初速が低くなり狙いどおりの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、フルショット時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0046】
次に、中間層の樹脂材料について説明する。
中間層の材料は、特に制限はないが、各種の公知の樹脂材料、特に、アイオノマー樹脂材料又は高中和の樹脂材料を使用することが好適である。
【0047】
中間層の材料としてアイオノマー樹脂を用いる場合、該中間層材料に含まれる不飽和カルボン酸の含量(酸含量)は、好ましくは16質量%以上、より好ましくは18質量%以上であり、上限としては、好ましくは22質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。酸含量が少ないと反発性が低下したりスピンが多くなり飛距離が出なくなる可能性があり、多いと加工性が低下したり繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる可能性がある。
【0048】
本発明に用いる中間層材料としては、酸含量が16質量%以上のアイオノマーを用いることが好適であり、特に、このような高酸含量アイオノマーを樹脂材料全量の50質量%以上含有させることが、所望の硬さ,反発性及び耐久性を得る点から、好適である。
【0049】
本発明に用いる中間層材料として、具体的には、三井・デュポンポリケミカル社製の商品名「AM7315」、「AM7317」、「AM7318」や、米国デュポン社製の商品名「AD8546」、「AD8547」、「AD8548」などの市販品のアイオノマーを使用することができ、これらの1種を単独で又は2種以上併用することができる。
【0050】
中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは65以上、より好ましくは66以上であり、上限として、好ましくは74以下、より好ましくは72以下、更に好ましくは70以下である。また、中間層を被覆した球体の表面硬度(以下、「中間層被覆球体」と称す。)は、ショアD硬度で、好ましくは71以上、より好ましくは72以上であり、上限として、好ましくは80以下、より好ましくは78以下、更に好ましくは76以下である。これら中間層材料又は中間層被覆球体が上記硬度範囲よりも軟らかすぎると、フルショット時にスピンが掛かりすぎて飛距離が伸びなくなることがある。逆に、上記硬度範囲よりも硬すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなり、或いは、パターやショートアプローチの実施時の打感が硬くなりすぎることがある。
【0051】
上記の中間層被覆球体の表面硬度とは、中間層材料をコアに被覆した状態の球体の表面における硬度を意味するものであり、下地であるコアの硬さと中間層の厚さ及び硬さ等により決定されるものであり、中間層の材料自体の硬度とは相違する。また、中間層の材料自体の硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度の方が硬くなる傾向にある。
【0052】
上記の2層コアに中間層を被覆した球体、即ち中間層被覆球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは2.4〜3.6mm、より好ましくは2.6〜3.4mm、更に好ましくは2.8〜3.1mmである。上記の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、又は繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなり、或いは、フルショット時の実打初速が低くなり狙いどおりの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、フルショット時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0053】
中間層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.9mm以上、更に好ましくは1.1mm以上であり、上限として、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.6mm以下、更に好ましくは1.3mm以下である。上記の中間層の厚さが上記数値範囲を逸脱すると、ドライバー(W#1)打撃による低スピン効果が足りずに飛距離が伸びなくなることがある。
【0054】
次に、ボールの最外層に相当するカバーについて説明する。
カバー(最外層)の材料については、特に制限はなく、各種の熱可塑性樹脂材料を好適に用いることができる。上記カバー材料としては、コントロール性と耐擦過傷性の観点から、ポリウレタン材料を主材として使用する。特に、ボール製品の量産性の観点から、熱可塑性ポリウレタンを主体としたものを使用することが好適であり、より好ましくは、(O)熱可塑性ポリウレタン及び(P)ポリイソシアネート化合物を主成分とする樹脂配合物により形成することができる。
【0055】
上記の(O)及び(P)を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物においては、ボール諸特性をより一層改善させるために、必要十分量の未反応のイソシアネート基がカバー樹脂材料中に存在すればよい。具体的には、上記の(O)成分と(P)成分とを合わせた合計質量が、カバー層全体の質量の60%以上であることが推奨されるものであり、より好ましくは70%以上である。上記(O)成分及び(P)成分については以下に詳述する。
【0056】
上記(O)熱可塑性ポリウレタンについて述べると、その熱可塑性ポリウレタンの構造は、長鎖ポリオールである高分子ポリオール(ポリメリックグリコール)からなるソフトセグメントと、鎖延長剤及びポリイソシアネート化合物からなるハードセグメントとを含む。ここで、原料となる長鎖ポリオールとしては、従来から熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものはいずれも使用でき、特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、共役ジエン重合体系ポリオール、ひまし油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、ビニル重合体系ポリオールなどを挙げることができる。これらの長鎖ポリオールは1種類のものを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、反発弾性率が高く低温特性に優れた熱可塑性ポリウレタンを合成できる点で、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0057】
鎖延長剤としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、例えば、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量400以下の低分子化合物であることが好ましい。鎖延長剤としては、1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。鎖延長剤としては、これらのうちでも、炭素数2〜12の脂肪族ジオールが好ましく、1,4−ブチレングリコールがより好ましい。
【0058】
ポリイソシアネート化合物としては、従来の熱可塑性ポリウレタンに関する技術において使用されるものを好適に用いることができ、特に制限はない。具体的には、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−(又は)2,6−トルエンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートからなる群から選択された1種又は2種以上を用いることができる。但し、イソシアネート種によっては射出成形中の架橋反応をコントロールすることが困難なものがある。本発明においては生産時の安定性と発現される物性とのバランスとの観点から、芳香族ジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが最も好ましい。
【0059】
具体的な(O)成分の熱可塑性ポリウレタンとしては、市販品を用いることもでき、例えば、パンデックスT−8295,同T−8290,同T−8283,同T−8260(いずれもディーアイシーバイエルポリマー社製)などが挙げられる。
【0060】
上記(O)及び(P)成分の他成分としては、必須成分ではないが、上記熱可塑性ポリウレタン以外の熱可塑性エラストマーを配合することができる。この(Q)成分を上記樹脂配合物に配合することにより、樹脂配合物の更なる流動性の向上や反発性、耐擦過傷性等、ゴルフボールカバー材として要求される諸物性を高めることができる。
【0061】
上記(O)、(P)及び(Q)成分の組成比については、特に制限はないが、本発明の効果を十分に有効に発揮させるためには、質量比で(O):(P):(Q)=100:2〜50:0〜50であることが好ましく、更に好ましくは、(O):(P):(Q)=100:2〜30:8〜50(質量比)とすることである。
【0062】
更に、上記の樹脂配合物には、必要に応じて、上記の熱可塑性ポリウレタンを構成する成分以外の種々の添加剤を配合することができ、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等を適宜配合することができる。
【0063】
カバー(最外層)の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、更に好ましくは40以上であり、上限として、好ましくは58以下、より好ましくは54以下、更に好ましくは50以下である。また、カバーを被覆した球体の表面硬度、即ち、ボール全体の表面硬度は、ショアD硬度で、好ましくは25以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは45以上であり、上限として、好ましくは70以下、より好ましくは66以下、更に好ましくは62以下である。上記範囲よりも軟らかすぎると、ドライバー(W#1)打撃時やアイアンフルショット時にはスピンが多くなりすぎてしまい飛距離が出なくなることがある。上記範囲よりも硬すぎると、アプローチ時にスピンが不足したり、打感が硬くなりすぎる場合がある。
【0064】
カバー(最外層)を被覆した球体、即ちボールの表面硬度とは、カバー材料を中間層被覆球体に被覆した状態の球体の表面における硬度を意味し、下地であるコア、中間層及びカバーの厚さ及び硬さ等により適宜決定されるものであり、カバーの材料自体の硬度とは相違する。また、カバーの材料自体の硬度よりもカバー被覆球体(ボール被覆球体)の表面硬度の方が硬くなる傾向にある。
【0065】
カバー(最外層)の厚さは、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.45mm以上、更に好ましくは0.6mm以上であり、上限として、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下、更に好ましくは0.9mm以下である。上記範囲よりもカバーが厚すぎると、ドライバー(W#1)やアイアンショット時に反発性が足りなくなり、或いは、スピンが多くなり飛距離が出なくなることがある。逆に、上記範囲よりも薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなる場合があり、又は、アプローチでのスピンが掛からなくなりコントロール性が不足する場合がある。
【0066】
カバー(最外層)を被覆した球体、即ちボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは2.1〜3.6mm、より好ましくは2.3〜3.3mm、更に好ましくは2.5〜3.0mmである。上記の値が大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、又は繰り返し打撃した時の耐久性が悪くなり、或いは、フルショット時の実打初速が低くなり狙いどおりの飛距離が得られなくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、フルショット時のスピンが多くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0067】
上述した内層コア及び外層コアからなるコア、中間層及びカバー(最外層)の各層を積層して形成されたマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行うことができる。例えば、ゴム材を主材とした内層・外層からなるコアを所定の射出成形用金型内に配備し、中間層材料を射出して中間球状体を得、次いで、該球状体を別の射出成形用金型内に配備してカバー(最外層)の材料を射出成形することによりマルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、カバー(最外層)を中間球状体に被覆する方法により、カバーを積層することもでき、例えば、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップで該中間球状体を包み加熱加圧成形することができる。
【0068】
本発明のゴルフボールは、更に、以下の要件を満たすことが好適である。
(I)コア、中間層被覆球体及びボールの各球体間のたわみ量の関係
内層コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体、即ち、コアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.0〜2.7、更に好ましくは1.5〜2.5である。また、上記コアに中間層を被覆した球体、即ち中間層被覆球体に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)をT3とするとき、T1/T3の値は、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは1.5〜3.5、更に好ましくは2.0〜3.0である。更に、ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値は、好ましくは4.1以下であり、より好ましくは1.7〜3.6、更に好ましくは2.2〜3.1である。上記のT1/T2、T1/T3及びT1/T4の値が、それぞれ上記範囲よりも大きすぎると、打感が軟らかくなりすぎ、又は、フルショットした時の実打初速が低くなりすぎて狙いのW#1飛距離が出なくなることがある。逆に、上記の値が小さすぎると、打感が硬くなりすぎ、或いは、フルショットした時のスピンが増えすぎて狙いのW#1飛距離が出なくなる場合がある。
【0069】
(II)中間層とカバーとの厚さ関係
中間層厚さからカバー厚さを引いた値は、好ましくは−0.1〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.8mm、更に好ましくは0.3〜0.6mmである。上記の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎ、アプローチした時のスピンが掛かり難くなる場合がある。逆に、上記の値が小さすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、或いは、フルショットした時の低スピン効果が足りず狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0070】
(III)外層コア、中間層被覆球体及びボールの各表面硬度の関係
〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値は、好ましくは1〜25、より好ましくは5〜20、更に好ましくは10〜15である。上記の範囲を外れると、フルショット時の低スピン効果が足りず狙いの飛距離が得られなくなる場合や、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。また、〔ボール表面のショアD硬度〕から〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕を引いた値は、好ましくは−21〜−1、より好ましくは−18〜−3、更に好ましくは−15〜−5である。上記の値が大きい(マイナスが少ない)と、アプローチした時のスピンが掛からなくなり、又は、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなる場合がある。逆に、上記の値が小さすぎる(マイナス方向に大きい)と、フルショットした時のスピンが増え、ボール初速が低くなり狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0071】
上記カバー(最外層)の外表面には多数のディンプルを形成することができる。カバー表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは280個以上、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上であり、上限として、好ましくは360個以下、より好ましくは350個以下、更に好ましくは340個以下具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。逆に、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0072】
ディンプルの形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.08mm以上0.30mm以下とすることができる。
【0073】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、具体的には、ディンプルの縁に囲まれた平面の面縁で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率(SR値)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から60%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、且つこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。
【0074】
なお、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径としては42.672mm内径のリングを通過しない大きさで42.80mm以下、重さとしては好ましくは45.0〜45.93gに形成することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0076】
〔実施例1〜4、比較例1〜6〕
内層及び外層コアの形成
下記表1に示した内層・外層コアのゴム組成物を調製した後、表1に示す加硫条件により加硫成形することにより、各実施例、比較例のコアを作製した。なお、比較例1は外層コアのない単層のコアであり、比較例2は内層コア材料として、ゴム組成物ではなく下記表2に示す「樹脂c」の樹脂材料を用いた。
【0077】

【0078】
なお、表1に記載した各成分の詳細は以下の通りである。
・ポリブタジエンA:JSR社製、商品名「BR01」
・ポリブタジエンB:JSR社製、商品名「BR51」
・不飽和カルボン酸金属塩:アクリル酸亜鉛(和光純薬工業社製)
・カルボン酸金属塩1:モノアクリル酸モノステアリン酸亜鉛(日本触媒社製)
・カルボン酸金属塩2:ステアリン酸亜鉛(和光純薬工業社製)
・有機過酸化物(1):ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・有機過酸化物(2):1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカとの混合物、商品名「パーヘキサC−40」(日油社製)
・蒸留水:和光純薬工業社製
・老化防止剤:2,2−メチレンビス(4−メチル−6−ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS−6」(大内新興化学工業社製)
・硫酸バリウム:商品名「バリコ#100」(ハクスイテック社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:和光純薬工業社製
【0079】
中間層及びカバーの形成
次に、上記で得たコアの周囲に、下記表2に示す樹脂材料の配合により、中間層及びカバーを射出成形法により順次被覆してゴルフボールを作製した。この際、各実施例、比較例のカバー表面には、特に図示してはいないが、共通するディンプルが形成された。なお、比較例3には、中間層を形成せずカバーのみを形成した。また、表中の「樹脂c」は、比較例2の内層コアで使用する樹脂材料を示す。
【0080】
【表2】

【0081】
表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
「AM7315」:アイオノマー(酸含量20質量%)、三井・デュポンポリケミカル社製
「AD8546」:アイオノマー(酸含量19質量%)、デュポン社製
「ハイミラン1706」、「ハイミラン1601」:アイオノマー、三井・デュポンポリケミカル社製
「T−8290」、「T−8283」:DIC BayerPolymer社製の商品名
「パンデックス」、エーテルタイプの熱可塑性ポリウレタン
「ハイトレル4001」、「ハイトレル3046」:ポリエステルエラストマー、東レデュポン社製
「ポリエチレンワックス」:商品名「サンワックス161P」、三洋化成社製
「イソシアネート化合物」:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0082】
得られた各ゴルフボールにつき、内層及び外層コアの中心硬度又は表面硬度、内層コアコア、中間層被覆球体、ボールの外径、各層の厚さ及び材料硬度、各被覆球体の表面硬度及び所定荷重変形量(たわみ量)などの諸物性を下記の方法で評価し、表3に示す。
【0083】
内層コア及び外層コア、中間層被覆球体の外径
23.9±1℃の温度で、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個の内層コア、コア全体(即ち、内層コア及び外層コア)、中間層被覆球体の測定値とし、測定個数5個での平均値を求めた。
【0084】
ボールの直径
23.9±1℃の温度で、任意のディンプルのない部分を5箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数5個のボールの平均値を求めた。
【0085】
内層コア、コア(外層コアを被覆した球体)、中間層被覆球体及びボールのたわみ量
内層コア、コア全体、中間層被覆球体又はボールを硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ量をそれぞれ計測した。なお、上記のたわみ量はいずれも23.9℃に温度調整した後の測定値である。
【0086】
内層コアの中心、内層コア及び外層コアの表面硬度(JIS−C硬度)
内層コア中心硬度は、内層コアを半分に(中心を通るように)切断して得た断面の中心硬度を計測した。内層コア及び外層コアの各表面硬度は、球状の内層コア又はコア全体の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測した。いずれも、JIS K 6301−1975に規定するスプリング式硬度計(JIS−C形)により計測した。なお、ショアD硬度についてはASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測した。
【0087】
中間層被覆球体、ボールの表面硬度(ショアD硬度)
中間層被覆球体又はボール(カバー)の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測した。なお、ボール(カバー)の表面硬度は、ボール表面においてディンプルが形成されていない陸部における測定値である。ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測した。
【0088】
中間層及びカバーの材料硬度(ショアD硬度)
中間層及びカバーの樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間以上放置した。その後、ショアD硬度はASTM D2240−95規格に準拠したタイプDデュロメータによって計測した。表中は、「シート材料硬度」と記載する。
【0089】

【0090】
各ゴルフボールの飛び性能、アプローチスピン性能及び繰り返し打撃耐久性を下記の方法で評価した。その結果を表4に示す。なお、全て23℃の環境下で測定した。
【0091】
飛び
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけてヘッドスピード45m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準で判定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage X−Drive709 D430ドライバー(2013モデル)」(ロフト角9.5。)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〈判定基準〉
トータル飛距離230.0m以上 … ○
トータル飛距離230.0m未満 … ×
【0092】
アプローチスピン性能
ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジ(SW)を付けて、ヘッドスピード20m/sにて打撃した直後のスピン量を初期条件計測装置により測定した。下記の判定基準によりスピン性能を評価した。
〈判定基準〉
スピン量が5,700rpm以上 … ○
スピン量が5,700rpm未満 … ×
【0093】
繰り返し打撃耐久性
ゴルフ打撃ロボットに上記と同様のドライバー(W#1)を付けて、各例のボールをヘッドスピード(HS)40m/sで繰り返し打撃した。実施例2のボールの初速が初期10回平均の初速対比で97%以下になった時の回数を100として以下の指標により判断した。各例のボールを3個ずつ使用し、その平均値を用いた。
指数90以上 … ○
指数90未満 … ×
【0094】
また、各例についてのコア生産性について、下記基準により評価した。その結果を表4に併記する。
生産性
ゴム組成物配合を混練及び押出した際の、(i)混練時間、(ii)混練装置内壁への付着((iii)残渣、(iv)混練後のゴム組成物のまとまり、(v)押出し時のゴム組成物の表面粗度等を評価し、これらを総合的に判断し、生産性が極めて高いものを◎、生産性が高いものを○、生産性が低いものを×として生産性を評価した。内層コア及び外層コアのそれぞれで評価し、コア全体としての評価結果を表4に併記した。但し、比較例1は、単層コアであるので、そのゴム組成物を評価し、比較例2は、内層コアが樹脂材料からなるので外層コアのゴム組成物について上記の評価を行った。
【0095】

【0096】
上記表4の結果に示されるように、比較例1〜6のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、単層のコアであり、ドライバー(W#1)でのフルショット時の低スピン効果が足りず、実打初速も上がらず、その結果、ドライバーによる狙いの飛距離が出ない。
比較例2は、内層コアがポリエステル材料により形成されたゴルフボールであり、ゴム製の外層コアと上記樹脂製の内層コアとの密着が弱くなり、その結果、繰り返し打撃による耐久性が劣る。
比較例3は、硬い中間層の無い2層コアと単層の外層(カバー)のスリーピースソリッドゴルフボールであり、ドライバー(W#1)でのフルショットでの低スピン効果が足りず、その結果、狙いの飛距離が出ない。
比較例4は、中間層の硬度がショアD硬度で66未満と比較的軟らかいものであり、ドライバー(W#1)でのフルショット時の低スピン効果が足りず、その結果、ドライバーによる狙いの飛距離が出ない。
比較例5は、カバー被覆球体(即ちボール被覆球体)の表面硬度が中間層被覆球体の表面硬度よりも硬い2層コアと2層外層(中間層及びカバー)のフォーピースソリッドゴルフボールであり、その結果、ショートゲームでのスピン性能が全く足りない。
比較例6は、内層コアの外径(直径)が大きいものであり、外層コアが薄く形成された2層コアと2層外層(中間層及びカバー)フォーピースソリッドゴルフボールであり、フルショット時の低スピン効果が足りず、その結果、ドライバーによる狙いの飛距離が出ない。
【符号の説明】
【0097】
1 コア
1a 内層コア
1b 外層コア
2 中間層
3 カバー
G ゴルフボール
D ディンプル
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が23.1〜25mmであり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が6.5〜8.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜2.5であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が30〜45であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が66〜70であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
中間層の樹脂組成物には、酸含量が19〜20質量%のアイオノマーが50質量%以上含有される請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、内層コアのゴム組成物には水が配合され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項5】
内層コアの表面JIS−C硬度(Cs)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が22〜29である請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
内層コア及び外層コアからなる2層のコアとカバーとの間に、少なくとも1層の中間層を介在させたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記コアが、(i)基材ゴム、(ii)α,β−不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、(iii)架橋開始剤、及び、(iv)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩を含有するゴム組成物により形成され、内層コア及び外層コアが異なるゴム組成物により形成され、中間層及びカバーが異なる樹脂組成物により形成されるものであり、内層コアの直径が35.0mm以下であり、内層コア(球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量(mm)が5.5〜9.0mmであり、内層コアの上記たわみ量(mm)をT1、内層コアに外層コアを被覆した球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT2とするとき、T1/T2の値が1.5〜3.0であり、外層コアの表面JIS−C硬度(Css)から内層コアの中心JIS−C硬度(Cc)を差し引いた値が25以上であると共に、中間層の材料硬度は、そのショアD硬度が65以上であり、且つカバー被覆球体の表面硬度よりも中間層被覆球体の表面硬度が高くなることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項8】
上記(iv)成分は、下記構造式(1)
R1−M1−R2 ・・・ (1)
[式(1)中、R1及びR2はそれぞれ異なるカルボン酸を表し、R1及びR2のうち少なくともいずれかが炭素数8個以上である。M1は2価の金属原子を表す。]
である請求項7記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項9】
上記(iv)成分は、モノステアリン酸モノパルミチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノステアリン酸モノラウリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノミリスチン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノラウリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノアクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノステアリン酸モノマレイン酸亜鉛、モノステアリン酸モノフマル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノパルミチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノパルミチン酸モノフマル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノアクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノメタクリル酸亜鉛、モノミリスチン酸モノマレイン酸亜鉛、モノミリスチン酸モノフマル酸亜鉛、モノラウリル酸モノアクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノメタクリル酸亜鉛、モノラウリル酸モノマレイン酸亜鉛及びモノラウリル酸モノフマル酸亜鉛の群から選ばれる請求項7又は8記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項10】
上記(i)成分である基材ゴム100質量部に対する上記(ii)成分の配合量が10〜60質量部であり、且つ上記(iv)成分の配合量が0.1〜50質量部である請求項7〜9のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項11】
共架橋剤全量〔(ii)成分と(iv)成分との合計量〕に対する特定する上記(iv)成分の質量比率が1〜50質量%である請求項10記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項12】
ボールの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)まで負荷したときのたわみ量(mm)をT4とするとき、T1/T4の値が1.7〜4.1である請求項7〜11のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項13】
〔中間層被覆球体の表面のショアD硬度〕から〔外層コアの表面硬度のショアD硬度〕を引いた値が13〜25である請求項7〜12のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-12-07 
出願番号 P2016-235110
審決分類 P 1 651・ 121- ZDA (A63B)
P 1 651・ 113- ZDA (A63B)
P 1 651・ 851- ZDA (A63B)
P 1 651・ 537- ZDA (A63B)
P 1 651・ 857- ZDA (A63B)
P 1 651・ 853- ZDA (A63B)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
比嘉 翔一
登録日 2021-03-30 
登録番号 6859682
権利者 ブリヂストンスポーツ株式会社
発明の名称 マルチピースソリッドゴルフボール  
代理人 弁理士法人英明国際特許事務所  
代理人 弁理士法人英明国際特許事務所  

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